(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011002
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電気炉
(51)【国際特許分類】
F27D 7/02 20060101AFI20240118BHJP
F27B 5/14 20060101ALI20240118BHJP
F27B 3/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F27D7/02 A
F27B5/14
F27B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112649
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】龍頭 昭廣
(72)【発明者】
【氏名】三河 直矢
(72)【発明者】
【氏名】塚本 輝
【テーマコード(参考)】
4K045
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4K045RB01
4K061AA01
4K061BA02
4K061DA05
4K063AA05
4K063AA12
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA01
4K063DA26
(57)【要約】
【課題】加熱効率に優れ、ファンの寿命も長い電気炉を提供する。
【解決手段】第一開閉弁21,第四開閉弁24及び第五開閉弁25の開閉状態と、第二開閉弁22,第三開閉弁23及び第六開閉弁26の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、気体を、送風ファン20から第一通路15及び第三通路17を通過して第一蓄熱器13及び第一エアヒータ11に送り、第二蓄熱器14から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第一循環経路P1と、送風ファン20から第一通路15及び第四通路18を通過して第二蓄熱器14及び第二エアヒータ12に送り、第一蓄熱器13から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第二循環経路P2に交互に循環させて、被加熱材Tに対して加熱された気体を左右方向から交互に送る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を熱源とし、炉体の内部に気体を循環させて被加熱材を加熱処理する電気炉であって、
前記炉体の外部の左右方向の一方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体の内部に送風する第一エアヒータと、
前記炉体の外部の左右方向の他方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体の内部に送風する第二エアヒータと、
前記炉体の外部の左右方向の一方側に、前記第一エアヒータとは別に設けられた第一蓄熱器と、
前記炉体の外部の左右方向の他方側に、前記第二エアヒータとは別に設けられた第二蓄熱器と、
前記炉体の外部において前記第一蓄熱器と第二蓄熱器とをそれぞれ別々に連通する第一通路および第二通路と、
前記第一通路の第一エアヒータ側に設けられた第一分岐点から分岐して前記第一エアヒータに連通する第三通路と、
前記第一通路の第二エアヒータ側に設けられた第二分岐点から分岐して前記第二エアヒータに連通する第四通路と、
前記第一通路および第二通路の双方で、かつ前記第一通路では前記第一分岐点と前記第二分岐点の間に接続され、前記第二通路側から吸い込んだ前記空気を前記第一通路側に送風可能な一台の送風ファンと、
前記第一通路の前記送風ファンの接続位置と前記第一蓄熱器との間に設けられた第一開閉弁と、
前記第一通路の前記送風ファンの接続位置と前記第二蓄熱器との間に設けられた第二開閉弁と、
前記第二通路の前記送風ファンの接続位置と前記第一蓄熱器との間に設けられた第三開閉弁と、
前記第二通路の前記送風ファンの接続位置と前記第二蓄熱器との間に設けられた第四開閉弁と、
前記第三通路に設けられた第五開閉弁と、
前記第四通路に設けられた第六開閉弁と、を備え、
