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特開2024-110029RFIDシステム、設定方法および設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110029
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】RFIDシステム、設定方法および設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20240807BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240807BHJP
【FI】
G06K7/10 184
G06K7/10 264
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014336
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅津 駿
(72)【発明者】
【氏名】水沼 義博
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB01
5K012AD01
5K012AE02
5K012BA03
(57)【要約】
【課題】RFID技術において、ユーザの状況や要望に合わせて柔軟に読み取り範囲を設定させること。
【解決手段】本開示に係るRFIDシステムは、RFIDタグの情報を読み取る読取装置と、当該読取装置の動作を制御する制御装置とを含む。前記制御装置は、ユーザが希望する読取範囲に基づいて前記RFIDタグの各々に予め付与された評価値と、前記読取装置による当該RFIDタグの読取結果と、当該読取結果が得られた際の当該読取装置の読取の出力値と、を取得する取得部と、前記取得部によって取得された情報に基づいて、前記読取範囲に対応した前記出力値を設定する設定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグの情報を読み取る読取装置と、当該読取装置の動作を制御する制御装置とを含むRFIDシステムであって、
前記制御装置は、
ユーザが希望する読取範囲に基づいて前記RFIDタグの各々に予め付与された評価値と、前記読取装置による当該RFIDタグの読取結果と、当該読取結果が得られた際の当該読取装置の読取の出力値と、を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された情報に基づいて、前記読取範囲に対応した前記出力値を設定する設定部と、
を備えることを特徴とするRFIDシステム。
【請求項2】
前記取得部は、
前記評価値として、ユーザが読取を希望する第1範囲と、ユーザが読取を希望しない第2範囲と、当該第1範囲と当該第2範囲との間の干渉エリアとなる第3範囲との、各々で異なる係数が付与された前記RFIDタグの読取結果を取得する、
請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項3】
前記取得部は、
前記読取結果として、前記読取装置による読取が成功した前記RFIDタグの読取結果および評価値のみを取得する、
請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項4】
前記取得部は、
前記読取結果を取得した際に、当該読取結果に応じて前記RFIDタグの点灯機能を制御する、
請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項5】
前記取得部は、
前記RFIDタグの読取結果とともに、当該読取結果が得られた際の当該読取装置のアンテナの設置条件を取得し、
前記設定部は、
前記読取範囲および前記アンテナの設置条件ごとに、前記出力値を設定する
請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項6】
RFIDタグの情報を読み取る読取装置と、当該読取装置の動作を制御する制御装置とを含むRFIDシステムが実行する設定方法であって、
前記制御装置が、
ユーザが希望する読取範囲に基づいて前記RFIDタグの各々に予め付与された評価値と、前記読取装置による当該RFIDタグの読取結果と、当該読取結果が得られた際の当該読取装置の読取の出力値と、を取得し、
前記取得された情報に基づいて、前記読取範囲に対応した前記出力値を設定する、
ことを含むことを特徴とする設定方法。
【請求項7】
RFIDタグの情報を読み取る読取装置と、当該読取装置の動作を制御する制御装置とを含むRFIDシステムで実行される設定プログラムであって、
前記制御装置を、
ユーザが希望する読取範囲に基づいて前記RFIDタグの各々に予め付与された評価値と、前記読取装置による当該RFIDタグの読取結果と、当該読取結果が得られた際の当該読取装置の読取の出力値と、を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された情報に基づいて、前記読取範囲に対応した前記出力値を設定する設定部と、
を備える制御装置として機能させることを特徴とする設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RFIDシステム、設定方法および設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商品等にRFID(Radio Frequency Identification)タグを付し、その情報をRFIDリーダで読み取ることによって、商品の在庫や出荷管理を行う技術が利用されている。
【0003】
RFID等の無線通信技術においては、タグを読み取るためのアンテナの指向性や設置位置に応じて、その読み取り精度が大きく異なる場合がある。例えば、RFID読取装置を設置した場所の付近に反射率の高い床や壁、柱等が存在すると、それらに電波が反射することにより、意図しない位置のタグを読み取ってしまう現象が発生しうる。このため、
かかる技術分野においては、誤読を検出するためのタグを付したり、誤読を判定するための処理を実行したりする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4953201号公報
