(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110013
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】延焼防止材、組電池及び自動車
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240807BHJP
D04H 1/4209 20120101ALI20240807BHJP
D21H 21/34 20060101ALI20240807BHJP
D21H 17/68 20060101ALI20240807BHJP
D21H 13/38 20060101ALI20240807BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240807BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240807BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240807BHJP
D21H 27/30 20060101ALN20240807BHJP
【FI】
B32B9/00 A
D04H1/4209
D21H21/34
D21H17/68
D21H13/38
H01M10/658
H01M10/625
H01M10/651
D21H27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105143
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】水田 航平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大雅
(72)【発明者】
【氏名】田原 和人
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
4L055
5H031
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
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4L047AA01
4L047AA04
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4L047CA05
4L047CA19
4L047CB04
4L055AF01
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4L055AG05
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4L055AH18
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5H031EE03
5H031HH03
5H031HH06
5H031HH08
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】断熱性及び延焼防止性に優れる延焼防止材を提供することを目的とする。
【解決手段】多層構成の延焼防止材10であって、SiO
2/Na
2Oモル比が3.1未満のケイ酸ナトリウムを含む層Aと、沈降シリカを含む層Bと、を少なくとも備える、延焼防止材10。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構成の延焼防止材であって、
SiO2/Na2Oモル比が3.1未満のケイ酸ナトリウムを含む層Aと、
沈降シリカを含む層Bと、を少なくとも備える、延焼防止材。
【請求項2】
前記層Aは、100~300℃の温度範囲で吸熱する層であり、
前記層Aを100℃から300℃まで50℃/分で加熱したときの重量減少率が13質量%以上である、請求項1に記載の延焼防止材。
【請求項3】
前記層Aが、無機繊維基材と、該無機繊維基材に含浸された前記ケイ酸ナトリウムと、を含む層である、請求項1又は2に記載の延焼防止材。
【請求項4】
前記無機繊維基材が不織布である、請求項3に記載の延焼防止材。
【請求項5】
前記ケイ酸ナトリウムの含有量が、前記層Aの全質量を基準として、60質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項6】
前記層Aの厚さが0.2~3.0mmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項7】
前記層Bが、多孔質構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項8】
前記層Bが、無機繊維を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項9】
前記層Bが、前記沈降シリカ、無機繊維及び有機バインダーを含む湿式抄造シートで構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項10】
前記沈降シリカの含有量が、前記層Bの全質量を基準として、20~50質量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項11】
