(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110033
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】カウリング構造
(51)【国際特許分類】
B62J 17/00 20200101AFI20240807BHJP
B62J 17/10 20200101ALI20240807BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B62J17/00
B62J17/10
B62J23/00 A
B62J23/00 C
B62J23/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014341
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】石井 樹
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造でカウリングを安定的に支持する。
【解決手段】カウリング構造は、車両前部を前方から覆うフロントカウリング(51)が、車両前部を側方から覆う一対のサイドカウリングに固定されると共にカウリングブレースを介して車体フレーム(10)に支持されている。一対のサイドカウリングには、サイドカウリングの外面を形成するアウターカウリングと、サイドカウリングの内面を形成するインナーカウリング(66)と、が設けられている。インナーカウリングには、車両前部の前側に固定される前側固定部(91)と、車両前部の後側に固定される後側固定部(92)と、が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部を前方から覆うフロントカウリングが、車両前部を側方から覆う一対のサイドカウリングに固定されると共にカウリングブレースを介して車体フレームに支持されたカウリング構造であって、
前記一対のサイドカウリングには、
前記サイドカウリングの外面を形成するアウターカウリングと、
前記サイドカウリングの内面を形成するインナーカウリングと、が設けられ、
前記インナーカウリングには、車両前部の前側に固定される前側固定部と、車両前部の後側に固定される後側固定部と、が形成されていることを特徴とするカウリング構造。
【請求項2】
前記インナーカウリングの側壁から上下一対の対向壁が前記アウターカウリング側に突き出し、
前記上下一対の対向壁が前後方向に延びており、前記上下一対の対向壁と前記側壁から成る凹状断面によって前記インナーカウリングが補強されていることを特徴とする請求項1に記載のカウリング構造。
【請求項3】
前記インナーカウリングと前記アウターカウリングが重ね合わされて前記サイドカウリングが中空に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカウリング構造。
【請求項4】
前記インナーカウリングには、車両前部の下側に固定される下側固定部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカウリング構造。
【請求項5】
前記インナーカウリングはラジエータの前方で当該ラジエータの側面に沿って延出し、前記インナーカウリングの延出部に形成された前記下側固定部が車両前部の下側の前記ラジエータに固定されていることを特徴とする請求項4に記載のカウリング構造。
【請求項6】
前記インナーカウリングの内側と前記ラジエータの上方を仕切るように、前記インナーカウリングの側壁から隔壁が前記アウターカウリング側に突き出していることを特徴とする請求項5に記載のカウリング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウリング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両のカウリング構造として、車体フレームにカウリングブレースを介して支持されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカウリングブレースは車体フレームのヘッドパイプから前方に延びており、カウリングブレースに設けられたブラケットにカウリングが取り付けられている。また、カウリングの左右の開口に一対のインテークパイプの入口側が支持されており、一対のインテークパイプの出口側がヘッドパイプの両側方で車体フレームに支持されている。カウリングブレースと一対のインテークパイプによってカウリングが安定的に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インテークパイプが接続されないフルカウルモデルの鞍乗型車両では、カウリングブレースだけのシンプルな構造でカウリングを安定的に支持することが難しい。