【特許文献2】特開2009-141757号公報
【特許文献3】特許第5137534号公報
【特許文献4】特許第5998551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、RFID技術を利用した際の誤読を抑止することが期待できる。しかしながら、RFID技術は、個々の顧客ごとに活用する状況が異なるため、単に誤読を防止するだけでは、顧客の利用に資することができない場合がある。
【0006】
例えば、RFID技術を利用して商品の管理が行われるような場所(例えば工場)では、金属製の装置が付近に設置されていたり、周囲に他の商品在庫等が置かれていたりするなど、RFIDアンテナによる受信を妨げる要素が多く存在する場合がある。また、設置時には電波の送受信環境がよくても、その後、顧客側が工場のレイアウトを変更するなどして、電波の送受信環境が変化する場合もある。このとき、読取範囲を再設定することで対応可能となる場合もあるが、それを顧客側で行う場合、どの範囲が読み取りに最適かを判定することは困難である。
【0007】
そこで、本開示では、ユーザの状況や要望に合わせて柔軟に読み取り範囲を設定することができるRFIDシステム、設定方法および設定プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示に係るRFIDシステムは、RFIDタグの情報を読み取る読取装置と、当該読取装置の動作を制御する制御装置とを含み、前記制御装置は、ユーザが希望する読取範囲に基づいて前記RFIDタグの各々に予め付与された評価値と、前記読取装置による当該RFIDタグの読取結果と、当該読取結果が得られた際の当該読取装置の読取の出力値と、を取得する取得部と、前記取得部によって取得された情報に基づいて、前記読取範囲に対応した前記出力値を設定する設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、ユーザの状況や要望に合わせて柔軟に読み取り範囲を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るRFID読取処理の概要を示す図である。
図2】実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(1)である。
図3】実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(2)である。
図4】実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(3)である。
図5】実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(4)である。
図6】トンネル型読取装置における設定処理を説明するための図(1)である。
図7】トンネル型読取装置における設定処理を説明するための図(2)である。
図8】ボックス型読取装置における設定処理を説明するための図である。
図9】実施形態に係るRFIDシステムの構成を示す図である。
図10】ユーザ端末の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
(1.実施形態)
(1-1.実施形態に係るRFID読取処理の概要)
図1は、実施形態に係るRFID読取処理の概要を示す図である。実施形態に係るRFID読取処理は、図1に示すRFIDシステム1によって実行される。RFIDシステム1は、読取装置100とユーザ端末200とを含む。
【0013】
読取装置100は、RFIDタグを読み取ったり、新たな情報を付与したりするリーダライタおよびアンテナとを含む、RFID技術においてタグ情報を送受信するための装置である。読取装置100は、RFIDを用いて物品(顧客が取り扱う商品等)の管理を行う顧客(以下「ユーザ」と称する)によって利用される。
【0014】
読取装置100が、ゲート型と称されるRFIDアンテナおよびリーダライタ(読取器)である場合には、一般に、図1で示すような衝立状の筐体を有し、当該衝立の横を物品10が通過する際に、物品10に付されたRFIDタグ20の情報を読み取る。具体的には、読取装置100は、ユーザの工場等にゲートを形成するような態様で設置され、当該ゲートを物品10が通過した際に、物品10に付されたRFIDタグ20の情報を読み取ることで、物品10の出荷等を管理する。
【0015】
ユーザ端末200は、読取装置100によって読み取られたRFIDタグ20の情報を表示する情報処理端末である。ユーザは、読取装置100を物品10が通過した際にユーザ端末200の表示を確認することで、間違いなくRFIDタグ20が読み取られたことや、出荷しようとする物品10の詳細を確認することができる。
【0016】
このようなRFIDを用いた管理は、従来のように人手で情報を管理する手間が省けるため、工場等で広く利用されている。ところが、RFIDは無線通信技術による読取処理を行うことから、金属製の装置が付近に設置されていたり、床や柱の反射率が高い場合、読取範囲外にあるタグの情報を誤読してしまうおそれがある。例えば、出力レベルを弱めに設定しても、床面や柱による電波の反射(マルチパスの発生)によって電波強度が強まり合うことで、読取装置100の読取範囲から外れた位置のタグを読み取ってしまうという現象が起こりうる。すなわち、RFIDを運用する場合、単純に読取装置100からの距離のみで読取範囲を設定することはできず、各々の現場に合わせた出力レベルの調整が必要となる。
【0017】
例えば、ユーザは、読取を希望するエリアと、読取を行いたくないエリアとを定義し、希望通りの運用となるよう、読取装置100の出力を調整する。
【0018】
図1の例では、ユーザは、読取可能エリア30に置かれたRFIDタグ20は確実に読み取ることを期待するとともに、非読取エリア40に置かれた物品11に付されたRFIDタグ21は確実に読み取らないことを要望する。この場合、RFID技術を納入する事業者は、実際の現場において、読取を行いたくないエリアに置かれたタグを読取装置100が誤って読み取ることがないよう、アンテナ出力の強さや設置位置を調整する。
