IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千住金属工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-摺動部材及び軸受 図1
  • 特開-摺動部材及び軸受 図2
  • 特開-摺動部材及び軸受 図3
  • 特開-摺動部材及び軸受 図4
  • 特開-摺動部材及び軸受 図5
  • 特開-摺動部材及び軸受 図6
  • 特開-摺動部材及び軸受 図7
  • 特開-摺動部材及び軸受 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110026
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】摺動部材及び軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/20 20060101AFI20240807BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240807BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240807BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240807BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240807BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240807BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240807BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240807BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F16C33/20 A
B32B15/08 E
B32B27/30 D
C08L27/12
C08L101/00
C08K3/22
C08K3/28
C08K3/04
C08K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014326
(22)【出願日】2023-02-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】谷端 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 公彦
【テーマコード(参考)】
3J011
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA02
3J011BA08
3J011DA01
3J011JA01
3J011KA01
3J011KA07
3J011LA01
3J011LA04
3J011MA02
3J011PA10
3J011QA05
3J011SA05
3J011SB02
3J011SB20
3J011SC04
3J011SC12
3J011SC14
3J011SE05
3J011SE06
4F100AA07A
4F100AA23A
4F100AB01C
4F100AB09A
4F100AB20A
4F100AD11A
4F100AK04A
4F100AK17A
4F100AK47A
4F100AK49A
4F100AK54A
4F100AK56A
4F100AL05A
4F100BA01
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DJ00B
4F100GB51
4F100JK09
4F100YY00A
4J002AA002
4J002BB032
4J002BD151
4J002CH092
4J002CL072
4J002CM042
4J002DA017
4J002DA027
4J002DE116
4J002DG027
4J002DG046
4J002FA047
4J002FD016
4J002GM05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】亜鉛化合物を使用せずに耐焼き付き性及び耐摩耗性を向上させた摺動部材及び軸受を提供すること、並びに、樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法を提供すること。
【解決手段】樹脂組成物4で形成された摺動部材1であって、前記樹脂組成物100vol%は、酸化第二鉄を1~10vol%、硫酸バリウムを2.5~15vol%、アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、残部のフッ素樹脂、からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材、並びに、金属基材2と、前記金属基材上に前記樹脂組成物で形成された摺動層5と、を備える軸受。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
【請求項2】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15ol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
酸化第二鉄の量が5~10vol%である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
二硫化モリブデンを1~20vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の摺動部材であって、金属基材と、前記金属基材の一の面に形成される多孔質層と、前記多孔質層を被覆する前記樹脂組成物で形成される、摺動部材。
