(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000110
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】扉の防水支持構造
(51)【国際特許分類】
E06B 7/36 20060101AFI20231225BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
E06B7/36 A
E06B7/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098674
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】足立 太―
(72)【発明者】
【氏名】竹鼻 恭一
(72)【発明者】
【氏名】鶴 潔
(72)【発明者】
【氏名】吉森 健
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA08
2E036EB07
2E036GA02
2E036HA03
2E036HB14
(57)【要約】
【課題】吊元側端部付近における指の挟まれ事故を防止でき、かつ、扉の遮水性を備える扉の防水支持構造を提供する。
【解決手段】扉の防水支持構造1は、第1空間R1と、これに隣接する第2空間R2とを区切る扉構造に用いる、扉の防水支持構造であって、中心軸31を中心として回動する扉10と、扉10から所定の間隔を空けて設けられ、断面形状が略L字状であって、中心軸31に沿った向きに延在する扉受枠部材20と、第1空間R1に面する扉の表面である第1扉平面部11で扉10に接するように、扉受枠部材20に設けられるパッキン部材40と、を有し、第1扉平面部11が扉受枠部材20に最も接近した間隔である第1間隔L1と、吊元側端部13が扉受枠部材20に最も接近した間隔である第2間隔L2とが、人の手の指先の太さよりも大きく設定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間と、これに隣接する第2空間とを区切る扉構造に用いる、扉の防水支持構造であって、
中心軸を中心として回動する扉と、
前記扉から所定の間隔を空けて設けられ、断面形状が略L字状であって、前記中心軸に沿った向きに延在する扉受枠部材と、
前記第1空間に面する前記扉の表面である第1扉平面部又は前記第2空間に面する前記扉の表面である第2扉平面部と、前記扉の吊元側の表面である吊元側端部との少なくとも一方で前記扉に接するように、前記扉受枠部材に設けられるパッキン部材と、
を有し、
前記第1扉平面部又は前記第2扉平面部が前記扉受枠部材に最も接近した間隔である第1間隔と、前記吊元側端部が前記扉受枠部材に最も接近した間隔である第2間隔とが、人の手の指先の太さよりも大きく設定されている、扉の防水支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の扉の防水支持構造において、
前記パッキン部材は、中空形状からなり、前記パッキン部材と前記扉との間に人の手の指先の太さの寸法の物体を挟み込んだ際に、人の指先の太さの寸法分、凹んで変形すること、
を特徴とする扉の防水支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、扉の防水支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒンジの軸部を中心に回動する形態(開き戸タイプ)の扉では、吊元側の端部(以下、吊元側端部と呼称する)付近において扉と扉の枠体との間に人の指先が挟まれ(以下「指の挟まれ事故」という)、最悪の場合には指の切断を招く重傷を負うおそれがある。いうまでもなく人間の社会生活において指の機能は極めて重要であり、この安全性を担保すべき社会的要請は高い。
また、快適性、清掃性、衛生上の観点から浴室ドアとしての水密性能を確保することもまた必要である。加えて、住宅やホテルの浴室には高い意匠性が求められることが多く、その見えがかりにも配慮する必要がある。
【0003】
したがって、浴室等に設けられ、扉の吊元側に対し水がかかる事態が想定される空間に設ける扉において、吊元側端部付近における指の挟まれ事故を防止し、かつ、扉の遮水性を実現することが望まれている。このような扉に関する技術が特許文献1から特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62-107081号公報
【特許文献2】特開2001-107637号公報