【0019】
しかし、設置時には電波の送受信環境がよくても、その後、ユーザが工場のレイアウトを変更するなどして、電波の送受信環境が変化する場合もある。このとき、読取範囲を再設定することで対応可能となる場合もあるが、それをユーザ側で行う場合、どの範囲が読み取りに最適かを判定することは困難である。例えば、ユーザは、スペクトラムアナライザ等を使用して電界強度を測定することで読取エリアを推測することも可能であるものの、タグごとに交信距離や応答強度が異なることから、実環境で類推することは難しい。また、このような測定器具の運用には専門知識が必要となるため、全てのユーザがこのような測定を行えるとは限らない。
【0020】
すなわち、現場で読取可能エリアをユーザが適切に設定するためには、実際にユーザが利用するタグや読取装置100を用いたうえで、簡易な手法で行えることが望ましい。そこで、本開示に係るRFIDシステム1は、以下で説明する設定処理を提供することにより、かかる課題を解決する。具体的には、RFIDシステム1は、実際に物品に付されるタグと同等の検査用タグを物品に付し、それらを現場に配置したうえで、出力を可変させながら読取結果を取得する。そして、RFIDシステム1は、読取結果に基づいて、最適な出力を設定することにより、ユーザの読取可能エリアに一致するような読取を可能とする。
【0021】
(1-2.実施形態に係る読取範囲設定処理の一例)
上記処理について、図2以下を用いて詳細に説明する。図2は、実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(1)である。
【0022】
図2に示すように、ゲート型の読取装置100が設置された場合、ユーザは、読取装置100を用いてタグの読み取りを希望するエリアとして、読取可能エリア30を設定する。例えば、ユーザは、工場等でRFIDシステム1を運用するにあたり、タグが読み取れると都合のよいエリアとして、読取可能エリア30を任意に設定する。
【0023】
そして、ユーザは、読取可能エリア30に、検査用のタグを付した読取希望物品12Aや読取希望物品12Bを設置する。読取希望物品12Aには、検査用のタグである、読取希望タグ22Aが付される。同様に、読取希望物品12Bには、読取希望タグ22Bが付される。
【0024】
検査用のタグである読取希望タグ22Aや読取希望タグ22Bには、所定の評価情報が付される。詳細は後述するが、例えば、読取希望タグ22Aや読取希望タグ22Bには、読取装置100によって読取が成功した場合には所定の点数を加算され、読取が失敗した場合には所定の点数が減算される、といった情報が付される。なお、以下では、読取希望物品12Aや読取希望物品12Bを区別する必要のない場合、「読取希望物品12」と総称する。また、以下では、読取希望タグ22Aや読取希望タグ22Bを区別する必要のない場合、「読取希望タグ22」と総称する。
【0025】
また、ユーザは、読取装置100による読取を実行した場合に、タグが読み取られることを防止したいエリアとして、非読取エリア40を設定する。例えば、ユーザは、ゲートである読取装置100の間以外に設置された物品のタグが誤って読み取られることは不都合であるため、読取可能エリア30以外のエリアを非読取エリア40と設定する。
【0026】
そして、ユーザは、非読取エリア40に、検査用のタグを付した非読取物品14A、非読取物品14B、非読取物品14Cを設置する。非読取物品14Aには、検査用のタグである、非読取タグ24Aが付される。同様に、非読取物品14Bには非読取タグ24Bが付され、非読取物品14Cには非読取タグ24Cが付される。
【0027】
検査用のタグである非読取タグ24A、非読取タグ24B、非読取タグ24Cには、所定の評価情報が付される。詳細は後述するが、例えば、非読取タグ24A、非読取タグ24B、非読取タグ24Cには、読取装置100によって読取が行われた場合には所定の点数が減算され、読取装置100が読取を行わなかった場合には所定の点数が加算される、といった情報が付される。なお、以下では、非読取物品14A、非読取物品14B、非読取物品14Cを区別する必要のない場合、「非読取物品14」と総称する。また、以下では、非読取タグ24A、非読取タグ24B、非読取タグ24Cを区別する必要のない場合、「非読取タグ24」と総称する。
【0028】
読取希望タグ22や非読取タグ24のような検査用タグは、読取対象となる物品の一面に付されてもよいし、上下左右の複数面に付されてもよい。一般に、タグは、物品への貼り付け面や貼り付け位置により、読取り率に差異が生じる。このため、ユーザは、例えばタグを底面や読取装置100から遠い側面に付すことで読取精度が低下しそうな状況を作出し、より現場に即した様々な状況での読取を検査することができる。
【0029】
また、検査用タグは、読取装置100から情報が読み取られたことに反応して点灯するような仕組みを有してもよい。例えば、検査用タグは、LEDを備え、読取装置100から情報が読み取られた場合に、当該LEDを点灯させてもよい。これにより、ユーザは、ユーザ端末200に表示された情報を確認しなくても、どこに配置されたタグが読取装置100で読み取られたかを現場で視認することができる。この場合、ユーザは、例えば物品が立方体であれば六面全てにタグを付し、いずれの面のタグが点灯したか等を確認するようにしてもよい。これにより、ユーザは、いずれの面のタグが読取装置100に読み取られやすいかを確認することができる。
【0030】
上記のように検査用タグを配置したのち、ユーザは、各検査用タグに所定の評価値を設定する。例えば、ユーザは、特に読取処理が失敗してはならないエリアを設定し、当該エリアに配置されたタグに高い評価値を設定してもよい。図2の例では、ユーザは、読取装置100の近傍に読取必須エリア35を定義する。このとき、ユーザは、読取必須エリア35に配置された読取希望タグ22Aについては、必ず読み取る必要があることから、その評価値の係数(すなわち点数)を高く設定する。一方、ユーザは、読取可能エリア30に配置された読取希望タグ22Bについては、可能であれば読み取りたいといった程度の要望であるため、読取希望タグ22Aよりも低い係数を設定する。また、ユーザは、非読取エリア40に配置された非読取タグ24については、読取希望タグ22とは正負の異なる係数を設定する。
