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特開2024-1100照射によって不活化されたポリオウイルス、それを含む組成物、および調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001100
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】照射によって不活化されたポリオウイルス、それを含む組成物、および調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/13 20060101AFI20231226BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K39/13 ZNA
A61P31/14
A61K39/39
C12N7/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171080
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2020552837の分割
【原出願日】2019-03-29
(31)【優先権主張番号】62/650,406
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512193263
【氏名又は名称】バイオロジカル・ミメティックス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】501051125
【氏名又は名称】ザ ヘンリー エム. ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドヴァンスメント オブ ミリタリー メディシン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】トビン グレゴリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】デイリー マイケル ジェイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリオウイルス免疫原として有用な組成物、およびそれを調製するための方法を提供する。
【解決手段】ポリオウイルス免疫原であって、前記ポリオウイルス免疫原は不活化されていて、ここで前記ポリオウイルス免疫原は、ポリオウイルス血清型1、2、および/または3の弱毒化および/または神経病原株を含む、ポリオウイルス免疫原である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は不活化されていて、
ここで前記ポリオウイルス免疫原は、ポリオウイルス血清型1、2、および/または3の弱毒化および/または神経病原株を含む、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項2】
請求項1のポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は中和抗体を刺激し(例えば、少なくとも約8、9、10、11、12、13、14、15、または16の中和抗体価)、それは標準的なWistarラットモデルにおいて判定されてもよい、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項3】
請求項1または2のポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は、通常のワクチン用量よりも少ない用量で、通常のヒト用量の1/32または1/64よりも少なくてもよい用量で、および/または、0.125D抗原量の用量で、中和抗体を刺激する、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかのポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は、現行の市販ポリオワクチン(例えば、IPVおよび/またはOPV)によって提供される中和抗体の量と実質的に同様の量(例えば、±20%内)の中和抗体を刺激し、それは標準的なWistarラットモデルにおいて判定されてもよい、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかのポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は、現行の市販ポリオワクチン(例えば、IPVおよび/またはOPV)よりも多い量(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍)の中和抗体を刺激し、それは標準的なWistarラットモデルにおいて判定されてもよい、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかのポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は、現行の市販ポリオウイルスワクチン(例えば、電離放射線を用いて不活化されたものではない不活化ポリオウイルスワクチン(例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはホルマリン不活化ポリオワクチン))と同等またはそれよりも高い量の中和力価(例えば、約8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれよりも高い)を刺激する、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかのポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は、40未満のD抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、8未満のD抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV2血清型、および/または32未満のD抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV3血清型を含む用量で、8の力価と同等またはそれよりも高い量の中和力価を刺激する、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかのポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は、電離放射線(例えば、γ線放射(例えば、Co-60)および/またはX線放射)および/またはUV放射(例えば、UVC放射であって約100~約280nmの波長を有してもよい)によって不活化されたものである、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかのポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原のD抗原含有量は、不活化前の精製ウイルスのD抗原含有量と比較して、(例えば、照射不活化処理によって)約50%未満(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%未満)減少する、
ポリオウイルス免疫原。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかのポリオウイルス免疫原を含む、
組成物。
【請求項11】
請求項10の組成物であって、
前記組成物は、ポリオウイルスの少なくとも2種の異なる弱毒化および/または神経病原株を含む、
組成物。
【請求項12】
請求項10または11の組成物であって、
前記組成物は、ポリオウイルス血清型1、2、および3の弱毒化株を含む、
組成物。
【請求項13】
ポリオウイルス血清型1、2、および/または3の弱毒化および/または神経病原株を含む不活化免疫原性組成物であって、
ウイルス感染力が電離放射線および/またはUV放射線によって消失されていて、エピトープを含むウイルスタンパク質は、マンガンイオン(Mn2+)、ペプチド、およびバッファー(例えば、リン酸バッファーおよび/またはTrisバッファーおよび/またはMESバッファーおよび/またはHEPESバッファー)を含む化学複合体を用いて損傷から保護されている、
免疫原性組成物。
【請求項14】
請求項13の免疫原性組成物であって、
前記のポリオウイルスの弱毒化および/または神経病原株は、γ照射によって不活化されている、
免疫原性組成物。
【請求項15】
請求項13または14の免疫原性組成物であって、
前記のポリオウイルスの弱毒化および/または神経病原株は、紫外線(例えば、UVC)によって不活化されている、
免疫原性組成物。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか一項の免疫原性組成物であって、
前記のポリオウイルスの弱毒化および/または神経病原株は、紫外線およびγ照射の両方の処理によって不活化されている、
免疫原性組成物。
【請求項17】
請求項10から12のいずれか一項の組成物または請求項13から16のいずれか一項の免疫原性組成物であって、
前記ポリオウイルス血清型は、凍結乾燥を用いて乾燥されたものである、
組成物または免疫原性組成物。
【請求項18】
請求項10から12のいずれか一項の組成物または請求項13から17のいずれか一項の免疫原性組成物であって、
前記ポリオウイルス血清型は、噴霧乾燥を用いて乾燥されたものである、
組成物または免疫原性組成物。
【請求項19】
請求項10から12のいずれか一項の組成物または請求項13から18のいずれか一項の免疫原性組成物であって、
ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、モノホスホリルリピドA、スクアレン、サポニンおよび/またはその誘導体(例えば、QS-21)、フラジェリン、CpG、リポ多糖、および/または油-および-水エマルションをさらに含む、
組成物または免疫原性組成物。
【請求項20】
請求項1から9のいずれか一項の免疫原または請求項10から19のいずれか一項の組成物を含む、
ワクチン。
【請求項21】
不活化ポリオウイルス免疫原を産生する方法であって、
前記方法は、
ポリオウイルスを、二価のカチオン、ペプチド(例えば、デカペプチド)、およびバッファーに曝露するステップ;それから、
前記ポリオウイルスを不活化させるのに十分な量で前記ポリオウイルスを電離放射線および/または紫外線放射に曝露するステップ(例えば、約25、30、35または40kGy~約45、50、または55kGyの量の電離放射線に前記ポリオウイルスを曝露するステップ、および/または、約1、2、3、4、または5mW/cmを放射するUVCランプに約1秒~約60秒間、前記ポリオウイルスを曝露するステップ)を含み、
それにより、前記不活化ポリオウイルス免疫原を提供する、
方法。
【請求項22】
請求項21の方法であって、
前記ポリオウイルスは、1または複数の弱毒化されたSabin株(単数または複数)を含む、
方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、
前記ポリオウイルスは、S19株(単数または複数)のような1または複数の弱毒化株を含む、
方法。
【請求項24】
請求項21から23のいずれか一項の方法であって、
前記ポリオウイルスは、ポリオウイルス血清型1、2、および/または3の弱毒化株を含む、
方法。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか一項の方法であって、
前記ポリオウイルスを前記の二価のMnカチオン、ペプチド、およびバッファーに曝露するステップは、前記ポリオウイルスを、前記の二価のカチオン(Mn2+)、ペプチド、およびバッファーを含む組成物と組み合わせて、組み合わせられた組成物を提供するステップを含み、前記の組み合わせられた組成物を電離放射線および/または紫外線放射に曝露してもよい、
方法。
【請求項26】
請求項21から25のいずれか一項の方法であって、
前記の二価のカチオンはマンガンであり、ここで前記の二価のカチオンは塩化マンガンによって提供されてもよい、
方法。
【請求項27】
請求項21から26のいずれか一項の方法であって、
前記ペプチドは、HMLK(配列番号2)、HMHMHM(配列番号3)、および/またはDEHGTAVMLK(配列番号1)である、
方法。
【請求項28】
請求項21から27のいずれか一項の方法であって、
前記バッファーはリン酸バッファーを含み、それはリン酸カリウムバッファーであってもよい、
方法。
【請求項29】
請求項25から28のいずれか一項の方法であって、
前記組成物は、約1mM~約10mMの濃度のMnCl、約0.5mM~約10mMの濃度のペプチド(例えば、HMLK[配列番号2]、HMHMHM[配列番号3]、および/またはDEHGTAVMLK[配列番号1])、および、約10mM~約100mMの濃度のリン酸バッファー(例えば、pH7.2)を含む、
方法。
【請求項30】
請求項21から29のいずれか一項の方法であって、