第一層、第二層及び第三層がこの順で並ぶ多層構成を有し、前記第一層及び前記第三層が前記層Bであり、前記第二層が前記層Aである、請求項1~10のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項12】
総厚が5.0mm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項13】
見かけ密度が1.0g/cm3以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項14】
熱伝導率が0.15W/mK以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項15】
2以上のセルを備える組電池の該セル間に配置して用いられる、請求項1~14のいずれか一項に記載の延焼防止材。
【請求項16】
2以上のセルと、該セル間に配置された、請求項1~15のいずれか一項に記載の延焼防止材と、を備える、組電池。
【請求項17】
請求項16に記載の組電池を搭載した自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延焼防止材、組電池及び自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電動化の普及に伴い、自動車用の組電池及びこれに用いられるセルの開発が進められている。自動車用の組電池の中でも、特に高エネルギー密度を特徴とするリチウムイオン電池(LiB)セルを用いた組電池では、熱暴走等の異常が発生するリスクがあることから、セルの安全性を高めるための技術の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、リチウムイオン電池の内部短絡等による急激な温度上昇と熱逸走状態を回避することを目的として用いられる、吸熱シートが提案されている。また、特許文献2では、熱逸走状態の発生に起因する連鎖反応を抑える技術として、隣接する二次電池の間に断熱性プラスチック製の熱暴走防止壁を設け、熱暴走が他の二次電池の熱暴走を誘発するのを防止する構造について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-53196号公報
【特許文献2】特許第4958409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の吸熱シートは、断熱性及び延焼防止性が必ずしも充分とはいえない。また、特許文献2の熱暴走防止壁は、二次電池と熱伝導筒とが一体的に成形されており、複雑な独自構成を有している上、プラスチック製防止壁自体への延焼については考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明は、断熱性及び延焼防止性に優れる延焼防止材、該延焼防止材を用いた組電池、及び、該組電池を備える自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す[1]~[17]を提供する。
【0008】
[1] 多層構成の延焼防止材であって、SiO2/Na2Oモル比が3.1未満のケイ酸ナトリウムを含む層Aと、沈降シリカを含む層Bと、を少なくとも備える、延焼防止材。
【0009】
[2] 前記層Aは、100~300℃の温度範囲で吸熱する層であり、前記層Aを100℃から300℃まで50℃/分で加熱したときの重量減少率が13質量%以上である、[1]に記載の延焼防止材。
【0010】
[3] 前記層Aが、無機繊維基材と、該無機繊維基材に含浸された前記ケイ酸ナトリウムと、を含む層である、[1]又は[2]に記載の延焼防止材。
【0011】
[4] 前記無機繊維基材が不織布である、[3]に記載の延焼防止材。
【0012】
[5] 前記ケイ酸ナトリウムの含有量が、前記層Aの全質量を基準として、60質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0013】
[6] 前記層Aの厚さが0.2~3.0mmである、[1]~[5]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0014】
[7] 前記層Bが、多孔質構造を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0015】
[8] 前記層Bが、無機繊維を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0016】
[9] 前記層Bが、前記沈降シリカ、無機繊維及び有機バインダーを含む湿式抄造シートで構成される、[1]~[8]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0017】
[10] 前記沈降シリカの含有量が、前記層Bの全質量を基準として、20~50質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0018】
[11] 第一層、第二層及び第三層がこの順で並ぶ多層構成を有し、前記第一層及び前記第三層が前記層Bであり、前記第二層が前記層Aである、[1]~[10]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0019】
