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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110035
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】カウリング構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 23/00 20060101AFI20240807BHJP
   B62J 17/10 20200101ALI20240807BHJP
   B62J 6/027 20200101ALI20240807BHJP
【FI】
B62J23/00 A
B62J17/10
B62J6/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014343
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐生
(72)【発明者】
【氏名】辻村 駿一
(57)【要約】
【課題】ランプユニットを低く設置して安定した走行を実現可能なカウリング構造を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両(1)のカウリング構造は、ランプユニット(31)を覆うカウリング(51)を備えている。カウリングの前面がランプユニットのレンズ面(35)を前方に露出させるように開口され、カウリングの下面(74)がランプユニットの下面(37)を下方に露出させるように開放されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプユニットを覆うカウリングを備えた鞍乗型車両のカウリング構造であって、
前記カウリングの前面が前記ランプユニットのレンズ面を前方に露出させるように開口され、
前記カウリングの下面が前記ランプユニットの下面を下方に露出させるように開放されていることを特徴とするカウリング構造。
【請求項2】
前記カウリングの下面が前記ランプユニットの下面全域を露出させるように開放されており、当該ランプユニットの下面全域が前記カウリングの開放領域に入り込んでいることを特徴とする請求項1に記載のカウリング構造。
【請求項3】
前記カウリングの開口と前記カウリングの開放領域が連なっており、
前記カウリングには、前記ランプユニットのレンズ面の下縁に沿って前記カウリングの開口を横断する横断部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカウリング構造。
【請求項4】
前記カウリングの開放領域の車幅方向の両側縁が前記ランプユニットを介して連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカウリング構造。
【請求項5】
前記カウリングの開放領域が前方から後方に向かって幅広に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカウリング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウリング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両として、ヘッドランプのレンズ面がフロントカウリングに囲まれたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のフロントカウリングの内側にはランプユニットが設置されており、ランプユニットの前面にヘッドランプが設けられている。フロントカウリングの正面には開口が形成されており、この開口からヘッドライトのレンズ面が外方に露出されている。ランプユニットの下方や側方がフロントカウリングに覆われているが、ランプユニットの下方や側方には放熱性を高めるための十分な隙間が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-147272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の鞍乗型車両ではフロントカウリングが高く設計されており、ランプユニットがフロントカウリングの下面よりも高い位置に設置されている。このため、車両前部の重心が高くなって走行安定性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ランプユニットを低く設置して、安定した走行を実現することができるカウリング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のカウリング構造は、ランプユニットを覆うカウリングを備えた鞍乗型車両のカウリング構造であって、前記カウリングの前面が前記ランプユニットのレンズ面を前方に露出させるように開口され、前記カウリングの下面が前記ランプユニットの下面を下方に露出させるように開放されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のカウリング構造によれば、カウリングの下面が開放されることで、ランプユニットがカウリングの下面に近づけられても放熱性が十分に確保される。ランプユニットを低い位置に設置することで、車両前部の重心が低くなって走行安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の車両前部の右側面図である。