【請求項7】
金属基材と、
前記金属基材上に樹脂組成物で形成された摺動層と、
を備える軸受であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、軸受。
【請求項8】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15vol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載の軸受。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の軸受であって、前記金属基材の一の面に多孔質層が形成されており、前記樹脂組成物が前記多孔質層を被覆して摺動層が形成されている、軸受。
【請求項10】
樹脂組成物を摺動部材に使用する方法であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、方法。
【請求項11】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15vol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
金属基材の表面に形成された多孔質層に樹脂組成物を含浸させ、そして、樹脂組成物を焼成することを含む摺動部材の製造方法であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、方法。
【請求項13】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15vol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法であって、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
フッ素樹脂を55vol%以上
含む樹脂組成物で前記摺動部材を形成することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手材を摺動可能に支持する摺動部材及びこの摺動部材を使用した軸受に関する。本発明はまた、樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摺動部材には、コンプレッサー用軸受への適用として高速環境下での使用に際して耐久性が求められる。樹脂系の軸受において、フッ素樹脂は他の樹脂に比べて自己潤滑性に優れ、低摩擦係数や耐熱性を保有している。更に、フッ素樹脂にフィラー等を充填することにより、摩擦特性を改質している。フッ素系樹脂は良好な滑り特性を示す反面、耐摩耗性といった耐久性は他の樹脂系と比較して劣るといったデメリットがある。フッ素樹脂中に充填剤を加えた摩擦材料においても、良好な滑り特性を示すが、耐摩耗性といった耐久性に関しては他の樹脂系と比べて十分なものとはならない。
【0003】
本出願人は、金属基材と、前記金属基材の一の面に形成される多孔質層と、前記多孔質層を被覆する摺動層を備え、前記多孔質層は、金属単体または合金組成物で形成され、前記摺動層は、鉛を含まない樹脂組成物で形成され、前記樹脂組成物は、必須の添加物が、亜鉛化合物と炭素繊維との組み合わせ、亜鉛化合物と酸化鉄との組み合わせ、または、亜鉛化合物と炭素繊維と酸化鉄との組み合わせの何れかのみからなり、任意の添加物が硫酸バリウムのみからなり、必須の添加物と任意の添加物の合計の含有量が、樹脂組成物中10vol%以上35vol%以下であり、残部がフッ素樹脂であることを特徴とする摺動部材を提案している(特許文献1)。特許文献1の摺動部材では、弾性率を改善し、かつ、耐摩耗性を改善するために、樹脂組成物に必須成分として硫化亜鉛などの亜鉛化合物を添加している。特に、硫化亜鉛は毒劇物であるため、環境への配慮及び製造時の安全確保より使用を控える方がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6677896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、亜鉛化合物を使用せずに耐焼き付き性及び耐摩耗性を向上させた摺動部材及び軸受を提供することである。本発明の目的はまた、樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のものを提供する。
[1]
樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
[2]
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15ol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の摺動部材。
[3]
酸化第二鉄の量が5~10vol%である、[1]に記載の摺動部材。
[4]
[1]に記載の樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
[5]
[1]に記載の樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
二硫化モリブデンを1~20vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の摺動部材であって、金属基材と、前記金属基材の一の面に形成される多孔質層と、前記多孔質層を被覆する前記樹脂組成物で形成される、摺動部材。
[7]
金属基材と、
前記金属基材上に樹脂組成物で形成された摺動層と、
を備える軸受であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、軸受。
[8]
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15vol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[7]に記載の軸受。