[12] 総厚が5.0mm以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0020】
[13] 見かけ密度が1.0g/cm3以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0021】
[14] 熱伝導率が0.15W/mK以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0022】
[15] 2以上のセルを備える組電池の該セル間に配置して用いられる、[1]~[14]のいずれかに記載の延焼防止材。
【0023】
[16] 2以上のセルと、該セル間に配置された、[1]~[15]のいずれかに記載の延焼防止材と、を備える、組電池。
【0024】
[17] [16]に記載の組電池を搭載した自動車。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、断熱性及び延焼防止性に優れる延焼防止材、該延焼防止材を用いた組電池、及び、該組電池を備える自動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、一実施形態の延焼防止材の層Aを示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の延焼防止材を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0028】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
一実施形態の延焼防止材は、多層構成の延焼防止材であって、SiO2/Na2Oモル比が3.1未満のケイ酸ナトリウム(以下、「低SiO2ケイ酸ナトリウム」という)を含む層Aと、沈降シリカを含む層Bと、を少なくとも備える。
【0030】
上記特徴を備える延焼防止材は、断熱性及び延焼防止性に優れる。そのため、上記延焼防止材は、例えば、2以上のセルを備える組電池(特にリチウムイオン電池)の該セル間に配置して用いられる。延焼防止材は、例えば2以上のセルを備える組電池に用いられるセパレータである。組電池が上記延焼防止材をセパレータとして備えることにより、平常時にはセル-セル間の熱伝達が抑えられ、異常時には隣接セルへの熱の波及が抑えられる。そのため、例えば、上記延焼防止材を自動車用の組電池に用いると、組電池の安全性を高め、異常時における使用者の退避時間を確保し、被害を最小限に抑えることができる。
【0031】
ところで、自動車用の組電池には、セルの安全性を担保することに加え、航続距離の観点から更なる軽量化も求められている。この点、上記延焼防止材は、層Aを薄膜とした場合であっても高い延焼防止性が得られやすい。また、上記沈降シリカは多孔質で軽量であることから、延焼防止材の軽量化に寄与する。これらの理由から、上記延焼防止材によれば、高い延焼防止性を維持しながら、上記軽量化の要求も満たすことが可能である。
【0032】
また、上記延焼防止材の層Bは、層Aと比較して柔軟性を有する傾向があり、セルの充放電時の膨張収縮に追従して変形しやすい。そのため、層Bがセル側に配置されるような層構成とすることで、セルの充放電時の膨張収縮によるセルへの機械的負荷を低減することもできる。
【0033】
以下では、まず、延焼防止材を構成する層A及び層Bについて説明する。
【0034】
(層A)
層Aは低SiO2ケイ酸ナトリウムを含む。低SiO2ケイ酸ナトリウムは、Na2O・nSiO2・mH2O(nは3.1未満の正の数を示し、mは0又は正の数を示す)で表される化合物である。
【0035】
低SiO2ケイ酸ナトリウムのSiO2/Na2Oモル比(上記式中のn)は、3.1未満であり、より優れた延焼防止性が得られる観点から、2.7以下又は2.3以下であってもよい。低SiO2ケイ酸ナトリウムのSiO2/Na2Oモル比は、延焼防止材の生産性の観点から、1.0以上であってよく、1.5以上又は2.0以上であってもよい。これらの観点から、低SiO2ケイ酸ナトリウムのSiO2/Na2Oモル比は、1.0以上3.1未満、1.5~2.7又は2.0~2.3であってよい。
【0036】
低SiO2ケイ酸ナトリウムの含有量は、より優れた延焼防止性が得られる観点から、層Aの全質量を基準として、60質量%以上であってよく、70質量%以上又は75質量%以上であってもよい。低SiO2ケイ酸ナトリウムの含有量は、より軽量な延焼防止材が得られる観点から、層Aの全質量を基準として、98質量%以下であってよく、95質量%以下又は90質量%以下であってもよい。これらの観点から、低SiO2ケイ酸ナトリウムの含有量は、層Aの全質量を基準として、60~98質量%、70~95質量%又は75~90質量%であってよい。
【0037】
層Aは、
図1に示すように、無機繊維基材1と、該無機繊維基材1に含浸された低SiO
2ケイ酸ナトリウム2と、を含む層であってもよい。なお、
図1中のAは層Aを示す。
【0038】
無機繊維基材1は、無機繊維を主成分として構成される基材であり、無機繊維間には複数の空隙(細孔)が形成されている。すなわち、無機繊維基材1は多孔質構造を有する。そのため、無機繊維基材1に低SiO
2ケイ酸ナトリウムの水溶液を含浸させて乾燥することにより、無機繊維基材1の空隙内に低SiO