図2】本実施例の車両前部の前面図である。
図3】本実施例の車両前部を右斜め下方から見た斜視図である。
図4】本実施例の車両前部の下面図である。
図5図1に示す車両前部をA-A線に沿って切断した断面図である。
図6図2の車両前部をB-B線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両は、カウリングによってランプユニットが覆われている。カウリングの前面がランプユニットのレンズ面を前方に露出させるように開口され、カウリングの下面がランプユニットの下面を下方に露出させるように開放されている。これにより、カウリングの下面が開放されることで、ランプユニットがカウリングの下面に近づけられても放熱性が十分に確保される。ランプユニットを低い位置に設置することで、車両前部の重心が低くなって走行安定性が向上する。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例のカウリング構造について説明する。図1は本実施例の車両前部の右側面図である。図2は本実施例の車両前部の前面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1の車両前部にはフロントカウリング(カウリング)51及び一対のサイドカウリング61が設けられている。フロントカウリング51によって車両前部が前方から覆われ、一対のサイドカウリング61によって車両前部が側方から覆われている。サイドカウリング61から下方にフロントフォーク15が突き出しており、フロントフォーク15の下部には前輪16が回転可能に支持されている。サイドカウリング61から後方にメインフレーム11が突き出しており、メインフレーム11の上側には燃料タンク21、メインフレーム11の下側にはエンジン22がそれぞれ設けられている。
【0012】
フロントカウリング51の前端側が側面視クチバシ状に形成されている。フロントカウリング51の前面は前端から後斜め上方に傾斜しており、フロントカウリング51の前面上側には防風用のウィンドスクリーン23が取り付けられている。フロントカウリング51の下面が上下二段に形成され、フロントカウリング51の前側の下面よりも後側の下面が一段低くなっている。フロントカウリング51の後側にはメーターカバー24が取り付けられている。フロントカウリング51の内側には、上側ヘッドランプ32及び下側ヘッドランプ34を有するヘッドランプユニット(ランプユニット)31が設置されている。
【0013】
一対のサイドカウリング61は、フロントカウリング51から燃料タンク21の前側まで後方に広がると共にフロントカウリング51から前輪16の後側まで下方に広がっている。各サイドカウリング61(アウターミドルカウリング65)の前端側も、フロントカウリング51の前端側と同様に側面視クチバシ状に形成されている。各サイドカウリング61の前縁上側は前端から後斜め上方に傾斜しており、各サイドカウリング61の前縁下側は前端から後斜め下方に傾斜している。フロントカウリング51の後側に一対のサイドカウリング61が連なって、走行風からの空気抵抗を減らす流線形が鞍乗型車両1の車両前部に形成されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、フロントカウリング51の前面中央はフロントセンターカウリング52によって形成され、フロントカウリング51の前面左右両側は一対のフロントサイドカウリング53によって形成されている。フロントカウリング51の前面上側はフロントアッパーカウリング54によって形成され、フロントカウリング51の前面下側はフロントアンダーカウリング55によって形成されている。フロントセンターカウリング52の開口から上側ヘッドランプ32のレンズ面33が前方に露出し、フロントアンダーカウリング55の開口から下側ヘッドランプ34のレンズ面35が前方に露出している。
【0015】
一対のサイドカウリング61の外面はアウターカウリング62によって形成され、一対のサイドカウリング61の内面はインナーカウリング66によって形成されている。アウターカウリング62は、アウターアッパーカウリング63、アウターアンダーカウリング64、アウターミドルカウリング65が組み合わされて形成されている。アウターアッパーカウリング63からはターンシグナルランプ45が側方に突き出している。アウターカウリング62とインナーカウリング66が左右から重ね合わされて各サイドカウリング61が中空に形成され、各サイドカウリング61の内側には電気部品の収容スペースが確保されている。
【0016】
ところで、上記した鞍乗型車両1では乗員を走行風から保護するために、フロントカウリング51の前端が高く位置付けられている。フロントカウリング51の内側には重量物であるヘッドランプユニット31が設置されているが、走行安定性を考慮するとヘッドランプユニット31が低く設置されることが望ましい。一方で、フロントカウリング51によってヘッドランプユニット31の下方が覆われると、ヘッドランプユニット31の放熱性を確保するためにヘッドランプユニット31を低く設置できない。そこで、本実施例ではフロントカウリング51の下面を開放して、ヘッドランプユニット31を低位置に設置可能にしている。