カウリングブレースだけでカウリングを支持するためにはカウリングブレースの大型化に加えて、カウリングブレースの剛性を上げる必要があり、カウリングブレースの重量が増加するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、シンプルな構造でカウリングを安定的に支持することができるカウリング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のカウリング構造は、車両前部を前方から覆うフロントカウリングが、車両前部を側方から覆う一対のサイドカウリングに固定されると共にカウリングブレースを介して車体フレームに支持されたカウリング構造であって、前記一対のサイドカウリングには、前記サイドカウリングの外面を形成するアウターカウリングと、前記サイドカウリングの内面を形成するインナーカウリングと、が設けられ、前記インナーカウリングには、車両前部の前側に固定される前側固定部と、車両前部の後側に固定される後側固定部と、が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のカウリング構造によれば、一対のサイドカウリングのインナーカウリングが前後2個所で車両前部に固定され、この一対のサイドカウリングにフロントカウリングが固定されている。カウリングブレースを介してフロントカウリングが車体フレームに支持されると共に一対のサイドカウリングを介してフロントカウリングが車両前部に支持される。よって、インテークパイプ等を設けることなく、シンプルな構造でフロントカウリングを安定的に支持して剛性を高めることができる。また、カウリングブレースの大型化及び高強度化が不要になってカウリングブレースの重量が増加することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本実施例の車両前部の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】本実施例の車両前部から一部のカウリングを取り外した右側面図である。
【
図5】本実施例の車両前部から一部のカウリングを取り外した右側面図である。
【
図6】
図1に示す車両前部をA-A線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両には、フロントカウリングによって車両前部が前方から覆われ、一対のサイドカウリングによって車両前部が側方から覆われたカウリング構造が採用されている。フロントカウリングが一対のサイドカウリングに固定されると共にカウリングブレースを介して車体フレームに支持されている。各サイドカウリングの外面がアウターカウリングによって形成され、各サイドカウリングの内面がインナーカウリングによって形成されている。インナーカウリングには、車両前部の前側に固定される前側固定部と、車両前部の後側に固定される後側固定部と、が形成されている。一対のサイドカウリングのインナーカウリングが前後2個所で車両前部に固定され、この一対のサイドカウリングにフロントカウリングが固定されている。カウリングブレースを介してフロントカウリングが車体フレームに支持されると共に一対のサイドカウリングを介してフロントカウリングが車両前部に支持される。よって、インテークパイプ等を設けることなく、シンプルな構造でフロントカウリングを安定的に支持して剛性を高めることができる。また、カウリングブレースの大型化及び高強度化が不要になってカウリングブレースの重量が増加することがない。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例のカウリング構造について説明する。
図1は本実施例の車両前部の右側面図である。
図2は本実施例の車両前部の前面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1の車両前部にはフロントカウリング51及び一対のサイドカウリング61が設けられている。フロントカウリング51によって車両前部が前方から覆われ、一対のサイドカウリング61によって車両前部が側方から覆われている。サイドカウリング61から下方にフロントフォーク15が突き出しており、フロントフォーク15の下部には前輪16が回転可能に支持されている。サイドカウリング61から後方にメインフレーム11が突き出しており、メインフレーム11の上側には燃料タンク21、メインフレーム11の下側にはエンジン22がそれぞれ設けられている。
【0012】