2ケイ酸ナトリウムが充填され、
図1に示す層Aを形成することができる。ケイ酸ナトリウムの水溶液としては、例えば、JIS K1408に規定される、1号ケイ酸ナトリウム、2号ケイ酸ナトリウム等を使用することができる。乾燥条件は、層Aの硬度を高める観点から、適宜調整してよい。
【0039】
本明細書において、無機繊維は、長さが1mm以上であり、アスペクト比(長さ/幅)が100以上である繊維状の物体であり、沈降シリカ等の無機粒子(非繊維状の物体)とは区別される。無機繊維の長さ(繊維長)は、例えば、3~12mmである。無機繊維の幅(繊維径)は、例えば、3~10μmである。
【0040】
無機繊維基材1を構成する無機繊維の構成材料としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、炭素、炭化ケイ素(SiC)等が挙げられる。これらの中でも、無機繊維が、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含む場合、より高い断熱性及び延焼防止性が得られる傾向がある。このような無機繊維としては、例えば、アルミナシリカ繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、バサルト繊維、ロックウール等が挙げられる。これらの中でも、無機繊維が、アルミナシリカ繊維又はシリカ繊維である場合、より高い断熱性及び延焼防止性が得られる傾向がある。無機繊維の平均繊維径は、例えば、5~10μmであってよい。ここで、平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡等の顕微鏡観察により測定される値である。無機繊維基材1を構成する無機繊維は、一種であっても複数種であってもよい。
【0041】
無機繊維の含有量は、層Aの全質量を基準として、例えば、1質量%以上であり、より優れた延焼防止性を確保する観点から、5質量%以上、8質量%以上又は10質量%以上であってよい。無機繊維の含有量は、延焼防止材の生産性の観点から、層Aの全質量を基準として、40質量%以下であってよく、35質量%以下、30質量%以下又は20質量%以下であってもよい。これらの観点から、無機繊維の含有量は、層Aの全質量を基準として、1~40質量%、1~35質量%、5~35質量%、8~30質量%又は10~20質量%であってよい。
【0042】
図示しないが、無機繊維基材1は、無機繊維同士を連結する有機バインダーを更に含んでいてもよい。有機バインダーは、例えば室温(例えば25℃)以下のガラス転移点を有する樹脂であってよく、水溶性樹脂であってもよい。有機バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂(ビニロン等)、エポキシ樹脂、セルロースミクロフィブリル等のセルロースなどが挙げられる。セルロースミクロフィブリルとは、ミクロフィブリル化したセルロース繊維をいう。無機繊維基材1に含まれる有機バインダーは、一種であっても複数種であってもよい。
【0043】
有機バインダーの含有量は、基材強度を高める観点から、無機繊維基材の全質量を基準として、3質量%以上であってよく、5質量%以上又は8質量%以上であってよい。有機バインダーの含有量は、不燃性の観点から、無機繊維基材の全質量を基準として、20質量%以下であってよく、18質量%以下又は15質量%以下であってもよい。これらの観点から、有機バインダーの含有量は、無機繊維基材の全質量を基準として、3~20質量%、5~18質量%又は8~15質量%であってよい。
【0044】
無機繊維基材1としては、低SiO2ケイ酸ナトリウムの保持性に優れる基材を用いることが好ましい。無機繊維基材1は、基材に浸透した低SiO2ケイ酸ナトリウムの保持性に優れる観点から、好ましくは不織布であり、より好ましくは、湿式抄造法により形成されるシート(湿式抄造シート)である。湿式抄造法では、材料(無機繊維、有機バインダー等)を水に分散させて得られた分散液を抄紙用スクリーンに抄造し、乾燥することにより無機繊維基材(不織布)を製造する。この方法によれば、均一に分散した空隙を有する無機繊維基材(不織布)を容易に得ることができる。そのため、湿式抄造シートは、均一に分散した空隙を有する傾向があり、低SiO2ケイ酸ナトリウムの保持性に優れる傾向がある。無機繊維基材1の見かけ密度は、例えば80~200kg/m3であってよく、目付量は、例えば厚さ1.0mmの場合、100~170g/m2であってよい。
【0045】
無機繊維基材1の厚さは、例えば、0.2~3.0mmである。無機繊維基材1の厚さは、層Aの厚さと等しくてよい。すなわち、層Aが、無機繊維基材1と、該無機繊維基材1中に含まれる成分(低SiO2ケイ酸ナトリウム2等)と、からなる層であってもよい。層Aが有する無機繊維基材1は、後述するように、層Bを構成する無機繊維シートの一部であってもよい。層Aは、低SiO2ケイ酸ナトリウムが含浸された複数の繊維基材(例えば複数の繊維基材の積層体)で構成されていてもよい。
【0046】
層Aの厚さは、より優れた延焼防止性能を確保する観点から、0.2mm以上であってよく、0.5mm以上又は1mm以上であってもよい。層Aの厚さは、より軽量な延焼防止材が得られる観点から、3.0mm以下であってよく、2.5mm以下又は2.0mm以下であってもよい。これらの観点から、層Aの厚さは、0.2~3.0mm、0.5~2.5mm又は1~2.0mmであってもよい。