前記第一開閉弁,前記第四開閉弁及び前記第五開閉台の開閉状態と、前記第二開閉弁,前記第三開閉弁及び前記第六開閉弁の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、前記気体を、前記送風ファンから前記第一通路及び前記第三通路を通過して前記第一蓄熱器及び前記第一エアヒータに送り、前記第二蓄熱器から前記第二通路を通過して前記送風ファンに戻す第一循環経路と、前記送風ファンから前記第一通路及び前記第四通路を通過して前記第二蓄熱器及び前記第二エアヒータに送り、前記第一蓄熱器から前記第二通路を通過して前記送風ファンに戻す第二循環経路に交互に循環させて、前記被加熱材に対して加熱された気体を左右方向から交互に送ることを特徴とする電気炉。
【請求項2】
電気を熱源とし、炉体の内部に気体を循環させて被加熱材を加熱処理する電気炉であって、
前記炉体の外部の左右方向の一方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体の内部に送風する第一エアヒータと、
前記炉体の外部の左右方向の他方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体の内部に送風する第二エアヒータと、
前記炉体の外部の左右方向の一方側に、前記第一エアヒータとは別に設けられた第一蓄熱器と、
前記炉体の外部の左右方向の他方側に、前記第二エアヒータとは別に設けられた第二蓄熱器と、
前記炉体の外部において前記第一蓄熱器と第二蓄熱器とをそれぞれ別々に連通する第一通路および第二通路と、
前記第一通路の第一エアヒータ側に設けられた第一分岐点から分岐して前記第一エアヒータに連通する第三通路と、
前記第二通路の第二エアヒータ側に設けられた第二分岐点から分岐して前記第二エアヒータに連通する第四通路と、
前記第一通路で、かつ前記第一分岐点と前記第二蓄熱器の間に設けられ、一方方向に前記気体を送風する第一ファンと、
前記第二通路で、かつ第記第二分岐点と前記第一蓄熱器の間に設けられ、他方方向に前記気体を送風する第二ファンと、を備え、
前記第一ファンと第二ファンを交互に一定時間回転させることで、前記気体を、前記第一通路及び前記第三通路を通過する第一循環経路と、前記第二通路及び前記第四通路を通過する第二循環経路に交互に循環させて、前記被加熱材に対して加熱された気体を左右方向から交互に送ることを特徴とする電気炉。
【請求項3】
前記気体が空気であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気炉。
【請求項4】
前記気体が、空気以外の雰囲気ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属や非鉄金属を加熱処理するために使用される電気炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属や非鉄金属を加熱処理する炉として、電気を熱源として利用した電気炉が存在する(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に示す電気炉は、炉体の外部に冷却ファンを設け、この冷却ファンに、外気を炉体の内部に供給して炉体内部の加熱空気を外部に放散させるという冷却機能を持たせている。
【0003】
また、こうした従来の電気炉としては、例えば、
図4と
図5に示すものが知られている。
図4に示す電気炉は、炉体30の内部の左右それぞれに金属ヒータ31を設けるとともに、炉体30の上部中央に回転ファン32を設け、これらの金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、回転ファン32でその加熱した空気を対流させることによって被加熱材Tを加熱している。
【0004】
また、
図5に示す電気炉は、炉体40の外部にエアヒータ41を取付け、外部の空気をそのエアヒータ41を通して加熱して炉体40の内部に取り入れ、その加熱した空気で被加熱材Tを加熱している。なお、加熱された空気は、炉体40の外部に排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および
図4と
図5に示す従来技術の電気炉は、いずれも電気を加熱源として利用しているので、カーボンニュートラルの観点から極めて好ましい。
【0007】
しかしながら、これら電気炉のいずれにも加熱効率のさらなる向上が求められる。すなわち、特許文献1に示す電気炉は、冷却ファンによる冷却機能を持たせているので、自ずと加熱効率が低下する。
【0008】
また、