フロントカウリング51の前端側が側面視クチバシ状に形成されている。フロントカウリング51の前面は前端から後斜め上方に傾斜しており、フロントカウリング51の前面上側には防風用のウィンドスクリーン23が取り付けられている。フロントカウリング51の下面が上下二段に形成され、フロントカウリング51の前側の下面よりも後側の下面が一段低くなっている。フロントカウリング51の後側にはメーターカバー24が取り付けられている。フロントカウリング51の内側には、上側ヘッドランプ32及び下側ヘッドランプ34を有するヘッドランプユニット31が設置されている。
【0013】
一対のサイドカウリング61は、フロントカウリング51から燃料タンク21の前側まで後方に広がると共にフロントカウリング51から前輪16の後側まで下方に広がっている。各サイドカウリング61(アウターミドルカウリング65)の前端側も、フロントカウリング51の前端側と同様に側面視クチバシ状に形成されている。各サイドカウリング61の前縁上側は前端から後斜め上方に傾斜しており、各サイドカウリング61の前縁下側は前端から後斜め下方に傾斜している。フロントカウリング51の後側に一対のサイドカウリング61が連なって、走行風からの空気抵抗を減らす流線形が鞍乗型車両1の車両前部に形成されている。
【0014】
図1及び
図2に示すように、フロントカウリング51の前面中央はフロントセンターカウリング52によって形成され、フロントカウリング51の前面左右両側は一対のフロントサイドカウリング53によって形成されている。フロントカウリング51の前面上側はフロントアッパーカウリング54によって形成され、フロントカウリング51の前面下側はフロントアンダーカウリング55によって形成されている。フロントセンターカウリング52の開口から上側ヘッドランプ32のレンズ面33が前方に露出し、フロントアンダーカウリング55の開口から下側ヘッドランプ34のレンズ面35が前方に露出している。
【0015】
一対のサイドカウリング61の外面はアウターカウリング62によって形成され、一対のサイドカウリング61の内面はインナーカウリング66によって形成されている。アウターカウリング62は、アウターアッパーカウリング63、アウターアンダーカウリング64、アウターミドルカウリング65が組み合わされて形成されている。アウターアッパーカウリング63からはターンシグナルランプ45が側方に突き出している。アウターカウリング62とインナーカウリング66が左右から重ね合わされて各サイドカウリング61が中空に形成され、各サイドカウリング61の内側には電気部品の収容スペースが確保されている。
【0016】
ところで、フロントカウリング51がカウリングブレース19(
図3参照)を介して車体フレーム10に支持されているが、カウリングブレース19だけではフロントカウリング51を十分に支えることが難しい。カウリングブレース19だけでフロントカウリング51全体を支えるためには、カウリングブレース19を大型化する必要があると共にカウリングブレース19の剛性を高めなければならない。そこで、本実施例の鞍乗型車両1では、カウリングブレース19を介して車体フレーム10にフロントカウリング51が支持されると共に、一対のサイドカウリング61を介して車両前部にフロントカウリング51が支持されている。
【0017】
図3から
図5を参照して、カウリング構造について説明する。
図3は本実施例の車両前部の内部構造を示す斜視図である。
図4及び
図5は本実施例の車両前部から一部のカウリングを取り外した右側面図である。なお、
図3ではフロントカウリング及びアウターカウリングを取り外した状態を示し、
図4ではアウターカウリングを取り外した状態を示している。
図5ではアウターミドルカウリングを二点鎖線で示している。
【0018】
図3に示すように、車体フレーム10の前部にはブレースブラケット18を介してカウリングブレース19が支持されている。カウリングブレース19は金属パイプ及び金属ブラケットを溶接によって一体化して形成されている。カウリングブレース19の前側には、ヘッドランプユニット31(
図1参照)及びフロントカウリング51(
図1参照)が支持されている。カウリングブレース19の左右両側には、一対のインナーカウリング66の前側から車幅方向内側に突き出した筒状の前側固定部91がネジ止めされている。一対のインナーカウリング66はカウリングブレース19を介して接続されている。
【0019】
一対のインナーカウリング66の前縁に沿った個所よりも後側が車幅方向内側に膨出している。各インナーカウリング66の膨出部93の側壁94はフロントフォーク15に干渉しないように上面視アーチ状に湾曲している。より詳細には、膨出部93の側壁94の前端から中間部までは車幅方向外側に向かって湾曲し、膨出部93の側壁94の中間部から後端までは車幅方向内側に向かって湾曲している。これにより、フロントフォーク15が揺動しても、フロントフォーク15とインナーカウリング66の膨出部93との間隔が適正に保たれている。膨出部93の後方に位置する後側固定部92が燃料タンク21にネジ止めされている。
【0020】
図3及び
