(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110019
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】橋梁の架替方法、及び、架設方法
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20240807BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D22/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014315
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000200367
【氏名又は名称】川田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】寺島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 誠
(72)【発明者】
【氏名】中尾 祐一郎
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059AA05
2D059GG27
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】半断面施工によって上部工を架け替え又は新設する際に、橋脚上の重量バランスを簡単かつ的確に調整することができる橋梁の架替方法及び架設方法を提供する。
【解決手段】一本の垂直な柱部14と、橋軸直角方向へ延在する柱頭部15とによって構成されるT型の橋脚13によって支持される上部工(桁12、床版11)を、半断面ずつ順番に架け替える方法において、柱頭部15の近傍位置に梁材17を配置し、梁材17の延長部17aが、撤去側において柱頭部15の延長方向へ突出した状態とし、延長部17aの上にカウンターウェイト19を載置し、上部工の撤去作業等の進行に応じて、橋軸からカウンターウェイト19の重心位置までの距離を変化させることにより、橋脚上の重量バランスを調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本の垂直な柱部と、橋軸直角方向へ延在する柱頭部とによって構成されるT型又は逆L型の橋脚によって支持される上部工を、半断面ずつ順番に架け替える方法であって、
柱頭部の近傍位置に梁材を配置し、当該梁材の延長部が、撤去側において柱頭部の延長方向へ突出した状態とし、
延長部の上にカウンターウェイトを載置し、
上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させることにより、橋脚上の重量バランスを調整することを特徴とする橋梁の架替方法。
【請求項2】
カウンターウェイトを載置したベースを、梁材の長手方向へ移動可能な状態で延長部の上に配置し、
駆動手段をベースと連結し、
上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、駆動手段を操作して、ベース及びカウンターウェイトを梁材の長手方向に沿って移動させることにより、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させて、橋脚上の重量バランスを調整することを特徴とする、請求項1に記載の橋梁の架替方法。
【請求項3】
下部にコロ或いはローラーが配置され、又は、摩擦係数が小さい素材によって底部が形成されたベースを延長部の上に配置することを特徴とする、請求項2に記載の橋梁の架替方法。
【請求項4】
柱頭部の近傍位置に固定された梁材の基部に対し、梁材の延長部を、水平軸線周りに回動するヒンジ、又は、垂直軸線周りに回動するヒンジによって連結することにより、延長部が、上方又は水平方向へ回動可能なように構成し、
カウンターウェイトを載置したベースを延長部の上に固定し、
駆動手段をベース又は延長部と連結し、
上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、駆動手段を操作して、延長部を回動させることにより、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させて、橋脚上の重量バランスを調整することを特徴とする、請求項1に記載の橋梁の架替方法。
【請求項5】
梁材を、柱頭部の近傍位置において、ホルダーによって梁材の長手方向へ移動可能なように保持し、
カウンターウェイトを載置したベースを延長部の上に固定し、
駆動手段をベース又は梁材と連結し、
上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、駆動手段を操作して、ベース、カウンターウェイト、及び、梁材を長手方向に沿って移動させることにより、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させて、橋脚上の重量バランスを調整することを特徴とする、請求項1に記載の橋梁の架替方法。