【特許文献3】特開2003-321967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、人の指及び指先が、吊元側端部付近と扉の枠体との間に入らないように物理的にカバーする山形等の「本体」を設けるものである。しかし、大型で自重が大きくなりがちな「本体」には扉の開け閉めの度に、繰り返しの加重や変形が生じることから、耐久性に不安がある。もし「本体」に亀裂や割れが生じると、このすき間から吊元側端部付近と扉の枠体との間に人の指及び指先が侵入可能となり、結局、安全上を確保できないおそれがあった。
【0006】
特許文献2は、「遮蔽部片」が、吊元側端部付近と扉の枠体との間に指及び指先が入ることを防ぐ機能を一部期待し得るが完全とはいい難く、また、特許文献2では、防水の作用機序は全く生じていない。
【0007】
特許文献3は、「隙間」に主に子供の指及び指先が「戸当たり部」の位置まで達しないように、子供の指及び指先と同程度の長さの「規制部材」と、「緩衝材(クッション材)」とを設けている。しかしこの場合でも、例えば大人の長い指が吊元側端部付近に達する事態は絶無ではないので、安全性に不安が残る。つまり、特許文献3の構造は、指を挟む箇所に指が入りにくい構造ではあるが、指が入る可能性は依然として残っており、吊元側端部付近に指が入ったまま扉が閉鎖した場合、指の挟まれ事故は防げない。また、特許文献3では、防水の作用機序までは考慮されていない。
【0008】
本開示の課題は、吊元側端部付近における指の挟まれ事故を防止でき、かつ、扉の遮水性を備える扉の防水支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
第1の開示は、例えば、
図3、
図4等のように、第1空間(R1)と、これに隣接する第2空間(R2)とを区切る扉構造に用いる、扉の防水支持構造(1)であって、中心軸(31)を中心として回動する扉(10)と、前記扉(10)から所定の間隔を空けて設けられ、断面形状が略L字状であって、前記中心軸(31)に沿った向きに延在する扉受枠部材(20)と、前記第1空間(R1)に面する前記扉の表面である第1扉平面部(11)又は前記第2空間(R2)に面する前記扉の表面である第2扉平面部(12)と、前記扉(10)の吊元側の表面である吊元側端部(13)との少なくとも一方で前記扉(10)に接するように、前記扉受枠部材(20)に設けられるパッキン部材(40)と、を有し、前記第1扉平面部(11)又は前記第2扉平面部(12)が前記扉受枠部材(20)に最も接近した間隔である第1間隔(L1)と、前記吊元側端部(13)が前記扉受枠部材(20)に最も接近した間隔である第2間隔(L2)とが、人の手の指先の太さよりも大きく設定されている、扉の防水支持構造(1)である。
【0011】
第2の開示は、例えば、
図3、
図4、
図5等のように、第1の開示に記載の扉の防水支持構造(1)において、前記パッキン部材(40)は、中空形状からなり、前記パッキン部材(40)と前記扉(10)との間に人の手の指先の太さの寸法の物体を挟み込んだ際に、人の指先の太さの寸法分、凹んで変形すること、を特徴とする扉の防水支持構造(1)である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、吊元側端部付近における指の挟まれ事故を防止でき、かつ、扉の遮水性を備える扉の防水支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示による扉の防水支持構造1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】扉の防水支持構造1を第1空間R1側(脱衣室側)から見た正面図である。
【
図3】
図2中の矢印A-Aの位置で扉の防水支持構造1を切断した水平断面図である。
【
図4】
図1中の範囲Bを拡大して示す部分拡大斜視図である。
【
図5】パッキン部材40と扉10との間に人の手の指先が挟まった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0015】
(実施形態)
図1は、本開示による扉の防水支持構造1の実施形態を示す斜視図である。
図1は、扉10を閉じた状態を示している。
図2は、扉の防水支持構造1を第1空間R1側(脱衣室側)から見た正面図である。
図2は、扉10を閉じた状態を示している。
図3は、
図2中の矢印A-Aの位置で扉の防水支持構造1を切断した水平断面図である。
図3は、扉10を閉じた状態を示しており、扉10が開いた位置を二点鎖線で併記した。
図4は、
図1中の範囲Bを拡大して示す部分拡大斜視図である。
図4は、扉10を閉じた状態を示している。
【0016】
なお、
図1から