[9]
[7]又は[8]に記載の軸受であって、前記金属基材の一の面に多孔質層が形成されており、前記樹脂組成物が前記多孔質層を被覆して摺動層が形成されている、軸受。
[10]
樹脂組成物を摺動部材に使用する方法であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、方法。
[11]
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15vol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[10]に記載の方法。
[12]
金属基材の表面に形成された多孔質層に樹脂組成物を含浸させ、そして、樹脂組成物を焼成することを含む摺動部材の製造方法であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、方法。
[13]
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15vol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[12]に記載の方法。
[14]
樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法であって、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
フッ素樹脂を55vol%以上
含む樹脂組成物で前記摺動部材を形成することを含む方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、亜鉛化合物を使用せずに耐焼き付き性及び耐摩耗性を向上させた摺動部材及び軸受が提供される。特に、硫化亜鉛は毒劇物であるため、本発明の摺動部材によれば、環境への配慮及び製造時の安全確保が達成できる。本発明によればまた、樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態の摺動部材の一例を示す断面組織図である。
図2】本実施の形態の軸受の一例を示す斜視図である。
図3】本実施の形態の軸受の一例を示す断面図である。
図4】耐焼き付き性試験の概要を示す模式図である。
図5】耐焼き付き性試験において試験時間の経過によって試験片温度がどのように変化するかを示すグラフである。
図6】耐焼き付き性試験において試験時間の経過によってトルク(回転に要する力)がどのように変化するかを示すグラフである。
図7】耐焼き付き性試験において試験片温度とトルクが急激に低下する前の相手材の表面の元素分布を示す図である。
図8】耐焼き付き性試験において試験片温度とトルクが急激に低下した後の相手材の表面の元素分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[作用]
実施例において後述するように、フッ素樹脂に、亜鉛化合物を添加せずに、Fe及びBaSOを添加することによって、摺動する相手材表面に潤滑被膜が形成することが予想外に見出された。形成した被膜の効果により、試験時間がかなり経過した時点で摩擦トルクが減少に転じ、発熱が抑制されることで耐焼付性が向上することが見出された。亜鉛化合物を添加せずとも、耐焼付性が予想外に改善することが見出された。特に、硫化亜鉛は毒劇物であるため、本発明の摺動部材によれば、環境への配慮及び製造時の安全確保が達成できる。
【0010】
上記被膜の形成により耐摩耗性も向上するが、さらに、フッ素樹脂に、アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を加えることで、亜鉛化合物を添加せずとも本発明の樹脂組成物の耐焼付性及び耐摩耗性がさらに向上することが見出された。
【0011】
[摺動部材及び軸受]
以下、図面を参照して、本発明の摺動部材の好適な実施の形態、及び、本発明の摺動部材が適用された軸受の好適な実施の形態について説明する。
【0012】
<本実施の形態の摺動部材の構成例>
本実施の形態の摺動部材は、鉛を含まない樹脂組成物で形成される。摺動部材は、好適な実施態様においては、金属基材の表面に設けた金属の多孔質層上に樹脂組成物を被覆する形態で使用される。樹脂組成物の組成については後述する。
【0013】
図1は、本実施の形態の摺動部材の一例を示す断面組織図である。本実施の形態の摺動部材1は、金属基材2と、金属基材2の一の面である表面に金属単体または合金組成物で形成される多孔質層3と、多孔質層3を樹脂組成物4で被覆した摺動層5を備える。
【0014】
多孔質層3は、金属基材2の表面に、金属粉末が焼結されて形成される。金属基材2は、本例ではFe(鉄)系の板材が使用される。多孔質層3を形成する金属粉末は、Cu単体またはCuを主成分とした合金が使用され、本例ではCu-Sn系合金粉が使用される。
【0015】
多孔質層3の製造方法としては、Cu-Sn系合金粉が所定の厚さで鋼板上に散布され、Cu-Sn系合金粉が散布された鋼板が焼結炉で焼結される。これにより、鋼板上に、所定の厚さでCu-Sn系合金の多孔質層3が形成される。
【0016】
摺動層5は、多孔質層3に樹脂組成物4が所定の厚さで含浸され、多孔質層3に含浸された樹脂組成物4が焼成されて形成される。摺動層5の製造方法としては、金属基材2の表面に形成された多孔質層3上に、所定の量の樹脂組成物4が供給され、樹脂組成物4が多孔質層3に押圧されることで、樹脂組成物4が多孔質層3に含浸される。多孔質層3上に供給される樹脂組成物4の量は、後述する樹脂組成物4の焼成後に、多孔質層3が摺動層5の表面から露出しない厚さで多孔質層3を被覆する量である。
【0017】
