(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109980
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】光学部品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240806BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240806BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240806BHJP
F21V 5/02 20060101ALI20240806BHJP
F21V 13/02 20060101ALI20240806BHJP
F21W 131/403 20060101ALN20240806BHJP
F21Y 103/10 20160101ALN20240806BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240806BHJP
【FI】
G02B5/02 C
F21S2/00 600
F21V5/00 320
F21V5/02 100
F21V13/02 400
F21V5/00 610
F21W131:403
F21Y103:10
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090347
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2019131371の分割
【原出願日】2019-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】393032125
【氏名又は名称】MCCアドバンスドモールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 学
(72)【発明者】
【氏名】高村 彰
(72)【発明者】
【氏名】金次 達真
(57)【要約】
【課題】LEDアレイ方式によるものと同等の配光特性のライン照明を、より少ないLEDを用いて作りだすことができるようにする。
【解決手段】透光性を有する合成樹脂製の基材1Aの片面に、同一断面のプリズム形状からなる複数の凸部11を平行に列設し、各凸部11の表面に微細な凹凸12を付す加工を施して光学部品1を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する合成樹脂製の基材の片面に、同一断面形状の複数の凸部が平行に列設されているとともに、各凸部の表面に微細な凹凸が形成された構成を有する光学部品。
【請求項2】
凸部は三角柱を横倒しにしたプリズム形状である請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
凸部の断面形状が、斜辺を底辺側に向けた直角三角形である請求項2に記載の光学部品。
【請求項4】
微細な凹凸の凹形状の部分の、凸部表面に対する深さが、17μmから30μmの範囲に設けられた請求項1から3の何れかに記載の光学部品。
【請求項5】
隣接する凸部と凸部の頂点間の距離が、0.1mmから0.2mmの範囲に設けられた請求項1から4の何れかに記載の光学部品。
【請求項6】
基材の凸部が設けられて側とは反対側に入射した、円形断面のLED照明光が、前記凸部が設けられた側から、横に長い楕円形状の断面の照明光に調整された出射されることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の光学部品。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の光学部品と、この光学部品に向けて照明光を出射するLEDを備えた照明装置。
【請求項8】
透光性を有する合成樹脂からなる板状の基材の片面に、同一断面形状の複数の凸部が平行に列設された光学部品を成形するための金型であって、
当該金型は、その一面に前記基材の片面に列設される複数の凸部を成形するための前記凸部に対応する凹部が複数設けられているとともに、
前記凹部の表面にエッチングにより微細な凹凸が形成されていることを特徴とする樹脂製光学部品用成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)を用いた照明技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを光源とする照明装置は、低消費電力で高い発光効率を示し、寿命も長いため経済性が高いという利点を有し、近年、照明の設置場所や使用用途などに応じた様々な形態のものが製品化され、白熱灯や蛍光灯などの従来の照明装置に代わる汎用の照明装置として広く使用されてきている。また、近時の水銀などの特定化学物質の使用規制の厳格化に伴い、環境保護の観点から規制物質を使用した光源からLEDの光源への代替も進んでいる。