【請求項6】
梁材を保持するホルダーとして、ローラーと、ローラーを回転させる駆動装置とからなる送り出し機構を有するものを採用し、このホルダーの駆動装置を動作させることにより、梁材を長手方向に移動させることを特徴とする、請求項5に記載の橋梁の架替方法。
【請求項7】
梁材として、多段伸縮式のサヤ管構造のものを採用し、駆動装置を動作させることにより、カウンターウェイトを載置した梁材の先端部を長手方向へ移動させることを特徴とする、請求項5に記載の橋梁の架替方法。
【請求項8】
一本の垂直な柱部と、橋軸直角方向へ延在する柱頭部とによって構成されるT型又は逆L型の橋脚によって支持される上部工を、半断面ずつ順番に設置する方法であって、
柱頭部の近傍位置に梁材を配置し、当該梁材の延長部が、柱頭部の延長方向へ突出した状態とし、
延長部の上にカウンターウェイトを載置し、
上部工の設置作業の進行に応じて、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させることにより、橋脚上の重量バランスを調整することを特徴とする橋梁の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の橋梁(特に道路橋)の上部工(床版、桁等)を架け替える方法、及び、新設橋梁において上部工を架設する方法に関し、特に、T型や逆L型の橋脚等のような、不均等荷重により柱部に過大な応力が発生し得る形状の橋脚によって支持される橋梁を対象とする橋梁の架替方法及び架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋の上部工(床版、桁等)を架け替える場合において、周辺に迂回路を確保することができず、路面の全面を通行止めとすることが困難であるような場合には、路面の片側を交通解放した状態で、上部工を半断面ずつ順番に架け替えるという方法(半断面施工)が実施されることがある。
【0003】
具体的には、
図6(1)に示すような道路橋10において半断面施工を実施する場合、左側の床版11A及び桁12Aを存置して、左半部での車両及び歩行者の通行が可能な状態を維持しつつ、右側の床版11B及び桁12Bを撤去し、新設桁及び新設床版を架設して、右半部を通行可能な状態に復帰させた後、左側の床版11A及び桁12Aの撤去等を行う。
【0004】
但し、
図6(1)に示すようなT型の橋脚13(一本の垂直な柱部14と、橋軸直角方向へ延在する柱頭部15とによって構成される橋脚)によって支持される道路橋10に対して半断面施工を実施する場合、左右いずれかの床版11及び桁12を無対策で撤去すると、左右の重量バランスが崩れて、柱部14付近において橋脚13の作用応力が許容値を超過してしまうおそれがある。そこで、
図6(2)に示すように、上部工の一方側(床版11B、桁12B)を撤去する際には、反対側の柱頭部15の下側にベント16を設置して、橋脚13を直接支持することが有効であるが、地盤の状況や、他の構造物との関係で、ベント16を設置できないことがある。
【0005】
このような場合、撤去側(
図6(2)の例では右側)において柱頭部15が外側(橋軸直角方向)へ延長されるように、梁材17を、柱頭部15の両側面(
図6(2)に示す柱頭部15の手前側の側面15a、及び、図示しない反対側の側面)の近傍位置においてそれぞれ固定し、それらの一部(延長部17a)が柱頭部15の延長方向(橋軸直角方向)へ突出した状態とし、この延長部分17aの上にカウンターウェイト19(例えば敷鉄板等の固体状の重量物)を載荷することにより、橋脚13上の重量バランスを維持する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半断面施工の際に、カウンターウェイト19を載荷して橋脚13上の重量バランスを維持しようとする場合、床版11等の撤去作業又は設置作業の進行に応じて、カウンターウェイト19の載荷量を適宜増減させて、重量バランスが常に適切な範囲内に納まるように載荷量を管理する必要があるが、載荷作業及び除荷作業には相応の時間がかかり、また、その都度、撤去作業等を中断する必要が生じる場合があり、円滑な施工が妨げられ、工期の遅延を招いてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、半断面施工によって上部工を架け替え又は新設する際に、橋脚上の重量バランスを簡単かつ的確に調整することができる橋梁の架替方法及び架設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る橋梁の架替方法は、一本の垂直な柱部と、橋軸直角方向へ延在する柱頭部とによって構成されるT型又は逆L型の橋脚によって支持される上部工を、半断面ずつ順番に架け替える方法において、柱頭部の近傍位置に梁材を配置し、当該梁材の延長部が、撤去側において柱頭部の延長方向へ突出した状態とし、延長部の上にカウンターウェイトを載置し、上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させることにより、橋脚上の重量バランスを調整することを特徴としている。