摺動層5は、樹脂組成物4に含まれる樹脂の融点を超える温度で加熱し、樹脂を融着することで形成される。樹脂組成物4を所定の温度で加熱して摺動層5を形成することを焼成と称す。例えば、樹脂として使用されるポリテトラフルオロエチレンの融点は、327℃である。摺動層5は、本例では焼成炉を使用して、ポリテトラフルオロエチレンの融点を超える温度で樹脂組成物4が加熱されることで焼成される。
【0018】
摺動部材1において、本例では、多孔質層3を形成する金属粉末の全ての粒径が、15~180μm、好ましくは、25~150μm程度の範囲にある金属粉末を用いることができる。また、摺動部材1は、このような粒径の金属粉末で形成される多孔質層3の厚さTを、0.03~0.45mm程度とすることができる。多孔質層3の厚さは、金属粉末が少なくとも2個以上重なって焼結され得る厚さである。
【0019】
更に、摺動部材1は、摺動層5の厚さTを、0.05~0.50mm程度とすることができる。ここで、摺動層5の厚さTとは、金属基材2の表面からの厚さである。摺動層5の厚さは、多孔質層3が露出しないように、多孔質層3の厚さより平均して厚く設定される。なお、本例では、摺動層5の厚さTは0.3mmとした。
【0020】
基材には、様々なメッキを施すことができ、例えば、銅メッキ鋼板を使用することもできる。
【0021】
<本実施の形態の軸受の構成例>
図2は、本実施の形態の軸受の一例を示す斜視図、図3は、本実施の形態の軸受の一例を示す断面図であり、本実施の形態の摺動部材1の使用例を示す。
【0022】
本実施の形態の軸受7は、図1で説明した摺動部材1を、摺動層5を内側として環状に構成される。軸受7は、円筒状の内周面を形成する摺動層5で相手材である軸8を支持する。軸受7は、軸8が直線運動または回転運動により摺動する形態である。
【0023】
[樹脂組成物]
以下、樹脂組成物4について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である。
【0024】
前記任意成分は、樹脂組成物に添加されていても添加されていなくてもよいが、添加することにより、本発明の摺動部材及び軸受の耐焼付性及び耐摩耗性がさらに向上する。前記任意成分の配合量は、好ましくは、前記樹脂組成物100vol%あたり、
アラミド 2.5~15vol%、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0025】
<フッ素樹脂>
樹脂組成物4のベース樹脂となるフッ素樹脂は、優れた摺動特性を有する合成樹脂として周知であり、摺動摩擦による発熱に対し耐熱性が十分に確保されるため、摺動部材の樹脂組成物のベース樹脂としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)が多く用いられている。
【0026】
樹脂組成物は、フッ素樹脂としてPTFEを含むことが好ましい。PTFEと他のフッ素樹脂を混合して使用する場合、他のフッ素樹脂の含有量は、樹脂組成物中0vol%を超えて20vol%以下であることが好ましい。
【0027】
PTFE樹脂の市販品としては、ポリフロン(登録商標)D-210C、F-201(ダイキン工業社製)、Fluon(登録商標)AD911E(AGC社製)、テフロン(登録商標)31-JR、6C-J(三井・ケマーズフロロプロダクツ社製)等を挙げることができる。
【0028】
樹脂組成物4は、フッ素樹脂を除く添加物の含有量が、45vol%以下であり、好ましくは樹脂組成物中10vol%以上35vol%以下である。フッ素樹脂を除く必須の添加物の含有量が45vol%を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0029】
<酸化第二鉄(Fe)>
酸化第二鉄は、摺動層5を形成する樹脂組成物4において必須の添加剤である。樹脂組成物4は、所定量の酸化第二鉄を含むことで、耐摩耗性の向上に加え、耐焼き付き性を向上させることができる。樹脂組成物4は、酸化第二鉄を1~10vol%の量で含むことが必要であり、好ましくは、1.5~7.5vol%で含む。なお、市販品としては、森下弁柄工業のモリシタカラーシリーズ等を挙げることができる。酸化第二鉄は粉末形状で入手できる。
【0030】
<硫酸バリウム(BaSO)>
硫酸バリウムは、摺動層5を形成する樹脂組成物4において必須の添加剤である。樹脂組成物4は、所定量の硫酸バリウムを含むことで、耐摩耗性の向上に加え、耐焼き付き性を向上させることができる。樹脂組成物4は、硫酸バリウムを2.5~15vol%の量で含むことが必要であり、好ましくは、3.0~12.5vol%で含む。なお、市販品としては、堺化学工業のBFシリーズ、Bシリーズ等を挙げることができる。硫酸バリウムの形状は粉末や板状形状などがあり、粒径は20μm以下であることが好ましい。
【0031】
<アラミド>
アラミドは、摺動層5を形成する樹脂組成物4において任意の添加剤である。樹脂組成物4は、アラミドを2.5~15vol%で含むことが好ましく、2.5~11.0vol%で含むことがより好ましい。樹脂組成物4は、所定量のアラミドを添加することで、耐摩耗性及び耐焼き付き性を高くすることができる。なお、アラミドの市販品としては、東レ・デュポン社製のケブラー(登録商標)、帝人のトワロン(登録商標)等を挙げることができる。アラミドは、通常、繊維形状または、粉末形状も入手できる。
【0032】
<ポリイミド>
ポリイミドは、摺動層5を形成する樹脂組成物4において任意の添加剤である。樹脂組成物4は、ポリイミドを1~15vol%で含むことが好ましく、2.5~10.0vol%で含むことがより好ましい。樹脂組成物4は、所定量のポリイミドを添加することで、耐摩耗性を高くすることができる。なお、ポリイミドの市販品としては、ポリプラ・エポニック製のP84 NT、三井化学製のオーラム等を挙げることができる。ポリイミドは、粉末形状で入手できる。
【0033】
<超高分子量ポリエチレン>