【0003】
LEDを光源とする照明装置の照明光の調整は、直下型やエッジ型の面光源で代表されるように、表面に光拡散層が形成された透光性を有する基材シートと、プリズム形状などの凹凸形状が表面に形成されたレンズシートとを組み合わせてなる光学シートを用い、LED光を基材シートに入射し、適度に拡散されつつ方向を変えてレンズシートの出光面から出射するように行うのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
また、光の配光特性を調整する方法としては、レンズ形状を最適化して行うのが一般的である(例えば特許文献2参照)。
合成樹脂製の光学シートの表面に特殊な凹凸形状を形成して配光特性を制御する技術も知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-335044号公報
【特許文献2】特開2012-226983号公報
【特許文献3】特開2008-302591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複写機やファクシミリなどの画像読み取りスキャナー部は、原稿に照明を当て、その反射光をラインイメージセンサに取り込むように構成され、前記原稿に当てる一次元のライン照明の形成に、長尺な基板上に複数個のLEDを列状に配置したLEDアレイ方式が採用されている。
このLEDアレイ方式は、多数のLEDを使用するため原稿表面に対して高い照度が得られ、原稿の文字や画像を鮮明に照らすことが可能であるものの、点光源であるLEDの配置間隔を間欠的に配置すると、輝度ムラが発生しやすく、この輝度ムラにより原稿表面においても明るさにムラが出来てしまうという問題があった。また、使用するLEDの数を減らすことで、消費エネルギーの面で効率化を図る要求もある。
【0006】
かかる問題及び要求に対する解決手段として、前述の基材シートとレンズシートを組み合わせてなる光学シートを用いてLEDの配光を調整することが考えられるが、基材シートとレンズシートを一体化する加工や光学シートの表面に特殊な凹凸形状を形成する加工は、加工工程が複雑で製造コストが高くなることは避けられない。
【0007】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑み、少ない部材点数及び簡単な加工により、LEDの配光を所望の光度分布で、所望の方向と拡散幅に調整可能な光学部品を得ることを課題とする。また、この光学部品により、LEDアレイ方式によるものと同等の配光特性のライン照明を、より少ないLEDを用いて作りだすことができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の一次元のライン照明をLEDアレイ方式によらずに作り出すには、LEDが発する指向性のある光を、線状或いは帯状に配光することが必要である。
図1に示されるように、表面に断面三角形のプリズム部101を備えた光学シート100に、一つのLED200が発する光を入射した場合、入射光は光学シート100内で反射し屈折して、光学シート100から出射される出射光OBは、同図に示されるように、点状の光を分散して一列に並べた態様となり、線状或いは帯状に連なったライン照明は得ることができない。
そこで、本発明では、入射した光を反射し屈折させるプリズム部の形状寸法を最適化することに加え、指向性のある光が適度に拡散されるようにプリズム部が表面処理された光学部品を構成することで前記課題の解決を図り、LEDの照明光を所望の配光特性に調整できるようにした。
【0009】
すなわち、前記課題を解決するため本発明の光学部品は、透光性を有する合成樹脂製の基材の片面に、同一断面形状の複数の凸部が平行に列設されているとともに、各凸部の表面に微細な凹凸が形成された構成を有することを特徴とする。
【0010】
前記構成の光学部品において、凸部は三角柱を横倒しにしたプリズム形状であることを特徴とする。
この場合、光学部品全体で配光特性が一様となるように、凸部の断面形状は、斜辺を底辺側に向けた直角三角形であることが好ましい。
【0011】
本発明の光学部品によれば、合成樹脂製の基材の片面に複数形成された凸部、好ましくはプリズム形状の凸部の表面に微細な凹凸を形成することで、この基材に入射される光の方向性と拡散性を同時に制御し、プリズム形状と微細な凹凸の組み合わせにより、出射光の配光特性も調整することが可能である。LEDから発する光を一つの光学部品を通して配光調整することで、前記線状或いは帯状の照明光を作り出すことが可能である。
【0012】
前記構成の光学部品により、これに入射するLED光の配光特性が変化する原理は明確ではないが、プリズム形状の凸部だけの場合は、入射した光は、凸部の長手方向に光が進み、凸部長手方向に垂直な方向には進んでいかず、凸部の表面に微細な凹凸があると、その部分に入射した光が凸部表面を透過する光線量が増加することで配光特性が変化すると推察される。
【0013】