図4に示す電気炉は、炉体30の内部の左右に設けた金属ヒータ31で炉体30の内部の空気を加熱し、それを回転ファン32で対流させるので、加熱された空気の攪拌効果が十分とはいえず、加熱効率に課題が残る。また、被加熱材Tには加熱された空気が常に一定の方向から作用することからも加熱効率に問題がある。これらは、特に、被加熱材Tの形状が複雑な場合に顕著である。
【0009】
また、この電気炉における回転ファン32は、高温である炉体30の内部に設けられているので、変形やインペラバランスの崩れによる振動などの損傷が発生し易く、その寿命が短いといった問題もある。
【0010】
また、
図5に示す電気炉は、炉体40の外部の空気(すなわち常温の空気)をエアヒータ41で加熱し、その加熱した空気を被加熱材Tに作用させた後、排気するので、常に常温の空気を必要な高温まで加熱する必要がある。したがって、エネルギーの損失が大きく、加熱効率が低い。
【0011】
そこで、本発明の目的とするところは、加熱効率に優れ、ファンの寿命も長い電気炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の電気炉(1)は、
電気を熱源とし、炉体(10)の内部に気体を循環させて被加熱材(T)を加熱処理する炉であって、
前記炉体(10)の外部の左右方向の一方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体(10)の内部に送風する第一エアヒータ(11)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の他方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体(10)の内部に送風する第二エアヒータ(12)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の一方側に、前記第一エアヒータ(11)とは別に設けられた第一蓄熱器(13)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の他方側に、前記第二エアヒータ(12)とは別に設けられた第二蓄熱器(14)と、
前記炉体(10)の外部において前記第一蓄熱器(13)と第二蓄熱器(14)とをそれぞれ別々に連通する第一通路(15)および第二通路(16)と
前記第一通路(15)の第一エアヒータ(11)側に設けられた第一分岐点(Z1)から分岐して前記第一エアヒータ(11)に連通する第三通路(17)と、
前記第一通路(15)の第二エアヒータ(12)側に設けられた第二分岐点(Z2)から分岐して前記第二エアヒータ(12)に連通する第四通路(18)と、
前記第一通路(15)および第二通路(16)の双方で、かつ前記第一通路(15)では前記第一分岐点(Z1)と前記第二分岐点(Z2)の間に接続され、前記第二通路(16)側から吸い込んだ前記空気を前記第一通路(15)側に送風可能な一台の送風ファン(20)と、
前記第一通路(15)の前記送風ファン(20)の接続位置(X)と前記第一蓄熱器(13)との間に設けられた第一開閉弁(21)と、
前記第一通路(15)の前記送風ファン(20)の接続位置(X)と前記第二蓄熱器(14)との間に設けられた第二開閉弁(22)と、
前記第二通路(16)の前記送風ファン(20)の接続位置(Y)と前記第一蓄熱器(13)との間に設けられた第三開閉弁(23)と、
前記第二通路(16)の前記送風ファン(20)の接続位置(Y)と前記第二蓄熱器(14)との間に設けられた第四開閉弁(24)と、
前記第三通路(17)に設けられた第五開閉弁(25)と、
前記第四通路(18)に設けられた第六開閉弁(26)と、を備え、
前記第一開閉弁(21),前記第四開閉弁(24)及び前記第五開閉弁(25)の開閉状態と、前記第二開閉弁(22),前記第三開閉弁(23)及び前記第六開閉弁(26)の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、前記気体を、前記送風ファン(20)から前記第一通路(15)及び前記第三通路(17)を通過して前記第一蓄熱器(13)及び前記第一エアヒータ(11)に送り、前記第二蓄熱器(14)から前記第二通路(16)を通過して前記送風ファン(20)に戻す第一循環経路(P1)と、前記送風ファン(20)から前記第一通路(15)及び前記第四通路(18)を通過して前記第二蓄熱器(14)及び前記第二エアヒータ(12)に送り、前記第一蓄熱器(13)から前記第二通路(16)を通過して前記送風ファン(20)に戻す第二循環経路(P2)に交互に循環させて、前記被加熱材(T)に対して加熱された気体を左右方向から交互に送ることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、電気を熱源とし、炉体(10)の内部に気体を循環させて被加熱材(T)を加熱処理する電気炉1であって、