【0047】
層Aは、100~300℃の温度範囲で吸熱する層であってよい。層Aの吸熱は、例えば、熱重量-示差熱分析(TG-DTA)測定により確認することができる。層Aの吸熱は、例えば、層A中に含まれる水(例えばケイ酸ナトリウム中の水分子)が100~300℃の温度範囲で吸熱反応を起こすことにより生じる。そのため、層Aに含まれる水分量により層Aの吸熱量を調整することが可能である。層A中の水分量は、加熱による重量減少率(例えば、層Aを100℃から300℃まで50℃/分で加熱したときの重量減少率)により確認できる。
【0048】
吸熱反応が起こると層Aの重量が減少する。例えば、層Aを100℃から300℃まで50℃/分で加熱したときの重量減少率が13質量%以上であると、100~300℃の温度範囲における層Aの吸熱量が大きく、より優れた断熱性及び延焼防止性が得られる傾向がある。このような観点から、層Aを100℃から300℃まで50℃/分で加熱したときの重量減少率は、15質量%以上又は17質量%以上であってもよい。層Aを100℃から300℃まで50℃/分で加熱したときの重量減少率は、耐水性を向上させる観点から、30質量%以下であってよく、28質量%以下又は25質量%以下であってもよい。これらの観点から、層Aを100℃から300℃まで50℃/分で加熱したときの重量減少率は、13~30質量%、15~28質量%又は17~25質量%であってよい。なお、重量減少率は、下記式により算出される。
式:重量減少率(質量%)=[[層Aの重量減少量]/[層Aの100℃での質量]]×100
ここで、層Aの重量減少量とは、層Aの100℃での質量と層Aの300℃での質量の差である。
【0049】
(層B)
層Bは沈降シリカを含む。沈降シリカは、湿式法の一種である沈降法で得られる非晶質のシリカ粒子である。本実施形態では、層Bが沈降シリカを含むことにより延焼防止材が断熱性及び延焼防止性に優れる。この理由は明らかではないが、沈降シリカが高い保水性を有することから、層Bに高い断熱性を付与するのみでなく、層Aの延焼防止効果の向上に寄与するためと推察される。
【0050】
沈降シリカの平均粒子径は、例えば、10~100μmである。ここで、沈降シリカの平均粒子径は、レーザー回折式粒度測定機によって測定される、体積累積粒径D50の値である。沈降シリカの平均粒子径は、取り扱い性の観点から、13μm以上又は15μm以上であってもよい。沈降シリカの平均粒子径は、充填性の観点から、90μm以下又は80μm以下であってもよい。これらの観点から、沈降シリカの平均粒子径は、13~90μm又は15~80μmであってもよい。
【0051】
沈降シリカは多孔質構造を有する。沈降シリカの吸油量は、例えば、1.4~2.6ml/gであり、BET比表面積は、例えば、200~300m2/gである。ここで、沈降シリカの吸油量は、アブソープトメーターによって測定される値であり、BET比表面積は、窒素吸着等温線にBET法を適用することによって測定される値である。
【0052】
沈降シリカとしては、市販されている沈降シリカを使用できる。市販品としては、CARPLEX(エボニック製)、トクシール(Oriental Silicas Corporation製)等が挙げられる。
【0053】
沈降シリカの含有量は、層Bの断熱性が高まり、より優れた延焼防止性が得られる観点から、層Bの全質量を基準として、20質量%以上であってよく、25質量%以上又は30質量%以上であってよい。沈降シリカの含有量は、過剰添加による粉落ち防止の観点から、層Bの全質量を基準として、50質量%以下であってよく、45質量%以下又は40質量%以下であってもよい。これらの観点から、沈降シリカの含有量は、層Bの全質量を基準として、20~50質量%、25~45質量%又は30~40質量%であってよい。
【0054】
層Bは、軽量性の観点から、多孔質構造を有していてよい。
【0055】
層Bは、沈降シリカに加えて、無機繊維を更に含んでいてもよい。この場合、無機繊維間には、複数の無機繊維が互いに絡み合うことで複数の空隙(細孔)が形成されていてよい。すなわち、層Bは、無機繊維に由来する多孔質構造を有していてよい。
【0056】
層Bに含まれる無機繊維としては、上述した無機繊維基材1を構成する無機繊維として例示したものが挙げられる。層Bに含まれる無機繊維は、一種であっても複数種であってもよい。無機繊維は、より高い延焼防止性が得られる観点から、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含むことが好ましく、アルミナシリカ繊維及びシリカ繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維であることがより好ましい。
【0057】
無機繊維の含有量は、層Bの強度を向上させる観点から、層Bの全質量を基準として、20質量%以上であってよく、25質量%以上又は30質量%以上であってもよい。無機繊維の含有量は、層Bの密度を抑える観点及び沈降シリカの含有量を確保する観点から、層Bの全質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下又は50質量%以下であってもよい。これらの観点から、無機繊維の含有量は、層Bの全質量を基準として、20~70質量%、25~60質量%又は30~50質量%であってよい。
