(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110024
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20240807BHJP
F28D 21/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F28D20/00 B
F28D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014323
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】武塙 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】安嶋 賢哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 時空
(72)【発明者】
【氏名】横山 康弘
(72)【発明者】
【氏名】峯松 繁行
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率を向上すること。
【解決手段】蓄熱システム(10)は、作動流体となる水を加熱して過熱蒸気とするボイラ(11)と、ボイラ(11)にて加熱された過熱蒸気から動力を発生する蒸気タービン(12)と、蒸気タービンから供給される蒸気を凝縮して復水とする復水器(13)と、過熱蒸気及び復水に対して貯留する蓄熱材(HS)と熱交換する蓄放熱系(25)とを備えている。蓄放熱系は、過熱蒸気と蓄熱材との間で熱交換する第1蓄放熱部となる気相域蓄放熱部(30)と、湿り飽和蒸気及び復水と蓄熱材との間で熱交換する第2蓄放熱部とを備えている。第2蓄放熱部は、湿り飽和蒸気と蓄熱材との間で熱交換する高温側蓄放熱部となる気液相域蓄放熱部(40)と、復水と蓄熱材との間で熱交換する低温側蓄放熱部となる液相域蓄放熱部(50)とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を加熱して液相から気相とする加熱装置と、
前記加熱装置にて加熱された気相の作動流体から動力を発生する動力発生装置と、
前記動力発生装置から供給される作動流体を凝縮する凝縮装置と、
作動流体に対して貯留する蓄熱材と熱交換する蓄放熱系と、を備え、
蓄熱運転モードにて、前記加熱装置で加熱された作動流体が前記動力発生装置及び前記蓄放熱系に分配され、該蓄放熱系にて蓄熱材が作動流体によって加熱され、
放熱運転モードにて、前記凝縮装置で凝縮された作動流体が前記加熱装置及び前記蓄放熱系に分配され、該蓄放熱系にて蓄熱材から作動流体に放熱される蓄熱システムであって、
前記蓄放熱系は、気相の作動流体と蓄熱材との間で熱交換する第1蓄放熱部と、
気液相及び液相の作動流体と蓄熱材との間で熱交換する第2蓄放熱部とを備えていることを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記第2蓄放熱部は、気液相の作動流体と蓄熱材との間で熱交換する高温側蓄放熱部と、
液相の作動流体と蓄熱材との間で熱交換する低温側蓄放熱部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記第1蓄放熱部、前記高温側蓄放熱部及び前記低温側蓄放熱部は、蓄熱材を収容する高温蓄熱槽及び低温蓄熱槽と、
前記高温蓄熱槽から前記低温蓄熱槽に供給される蓄熱材から作動流体に放熱する加熱用熱交換器と、
前記低温蓄熱槽から前記高温蓄熱槽に供給される蓄熱材によって作動流体を冷却する冷却用熱交換器とをそれぞれ備えていることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記第1蓄放熱部、前記高温側蓄放熱部及び前記低温側蓄放熱部で用いるそれぞれの蓄熱材は、液相の溶融塩であり、作動流体がH2Oであることを特徴とする請求項3に記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記第1蓄放熱部及び前記第2蓄放熱部は、蓄熱材を収容する高温蓄熱槽及び低温蓄熱槽と、
前記高温蓄熱槽から前記低温蓄熱槽に供給される蓄熱材から作動流体に放熱する加熱用熱交換器と、
前記低温蓄熱槽から前記高温蓄熱槽に供給される蓄熱材によって作動流体を冷却する冷却用熱交換器とをそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記第1蓄放熱部で用いる蓄熱材は、液相の溶融塩であり、前記第2蓄放熱部で用いる蓄熱材は、H2Oであり、作動流体がH2Oであることを特徴とする請求項5に記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記高温蓄熱槽に供給される蓄熱材を加熱するヒータと、前記低温蓄熱槽に供給される蓄熱材を冷却するクーラとを更に備えていることを特徴とする請求項3から請求項6の何れか一項に記載の蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材を用いた蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるシステムは、作業流体を熱交換器の中を通って循環させるための作業流体回路、及び蓄熱媒体を循環させるための蓄熱媒体回路を有している。