(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110028
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】塀及び塀の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04H 17/16 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
E04H17/16 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014334
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】523000112
【氏名又は名称】株式会社ユーモア
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】登丸 賢美
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142AA03
2E142AA05
2E142EE04
2E142EE05
2E142JJ06
(57)【要約】
【課題】鉄筋を用いずに短時間で楽に施工が可能な発泡樹脂パネルを用いた塀及び、この塀の施工方法を提供する。
【解決手段】 この塀及び塀の施工方法は、軽量な発泡樹脂パネルと合成樹脂製の支柱とを主要部材として使用する。このため、資材の運搬や施工が楽になり、作業者の負担を軽減することができる。また、部材が軽量なため従来よりも短時間で塀の構築を行うことができる。さらに、発泡樹脂パネルと支柱との固定は支柱孔に充填した小砂利によって行う。このため、従来モルタルにて行われてきた硬化時間が不要となり、その分、施工期間の短縮を行うことができる。また、小砂利は締固められるのみで固定はされない。このため、倒壊時や撤去時には小砂利は支柱孔から流出して、塀本体の重量が軽減する。これにより、倒壊時の危険性を低減することができる。また、撤去作業を楽に行うことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に貫通した支柱孔を有する発泡樹脂パネルと、
前記支柱孔に挿入され一端が基礎と固定した合成樹脂製の支柱と、
前記支柱孔に充填され前記発泡樹脂パネルと前記支柱とを固定する小砂利と、
前記発泡樹脂パネルの表面に形成されたモルタル層と、を有する塀。
【請求項2】
小砂利としてビリ砂利を用いたことを特徴とする請求項1記載の塀。
【請求項3】
発泡樹脂パネルの側面に本実矧ぎ手もしくは相欠き矧ぎ手を備え、前記本実矧ぎ手もしくは相欠き矧ぎ手により横方向に接続したことを特徴とする請求項1記載の塀。
【請求項4】
発泡樹脂パネルを用いた塀の施工方法であって、
前記発泡樹脂パネルは縦方向に貫通した支柱孔を備え、
基礎に合成樹脂製の支柱を立設する支柱固定工程と、
前記発泡樹脂パネルの支柱孔に前記支柱を通すとともに前記発泡樹脂パネルを横方向に連結して塀状とするパネル設置工程と、
前記支柱孔に小砂利を充填して締め固め前記発泡樹脂パネルを前記支柱に固定するパネル固定工程と、
前記発泡樹脂パネルの表面にモルタル層を形成するモルタル層形成工程と、を有することを特徴とする塀の施工方法。
【請求項5】
発泡樹脂パネルを用いた塀の施工方法であって、
前記発泡樹脂パネルは縦方向に貫通した支柱孔を備えるとともに側面に相欠き矧ぎ手を有し、
前記発泡樹脂パネルの表面にメッシュ部材が伏せ込まれた下地モルタル層を形成する下地モルタル工程と、
前記発泡樹脂パネルの支柱孔に合成樹脂製の支柱を通すとともに、前記支柱の下端を基礎に固定し、さらに前記相欠き矧ぎ手を横方向に連結して前記発泡樹脂パネルを塀状とするパネル設置工程と、
前記支柱孔に小砂利を充填して締め固め前記発泡樹脂パネルを前記支柱に固定するパネル固定工程と、