図4に示すように、フロントカウリング51よりも後方に側面視矩形状の膨出部93が位置し、膨出部93の前壁95が後斜め上方に傾斜し、膨出部93の下壁97が後斜め下方に傾斜している。膨出部93の下壁97の前側にはフロントカウリング51の下側を通る走行風を後方に抜けさせる通風穴99が形成されている。膨出部93の下壁97が後斜め下方に傾斜していても、通風穴99を通って走行風が後方に抜けることで車両前部に上向きの力が生じ難くなっている。通風穴99の真上に前側固定部91が位置しているため、通風穴99に走行風が入り込む際の振動が抑えられている。
【0021】
インナーカウリング66には通風穴99の上縁から後斜め後方に延びる導風壁101が形成されている。導風壁101が水平方向に対して浅い角度で傾斜しており、通風穴99から走行風が水平方向に流れ込んでも、導風壁101に対する走行風の当たりが強くならない。導風壁101によって通風穴99に入り込んだ走行風がスムーズに後方に導かれて、走行風からインナーカウリング66が受ける空気抵抗が減らされている。また、前面視にて通風穴99の奥方に導風壁101が位置付けられて、導風壁101によってインナーカウリング66の内側が隠されて外観性が向上されている(
図2参照)。
【0022】
メインフレーム11の前部にはエアクリーナ(不図示)の吸入口46に連なる開口12が形成されている。導風壁101は通風穴99からエアクリーナの吸入口46に向かって延びており、導風壁101によって走行風がエアクリーナの吸入口46に導かれて吸気効率が向上されている。この場合、側面視にて導風壁101の下流側の壁面を延長した延長線L1がエアクリーナの吸入口46よりも下方に位置している。走行風が導風壁101を通過することで、走行風の向きがエアクリーナの吸入口46よりも下方に向けられて、エアクリーナの吸入口46への砂等の異物の侵入が抑えられている。
【0023】
インナーカウリング66の膨出部93の内側には電気部品の収容空間が形成され、収容空間には電気部品としてハーネス47が設置されている。導風壁101は通風穴99から入り込んだ走行風の流路と収容空間を仕切るように延びており、通風穴99から砂や水滴等の異物が入り込んでも、導風壁101によって異物からハーネス47が保護される。インナーカウリング66にアウターカウリング62(
図1参照)が重ね合わされており、中空の閉断面によってサイドカウリング61の剛性が高められている。サイドカウリング61の内側にハーネス47が隠されて外観性が向上されると共に飛び石等からハーネス47が保護される。
【0024】
インナーカウリング66(膨出部93)の側壁94の上端からアウターカウリング62側に上壁98が突き出している。インナーカウリング66の上壁98は導風壁101と同様に前後方向に延びており、インナーカウリング66の上壁98と導風壁101が上下方向で対向している。このインナーカウリング66の上壁98と導風壁101と側壁94から成る凹状断面によってインナーカウリング66が補強されてインナーカウリング66の剛性が高められている。このように、導風壁101は走行風を導くだけでなく、収容空間と流路を仕切る仕切壁や膨出部93を補強するリブとして機能している。
【0025】
車両前部の下方にはラジエータ48が設けられており、インナーカウリング66の内側とラジエータ48の上方を仕切るようにインナーカウリング66の側壁94からアウターカウリング62側に隔壁102が突き出している。ラジエータ48から上方に向かう熱気が隔壁102によって遮られて、インナーカウリング66に設置されたハーネス47に対する熱害が抑えられている。なお、インナーカウリング66の隔壁102は導風壁101の後端に連なって走行風の流路が部分的に遮られているが、隔壁102の突出量が最小限に抑えられて走行風の流れを強く阻害することがない。
【0026】
インナーカウリング66の膨出部93から下方に延出部103が延びており、延出部103の下側固定部104a-104cがラジエータ48にネジ止めされている。インナーカウリング66の前後及び上下に離間した前側固定部91、後側固定部92、下側固定部104a-104cが車両前部にネジ止めされることでサイドカウリング61が安定的に支持されている。また、延出部103はラジエータ48の前方でラジエータ48の側面に沿って延びている。延出部103がラジエータ48に走行風を導く導風板として機能しており、延出部103に沿ってラジエータ48に走行風が流れることで冷却効率が向上されている。
【0027】
フロントカウリング51は、フロントセンターカウリング52、一対のフロントサイドカウリング53、フロントアッパーカウリング54、フロントアンダーカウリング55の各カウリング部材を立体的に組み合わせて形成されている。隣り合うカウリング部材同士は互いにクリップ止めされている。また、一対のフロントサイドカウリング53及びフロントアッパーカウリング54にはメーターカバー24がクリップ止めされている。メーターカバー24にはインナーカウリング66の膨出部93の前壁95が接しており、膨出部93の前壁95の上下2個所96a、96bがメーターカバー24にクリップ止めされている。