また、上記構成の光学部品は、これを成形するための金型製作においても、従来のプリズム加工方法と梨地、シボなどの表面に微細な凹凸を形成する表面処理加工技術を組み合わせることで、比較的簡単に作製することが可能である。
従来この方法が実施されなかった理由としては、プリズム形状の表面に微細な凹凸加工を付す処理をすると、プリズム形状が崩れてプリズムとしての機能である拡散性や指向性が損なわれてしまう可能性があったためと考えられる。本発明は、この機能が損なわれないような最適なプリズム形の凸部の寸法と、凸部表面の微細な凹凸の形状寸法の組み合わせを見出したものでもある。
【0014】
本発明の光学部品は、基材が合成樹脂により板状に形成されてなり、その形状としては特に限定されるものではないが、入射光面と出射光面が同一面とならない方が好ましい。
基材を形成する合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、透光性を有する透明な材料であれば使用可能である。熱硬化性樹脂や、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが使用可能であり、生産性の高さから、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、アクリレート樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、透明ナイロンなどの使用が好ましい。
【0015】
基材の片面に設ける複数の凸部は、同一断面形状及び同一寸法であることが好ましく、基材の一側から他側に亘って平行に列設し、且つ当該列設方向と直交する方向に各凸部が連続するように設けられていることが好ましい。
より好ましい各凸部の形状は、三角柱を横倒しにしたプリズム形状であり、その断面形状は斜辺を基材の底辺側に向けた直角三角形である。
基材に設ける複数の凸部は、基材の入射光面側か、出射光面側のどちらかに形成され、凸部が形成されてない他方の側の片面は平坦な面に形成される。
【0016】
各凸部の表面に形成される微細な凹凸は、各凸部の表面全体に形成されていることが好ましい。
微細な凹凸は、表面にしわ状の凹凸を付したシボ或いは梨地であることが好ましく、その大きさは凸部よりも小さいものである必要がある。凸部よりも大きいサイズの凹凸では、凸部(プリズム)形状が完全に崩れてしまい、配光特性を得ることができない。このため、微細な凹凸のサイズと、凸部の斜面サイズの関係を適切に選定する必要がある。
【0017】
具体的には、前記構成の光学部品における、微細な凹凸の凹部形状の、凸部表面に対する深さは、17μmから30μmの範囲に設けられていることが好ましい。
前記凹部形状の凸部表面からの深さが17μmより浅いと、凸部長手方向と垂直方向への広がりが無くなり、線状或いは帯状に拡散された光がその拡散方向(長手方向)に沿って、光の濃淡が顕著になる傾向があり、他方30μmより深いと、凸部形状が崩れやすいとともに、凸部長手方向へと光が広がって円形状に拡散され、配光性が低下するため前記範囲であることが好ましい。
【0018】
また、隣接する凸部と凸部の頂点間の距離が、0.1mmから0.2mmの範囲に設けられていることが好ましい。
前記頂点間の距離が0.1mmより小さいと、凹形状処理時に凸形状が崩れて成形不良を来しやすく、他方0.2mmよりも大きいと、線状或いは帯状に拡散された光がその拡散方向に沿って、光の濃淡部分が顕著になる傾向があることから前記範囲であることが好ましい。
【0019】
前記構成の光学部品を射出成形などにより成形するための金型は、その一面に、前記基材の片面に列設される複数の凸部を成形するための前記凸部に対応する凹部が複数設けられ、各凹部の表面にエッチングその他の方法により微細な凹凸が形成された形態のものを用いることができる。
金型の材質としては、特に限定されるものではないが、鉄に含有する炭素含有量が2%以下の一般炭素鋼としてSC系、SUS系、SKD系、焼き入れ鋼などがあり、さらに熱伝導性が高く、冷却能力も高い銅合金などがある。
加工性などから一般炭素鋼が好ましく、さらに耐腐食性を備えるとともに、光学部品の場合は鏡面仕上げが必要なことからSUS系が好ましい。
基材の片面にプリズム形状の凸部が成形されるための加工方法としては、金型の一面を、旋盤、プリズム加工用旋盤などを使用して、凸部に対応した凹部形状に加工することで行うことができる。
基材の片面に設ける凸部表面に微細な凹凸が付されるようにするには、前記金型の一面に設けた凹部の表面に微細な凹凸を付する加工を行えばよい。凹部に微細な凹凸を付する加工方法は、特に限定されるものではないが、ドライエッチング、ウェットエッチング、サンドブラストなど種々の方法を用いることができる。
【0020】
本発明の光学部品の用途は、特に限定されるものではない。前述の複写機やFAXに使用される画像読み取り用スキャナーの一次元のライン照明を作り出す、LED光の配光調整手段として用いる他に、屋内外の照明装置や液晶バックライトなどの機器に内蔵される照明手段、広告照明など、LED光を利用する様々な照明機器や装置、照明器具などに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】プリズム部を備えた光学シートにLED光を入射したときの出射光の態様を示した図である。