蓄熱媒体回路は、熱交換器を介して接続される高温貯蔵タンク及び低温貯蔵タンクを有している。作業流体は熱交換器の中を通るときに、低温貯蔵タンクから高温貯蔵タンクに送り出される蓄熱媒体の中に熱を放出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムは、蓄熱媒体が液相のみの顕熱変化で蓄放熱し、作業流体が例えば水(蒸気)のように顕熱変化の他に潜熱変化でも蓄放熱する場合、熱交換器が単一となるとエネルギー回収率が低くなる、という問題がある。これは、液相のみの蓄熱媒体に対し作業流体が相変化するので、蓄熱媒体の流量を大きくすると作業流体と熱交換できない温度帯が生じ、また、蓄熱媒体の流量を小さくすると作業流体が高温の状態で熱交換器から流出するようになるからである。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率(回収率)を向上することができる蓄熱システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様の蓄熱システムは、作動流体を加熱して液相から気相とする加熱装置と、前記加熱装置にて加熱された気相の作動流体から動力を発生する動力発生装置と、前記動力発生装置から供給される作動流体を凝縮する凝縮装置と、作動流体に対して貯留する蓄熱材と熱交換する蓄放熱系と、を備え、蓄熱運転モードにて、前記加熱装置で加熱された作動流体が前記動力発生装置及び前記蓄放熱系に分配され、該蓄放熱系にて蓄熱材が作動流体によって加熱され、放熱運転モードにて、前記凝縮装置で凝縮された作動流体が前記加熱装置及び前記蓄放熱系に分配され、該蓄放熱系にて蓄熱材から作動流体に放熱される蓄熱システムであって、前記蓄放熱系は、気相の作動流体と蓄熱材との間で熱交換する第1蓄放熱部と、気液相及び液相の作動流体と蓄熱材との間で熱交換する第2蓄放熱部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作動流体の気相と気液相及び液相とに分けて第1蓄放熱部及び第2蓄放熱部それぞれの蓄熱材で蓄放熱することができる。これにより、第1蓄放熱部及び第2蓄放熱部では、蓄熱運転モードと放熱運転モードにて蓄熱材の流量がアンバランスになることを解消でき、作動流体の熱エネルギーを蓄熱運転モードにて棄てることなく回収することができる。この結果、エネルギー回収率を改善でき、加熱装置から発生するエネルギーを動力発生装置にて取得するエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。
【
図2】放熱運転モードの蓄熱システムを示す
図1と同様の構成図である。
【
図3】比較構造の熱交換量と温度の関係を示すグラフである。
【
図4】第1の実施の形態の熱交換量と温度の関係を示すグラフである。
【
図5】第2の実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。
【
図6】放熱運転モードの蓄熱システムを示す
図5と同様の構成図である。
【
図7】第2の実施の形態の熱交換量と温度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の一実施の形態に係る蓄熱システムについて、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。
図1に示すように、蓄熱システム10は、例えば、火力発電システムに用いられる。蓄熱システム10は、作動流体としてH
2Oを用い、以下において、相変化に応じ、液相の状態では水や復水、気液相の状態では湿り飽和蒸気や蒸気、気相の状態では過熱蒸気や蒸気と称する場合がある。蓄熱システム10は、過熱蒸気を生成するボイラ(加熱装置)11と、過熱蒸気から動力を発生する蒸気タービン(動力発生装置)12と、過熱蒸気を凝縮して復水とする復水器(凝縮装置)13とを備えている。
【0010】
ボイラ11は、熱源を介して水を加熱して過熱蒸気を生成(液相から気相と)する。特に限定されるものでないが、ボイラ11の熱源は火力発電用の燃料の燃焼熱を発生するものであり、前記燃料としては、石炭・石油・天然ガス等の化石燃料、各種バイオマス燃料、水素燃料、アンモニア燃料等を使用することができる。
【0011】
蒸気タービン12は、配管15を介してボイラ11にて生成した過熱蒸気が供給される。蒸気タービン12は、過熱蒸気の熱エネルギーを吸収して出力軸12aを回転する動力を発生し、低温になった蒸気を排出する。蒸気タービン12には、出力軸12aを介して発電機Gが接続され、発電機Gは、出力軸12aの回転により発電する。
【0012】
蒸気タービン12の出口側には配管20が接続され、かかる配管20に復水器13と、復水ポンプ21及び給水ポンプ22とが設けられる。復水器13は、蒸気タービン12から供給される蒸気を回収し、該蒸気を凝縮(温度低下)して復水する。復水器13で生成された復水は、復水ポンプ21及び給水ポンプ22によってボイラ11に向かって送出される。なお、給水ポンプ22は、ボイラ11の入口より若干下流側に設けられ、該給水ポンプ22と復水器13との中間に復水ポンプ21が設けられる。
【0013】