前記下地モルタル層上に仕上モルタル層を形成する仕上モルタル工程と、を有することを特徴とする塀の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂パネルを用いた塀及び、この塀の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震発生時にコンクリート製の塀が倒壊し、人的被害や交通障害の発生が報告されている。このため、コンクリート製の塀よりも遥かに軽量な例えば下記[特許文献1]に記載の発泡樹脂(発泡スチロール)製の塀が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、[特許文献1]に記載の従来の発泡樹脂製の塀では、塀の本体となる発泡樹脂パネルの縦方向に支柱孔を形成し、基礎に立設した鉄筋にこの支柱孔を通すことで塀状とする。そして、鉄筋が挿入した支柱孔にモルタルやコンクリート等を充填して硬化することで発泡樹脂パネルを固定し塀を形成する。しかしながら、鉄筋やこの鉄筋を固定するためのモルタルは重量があり、資材の運搬に力を要することに加え、塀自体の重量が増加して発泡樹脂製の塀のメリットが減少するという問題点がある。また、モルタルは振動や衝撃によりヒビが生じることに加え、鉄筋は水分との接触で錆びが生じ劣化するという問題点がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、鉄筋を用いずに短時間で楽に施工が可能な発泡樹脂パネルを用いた塀及び、この塀の施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)縦方向に貫通した支柱孔32を有する発泡樹脂パネル30a、30bと、前記支柱孔32に挿入され一端が基礎1と固定した合成樹脂製の支柱40と、前記支柱孔32に充填され前記発泡樹脂パネル30a、30bと前記支柱40とを固定する小砂利42と、前記発泡樹脂パネル30a、30bの表面に形成されたモルタル層60と、を有する塀80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)小砂利42としてビリ砂利を用いたことを特徴とする上記(1)記載の塀80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)発泡樹脂パネル30a、30bの側面に本実矧ぎ手34a、34a’もしくは相欠き矧ぎ手34b、34b’を備え、前記本実矧ぎ手34a、34a’もしくは相欠き矧ぎ手34b、34b’により横方向に接続したことを特徴とする上記(1)記載の塀80を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)発泡樹脂パネル30a、30bを用いた塀の施工方法であって、
前記発泡樹脂パネル30a、30bは縦方向に貫通した支柱孔32を備え、
基礎1に合成樹脂製の支柱40を立設する支柱固定工程S104と、前記発泡樹脂パネル30a、30bの支柱孔32に前記支柱40を通すとともに前記発泡樹脂パネル30a、30bを横方向に連結して塀状とするパネル設置工程S106と、前記支柱孔32に小砂利42を充填して締め固め前記発泡樹脂パネル30a、30bを前記支柱40に固定するパネル固定工程S108と、前記発泡樹脂パネル30a、30bの表面にモルタル層60を形成するモルタル層形成工程S130と、を有することを特徴とする塀の施工方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)発泡樹脂パネル30a、30bを用いた塀の施工方法であって、
前記発泡樹脂パネル30a、30bは縦方向に貫通した支柱孔32を備えるとともに側面に相欠き矧ぎ手34b、34b’を有し、
前記発泡樹脂パネル30a、30bの表面にメッシュ部材52が伏せ込まれた下地モルタル層50を形成する下地モルタル工程S202と、前記発泡樹脂パネル30a、30bの支柱孔32に合成樹脂製の支柱40を通すとともに、前記支柱40の下端を基礎1に固定し、さらに前記相欠き矧ぎ手34b、34b’を横方向に連結して前記発泡樹脂パネル30a、30bを塀状とするパネル設置工程S208と、前記支柱孔32に小砂利42を充填して締め固め前記発泡樹脂パネル30a、30bを前記支柱40に固定するパネル固定工程S108と、前記下地モルタル層50上に仕上モルタル層54を形成する仕上モルタル工程S222と、を有することを特徴とする塀の施工方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る塀及び塀の施工方法は、軽量な発泡樹脂パネルと合成樹脂製の支柱とを主要部材として使用する。このため、資材の運搬や施工が楽になり、作業者の負担を軽減することができる。また、部材が軽量なため従来よりも短時間で塀の構築を行うことができる。さらに、発泡樹脂パネルと支柱との固定は支柱孔に充填した小砂利によって行う。このため、従来モルタルにて行われてきた硬化時間が不要となり、その分、施工期間の短縮を行うことができる。また、小砂利は締固められるのみで固定はされない。このため、倒壊時や撤去時には小砂利は支柱孔から流出して、塀本体の重量が軽減する。これにより、倒壊時の危険性を低減することができる。また、撤去作業を楽に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る塀の発泡樹脂パネルの斜視図である。