【
図2】本発明の一例の光学部品にLED光を入射したときの出射光の態様を示した図である。
【
図3】実施例の光学部品の凸部の形成寸法を断面で示した図である。
【
図4】実施例の光学部品の概略全体構成を示した図である。
【
図5】実施例の光学部品の配光特性の評価のための測定系を示した図である。
【
図6】
図5の測定系で測定した光強度の評価基準を説明するための図である。
【
図7】X軸方向の光強度半値角をY軸方向の光強度半値角で除した値が大きい場合の配光特性を説明するための図である。
【
図8】実施例と比較例の光学部品の成形条件、X軸方向とY軸方向の光強度半角値を求めた結果を示した表である。
【
図9】各実施例のX軸方向光強度半値各の測定結果をまとめたグラフである。
【
図10】各実施例のY軸方向光強度半値各の測定結果をまとめたグラフである。
【
図11】各実施例のX軸方向の光強度半値角をY軸方向の光強度半値角で除した値をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下の実施形態と実施例は、本発明を説明するための例示であり、本発明は実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態の光学部品を示している。
この光学部品1は、透光性を有する板状の基材1Aの片面に、断面直角三角形を呈するプリズム形状の複数の凸部11を平行に列設し、且つ凸部11の列設方向と直交する方向に各凸部11が連なるように設けるとともに、各凸部11の表面に微細な凹凸12を一様に付して形成したものである。基材1Aの他側の片面は平坦な面に形成してある。
【0024】
このような光学部品1は、光学部品1の平坦な片面に光を発する一つ以上のLED2と組み合わせて照明装置を構成するが、前記光学部品1の平坦な片面に一つのLED2を対向配置し、LED2から発した光を光学部品1に入射すると、
図2に示されるように、凸部11が形成された片面から出射される出射光OBが線状或いは帯状に連なったライン照明となることが確認されている。
すなわち、図示した光学部品1により、指向性のあるLED光を適度に拡散して長尺な照明光に配光することが可能である。
【実施例0025】
実施例に基づき本発明の光学部品の配光機能を検証した結果を説明する。
【0026】
(実施例1)
先ず、検証に用いる光学部品を成形するための成形用金型を作製した。
成形用金型は、無酸素銅の素材(サイズ50mm×30mm×2mm)を10mm四方の面に区切り、この素材の表面に、ダイヤモンド単結晶バイトを装着した切削加工機で、
図3に示されるように、光学部品1の凸部11の断面が直角三角形のプリズム形状となるように、これに対応する凹部を列設して形成した。
同図に示されるように、隣り合う直角三角形の直角部の頂点間距離(P)は、0.1mmに設定した。この頂点間距離(P)を基準に、直角三角形の斜辺の距離(√2P/2)と、頂部と最凹部の距離(P/2)を設定した。
【0027】
次いで、成形用金型の凹部が形成された側の面に、以下の工程でシボ乃至梨地模様からなる微細な凹凸を形成した。
先ず、第1工程で、成形用金型の凹部が形成された側の面に付着している油、埃などを洗浄などで除去した。
第2の工程で、前記成形用金型の凹部表面に形成される微細な凹凸の、凸形状が形成される予定の箇所に対し防食処理を施した。
第3の工程で、耐食皮膜により被覆されず露出している箇所をエッチング用腐食液により腐食除去し、腐食除去された箇所に微細な凸凹模様の凹形状を形成した。
第4の工程で、エッチング処理が施された成形用金型の耐食皮膜を洗浄液によって溶解除去した。
そして、本実施例では、前記第2、第3の工程において、微細な凹形状の平均深さが17μmから21μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した。
【0028】
製作した金型を射出成形機に取り付けて、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)を射出成形機に投入して溶融射出し、
図4に示される形状の、PMMAからなる樹脂成形品を成形した。樹脂成形品は片側の面にプリズム形状の複数の凸部11が形成され、もう一方の面は平坦な光学部品1に相当する。
【0029】
(実施例2)
前記隣り合う直角三角形の直角部の頂点間距離(P)を0.125mmに設定した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0030】
(実施例3)
同じく頂点間距離(P)を0.15mmに設定した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0031】
(実施例4)