蓄熱システム10は、ボイラ11からの過熱蒸気及び復水器13からの復水が供給される蓄放熱系25と、上述した配管15、20を接続して蓄放熱系25に用いられる配管26、27とを更に備えている。蓄放熱系25は、蓄熱材HSを貯留して用いており、該蓄熱材HSと過熱蒸気及び復水との間で熱交換を行う。ここで、蓄熱材HSは、蒸気や水に対して液相で熱交換する顕熱式の蓄熱材であり、化学的に不活性な溶融塩等が用いられる。
【0014】
配管26の上流端及び配管27の下流端は、配管15におけるボイラ11と蒸気タービン12との間に接続される。配管26の下流端及び配管27の上流端は、配管20における復水ポンプ21と給水ポンプ22との間に接続される。配管26には、後述する予冷器37、凝縮器47、過冷却器57が設けられ、配管27には、後述する過熱器38、蒸発器48、予熱器58が設けられる。配管26の下流側にはポンプ28が設けられる。
【0015】
蓄放熱系25は、気相となる過熱蒸気と蓄熱材HSとの間で熱交換する気相域蓄放熱部30と、気液相となる湿り飽和蒸気と蓄熱材HSとの間で熱交換する気液相域蓄放熱部40と、液相となる過熱蒸気と蓄熱材HSとの間で熱交換する液相域蓄放熱部50とを備えている。各蓄放熱部30、40、50は、相互に独立して蓄熱材HSを循環する回路を形成する。ここで、気相域蓄放熱部30により第1蓄放熱部が構成され、気液相域蓄放熱部40により高温側蓄放熱部が構成され、液相域蓄放熱部50により低温側蓄放熱部が構成される。また、気液相域蓄放熱部40と液相域蓄放熱部50とにより第2蓄放熱部が構成される。
【0016】
気相域蓄放熱部30は、蓄熱材HSを収容する第1高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)31及び第1低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)32を備えている。また、気相域蓄放熱部30は、第1低温蓄熱槽32から第1高温蓄熱槽31に蓄熱材HSを供給する配管33及びポンプ34と、第1高温蓄熱槽31から第1低温蓄熱槽32に蓄熱材HSを供給する配管35及びポンプ36とを備えている。
【0017】
更に、気相域蓄放熱部30は、配管33に設けられる予冷器(冷却用熱交換器)37と、配管35に設けられる過熱器(加熱用熱交換器)38とを備えている。
【0018】
予冷器37は、第1低温蓄熱槽32から第1高温蓄熱槽31に供給される間に通過する蓄熱材HSと、ボイラ11から配管15、26を経て通過する過熱蒸気とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、過熱蒸気が冷却されて湿り飽和蒸気に相変化され、蓄熱材HSが加熱(蓄熱)される。予冷器37により生成された湿り飽和蒸気は、配管26を経て後述する凝縮器47に供給される。
【0019】
過熱器38は、第1高温蓄熱槽31から第1低温蓄熱槽32に供給される間に通過する蓄熱材HSと、気液相域蓄放熱部40の後述する蒸発器48から配管27を経て通過する湿り飽和蒸気とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、湿り飽和蒸気が加熱されて過熱蒸気に相変化され、蓄熱材HSが放熱される。過熱器38の加熱により生成された過熱蒸気は、配管27、15を経て蒸気タービン12に供給される。
【0020】
ポンプ34は、配管33にて第1低温蓄熱槽32の下流側であって予冷器37より上流側に設けられる。配管33にて、予冷器37の下流側であって第1高温蓄熱槽31より上流側には、第1高温蓄熱槽31に供給される蓄熱材HSを加熱する第1ヒータH1が設けられる。
【0021】
ポンプ36は、配管35にて第1高温蓄熱槽31の下流側であって過熱器38より上流側に設けられる。配管35にて、過熱器38の下流側であって第1低温蓄熱槽32より上流側には、第1低温蓄熱槽32に供給される蓄熱材HSを冷却する第1クーラC1が設けられる。
【0022】
気液相域蓄放熱部40は、蓄熱材HSを収容する第2高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)41及び第2低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)42を備えている。また、気液相域蓄放熱部40は、第2低温蓄熱槽42から第2高温蓄熱槽41に蓄熱材HSを供給する配管43及びポンプ44と、第2高温蓄熱槽41から第2低温蓄熱槽42に蓄熱材HSを供給する配管45及びポンプ46とを備えている。
【0023】
更に、気液相域蓄放熱部40は、配管43に設けられる凝縮器(冷却用熱交換器)47と、配管45に設けられる蒸発器(加熱用熱交換器)48とを備えている。
【0024】
凝縮器47は、第2低温蓄熱槽42から第2高温蓄熱槽41に供給される間に通過する蓄熱材HSと、予冷器37から供給されて通過する湿り飽和蒸気とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、湿り飽和蒸気が温度を概ね維持しつつ凝縮され、蓄熱材HSが加熱(蓄熱)される。凝縮器47により凝縮された湿り飽和蒸気は、配管26を経て後述する過冷却器57に供給される。
【0025】
蒸発器48は、第2高温蓄熱槽41から第2低温蓄熱槽42に供給される間に通過する蓄熱材HSと、液相域蓄放熱部50の後述する予熱器58から配管27を経て通過する湿り飽和蒸気とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、湿り飽和蒸気が温度を概ね維持しつつ加熱され、蓄熱材HSが放熱される。蒸発器48により加熱された湿り飽和蒸気は、配管27を経て過熱器38に供給される。