前記方法は、前記ポリオウイルスを電離放射線に曝露して、それから、前記ポリオウイルスを紫外線放射(例えば、UVC)に曝露するステップを含み、それは前記ポリオウイルスを少なくとも部分的に不活化させるのに十分な量であってもよい、
方法。
【請求項31】
請求項21から30のいずれか一項の方法であって、
前記ポリオウイルスを電離放射線および/または紫外線放射に曝露するステップの前に、前記ポリオウイルスと接触する空気および/または前記ポリオウイルスを含むコンテナー内の空気を、少なくとも部分的に非反応ガス(例えば、アルゴン)で置き換えるステップをさらに含み、
ここで、空気を少なくとも部分的に置き換えるステップは、酸素の含有量を約50%以上減少させるステップを含んでもよい、
方法。
【請求項32】
請求項25から31のいずれか一項の方法であって、
前記組成物中および/または前記の組み合わせられた組成物中に存在する鉄の量を減少させるステップをさらに含む、
方法。
【請求項33】
請求項25から32のいずれか一項の方法であって、
前記の組成物および/または組み合わせられた組成物は、1または複数の賦形剤および/またはペプチド(例えば、HMHMHM[配列番号3]、HMLK[配列番号2]など)をさらに含む、
方法。
【請求項34】
請求項21から33のいずれか一項の方法であって、
前記不活化ポリオウイルス免疫原を乾燥させるステップをさらに含み、それは、前記不活化ポリオウイルス免疫原を凍結-乾燥させるステップ(freeze-drying)(例えば凍結乾燥させるステップ(lyophilizing))および/または噴霧乾燥させるステップであってもよい、
方法。
【請求項35】
請求項21から34のいずれか一項の方法であって、
前記ポリオウイルスを電離放射線に曝露するステップの間、前記ポリオウイルスのエピトープ(例えば、中和エピトープ)の少なくとも一部は保護されていて、それは、前記の二価のカチオン、ペプチド、およびバッファーによる保護であってもよい、
方法。
【請求項36】
請求項21から35のいずれか一項の方法であって、
前記ポリオウイルスのエピトープ(例えば、中和エピトープ)の少なくとも一部は、前記不活化ポリオウイルス免疫原において損傷されず、および/または活性である(例えば、中和抗体を刺激する)、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の陳述]
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下で、2018年3月30日に出願された米国仮出願番号62/650,406の利益を主張し、その内容全体は本明細書中に参照により援用される。
【0002】
[政府支援の陳述]
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号2R44AI120260-02および1R43AI120260-01、ならびに、国防総省によって授与されたHDTRA1-17-C-0030およびHDTRA1-15-P-0034の下で、政府支援によってなされた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
[配列リストの電子出願に関する陳述]
連邦規則法典第37巻1.821条の下で提出されたASCIIテキスト形式の配列リストであって、2019年3月27日に作成されてEFS-Webを介して出願された、893バイトのサイズの1472-2WO_ST25.txtと題されたものが、紙のコピーの代わりに提供される。この配列リストは、その開示に関して参照により本明細書中に援用される。
【0004】
[分野]
本発明は、照射によって不活化されたポリオウイルス免疫原を含む組成物、ならびに、それを調製するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
[背景]
化学的に不活化されたポリオワクチンおよび弱毒化生ポリオワクチンは、防御免疫を刺激して世界中の大部分の国々から小児麻痺を根絶させるのに効果的である。最初のポリオワクチンである不活化ポリオワクチン(IPV)は、Jonas Salk博士によって開発されたものであり、ホルマリン-不活化ポリオウイルスの1型、2型、および3型からなり、1955年に最初に用いられた。2番目のポリオワクチンは経口ポリオワクチン(OPV)であり、Albert Sabin博士によって開発されたものであり、病因に関して弱毒化されている生ポリオウイルスの1型、2型、および3型からなる。OPVはIPVと比較して低コストであるため主要なワクチンとなり、世界的根絶を達成しようとするワクチン接種キャンペーンにおいて広く用いられている。
【0006】
OPVおよびIPVは両方とも、最終的にはもはや用いられなくなるという弱点がある。OPVによる接種後、ウイルスは腸内で複製して、強い免疫性を刺激する。しかしながら、この複製プロセス中に、3つのウイルス構成要素はその弱毒化された表現型を失う場合があり、神経病原性の子孫ウイルスが排泄され得る。天然の野生基準株に起因するポリオ感染の減少に伴い、ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)に起因する疾患および感染の相対的な発生は、より重大になってきている。野生型ポリオウイルスの2型は今では根絶されているので、世界保健機関(WHO)は、弱毒化された1型および3型からなる二価OPVの使用を推奨している。VDPVに起因する感染数は相対的に少ないが、その数は世界的根絶の完了に対しては耐え難いものである。この理由により、大部分の国はOPVの代わりにIPVを用いるように移行している。
【0007】
IPVは、PV1、PV2、およびPV3の野生型、神経病原性株の大スケールの産生によって製造される。精製されたウイルスは濃縮されて、ホルマリンを用いて2~4週間インキュベーションによって不活化される。IPVは、強い全身性免疫を刺激する。世界的な根絶後、WHOおよび他の世界保健当局は、一般集団における免疫防御が環境中の残っているポリオウイルスによる潜在的曝露に対抗するのに十分に強いままであることを確実にするために、10年以上ワクチン接種を継続するつもりである。この約10年の根絶後ワクチン接種期間を終えた時点で、多くの国々がポリオワクチン接種を段階的に廃止すると考えられる。根絶後に世界的免疫が衰退するので、大量の神経病原性株の継続的な使用は、ますます重大なバイオハザードを作り出す。
【0008】
IPVにおける神経病原性株を弱毒化(Sabin)株によって置き換える試みは、雑多な結果をもたらしている。最も注目すべきことには、ホルマリン処理は、1型SabinウイルスのVP1キャプシドタンパク質内の主要な中和エピトープを不活化させる。一部の国ではホルマリン-不活化Sabin株からなるIPVワクチンを認可しているが、1型コンポーネントの有効性は未知である。
【0009】
ワクチン接種は、ポリオウイルス感染および疾患を防ぐのに最も効果的な対抗策である必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電離放射線(例えば、γおよび/またはX線放射)および/または紫外線放射(例えば、約100~約280nmの波長を有する紫外線C(UVC)放射)に曝露することによって不活化された、ポリオウイルスの弱毒化および/または神経病原株に基づくポリオウイルス抗原に部分的に関する。本発明の抗原組成物は、1、2、3、またはそれよりも多くのポリオウイルス株を含んでよい。抗原組成物は、注入または当業者に公知のもののような他の送達システムによって対象へ導入された場合に防御免疫を刺激するための改善されたワクチンとしての役割を果たし得る。
【0011】
本発明の方法は、ウイルス内の核酸を放射線(例えば、電離放射線および/またはUV照射)による損傷および/または破壊に供しながらウイルスの表面上の抗原性エピトープを保護するために、抗酸化物質および/または抗酸化組成物を用いてよい。
【0012】
本発明の抗酸化組成物は、二価のカチオン、ペプチド、およびバッファー系を含んでよい。一部の実施態様では、抗酸化組成物は、塩化マンガン(MnCl)、デカペプチド(例えば、DEHGTAVMLK[配列番号1])およびリン酸バッファー(例えば、リン酸カリウムバッファー)を含む。他のバッファー、例えば、TRIS、MESなどが、リン酸バッファーに代用され得る。
【0013】
一実施態様に関して記載された本発明の態様は、それに関して具体的に記載されていなくても異なる実施態様に組み込まれてよいことに注意されたい。すなわち、任意の実施態様の全ての実施態様および/または特徴を、任意の方法および/または組み合わせで組み合わせることができる。出願人は、適宜、任意の最初に出願したクレームを変更する、および/または、任意の新しいクレームを出願する権利を留保しており、これには、そのような様式で最初に特許請求されていなくても、任意の他のクレーム(単数または複数)の任意の特徴に従属させるため、および/または、それを組み込むために、任意の最初に出願したクレームを補正することができる権利が含まれる。本発明のこれらおよび他の目的および/または態様は、以下に示される明細書中に詳しく説明される。本発明のさらなる特徴、利点、および詳細は、以下の図面および好ましい実施態様の詳細説明を読むことによって当業者によって理解され、そのような説明は本発明の単なる例示である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】γ照射ポリオウイルス(PV)の感染力の減少を示すグラフを示す。マンガン-デカペプチド-リン酸(MDP)複合体と組み合わせたPV2 Sabin(16マイクログラム)を、増加する線量のγ照射に曝露して、CCID50アッセイを用いて感染力に関して試験した。大きな方のグラフはLog-10値を報告し、挿入グラフはlogでない力価を報告し、45および50キログレイ(kGy)の電離放射線では感染力がないことを示す。
図2A-2C】照射されたPVに対する異なる分析の画像を示す。図2Aおよび2Bでは、示されるようにデカペプチド(Dp)またはMnCl(Mn2+)を用いておよび用いずに、PV2Sをγ照射した。アリコートをウエスタンブロットによって分析して、DpおよびMn2+の添加は、VP2キャプシドタンパク質を損傷から保護することが示された(図2A)。VP1およびVP3が可視化されたブロットにおいて同様の結果が得られた。逆転写酵素後のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)による無傷のウイルスRNAの分析は、MDP複合体が、RNAを損傷から保護しないことを示す(図2B)。ブロットは、DpおよびMn2+の添加によってVP2が損傷から保護されることを示す。PCRアッセイは、DpまたはMn2+の添加が、RNAを損傷から保護しないことを示す。図2Cは、照射前(上)、DpまたはMn2+なしのγ照射(中央)、ならびに、DpおよびMn2+ありのγ照射(下)のPV1Sの電子顕微鏡写真を示す。照射されない粒子の91.8%は高密度に見える。γ照射後、MDPを含むサンプルおよび含まないサンプルにおいてそれぞれ90.0および2.0%が高密度であった(>700粒子をカウントすることによって判定)。
図3】1×、01/2×、または減少したヒト用量のIPOL(丸)、VeroPol(四角)、またはIr-PV2S(三角)を用いて免疫化されたラットのLog-2抗-PV2中和力価を示す。MDP複合体を用いずに照射されたIr-IPVSがコントロール(星)として含まれた。ラットは1日目および21日目に免疫化されて、試験血清のために35日目(パネルA、C、およびE)および49日目(パネルB、D、およびF)に出血させた。パネルAおよびBは、8DUのPV2抗原を含む1×ヒト用量由来の血清を示す。パネルCおよびDは、4DUのPV2抗原を含む0.5×ヒト用量由来の血清を示す。パネルEおよびFは、ヒト用量の1/8、1/16、1/32、または1/64を含む減少した用量のPV2抗原(それぞれ、1、0.5、0.25、または0.125DUのPV2抗原を含む)由来の血清を示す。
図4】照射された1×(パネルA、B)または0.5×(パネルC、D)ヒト用量のIr-PV1ならびに認可されたIPVワクチン、IPOL(Sanofi)およびVeroPol(Staten Serum Institute)を用いて免疫化されたラット由来の抗-PV1中和力価のグラフを示す。中和データは、IPOL(丸)、IPV(四角)、MDPありのIr-PV1(三角)またはMDPなしの照射されたIr-PV1(星)を用いた免疫化によるLog-2値として示した。免疫化は1日目および21日目に行ない、中和アッセイのための試験的出血は、示されるように35日目および49日目に行なった。水平な線は、それぞれのグループに関する平均中和値を示す。BD=検出限界未満(<1)。
図5】UVC-不活化PV1 Sabinを用いて免疫化されたラット由来の抗-PV1中和力価を示す。PV1 Sabinウイルスを、MDP複合体あり(上パネル)またはMDP複合体なし(下パネル)で調合して、0.7mW/cmを放射するUVC光を用いて60分間照射した。2つの不活化ウイルス調製物をD抗原濃度に関して分析して、1ヒト用量と同等の量をラットの免疫化に用いた。ラットを0日目および21日目に免疫化して、49日目に血清を集めた。各ラット血清に関する中和力価を、Log-2力価およびグループ平均とともに示す。アスタリスクによって印がつけられた血清は1:2希釈で中和を示さなかった。