【0028】
フロントアンダーカウリング55には挿込穴72が形成され、インナーカウリング66にはフック105が形成されている。フック105が挿込穴72に挿し込まれてフロントアンダーカウリング55とインナーカウリング66が掛け止めされる。インナーカウリング66の先端付近がフロントアンダーカウリング55に接しており、インナーカウリング66の先端部106がフロントアンダーカウリング55にクリップ止めされている。また、メーターカバー24にはアウターアッパーカウリング63(
図1参照)が接しており、アウターアッパーカウリング63の前部76(
図1参照)がメーターカバー24にネジ止めされている。
【0029】
このように、フロントカウリング51の上部はメーターカバー24を介して膨出部93の前壁95とアウターカウリング62の前部76に固定され、フロントカウリング51の下部はインナーカウリング66の先端部106に固定されている。一対のサイドカウリング61が車両前部の複数個所で支持されているため、一対のサイドカウリング61がカウリングブレース19と共にフロントカウリング51の支持構造として機能している。上記したように、一対のサイドカウリング61の剛性が十分に高められているため、一対のサイドカウリング61によってフロントカウリング51が安定的に支持されている。
【0030】
図5に示すように、インナーカウリング66にはアウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64が取り付けられている。アウターアッパーカウリング63はインナーカウリング66の上領域に対向し、アウターアンダーカウリング64はインナーカウリング66の下領域に対向している。アウターアッパーカウリング63の下縁とアウターアンダーカウリング64の上縁が連結しており、アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64の継ぎ目77を車幅方向外側から覆うようにアウターミドルカウリング65が取り付けられている。
【0031】
アウターアッパーカウリング63の下縁には複数のフック(不図示)が形成されており、アウターアンダーカウリング64の上縁には複数の挿込穴78が形成されている。フックが挿込穴78に挿し込まれてアウターアッパーカウリング63とアウターアンダーカウリング64が掛け止めされている。アウターアッパーカウリング63の下縁には延在方向に離間した3個所に固定部73a-73cが形成されており、3個所の固定部73a-73cがアウターアンダーカウリング64の上縁にネジ止めされている。アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64が継ぎ目77に沿って複数個所で連結されている。
【0032】
アウターアッパーカウリング63の前後方向の中間にはクリップ穴81aが形成され、アウターアンダーカウリング64の前後方向の前側にはクリップ穴81bが形成され、アウターアンダーカウリング64の前後方向の後側にはクリップ穴81cが形成されている。アウターミドルカウリング65の内面にはクリップ穴81a-81cに対応した3つのクリップ(不図示)が設けられている。アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64のクリップ穴81a-81cにアウターミドルカウリング65のクリップが車幅方向外側から挿し込まれてアウターミドルカウリング65が位置決めされている。
【0033】
アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64にはアウターミドルカウリング65の前側、後側、上側、下側に対応した固定部82a-82dが形成されている。固定部82aはクリップ穴81bよりも前方に位置し、固定部82bはクリップ穴81aよりも上方に位置し、固定部82cはクリップ穴81cよりも後方に位置している。固定部82dはクリップ穴81b、81cを通る直線よりも下方に位置している。アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64の4つの固定部82a-82dにアウターミドルカウリング65がネジ止めされている。
【0034】
アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64の継ぎ目77がアウターミドルカウリング65に覆われて鞍乗型車両1の外観性が向上されている。この場合、アウターミドルカウリング65に対してアウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64が車幅方向内側からネジ止めされる。アウターミドルカウリング65にネジ穴が貫通しておらず、カウリング部材同士の締結部材が外部に露出されない。事前にアウターカウリング62を組み立てておくことで、インナーカウリング66へのアウターカウリング62の取付作業が容易になる。
【0035】
また、アウターアッパーカウリング63とアウターアンダーカウリング64の継ぎ目77に隙間があるが、アウターミドルカウリング65に隙間が覆われることで隙間の許容幅が広くなっている。アウターアッパーカウリング63及びアウターミドルカウリング65の固定位置にある固定部82bとアウターアンダーカウリング64及びアウターミドルカウリング65の固定位置にある固定部82dが継ぎ目77を挟んで離間している。アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64の上下に離間した2個所がアウターミドルカウリング65を介して連結されてアウターカウリング62の全体的な剛性が高められている。
【0036】
アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64は、溶融樹脂を金型に充填する射出成形によって製造されている。このため、アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64にはゲートの跡85a、85bが残されている。ゲートの跡85a、85bはアウターミドルカウリング65に覆われている。アウターミドルカウリング65にゲートの跡85a、85bが隠されることで、アウターアッパーカウリング63及びアウターアンダーカウリング64の外観性に対する影響を気にすることなく、射出成形時のゲートを大きくして設計自由度が向上されている。
【0037】
図4及び
図6を参照して、カウリングの固定構造について説明する。
図6は
図1に示す車両前部をA-A線に沿って切断した断面図である。
【0038】
図4に示すように、インナーカウリング66の前側固定部91がカウリングブレース19(
図6参照)にネジ止めされ、インナーカウリング66の後側固定部92が燃料タンク21にネジ止めされている。また、インナーカウリング66の下側固定部104a-104cがラジエータ48にネジ止めされている。フロントカウリング51の上側が膨出部93の前壁95にクリップ止めされ、フロントカウリング51の下側がインナーカウリング66の先端部106にクリップ止めされている。フロントカウリング51がカウリングブレース19だけでなく、インナーカウリング66を介して燃料タンク21やラジエータ48に連結されている。
【0039】
図6に示すように、インナーカウリング66にアウターカウリング62を固定した中空構造によってサイドカウリング61の剛性が高められている。上記したように、インナーカウリング66が側壁94、上壁98、導風壁101によって断面凹状に形成されて剛性が高められている。また、アウターカウリング62は、アウターアッパーカウリング63、アウターアンダーカウリング64、アウターミドルカウリング65が組み合わされて剛性が高められている。各サイドカウリング61の剛性が高められることで、カウリングブレース19と一対のサイドカウリング61によってフロントカウリング51が安定的に支持される。
【0040】
以上、本実施例のカウリング構造によれば、一対のサイドカウリング61のインナーカウリング66が前後及び上下に離間した複数個所で車両前部に固定され、この一対のサイドカウリング61にフロントカウリング51が固定されている。カウリングブレース19を介してフロントカウリング51が車体フレーム10に支持されると共に一対のサイドカウリング61を介してフロントカウリング51が車両前部に支持される。よって、インテークパイプ等を設けることなく、シンプルな構造でフロントカウリング51を安定的に支持して剛性を高めることができる。また、カウリングブレース19の大型化及び高強度化が不要になってカウリングブレース19の重量が増加することがない。
【0041】
なお、本実施例では、フロントカウリングが複数のカウリング部材を組み合わせて形成されているが、フロントカウリングが1つのカウリング部材によって形成されていてもよい。
【0042】
また、本実施例では、アウターカウリングが複数のカウリング部材を組み合わせて形成されているが、アウターカウリングが1つのカウリング部材によって形成されていてもよい。
【0043】
また、本実施例では、インナーカウリングの前側固定部がカウリングブレースに固定されているが、インナーカウリングの前側固定部は車両前部の前側に固定されればよい。例えば、インナーカウリングの前側固定部がランプユニットに固定されてもよい。
【0044】