【0058】
層Bは、沈降シリカ以外の無機粒子を更に含んでいてもよい。層Bに含まれる無機繊維及び無機粒子の合計量は、延焼防止性能をより向上させる観点から、層Bの全質量を基準として、40質量%以上であってよく、50質量%以上又は60質量%以上であってもよい。層Bに含まれる無機繊維及び無機粒子の合計量は、生産性の観点から、層Bの全質量を基準として、95質量%以下であってよく、90質量%以下又は80質量%以下であってもよい。これらの観点から、層Bに含まれる無機繊維及び無機粒子の合計量は、層Bの全質量を基準として、40~95質量%、50~90質量%又は60~80質量%であってよい。
【0059】
層Bは、無機繊維同士を連結する有機バインダーを更に含んでいてもよい。有機バインダーとしては、上述した無機繊維基材1に含まれ得る有機バインダーとして例示したものが挙げられる。層Bに含まれる有機バインダーは、一種であっても複数種であってもよい。有機バインダーの含有量は、高温雰囲気下における発火を抑制する観点から、層Bの全質量を基準として、5~30質量%、7~20質量%又は8~15質量%であってよい。
【0060】
層Bは、より効果的に沈降シリカの含有量を向上させる観点から、凝集剤を更に含んでいてもよい。凝集剤としては、例えば、ポリアミジン系高分子が挙げられる。凝集剤の含有量は、有機成分量を抑制する観点から、層Bの全質量を基準として、0.1~5質量%、0.3~4質量%又は0.5~3質量%であってよい。
【0061】
層Bは、低SiO2ケイ酸ナトリウム以外のケイ酸ナトリウムを含んでいてもよいが、好ましくは、ケイ酸ナトリウムを含まない層である。層Bに含まれるケイ酸ナトリウムの含有量は、例えば、層Bの全質量を基準として、10質量%以下であり、5質量%以下又は3質量%以下であってもよい。
【0062】
層Bは、例えば、沈降シリカを含む無機繊維シートで構成されていてよく、湿式抄造シートで構成されていてもよい。湿式抄造シートは、均一に分散した空隙を有する傾向があるため、湿式抄造シートを用いることで、延焼防止材の製造時に、隣接する層Aからの低SiO2ケイ酸ナトリウムの浸透を防止しやすくなる、層A形成時の乾燥による硬化を促進しやすくなるといった効果が得られる。そのため、層Bが湿式抄造シートで構成される場合、延焼防止性により一層優れる傾向がある。湿式抄造シートは、例えば、沈降シリカと、上記無機繊維と、有機バインダーと、(任意で凝集剤と)を水に分散させて得られた分散液を抄紙用スクリーンに抄造し、乾燥することにより得られる湿式抄造シートであってよい。層Bの密度は、例えば200~500kg/m3であってよく、目付量は、例えば厚さ1.0mmの場合、100~250g/m2であってよい。
【0063】
層Bの厚さは、より優れた断熱性及び層Aの熱的劣化抑制の観点から、0.2mm以上であってよく、0.5mm以上又は0.8mm以上であってもよい。層Bの厚さは、総厚みを抑える観点から、2.0mm以下であってよく、1.5mm以下又は1.3mm以下であってもよい。これらの観点から、層Bの厚さは、0.2~2.0mm、0.5~1.5mm又は0.8~1.3mmであってよい。
【0064】
以上、層A及び層Bについて説明したが、延焼防止材は、層A及び層Bを備える限り、2層構成であっても、3層以上の構成であってもよい。延焼防止材は、1又は複数の層Aと1又は複数の層Bとからなっていてよく、層A及び層B以外の層を更に備えていてもよい。複数の層Aは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数の層Bは互いに同一であっても異なっていてもよい。延焼防止材は、2以上のセルを備える組電池の該セル間に配置して用いられる場合、対称構造を有することが好ましい。
【0065】
延焼防止材は、セルの充放電時の膨張収縮によるセルへの機械的負荷を低減しやすく、層Aの劣化を抑制する観点から、
図2に示すように、層B(第一層11)、層A(第二層12)及び層B(第三層13)がこの順で並ぶ多層構成を有する延焼防止材10であってよい。この場合、第一層11を構成する層Bと第三層13を構成する層Bは、互いに同一であっても異なっていてもよい。上記観点では、最外層(積層方向の一端及び他端に位置する層)の少なくとも一方が層Bであることが好ましく、最外層(積層方向の一端及び他端に位置する層)の両方が層Bであることがより好ましい。
【0066】
図3は、
図2中のIIIで示す領域を拡大して示す部分拡大図である。上記
図2における層A(第二層12)は、
図3に示すように、沈降シリカ20を含む第一領域21と、沈降シリカ20を含まない第二領域22と、を有していてよい。第一領域21は、例えば、無機繊維基材23に低SiO
2ケイ酸ナトリウム24が含浸されてなる領域である。第二領域22は、例えば、層B(第一層11)を構成する無機繊維シート25の一部に低SiO
2ケイ酸ナトリウム24が含浸されてなる領域である。このように、層Bを構成する無機繊維シートの一部に層Aが形成されていてもよい。第一領域21は、第三層13側に形成されていてもよい。
【0067】
延焼防止材は、例えば絶縁性を有する。ここで、絶縁性を有するとは、体積抵抗率測定により測定される電気抵抗率が108Ω・cm以上であることを意味する。