図6】UVC-不活化PV1 Sabinを用いて免疫化されたラット由来の血清の抗-PV1中和力価を示す。図5に示される各血清サンプルに関するLog2力価をグラフ化して、平均値を水平な線として示し、エラーバーが含まれる。PV1 SabinをMDPありまたはMDPなしで調合して、0.7mW/cmを放射するUVC光に60分間曝露することによって感染力を不活化させた。ラットを0日目および21日目に免疫化して、血清のために49日目に試験出血させて、40D抗原量の不活化ウイルス(1×ヒト用量)であった。標準的なTCID50アッセイにおいて中和抗体活性に関して血清を分析した。MDPあり(ソリッド記号)またはMDPなし(オープン記号)の2つのグループにおける各ラット血清についてLog-2中和力価を示す。
図7】UVC照射PV3 Sabinウイルスの分析を示す。左パネルは感染力を示す。PV3 Sabinを、MDPと複合化させて(四角)または複合化させずに(三角)、0.7mW/cmを放射するUVC光に0、3、10、または30分間曝露した。MRC5細胞を用いた感染力アッセイに対してサンプルを分析して、Log-10 TCID50力価値をグラフ化した。右パネルは、同一サンプルのD抗原分析を示す。ミリリットル容量あたりのD抗原量の値を残存値(%)とともに示す。
図8】0日目および21日目にUVC-不活化PV3 Sabinを用いて免疫化されて49日目に血清のために出血させたラット由来の抗-PV3中和力価を示す。PV3 Sabinウイルスを、MDPあり(上パネル)またはMDPなし(下パネル)で調合して、0.7mW/cmを放射するUVC光を用いて60分間照射した。2種類の不活化ウイルス調製物をD抗原濃度に関して分析して、2×、1×、1/2×、および1/8×ヒト用量と同等量(64、32、16、8D抗原量)を用いてラットを免疫化した。ラットを最初の免疫化の21日後に追加免疫して、血清サンプルを28日後に回収した。各ラット血清に関する中和力価をLog-2力価およびグループ平均とともに示す。
図9】UVC-不活化PV3 Sabinを用いて免疫化されたラット由来の血清の中和力価を示す。PV3 SabinをMDPありまたはMDPなしで調合して、0.7mW/cmを放射するUVC光に60分間曝露することによって不活化した。ラットを0日目に免疫化して、21日目に、64、32、16、または4D抗原量の抗原(それぞれ、2×(丸)、1×(四角)、0.5×(三角)、および0.125×(ひし形)用量に対応する)を用いて追加免疫した。グループ内の各動物に関する血清由来の抗-PV3中和力価のLog-2値を示す。UVC不活化前にMDPありで調合されたウイルスを用いて免疫化された動物由来のデータをソリッド記号として示し、一方で、MDPなしで調合されたウイルスを用いて免疫化された動物由来の血清をオープン記号で示す。データは、MDPを含むことによってウイルス上の中和エピトープに対する損傷を減少させることを示唆し、この作用は、より低い抗原用量においてより顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで本発明は、本発明の実施態様が示される添付の図面を参照しながら、以下に、より完全に説明される。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具現化され得て、本明細書中に示される実施態様に制限されると解釈されるべきでなく;むしろ、これらの実施態様は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0016】
本明細書中で本発明の説明において用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のみのものであり、本発明を限定することを意図しない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲中で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の提示をしない限り、複数形も含むことを意図する。
【0017】
別段の定めがない限り、本明細書中で用いられる全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する分野における通常の技術者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書中に定義されるものなどの用語は、本出願および関連分野のコンテキストにおけるそれらの意味と一貫した意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書中に明白にそのように定義されていない限り、理想化されたまたは過剰に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されよう。本明細書中、本発明の説明において用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のみのものであり、本発明を制限することを意図しない。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体で参照により援用される。専門用語において矛盾する場合は、本明細書が支配する。
【0018】
また、本明細書において用いられる「および/または」は、関係がある列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意および全ての可能な組み合わせ、ならびに、代替(「または」)と解釈された場合は組み合わせの欠如を指し、それらを包含する。
【0019】
文脈が別段の提示をしない限り、本明細書中に記載される本発明の様々な特徴が任意の組み合わせで用いられ得ることが明確に意図される。さらに、本発明はまた、本発明の一部の実施態様では、本明細書中に示される任意の特徴または特徴の組み合わせが排除または省略され得ることも考えられる。例示すると、複合体は構成要素A、BおよびCを含むと明細書が記述している場合、A、BもしくはCのいずれか、またはそれらの組み合わせが省略および拒否され得ることが明確に意図される。
【0020】
本明細書において用いられる移行句「から本質的になる」(および文法上の変形)は、特許請求の範囲に記載された発明の列挙された物質またはステップ「ならびに基礎的および新規の特徴(単数または複数)に実質的に影響を及ぼさないもの」を包含するものとして理解されるべきである。In re Herz,537 F.2d 549,551-52,190 U.S.P.Q.461,463(CCPA1976)(強調は原文通り)を参照;MPEP§2111.03も参照。したがって、本明細書において用いられる用語「から本質的になる」は、「含む」と同等のものとして解釈されるべきではない。
【0021】
量または濃度などの測定可能な値に言及する場合に本明細書において用いられる用語「約」は、指定の値の±10%、±5%、±1%、±0.5%、または実に±0.1%の変動、および特定の値を包含することを意味する。例えば、Xが測定可能な値である場合の「約X」は、Xおよび、Xの±10%、±5%、±1%、±0.5%、または実に±0.1%の変動を含むことを意味する。測定可能な値に関して本明細書において提供される範囲は、その中の任意の他の範囲および/または個々の値を含んでよい。
【0022】
本明細書において用いられる「薬学的に許容できる」は、化合物、アニオン、カチオン、または組成物が、疾患の重症度および治療の必要性に照らして、過度に有害な副作用を伴わずに本明細書中に記載の治療を達成するために、対象への投与に適切であることを意味する。
【0023】
本明細書において用いられる用語「増大する(increase)」、「増大する(increases)」、「増大した(increased)」、「増大している(increasing)」、「改善する(improve)」、「高める(enhance)」および同様の用語は、規定のパラメーターにおける、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%またはそれよりも多くの上昇を示す。
【0024】
本明細書において用いられる用語「減少する(reduce)」、「減少する(reduces)」、「減少した(reduced)」、「減少(reduction)」、「阻害する(inhibit)」および似た用語は、規定のパラメーターにおける、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または100%の低減を指す。
【0025】
本明細書において用いられる用語「配列同一性」は、当技術分野における標準的な意味を有する。当技術分野で知られているように、複数の異なるプログラムを用いて、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが公知配列と配列同一性または類似性を有するかどうか同定することができる。配列同一性または類似性は、当技術分野で知られている標準的な技術を用いて決定され得て、これには、制限されないが、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の配列同一性アライメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WIにおける、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、Devereux et al.,Nucl.Acid Res.12:387(1984)により記載されるBest Fit配列プログラム(好ましくはデフォルト設定を用いる)、または調査が含まれる
【0026】
有用なアルゴリズムの例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブ、ペアワイズのアライメントを用いて、関連する配列のグループから多数の配列アライメントを作成する。それはまた、アライメントを作成するために用いられたクラスター関係を示すツリーをプロットすることもできる。PILEUPは、Feng&Doolittle,J.Mol.Evol.35:351(1987)のプログレッシブ・アライメント法を簡略化したものを用いていて;その方法は、Higgins&Sharp,CABIOS 5:151(1989)によって記載されるものに似ている。
【0027】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)およびKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873(1993)に記載されるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al.,Meth.Enzymol.,266:460(1996)によって得られたWU-BLAST-2プログラム;blast.wustl/edu/blast/README.htmlである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを用い、それらは好ましくはデフォルト値に設定される。パラメーターはダイナミック値であり、特定の配列の構成および目的の配列が検索されている特定のデータベースの構成に応じてプログラム自体によって確立されるが;感度を増大させるために値は調節され得る。
【0028】
さらなる有用なアルゴリズムは、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389(1997)によって報告されるギャップ化BLASTである。
【0029】
アミノ酸配列同一性パーセンテージの値は、一致する同一残基の数を、並べられた領域内の「より長い」配列の残基の合計数で割ることによって決定される。「より長い」配列は、並べられた領域内に、実在する残基を最も多く有するもの(one having the most actual residues)である(アライメントスコアを最大化するためにWU-Blast-2によって導入されたギャップは無視する)。
【0030】
アライメントは、並べられる配列内にギャップの導入を含んでよい。さらに、本明細書中に具体的に開示されるポリヌクレオチドよりも多いまたは少ないヌクレオチドを含む配列に関して、一実施態様では、配列同一性のパーセンテージは、ヌクレオチドの合計数に対する、同一ヌクレオチドの数に基づいて決定されることが理解される。したがって、例えば、本明細書中に具体的に開示される配列よりも短い配列の配列同一性は、一実施態様では、より短い配列のヌクレオチドの数を用いて決定される。同一性パーセンテージの計算においては、相対的な重み(relative weight)は、挿入、欠失、置換などのような配列変動の様々な発現に割り当てられない。
【0031】
一実施態様では、同一性のみが正(+1)にスコアされて、ギャップを含む全ての形態の配列変動は「0」の値に割り当てられて、それにより、配列類似性計算に関して以下に記載されるように重み付きの(weighted)スケールまたはパラメーターの必要性がなくなる。配列同一性パーセントは、例えば、一致する同一残基の数を、並べられた領域内の「より短い」配列の残基の合計数で割って、100を掛けることにより計算され得る。「より長い」配列は、並べられた領域内に、実在する残基を最も多く有するものである。