【0031】
そして、ユーザは、係数の設定が終わると、RFIDシステム1による読取を実行する。具体的には、ユーザは、読取装置100の出力を可変させながら、読取必須エリア35および読取可能エリア30のタグを読み取る一方で、非読取タグ24を読み取らないような出力レベルを探索する。
【0032】
例えば、ユーザは、下記式(1)から式(3)に表されるような定義に基づいて、適切な出力レベルを探索する。
【0033】
【数1】
【0034】
式(1)から式(3)において、「Pbest」は、決定したい最適な読取装置100の出力を示す。「p」は、評価する出力の1つの要素を示す。「P」は、評価する出力の集合を示す。「A」は、設置されたタグの集合を示す。なお、「i」および「j」は、設置された個々のタグ(要素)を示す。「ai」および「bj」は、タグに付与された係数(得点)を示す。例えば、「ai」は、読取希望タグ22による得点であり、「bj」は、非読取タグ24による得点である。
【0035】
すなわち、式(1)から式(3)は、ある出力pにおいて、読取必須エリア35および読取可能エリア30に設置されたタグiが読み取られたならば、当該タグに設定された係数aiに基づく得点が加算されることを示す。また、式(1)から式(3)は、ある出力pにおいて、読取希望タグ22の1つが読み取られたならば、当該タグに設定された係数aiに基づく得点が加算されることを示す。同様に、式(1)から式(3)は、ある出力pにおいて、非読取タグ24の1つが読み取られたならば、当該タグに設定された係数bjに基づく得点が減算されることを示す。言い換えれば、RFIDシステム1を評価する手順において、読取装置100が読取希望タグ22を読み取ると報酬となるスコアが与えられ、非読取タグ24を読み取った場合には罰則となるスコアが与えられることを意味する。
【0036】
一例として、読取装置100の出力を1(低レベル)から5(高レベル)の数値で表し、その数値を可変させた場合、検査結果は下記表1のように示される。
【0037】
【表1】
【0038】
表1において、「タグID」は、検査用タグを識別する識別情報を示す。例えば、タグID「A01」は、読取希望タグ22の一例である。また、タグID「F01」は、非読取タグ24の一例である。表1に示すように、各タグには得点が付されている。例えば、ユーザは、確実に読み取りたいエリアに置かれる読取希望タグ22には、比較的高い点数を設定する。また、ユーザは、絶対に読み取りたくないエリアに置かれる非読取タグ24には、比較的大きな負の数値を設定する。すなわち、得点は、係数や重み値と言い換えることもできる。
【0039】
「期待結果」は、ユーザが読み取りを期待するタグには「1」が設定され、読み取られないことを期待するタグには「-1」が設定される。上記式(1)から式(3)に示したように、期待通りの読取結果が出た場合、得点と期待結果が乗算されることで、得点が加点される。
【0040】
「出力レベル」は、読取装置100の出力レベルを示す。表1の例では、出力レベル「1」が最も低く、出力レベル「5」が最も高いものとする。出力レベルが高いと、読取装置100は、より遠くに配置された検査用タグも読み込む可能性が高くなる。
【0041】
表1には、出力レベルを1から5まで変化させた場合の読取結果を示している。詳細は省略しているが、例えば、読取装置100が配置されたタグを全て期待通りの結果で読み取った場合、最高得点が「73点」であるものとする。また、表1は、出力レベル「1」の場合の得点が「33点」であり、出力レベル「2」の場合の得点が「51点」であり、
出力レベル「3」の場合の得点が「51点」であり、出力レベル「4」の場合の得点が「69点」であり、出力レベル「5」の場合の得点が「43点」であることを示している。
【0042】
すなわち、表1の例では、出力レベル「4」の場合が、最も高い得点を記録していることになる。これは、出力レベル「4」の場合が、ユーザが定義した各エリアでの読取結果がユーザの期待通りであることを示している。このように、RFIDシステム1による設定処理では、誤読の影響を失点として評価することで、読取と誤読を1つのパラメータ(得点)で評価することが可能となる。表1の例では、RFIDシステム1は、出力レベル「4」が最適と判定し、ユーザの環境下での出力レベルを「4」に設定する。また、物品にLED付きタグが付されている場合、RFIDシステム1は、読取処理の際に読み取ったタグに点灯指示を送ることで、ユーザがタグの配置を容易に特定することを可能とさせることができる。
【0043】
なお、表1の結果によれば、出力レベル「4」であっても最高得点でないことから、いくつか期待通りの結果が出ていないタグが存在することになる。図2の例でいうと、ユーザは読取可能エリア30で読取を行いたいが、そうすると、読取可能エリア30から外れたエリアに配置されたタグを読み取る可能性が出てくることを示している。なお、ユーザは、不都合がある場合には、読取範囲を読取必須エリア35に限定(例えば、読取可能エリア30に配置された「読取希望タグ22B」を非読取タグ24に変更するなど)してあらためて測定および出力レベル設定を行うなど、柔軟な対応が可能である。
【0044】
続いて、図3を用いて、さらに詳細にRFIDシステム1が読取範囲を設定する例について説明する。図3は、実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(2)である。
【0045】
図3の例では、ユーザは、まず読取必須エリア35を定義し、それに伴い、読取必須エリア35以外のエリアを非読取エリア40に設定したものとする。なお、図3では、読取装置100の図示は省略する。
【0046】
図3の例でも、RFIDシステム1は、図2の例と同様、出力レベルを変更しながら得点の算出を行うものとする。算出の結果、RFIDシステム1は、最適な出力レベルを設定する。かかる例において、図3に示す非読取物品14Fに付された非読取タグ24Fが、期待とは異なって読み取られているものとする。この場合、ユーザは、非読取物品14Fが配置された箇所を含む読取エリア32を定義することができる。すなわち、ユーザは、読取必須エリア35とは必ずしも一致しない読取エリア32においても、タグが読み取られることを把握したうえでRFIDシステム1を現場で運用することができるので、当該現場に即して適切に運用できる。また、ユーザは、検査用タグの数をより増やして配置することにより、読取エリア32の境界をより正確に把握することができる。