【0010】
尚、この架替方法においては、カウンターウェイトを載置したベースを、梁材の長手方向へ移動可能な状態で延長部の上に配置し、橋軸側に固定した駆動手段(油圧ジャッキ等)をベースと連結し、上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、駆動手段を操作して、ベース及びカウンターウェイトを梁材の長手方向に沿って移動させることにより、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させて、橋脚上の重量バランスを調整することが好ましい。この場合、底部にコロ或いはローラーが配置され、又は、摩擦係数が小さい素材によって底部が形成されたベースを延長部の上に配置することが好ましい。
【0011】
また、柱頭部の近傍位置に固定された梁材の基部に対し、梁材の延長部を、水平軸線周りに回動するヒンジ、又は、垂直軸線周りに回動するヒンジによって連結することにより、延長部が、上方又は水平方向へ回動可能なように構成し、カウンターウェイトを載置したベースを延長部の上に固定し、橋軸側に固定した駆動手段をベース又は延長部と連結し、上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、駆動手段を操作して、延長部を回動させることにより、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させて、橋脚上の重量バランスを調整することもできる。
【0012】
更に、梁材を、柱頭部の近傍位置において、梁材の長手方向へ移動可能なように保持し、カウンターウェイトを載置したベースを延長部の上に固定し、駆動手段をベース又は梁材と連結し、上部工の撤去作業、又は、設置作業の進行に応じて、駆動手段を操作して、ベース、カウンターウェイト、及び、梁材を長手方向に沿って移動させることにより、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させて、橋脚上の重量バランスを調整することもできる。
【0013】
また、ベース上にプールを設置し、ポンプによって汲み上げた水をプール内に貯留して、カウンターウェイトとして使用することもできる。
【0014】
本発明に係る橋梁の架設方法は、一本の垂直な柱部と、橋軸直角方向へ延在する柱頭部とによって構成されるT型又は逆L型の橋脚によって支持される上部工を、半断面ずつ順番に設置する方法において、柱頭部の近傍位置に梁材を配置し、当該梁材の延長部が、柱頭部の延長方向へ突出した状態とし、延長部の上にカウンターウェイトを載置し、上部工の設置作業の進行に応じて、橋軸からカウンターウェイトの重心位置までの距離を変化させることにより、橋脚上の重量バランスを調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る橋梁の架替方法、及び、架設方法によれば、半断面施工を実施する際に、橋脚上の重量バランスを簡単かつ的確に調整することができ、また、カウンターウェイトの載荷作業及び除荷作業を省略又は大幅に縮小することができるため、旧床版の撤去作業及び新設床版の設置作業を円滑に実行することができ、工期の遅延を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図であって、橋脚13等の側面、及び、床版11の断面等を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る橋梁の架替方法において使用することができるベース18等の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図であって、橋脚13等の側面、及び、床版11の断面等を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図であって、橋脚13の柱頭部15等の平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図であって、橋脚13等の側面、及び、床版11の断面等を示す図である。
【
図6】
図6は、従来工法(半断面施工による道路橋の上部工の架替方法)の説明図であって、橋脚13等の側面、及び、床版11の断面等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に沿って、本発明に係る「橋梁の架替方法」及び「橋梁の架設方法」について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図である。本実施形態の架替方法は、
図1に示すような道路橋10、より詳細には、上部工(桁12,12A,12B、及び、床版11,11A,11B)が、T型の橋脚13(一本の垂直な柱部14と、橋軸直角方向へ延在する柱頭部15とによって構成される橋脚)によって支持される道路橋10に対して、半断面施工を実施する際に適用することができる。尚、