超高分子量ポリエチレンは、摺動層5を形成する樹脂組成物4において任意の添加剤である。樹脂組成物4は、超高分子量ポリエチレンを1~15vol%で含むことが好ましく、2.0~8.0vol%で含むことがより好ましい。樹脂組成物4は、所定量の超高分子量ポリエチレンを添加することで、耐焼き付き性と耐すべり性を高くすることができる。なお、超高分子量ポリエチレンの市販品としては、三井化学社のミペロン(登録商標)(重量平均分子量50~700万)、東洋紡社のダイニーマ(登録商標)、ハネウエル社のSPECTRA(登録商標)等を挙げることができる。超高分子量ポリエチレンは、粉末形状であり、粒径は、例えば、d50で30μm以下のものを使用できる。
【0034】
<二硫化モリブデン>
二硫化モリブデンは、摺動層5を形成する樹脂組成物4において任意の添加剤である。樹脂組成物4は、二硫化モリブデンを1~10vol%で含むことが好ましく、2.0~8.0vol%で含むことがより好ましい。樹脂組成物4は、所定量の二硫化モリブデンを添加することで、摩擦抵抗を低下させることができる。なお、市販品としては、太陽鉱工社製のH/GMoS2、ダイゾー社製の二硫化モリブデンパウダーシリーズ等を挙げることができる。二硫化モリブデンは粉末形状のものが入手できる。
【0035】
<黒鉛>
黒鉛は、摺動層5を形成する樹脂組成物4において任意の添加剤である。樹脂組成物4は、黒鉛を1~10vol%で含むことが好ましく、2.0~7.5vol%で含むことがより好ましい。樹脂組成物4は、所定量の黒鉛を添加することで、摩擦抵抗を低下させることができる。なお、市販品としては、日本黒鉛工業のGRAPHITE POWDERシリーズ等を挙げることができる。黒鉛は粉末形状のものが入手できる。
【0036】
<炭素繊維>
炭素繊維は、直接または油等の流体を介して相手材と接触する摺動層5を形成する樹脂組成物4に、機能性付与材及び強化材として使用される。樹脂組成物4は、炭素繊維を1~10vol%で含むことが好ましく、2.5~7.5vol%で含むことがより好ましい。また、炭素繊維は、繊維径が5μm以上20μm以下、繊維長が10μm以上150μm以下、アスペクト比が2以上20以下であることが好ましい。
【0037】
<ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂>
PEEK樹脂は、摺動層5を形成する樹脂組成物4において任意の添加剤である。樹脂組成物4は、PEEK樹脂を1~15vol%で含むことが好ましく、2.0~7.0vol%で含むことがより好ましい。樹脂組成物4は、所定量のPEEK樹脂を添加することで、耐摩耗性を向上させることができる。なお、市販品としては、ポリプラ・エポニック製のVESTAKEEP等を挙げることができる。PEEK樹脂は、例えば、粉末形状であり、平均粒径20μm程度のものが入手できる。
【0038】
<その他の金属酸化物>
酸化第二鉄(Fe)以外の、二酸化ケイ素、四酸化三鉄(Fe)などの金属酸化物も摺動層5を形成する樹脂組成物4において任意の添加剤である。樹脂組成物4は、その他の金属酸化物を1~10vol%で含むことが好ましく、1.0~4.0vol%で含むことがより好ましい。樹脂組成物4は、所定量のその他の金属酸化物を添加することで、耐摩耗性を向上させることができる。なお、市販品としては、AGCエスアイテック株式会社製のSUNSPHEREシリーズや森下弁柄工業製のモリシタカラーFe3O4等を挙げることができる。その他の金属酸化物は、粉末形状で入手でき、粒径はSUSPHEREシリーズでは平均粒径30μm以下である。
【0039】
<樹脂組成物の具体例>
本発明の樹脂組成物は、使用される摺動部材の用途、形状、使用条件などにより配合組成を変更できる。実施例で調製した配合例の番号を併記して配合組成の具体的態様を以下に例示する。なお、各態様に併記した例番号は、表1に記載した例番号に対応する。
(1)CuSを使用する既存量産品に近い組成において、CuSに換えて酸化鉄と硫酸バリウムの組み合わせを使用する効果(耐焼付性、耐摩耗性、など)を奏することを目的とした組成物(例2)
樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
二硫化モリブデンを1~10vol%、
黒鉛を1~10vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である組成物。
【0040】
(2)耐焼付性及び耐摩耗性の向上を目的とした組成物(例3、例4、例6、例7、例8、例16)
樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
二硫化モリブデンを1~10vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である組成物。
【0041】
(3)超高分子量ポリエチレンによる耐焼付性の向上を目的とした組成物(例9)
樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
超高分子量ポリエチレンを1~15vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である組成物。
【0042】
(4)二硫化モリブデンの使用により超高分子ポリエチレンの少量添加であっても耐焼付性の向上が可能となる組成物(例10、例11)
樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
超高分子量ポリエチレンを1~15vol%、
二硫化モリブデンを1~10vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である組成物。
【0043】
(5)ポリイミド添加による耐摩耗性の向上を目的とした組成物(例12、例18)
樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミドを1~15vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である組成物。