【0068】
延焼防止材は、例えば、シート状である。延焼防止材の総厚(積層方向の厚さ)は、延焼防止材のために必要となるスペースを抑える観点から、5.0mm以下であってよく、4.0mm以下又は3.0mm以下であってもよい。延焼防止材の総厚は、より高い延焼防止性が得られる観点から、1.0mm以上であってよく、1.2mm以上又は1.5mm以上であってもよい。これらの観点から、延焼防止材の総厚は、1.0~5.0mmであってよく、1.2~4.0mm又は1.5~3.0mmであってよい。
【0069】
延焼防止材の熱伝導率は、例えば、0.15W/mK以下であり、0.13W/mK以下又は0.1W/mK以下とすることもできる。延焼防止材の熱伝導率は低いほど好ましい。延焼防止材の熱伝導率の下限は、例えば、0.03W/mKである。すなわち、延焼防止材の熱伝導率は、0.03~0.15W/mK、0.03~0.13W/mK又は0.03~0.1W/mKであってよい。延焼防止材の上記熱伝導率は、層A中の低SiO2ケイ酸ナトリウムの量及びSiO2/Na2Oモル比、層B中の沈降シリカの種類及び量、延焼防止材の層構成等を変更することで調整可能である。
【0070】
延焼防止材の見かけ密度は、例えば、1.0g/cm3以下とすることができ、0.8g/cm3以下又は0.7g/cm3以下とすることもできる。延焼防止材の見かけ密度は低いほど好ましい。延焼防止材の見かけ密度の下限は、例えば、0.2g/cm3である。これらの観点から、延焼防止材の見かけ密度は、0.2~1.0g/cm3、0.2~0.8g/cm3又は0.2~0.7g/cm3であってよい。延焼防止材の上記見かけ密度は、層A中の低SiO2ケイ酸ナトリウムの量及びSiO2/Na2Oモル比、層B中の沈降シリカの種類及び量、延焼防止材の層構成等を変更することで調整可能である。
【0071】
以上説明した延焼防止材は、層A上に層Bを形成することにより製造してよく、層B上に層Aを形成することにより製造してもよい。例えば、上述したように、無機繊維基材に低SiO
2ケイ酸ナトリウムの水溶液を含浸させて乾燥することにより層Aを形成する場合、無機繊維基材に低SiO
2ケイ酸ナトリウムの水溶液を含浸させた後、乾燥前の無機繊維基材上に層B又は層B形成用の無機繊維シートを積層してから乾燥させることで、層Aを形成してよい。この方法によれば、低SiO
2ケイ酸ナトリウムが層Bの表面に接触した状態で硬化するため、層Aと層Bとの接着が強固となる。また、この方法において、層B形成用の無機繊維シートを用いる場合、無機繊維シート中に低SiO
2ケイ酸ナトリウムを含浸させ、
図3に示すような第一領域21及び第二領域22を有する層Aを形成することもできる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態の延焼防止材について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0073】
例えば、本発明は、他の一実施形態として、2以上のセルと、該セル間に配置された、上記実施形態の延焼防止材と、を備える、組電池を提供する。組電池とは、例えば、同じ種類の単電池を複数個パックしたものをいう。この組電池は、例えば、リチウムイオン電池である。
【0074】
例えば、本発明は、他の一実施形態として、上記実施形態の組電池を搭載した自動車を提供する。
【実施例0075】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
<使用材料>
以下の材料を用意した。
(ケイ酸ナトリウム水溶液)
S1:1号ケイ酸ソーダ(富士化学製)(固形分45質量%、SiO2/Na2Oモル比=2.1)
S2:2号ケイ酸ソーダ(富士化学製)(固形分41質量%、SiO2/Na2Oモル比=2.5)
S3:メタケイ酸ナトリウム・1号ケイ酸ナトリウム混合水溶液(固形分39質量%、SiO2/Na2Oモル比=1.5)
S4:3号ケイ酸ソーダ(富士化学製)(固形分39質量%、SiO2/Na2Oモル比=3.2)
(無機繊維)
F1:アルミナシリカ繊維(平均繊維径10μm)
F2:ガラス繊維(平均繊維径10μm)
F3:シリカ繊維(平均繊維径10μm)
F4:バサルト繊維(平均繊維径10μm)
(無機粒子)
P1:沈降シリカ(エボニック製、商品名CARPLEX #80、平均粒子径15μm)
P2:ヒュームドシリカ(Cabot Specialty Chemicals製、商品名CAB-O-SIL M-5、平均粒子径0.20μm)
P3:ゲル法シリカ(エボニック製、商品名CARPLEX BS-308N、平均粒子径10μm)
【0077】
<実施例1>
(湿式抄造シートAの作製)
アルミナシリカ繊維(上記F1)6.5質量部とビニロン繊維(繊維径5μm)0.6質量部を純水100質量部に加え、特殊機化工業社製ホモミキサーで2時間混合して分散液を得た。この分散液を抄紙用スクリーンに抄造し、ヤンキードライヤーで乾燥することで厚さ1mm、目付量120g/m2の湿式抄造シートA(不織布)を作製した。
【0078】
(湿式抄造シートBの作製)