【
図3】本発明に係る塀の第1の施工方法を説明する図である。
【
図4】本発明に係る塀の第1の施工方法を説明する図である。
【
図5】本発明に係る塀の第1の施工方法を説明する図である。
【
図6】本発明に係る塀の第1の施工方法を説明する図である。
【
図7】本発明に係る塀の第2の施工方法を説明する図である。
【
図8】本発明に係る塀の第2の施工方法を説明する図である。
【
図9】本発明に係る塀の第2の施工方法を説明する図である。
【
図10】本発明に係る塀の第2の施工方法を説明する図である。
【
図11】本発明に係る塀の施工方法の工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る塀80及び塀の施工方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。ここで、
図1は、本発明に係る塀80の主要な構成部材である発泡樹脂パネル30a、30bの斜視図である。先ず、本発明に用いる発泡樹脂パネル30a、30bは、合成樹脂を発泡させ板状に成形したものであり、特に発泡スチロール(EPS:ビーズ法発泡ポリスチレン)を用いることが好ましい。ただし、場合によっては発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレン等の周知の発泡樹脂を用いても構わない。尚、発泡樹脂パネル30a、30bに発泡スチロールを用いる場合、一般的な容器や緩衝材用の発泡倍率が50倍~60倍程度のものを用いても良いが、30倍~50倍程度の高密度・高強度のものを用いることが好ましい。また、発泡樹脂パネル30a、30bの寸法には特に限定は無いが、例えば高さ2mの塀80を建造する場合には、幅1mm、高2mの発泡樹脂パネル30a、30bを横方向に配列して用いることが好ましい。また、高さの低い複数の発泡樹脂パネル30a、30bを積み上げて塀80を構築しても良い。
【0010】
そして、この発泡樹脂パネル30a、30bには縦方向(高さ方向)に上面から底面に貫通した支柱孔32が設けられる。尚、支柱孔32の径は後述の支柱40の径よりも大きく、支柱40を挿入した時に支柱孔32の内面と間に小砂利42が入る十分な間隙が存在する径とする。この条件を満たした上で、支柱孔32の径は発泡樹脂パネル30a、30bの厚みの2分の1から3分の1前後が好適であり、例えば発泡樹脂パネル30a、30bの厚みが12cmの場合には支柱孔32の径は3cm~6cm程度とすることが好ましい。また、支柱孔32の数は発泡樹脂パネル30a、30bの左右に2本形成することが最も好ましいが、発泡樹脂パネル30a、30bが横方向に長い場合等には、3本、4本、5本と適宜増やすようにしても良い。さらに、発泡樹脂パネル30a、30bは、外観に装飾性を持たせるために上面を円弧状にしたり波打たせたり凹凸を設けたりしても良い。また、発泡樹脂パネル30a、30bの壁面に装飾的な貫通孔を形成しても良い。ただし、壁面に貫通孔を形成する場合、支柱孔32と交差しないよう設計する。
【0011】
さらに、発泡樹脂パネル30a、30bの側面は矧ぎ手形状とすることが好ましい。形成する矧ぎ手としては形成が容易な本実矧ぎ手もしくは相欠き矧ぎ手とすることが特に好ましい。ここで、
図1(a)は側面を本実矧ぎ手34a、34a’とした第1の発泡樹脂パネル30aを示し、
図1(b)は側面を相欠き矧ぎ手34b、34b’とした第2の発泡樹脂パネル30bを示している。そして、
図1(a)に示す本実矧ぎ手34a、34a’では一方の側面に凸部(図面中の符号34a)が形成され、他方の側面に凹部(図面中の符号34a’)が形成され、隣り合う発泡樹脂パネル30aの凸部(34a)を凹部(34a’)に挿し込むことで接続し、発泡樹脂パネル30aを横方向に連結する。また、