【0047】
図2および図3に示したように、実際の現場では、読取必須エリア35と非読取エリア40とを明確に分離することは難しいものの、ユーザは、設定処理におけるタグに付す係数を調整することで、ある程度の干渉エリアを意図的に設定できる。この点について、図4を用いて説明する。図4は、実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(3)である。
【0048】
図4は、ユーザが、設定処理におけるタグに設定する係数(すなわち得点の大小)をエリアごとに設定する例を概念的に示す。すなわち、ユーザは、読取必須エリア35と非読取エリア40の境界(図3の例では、非読取物品14Fが配置されていた位置にあたる)である干渉エリア45を定義する。ユーザは、干渉エリア45については、タグが読み取られてもよいし、読み取られてなくてもよいとして、比較的小さな係数を設定する。一方、ユーザは、読取必須エリア35と非読取エリア40については、誤読を発生させないために、比較的大きな係数を設定する(係数の正負は逆となる)。
【0049】
かかる係数の設定のもと、RFIDシステム1による出力レベルの設定が行われることで、ユーザは、干渉エリア45も含めて、自身が定義したい読取エリアを明確に定義することができる。
【0050】
また、ユーザが、あるエリアでは読取必須エリア35と非読取エリア40とを明確に分離し、あるエリアでは読取必須エリア35と非読取エリア40とを緩やかに区別したいと要望する場合もある。この例について、図5を用いて説明する。図5は、実施形態に係る設定処理の一例を説明するための図(4)である。
【0051】
図5図4と同様、ユーザが、設定処理におけるタグに設定する係数(すなわち得点の大小)をエリアごとに設定する例を概念的に示す。図5の例では、ユーザは、読取必須エリア35と非読取エリア40とは明確に範囲を分離することを所望するものとする。言い換えれば、ユーザは、干渉エリア46を可能な限り狭い範囲で定義することを所望する。この場合、ユーザは、読取必須エリア35と非読取エリア40について、誤読を発生させないために、きわめて大きな係数を設定する(係数の正負は逆となる)。
【0052】
一方で、ユーザは、読取必須エリア35と非読取エリア41との境界はあまり重要ではなく、干渉エリア47を広く設けても問題ないと考えているとする。この場合、ユーザは、読取必須エリア35と非読取エリア41の境界の近傍に配置される検査用タグについて、比較的小さな係数を設定する。
【0053】
図4および図5で示したように、ユーザは、出力レベルの設定処理において配置するタグの係数を、設定したいエリアの属性に応じて変化させることで、自由度の高いエリアの設定を行うことができる。
【0054】
(1-3.トンネル型読取装置の設定処理の例)
図1から図5では、読取装置100がゲート型である例を示した。しかし、本開示に係る設定処理は、読取装置100の態様によらず実施可能である。
【0055】
図6に、読取装置100がトンネル型の読取装置である例を示す。図6は、トンネル型読取装置における設定処理を説明するための図(1)である。
【0056】
図6に示すように、トンネル型の読取装置100は、装置内を物品が通過する際に、当該物品に付されたタグの情報を読み取る。例えば、ユーザは、商品出荷前のゲートに読取装置100を設置し、読取装置100の中に物品をくぐらせる際に、当該物品の情報を読み取らせる。このため、トンネル型においては、読取装置100内部のタグを確実に読み取ること、および、読取装置100外部のタグを誤って読み込まないことが求められる。
【0057】
すなわち、図6に示す例では、読取装置100は、装置内部に所在する読取希望物品12に付された読取希望タグ22を読み取るとともに、装置外部に所在する非読取物品14に付された非読取タグ24を読み込まないよう、出力レベルを設定する。
【0058】
トンネル型における出力レベルの設定処理の一例について、図7を用いて説明する。図7は、トンネル型読取装置における設定処理を説明するための図(2)である。
【0059】
図6は、ユーザが、設定処理におけるタグに設定する係数をトンネル型装置の内外ごとに設定する例を概念的に示す。図6の例では、ユーザは、トンネル内部エリア36と非読取エリア40とを分離することを所望するものとする。なお、ユーザは、トンネルの出入り口については干渉エリア50として、ある程度の誤読を許容するものとする。
【0060】
この場合、ユーザは、トンネル内部エリア36と非読取エリア40については検査用タグの得点として比較的大きな係数を付し、干渉エリア50については比較的小さな係数を付す。かかる設定のもと読取検査を行い、出力レベルを設定することで、ユーザは、トンネル内部エリア36と非読取エリア40については誤読を高い確率で抑止するとともに、出入り口に干渉エリア50を設けるといった、現場の運用に適した設定を行いうる。
【0061】
(1-4.ボックス型読取装置の設定処理の例)
続いて、図8に、読取装置100がボックス型の読取装置である例を示す。図8は、ボックス型読取装置における設定処理を説明するための図である。
【0062】
図8に示すように、ボックス型の読取装置100は、ユーザが装置内に挿入した読取希望物品12に付された読取希望タグ22を読み取る。一般に、ボックス型読取装置は、外部に電波が漏れない素材で構成され、外部のタグを誤って読み込まないことに特徴を有する。すなわち、ボックス型においては、読取装置100内部のタグを確実に読み取ること、および、読取装置100外部のタグを確実に読み込まないことが求められる。
【0063】
すなわち、図8に示す例では、読取装置100は、読取希望タグ22を確実に読み取るとともに、装置の近傍ではあるが装置外部に所在する非読取タグ24A、非読取タグ24Bおよび非読取タグ24Cを絶対に読み取られないよう、出力レベルを設定する。
【0064】