図3を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において規定する具体的な数値には、一般的な誤差範囲は含むものとして扱うべきものである。すなわち、±10%程度の差異は、実質的には違いがないものであって、本件の数値範囲をわずかに超えた範囲に数値が設定されているものは、実質的には、本件開示の技術的範囲内のものと解釈すべきである。
また、
図2における紙面上下方向、すなわち、中心軸31の延在方向が上下方向(鉛直方向)である。また、
図2における紙面奥行き方向が第1空間R1と第2空間R2側との境界となる平面に直交する方向であって、この方向を前後方向とも呼称することとし、この前後方向において紙面手前側が第1空間R1側、奥側を第2空間R2側である。
また、図中には、説明の便宜のためX、Y、Zの直交座標を設け、以下の説明ではこの座標を用いて各部の向き等の説明を行う。上述した上下方向(鉛直方向)をY方向とし、上述した前後方向をZ方向とし、
図2における水平方向であって、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とした。
【0017】
本実施形態の扉の防水支持構造1は、第1空間R1と、これに隣接する第2空間R2とを区切る扉構造に用いるものであり、本実施形態では第1空間R1が脱衣室であり、第2空間R2が浴室である例を例示する。なお、第1空間R1が浴室であり、第2空間R2が脱衣室である配置としてもよい。
本実施形態の扉の防水支持構造1は、扉10と、扉受枠部材20と、ヒンジ30と、パッキン部材40と、パッキン位置調整部材50とを備えている。
【0018】
扉10は、第1空間R1と、第2空間R2とを区切る扉であり、中心軸31を中心として回動する開き戸タイプの扉である。扉10を構成する材料は、ガラス板、アクリル樹脂等による樹脂板、金属板、木製の板等、公知の扉に用いられている材料を適宜用いることができる。本実施形態では、扉10には、厚さ10mmのガラス板を用いている。
扉10が閉じた状態で第1空間に面する扉10の表面、すなわち、-Z側の面を第1扉平面部11と呼称し、第2空間に面する扉10の表面、すなわち、+Z側の面を第2扉平面部12と呼称する。また、扉10の中心軸31に近い側で中心軸31に沿って鉛直方向に延在する端部を吊元側端部13と呼称する。
本実施形態の扉10は、
図3中の矢印Cで示すように中心軸31を中心として略86°の範囲で回動する。なお、扉10の回動する範囲は、上記例示した角度範囲に限らず、適宜変更可能である。
また、扉10には、開閉時に利用者が手で掴むことができる取っ手14が第1扉平面部11と第2扉平面部12との双方に設けられている。
【0019】
扉受枠部材20は、扉10から所定の間隔を空けて扉10の-X側において扉10に沿って設けられ、中心軸31に沿った向き、すなわち鉛直方向に延在している。扉受枠部材20は、中心軸31に直交する向きで切断した断面形状が略L字状に形成されている。より具体的には、扉受枠部材20は、中心軸31に直交する向きで切断した断面形状において、前後方向(Z方向)に延在する柱状部21と、柱状部21から水平方向(+X方向)に突出して延在し、正面(-Z側)から見たときにヒンジ30の中心軸31及び吊元側端部13を隠す隠蔽部22とを有している。
また、隠蔽部22は、その+X側の端部に、扉10側(+Z側)へ突出して隠蔽部22と扉10との間隔を所定の間隔に設定して指の挟まれ事故を防止する指挟み防止部23を備えている。
扉受枠部材20を構成する材料は、木材、金属材、樹脂材等、公知の扉用の枠に用いられている材料を適宜用いることができる。本実施形態の扉受枠部材20は、耐水性(耐腐食性)を考慮してステンレス鋼を用いて構成されている。
なお、本実施形態では理解を容易にするため、扉受枠部材20は、柱状部21と、隠蔽部22と、指挟み防止部23とが一体で設けられた中実材として図示した。しかし、例えば、扉受枠部材20は、柱状部21と、隠蔽部22と、指挟み防止部23との内の一部を別部材として構成してもよいし、金属の押出し成形やプレス加工等を用いて中空の構成としてもよい。
【0020】
ヒンジ30は、扉受枠部材20に固定されており、扉10を回動可能に支持している。ヒンジ30は、扉10の-X側の端部(吊元側端部13)に3箇所間隔を空けて配置されている。
ヒンジ30は、中心軸31と、固定腕部32と、可動腕部33とを備えている。
【0021】
中心軸31は、固定腕部32と可動腕部33とが相対的に回転移動可能となるように支持する軸であり、鉛直方向(Y方向)に延在している。
【0022】
固定腕部32は、一端が中心軸31に設けられ、他端が扉受枠部材20に固定されており、扉10の開閉動作時においても移動せずに固定されている。