図1(b)に示す相欠き矧ぎ手34b、34b’では発泡樹脂パネル30bの両側面に互いに点対象な切り欠き(図面中の34b、34b’)が形成され、隣り合う発泡樹脂パネル30bの相欠き矧ぎ手34b、34b’を組み合わせることで接続し、発泡樹脂パネル30bを横方向に連結する。尚、支柱孔32及び矧ぎ手の形成は、発泡樹脂パネル30a、30bの作製時に一体成型で行っても良いし、成型後の(板状の)発泡樹脂パネルに対し穿孔や切削等の機械加工を施すことで行っても良い。
【0012】
次に、本発明に係る塀80の構成を
図2の支柱孔32部分における模式断面図を用いて説明する。先ず、本発明に係る塀80は、前述の発泡樹脂パネル30a、30bと、この支柱孔32に挿入され一端が基礎1と固定した合成樹脂製の支柱40と、支柱孔32に充填され発泡樹脂パネル30a、30bと支柱40とを固定する小砂利42と、発泡樹脂パネル30a、30bの表面に形成されたモルタル層60と、を有している。
【0013】
また、本発明に用いる支柱40は合成樹脂製のものを用い、特に合成繊維を合成樹脂接着剤で棒状に硬化したものを用いることが好ましく、中でも特に合成繊維としてアラミド繊維を用い、これを組紐で縛って棒状とし、合成樹脂接着剤としてのエポキシ樹脂接着剤を用いて硬化したものを用いることが最も好ましい。このような支柱40は、従来の鉄筋よりも引張強度が強く、また錆びによる劣化も発生しない。さらに、合成樹脂製の支柱40は従来使用されていた鉄筋よりも遥かに軽量であり、資材の運搬時や施工時の作業者の負担を軽減することができる。また、塀80としての総重量も減少するため倒壊時の安全性が向上する他、撤去時の負担をも軽減することができる。
【0014】
また、本発明に用いる小砂利42は、支柱40と支柱孔32の間に充填して締め固めることで、発泡樹脂パネル30a、30bと支柱40とを固定するものであり、材質に関しては特に限定は無く、自然石の破石、リサイクルガラス、セラミクス等、如何なるものを用いても良い。また、サイズに関しては支柱40と支柱孔32の間隙に入る概ね外形が2cm~3cm以下のものを用い、特に1cm以下の所謂ビリ石を用いることが最も好ましい。このビリ石はサイズ的に本発明に適していることに加え、他の材質のものと比較して極めて安価なため本発明に掛かる材料コストの削減を図ることができる。
【0015】
また、本発明のモルタル層60は、発泡樹脂パネル30a、30bの表面に塗布形成される下地モルタル層50と、この下地モルタル層50上に塗布形成される仕上モルタル層54とで構成することが好ましい。また、下地モルタル層50及び仕上モルタル層54には、基本的に弾性モルタルを用いることが好ましい。ここで、弾性モルタルとはモルタル成分に再乳化型粉末樹脂等の樹脂成分を0.1wt%~10wt%程度加えたものであり、硬化後のモルタルにある程度の柔軟性を付与し、曲げ等によるひび割れの発生を抑制することができる。さらに、本発明に用いる弾性モルタルには樹脂成分に加え、短繊維を適宜配合しても良い。尚、下地モルタル層50に用いる弾性モルタルと仕上モルタル層54に用いる弾性モルタルとは同じものを用いても良いし、それぞれの用途に適した配合に変化させても良い。
【0016】
さらに、下地モルタル層50内にはメッシュ部材52を伏せ込むことが好ましい。このメッシュ部材52としは、モルタルの壁等に伏せ込んで強度を上げるための周知のメッシュ部材を用いることができる。中でも特に耐アルカリ処理を施したガラス繊維を主とする数ミリ角の格子状メッシュを用いることが好ましい。
【0017】
次に、本発明に係る塀80の施工方法を説明する。ここで、
図3~
図6は第1の発泡樹脂パネル30aを用いた塀80の第1の施工方法を説明する図であり、
図11(a)はその工程フローチャートである。尚、第1の施工方法では発泡樹脂パネルの矧ぎ手の有無、種類には特に限定は無いが、ここでは側面に本実矧ぎ手34a、34a’を有する発泡樹脂パネル30aを例にして説明を行う。
【0018】
本発明に係る第1の塀の施工方法では、先ず
図3(a)に示すように、周知の方法で施工された基礎1に支柱40を立設して固定する(支柱固定工程S104)。尚、支柱40の立設は、基礎1の打設時に同時に固定しても良いし、硬化後の基礎1に穴を開け、支柱40を挿入した後にモルタルや周知の接着剤等で固定しても良い。また、支柱40の地上部分の長さは、発泡樹脂パネル30aの高さ寸法と略同等もしくはそれよりも若干短くする。また、支柱40を立設する位置は、発泡樹脂パネル30aの支柱孔32と対応した位置とする。