図1は、床版11及び桁12のうち、破線で示す右側の床版11B及び桁12Bに対して撤去作業を実施する例を示している。
【0018】
本実施形態の橋梁の架替方法においては、床版11B及び桁12Bの撤去作業を行う前に、まず、柱頭部15に対して梁材17(I形又はH形断面の鋼材等)を固定する。より具体的には、柱頭部15の両側面(
図1に示す柱頭部15の手前側の側面15a、及び、図示しない反対側の側面)の近傍位置に梁材17を一本ずつ配置して固定し、それらの一部(延長部17a)が、撤去側において柱頭部15の延長方向(橋軸直角方向)へ突出した状態とする。
【0019】
延長部17aの上に、ベース18を配置する。また、ベース18の上には、カウンターウェイト19を載置して、これらをベース18に対して固定する。更に、ベース18の橋軸側(ベース18と柱頭部15の中心部の間の位置)に、油圧ジャッキ21(駆動手段)を固定し、その伸縮ロッドの先端をベース18に連結する。尚、本実施形態において使用されるベース18は、下部24にコロ或いはローラーが配置され、又は、摩擦係数が小さい素材(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)によって底部(梁材17と接触する部位)が形成されている。従って、連結した油圧ジャッキ21を動作させる(ロッドを伸縮させる)ことにより、梁材17の延長部17a上において、ベース18を梁材17の長手方向(橋軸直角方向)へ移動させることができる。
【0020】
尚、ベース18の下部24は、
図2に示すように、延長部17aの上フランジの左右のコバ面25を外側から押さえて、下部24を延長部17aに対して係合させる側方ガイド26を有していることが好ましい。この場合、延長部17a自体を軌道として利用することができ、延長部17a上の位置からの脱落を防止しつつ、ベース18及びカウンターウェイト19を安全に移動させることができる。
【0021】
また、
図2においては、二台の下部24が連結されているが、下部24の台数は限定されず、ベース18上に載置するカウンターウェイト19の荷重、サイズ、又は、形状等に応じて適宜追加し(或いは撤去し)、連結部27を介して長手方向(延長部17aの長手方向)へ連結することができる。
【0022】
そして、床版11B、桁12Bの撤去作業、及び、新設床版等の設置作業の進行に応じて、油圧ジャッキ21を適宜操作して、ベース18及びカウンターウェイト19を梁材17の長手方向に沿って移動させることにより、橋脚13上の重量バランスを簡単に調整することができる。より具体的には、橋脚13上に支持される床版11B、桁12Bの荷重は、撤去作業の進行に従って次第に減少していくことになるが、それに応じてベース18及びカウンターウェイト19を、橋軸から遠ざかる方向へ(
図1の例では右側方向へ)移動させ、左右のバランスがつり合う位置に保持し、また、新設床版等の設置作業時においては、橋軸に近づく方向へ(
図1の例では左側方向へ)移動させることにより、橋脚13上の重量バランスを簡単かつ的確に調整することができる。
【0023】
従って、床版11B等の撤去作業等において、カウンターウェイト19の載荷作業及び除荷作業を省略(又は大幅に縮小)することができるため、撤去作業等を円滑に(載荷作業等によって中断されることなく、継続して)実行することができ、工期の遅延を好適に回避することができる。
【0024】
図3は、本発明の第2実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図である。第1実施形態においては、ベース18が延長部17a上において移動可能なように構成されているが、本実施形態においては、ベース18が延長部17aに対して固定されている。また、梁材17の延長部17a(柱頭部15の延長方向へ突出する部分)が、基部17b(柱頭部15の側面15aの近傍位置に固定されている部分)に対し、水平軸線周りに回動するヒンジ22によって連結され、このヒンジ22を起点として、延長部17aが上方へ回動可能なように構成されている。
【0025】
このため、
図3において実線で示す状態(延長部17aが水平に延在する状態)から、油圧ジャッキ21(伸縮ロッドがベース18に連結されている)を動作させて、ベース18を橋軸側へ引っ張ると、延長部17a、ベース18、及び、カウンターウェイト19が、上方へ(例えば、
図3において破線で示す位置まで)回動して、それらの重心位置が橋軸側へ近づいた状態となる。また、
図3において破線で示す位置から、油圧ジャッキ21を動作させてロッドを伸展させると、延長部17a等が元の状態(
図3において実線で示す位置)に向かって回動し、それらの重心位置が橋軸から離れた状態となる。
【0026】
このような油圧ジャッキ21の操作を、旧床版等の撤去作業、及び、新設床版等の設置作業の進行に応じて適切に実行することにより、カウンターウェイト19等の重心位置(橋軸からの距離)を変化させて、橋脚13上の重量バランスを調整することができる。
【0027】