この例では、ユーザは、読取希望タグ22、非読取タグ24A、非読取タグ24Bおよび非読取タグ24Cの各々に高い数値の係数を設定することで、エリアを明確に分けることが可能である。また、図8に示すように、ユーザは、非読取タグ24A、非読取タグ24Bおよび非読取タグ24Cを読取装置100の上面や側面など様々な位置に配置することで、電波が漏れていないかをチェックしながら出力レベルを設定することが可能である。なお、ユーザは、図6と同様に、読取装置100から離れた位置に非読取物品14を配置し、そこに貼付された非読取タグ24を読取装置100が誤読しないかをさらにチェックしてもよい。
【0065】
(1-5.RFIDシステムの構成)
次に、読取装置100を含むRFIDシステム1の構成について説明する。図9は、実施形態に係るRFIDシステム1の構成を示す図である。
【0066】
図9に示すように、RFIDシステム1は、読取装置100およびユーザ端末200を含む。
【0067】
読取装置100は、RFIDアンテナおよびRFIDリーダライタ等から構成される、タグの情報の読取処理や書込処理を実行する装置である。なお、読取装置100は、単独の装置ではなく、アンテナとリーダライタとをそれぞれ有する2台以上の機器等で構成されてもよい。
【0068】
ユーザ端末200は、読取装置100に各種処理を実行させたり、読取装置100が読み取った情報を表示したりといった制御を行う、情報処理端末である。また、ユーザ端末200は、本開示に係る設定処理を実行するために、タグに得点を設定したり、読取装置100の出力レベルを設定したりといった制御を行う。例えば、ユーザ端末200は、PC(Personal Computer)やタブレット端末、スマートフォン、サーバ装置等である。
【0069】
通信部210は、例えば、ネットワークインタフェースコントローラ(Network Interface Controller)等によって実現される。通信部210は、ネットワークN(例えばインターネットやローカルネットワーク)と有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、読取装置100等との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部210は、Wi-Fi(登録商標)、SIM(Subscriber Identity Module)、LPWA(Low Power Wide Area)等の通信規格もしくは通信技術を用いて、情報の送受信を行ってもよい。
【0070】
記憶部220は、各種情報を記憶する。記憶部220は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0071】
実施形態において、記憶部220は、テストデータ記憶部221と、テスト結果記憶部222とを有する。テストデータ記憶部221は、出力レベルの設定処理で用いられる検査用タグに付す情報であって、タグの属性(読取か非読取か)や、各タグに付される得点(係数)を記憶する。テスト結果記憶部222は、読取装置100の出力レベルを変化させながら読取処理を試行した場合の結果を記憶する。テストデータ記憶部221およびテスト結果記憶部222に記憶される情報は、例えば、表1に示した数値等である。なお、記憶部220に記憶される情報は、必ずしもユーザ端末200自体が保持する必要はなく、例えばクラウド上のデータサーバ等に保持されてもよい。
【0072】
制御部230は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、ユーザ端末200内部に記憶されたプログラム(例えば本開示に係る設定プログラム)がRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部230は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0073】
図9に示すように、制御部230は、取得部231と、算出部232と、設定部233とを有する。
【0074】
取得部231は、各種情報を取得する。例えば、取得部231は、ユーザが希望する読取範囲に基づいてタグの各々に予め付与された評価値(得点、係数)を取得する。また、取得部231は、読取装置100によるタグの読取が実行された場合、その読取結果を取得する。また、取得部231は、その読取結果が得られた際の読取装置100の読取の出力レベルを取得する。
【0075】
上述のように、タグには、ユーザが定義した読取必須エリア35や非読取エリア40、読取可能エリア30(干渉エリア)等に対応して、異なる評価値が与えられている。取得部231は、例えば、かかる設定情報をユーザからの入力に基づき取得し、テストデータ記憶部221に記憶する。また、取得部231は、読取装置100から取得した読取結果等の情報をテスト結果記憶部222に記憶する。
【0076】
また、取得部231は、読取装置100から情報を取得した場合に、タグに対して所定の制御処理を行ってもよい。例えば、取得部231は、読取結果を取得した際に、当該読取結果に応じてタグの点灯機能を制御してもよい。具体的には、取得部231は、読取装置100による読取が成功したタグに対して、LEDを点灯させるよう制御してもよい。これにより、ユーザは、ユーザ端末200の画面を見なくても、どの位置に置かれたタグが読取に成功しているかを一目で確認することができる。
【0077】
算出部232は、取得部231によって取得された情報に基づいて、読取結果に関する評価値を算出する。例えば、算出部232は、表1に記載されたような、各タグごとに付された得点と、読取期待結果と、実際の読取結果とに基づいて、所定の出力レベルにおける点数を算出する。
【0078】
設定部233は、取得部231によって取得された情報に基づいて、読取範囲に対応した出力レベルを設定する。具体的には、設定部233は、算出部232によって算出された評価値のうち、最も得点の高い評価値を得た出力レベルを、テスト時にユーザが定義した読取範囲における最適な出力レベルとして設定する。
【0079】
(2.実施形態の変形例)
(2-1.評価値設定の例(1))