【0044】
(6)PEEKによる耐摩耗性の向上を目的とした組成物(例13)
樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
二硫化モリブデンを1~10vol%、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂を1~15vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である組成物。
【0045】
(7)二硫化モリブデン及びポリイミドによる摺動性及び耐摩耗性の向上を目的とした組成物(例14、例15、例17、例19)
樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミドを1~15vol%、
二硫化モリブデンを1~10vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である組成物。
【0046】
[摺動部材の焼き付き防止方法]
本発明はまた、相手材を摺動可能に支持する摺動部材について、樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法に関する。
【0047】
上記方法は、樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法であって、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
フッ素樹脂を55vol%以上
含む樹脂組成物で前記摺動部材を形成することを含む方法である。
【0048】
後述する実施例において具体的に説明するように、酸化第二鉄(Fe)と硫酸バリウム(BaSO)との両方を同時に樹脂組成物に配合することにより、酸化第二鉄(Fe)又は硫酸バリウム(BaSO)のいずれかのみを配合するよりも優れた耐焼き付き性及び摩耗量の低減が奏されるという相乗効果が予想外にも見出された。上記方法はこの相乗効果に基づくものである。
【0049】
樹脂組成物で形成された摺動部材は、他の材料で形成された摺動部材に比べて、強度、耐熱性が低く、本発明の焼き付きを防止する方法が極めて有用である。本発明の方法は、特に、摩擦による摺動部材の温度上昇が100℃を超える用途、摺動部材に10MPa以上の圧力がかかる用途、など樹脂組成物で形成された摺動部材を適用することが難しいと考えられていた用途、特に軸受に有用である。
【0050】
軸受に本発明の方法を採用した場合には、通常の摺動環境下にて高寿命化を図ることができることや、耐久性の向上により、高速運動環境下や負荷荷重の高い過酷な摺動環境下で適用出来るという格別の効果が奏される。
【0051】
本発明の焼き付き防止方法において、摺動部材は樹脂組成物から形成される。樹脂組成物のより好適な態様については、本発明の摺動部材及び軸受に関して本明細書において既に説明してきたものが挙げられる。本発明の方法によれば、樹脂組成物に任意の追加成分を加えることにより、樹脂組成物で形成された摺動部材の摩耗量を低減することもできる。摺動部材の形成方法としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の一般的な成形方法が適用でき、例えば、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などが挙げられる。
【0052】
本発明の方法において、摺動部材の形状としては、当業界で採用されているものがいずれも採用でき、例えば、板状、円筒状(外周側・内周側)、曲面状、球状、などが挙げられる。
【実施例0053】
以下に実施例の形式で発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の例に限定されるものではない。以下の例において、vol%は、樹脂組成物全体を100vol%としたときの量比を示す。
表1に示す既存量産品及び例1~19の組成の樹脂組成物を使用して試験片を作成し、以下の要領で試験片について耐焼き付き性及び耐摩耗性を試験した。
【0054】
(1)耐焼き付き性試験
試験方法の模式図を図4に示す。下記寸法の試験片を下記試験機の試験台に固定し、上部から下記寸法の相手材円筒リングを下記試験条件で押し付けながら回転させた。押し付ける荷重は10分間ごとに段階的に加増し、試験片温度が200℃以上となった際の荷重を焼き付き荷重とした(焼付面圧(単位:MPa)で評価した。)。
試験機:高圧雰囲気摩擦摩耗試験機(神鋼造機株式会社)
試験片寸法:45mm×45mm×1.0~2.5mm
相手材円筒リング寸法:外径Φ30mm×内径Φ24mm、試験片との接触面積(254.5mm
基材:冷間圧延鋼板(SPCC)のCuめっき鋼板
多孔質層:CuSn粉にて形成
摺動層厚さ:0.3±0.1mm
相手材円筒リング材質:炭素鋼S45C
試験条件:
速度(0.25m/s)
回転数(177rpm)
荷重(50kgfを10分間ごとに段階的に加増)
雰囲気(ドライ)
【0055】
耐焼き付き性試験において、コンプレッサー用摺動部材などの高速環境下での使用に際して耐久性が求められる用途については、焼き付き面圧:30MPa以上を達成することが望ましい。
【0056】
(2)耐摩耗性試験
以下の条件で行い、試験片の厚さの減少量を摩耗量として測定した。
試験機:高圧雰囲気摩擦摩耗試験機(神鋼造機株式会社)
試験片寸法:45mm×45mm×1.0~2.5mm
相手材円筒リング寸法:外径Φ30mm×内径Φ24mm、試験片との接触面積(254.5mm
基材:SPCCのCuめっき鋼板
多孔質層:CuSn粉にて形成
摺動層厚さ:0.3±0.1mm
相手材円筒リング材質:炭素鋼S45C
試験条件:
速度(1m/s)
回転数(707rpm)
試験時間(10min)
荷重(2545N)
雰囲気(ドライ)
【0057】