【0032】
「免疫原」および「抗原」は、本明細書において相互交換可能に用いられて、特異的な体液性および/または細胞介在性の免疫応答、例えば、抗体が刺激されて分子またはウイルスに結合する免疫応答を誘発する分子を指す。抗原および/または免疫原における抗体に関する結合部位は、エピトープ(例えば、抗原性エピトープ)と呼ばれ得る。
【0033】
本明細書において用いられる「D抗原含有量」は、多数の免疫賦活性ポリオウイルスエピトープの組み合わせた活性を指す。ポリオウイルス病原性の初期の研究では、非感染性の空の粒子および/または「C」抗原を含む低感染力のウイルス、および、「D」抗原(56℃で加熱することによって不活化させてC抗原へ変換させることができる)を含む感染性ウイルスとして分類される、ポリオウイルスの2つの異なる抗原性形態が説明された。D抗原アッセイ、例えば、D抗原含有量(例えば、感染性ウイルスのエピトープ(単数または複数))に応答性の抗体を含むELISAアッセイは、抗原性の測定であり、ワクチン製剤の免疫原性を予測するための用いられていて、ここで、より高いD抗原含有量は、より高い免疫原性と相関する。
【0034】
ワクチンは、抗原(例えば、例えば感染性ウイルスのような感染性物質の免疫原および/または抗原)に対してさらに曝露された際に、事前のワクチン接種をせずに抗原に曝露した場合の免疫応答と比較して免疫応答が宿主(例えば、ワクチンレシピエント、例えば、対象)に対してより高く防御するように、例えば免疫系をプライミングすることによって、免疫防御性応答を産生するために用いられる免疫原である。例えば、誘導抗体は、宿主において、感染性ウイルス上に見られる免疫原またはそれを発現する物質のネガティブな影響を減少させるワクチンによって提供される。ワクチンの用量は、当業者に公知のように、前臨床および臨床試験によって取得、推定、および/または決定され得る。多数回用量のワクチンが、当技術分野で知られているように投与され得て、および/または、長期の予防および/または既往(メモリー)状態(例えば、初回刺激を受けた状態)を確実にするために必要に応じて投与され得る。一部の実施態様では、本発明の目的に関するワクチンの有用性の成功的なエンドポイントは、誘導された免疫応答(例えば、体液性および/または細胞介在性)の存在が生じることであり、それは例えば、意図された抗原を認識する、宿主により作製された血清抗体(単数または複数)の産生をもたらすものである。そのような抗体は、当技術分野で知られているように、例えば前記ワクチンおよび/または免疫原を用いて免疫化された動物またはヒトからサンプリングされた血清の抗ウイルス中和アッセイのような様々なアッセイによって測定することができる。
【0035】
本明細書において用いられる用語「抗原節約」および/または「用量節約」は、ワクチンレシピエントにおいて誘導される免疫防御性応答の防御性の性質に負の影響を及ぼさずに、例えば、ワクチンレシピエントにおいて誘導される免疫防御性の有効性、質、および/または疾患からの防御に影響を及ぼさずに、ワクチンにおいて用いられる免疫原/抗原の量および/または提供されるワクチンの量が減少され得る効果を指す。
【0036】
ポリオウイルスは、正センスゲノムRNAを含む非エンベロープウイルスであり、3つの抗原的に異なる血清型:1型、2型、および3型(すなわち、PV1、PV2、およびPV3)として存在する。ポリオウイルスは、ファミリーピコルナウイルス科のエンテロウイルス属のメンバーであり、消化管内で複製する。相対的に低い頻度で、ウイルスは神経性組織に感染して、そこで一時的な麻痺、永続的な麻痺、または死を引き起こし得る。ポリオウイルスは、インフルエンザおよびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)のようなエンベロープウイルスよりも水分が少ないので、感染力の不活化のためには、より高い線量の電離放射線が典型的に必要とされる。
【0037】
1950年代における承認以来用いられている2つの一般的なタイプのポリオウイルスワクチンは、不活化ポリオワクチン(IPV)および経口の弱毒化(非不活化)生ポリオワクチン(OPV)である。IPVは、元はJonas Salkおよび同僚によって開発されたものであり、1型、2型、および3型ポリオウイルスの神経病原性株の増殖および精製の後にホルムアルデヒドを用いた感染力の化学的不活化およびその後の精製によって作製される。IPVは、アジュバントを使用せずに、典型的に筋肉内注入によって投入されて、全身性免疫を刺激して宿主を神経病原性疾患から防御する。OPVは、病因に関して弱毒化されている3つの血清型の株の増殖および精製によって作製される。弱毒化された株は、元はAlbert Sabinおよび同僚によって開発されたものであり、「Sabin」株と呼ばれる。経口で投与される弱毒化された生ウイルスワクチンとして、OPVは、腸内で複製して、感染および/または疾患から消化管および全身性免疫の両方を刺激する。IPVおよびOPVは両方とも、ポリオウイルスの感染および小児麻痺の発生を制御するために用いられている。ワクチンは、少数の国を除く全ての国において小児麻痺の根絶に貢献している。
【0038】
2005年~2015年において、100億を超える用量のOPVが25億人よりも多くの子供に投与されていて、1000万の事例を超えるポリオ感染を予防してきたと見積もられる。場合によっては、OPVワクチンは、消化管における複製中にその疾患弱毒化表現型を失って、排泄物内に神経病原性ウイルスの排泄をもたらす場合がある。子孫ウイルスは、感染排泄物に曝露された、ワクチン接種が不適切なバイスタンダーに感染し得る。さらに、不適切に処理された下水は、水域の汚染をもたらし得て、それはまた、ワクチン接種が不適切な人々の感染をもたらし得る。何十万もの人々でないにしても何千人もの人々が野生型ポリオウイルス株との接触を介してポリオ疾患を発症した過去の年月の間、相対的に低い割合のOPVの隔世遺伝は、自然な感染のリスクと比較してそれほど重大ではない、集団における健康ハザードであった。対照的に、規定された地理的地域および最終的には世界的集団において根絶が完了またはほぼ完了すると、ワクチン復帰突然変異体に起因する疾患の発生がより重大で問題となってくる。2017年にはポリオ感染の報告は22件であり、1988年のおよそ350,000件から減少した。麻痺性ポリオの全事例に関しておよそ200件の無症状事例が存在するので、集団内を循環しているウイルスの発生は報告数よりも多い。3つのポリオ血清型が長年の間根絶されている国では、ワクチンに関係する感染および疾患の事例を防ぐためにOPVはIPVによって置き換えられている。
【0039】
IPVにも欠点がある。ワクチンは神経病原性株を用いて生産される。大量の神経病原性株の生産および取り扱いには、生産施設からウイルスが偶発的に放出されるのを防ぐために高レベルの生物学的な封じ込めが必要である。公表された報告は、1つよりも多い生産施設に関して隣接環境中へのウイルスのそのような偶発的な放出を証明している。世界保健機関は、PV2は根絶されていて、野生型PV2ウイルスによる感染または疾患の事例は近年報告されていないことを証明している。2012年以来、PV3感染の事例は報告されておらず、世界保健団体は、PV1は近い将来に根絶されるだろうと期待している。根絶に際して、大量の神経病原性株の使用がますますバイオハザードリスクとなってくるだろう。根絶が達成されてポリオウイルスに対する集団予防接種が多くの国々においてなくなり始めた後に、神経病原性ポリオウイルスが偶発的または意図的に漏れ出すことは、3つのウイルスを根絶するために費やされる莫大な試みを台無しにさせ得る。この理由のため、弱毒化されたSabin株によって神経病原性株を置き換えることは、IPVの製造と関連するバイオハザードを減少させる。公表された報告は、PV1-SabinのVP1キャプシドタンパク質内の主要なエピトープが、ホルムアルデヒド処理によって損傷されることを証明している。一部の国では、IPVワクチンとしてのホルムアルデヒドによって不活化されたSabin株の使用が認可されているが、永続性の防御免疫を誘導するその能力に関する心配は残っている。
【0040】
ポリオウイルスワクチンまたは免疫原の有効性は、免疫化されたヒトまたは選択試験動物における中和抗体活性の分析によって測定することができ、ここで、免疫化された対象(例えば、ヒトおよび/または試験動物)における中和抗体(例えば、IgA、IgMおよび/またはIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4)活性の定量化がより高いことは、その後の野生型ポリオウイルスに対する曝露における免疫防御性応答の改善と相関する。中和アッセイにおいては、希釈された血清サンプルが、標準化された量のPV1、-2、および/または-3と混合されて、抗体-ウイルス複合体の形成を可能にする。混合物はそれから、HeLa、Veroおよび/またはMRC5細胞株のような哺乳類細胞の単層へアプライされて、感染性ウイルスが細胞に付着するのを可能にする。典型的に、アッセイは、それぞれの血清-ウイルス試験に関して多数のウェル・レプリケートを用いて、多数のウェル(プレートあたり48、96、または386ウェル)を有する組織培養プレート内で行われる。標準的なバッファーを用いて接種材料を洗浄して、増殖培地を細胞へ添加して、培養プレートを約35℃~約37℃でインキュベートして、ウイルスの増殖および多数の複製サイクルを可能にする。ウェルを3~6日後に感染または非感染としてスコア化して、血清が(例えば、血清中の中和抗体を介して)単層のウイルス感染を阻害したかどうか判定する。ウイルス中和力価は、レプリケート・ウェルのうちの感染ウェルの50%の減少を生じさせる血清の希釈の逆数として表されて、例えば、感染ウェルの50%の減少を生じさせる1:2、1:4、1:6、1:8、1:10、1:12などの希釈は、それぞれ、2、4、6、8、10、12などのウイルス中和力価に相当し、ここで、より高い中和力価は、防御を提供するのにより効果的である。ウイルス中和力価8は、血清の1:8希釈に相当し、一般にヒトにおける防御に相当するものとして認められている。力価8は、Log-2力価3と同等である。したがって、減少した質量の抗原を含むワクチンが、参照ワクチン(例えば、現行の市販の(例えば、ホルマリン/ホルムアルデヒド)不活化ポリオウイルス免疫原、例えば、IPV)と比較して同等またはより高い中和力価を刺激するならば、それは「抗原節約」であると考えられる。
【0041】
Wistarラットの免疫化は、ワクチンの有効性を予測するための一般的な試験動物モデルである。免疫化されたラットの圧倒的多数において中和力価8を刺激するワクチン抗原は、ヒトにおける防御に相当する。
【0042】
本発明の実施態様によれば、照射によって不活化されたポリオウイルス免疫原が提供される。本発明の照射によって不活化された抗原は、標準的なWistarラットモデルにおいて中和抗体を刺激することができ、それは、免疫化されたヒトにおける防御免疫と密接な相関関係がある。本発明の照射によって不活化されたポリオウイルス免疫原は、ヒト(例えば、免疫原を用いて免疫化されたヒト)における防御免疫を刺激し得る。
【0043】
本発明の組成物は、1または複数の異なる、照射によって不活化されたポリオウイルス免疫原、例えば、1または複数の(例えば、1、2、3、4、5またはそれよりも多くの)弱毒化および/または神経病原性Sabin株(単数または複数)を含んでよい。一部の実施態様では、本発明の組成物は、1または複数の弱毒化されたS19株(単数または複数)を含んでよい。本発明の組成物は、薬学的に許容できる担体を含んでよい。一部の実施態様では、本発明の組成物はワクチンである。一部の実施態様では、不活化された三価の全ウイルス組成物が提供されて、それは、現在認可されているOPVおよびIPVワクチンを置き換え得る。
【0044】
本発明の照射によって不活化されたポリオウイルス免疫原は、対象(例えば、免疫化されたヒト)において中和抗体を刺激し得て、ウイルス中和力価は、約8またはそれよりも上(例えば、約8、10、25、50、80、100、300、500、800、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、12,000、14,000、16,000、20,000もしくはそれよりも上、および/またはその中の任意の値または範囲)であってもよい。例えば、一部の実施態様では、本発明の照射によって不活化されたポリオウイルス免疫原は、約8~約20,000;約100~約15,000;約1,000~約10,000、または約15,000~約20,000のウイルス中和力価で対象において中和抗体を刺激し得る。
【0045】
本発明の一部の実施態様によれば、不活化ポリオウイルスワクチンを産生するための方法が提供されて、それには、1または複数の(例えば、1、2、3、4、5またはそれよりも多くの)弱毒化および/または神経病原性Sabin株(単数または複数)が含まれてよい。中和エピトープを損傷させ得て2週間以上の長々しいインキュベーションを必要するホルムアルデヒドを用いる代わりに、本発明の方法は、電離放射線(例えば、γ)および/または紫外線(例えば、UVC)照射を用いてウイルス感染力を不活化させるステップを含んでよい。一部の実施態様では、電離放射線照射はγ照射であってよい。一部の実施態様では、紫外線照射は紫外C(UVC)照射であってよい。