また、本実施例では、インナーカウリングの後側固定部が燃料タンクに固定されているが、インナーカウリングの後側固定部は車両前部の後側に固定されればよい。例えば、インナーカウリングの後側固定部がタンクカバーに固定されてもよい。
【0045】
また、本実施例では、インナーカウリングの下側固定部がラジエータに固定されているが、インナーカウリングの下側固定部は車両前部の下側に固定されればよい。例えば、インナーカウリングの下側固定部がブラケット等を介して車体フレームやエンジン等に固定されてもよい。
【0046】
また、本実施例では、インナーカウリングが凹状断面によって補強されているが、インナーカウリングの断面形状は特に限定されない。
【0047】
また、本実施例では、インナーカウリングにハーネスの収容空間が形成されているが、インナーカウリングの収容空間にはハーネス以外の電気部品が収容されていてもよい。
【0048】
また、各種カウリングの固定方法は特に限定されず、ネジ止め、掛け止め、クリップ止め等の固定方法が適宜用いられる。
【0049】
また、本実施例のカウリング構造は上記の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0050】
以上の通り、第1態様は、車両前部を前方から覆うフロントカウリング(51)が、車両前部を側方から覆う一対のサイドカウリング(61)に固定されると共にカウリングブレース(19)を介して車体フレーム(10)に支持されたカウリング構造であって、一対のサイドカウリングには、サイドカウリングの外面を形成するアウターカウリング(62)と、サイドカウリングの内面を形成するインナーカウリング(66)と、が設けられ、インナーカウリングには、車両前部の前側に固定される前側固定部(91)と、車両前部の後側に固定される後側固定部(92)と、が形成されている。この構成によれば、一対のサイドカウリングのインナーカウリングが前後2個所で車両前部に固定され、この一対のサイドカウリングにフロントカウリングが固定されている。カウリングブレースを介してフロントカウリングが車体フレームに支持されると共に一対のサイドカウリングを介してフロントカウリングが車両前部に支持される。よって、インテークパイプ等を設けることなく、シンプルな構造でフロントカウリングを安定的に支持して剛性を高めることができる。また、カウリングブレースの大型化及び高強度化が不要になってカウリングブレースの重量が増加することがない。
【0051】
第2態様は、第1態様において、インナーカウリングの側壁(94)から上下一対の対向壁(上壁98、導風壁101)がアウターカウリング側に突き出し、上下一対の対向壁が前後方向に延びており、上下一対の対向壁と側壁から成る凹状断面によってインナーカウリングが補強されている。この構成によれば、凹状断面によってインナーカウリングの剛性が高められてインナーカウリングによってフロントカウリングが安定的に支持される。
【0052】
第3態様は、第1態様及び第2態様において、インナーカウリングとアウターカウリングが重ね合わされてサイドカウリングが中空に形成されている。この構成によれば、中空の閉断面によってサイドカウリングの剛性が高められてインナーカウリングによってフロントカウリングが安定的に支持される。サイドカウリングの内側にハーネス等の各種部品が隠されて外観性が向上すると共に飛び石等から各種部品が保護される。
【0053】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、インナーカウリングには、車両前部の下側に固定される下側固定部(104a-104c)が形成されている。この構成によれば、インナーカウリングの前後及び上下に離間した3個所が車両前部に固定されることで、一対のサイドカウリングをより安定的に支持することができる。
【0054】
第5態様は、第4態様において、インナーカウリングはラジエータ(48)の前方で当該ラジエータの側面に沿って延出し、インナーカウリングの延出部(103)に形成された下側固定部が車両前部の下側のラジエータに固定されている。この構成によれば、延出部によってラジエータに向けて走行風が導かれてレジエータの冷却効率を向上させることができる。
【0055】
第6態様は、第5態様において、インナーカウリングの内側とラジエータの上方を仕切るように、インナーカウリングの側壁から隔壁(102)がアウターカウリング側に突き出している。この構成によれば、ラジエータから上方に向かう熱気を隔壁によって遮ることができる。インナーカウリングの内側にハーネス等の各種部品が設置される場合には各種部品に対する熱害を抑えることができる。
【0056】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0057】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。