【0023】
可動腕部33は、一端が中心軸31に設けられ、他端が扉10に設けられており、扉10の開閉動作時において扉10と共に移動する。可動腕部33は、第1空間R1(脱衣室)側に設けられた第1可動腕部33aと、第2空間R2(浴室)側に設けられた第2可動腕部33bとを有している。第1可動腕部33aと第2可動腕部33bとは、不図示のネジやボルト等の締結部材によって扉10を貫通して両者が固定されることにより、扉10を開閉可能に支持している。しかし、第1可動腕部33aと第2可動腕部33bが扉10を固定する方法はこれに限られず、扉を安全に支持できる構造であればよい。
【0024】
パッキン部材40は、吊元側端部13で扉10に接するように鉛直方向(Y方向)に延在して扉受枠部材20に取り付けられている。
パッキン部材40は、
図3の水平断面に示すように、断面形状が中空形状の矩形形状に形成されている。パッキン部材40は、例えば、可撓性を備えたゴムにより形成することができる。実施形態のパッキン部材40は、
図3の水平断面における外形形状が20mm×20mmの正方形のゴムにより形成されている。
【0025】
パッキン部材40が吊元側端部13で扉10に接することにより、第2空間R2(浴室)側からの水が第1空間R1(脱衣室)側に漏れることを防止し、扉10の遮水性を確保している。扉10の遮水性を確保するためには、パッキン部材40と扉10とが接する部分の短手方向の接触幅W(
図3参照)は、3mm以上、8mm以下であることが望ましい。接触幅Wが3mm未満であると水漏れを防ぐことが難しくなる。また、接触幅Wが8mmを超えるとパッキン部材40を扉10へ当て付ける接触圧(単位面積当たりの接触力)を水漏れを防ぐために必要な接触圧としたときにパッキン部材40の全体から扉10に作用する摩擦力が過大となり、パッキン部材40が早期に劣化したり、扉10の表面にパッキンの材質が付着して汚れたりするという不都合が生じる。なお、短手方向とは、扉10とパッキン部材40とが接触している接触面の長手方向に対する短手方向であり、本実施形態では、X方向である。
【0026】
また、パッキン部材40は、パッキン部材40と扉10との間に人の手の指先の太さの寸法の物体を挟み込んだ際に、人の指先の太さの寸法分、部分的に凹んで変形する。この点についての詳細は、後述する。
【0027】
なお、本実施形態では、パッキン部材40は、第1扉平面部11で扉10に接する構成を例示した。これに限らず、例えば、パッキン部材40は、第1扉平面部11と吊元側端部13都の少なくとも一方で扉10に接すればよく、これらいずれかで接触することにより遮水性を確保できる。また、例えば、パッキン部材40は、第2扉平面部12と接するように設けられていてもよいし、吊元側端部13と第1扉平面部11との双方で接するように設けられていてもよい。
【0028】
パッキン位置調整部材50は、隠蔽部22とパッキン部材40との間で上下方向(Y方向)に所定の厚さを維持して延在して配置されている。パッキン位置調整部材50を設けたので、パッキン部材40と扉10との接触圧を簡単に調整することができる。すなわち、パッキン位置調整部材50の厚さを厚くすればパッキン部材40と扉10との接触圧を高くすることができ、パッキン位置調整部材50の厚さを薄くすればパッキン部材40と扉10との接触圧を低くすることができる。
なお、パッキン部材40と扉10との接触圧を調整する必要がない場合には、パッキン位置調整部材50を省略してもよい。
【0029】
本実施形態の説明では図示しないが、扉受枠部材20に繋がって扉10の上下のそれぞれに、上枠部材、下枠部材が設けられており、また、扉10の吊元側端部13と対向する他端部に沿って縦枠部材が設けられている。これら上枠部材、下枠部材、縦枠部材のいずれにも、扉10が閉じた状態で水漏れを防止する防水構造(例えばゴム製のパッキン)を備えている。
【0030】
上述した構成を備える本実施形態の扉の防水支持構造1では、吊元側端部付近における指の挟まれ事故を効果的に抑制している。この点について、以下説明する。
図3及び
図4に示すように、第1扉平面部11が扉受枠部材20に最も接近した間隔を第1間隔L1とし、吊元側端部13が扉受枠部材20に最も接近した間隔を第2間隔L2とする。本実施形態の扉の防水支持構造1では、これら第1間隔L1及び第2間隔L2が、人の手の指先の太さよりも大きく設定されている。したがって、これら第1間隔L1又は第2間隔L2の部分に人の手の指先が誤って挿入されてしまったとしても、指が圧迫等されることがなく、指の挟まれ事故を防止することができる。
【0031】