【0046】
一部の実施態様では、本発明の方法は、照射(例えば、十分過ぎる量の(supralethal)の照射)中にポリオウイルスエピトープを保護し得る複合体を含む抗酸化組成物(例えば、ペプチドを含む組成物、例えば、マンガン-デカペプチド-リン酸(MDP)組成物)を提供するステップを含む。本発明の抗酸化組成物は、二価のカチオン(例えば、Mn2+)、ペプチド、およびバッファー系を含んでよい。一部の実施態様では、抗酸化組成物は、塩化マンガン(MnCl)、デカペプチド、およびリン酸バッファーを含む。一部の実施態様では、抗酸化組成物は、塩化マンガン(MnCl)、デカペプチド、およびTrisバッファーを含む。一部の実施態様では、抗酸化組成物は、塩化マンガン(MnCl)、デカペプチド、およびMESバッファーを含む。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、マンガン-デカペプチド-リン酸(MDP)複合体を含む。
【0047】
本発明の方法は、ウイルス内の核酸を電離放射線(例えば、γ線照射)および/またはUV放射(例えば、UVC放射)による損傷および/または破壊に供しながら、ウイルスの表面上の抗原性エピトープを保護するために、抗酸化物質および/または抗酸化組成物を用いてよい。
【0048】
本発明のペプチドは、2以上のアミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれよりも多い)を含んでよく、ここでペプチドは、配列DEHGTAVMLK(配列番号1)由来の2以上のアミノ酸残基を任意の順序および/または長さで含んでもよい。ペプチドの正確な配列および/または長さは変化してよく、ペプチドは、本発明の組成物における抗酸化活性および/または抗酸化物質としての機能に寄与し得る。例えば、一部の実施態様では、ペプチドは、クアドリペプチド(4マー)、ペンタペプチド(5マー)、ヘキサペプチド(6マー)、へプタペプチド(7マー)、オクタペプチド(8マー)、ノナペプチド(9マー)、および/またはデカペプチド(10マー)であってよい。一部の実施態様では、本発明のペプチド(例えば、デカペプチド)は、アミノ酸DEHGTAVMLK(配列番号1)を任意の順序および/または長さで含んでよく、例えば、ペプチドは、アミノ酸HMLK(配列番号2)の配列、アミノ酸HMLK(配列番号2)のスクランブル配列、アミノ酸HMHMHM(配列番号3)の配列、アミノ酸HMHMHM(配列番号3)のスクランブル配列、アミノ酸DEHGTAVMLK(配列番号1)の配列、および/または、アミノ酸DEHGTAVMLK(配列番号1)のスクランブル配列を含んでよい。一部の実施態様では、ペプチドは、アミノ酸配列DEHGTAVMLK(配列番号1)と少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。一部の実施態様では、ペプチドは、アミノ酸配列HMLK(配列番号2)と少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。一部の実施態様では、ペプチドは、アミノ酸配列HMHMHM(配列番号3)と少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0049】
一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約0.5mM~約10mM、例えば、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、もしくは10mM、またはその中の任意の値もしくは範囲の濃度のペプチドを含んでよい。例えば、一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、例えば、約2.5mM~約5mM、約0.7~約3.7mM、または約2mM~約8mMの量のペプチドを含んでよい。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約3mMの量のペプチド、例えば、約3mMのデカペプチドを含んでよい。
【0050】
一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、例えばマンガンMn2+のような二価のカチオンを含んでよい。一部の実施態様では、二価のカチオンは、MnClのような塩として提供されてよい。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約1mM~約10mM、例えば、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、もしくは10mM、またはその中の任意の値もしくは範囲の濃度の二価のカチオン(例えば、Mn2+)を含んでよい。例えば、一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約1.4mM~約5.3mM、約2mM~約7mM、または約1mM~約9.8mMの量のMn2+を含んでよい。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約3mMのMn2+を含んでよい。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約3mMのMnClを含んでよい。
【0051】
一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、バッファー、例えば、リン酸バッファー、Trisバッファー、MESバッファー、HEPESバッファー、および/または同様のバッファーを含んでよい。一部の実施態様では、バッファーは、約10mM~約500mM、例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、495、496、497、498、499、もしくは500mM、またはその中の任意の値もしくは範囲の濃度であってよい。例えば、一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約20mM~約100mMのリン酸バッファー、約10mM~約200mMのリン酸バッファー、または約40mM~約120mMリン酸バッファーを含んでよい。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約50mMのリン酸バッファーを含んでよい。一部の実施態様では、バッファーおよび/または抗酸化組成物は、約5~約9、またはその中の任意の値もしくは範囲、例えば、約6.8または約7.4のpHを有してよい。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物および/またはそれらの使用方法は、PCT/US2008/073479;PCT/US2011/034484;および/またはPCT/US2012/062998に記載される組成物および/または方法を含んでよく、それらの開示は参照により本明細書中に援用される。
【0052】
一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約1mM~約10mMの濃度のMnCl、約0.5mM~約10mMの濃度のデカペプチド(例えば、DEHGTAVMLK[配列番号1])、および、約10mM~約500mMの濃度のリン酸バッファーを含む。一部の実施態様では、本発明の抗酸化組成物は、約3mMのMnCl、約3mMのデカペプチド(例えば、DEHGTAVMLK[配列番号1])、および約200mMのリン酸バッファーを含む。しかしながら、抗酸化組成物中の構成要素の濃度は、有効性の劣化が小さい限り変更してよい。抗酸化組成物は、1または複数の賦形剤(単数または複数)、例えば、ソルビトール、トレハロースなど、および/または、1または複数のペプチド(単数または複数)、例えば、HMHMHM(配列番号3)、HMLK(配列番号2)、および/または同様のものをさらに含んでよい。
【0053】
本発明の方法は、抗酸化組成物内に存在するウイルスを、放射線(例えば、電離放射線(例えば、γ)放射および/または紫外線(例えば、UVC)放射)に曝露してよく、それにより、ウイルスゲノムを放射線による損傷および/または破壊に対して曝しておきながら、1つまたは複数のエピトープ(例えば、表面タンパク質エピトープ(単数または複数)、例えば、VP1、VP2、VP3、および/またはVP4エピトープ(単数または複数))の保護をもたらし得る。一部の実施態様では、ウイルスは、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60kGyの量の電離放射線(例えば、γ線および/またはX線)に曝露される。一部の実施態様では、ウイルスは、約30、35または40kGy~約45または50kGyの量の電離放射線(例えば、γ線放射)に曝露される。一部の実施態様では、ウイルスは、約0.01、0.5、または0.1kJ/m~約5、10、または15kJ/m(例えば、約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、または15kJ/m)の量のUV(例えば、UVC)放射、または、同等と算出される(equivalent derived)曝露時間、表面積および/または光源波長および/またはワット数に曝露される。一部の実施態様では、ポリオウイルスは、約0.7mW/cmを放射するUVC光源に約60分間曝露されて(例えば、分厚い壁のプラスチックチューブ内)、および/または、ポリオウイルスは、約1、5、10、または30秒間~約1、1.5、または2分間、約5mW/cmを放射するUVC光源に曝露されて、このときポリオウイルスは、UV透明の(例えば、薄い壁の)管またはチューブ内に含まれていてもよい。一部の実施態様では、ポリオウイルスは、感染力を不活化させるのに十分な強度を有するUV源(例えば、UVC光源)に、および/または十分な期間、曝露される。
【0054】
非エンベロープウイルスは水分および脂質の濃度が低いため、非エンベロープウイルスは、不活化のために、典型的に、例えば、インフルエンザおよびVEEVよりも高い線量の放射線を必要として、それによりタンパク質抗原に対する損傷を増大させる。一部の実施態様では、本発明の組成物および/または方法は、1つまたは複数の表面エピトープ(単数または複数)の改善された保護を有し、および/または提供する。
【0055】
一部の実施態様では、本発明の方法は、本発明の組成物と接触する空気および/または二原子酸素をアルゴンで置き換える。例えば、ウイルスおよび抗酸化組成物を含んでいるチューブ内の空気は、アルゴンによって少なくとも部分的に置き換えられ得る。一部の実施態様では、本発明の方法は、ウイルスおよび/または抗酸化組成物を含む組成物から例えば鉄のような金属類の濃度を減少させ、および/または除去する。例えば、リン酸バッファーおよび他の試薬中の微量鉄汚染の量は、タンパク質エピトープの酸化的損傷の増大をもたらし得る。したがって、一部の実施態様では、鉄および/または他の金属類は、当業者に公知の方法を用いて、例えばキレートクロマトグラフィーカラム(Chelex column,BioRad)を通すことによって、バッファーおよび水から除去され得る。一部の実施態様では、鉄および/または他の金属類は、約100mM未満の濃度で存在してよい。
【0056】
本発明の一部の実施態様によれば、照射処理(例えば、電離放射線および/または紫外線照射)の間、現行の市販の(例えば、ホルマリン/ホルムアルデヒド)不活化ポリオウイルス免疫原(例えば、制限されないがIPV)と比較して、損傷からのポリオウイルスエピトープ(例えば、表面タンパク質エピトープ)の保護の増大が提供される。一部の実施態様では、現行の市販不活化ポリオウイルス免疫原(単数または複数)は、限定されないが、IPV(例えば、IPOLおよび/またはVeroPol)を含む。ポリオウイルスエピトープの保護の増大は、コントロールと比較して、例えば、γおよび/またはUVC照射不活化の間の、ホルマリン/ホルムアルデヒド不活化と比較したエピトープの保護の増大であってよい。保護の増大は、ウイルスを含んでいるコンテナー(例えばチューブ)内の周囲空気を非反応ガス(例えば、アルゴン)で少なくとも部分的に置き換えることによって、および/または、前不活化ウイルスを含む組成物中の鉄を除去および/またはその量を減らすことによって、達成され得る。一部の実施態様では、空気は、非反応ガス(例えば、アルゴン)によって少なくとも部分的に置き換えられてよい。一部の実施態様では、空気は、雰囲気中の酸素含有量および/または少なくとも部分的な置き換えの前の酸素含有量と比較して、約50%またはそれよりも多く、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれよりも多く、酸素含有量が減少するように、非反応ガスによって少なくとも部分的に置き換えられてよい。
【0057】