【0026】
ポンプ44は、配管43にて第2低温蓄熱槽42の下流側であって凝縮器47より上流側に設けられる。配管43にて、凝縮器47の下流側であって第2高温蓄熱槽41より上流側には、第2高温蓄熱槽41に供給される蓄熱材HSを加熱する第2ヒータH2が設けられる。
【0027】
ポンプ46は、配管45にて第2高温蓄熱槽41の下流側であって蒸発器48より上流側に設けられる。配管45にて、蒸発器48の下流側であって第2低温蓄熱槽42より上流側には、第2低温蓄熱槽42に供給される蓄熱材HSを冷却する第2クーラC2が設けられる。
【0028】
液相域蓄放熱部50は、蓄熱材HSを収容する第3高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)51及び第3低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)52を備えている。また、液相域蓄放熱部50は、第3低温蓄熱槽52から第3高温蓄熱槽51に蓄熱材HSを供給する配管53及びポンプ54と、第3高温蓄熱槽51から第3低温蓄熱槽52に蓄熱材HSを供給する配管55及びポンプ56とを備えている。
【0029】
更に、液相域蓄放熱部50は、配管53に設けられる過冷却器(冷却用熱交換器)57と、配管55に設けられる予熱器(加熱用熱交換器)58とを備えている。
【0030】
過冷却器57は、第3低温蓄熱槽52から第3高温蓄熱槽51に供給される間に通過する蓄熱材HSと、凝縮器47から供給されて通過する湿り飽和蒸気とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、湿り飽和蒸気が冷却されて水に相変化され、蓄熱材HSが加熱(蓄熱)される。過冷却器57により生成された水は、配管26から配管20を経てボイラ11に供給される。
【0031】
予熱器58は、第3高温蓄熱槽51から第3低温蓄熱槽52に供給される間に通過する蓄熱材HSと、配管27により通過する復水とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、復水が加熱されて湿り飽和蒸気に相変化され、蓄熱材HSが放熱される。予熱器58の加熱により生成された湿り飽和蒸気は、配管27を経て蒸発器48に供給される。
【0032】
ポンプ54は、配管53にて第3低温蓄熱槽52の下流側であって過冷却器57より上流側に設けられる。配管53にて、過冷却器57の下流側であって第3高温蓄熱槽51より上流側には、第3高温蓄熱槽51に供給される蓄熱材HSを加熱する第3ヒータH3が設けられる。
【0033】
ポンプ56は、配管55にて第3高温蓄熱槽51の下流側であって予熱器58より上流側に設けられる。配管55にて、予熱器58の下流側であって第3低温蓄熱槽52より上流側には、第3低温蓄熱槽52に供給される蓄熱材HSを冷却する第3クーラC3が設けられる。
【0034】
ここで、蓄熱システム10は、配管61を更に備え、配管61の上流端は、配管26における過冷却器57とポンプ28との間に接続され、配管61の下流端は、配管20における復水器13と復水ポンプ21との間に接続される。
【0035】
配管61には、上流から下流側に向かって順に、第1熱利用装置63、膨張弁64、第2熱利用装置65、ポンプ66が設けられる。
【0036】
第1熱利用装置63では、過冷却器57から供給される水や、過冷却器57を経た後にて液化されずに配管26、61に流入した蒸気を熱源として、例えばプラント内で利用する水等の流体を加熱できる。膨張弁64は、第1熱利用装置63を経た蒸気を減圧して圧力調整する。第2熱利用装置65は、膨張弁64を経た蒸気を凝縮(温度低下)して復水する復水器とされ、第2熱利用装置65を経た復水がポンプ66により配管20に送出される。膨張弁64及び第2熱利用装置65での復水によって、復水器13で生成された復水と配管20にて合流できるよう調整可能となる。
【0037】
本実施の形態の蓄熱システム10は、蓄熱運転モードと、放熱運転モードとで選択的に運転される。蓄熱運転モードは、蓄熱材HSに熱エネルギーが蓄積され、発電機Gでの出力が相対的に低くなるモードとされる。放熱運転モードは、蓄熱材HSから熱エネルギーが放出され、発電機Gでの出力が相対的に高くなるモードとされる。以下、
図1を参照して蓄熱運転モードについて説明し、
図2を参照して放熱運転モードについて説明する。なお、
図1及び
図2にて、各運転モードで使用されない配管が破線で図示される。
【0038】
[蓄熱運転モード]
蓄熱運転モードでは、各ポンプ21、22、28、34、44、54、66が作動され、各ポンプ36、46、56が停止される。
【0039】
蓄熱運転モードにて、ボイラ11で生成された過熱蒸気は配管15、26にて蒸気タービン12及び蓄放熱系25に分配される。
【0040】
配管15から蒸気タービン12に流入した過熱蒸気は、蒸気タービン12にて出力軸12aの回転動力に変換され、温度低下して排出される。蒸気タービン12から排出された蒸気は復水器13で復水される。かかる復水は、復水ポンプ21及び給水ポンプ22により配管20を経てボイラ11の入口に供給される。
【0041】