同じく頂点間距離(P)を0.175mmに設定した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0032】
(実施例5)
同じく頂点間距離(P)を0.2mmに設定した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMMからなる樹脂成形品を成形した。
【0033】
(実施例6)
前記微細な凹形状の平均深さが19μmから23μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0034】
(実施例7)
同じく凹形状の平均深さが19μmから23μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例2と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0035】
(実施例8)
同じく凹形状の平均深さが19μmから23μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例3と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0036】
(実施例9)
同じく凹形状の平均深さが19μmから23μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例4と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0037】
(実施例10)
同じく凹形状の平均深さが19μmから23μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例5と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0038】
(実施例11)
前記微細な凹形状の平均深さが25μmから30μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0039】
(実施例12)
前記微細な凹形状の平均深さが25μmから30μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例2と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0040】
(実施例13)
前記微細な凹形状の平均深さが25μmから30μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例3と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0041】
(実施例14)
前記微細な凹形状の平均深さが25μmから30μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例4と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0042】
(実施例15)
前記微細な凹形状の平均深さが25μmから30μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例5と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0043】
(比較例1)
前記隣り合う直角三角形の直角部の頂点間距離(P)を0.08mmに設定し、且つ凹形状の平均深さが25μmから30μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0044】
(比較例2)
凸形状が形成されていない平面形状に、凹形状の平均深さが25μmから30μmとなるように防食処理とエッチング用腐食液の浸漬時間を調整した以外は、実施例1と同様にして形成された成形用金型を用いて、PMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0045】
(比較例3)
表面に凹部を設けず、且つエッチング処理による微細な凹凸も形成しない以外は、実施例1と同サイズの成形用金型を用いて、光学部品1に相当するPMMAからなる樹脂成形品を成形した。
【0046】
実施例1から15及び比較例1から3の光学部品について、配光特性、すなわち出射光の光強度分布を測定した。
測定は、
図5に示されるように、光学部品1の平坦な片面に発光源であるLED2を対向配置してLED光を照射し、光学部品1の出射光側の光強度を測定して行った。
ここで、プリズム形状の凸部11の長手方向と平行方向をY軸、プリズム形状の凸部11の長手方向と垂直方向をX軸、光学部品1の厚さ方向をZ軸方向とし、光学部品1の平面側から白色LED光を入射させ、凸部11が形成された側の面から出射された光の強度を測定した。測定としては、X-Z面内とY-Z面内で、それぞれZ軸に対して以下の角度範囲とピッチで測定した。