上記実施形態では、RFIDシステム1は、出力レベルを設定するにあたり、各タグに事前に得点を設定し、テスト時の読取結果に応じて得点を算出する例を示した。ここで、RFIDシステム1は、タグの情報を読み取った際と読めなかった際の値を、それぞれ独立して設定してもよい。
【0080】
この場合、実施形態で示した式(1)から式(3)は、以下のような式(4)から式(6)で表すことができる。
【0081】
【数2】
【0082】
上記の式(5)および式(6)は、タグの情報が読み取れた場合と、読み取れなかった場合とで、異なる値(「ai」もしくは「bj」で表される)が評価値として適用されることを示している。すなわち、RFIDシステム1は、タグに対して、読み取れた場合の得点と、読み取れなかった場合の得点とを別々に与えておき、その結果に応じて、異なる得点を加算もしくは減算する手法で、出力レベルの設定を行ってもよい。
【0083】
これにより、ユーザは、例えば、どちらかといえば読み取ってほしいエリアや、どちらかといえば読み取ってほしくないエリアなど、より細かいエリア設定を柔軟に行うことができる。
【0084】
(2-2.評価値設定の例(2))
また、RFIDシステム1は、タグの情報を読み取れた場合にのみ得点を加算もしくは減算し、読み取れなかった場合には、そのタグの情報を無視するといった手法を採用してもよい。この場合、実施形態で示した式(1)から式(3)は、以下のような式(7)から式(9)で表すことができる。
【0085】
【数3】
【0086】
上記の式(8)および式(9)は、タグの情報が読み取れた場合には、期待結果に応じて得点を加算もしくは減算し、読み取れなかった場合には得点を「0」として算出することを示している。すなわち、RFIDシステム1に係る取得部231は、読取結果として、読取装置100による読取が成功したタグの読取結果および評価値のみを取得する。かかる手法によれば、読取装置100が読み取れなかったタグは得点計算に寄与せず、無視することができるため、算出処理を簡略化および高速化することができる。
【0087】
(2-3.評価値設定の例(3))
また、RFIDシステム1は、タグごとの得点を記憶部220に設定しておくなどのデータベースに基づく処理ではなく、タグそのものに得点を記憶しておく手法を採用してもよい。
【0088】
実施形態で示したように、各タグは、読取を希望するエリアに配置されるものと、読取を希望しないエリアに配置されるものとに区別される。この場合、評価用タグのIDのヘッダには、表1に示したような「A」や「F」のヘッダ情報が付与される。さらに、RFIDシステム1は、タグを識別するための識別番号とともに、そのタグの評価値(得点)の情報そのものを、タグIDに含ませる。一例として、タグIDは、「FFFF 0000 0000 0001」のような数値の羅列で示される。この場合、タグIDのヘッダ「F」が非読取エリアであることを示し、最後の数列「0001」が当該タグの得点を示す。
【0089】
かかる手法によれば、RFIDシステム1は、テスト用の専用データテーブルやデータベースを有さずとも、実施形態に係る設定処理を行うことができる。すなわち、ユーザは、テスト用のタグを定義したエリアに配置するのみで、データベースを読み込ませることなく、テストとしての読取処理をRFIDシステム1に実行させることができる。
【0090】
(2-4.評価値設定の例(4))
RFID技術では、読取装置100が内包するアンテナの向き(指向性)や高さが読取に影響することが知られている。このため、RFIDシステム1は、アンテナの向きや高さを含む設置条件とともに、実施形態に係る設定処理を実行してもよい。この場合、実施形態で示した式(1)から式(3)は、以下のような式(10)から式(13)で表すことができる。
【0091】
【数4】
【0092】
上記の式(11)に示すように、式(10)における「P」とは、出力レベルおよび設置条件に対応する評価値を示す。具体的には、「Pbest」は、決定したい最適な読取装置100の出力と、アンテナ設置条件の組み合わせを示す。「p」は、評価する出力と、アンテナ設置条件の1つの要素を示す。「P」は、評価する出力とアンテナ設置条件の集合を示す。
【0093】
なお、「Ppower」は、読取装置100の出力レベルを示すが、かかる値はアンテナごとに異なる出力レベルが設定されてもよい。また、「Pplace-conditions」は、アンテナの設置条件であり、例えば、設置位置や設置高さ、指向性(角度)等の各種情報を含んでもよい。
【0094】
例えば、ユーザは、「読取装置100のアンテナが高さ80cmの位置にあり、所定の方向に向いている」という条件のもと、各タグを自身が定義したエリアに配置する。RFIDシステム1は、実施形態に係る設定処理を行い、その結果に基づいて出力レベルを設定する。この場合、RFIDシステム1は、このアンテナ設置条件とともに、当該出力レベルを記憶する。すなわち、RFIDシステム1に係る取得部231は、タグの読取結果とともに、読取結果が得られた際の読取装置100のアンテナの設置条件を取得する。設定部233は、読取範囲およびアンテナの設置条件ごとに出力レベルを設定する。
【0095】
これにより、ユーザは、アンテナ設置条件も含めた、より細かい読取装置100による読取処理の精度を設定することができるので、より詳細に希望するエリア設定を行うことができる。
【0096】
(2-5.RFIDシステムの構成)
上記実施形態ではRFIDシステム1が読取装置100およびユーザ端末200を含む例を示したが、RFIDシステム1の構成はこれに限られない。例えば、RFIDシステム1は、読取を開始させるトリガーとなるボタンスイッチやスマートフォン等の操作機器を含んでもよい。また、読取装置100は、アンテナとリーダライタとが別々の複数の機器で実現されてもよい。
【0097】
(2-6.通信規格)
実施形態では、RFID規格に基づき情報の送受信を行うRFIDシステム1を例示したが、本開示に係る設定処理は、RFIDに限らず、他の通信規格における送受信装置に応用されてもよい。
【0098】