紫外線は、中和抗体(例えば、ウイルス表面タンパク質エピトープに対する抗体)を刺激するエピトープに対する損傷を最小限~無損傷の状態で、ポリオウイルスを不活化させるために用いてよい。紫外線は、波長に基づいてカテゴリーに分類され得る。UVAは315~400nmであり、UVBは280~315nmであり、UVCは100~280nmである。ポリオウイルスの感染力は、約0.7mW/cmを放射するUVC(例えば、約220~約280nmの波長を含む)光源に約60分間(例えば、分厚い壁のプラスチックチューブ内)、または、約5mW/cmを放射するUVC光源に約1、5、10、または30秒間~約1、1.5、または2分間(ポリオウイルスがUV透明の(例えば、薄い壁の)管またはチューブ内に含まれる場合)に曝露すると、完全に不活化され得る。
【0058】
本明細書中に記載のように、本発明の方法は、ポリオウイルスを放射線(例えば、電離放射線および/またはUV照射)に曝露するステップを含んでよく、ポリオウイルスは、管(例えば、チューブまたはコンテナー)内に存在してよい。当業者であれば、曝露条件(例えば、放射線強度および/または曝露時間)は、管のタイプおよび/または特性に応じて変更され得ることを理解するであろう。放射線(例えば、UVC)に対する曝露および/またはそれによる浸透度に関する適切な管の特性(例えば、厚さおよび透明度)は、放射線条件(例えば、放射線源および強度)に基づいて選択することができ、および/または、曝露条件は、管に基づいて改変することができる。例えば、一部の実施態様では、管および/またはチューブは、クリアおよび/または透明であってよく、または、不透明および/または艶消しであってよい。一部の実施態様では、管またはチューブは、約1mmまたはそれよりも大きい(例えば、約1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、もしくは3mmまたはそれよりも大きい)厚さを有してよい(例えば、「分厚い壁」のチューブまたは管)。一部の実施態様では、管またはチューブは、約1mm未満(例えば、約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、または0.95mm)の厚さを有してよい(例えば、「薄い壁」のチューブまたは管)。一部の実施態様では、本発明の方法は、免疫原が管および/またはチューブ(例えばフローセル)内を流れる間、および/またはそれを通して移行されている間、本発明の免疫原を放射線に曝露するステップを含んでよい。
【0059】
したがって、一部の実施態様では、本発明の方法は、ポリオウイルスを、任意選択でUV透明な管またはチューブ内で、紫外線(例えば、UVC)に、ポリオウイルスの感染力を少なくとも部分的に不活化させるのに十分な量で曝露させてよい。一部の実施態様では、ポリオウイルスを不活化させるのに十分な量は、約220~約280、例えば、約220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、もしくは280、またはその中の任意の範囲または値の波長であってよい。一部の実施態様では、ポリオウイルスを不活化させるのに十分な量は、約0.5mW/cm~約10mW/cm、例えば、約0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10mW/cmまたはその中の任意の値もしくは範囲を放射するUVC光源であってよい。一部の実施態様では、ポリオウイルスを不活化させるのに十分な量は、約10秒間~約75分間、例えば、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、もしくは75分間、またはその中の任意の値もしくは範囲のUVC光源曝露であってよい。例えば、一部の実施態様では、本発明の方法は、ポリオウイルスを完全に不活化させるのに十分な量で、例えば約0.7mW/cmを放射する約254の波長のUVC光源に対する約60分の曝露または約5mW/cmを放射する約254の波長のUVC光源に対する約10秒~5分の曝露で、例えばUVC透明のチューブまたは管内で、ポリオウイルスをUVCに曝露するステップを含んでよい。一部の実施態様では、UVC不活化の間、MDP複合体と複合化させると、ポリオウイルスエピトープは、中和抗体の刺激によって証明されるように損傷から保護される。
【0060】
一部の実施態様では、本発明の方法は、ウイルスおよび任意選択でMDP組成物を含む組成物を、紫外線(UV)光(例えば、UVC)の後に電離放射線を用いて事前処理するステップを含む。
【0061】
ワクチン生産におけるX線および/またはγ線の滅菌効果は、光子によるタンパク質および核酸に対する直接的な損傷、ならびに、(はるかに)より著しくは、水分子の放射線分解によって産生される活性酸素種(ROS)に起因する間接的な損傷の結果である。
【0062】
本発明の一部の実施態様は、RNAゲノムを破壊しやすくしながら、ウイルスのエピトープを形成する外側タンパク質の全部または少なくとも一部(例えば、10%以上、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%またはそれよりも多く)の保護をもたらす。
【0063】
MDP複合体は、放射線抵抗性細菌の長期の研究から開発された。ディノコッカス・ラディオデュランスは、酸化に対して格別に抵抗性であり、乾燥および12~16kGyのγ照射(1kGy=100,000rads)の両方において生存可能である(Daly et al.,2010;Daly et al.,2004)。ディノコッカス・ラディオデュランスにおける放射線抵抗性は、細胞基質内のMn+2-ペプチド-オルトリン酸複合体の濃度と直接関係する。この抗酸化コンポーネントは、MnCl、デカペプチドDEHGTAVMLK(配列番号1)(合成的に生産され得る)、およびリン酸バッファー(pH7.2)を用いて再現されている(recapitulated)。本発明のMDP複合体は、感染力を消失させる放射線の線量において抗原の構造的一体性を保護し得る。MDPの保護効果、ならびに、VEEV、チクングニアウイルス、および黄色ブドウ球菌(MRSA)での抗原性タンパク質の保護におけるMDPの使用を示す研究が公表されている(Dabral et al.,2014;Gaidamakova et al.,2012;Honnald et al.,2014)。本発明の発明者らは、MDP組成物を用いて、ポリオウイルスの照射によって不活化された弱毒化および/または神経病原性Sabin株(ピコルナウイルスであり、したがってエンベロープがない)を調製することができることを発見した。本発明の方法は、大いに拡張可能である。一部の実施態様では、D抗原含有量によって証明されるように、本発明の免疫原は、ホルマリン-不活化の間に、PV1-Sabinのようにエピトープの不活化に供せられない。
【0064】
一部の実施態様では、本発明の方法は、既存のポリオワクチンと比較して改善された抗原を提供し、および/または、本発明の組成物は、既存のポリオワクチンと比較して改善された抗原を含む。OPVとは異なり、本発明の照射によって不活化されたワクチン(Ir-PV)は複製せず、病原ウイルスに遺伝学的に進化することができない。さらに、現在認可されているIPVワクチンとは異なり、Ir-PVは、ウイルスの弱毒化および/または神経病原性Sabin株を用いて生産されるので、大量の病原株の産生および取り扱いと関連するバイオハザードの減少をもたらす。
【0065】
本発明の照射によって不活化されたポリオ免疫原は、異なる量の3つの構成要素、照射されたポリオウイルス1型Sabin(Ir-PV1S)、照射されたポリオウイルス2型Sabin(Ir-PV2S)、および照射されたポリオウイルス3型Sabin(Ir-PV3S)を含む三価の混合物として製剤化されてよい。一部の実施態様では、本発明の組成物は、約2~約50D抗原量のIr-PV1S(例えば、約2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、もしくは50D抗原量のIr-PV1Sまたはその中の任意の値もしくは範囲)、約0.1~約10D抗原量のIr-PV2S(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、もしくは10D抗原量のIr-PV2Sまたはその中の任意の値もしくは範囲)、および/または約5~約50D抗原量のIr-PV3S(例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、もしくは50D抗原量のIr-PV3Sまたはその中の任意の値もしくは範囲)を含んでよい。あるいは、単一の血清型を含む一価組成物または2つの血清型を含む二価組成物を製剤化してよい。一部の実施態様では、本発明の照射によって不活化されたポリオ免疫原のD抗原含有量は、不活化前の精製ウイルスのD抗原含有量と比較して、約50%未満(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%未満)減少する。例えば、一部の実施態様では、照射によって不活化されたポリオ免疫原のD抗原含有量は、不活化前の精製ウイルスのD抗原含有量と比較して、例えば、約40%未満、約25%未満、または約7%未満減少する。
【0066】
照射によって不活化されたポリオ免疫原は、単純な溶液、例えば、水、標準的なバッファー、標準的な塩類溶液、および/または同様のものにおいて製剤化され得る。一部の実施態様では、アジュバントが本発明の組成物内に含まれてよく、それにより強さ(magnitude)を増大さえ得て、および/または、免疫応答の持続時間を延長させ得る。
【0067】
一部の実施態様では、本発明のポリオウイルス免疫原は、中和抗体(例えば、約8、10、25、50、80、100、300、500、800、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、12,000、14,000、16,000、20,000もしくはそれよりも高い、および/またはその中の任意の値もしくは範囲の中和抗体価)を刺激し得て、それは標準的なWistarラットモデルにおいて判定されてもよい。一部の実施態様では、本発明のポリオウイルス免疫原は、現行の市販ポリオワクチン(例えば、IPVおよび/またはOPV)と実質的に同様の量(例えば、±5%、10%、15%、または20%)の中和抗体を刺激し得て、それは標準的なWistarラットモデルにおいて判定されてもよい。一部の実施態様では、本発明のポリオウイルス免疫原は、現行の市販ポリオワクチン(例えば、IPVおよび/またはOPV)よりも増大した量(例えば、約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、もしくはそれよりも多い、または、例えば、約2-log、3-log、4-log、5-log、6-log、7-log、8-log、9-log、10-log、もしくはそれよりも多い)の中和抗体を刺激し得て、それは標準的なWistarラットモデルにおいて判定されてもよい。例えば、一部の実施態様では、本発明のポリオウイルス免疫原(例えば、照射されたポリオウイルス血清型1、2、および/または3)は、現行の市販ポリオワクチン(例えば、IPVおよび/またはOPV)によって提供される中和抗体の量の±20%未満の範囲内の量の中和抗体を刺激し得る。一部の実施態様では、本発明のポリオウイルス免疫原(例えば、照射されたポリオウイルス血清型1、2、および/または3)は、現行の市販ポリオワクチン(例えば、IPVおよび/またはOPV)によって提供される中和抗体の量の少なくとも約2倍の量の中和抗体を刺激する。一部の実施態様では、本発明のポリオウイルス免疫原(例えば、照射されたポリオウイルス血清型1、2、および/または3)は、現行の市販ポリオワクチン(例えば、IPVおよび/またはOPV)によって提供される中和抗体の量の少なくとも約2-logの量の中和抗体を刺激する。
【0068】