また、蓄熱運転モードにて、蓄放熱系25では、ボイラ11で生成された過熱蒸気が配管26を経て気相域蓄放熱部30の予冷器37に流入する。予冷器37では、ポンプ34の作動によって第1低温蓄熱槽32から第1高温蓄熱槽31へ供給される蓄熱材HSが通過している状態となる。
【0042】
この状態で、予冷器37にて、通過する蓄熱材HSがボイラ11から供給される過熱蒸気と熱交換して加熱(蓄熱)される。第1高温蓄熱槽31では加熱された蓄熱材HSの収容量が増大し、第1低温蓄熱槽32の蓄熱材HSの収容量は減少する。
【0043】
予冷器37にて熱交換された過熱蒸気は、温度低下されて気液相となる湿り飽和蒸気に相変化し、気液相域蓄放熱部40の凝縮器47に供給される。
【0044】
気液相域蓄放熱部40において、凝縮器47では、ポンプ44の作動によって第2低温蓄熱槽42から第2高温蓄熱槽41へ供給される蓄熱材HSが通過している状態となる。この状態で、凝縮器47にて、通過する蓄熱材HSが予冷器37から供給される湿り飽和蒸気と熱交換して加熱(蓄熱)される。第2高温蓄熱槽41では加熱された蓄熱材HSの収容量が増大し、第2低温蓄熱槽42の蓄熱材HSの収容量は減少する。
【0045】
凝縮器47にて熱交換された湿り飽和蒸気は、温度を維持しつつ凝縮され、液相域蓄放熱部50の過冷却器57に供給される。
【0046】
液相域蓄放熱部50において、過冷却器57では、ポンプ54の作動によって第3低温蓄熱槽52から第3高温蓄熱槽51へ供給される蓄熱材HSが通過している状態となる。この状態で、過冷却器57にて、通過する蓄熱材HSが凝縮器47から供給される湿り飽和蒸気と熱交換して加熱(蓄熱)される。第3高温蓄熱槽51では加熱された蓄熱材HSの収容量が増大し、第3低温蓄熱槽52の蓄熱材HSの収容量は減少する。
【0047】
過冷却器57にて熱交換された湿り飽和蒸気は、温度低下して水(液相)に相変化し、ポンプ28によりに送出されて配管20を流れる復水に合流される。各蓄放熱部30、40、50での各高温蓄熱槽31、41、51では、加熱された蓄熱材HSの収容量が増大するので、蓄放熱系25での蓄熱エネルギーが増加することとなる。
【0048】
過冷却器57から配管26に流出する水や湿り飽和蒸気は、配管26から分岐する配管61にも分配され、第1熱利用装置63、膨張弁64、第2熱利用装置65にて上述のように熱利用される(場合もある)。
【0049】
[放熱運転モード]
放熱運転モードでは、各ポンプ21、22、36、46、56が作動され、各ポンプ28、34、44、54、66が停止される。
【0050】
放熱運転モードにおいても、ボイラ11で生成された過熱蒸気は蒸気タービン12に供給され、蒸気タービン12から排出された蒸気は復水器13で復水される。かかる復水は、配管20、27にてボイラ11及び蓄放熱系25に分配される。
【0051】
放熱運転モードにて、蓄放熱系25では、配管26を通じて復水が液相域蓄放熱部50の予熱器58に流入する。予熱器58では、ポンプ56の作動によって第3高温蓄熱槽51から第3低温蓄熱槽52へ供給される蓄熱材HSが通過している状態となる。
【0052】
この状態で、予熱器58にて、通過する蓄熱材HSが復水器13で生成された復水と熱交換して放熱される。第3低温蓄熱槽52では放熱された蓄熱材HSの収容量が増大し、第3高温蓄熱槽51の蓄熱材HSの収容量は減少する。
【0053】
予熱器58にて熱交換された復水は、加熱によって気液相となる湿り飽和蒸気に相変化し、気液相域蓄放熱部40の蒸発器48に供給される。
【0054】
気液相域蓄放熱部40において、蒸発器48では、ポンプ46の作動によって第2高温蓄熱槽41から第2低温蓄熱槽42へ供給される蓄熱材HSが通過している状態となる。この状態で、蒸発器48にて、通過する蓄熱材HSが予熱器58から供給される湿り飽和蒸気と熱交換して放熱される。第2低温蓄熱槽42では放熱された蓄熱材HSの収容量が増大し、第2高温蓄熱槽41の蓄熱材HSの収容量は減少する。
【0055】
蒸発器48にて熱交換された湿り飽和蒸気は、温度を維持しつつ加熱され、気相域蓄放熱部30の過熱器38に供給される。
【0056】
気相域蓄放熱部30において、過熱器38では、ポンプ36の作動によって第1高温蓄熱槽31から第1低温蓄熱槽32へ供給される蓄熱材HSが通過している状態となる。この状態で、過熱器38にて、通過する蓄熱材HSが蒸発器48から供給される湿り飽和蒸気と熱交換して放熱される。第1低温蓄熱槽32では放熱された蓄熱材HSの収容量が増大し、第1高温蓄熱槽31の蓄熱材HSの収容量は減少する。各蓄放熱部30、40、50では、各高温蓄熱槽31、41、51における蓄熱材HSの収容量が減少し、各低温蓄熱槽32、42、52にて放熱した蓄熱材HSの収容量が増大するので、蓄放熱系25での蓄熱エネルギーが減少することとなる。
【0057】
過熱器38にて熱交換された湿り飽和蒸気は、加熱によって気相となる過熱蒸気に相変化し、配管26を経て配管15に流入することで、ボイラ11で生成された過熱蒸気と合流して蒸気タービン12に供給される。このように、放熱運転モードでは、ボイラ11だけでなく蓄熱材HSからも熱エネルギーが供給され、蓄熱運転モードに比べて蒸気タービン12の出力を増大させることができる。
【0058】
続いて、第1の実施の形態の効果について、比較構造を用いて以下に説明する。比較構造は、第1の実施の形態における蓄放熱系25にて、3つ設けた蓄放熱部30、40、50を何れか1つ(単一)とした構成とされる。また、第1の実施の形態及び比較構造の両方にて、蓄熱材として液相の溶融塩を用いる。