耐摩耗性試験において、コンプレッサー用摺動部材などの高速環境下での使用に際して耐久性が求められる用途については、摩耗量:0.040mm以下を達成することが望ましい。
【0058】
試験結果を表1に示す。
【表1】
【0059】
表中の略号は以下のとおりである。
PTFEは、ポリテトラフルオロエチレンを示し、製品名:ポリフロン D-210Cを使用した。
Cは、黒鉛を意味し、製品名:CPBを使用した。
CuS2は、二硫化銅を意味し、既存量産品に含まれるものである。
Fe2O3は、酸化第二鉄を意味し、製品名:MR-970Dを使用した。
BaSO4は、硫酸バリウムを意味し、製品名:B-55を使用した。
アラミドは、製品名:Twaron Powderを使用した。
MoS2は、二硫化モリブデンを意味し、製品名:トレカ MLD30を使用した。
超高分子量ポリエチレンは、製品名:ミペロンを使用した。
PEEKは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を意味し、製品名:VESTAKEEPを使用した。
ポリイミドは、製品名: ポリイミド P84 NTを使用した。
【0060】
表1の試験結果から、酸化第二鉄(Fe)、硫酸バリウム(BaSO)及び任意成分と残部のフッ素樹脂(PTFE)からなる樹脂組成物から作製した試験片(例2~4及び例6~19)は、焼き付き温度(200℃)に達したときの面圧(焼付面圧)が38.5MPa~59.7MPaと高く、摩耗量が0.017mm~0.040mmと低く、既存量産品の焼付面圧(25.0MPa)よりも高く、摩耗量(0.042mm)よりも低く、本発明の摺動部材が、耐焼き付き性及び耐摩耗性において、既存量産品よりも優れていることがわかる。一方、酸化第二鉄(Fe)及び硫酸バリウム(BaSO)の一方しか含まない樹脂組成物から作製した試験片(例1及び例5)は、黒鉛、アラミド、二硫化モリブデン、などの成分を含んでいるにもかかわらず、焼付面圧がそれぞれ24.4MPa及び21.2MPaと低く、摩耗量がそれぞれ0.051mm及び0.071mmと高く、既存量産品の焼付面圧(25.0MPa)よりも低く、摩耗量(0.042mm)よりも高く、本発明の要件を満たさない摺動部材が、耐焼き付き性及び耐摩耗性において、既存量産品よりも劣ることがわかる。
【0061】
アラミドを任意成分として添加した例3~4及び例6~19は、耐摩耗性が向上し、0.017mm~0.039mmの比較的低い摩耗量を示した。アラミド及び超高分子量ポリエチレンを任意成分として添加した例9~11は、59.7MPaの比較的高い焼付面圧を示した。アラミド及びポリイミドを任意成分として添加した例12は、耐焼き付き性及び耐摩耗性が向上し、50.1MPaの比較的高い焼付面圧と0.026mmの比較的低い摩耗量を示した。試験結果から、ポリイミドを添加することにより、耐焼き付き性及び耐摩耗性が向上し、超高分子量ポリエチレンを添加することにより、すべり特性が向上し、摩擦抵抗の削減や温度上昇抑制によって、耐焼き付き性が向上することがわかった。二硫化モリブデンは、非摺動材料である酸化鉄やアラミドと、摺動性に優れるが、耐熱性、耐荷重性の劣るフッ素樹脂による構成に対して、耐熱性、耐荷重性を有し、固体潤滑材として作用する。このような二硫化モリブデンを添加することによって、摺動性が向上することがわかった。
【0062】
本発明者らは、酸化第二鉄(Fe)及び硫酸バリウム(BaSO)を含むフッ素樹脂組成物から作製した本発明の摺動部材が耐焼き付き性に優れる点に着目し、耐焼き付き性試験の結果をさらに詳細に検討した。その結果を図5及び図6に示す。図5は耐焼き付き性試験において試験時間の経過によって試験片温度がどのように変化するかを示すグラフであり、図6は耐焼き付き性試験において試験時間の経過によってトルク(回転に要する力)がどのように変化するかを示すグラフである。本発明の試験片は、試験時間6000秒付近で試験片温度とトルクが急激に低下しているので、試験片温度が低下した分200℃の焼き付き温度に達するまでの時間が予想外に長いことがわかる。一方、酸化第二鉄(Fe)又は硫酸バリウム(BaSO)のいずれかのみを含むフッ素樹脂組成物から作製した試験片及び既存量産品のいずれについても試験時間の経過とともに試験片温度とトルクが上昇し続け、比較的短い時間で200℃の焼付温度に到達することがわかる。このように、酸化第二鉄(Fe)と硫酸バリウム(BaSO)との両方を同時に使用することにより、酸化第二鉄(Fe)又は硫酸バリウム(BaSO)のいずれかのみを使用するよりも優れた耐焼き付き性が奏されるという相乗効果が予想外にも見出された。
【0063】
なお、図5及び図6の試験で使用した樹脂組成物の組成は、以下のとおりである。
・BaSO4無し: C-4%+Fe2O3-5%+MoS2-7.25% (表1の例1)
・Fe2O3無し: BaSO4-10%+アラミド-5%+MoS2-5% (表1の例5)
・Fe2O3×BaSO4:C-4%+Fe2O3-5%+BaSO4-5%+MoS2-7.25%(表1の例2)
・既存量産品:C-4%+CuS2-10.95%+MoS2-7.25%(表1の既存量産品)
【0064】
上述した試験時間6000秒付近で試験片温度とトルクが急激に低下する原因について本発明者が調査したところ、試験時間6000秒付近で相手材の表面にフッ素樹脂組成物を構成する材料が転移し、被膜が形成されることが分かった。この被膜が一定の量乃至面積で相手材表面に形成されると相手材の表面と本発明の試験片の表面の間に働く摩擦力が急激に低下し、試験片温度とトルクが急激に低下することが分かった。試験片温度とトルクが急激に低下する前の相手材の表面の元素分布を示す図7、試験片温度とトルクが急激に低下した後の相手材の表面の元素分布を示す図8によれば(分析装置:JXA-8530F FE-EPMA(日本電子株式会社))、トルク急減前の相手材表面には被膜が形成されておらず、鉄(Fe)元素が広い面積で検出されているが(図7の中段中央の鉄元素の分布を示す図において明るい部分は鉄元素の濃度が高いことを示す。)、トルク急減後の相手材表面では、酸素(O)、フッ素(F)、バリウム(Ba)の濃度が高くなっており、相手材表面の鉄元素がフッ素樹脂組成物から転移した被膜により覆い隠されていることがわかる(図8の上段中央の酸素(O)濃度を示す図、上段右側のフッ素(F)濃度を示す図、下段中央のバリウム(Ba)濃度を示す図はいずれも明るくなっており、これら元素の濃度が高いことを示し、一方、中段中央の鉄元素の濃度を示す図は暗くなっており、表面の鉄元素の濃度が低くなっていることを示す。)。このように、摺動部材のフッ素樹脂組成物が相手材に転移し、摺動部材の耐焼き付き性が飛躍的に向上することは、本発明者らにより、予想外に見出された知見である。