前記炉体(10)の外部の左右方向の一方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体(10)の内部に送風する第一エアヒータ(11)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の他方側に設けられ、前記気体を加熱して前記炉体(10)の内部に送風する第二エアヒータ(12)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の一方側に、前記第一エアヒータ(11)とは別に設けられた第一蓄熱器(13)と、
前記炉体(10)の外部の左右方向の他方側に、前記第二エアヒータ(12)とは別に設けられた第二蓄熱器(14)と、
前記炉体(10)の外部において前記第一蓄熱器(13)と第二蓄熱器(14)とをそれぞれ別々に連通する第一通路(15)および第二通路(16)と
前記第一通路(15)の第一エアヒータ(11)側に設けられた第一分岐点(Z1)から分岐して前記第一エアヒータ(11)に連通する第三通路(17)と、
前記第二通路(16)の第二エアヒータ(12)側に設けられた第二分岐点(Z2)から分岐して前記第二エアヒータ(12)に連通する第四通路(18)と、
前記第一通路(15)で、かつ前記第一分岐点(Z1)と前記第二蓄熱器(14)の間に設けられ、一方方向に前記空気を送風する第一ファン(27)と、
前記第二通路(16)で、かつ前記第二分岐点(Z2)と前記第一蓄熱器(13)の間に設けられ、他方方向に前記空気を送風する第二ファン(28)と、
前記第一ファン(27)と第二ファン(28)を交互に一定時間回転させることで、前記気体を、前記第一通路(15)及び前記第三通路(17)を通過する第一循環経路(P1)と、前記第二通路(16)及び前記第四通路(18)を通過する第二循環経路(P2)に交互に循環させて、前記被加熱材(T)に対して加熱された気体を左右方向から交互に送ることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記気体が空気であることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、前記気体が、空気以外の雰囲気ガスであることを特徴とする。
【0016】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気炉によれば、第一開閉弁,第四開閉弁及び第五開閉弁の開閉状態と第二開閉弁,第三開閉弁及び第六開閉弁の開閉状態を逆の状態で交互に一定時間毎に切替えることで、被加熱材に対して加熱された気体を左右方向から交互に送るので、高い加熱効率を得ることができる。
すなわち、加熱された気体を左右方向から交互に送ることにより、炉体の内部の気体を効果的に攪拌することができる。したがって、被加熱材の全体を、短時間で均等に加熱することができる。また、加熱された気体を左右方向から交互に送ることにより、被加熱材を、常に一定の方向から送る場合と比較して、より効果的に加熱することができる。
【0018】
また、加熱された空気を電気炉の外部に放散させることなく循環させるので、外部の空気を取り入れる場合と比較して、エネルギーの損失が少なく、加熱効率に優れる。
また、第一通路と第二通路は、第一蓄熱と第二蓄熱器に連通しているので、これら第一蓄熱器および第二蓄熱器に蓄えられた熱を利用することにより、加熱効率をさらに高めることができる。
また、第一蓄熱器および第二蓄熱器に蓄えられた熱の利用に加えて、第一エアヒータおよび第二エアヒータをさらなる熱源としてそれらからの熱も利用できるようにしたので、大容量の熱移動により加熱効率をより一層高めることができる。
しかも、第一エアヒータおよび第二エアヒータは炉外に設置されているので、例えば炉内に固定式ヒータを設置した場合と比較して炉内空間を広く使えるとともに、炉内で他のものとの物理的接触はないので固定式ヒータのように接触により破損することを考慮する必要がない。固定式ヒータの場合、他のものとの物理的接触を避けるため炉内に被加熱材搬送用の台車用レールを設けることが好ましいが、本発明のように炉内に固定式ヒータを設置しないものでは台車用レールの有無など考慮する必要がない。また炉外に設けられた第一エアヒータおよび第二エアヒータは交換も極めて容易でメンテナンス性に優れる。