【0059】
図3は、比較構造の熱交換量と温度の関係を示すグラフである。
図3にて、横軸は熱交換量(kW)、縦軸は温度(℃)とする。
図3にて、破線で示すグラフWsは、作動流体として用いるH
2Oの熱交換量と温度の関係を示している。グラフWsは、低温側となる液相(水)及び高温側となる気相(過熱蒸気)で顕熱変化となり、それらの間にて気液相(湿り飽和蒸気)となって潜熱変化となる。かかる作動流体に対し、単一の蓄放熱部となる比較構造にて、蓄熱材を放熱及び蓄熱しようとする場合を検討する。
【0060】
比較構造にて、蓄熱材を放熱する熱交換量と温度の関係の仮想例として、
図3にグラフGaを示す。グラフGaは、蓄熱材が液相の溶融塩となるので顕熱変化となり、また、単一の蓄放熱部で放熱するので熱交換量の変化に応じて温度が直線的(傾きが均一)に変化する。また、蓄熱材の放熱では、H
2Oとの間で熱交換を行えるよう、熱交換中にH
2Oより蓄熱材の温度を高く維持する必要がある。よって、グラフGaは、グラフWsの液相及び気液相の境界点で最接近する図示のようになる。
【0061】
グラフGaで示すように蓄熱材を放熱する比較構造にて、蓄熱材を蓄熱(加熱)する熱交換量と温度の関係は、
図3に示すグラフGb、Gcを例示できる。グラフGb、Gcにおいても、蓄熱材が液相の溶融塩となるので顕熱変化となり、また、単一の蓄放熱部で放熱するので熱交換量の変化に応じて温度が直線的(傾きが均一)に変化する。また、蓄熱材の蓄熱では、H
2Oとの間で熱交換を行えるよう、熱交換中にH
2Oより蓄熱材の温度を低く維持する必要がある。
【0062】
グラフGbは、グラフWsの気液相及び液相の境界点で最接近する図示のようになる。グラフGbは、グラフGaと傾きが略同一とされ、該傾きは蓄熱材の質量流量に対応するので、蓄熱材の放熱と蓄熱とで質量流量が略同一とされる。しかしながら、蓄熱材の放熱と蓄熱とで質量流量が略同一の場合、グラフGbは、H2Oの気液相域にて蓄熱材が凝固する温度帯Taに達するため、H2Oの気液相域の一部及び液相域にて熱交換できなくなる。
【0063】
グラフGcは、蓄熱材の蓄熱時の質量流量を放熱時より小さくすることで、気相域での熱交換にて蓄熱材を高温の蓄熱状態にすることができるが、H2Oの気液相域及び液相域にて熱交換できなくなる。
【0064】
グラフGb、Gcに示す蓄熱材の蓄熱時の熱交換では、H2Oの熱エネルギーを全て回収できなくなり、熱交換後のH2Oが過熱蒸気や湿り飽和蒸気の状態で流出や廃棄されることとなる。つまり、比較構造のように蓄放熱部を単一にすると、熱交換器におけるH2Oの熱エネルギーの回収率が低くなる。
【0065】
また、グラフGcに示す蓄熱材の蓄熱時の熱交換では、H2Oの熱エネルギーの回収率が低くなるだけでなく、蓄熱材の放熱時と蓄熱時とで質量流量がアンバランスになり、ひいては、蓄放熱時間のアンバランス化が生じる。
【0066】
図4は、第1の実施の形態の熱交換量と温度の関係を示すグラフである。
図4においても、横軸は熱交換量(kW)、縦軸は温度(℃)とし、作動流体として用いるH
2Oの熱交換量と温度の関係となる破線で示すグラフWsは、
図3のグラフWsと同一である。
【0067】
図4にて、グラフGA1は、気相域蓄放熱部30の過熱器38にて、H
2Oの気相域での蓄熱材を放熱する熱交換量と温度の関係を示している。グラフGB1は、気相域蓄放熱部30の予冷器37にて、H
2Oの気相域での蓄熱材を蓄熱(加熱)する熱交換量と温度の関係を示している。グラフGA1とグラフGB1とは傾きが略同一、すなわち質量流量が略同一となり、且つ、熱交換量も略同一となる。
【0068】
図4にて、グラフGA2は、気液相域蓄放熱部40の蒸発器48にて、H
2Oの気液相域での蓄熱材を放熱する熱交換量と温度の関係を示している。グラフGB2は、気液相域蓄放熱部40の凝縮器47にて、H
2Oの気液相域での蓄熱材を蓄熱(加熱)する熱交換量と温度の関係を示している。グラフGA2とグラフGB2とは傾きが略同一、すなわち質量流量が略同一となり、且つ、熱交換量も略同一となる。
【0069】
図4にて、グラフGA3は、液相域蓄放熱部50の予熱器58にて、H
2Oの液相域での蓄熱材を放熱する熱交換量と温度の関係を示している。グラフGB3は、液相域蓄放熱部50の過冷却器57にて、H
2Oの液相域での蓄熱材を蓄熱(加熱)する熱交換量と温度の関係を示している。グラフGA3とグラフGB3とは傾きが略同一、すなわち質量流量が略同一となり、且つ、熱交換量も略同一となる。
【0070】
以上により、第1の実施の形態においては、気相域蓄放熱部30、気液相域蓄放熱部40、液相域蓄放熱部50のそれぞれにて、各相での蓄放熱時における蓄熱材の質量流量が略等しくなる。よって、蓄放熱系25において、蓄熱材の放熱運転モードと蓄熱運転モードとで質量流量がアンバランスになることを防止でき、蓄放熱時間のバランスを良好に維持することができる。これにより、蓄熱運転モードにてH2Oの熱エネルギーを棄てることなく回収でき、ボイラ11で発生する熱エネルギーを蒸気タービン12及び発電機Gで電気エネルギーとして取得する際のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0071】
なお、