本発明の照射によって不活化されたポリオウイルスの使用は、1回の免疫用量内に含まれる抗原の量の減少を提供および/または可能にして用量節約の効果を発揮し得て、それにより、製造工程における精製された出発ウイルス(starting virus)の単位あたり、より多くの数の用量の生産を可能にし得る。一部の実施態様では、3つの血清型のうちの1つまたは複数に関する本発明のポリオウイルス抗原の用量は、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く、減少させることができ、それは現行の市販IPVワクチン(例えば、IPOLおよび/またはVeroPol)に関するD抗原含有量によって定義されてもよい。例えば、一部の実施態様では、血清型1、2、および/または3に関する本発明のポリオウイルス抗原の用量は、D抗原含有量および/または質量(例えばマイクログラム)によって現在定義される通常のヒト用量の1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、またはそれ未満へと減少され得る。一部の実施態様では、本発明の組成物(例えば、ワクチン)は、40未満のD抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、8未満のD抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV2血清型、および/または32未満のD抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV3血清型を含む。例えば、一部の実施態様では、本発明の組成物(例えば、ワクチン)は、約0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、約0.1、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV2血清型、および/または、約0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、もしくは32D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV3血清型を含んでよい。一部の実施態様では、本発明の組成物は、40D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、8D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV2血清型、および/または、32D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV3血清型を含む。一部の実施態様では、本発明の組成物は、20D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、8D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV2血清型、および/または、32D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV3血清型を含む。一部の実施態様では、本発明の組成物は、40D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、2D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV2血清型、および/または、32D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV3血清型を含む。一部の実施態様では、本発明の組成物は、40D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、8D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV2血清型、および/または、18D抗原量のD抗原含有量を有する照射不活化PV3血清型を含む。一部の実施態様では、本発明の組成物(例えば、ワクチン)は、PV1について40D抗原量、PV2について8D抗原量、および/またはPV3について30D抗原量を有する組成物(例えば、通常の1×ヒト用量)と比較して、約1/2、1/4、1/8、1/16、または1/32減少したD抗原含有量を有する照射不活化PV1血清型、PV2血清型、および/またはPV3血清型を含む。
【0069】
一部の実施態様では、本発明の免疫原および/または組成物(例えば、ワクチン)は、ポリオウイルス免疫原の抗原性質量(例えば、D抗原含有量)が、現行の市販ポリオウイルスワクチン(例えば、経口ポリオウイルスワクチンおよび/または電離放射線を用いて不活化されたものではない不活化ポリオウイルスワクチン(例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはホルマリン不活化ポリオワクチン))に関する標準的なヒト用量における抗原性質量(例えば、D抗原含有量)よりも少ない量(例えば、少なくとも約50%、25%、12.5%、または6%少ない)である場合に、ポリオウイルスに関する感染および/または疾患からの防御と相関する許容される中和力価(例えば、8および/または3-Logの力価)と同等またはそれよりも増大した/大きな中和力価を刺激し得る。一部の実施態様では、本発明の免疫原および/または組成物は、現行の市販ポリオウイルスワクチン(例えば、経口ポリオウイルスワクチンおよび/または電離放射線を用いて不活化されたものではない不活化ポリオウイルスワクチン(例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはホルマリン不活化ポリオワクチン)の質量によるD抗原含有量と同等またはそれよりも増大した/大きな、質量によるD抗原含有量(例えば、グラム重量あたり(例えば、マイクログラムまたはミリグラムあたり)のD抗原量)を有してよい。例えば、一部の実施態様では、本発明の方法は、ホルマリン不活化と比較して、より穏やかであり得て、および/または、エピトープに対する損傷がより少なく有り得る。したがって、本発明の免疫原1mgは、ホルマリン/ホルムアルデヒド-不活化ポリオウイルスと比較してより高いD抗原含有量を有し得て、したがって、ホルマリン/ホルムアルデヒド-不活化ポリオウイルスと比較して、ウイルスの単位あたり、より大きな数の用量を生産するのを可能にし得る。一部の実施態様では、本発明の免疫原および/または組成物(例えば、ワクチン)は、現行の市販ポリオウイルスワクチン(例えば、経口ポリオウイルスワクチンおよび/または電離放射線を用いて不活化されたものではない不活化ポリオウイルスワクチン(例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはホルマリン不活化ポリオワクチン)と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%またはそれよりも多く増大した、質量によるD抗原含有量(例えば、グラム重量あたりのD抗原量)を有し得る。
【0070】
本発明の免疫原および/または組成物は、任意の適切なパッケージおよび/またはコンテナー内に提供および/またはパッケージされてよい。一部の実施態様では、本発明の免疫原および/または組成物は、免疫原および/または組成物を対象に投与するのに適切なパッケージ内に提供され得る。一部の実施態様では、ガラスバイアル、アンプル、または当業者に公知の他のコンテナー内に、本発明の免疫原および/または組成物が含まれてよく、それは1回または多数回の用量であってもよい。
【0071】
対象へ投与される免疫原および/または本発明の組成物内に存在する免疫原の量は、典型的に、標的宿主において所望の免疫応答を誘導するのに十分な量である。一般に、用いられる用量は、用量あたり約0.1マイクログラム~約100マイクログラムのタンパク質(例えば、用量あたり約0.1、0.2、0、5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100マイクログラムのタンパク質、またはその中の任意の値もしくは範囲)であってよい。一部の実施態様では、用量は、D抗原濃度を用いて計算され得る。用量は、40、8、および32D抗原量のPV1、-2、および-3からなる現在認可されているIPVワクチンのD抗原含有量と相関してよく、または相関しなくてよい。一部の実施態様では、本発明の組成物(例えば、ワクチン)は、少なくとも1種の抗原を、IPVワクチンにおける量よりも少なくとも約10%少ない量(例えば、IPVワクチン(例えば、現行の市販IPVワクチン、例えば、IPOLおよび/またはVeroPol)における量よりも少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%少ない量)で含んでよい。例えば、一部の実施態様では、本発明の組成物は、少なくとも1種のPV1抗原をIPVワクチンにおける量よりも少なくとも約10%~約55%少ない量で含んでよく、少なくとも1種のPV2抗原をIPVワクチンにおける量よりも少なくとも約20%~約60%少ない量で含んでよく、または、少なくとも1種のPV3抗原をIPVワクチンにおける量よりも少なくとも約15%~約50%少ない量で含んでよい。
【0072】
本発明の照射によって不活化されたポリオウイルス免疫原を用いて、対象(例えばヒト)における防御免疫を刺激することができる。免疫原は、筋肉内、皮内、皮下、および/または同様の方法で、動物および/またはヒトに注入され得て、標準的なシリンジを用いてもよい。一部の実施態様では、本発明の免疫原は、マイクロニードル、皮膚表面に免疫原が浸透することができるようにデザインされたパッチ、および/または当業者に公知の他の方法を用いて動物またはヒトに導入され得る。
【0073】
一部の実施態様では、本発明の免疫原に関する製造工程は、免疫原を乾燥させる(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、および/または同様の方法によって乾燥させる)手順を含んでよい。一部の実施態様では、乾燥は、免疫原および/または免疫原含有組成物の耐熱性を、(例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、それよりも多く)増大させ得て、および/または、乾燥は、免疫原および/または免疫原含有組成物の測定される貯蔵寿命を、(例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、またはそれよりも長く)延長させ得て、それは、組成物の免疫原性の性質を維持することによるものであってもよい。乾燥工程は、本発明の免疫原を、当業者に公知の1または複数の安定化賦形剤(単数または複数)と、例えば制限されないが、ソルビトール、トレハロース、スクロース、ポリエチレングリコール、アミノ酸、および/または他の添加剤と、混ぜ合わせるステップを含んでよい。乾燥手順としては、凍結-乾燥(freeze-drying)、例えば、凍結乾燥(lyophilization)、噴霧乾燥、および/または当技術分野で知られている他の方法を利用し得る。
【0074】
一部の実施態様では、アジュバントが本発明のワクチン内に存在してよく、アジュバントは、改善された免疫応答を刺激し得るものであってもよい。アジュバントの例としては、限定されないが、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、モノホスホリルリピドA、サポニン誘導体(例えば、QS-21)、CpGのようなオリゴヌクレオチドを含む核酸、リポ多糖、油-および-水エマルション、スクアレン、サポニン、および/または他のアジュバント物質(単数または複数)(例えば、フラジェリン)が含まれる。
【0075】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてより詳細に説明される。
【実施例0076】
実施例1:ポリオウイルス血清型2 Sabin株(PV2S)
照射工程は、ウイルス製剤を湿潤氷上で放射線に曝露するステップを含んだ。その工程において、ポリオウイルスを、3mMのMnCl、3mMのデカペプチドDEHGTAVMLK(配列番号1)、および50mMリン酸バッファー(pH7.2)を含む抗酸化組成物と混合して、ポリプロピレンチューブ内に入れて、アルゴンを用いて周囲空気をパージして、X照射またはγ照射のいずれかに曝露した。本実施例では、有害な放射線からヒトユーザーを保護するための適切な遮蔽とともに放射性コバルト-60源を用いて、ウイルスを氷上で不活化させた。
【0077】
MDP複合体と混ぜ合わされた時点で、ウイルスを0~50kGyのγ照射に曝露した。図1は、PV2-Sabinの生存能力に対する、線量依存的な様式でのγ照射の効果を示す。図1の左パネルでは、ウイルス感染力を、最大35kGyまでのγ照射の線量に対するセミログプロットでグラフ化している。図1の挿入では、ウイルス感染力を、リニアプロットでグラフ化している。これらのグラフは、45kGyのγ照射が、16マイクログラムの精製PV2Sを含むウイルス製剤の感染力を100%破壊するのに十分であることを示す。
【0078】
MDP複合体と混ぜ合わせると、ウイルスの表面キャプシドタンパク質は分解から保護される。図2A~2Cは、照射されたPV2の3つの分析を示す。試験において、PV2-Sabinを0、5、10、20、30、40および45kGyの照射に曝露させた。図2Aおよび2Bでは、照射前に、ウイルスは、デカペプチド(Dp)およびMnCl(Mn2+)と混合され(下パネル)、または、Mn2+のみ若しくはDpのみと混合され(中央パネル)、またはいずれとも混合されなかった(上パネル)。図2Aについては、照射されたウイルスのサンプルを、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および2-メルカプトエタノール(2-ME)で変性させて、ポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動させて、メンブレンにトランスファーして、VP1キャプシドタンパク質に対する抗体を用いてプローブした。図は、照射前にDpおよびMn2+の両方を含む場合、タンパク質構成要素の保護をもたらすことを示す(下パネル)。図2Bについて、照射されたウイルスサンプルからRNAを抽出して、オリゴ(dT)を用いて逆転写させて、ゲノムのポリ(A)トラクトからcDNAのライブラリーを作製した。cDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるテンプレートとして用いて、照射増大に伴うゲノムRNAの断片化を評価した。PCR産物を2%アガロースゲルにおいて電気泳動させて、エチジウムブロマイド染色を用いてDNAフラグメントを可視化した。上側のバンドは、ヌクレオチド6786~7403(cDNAプライミング部位付近に存在する617塩基対)に対応するプライマーを用いて合成された。下側のバンドは、ヌクレオチド5478~5941(cDNAプライミング部位からさらに離れて存在する463塩基対)に対応するプライマーを用いて合成された。図2Bは、照射中にMDP複合体が存在する場合(下パネル)、RNAを損傷から保護しないことを示す。予期されたとおり、下側のバンド由来のシグナルは、ポリ(A)トラクト内のcDNA合成プライミング部位からの距離が大きいせいで、上側のバンド由来のシグナルよりも急速に減少する。したがって、図2Aおよび2Bは、MDP複合体はウイルスタンパク質を保護するが、ゲノムを断片化および不活化からは保護しないことを示す。図2Cは、非照射(上)および照射ウイルス(中央および下)の透過電子顕微鏡写真を示す。MDPの存在下では、ウイルス粒子は、MDP不存在化で照射された場合と比較して、断片化されないようである。