沈降シリカ(上記P1)16質量部を純水84質量部に加え、ミキサーで2時間混合した。得られた混合物に、セルロースミクロフィブリル5.5質量部、ビニロン繊維(繊維径5μm)8.0質量部、及び、凝集剤(三菱ケミカル社製、ポリアミジン系高分子、ダイヤフロックKP7000)を加え、分散液を得た。この分散液に基材繊維としてシリカ繊維(上記F3)16質量部を添加した後、これをミキサーで1時間混合することでスラリーを調製した。このスラリーを抄紙用スクリーンに抄造し、ヤンキードライヤーで乾燥することで厚さ1mmの湿式抄造シートB(不織布)を作製した。
【0079】
(延焼防止材の作製)
湿式抄造シートAに1号ケイ酸ナトリウム(上記S1)を含浸させた後、該湿式抄造シートAの上下面に、湿式抄造シートBを貼り合わせ、30℃で乾燥させた。これにより、層B(湿式抄造シートB)、層A(湿式抄造シートAにケイ酸ナトリウムが含浸されてなる層)及び層B(湿式抄造シートB)がこの順で積層された多層構成の延焼防止材(総厚3mm)を得た。層A中のケイ酸ナトリウムの含有量、層B中の無機繊維の含有量及び層B中の無機粒子の含有量を表1に示す。なお、本明細書中の表に示す、層A中のケイ酸ナトリウムの含有量は、層Aの全質量を基準とする含有量であり、層B中の無機繊維の含有量及び層B中の無機粒子の含有量は、層Bの全質量を基準とする含有量である。
【0080】
(評価)
延焼防止材の見かけ密度(軽量性)、熱伝導率(断熱性)、層Aの重量減少率及び延焼防止性を以下に示す方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
[見掛け密度]
サンプル(延焼防止材)の寸法と重量より見かけ密度を算出した。
【0082】
[熱伝導率]
まず、延焼防止材を200mm×200mmに切り出し測定サンプルとした。次いで、測定サンプルの熱伝導率を、ISO8301に準拠して、熱流計法熱伝導率測定装置FOX-200(英弘精機社製)を用いて、23℃で測定した。
【0083】
[層Aの重量減少率、吸熱反応の有無]
まず、延焼防止材より層Aの一部を採取し、粉砕することにより測定サンプルを得た。次いで、熱重量-示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて上記測定サンプルのTGA測定を行い、50℃/minの速度で室温から300℃まで昇温した際の重量変化曲線を求めた。得られた重量変化曲線から、下記式に基づき、100~300℃における重量減少率を算出した。
式:重量減少率(質量%)=([a-b]-[a-c])/[a-b]×100
[式中、aは加熱前の測定サンプルの質量を示し、bは100℃時点での重量変化量を示し、cは300℃時点での重量変化量を示す。]
また、DTA測定において、10℃/minの速度で室温から300℃まで昇温した際の示差熱曲線を求め、以下の基準で評価した。
〇:100℃から300℃までの領域において吸熱ピークが確認された。
×:100℃から300℃までの領域において吸熱ピークが確認されなかった。
【0084】
[延焼防止性]
650℃に加熱したホットプレート(PA8015:MSAファクトリー社製)上に、延焼防止材と、K熱電対と、アルミブロック(500g)と、をこの順で積層配置した。120秒経過後の延焼防止材の裏面温度を測定し、以下の基準で評価した。なお、数値が大きいほど延焼防止性に優れると評価される。
3:延焼防止材の裏面温度が150℃以下であった。
2:延焼防止材の裏面温度が150℃より高く、170℃以下であった。
1:延焼防止材の裏面温度が170℃より高かった。
【0085】
<実施例2~5、及び、比較例1>
湿式抄造シートAの作製時に、ケイ酸ナトリウム水溶液の種類又は使用量を変更したことを除き、実施例1と同様にして、表1に示す実施例2~5及び比較例1の延焼防止材をそれぞれ作製し、実施例1と同様にして、延焼防止材の見かけ密度、熱伝導率、層Aの重量減少率及び延焼防止性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
<実施例6~8>
湿式抄造シートAの作製時に、無機繊維の種類を変更したことを除き、実施例1と同様にして、表2に示す実施例6~8の延焼防止材をそれぞれ作製し、実施例1と同様にして、延焼防止材の見かけ密度、熱伝導率、層Aの重量減少率及び延焼防止性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0088】
【0089】
<実施例9~11>
湿式抄造シートBの作製時に、無機繊維の種類を変更したことを除き、実施例1と同様にして、表3に示す実施例9~11の延焼防止材をそれぞれ作製し、実施例1と同様にして、延焼防止材の見かけ密度、熱伝導率、層Aの重量減少率及び延焼防止性を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0090】
【0091】
<実施例12~14、及び、比較例2~4>
湿式抄造シートBの作製時に、無機粒子の種類及び/又は使用量を変更したことを除き、実施例1と同様にして、表4に示す実施例12~14及び比較例2~3の延焼防止材をそれぞれ作製した。また、湿式抄造シートAの作製時に、ケイ酸ナトリウム水溶液の種類を変更したことを除き、比較例2と同様にして、表4に示す比較例4の延焼防止材を作製した。さらに、実施例1と同様にして、実施例12~14及び比較例2~4の延焼防止材の見かけ密度、熱伝導率、層Aの重量減少率及び延焼防止性を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0092】