さらに、送風ファンを炉体の外部に設けているので、炉体の内部に設けた場合と比較して、熱の影響による故障を軽減でき、その寿命を延ばすことができる。
【0019】
また本発明によれば、第一ファンと第二ファンを交互に一定時間回転させることで、気体を、第一通路を通過する第一循環方向と、第二通路を通過する第二循環方向に交互に循環させて、被加熱材に対して加熱された気体を左右方向から交互に送るので、高い加熱効率を得ることができる。また、加熱された空気を放散させることなく循環させること、および第一蓄熱器および第二蓄熱器の熱に加えて、第一エアヒータおよび第二エアヒータの熱を利用することによっても高い加熱効率を得ることができる。また、第一ファンと第二ファン,第一エアヒータと第二エアヒータを炉体の外部に設けているので、熱の影響を回避して、それらの寿命を延ばすことができる。また炉外に設けられた第一エアヒータおよび第二エアヒータは交換も極めて容易でメンテナンス性に優れる。
【0020】
また本発明によれば、気体として空気を使用しているので加熱に利用する材料費を削減でき、加熱効率の向上に貢献することができる。
【0021】
さらに、本発明は、気体として空気以外の雰囲気ガスを利用しているので、加熱処理の内容に適したガスを選択することによって、加熱効率を高めることができる。
【0022】
このように、複数の開閉弁を交互に一定時間毎に切替えることで、被加熱材に対して加熱された気体を二台のエアヒータと二台の蓄熱器を利用して左右方向から交互に送ることで高い加熱効率を得るようにした構成は、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る電気炉を示す正面構成図で、炉内で気体を右から左方向へ送る状態を示したものである。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る電気炉を示す正面構成図で、炉内で気体を左から右方向へ送る状態を示したものである。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る電気炉を示す正面構成図である。
【
図4】従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【
図5】他の従来例に係る電気炉を示す正面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び
図2を参照して、本発明の第一実施形態に係る電気炉1を説明する。
図1は、炉体10の内部において、気体を右から左方向へ送る状態の電気炉1を示し、
図2は、
図1とは逆側、つまり、炉体10の内部において、気体を左から右方向へ送る状態の電気炉1を示す。
【0025】
本実施形態に係る電気炉1は、電気を熱源とし、炉体10の内部に気体を循環させて、炉体10の内部に載置した被加熱材Tを加熱処理する。被加熱材Tは固定状態で載置しても良いし、移動(回転など)できる状態で載置しても良い。
【0026】
この電気炉1は、第一エアヒータ11,第二エアヒータ12,第一蓄熱器13,第二蓄熱器14,第一通路15,第二通路16,第三通路17,第四通路18,送風ファン20,第一開閉弁21,第二開閉弁22,第三開閉弁23,第四開閉弁24,第五開閉弁25及び第六開閉弁26を備える。
【0027】
第一エアヒータ11は、炉体10の外部の右側に設けられ、気体を加熱して炉体10の内部に送風する。
第二エアヒータ12は、炉体10の外部の左側に設けられ、気体を加熱して炉体10の内部に送風する。
【0028】
第一蓄熱器13は、炉体10の外部の右側に設けられ、第一ヒータ11と連通する。
第二蓄熱器14は、炉体10の外部の左側に設けられ、第二ヒータ12に連通する。
これら第一蓄熱器13および第二蓄熱器14はそれぞれその内部に蓄熱材を設けている。
【0029】
第一通路15は、炉体10の外部に配置され、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14とを連通する状態で設けられる。
第二通路16も同様に炉体10の外部に配置され、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14とを連通する状態で設けられる。
第三通路17も同様に炉体10の外部に配置され、第一通路15の第一エアヒータ11側に設けられた第一分岐点Z1から分岐して第一エアヒータ11に連通する状態で設けられる。