【0019】
次に、
図3(b)に示すように、立設された支柱40に発泡樹脂パネル30aの支柱孔32を通すとともに、側面の本実矧ぎ手34a、34a’を隣り合う発泡樹脂パネル30aの本実矧ぎ手34a、34a’に連結する。これにより、発泡樹脂パネル30aが横方向に配列し塀状となる(第1の施工方法のパネル設置工程S106)。
【0020】
次に、周知の工業用振動装置で適宜振動を加えながら、支柱40と支柱孔32の間隙に小砂利42を充填する。これにより、支柱孔32内の小砂利42は締め固まって充填し、
図4に示すように、発泡樹脂パネル30aと支柱40とが小砂利42を介して固定される(パネル固定工程S108)。
【0021】
次に、発泡樹脂パネル30aの表面にモルタル層60を形成する(モルタル層形成工程S130)。このモルタル層60の形成は以下のようにして行うことが好ましい。先ず、
図5(a)に示すように、発泡樹脂パネル30aの表面に下地モルタル層50となる弾性モルタルを塗布する。次に、
図5(b)に示すように、この弾性モルタル層の表面をメッシュ部材52で覆う。次に、このメッシュ部材52の上から再度弾性モルタルを塗り、メッシュ部材52の伏せ込みを行う。これにより、
図6(a)に示すように、メッシュ部材52の伏せ込まれた下地モルタル層50が形成される(第1の施工方法の下地モルタル工程S120)。
【0022】
次に、下地モルタル層50の表面に仕上モルタルを塗布して仕上モルタル層54を形成する(第1の施工方法の仕上モルタル工程S122)。尚、仕上モルタル層54の形成は吹き付けモルタルで行っても良い。これにより、
図6(b)に示すように、下地モルタル層50と仕上モルタル層54とからなるモルタル層60が形成され、本発明に係る塀80が完成する。尚、仕上モルタル層54上には適宜、タイルや化粧ブロック、天然石、レンガ、漆喰、その他、周知の壁部材の接着や加工、塗布、模様の形成、塗装等を行っても良い。
【0023】
次に、本発明に係る塀80の第2の施工方法に関して説明を行う。ここで、
図7~
図10は第2の施工方法を説明する図であり、
図11(b)はその工程フローチャートである。尚、第2の施工方法では、予め発泡樹脂パネルの表面及び裏面に下地モルタル層50を形成し、これを現地にて設置して塀80を構築する。このため、下地モルタル層50の分、発泡樹脂パネルの重量が増大する。よって、第2の施工方法では本実矧ぎ手34a、34a’よりも連結が容易な相欠き矧ぎ手34b、34b’を側面に備えた発泡樹脂パネル30bを用いることが好ましい。
【0024】
先ず、第2の施工方法では、
図7(a)に示すように、発泡樹脂パネル30bの表面及び裏面に下地モルタル層50となる弾性モルタルを塗布する。このとき、相欠き矧ぎ手34b、34b’部分及び、支柱孔32が開口している上面及び底面には弾性モルタルは塗布しない。次に、
図7(b)に示すように、表面及び裏面の弾性モルタル層をメッシュ部材52で覆う。次に、このメッシュ部材52の上から再度弾性モルタルを塗り、メッシュ部材52の伏せ込みを行う。これにより、
図7(c)に示す、メッシュ部材52が伏せ込まれた下地モルタル層50が形成される(第2の施工方法の下地モルタル工程S202)。尚、この下地モルタル工程S202は、現地ではなく工場内でも行うことができるため、天候に左右されることが無く、また発泡樹脂パネル30bを横に倒して作業が行えるため、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0025】
次に、下地モルタル層50が形成された発泡樹脂パネル30bを現地に運び、発泡樹脂パネル30bの支柱孔32に支柱40を通すとともに、支柱40の下端を基礎1に固定する。また、これと並行して発泡樹脂パネル30bの相欠き矧ぎ手34b、34b’を隣り合う発泡樹脂パネル30bの相欠き矧ぎ手34b、34b’と連結して塀状とする(第2の施工方法のパネル設置工程S208)。尚、パネル設置工程S208における作業の順番には特に限定は無いが、第2の施工方法では発泡樹脂パネル30bに下地モルタル層50が既に形成されているため、第1の施工方法と比較してパネル自体に重量がある。よって、発泡樹脂パネル30bを高く持ち上げない例えば以下に示す工程で行うことが作業負担が少なく好ましい。