図4にて、上向きの矢印線で示すGH1~GH3は、第1~第3ヒータH1~H3で蓄熱材を加熱した場合の過程を示す。また、下向きの矢印線で示すGC1~GC3は、第1~第3クーラC1~C3で蓄熱材を冷却した場合の過程を示す。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0073】
本発明の第2の実施の形態について
図5から
図7を参照して説明する。
図5は、第2の実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図であり、蓄熱運転モードを示している。
図6は、放熱運転モードの蓄熱システムを示す
図5と同様の構成図である。
図5及び
図6に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態における蓄放熱系25の気液相域蓄放熱部40及び液相域蓄放熱部50に代え、単一の気液相域-液相域蓄放熱部(第2蓄放熱部)70を設けた構成としている。第2の実施の形態にて、気液相域-液相域蓄放熱部70と気相域蓄放熱部30とは、相互に独立して蓄熱材HSを循環する回路を形成する。
【0074】
第2の実施の形態にて、気液相域-液相域蓄放熱部70で用いられる蓄熱材HSは、H2Oであり、気液相及び液相で用いられるので湿り飽和蒸気及び水とされる。第2の実施の形態の気相域蓄放熱部30で用いられる蓄熱材HSは、第1の実施の形態と同様の溶融塩等とされる。
【0075】
気液相域-液相域蓄放熱部70は、蓄熱材HSを収容する第4高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)71及び第4低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)72を備えている。また、気液相域-液相域蓄放熱部70は、第4低温蓄熱槽72から第4高温蓄熱槽71に蓄熱材HSを供給する配管73及びポンプ74、79と、第4高温蓄熱槽71から第4低温蓄熱槽72に蓄熱材HSを供給する配管75及びポンプ76とを備えている。
【0076】
更に、気液相域-液相域蓄放熱部70は、配管73に設けられる過冷却器(冷却用熱交換器)77と、配管75に設けられる予熱器(加熱用熱交換器)78とを備えている。
【0077】
過冷却器77は、第4低温蓄熱槽72から第4高温蓄熱槽71に供給される間に通過する蓄熱材(H2O)HSと、予冷器37から供給されて通過する湿り飽和蒸気及び水とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、湿り飽和蒸気が冷却されて水に相変化され、蓄熱材(H2O)HSが加熱(蓄熱)されて湿り飽和蒸気に相変化される。過冷却器77により生成された水は、配管26から配管20を経てボイラ11に供給される。
【0078】
予熱器78は、第4高温蓄熱槽71から第4低温蓄熱槽72に供給される間に通過する蓄熱材(H2O)HSと、配管27により通過する復水とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、復水が加熱されて湿り飽和蒸気に相変化され、蓄熱材(H2O)HSが放熱される。予熱器78の加熱により加熱された湿り飽和蒸気は、配管27を経て過熱器38に供給される。
【0079】
ポンプ74は、配管73にて第4低温蓄熱槽72の下流側であって過冷却器77より上流側に設けられる。ポンプ79は、配管73にて過冷却器77の下流側に設けられる。配管73にて、過冷却器77及びポンプ79の下流側であって第4高温蓄熱槽71より上流側には、第4高温蓄熱槽71に供給される蓄熱材HSを加熱する第4ヒータH4が設けられる。
【0080】
ポンプ76は、配管75にて第4高温蓄熱槽71の下流側であって予熱器78より上流側に設けられる。配管75にて、予熱器78の下流側であって第4低温蓄熱槽72より上流側には、第4低温蓄熱槽72に供給される蓄熱材HSを冷却する第4クーラC4が設けられる。また、配管75にて、予熱器78の下流側であって第4クーラC4より上流側には、蓄熱材(H2O)HSの流量を調整可能な弁80が設けられる。
【0081】
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に蓄熱運転モードと、放熱運転モードとで選択的に運転される。
【0082】
蓄熱運転モードにて、気液相域-液相域蓄放熱部70の過冷却器77では、ポンプ74、79の作動によって第4低温蓄熱槽72から第4高温蓄熱槽71へ供給される蓄熱材(H2O)HSが通過している状態となる。この状態で、過冷却器77にて、通過する蓄熱材(H2O)HSが予冷器37から供給される湿り飽和蒸気と熱交換して加熱(蓄熱)される。第4高温蓄熱槽71では加熱された蓄熱材(H2O)HSの収容量が増大し、第4低温蓄熱槽72の蓄熱材HSの収容量は減少する。
【0083】
過冷却器77にて熱交換された湿り飽和蒸気は、温度低下されて水(気相)に相変化し、ポンプ28によりに送出されて配管20を流れる復水に合流される。
【0084】
放熱運転モードにて、気液相域-液相域蓄放熱部70の予熱器78では、ポンプ76の作動によって第4高温蓄熱槽71から第4低温蓄熱槽72へ供給される蓄熱材(H2O)HSが通過している状態となる。この状態で、予熱器78にて、通過する蓄熱材(H2O)HSが復水器13で生成された復水と熱交換して放熱される。第4低温蓄熱槽72では放熱された蓄熱材(H2O)HSの収容量が増大し、第4高温蓄熱槽71の蓄熱材(H2O)HSの収容量は減少する。