【0065】
本発明者らは、酸化第二鉄(Fe)、硫酸バリウム(BaSO)及びフッ素樹脂からなるフッ素樹脂組成物を使用して酸化第二鉄(Fe)濃度を変化させて、前記と同様にして耐焼き付き性試験を行った。なお、使用した材料は表1と同じであり、フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(製品名:ポリフロン D-210C)を使用し、酸化第二鉄は製品名:MR-970Dを使用し、硫酸バリウムは製品名:B-55を使用した。
る。その結果を、表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2からわかるように、硫酸バリウム濃度10vol%に対して、酸化第二鉄濃度が1.25vol%でも焼付面圧が高くなり、耐焼き付き性が向上していることがわかる。酸化第二鉄濃度が2.5vol%ではさらに焼付面圧が高くなり、5vol%の時に焼付面圧が最大となり、7.5vol%でも高い焼付面圧が維持されていることがわかる。更なる検討によれば、硫酸バリウム濃度と、酸化第二鉄濃度とは、vol%で、好ましい範囲では0.25:1~8:1、より好ましい範囲では0.5:1~4:1の比率で、より好ましい範囲では1:1~3:1の比率で、より好ましい範囲では1:1~2.5:1の比率でフッ素樹脂組成物中に存在させることがよいことが分かった。
【0068】
以上説明したように、本発明の方法を採用することにより、樹脂組成物で形成された摺動部材の焼き付きが防止され、さらには摩耗量が減少することが理解できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
【請求項2】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
酸化第二鉄の量が5~10vol%である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物で形成された摺動部材であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
二硫化モリブデンを1~20vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、摺動部材。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の摺動部材であって、金属基材と、前記金属基材の一の面に形成される多孔質層と、前記多孔質層を被覆する前記樹脂組成物で形成される、摺動部材。
【請求項6】
金属基材と、
前記金属基材上に樹脂組成物で形成された摺動層と、
を備える軸受であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、軸受。
【請求項7】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の軸受。
【請求項8】
請求項又はに記載の軸受であって、前記金属基材の一の面に多孔質層が形成されており、前記樹脂組成物が前記多孔質層を被覆して摺動層が形成されている、軸受。
【請求項9】
樹脂組成物を摺動部材に使用する方法であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、方法。
【請求項10】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
金属基材の表面に形成された多孔質層に樹脂組成物を含浸させ、そして、樹脂組成物を焼成することを含む摺動部材の製造方法であって、
前記樹脂組成物100vol%は、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である、方法。
【請求項12】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
樹脂組成物で形成された摺動部材の摩擦による焼き付きを防止する方法であって、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
酸化第二鉄を1~10vol%、
硫酸バリウムを2.5~15vol%、
アラミドを2.5~15vol%、
ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、炭素繊維、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を1~20vol%、
残部のフッ素樹脂、
からなり、フッ素樹脂以外の合計添加量が45vol%以下である
樹脂組成物で前記摺動部材を形成することを含む方法。
【請求項14】
前記任意成分が、
前記樹脂組成物100vol%あたり、
ポリイミド 1~15vol%、
超高分子量ポリエチレン 1~15vol%、
二硫化モリブデン 1~10vol%、
黒鉛 1~10vol%、
炭素繊維 1~10vol%、及び、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂 1~15vol%
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項13に記載の方法。