また、パッキン部材40が上下方向(Y方向)に沿って切れ目なく延在していることにより、通常の開扉状態においては、これによって第2間隔L2へ指先が侵入しにくい構成となっている点でも、指の挟まれ事故を防止することができ、かつ、余計な部材や隙間が見えにくいことにより意匠性も高めることができる。
【0032】
図5は、パッキン部材40と扉10との間に人の手の指先が挟まった状態を示す図である。
図5は、
図3と同様な断面において、パッキン部材40が指先によって変形している状況を示している。
図5に示すようにパッキン部材40は、パッキン部材40と扉10との間に人の手の指先の太さの寸法の物体を挟み込んだ際に、人の手の指先の太さの寸法分、部分的に凹んで変形する。すなわち、仮に人の手の指先がパッキン部材40と扉10との間に挟まったとしても、パッキン部材40が変形することにより指が圧迫等されることがなく、指の挟まれ事故を防止することができる。
また、
図5の例では第1間隔L1の部分に人の手の指先が挿入されているが、扉10と扉受枠部材20との間で指が潰されるといったこともない。
【0033】
ここで、人の手の指先の太さとしては、最大で15mmとする知見があることから、第1間隔L1及び第2間隔L2は、15mmよりも大きいことが望ましく、17mmよりも大きいことがより望ましく、20mmよりも大きいことがさらに望ましい。
【0034】
また、パッキン部材40と扉10との間に人の手の指先の太さの寸法の物体を挟み込んだ際に、人の手の指先の太さの寸法分、部分的に凹んで変形すると説明したが、パッキン部材40を変形させるために大きな力が必要であると、指先に負担がかかることが想定される。よって、パッキン部材40は比較的小さな押圧力によって変形可能であることが望ましい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の扉の防水支持構造1によれば、「指が入りにくいこと」と、「指が入っても怪我をしないこと」と、「水を漏らさないこと」との3つの要求を満たした構造を実現しており、安全性と、機能性と、美観性との全てを備えた構造を実現している。
また、本実施形態の扉の防水支持構造1は、「指が入っても怪我をしない構造、すなわち、隙間(クリアランス)を確保する構造」と、「水を漏らさない構造、すなわち、隙間をつくらない構造」という、2つの相反する要素を両立している。つまり、本実施形態の扉の防水支持構造1は、安全性と止水性といった最重要課題を解決している。そして、例えば、高い意匠性が求められる住宅やホテルの浴室等で使用されるガラステンパードア等において、この最重要課題を最小限の構成部材により解決し、「ミニマルな見えがかり」を実現することができる点において画期的な発明である。
このように、本実施形態の扉の防水支持構造1によれば、吊元側端部付近における指の挟まれ事故を防止でき、かつ、扉の遮水性を備える扉の防水支持構造を提供することができる。
【0036】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0037】
(変形形態1)実施形態において、脱衣室と浴室との境界に配置される扉10を例に挙げて説明した。これに限らず、本開示の扉の防水支持構造は、例えば、プールと更衣室との境界等、遮水性が必要な個所であれば、どのような場所に設置してもよい。また、本開示の扉の防水支持構造は、遮水性を備えることからある程度の気密性も備えているので、遮水性が必要ではなくともある程度の気密性を要求される場所に適用してもよい。例えば、ペットショップにおける商品販売エリアと生体育成エリアとの境界等に配置してもよい。
【0038】
(変形形態2)実施形態において、パッキン部材40は断面形状が矩形形状である例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、パッキン部材40は断面形状が円形状や楕円形状等、他の形状であってもよい。
【0039】
(変形形態3)各実施形態において、実施形態において、パッキン部材40は中空形状である例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、パッキン部材40は中実形状であってもよいし、スポンジ状(多孔質)の材料によって形成されていてもよい。
【0040】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0041】
1 変形形態
10 扉
11 第1扉平面部
12 第2扉平面部
13 吊元側端部
14 取っ手
20 扉受枠部材
21 柱状部
22 隠蔽部
23 指挟み防止部
30 ヒンジ
31 中心軸
32 固定腕部
33 可動腕部
33a 第1可動腕部
33b 第2可動腕部
40 パッキン部材
50 パッキン位置調整部材