【0079】
照射されたウイルスの免疫原性の分析の前に、商業的に製造されたワクチン、IPOL(Sanofi Pasteur)およびVeroPol(Staten Serum Institute,Denmark)との比較のために、不活化ウイルス製剤をD抗原濃度に関して標準化した。D抗原アッセイは、抗原性の測定であり、ワクチン製剤の免疫原性を予測するために用いられていて、より高いD抗原含有量は、より高い免疫原性と相関する。アッセイは固相酵素結合抗体検出の形式で行われて、十分に標準化されている。40D抗原量のPV1、8D抗原量のPV2、および32D抗原量のPV3を含む1×ヒト用量に対して、照射されたウイルス製剤を標準化した。
【0080】
Wistarラットの免疫化は、ポリオウイルスワクチンの免疫原性を試験するために一般に用いられる方法である。ワクチンまたは試験抗原の筋肉内注入によって動物を免疫化して、最初の免疫化の35日後および49日後にサンプリングされたラット血清をウイルス中和抗体に関して分析する。1:8の中和力価は、感染および/または疾患からの保護をもたらす抗ウイルス抗体のレベルとして認められる。
【0081】
定量的な中和アッセイにおいて、一連の2倍希釈の抗体を、100組織培養感染単位(TCID50)のウイルスとともに1時間インキュベートする。抗体-ウイルス複合体を、ポリオウイルス・トロピックである指標細胞(indicator cells that are tropic for poliovirus)、例えばMRC-5細胞を含むレプリケート・ウェルに1時間アプライして、それから、結合しなかった物質を、標準的なリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を用いて洗い流す。標準的な増殖培地をウェルに添加して、プレートを37℃で3~4日間インキュベートして、ウイルスを複製させる。ウェルを顕微鏡によって感染または非感染としてスコア化する。Karber式を用いて中和力価を計算して、それは、感染ウェルの数を50%減少させる血清の希釈の逆数として表わされる。
【0082】
照射によって不活化された2型Sabin株(Ir-PV2S)の免疫原性を、Wistarラット免疫化試験においてIPOLおよびVeroPolと比較した。1×または0.5×用量のIr-PV2Sを用いた免疫化は、IPOLとほぼ同等の力価の抗-PV2中和抗体を刺激した(図3パネルA、B、C、およびD)。
【0083】
Ir-PV2SおよびVeroPolの免疫原性を、減少する用量の抗原を用いて比較した。2つの抗原の間の比較に加えて、用量節約の理由で、減少した用量が防御レベルの中和抗体を刺激することができるかどうか判定するための試験を行なった。図3のパネルEおよびFは、減少する量の免疫原を用いて免疫化されたグループにおける個々のラット血清に関する抗-PV2中和力価を示す。データポイントの最も左のペアでは、1/8(8分の1)用量の抗原(1D抗原量)で免疫化されたラット由来の血清は、Ir-PV2S血清(三角で示される)が抗-VeroPol血清と比較してより高い中和力価を有することを示す。図は、VeroPol用量をさらに減少させると、PV2中和抗体をほとんど検出できない程度にしか刺激しないことを示す。対照的に、通常のヒト用量の1/64(64分の1)または0.125D抗原量という少ない量のIr-PV2Sは、中和抗体を刺激するのに十分であった。
【0084】
実施例2:ポリオウイルス血清型1 Sabin株(PV1S)
γ照射を用いてPV1Sを不活化させた。工程において、PV1Sを、3mMのMnCl、3mMのデカペプチドDEHGTAVMLK(配列番号1)、および50mMリン酸バッファー(pH7.2)を含む抗酸化組成物と混合して、ポリプロピレンチューブ内に入れた。周囲空気をアルゴンでパージして二原子酸素を除去し、チューブをγ照射に曝露させた。本実施例では、有害な放射線からヒトユーザーを保護するための適切な遮蔽とともに放射性コバルト-60源(約12kGy/hr)を用いて、ウイルスを氷上で不活化させた。
【0085】
照射によって不活化されたポリオウイルス1型Sabin株(Ir-PV1S)の免疫原性を、Wistarラット免疫化モデルにおいてIPOLおよびVeroPolと比較した。8匹のラットのグループを、1×または0.5×ヒト用量同等物(それぞれ40または20D抗原量のPV1抗原を含む)のいずれかを用いて免疫化した。ラットのコントロール群を、MDP複合体を添加せずに照射されたウイルスを用いて免疫化した。図4は、4つの抗原による最初の免疫化の35日後および49日後のラット由来の血清サンプルの中和力価を示す。1×用量のIPOLを用いて免疫化されたラット由来の血清を丸で示し、1×用量のVeroPolを四角で示し、MDPありで1×用量のIr-PV1Sの場合を三角で示し、MDPなしで1×用量のIr-PV1の場合を丸で示す。半分の用量(0.5×)で免疫化されたラット由来の血清を右パネルに示す。水平な線は、Log-2値として表されるラット群の平均力価を示す。1×用量のIr-PV1Sでは、8匹のラットのうち6匹が、8または3-Logという保護的な力価レベルに血清転換した。対照的に、MDP複合体の不存在下で生産されたIr-PV1Sで免疫化されたラットは1匹も血清転換しなかった。半分の用量(0.5×)では、Ir-PV1Sは、同等の用量で投与されたIPOLとほぼ同等の力価を刺激した(右パネル)。
【0086】
実施例3:UVC放射線を用いたPV1 Sabinの不活化
ポリオウイルスは、UVC光に曝露することによって不活化され得るが、中和エピトープはそれほど破壊されない。PV1 Sabinを、3mMのDP1デカペプチド、3mMのMnClおよび50mMのリン酸カリウムバッファー(pH7.2)を含むMDPと複合化した。ウイルス-MDP複合体を、UVC光に対して透明のチューブ内に入れた。サンプルを、0.7mW/cmを放射するUVC光に60分間または5mW/cmを放射するUVC光に2分間曝露した。標準的な感染力アッセイを用いて不活化の工程を評価した。薄い壁のUVC透明チューブ内にウイルスを入れた場合、照射はポリオウイルスの感染力をより急速に不活化させる。フォローアップ試験では、5mW/cmを放射する光を用いた10秒または20秒という短さの照射によって、全ての検出可能な感染力が不活化された(データ図示せず)。
【0087】
UVC-不活化ポリオウイルスの免疫原性は、免疫化されたラット由来の血清の分析によって評価することができる。Wistarラットを、40D抗原量(1×ヒト用量)のUVC-不活化PV1 Sabinを用いた筋肉内注入によって、0日目および21日目に免疫化した。アジュバントは用いなかった。4週後、49日目に、中和抗体の分析のために血清サンプルをラットから回収した。図5は、UVC-不活化PV1を用いて免疫化されたラットから生産された血清由来の、中和活性のリニア力価およびLog-2力価を示す。MDPを用いたPV1 Sabin由来の血清の平均Log2力価は9.7であり、それは1,960のリニア力価に相当するものであった。MDPを用いないPV1 Sabin由来の血清の平均Log2力価は4.4であり、1:229.3の力価に相当するものであった。図5によるデータを図6にグラフ化する。図6は、MDPあり(塗りつぶされた丸)およびMDPなし(塗りつぶされていない丸)のUVC-照射PV1 Sabinによって免疫化されたラット由来の血清のLog-2力価のグラフを示す。水平の線は平均Log-2力価を示す。
【0088】
実施例4:UVC光を用いたPV3 Sabinの不活化
全てのウイルスが、γ照射を用いることによって防御エピトープを損傷させずに不活化され得るわけではない。PV3 Sabinの場合は、40kGyのγ照射に対する曝露によって、ウエスタンブロット分析によって損傷されていないように見える抗原を生じたが、D抗原濃度は非常に減少した。多数の実験において、D抗原の量は、およそ60,000ユニット/mLから、検出できないレベルにまで減少した(データ図示せず)。予期されたとおり、γ照射を用いて感染力が不活化されたPV3 Sabin-MDP複合体を用いて免疫化されたラットは、許容できる抗-PV3中和力価をマウントしなかった(did not mount)(データ図示せず)。
【0089】
UVC光に対する曝露によるPV3 Sabinの不活化を調べた。PV1 Sabinと同様に、ウイルスサンプルを、MDPを用いてまたは用いずに複合化した(3mMのDp1デカペプチド、3mMのMnCl、および50mMのリン酸カリウムバッファー、pH7.2)。0.7mW/cmを放射するUVC光に3、10、および30分間曝露させた後に、Hela細胞を用いて感染力に関してサンプルの力価を測定した。図7の左パネルは、MDPあり(丸)またはMDPなし(三角)でUVCに曝露したPV3 SabinのLog-10感染価を示す。感染価曲線にほとんど違いはなく、MDP複合体の存在または不存在は、感染力の不活化に対してほとんど影響しないことを示す。MDP複合体の存在下でUVC光によって処理されたPV3 Sabinサンプルを、中和抗体を刺激するウイルスエピトープの保護に関して、D抗原ELISAアッセイを用いて評価した(図7、右パネル)。高い線量のUVC照射は、ほとんど全ての感染力を不活化させるが、D抗原濃度をたった25%しか減少させない。同じUVC源による60分の曝露は、中和エピトープの免疫原性活性を維持しながら感染力を100%不活化する。
【0090】
免疫原性のより決定的な測定を提供するために、UVC-不活化PV3 Sabinを用いてラットを免疫化した。この実施例では、MDPを用いたPV3 SabinサンプルおよびMDPを用いないPV3 Sabinサンプルを、0.7mW/cmを放射するUVC光に60分間曝露して、検出可能な感染力がないことが分かった。デュプリケートサンプルをD抗原濃度に関して分析して、2×、1×、1/2×、および1/8×ヒト用量(それぞれ、64、32、16、および4D抗原量)に相当するサンプルを、アジュバントを用いずに製剤化した。0日目および21日目にラットを筋肉内注入によって免疫化して、49日目に血清のために出血させた。図8は、UVC-不活化PV3 Sabinを用いて免疫化されたラットから生産された血清による中和活性のリニアおよびLog-2の力価を示し、各グループに関する平均値も示す。図9は、図8に示されるデータをグラフ化する。図9は、MDPあり(クローズ記号)またはMDPなし(オープン記号)のPV3 Sabinを用いて免疫化された個々のラットに関するLog-2力価を示す。水平な線は、平均のグループ力価を示す。MDPを含むことにより、UVC-不活化の間の中和エピトープの保護が改善される。中和力価の改善に対するMDPの効果は、少ない抗原用量を用いてラットが免疫化された場合により顕著である。標準的なヒト用量の1/8と同等の用量では、UVC-不活化PV3 Sabinは、MDP複合体の存在下で照射された場合、3-Log2の許容される保護的な力価よりも高い中和力価を刺激した。
【0091】
前述のものは本発明を例示するものであり、それを限定するものと解釈されるべきでない。本発明は以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物がそれに含まれる。本明細書中で引用した全ての刊行物、特許出願、特許、特許公開、および他の参考文献は、参考文献が示されている文章および/または段落に関連する教示のために、それら全体で参照により援用される。
図1
図2A-C】
図3
図3-1】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024001100000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオウイルス免疫原であって、
前記ポリオウイルス免疫原は不活化されていて、
ここで前記ポリオウイルス免疫原は、ポリオウイルス血清型1、2、および/または3の弱毒化および/または神経病原株を含む、
ポリオウイルス免疫原。
【外国語明細書】