第四通路18も同様に炉体10の外部に配置され、第二通路16の第二エアヒータ12側に設けられた第二分岐点Z2から分岐して第二エアヒータ12に連通する状態で設けられる。
【0030】
送風ファン20は一台設けられ、第一通路15および第二通路16の双方に、それぞれのほぼ中間部分に介在する状態で、かつ第一通路15では第一分岐点Z1と第二分岐点Z2の間に接続され、第一開閉弁21,第二開閉弁22,第三開閉弁23,第四開閉弁24,第五開閉弁25および第六開閉弁26の操作によって、気体を、第一通路15を介して右側の第一蓄熱器13側と第一エアヒータ11側、または第一通路15を介して左側の第二蓄熱器14側と第二エアヒータ12側のうちいずれか一方に送風する。第一通路15に対する送風ファン20の接続位置を符号Xでし、第二通路16に対する送風ファン20の接続位置を符号Yで示した。
【0031】
この送風ファン20は、吐出口20aと吸引口20bを備え、吐出口20aから気体を第一通路15に送り、吸引口20bから第二通路16からの気体を受け入れる。吐出口20aと第一通路15の間には第一接続管K1が設けられ、吸引口20bと第二通路16の間には第二接続管K2が設けられている。
【0032】
第一開閉弁21は、第一通路15に対する送風ファン20の接続位置Xと第一蓄熱器13との間に設けられ、第二開閉弁22は、同じ第一通路15に対する送風ファン20の接続位置Xと第二蓄熱器14との間に設けられる。第三開閉弁23は、第二通路16に対する送風ファン20の接続位置Yと第一蓄熱器13との間に設けられ、第四開閉弁24は同じ第二通路16に対する送風ファン20の接続位置Yと第二蓄熱器14との間に設けられ、第五開閉弁25は、第三通路17に設けられ、第六開閉弁26は、第四通路18に設けられる。
【0033】
この電気炉1は次のように作動させることができる。すなわち、この電気炉1は、気体を、送風ファン20から第一通路15及び第三通路17を通過して第一蓄熱器13及び第一エアヒータ11に送り、第二蓄熱器14から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第一循環経路P1と、送風ファン20から第一通路15及び第四通路18を通過して第二蓄熱器14及び第二エアヒータ12に送り、第一蓄熱器13から第二通路16を通過して送風ファン20に戻す第二循環経路P2に一定時間毎(例えば、30秒毎あるいは1分毎)で交互に切り替えて循環させる。
【0034】
気体を、第一循環経路P1(炉体10の内部を右から左方向)(
図1参照)に送る場合は、第一通路15の第一開閉弁21と第二通路16の第四開閉弁24と第三通路17の第五開閉弁25を開放するとともに、第一通路15の第二開閉弁22と第二通路16の第三開閉弁23と第四通路18の第六開閉弁26を閉じる。
その逆に、気体を第二循環経路P2(炉体10の内部を左から右方向)(
図2参照)に送る場合は、第一通路15の第一開閉弁21と第二通路16の第四開閉弁24と第三通路17の第五開閉弁25を閉じるとともに、第一通路15の第二開閉弁22と第二通路16の第三開閉弁23と第四通路18の第六開閉弁26を開放する。
このいずれの場合も、一台の送風ファン20を同一の方向に回転させる。なお、これら開閉弁21~26の開閉は制御装置によって自動的に行うことができる。
【0035】
気体を第一循環経路P1に送る場合、送風ファン20で送られた気体は、第一通路15を通り、その後、第一分岐点Z1で、第一通路15側と第三通路17側に分けられ、第一通路15側では第一開閉弁21を通過して第一蓄熱器13に達し、第三通路17側では第五開閉弁25を通過して第一エアヒータ11に達する。そして、送風ファン20で送られた気体は、第一蓄熱器13に蓄えられた熱によって加温されるとともに、第一エアヒータ11によっても加温される。このように二系統から加熱された気体によって炉体10の内部の被加熱材Tに加熱処理を加える。この際、被加熱材Tには右方向からの熱が強く作用する。
【0036】
被加熱材Tに加熱処理を加えた気体は、第二蓄熱器14に達し、第二蓄熱器14と熱交換した後(第二蓄熱器14に熱を蓄えた後)、第二通路16を通り、第四開閉弁24を通過して送風ファン20に戻る。こうした循環を一定時間(例えば、30秒あるいは1分)継続する。
【0037】