【0026】
先ず、基礎1に支柱40を立設するための穴を穿孔する。次に、下地モルタル層50が形成された発泡樹脂パネル30bを基礎1上に配置した上で、
図7(d)に示すように、支柱40を支柱孔32に通す。そして、発泡樹脂パネル30bをずらしたり作業可能な程度に浮かせたりしながら基礎1に設けられた支柱固定穴に支柱40の下端を挿入しモルタル等で固定する。次に、発泡樹脂パネル30bをスライドさせるなどして、発泡樹脂パネル30bの相欠き矧ぎ手34b、34b’を隣り合う発泡樹脂パネル30bの相欠き矧ぎ手34b、34b’と連結する。そしてこれらの動作を繰り返すことで、発泡樹脂パネル30bを塀状に配設する。
【0027】
次に、第1の施工方法と同様に、周知の工業用振動装置で適宜振動を加えながら、支柱40と支柱孔32の間隙に小砂利42を充填する。これにより、支柱孔32内の小砂利42は締め固まって充填し、
図8に示すように、発泡樹脂パネル30aと支柱40とが小砂利42を介して固定される(パネル固定工程S108)。
【0028】
次に、発泡樹脂パネル30bの下地モルタル層50上に仕上モルタル層54を形成する(第2の施工方法の仕上モルタル工程S222)。この仕上モルタル層54の形成は以下のようにして行うことが好ましい。先ず、
図9(a)に示すように、下地モルタル層50上及び発泡樹脂パネル30bの上面に仕上モルタル層54となる弾性モルタルを塗布する。次に、
図9(b)に示すように、発泡樹脂パネル30bの上面と発泡樹脂パネル30bの接続部分にメッシュ部材52を被せる。次に、このメッシュ部材52を伏せ込みながら発泡樹脂パネル30bの全体に再度弾性モルタルを塗る。これにより、
図10に示すように、仕上モルタル層54が形成される。そしてこれにより、下地モルタル層50と仕上モルタル層54とからなるモルタル層60が形成され、本発明に係る塀80が完成する。尚、仕上モルタル層54上には第1の施工方法と同様に、適宜、タイルや化粧ブロック、天然石、レンガ、漆喰、その他、周知の壁部材の接着や加工、塗布、模様の形成、塗装等を行っても良い。
【0029】
以上のように、本発明に係る塀80及び塀の施工方法は、軽量な発泡樹脂パネル30a、30bと合成樹脂製の支柱40とを主要部材として使用する。このため、資材の運搬や施工が楽になり、作業者の負担を軽減することができる。また、部材が軽量なため従来よりも短時間で塀の構築を行うことができる。さらに、力の弱い例えば女性や高齢者でも作業を行うことができる。
【0030】
また、発泡樹脂パネル30a、30bと支柱40との固定は支柱孔32に充填した小砂利42によって行う。このため、従来モルタルにて行われてきた硬化時間が不要となり、その分、施工期間の短縮を行うことができる。また、小砂利42は締固められるのみでモルタルや接着剤等による固定はされない。このため、仮に災害等によって本発明に係る塀80が倒壊した場合、小砂利42は支柱孔32から外部に流れ出て、塀80本体の重量を軽減する。これにより、倒壊時の危険性を低減することができる。また、撤去作業も小砂利42が流れ出て軽量化するため従来の塀よりも楽に行うことができる。
【0031】
また、特に本発明に係る第2の施工方法では、下地モルタル層50の形成までを工場等行うことができる。このため、現地での工期を大幅に短縮することができる。
【0032】
尚、本例で示した塀80、発泡樹脂パネル30a、30b等の各部の構成、デザイン、形状、寸法その他は一例であるから上記の例に限定されるわけでは無く、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。また、本発明に係る塀の施工方法は一例であるから作業手順、工程順は上記の例に限定されるわけでは無く、また、必要な工程を挿入するなど、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 基礎
30a、30b 発泡樹脂パネル
32 支柱孔
34a、34a’ 本実矧ぎ手
34b、34b’ 相欠き矧ぎ手
40 支柱
42 小砂利
50 下地モルタル層
52 メッシュ部材
54 仕上モルタル層
60 モルタル層
80 塀
S104 支柱固定工程
S106、S208 パネル設置工程
S108 パネル固定工程
S120、S202 下地モルタル工程
S122、S222 仕上モルタル工程
S130 モルタル層形成工程