図4は、本発明の第3実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図である。第2実施形態においては、延長部17aが、水平軸線周りに回動するヒンジ22によって連結され、上方へ回動可能なように構成されているが、本実施形態においては、延長部17aが、垂直軸線周りに回動するヒンジ22によって基部17bと連結されており、このヒンジ22を起点として、水平方向へ回動可能なように構成されている。
【0028】
このため、
図4において実線で示す状態(延長部17aが柱頭部15の延長方向側に位置する状態)から、油圧ジャッキ21(伸縮ロッドがベース18に連結されている)を動作させて、ベース18を橋軸側へ引っ張ると、延長部17a、ベース18、及び、カウンターウェイト19が、水平方向へ(例えば、
図4において破線で示す位置まで)回動して、それらの重心位置が橋軸側へ近づいた状態となる。また、
図4において破線で示す位置から、油圧ジャッキ21を動作させてロッドを伸展させると、延長部17a等が元の状態(
図4において実線で示す位置)に向かって回動し、それらの重心位置が橋軸から離れた状態となる。
【0029】
このような油圧ジャッキ21の操作を、旧床版等の撤去作業、及び、新設床版等の設置作業の進行に応じて適切に実行することにより、カウンターウェイト19等の重心位置(橋軸からの距離)を変化させて、橋脚13上の重量バランスを調整することができる。
【0030】
図5は、本発明の第4実施形態に係る橋梁の架替方法の説明図である。上記実施形態においては、梁材17の基部17bが、柱頭部15の側面15aの近傍位置において固定されているが、本実施形態においては、梁材17が、柱頭部15の側面15aの近傍位置において、ホルダー28により、長手方向(橋軸直角方向、
図5における左右方向)へ移動可能なように保持されている。
【0031】
そして、
図5において実線で示す状態から、油圧ジャッキ21(柱頭部15上に固定され、伸縮ロッドが延長部17aに連結されている)を動作させて橋軸側へ引っ張ると、梁材17、ベース18、及び、カウンターウェイト19が、梁材17の長手方向へ(例えば、
図5において破線で示す位置まで)移動して、それらの重心位置が橋軸側へ近づいた状態となる。また、
図5において破線で示す位置から、油圧ジャッキ21を動作させてロッドを伸展させると、梁材17等が元の状態(
図5において実線で示す位置)に向かって移動し、それらの重心位置が橋軸から離れた状態となる。
【0032】
このような油圧ジャッキ21の操作を、旧床版等の撤去作業、及び、新設床版等の設置作業の進行に応じて適切に実行することにより、カウンターウェイト19等の重心位置(橋軸からの距離)を変化させて、橋脚13上の重量バランスを調整することができる。
【0033】
尚、柱頭部15の側面15aの近傍位置において、梁材17を保持するホルダー28として、ローラーと、ローラーを回転させる油圧モーター(駆動装置)とからなる送り出し機構を有するものを採用し、油圧ジャッキ21の代わりに、このホルダー28の駆動装置を動作させることにより、梁材17及びカウンターウェイト19等を長手方向へ移動できるように構成してもよい。
【0034】
更に、梁材17として、クレーンのブームのような多段伸縮式のサヤ管構造のものを採用し、クレーンのブームと同様の機構(駆動装置等)によって、梁材17の先端部、及び、先端部に載置したカウンターウェイト19を長手方向へ移動できるように構成してもよい。
【0035】
尚、上記第1~4実施形態においては、カウンターウェイト19として、敷鉄板等の固体状の重量物を使用しているが、河川、又は、その他の水源から水の供給が可能な場合には、ベース18上にプール(貯水槽)を設置し、水中ポンプによって汲み上げた水をプール内に貯留して、これをカウンターウェイトとして使用することもできる。
【0036】
また、上記1~4実施形態においては、梁材17、延長部17a等を移動させ又は回動させるための駆動手段として、油圧ジャッキ21や、ローラーを回転させる油圧モーター等が使用されているが、他の駆動手段、例えば、ワイヤやチェーンを巻き上げ又は繰り出すウィンチ(巻上装置)、その他各種アクチュエータを使用することもできる。
【0037】
また、上記第1~4実施形態においては、既存の道路橋の上部工を半断面施工によって架け替える「橋梁の架替方法」に対して本発明を適用した例を示したが、本発明は、橋梁を新設する場合において、上部工を半断面ずつに分けて順番に設置する「橋梁の架設方法」に対しても適用することができる。この場合、梁材の延長部は、片側の上部工を先に設置する側とは反対側へ突出するように配置する。
【符号の説明】
【0038】
10:道路橋、
11,11A,11B:床版、
12,12A,12B:桁、
13:橋脚、
14:柱部、
15:柱頭部、
15a:側面、
16:ベント、
17:梁材、
17a:延長部、
17b:基部、
18:ベース、
19:カウンターウェイト、
21:油圧ジャッキ、
22:ヒンジ
24:下部、
25:コバ面、
26:側方ガイド、
27:連結部、
28:ホルダー、