そして一定時間経過後に、気体を第二循環経路P2に送る場合、送風ファン20で送られた気体は、第二通路15を通り、その後、第二分岐点Z2で、第一通路15側と第四通路18側に分けられ、第一通路15側では第二開閉弁22を通過して第二蓄熱器14に達し、第四通路18側では第六開閉弁26を通過して第二エアヒータ12に達する。そして、送風ファン20で送られた気体は、第二蓄熱器14に蓄えられた熱によって加温されるとともに、第二エアヒータ12によっても加温される。このように二系統から加熱された気体によって炉体10の内部の被加熱材Tに加熱処理を加える。この際、被加熱材Tには左方向からの熱が強く作用する。
【0038】
被加熱材Tに加熱処理を加えた気体は、第一蓄熱器13に達し、第一蓄熱器13と熱交換した後、第二通路16を通り、第三開閉弁23を通過して送風ファン20に戻る。こうした循環を一定時間(例えば、30秒あるいは1分)継続する。
【0039】
このように構成された電気炉1によれば、被加熱材Tに右方向と左方向からの強い熱を交互に作用させることができると同時に、気体の流れを第一循環経路P1(第二循環経路P2)と第二循環経路P2(第一循環経路P1)とに交互に切り替えるので、炉体10の内部の気体を効果的に攪拌させることができる。したがって、被加熱材Tの全体に、より均等な加熱処理を加えることができる。
【0040】
またこの電気炉1は、加熱した気体を電気炉1の外部に放散させることなく循環させるので、少ない電気エネルギーで効率的に気体を加熱することができる。
また、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14を設けているので、これらに蓄えられた熱を利用して気体をさらに効率的に加熱することができる。
さらに、送風ファン20を炉体10の外部に設けているので、炉体10の内部の熱の影響を避けることができ、その寿命を延ばすことができる。
【0041】
また、第一蓄熱器13および第二蓄熱器14に蓄えられた熱の利用に加えて、第一エアヒータ11および第二エアヒータ12をさらなる熱源としてそれらからの熱も利用できるようにしたので、大容量の熱移動により加熱効率をより一層高めることができる。
しかも、第一エアヒータ11および第二エアヒータ12は炉外に設置されているので、例えば炉内に固定式ヒータを設置した場合と比較して炉内空間を広く使えるとともに、炉内で他のものとの物理的接触はないので固定式ヒータのように接触により破損することを考慮する必要がない。固定式ヒータの場合、他のものとの物理的接触を避けるため炉内に被加熱材搬送用の台車用レールを設けることが好ましいが、本実施形態のように炉内に固定式ヒータを設置しないものでは台車用レールの有無など考慮する必要がない。また炉外に設けられた第一エアヒータ11および第二エアヒータ12は交換も極めて容易でメンテナンス性に優れる。
【0042】
次に、
図3を参照して、本発明の第二実施形態に係る電気炉1を説明する。
図3は、本実施形態に係る電気炉1の正面部分構成図である。
【0043】
この電気炉1も、電気を熱源とし、炉体10の内部に気体を循環させて被加熱材Tを加熱処理する構成であり、第一エアヒータ11,第二エアヒータ12,第一蓄熱器13,第二蓄熱器14,第一通路15,第二通路16,第三通路17,第四通路18,第一ファン27および第二ファン28を備える。
【0044】
第一エアヒータ11は、炉体10の外部の右側に設けられ、気体を加熱して炉体10の内部に送風する。
第二エアヒータ12は、炉体10の外部の左側に設けられ、気体を加熱して炉体10の内部に送風する。
【0045】
第一蓄熱器13は、炉体10の外部の右側に設けられ、第一ヒータ11に連通する。第二蓄熱器14は、炉体10の外部の左側に設けられ、第二ヒータ12に連通する。第一蓄熱器13および第二蓄熱器14は、熱を蓄えることのできる蓄熱材を内蔵する。
【0046】
第一通路15は、炉体10の外部に設けられ、第一蓄熱器13と第二蓄熱器14とを連通する。第二通路16も炉体10の外部に設けられ、第二蓄熱器14と第一蓄熱器13とを連通する。
第三通路17も同様に炉体10の外部に配置され、第一通路15の第一エアヒータ11側に設けられた第一分岐点Z1から分岐して第一エアヒータ11に連通する状態で設けられる。
第四通路18も同様に炉体10の外部に配置され、第二通路16の第二エアヒータ12側に設けられた第二分岐点Z2から分岐して第二エアヒータ12に連通する状態で設けられる。
【0047】