【0085】
予熱器78にて熱交換された復水は、加熱によって気液相となる湿り飽和蒸気に相変化し、気相域蓄放熱部30の過熱器38に供給される。
【0086】
図7は、第2の実施の形態の熱交換量と温度の関係を示すグラフである。
図7にて、グラフGA1、GB1は、第1の実施の形態と同一となり、気相域蓄放熱部30の過熱器38、予冷器37におけるH
2Oの気相域で蓄熱材が蓄放熱する熱交換量と温度の関係を示している。よって、グラフGA1とグラフGB1とは傾きが略同一、すなわち質量流量が略同一となり、且つ、熱交換量も略同一となる。
【0087】
図7にて、グラフGA4は、気液相域-液相域蓄放熱部70の予熱器78にて、H
2Oの気液相域及び液相域での蓄熱材を放熱する熱交換量と温度の関係を示している。グラフGB4は、気液相域-液相域蓄放熱部70の過冷却器77にて、H
2Oの気液相域及び液相域での蓄熱材を蓄熱(加熱)する熱交換量と温度の関係を示している。第2の実施の形態にて、蓄熱材はH
2Oであるので、作動流体となるH
2Oの気液相域では蓄熱材(H
2O)も気液相となり、作動流体となるH
2Oの液相域では蓄熱材(H
2O)も液相となる。よって、グラフGA4、GB4は、気液相域と液相域との境界位置で傾きが変化する折れ線状のグラフとなる。グラフGA4とグラフGB4とは傾きが略同一、すなわち質量流量が略同一となり、且つ、熱交換量も略同一となる。
【0088】
以上により、第2の実施の形態の気相域蓄放熱部30及び気液相域-液相域蓄放熱部70は、
図4と
図7とのグラフの対比から明らかなように、第1の実施の形態の構成と同じ過程で蓄放熱を行うことができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第2の実施の形態では、蓄放熱系25の一部にて、蓄熱材としてH
2Oを利用することが可能となる。
【0089】
なお、
図7にて、上向きの矢印線で示すGH4は、第4ヒータH4で蓄熱材を加熱した場合の過程を示す。また、下向きの矢印線で示すGC4は、第4クーラC4で蓄熱材を冷却した場合の過程を示す。
【0090】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0091】
例えば、上記各実施の形態にて、熱交換器として機能する予冷器37、過熱器38、凝縮器47、蒸発器48、過冷却器57、77、予熱器58、78は、単一の熱交換器として図示したが、これに限られるものでない。例えば、これらにあっては、複数の熱交換器を直列または並列に設けた構成としてもよく、かかる複数の熱交換器が相互に異なる構造を採用してもよい。
【0092】
また、作動流体の気相域においては、全体のうちの大部分が気相であれば、温度や圧力等の条件によって液相を含むことを妨げるものでない。同様に、作動流体の液相域においては、全体のうちの大部分が液相であれば、温度や圧力等の条件によって気相を含むことを妨げるものでない。
【0093】
また、ボイラ11は、作動流体として、H2O以外の流体を用いる場合には該流体を液相から気相とする他の加熱装置としてもよい。
【0094】
また、蒸気タービン12は、上記各実施の形態と同様に作動流体から熱エネルギーを取り出して動力を発生可能であれば、他の動力発生装置や熱利用装置としてもよい。
【0095】
また、復水器13は、上記各実施の形態と同様に作動流体を凝縮可能であれば、他の凝縮装置としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 :蓄熱システム
11 :ボイラ(加熱装置)
12 :蒸気タービン(動力発生装置)
13 :復水器(凝縮装置)
25 :蓄放熱系
30 :気相域蓄放熱部(第1蓄放熱部)
31 :第1高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)
32 :第1低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)
37 :予冷器(冷却用熱交換器)
38 :過熱器(加熱用熱交換器)
40 :気液相域蓄放熱部(第2蓄放熱部、高温側蓄放熱部)
41 :第2高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)
42 :第2低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)
47 :凝縮器(冷却用熱交換器)
48 :蒸発器(加熱用熱交換器)
50 :液相域蓄放熱部(第2蓄放熱部、低温側蓄放熱部)
51 :第3高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)
52 :第3低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)
57 :過冷却器(冷却用熱交換器)
58 :予熱器(加熱用熱交換器)
70 :気液相域-液相域蓄放熱部
71 :第4高温蓄熱槽(高温蓄熱槽)
72 :第4低温蓄熱槽(低温蓄熱槽)
77 :過冷却器(冷却用熱交換器)
78 :予熱器(加熱用熱交換器)
C1 :第1クーラ(クーラ)
C2 :第2クーラ(クーラ)
C3 :第3クーラ(クーラ)
C4 :第4クーラ(クーラ)
H1 :第1ヒータ(ヒータ)
H2 :第2ヒータ(ヒータ)
H3 :第3ヒータ(ヒータ)
H4 :第4ヒータ(ヒータ)
HS :蓄熱材