(3.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0099】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0100】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0101】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0102】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0103】
(4.本開示に係るRFIDシステムの効果)
上述してきたように、本開示に係るRFIDシステム(実施形態ではRFIDシステム1)は、RFIDタグの情報を読み取る読取装置(実施形態では読取装置100)と、当該読取装置の動作を制御する制御装置(実施形態ではユーザ端末200)とを含む。また、制御装置は、取得部(実施形態では取得部231)と、設定部(実施形態では設定部233)とを含む。取得部は、ユーザが希望する読取範囲に基づいてRFIDタグの各々に予め付与された評価値と、読取装置による当該RFIDタグの読取結果と、読取結果が得られた際の当該読取装置の読取の出力値と、を取得する。設定部は、取得部によって取得された情報に基づいて、読取範囲に対応した出力値を設定する。
【0104】
RFIDシステムによれば、ユーザが定義した読取範囲に合わせて読取精度を可変できるので、ユーザは、状況や要望に合わせて柔軟に読み取り範囲をユーザ自身で設定することができる。
【0105】
また、取得部は、評価値として、ユーザが読取を希望する第1範囲(例えば読取必須エリア35)と、ユーザが読取を希望しない第2範囲(例えば非読取エリア40)と、当該第1範囲と当該第2範囲との間の干渉エリアとなる第3範囲(例えば干渉エリア45)との、各々で異なる係数が付与されたRFIDタグの読取結果を取得する。
【0106】
RFIDシステムによれば、ユーザが定義したエリアごとに異なる評価値(得点)を任意にユーザが設定できるので、ユーザは、自身の要望に即した読取エリアの設定を行うことができる。
【0107】
また、取得部は、読取結果として、読取装置による読取が成功したRFIDタグの読取結果および評価値のみを取得してもよい。
【0108】
RFIDシステムによれば、読取が成功したタグのみの情報を算出に用いることもできるため、ユーザは、出力レベルの設定を迅速に行うことができる。
【0109】
また、取得部は、読取結果を取得した際に、当該読取結果に応じてRFIDタグの点灯機能を制御してもよい。
【0110】
RFIDシステムによれば、読取結果に応じてタグに付与されたLED等を点灯させることができるので、ユーザは、制御装置等の画面を見なくても、どの位置に置かれたタグが読取に成功しているかを一目で確認することができる。
【0111】
また、取得部は、RFIDタグの読取結果とともに、当該読取結果が得られた際の当該読取装置のアンテナの設置条件を取得してもよい。設定部は、読取範囲およびアンテナの設置条件ごとに、出力値を設定する。
【0112】
RFIDシステムによれば、ユーザは、アンテナ設置条件も含めて、最適な読取条件を簡易に設定することができる。
【0113】
(5.ハードウェア構成)
上述してきた実施形態に係るユーザ端末200等の情報機器は、例えば図10に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係るユーザ端末200を例に挙げて説明する。図10は、ユーザ端末200の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、及び入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0114】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。例えば、CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0115】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0116】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例である本開示に係るRFID読取処理を実行するプログラムを記録する記録媒体である。
【0117】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(例えばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0118】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウス等の入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやスピーカーやプリンタ等の出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラム等を読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0119】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係るユーザ端末200として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部230等の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示に係る設定処理を実行する設定プログラムや、ユーザ端末200が有する記憶部220内のデータが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0120】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 RFIDシステム
20 RFIDタグ
100 読取装置
200 ユーザ端末
210 通信部
220 記憶部
221 テストデータ記憶部
222 テスト結果記憶部
230 制御部
231 取得部
232 算出部
233 設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10