第一ファン25は、第一通路15のほぼ中間部で、かつ第一分岐点Z1と第二蓄熱器14の間に設けられ、気体を、炉体10の内部において右から左方向(一方方向)へ送風する。第二ファン26は、第二通路16のほぼ中間部で、かつ第二分岐点Z2と第一蓄熱器13の間に設けられ、気体を、炉体10の内部において左から右方向(他方方向)へ送風する。第一ファン25は一方方向に回転し、第二ファン26は他方方向に回転する。
【0048】
この電気炉1の作動は、第一ファン25と第二ファン26を交互に一定時間回転させることで行うことができる。すなわち、第一ファン25を回転させることによって、気体を、第一通路15及び第三通路17を通過する第一循環経路P1に一定時間(例えば、30秒~1分程度)循環させる。これにより、気体は、第一蓄熱器13及び第エアヒータ11で加温され、その加熱された気体で被加熱材Tを加熱する。ここでは、被加熱材Tの右側に強い熱を作用させることができる。被加熱材Tを加熱した気体は、第二蓄熱器14で熱交換を行い、第一通路15を通って第一ファン25に戻される。
【0049】
気体を第一循環経路P1へ一定時間循環させた後、第一ファン25の回転を停止させた状態で第二ファン26を回転させる。これにより、気体を、第二通路16及び第四通路18を通過する第二循環経路P2に一定時間(例えば、30秒~1分程度)循環させる。これにより、気体は、第二蓄熱器14及び第二エアヒータ12で加温され、その加熱された気体で被加熱材Tを加熱する。ここでは、被加熱材Tの左側に強い熱を作用させることができる。被加熱材Tを加熱した気体は、第一蓄熱器13で熱交換を行い、第二通路16を通って第二ファン26に戻される。
【0050】
このように、気体を第一循環経路P1と第二循環経路P2へ交互に循環させることによって、被加熱材Tの右側部分および左側部分を含めた全体を効果的に加熱することができる。また、これにより炉体10の内部の気体を効果的に攪拌することができるので、被加熱材Tにさらに効果的な加熱処理を加えることができる。
【0051】
また、この電気炉1では、第一ファン25と第二ファン26を炉体10の外部に設けているので、炉体10の熱による影響を回避することができる。したがって、第一ファン25および第二ファン26の損傷を軽減し、その寿命を延ばすことができる。
【0052】
また、第一実施形態と同様に、第一蓄熱器13および第二蓄熱器14に蓄えられた熱の利用に加えて、第一エアヒータ11および第二エアヒータ12をさらなる熱源としてそれらからの熱も利用できるようにしたので、大容量の熱移動により加熱効率をより一層高めることができる。
しかも、第一エアヒータ11および第二エアヒータ12は炉外に設置されているので、炉内空間を広く使えるとともに、炉内で他のものとの物理的接触はない。また炉外に設けられた第一エアヒータ11および第二エアヒータ12は交換も極めて容易でメンテナンス性に優れる。
【0053】
なお、上記第一実施形態および第二実施形態における気体としては、空気あるいは空気以外の雰囲気ガスを使用することができる。空気を使用すると、加熱に利用する材料費を削減でき、加熱効率の向上に貢献することができる。
【0054】
空気以外の雰囲気ガスとしては種々のものを利用することができ、被加熱材Tの加熱に適したガスを選択することによって加熱効率を高めることができる。
例えば、発熱型変成ガス(リーン)(DX(L))、発熱型変成ガス(リッチ)(DX(R))、発熱型変成ガス(乾燥)(DX(DRY))、窒素型変成ガス(Nx)、吸熱型変性ガス(RX)、吸熱型変成ガス(SRX)、アンモニア分解ガス(AX)、HN混合ガス(HN)、水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス(液化ガス)および窒素ガス(PSAガス)を使用することができる。
このうち例えば、発熱型変成ガス(リーン)は、鋼のブルーイング/鋼やアルミの無酸素化焼なましに適し、発熱型変成ガス(リッチ)は、低炭素鋼の光輝焼なまし/低炭素鋼のロウ付け/電磁鋼板の焼なましに適している。
【符号の説明】
【0055】
1 電気炉
10 炉体
11 第一エアヒータ
12 第二エアヒータ
13 第一蓄熱器
14 第二蓄熱器
15 第一通路
16 第二通路
17 第三通路
18 第四通路
20 送風ファン
20a 吐出口
20b 吸引口
21 第一開閉弁
22 第二開閉弁
23 第三開閉弁
24 第四開閉弁
25 第五開閉弁
26 第六開閉弁
27 第一ファン
28 第二ファン
30 炉体
31 金属ヒータ
32 回転ファン
40 炉体
41 エアヒータ
K1 第一接続管
K2 第二接続管
P1 第一循環経路
P2 第二循環経路
T 被加熱材
X 接続位置
Y 接続位置