〔測定範囲 0~±45°、測定ピッチ 1°〕
測定機は、ニッカ電測社製の光強度測定器(GP-4)を用いた。
【0047】
各実施例と比較例の光学部品について、前記測定範囲及びピッチで測定した結果に基づき、
図6に示されるように、Z軸方向(0°)の光強度Aに対し、その半分の光強度(A/2)となるX軸方向とY軸方向の測定角度をそれぞれ求めた。
【0048】
また、配光特性として、前記X軸方向の光強度半値角をY軸方向の光強度半値角で除した配光特性値を求めた。
図7は、LED光が照射されたときの実施例の光学部品1によるX軸、Y軸両方向の配光状態を示しているが、前記配光特性値(X/Y)が大きい程、X軸方向の光の広がりが大きくなり、配光特性としては良好で、スキャナーなどの線状光源に使用するのに好適となる。
【0049】
前記各実施例と比較例の光学部品の成形条件、X軸方向とY軸方向の光強度半角値、配光特性値を求めた結果を
図8中の表1と表2に示す。各実施例と比較例で成形した樹脂成形品のプリズム形状の成形面を目視で観察した結果も併せて示す。
また、各実施例のX軸方向の光強度半角値と凸部のピッチの相関を
図9に、Y軸方向の光強度半角値と凸部のピッチの相関を
図10に、配光特性値と凸部のピッチの相関を
図11にそれぞれ示す。
【0050】
表1、表2に示すとおり、各実施例において成形された樹脂成形品である光学部品1のプリズム形状の形成面は、何れの実施例のものも、所定ピッチのプリズム形状の表面に微細な凹凸が一様に配置された形状に形成されており、凹凸の配置が偏っていたり凹凸が潰れたりしている部分はなかった。
また、各実施例において、前記
図5に示された測定系でLED光を光学部品1に入射させたところ、凸部11が形成された側の面から出射された光は略楕円形状乃至細長い楕円状に配光させ、X軸とY軸方向の光強度を測定することが可能であった。測定した光強度の半角値は、表1、表2に示すとおりである。
図11は各実施例のX軸方向の光強度半値角をY軸方向の光強度半値角で除した値である配光特性値とプリズムピッチとの相関を示しているが、同図から明らかなように、微細な凹凸の凹形状の部分の深さを17μmから21μm、19μmから23μm、25μmから30μmの各範囲に設定した何れの場合も、プリズムピッチ(頂点間距離:P)が0.15mmであったときに配光特性値は大きな値となり、点状光をライン状に近い線状光に配光する性能が得られた。
【0051】
一方、比較例1は、成形された樹脂成形品が、プリズム形状が崩れたものとなり、X軸とY軸方向の光強度を測定することができなかった。比較例2は、成形された樹脂成形品は、外観上はプリズム形状に問題はなかったが、LED光を入射したときの出射光は円形形状であり、楕円乃ライン状の配光は得られなかった。また、比較例3では、プリズム形状を一面に有する樹脂成形品は得られたが、X軸とY軸方向の光強度を測定することができなかった。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
基材の片面に複数の平行に列設された凸部の長手方向と平行な方向をY軸、前記片面においてY軸と垂直な方向をX軸としたときに、前記基材の凸部が設けられた側とは反対側に入射した円形断面のLED照明光が、前記凸部が設けられた側から、前記X軸の方向に長い楕円形状の断面の照明光に調整されて出射されることを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
前記構成の光学部品を射出成形などにより成形するための金型は、その一面に、前記基材の片面に列設される複数の凸部を成形するための前記凸部に対応する凹部が複数設けられ、各凹部の表面にエッチングその他の方法により微細な凹凸が形成された形態のものを用いることができる。
金型の材質としては、特に限定されるものではないが、鉄に含有する炭素含有量が2%以下の一般炭素鋼としてSC系、SUS系、SKD系、焼き入れ鋼などがあり、さらに熱伝導性が高く、冷却能力も高い銅合金などがある。
加工性などから一般炭素鋼が好ましく、さらに耐腐食性を備えるとともに、光学部品の場合は鏡面仕上げが必要なことからSUS系が好ましい。
基材の片面にプリズム形状の凸部が成形されるための加工方法としては、金型の一面を、旋盤、プリズム加工用旋盤などを使用して、凸部に対応した凹部形状に加工することで行うことができる。
基材の片面に設ける凸部表面に微細な凹凸が付されるようにするには、前記金型の一面に設けた凹部の表面に微細な凹凸を付する加工を行えばよい。凹部に微細な凹凸を付する加工方法は、特に限定されるものではないが、ドライエッチング、ウェットエッチング、サンドブラストなど種々の方法を用いることができる。
また、前記構成の光学部品は、同一断面形状の複数の凹部が平行に列設されているとともに、前記各凹部の表面全体に微細な凹形状と凸形状からなる凹凸が形成されていて、前記微細な凹凸の凹形状の部分の深さが17μmから30μmの範囲に設けられた金型に、透光性を有する合成樹脂材料を溶融射出して成形する方法により製造することができる。