【0017】
図2から図5を参照して、カウリング構造について説明する。図3は本実施例の車両前部を右斜め下方から見た斜視図である。図4は本実施例の車両前部の下面図である。図5図1に示す車両前部をA-A線に沿って切断した断面図である。
【0018】
図2及び図3に示すように、フロントカウリング51の前面には上側ヘッドランプ32のレンズ面33と下側ヘッドランプ34のレンズ面35が縦並びで設置されている。上側ヘッドランプ32のレンズ面33はフロントセンターカウリング52の開口71から前方に露出し、下側ヘッドランプ34のレンズ面35はフロントアンダーカウリング55の開口72から前方に露出している。フロントアンダーカウリング55の上段側の下面73よりも下段側の下面74が後方に位置しており、上側ヘッドランプ32のレンズ面33よりも下側ヘッドランプ34のレンズ面35が後方に引っ込んでいる。
【0019】
フロントアンダーカウリング55の上段側の下面73が後斜め下方に傾斜しており(図1参照)、上段側の下面73には下側ヘッドランプ34の車幅方向外側に一対の通風穴76が形成されている。上段側の下面73が後斜め下方に傾斜していても、一対の通風穴76を通って走行風が後方に抜けることで車両前部に上向きの力が生じ難くなっている。一対の通風穴76の後側から下方に凸部77が突き出して、凸部77によって一対の通風穴76に走行風が入り込み易くなっている。なお、一対の通風穴76は上側ヘッドランプ32の光軸を調整するためにドライバー等の工具が挿し込まれる光軸調整穴としても機能する。
【0020】
フロントアンダーカウリング55の上段側の下面73及び下段側の下面74の間には段差面78が形成され、この段差面78の中央には下側ヘッドランプ34のレンズ面35が位置付けられている。レンズ面35を挟んで段差面78の車幅方向の両側が後方に向かって窪んでおり、段差面78の窪みの奥面には一対の通風穴79が形成されている。一対の通風穴79は一対の通風穴76よりも後方に位置している。フロントアンダーカウリング55の段差面78の窪みに走行風が入り込んでも、一対の通風穴79を通って走行風が後方に抜けることで車両前部に上向きの力が生じ難くなっている。
【0021】
また、一対の通風穴76、79は下側ヘッドランプ34のレンズ面35よりも後方に位置している。フロントアンダーカウリング55の段差面78には下側ヘッドランプ34を側方から覆う側面カバー81が形成されており、この側面カバー81がレンズ面35から一対の通風穴76、79に向かって車幅方向外側に広がるように傾斜している。側面カバー81によって一対の通風穴76、79に向けて走行風がガイドされて、一対の通風穴76、79に走行風が流れ込み易くなる。フロントアンダーカウリング55が走行風から受ける空気抵抗が減って車両前部に上向きの力が生じ難くなっている。
【0022】
図3及び図4に示すように、下面視にてフロントアンダーカウリング55の下段側の下面74の一部が一対の通風穴76に重なっており、前輪16によって跳ね上げられた砂等の異物が一対の通風穴76に入り込み難くなっている。また、下段側の下面74の前縁75が後方に向かって車幅方向中央から車幅方向外側に広がっている。この前縁75の車幅方向内側が一対の通風穴76よりも前方に位置し、前縁75の車幅方向外側が一対の通風穴76よりも後方に位置している。下段側の下面74によって走行風が整流されると共に、斜め下方から一対の通風穴76が視認し易くなって後述する光軸調整作業の作業性が向上する。
【0023】
フロントアンダーカウリング55の下段側の下面74がヘッドランプユニット31の下面37全域を露出させるように切り欠かれ(開放され)、下段側の下面74の切欠き(開放領域)82にはヘッドランプユニット31の下面37全域が入り込んでいる。ヘッドランプユニット31の下方がフロントアンダーカウリング55によって覆われずに、ヘッドランプユニット31の下面37が下方に露出されることで放熱性が高められている。フロントカウリング51の前端側において、重量物であるヘッドランプユニット31がフロントアンダーカウリング55の切欠き82に入り込むことによって車両前部の重心が低くなって走行安定性が向上する。
【0024】
フロントアンダーカウリング55の開口72と切欠き82が連なっており、下側ヘッドランプ34のレンズ面35が低く位置付けられている。フロントアンダーカウリング55には、下側ヘッドランプ34のレンズ面35の下縁に沿って開口72を横断する横断部83が形成されている。横断部83はフロントアンダーカウリング55の開口縁よりも後方に引っ込んでいる。横断部83によってヘッドランプユニット31のレンズ面35とランプハウジング36の段差や部品の界面が隠されることで外観性が向上される(図2参照)。また、フロントアンダーカウリング55の開口72の下側が横断部83に連結されて剛性が高められている。
【0025】
フロントアンダーカウリング55の切欠き82が前方から後方に向かって幅広に形成され、前方から見たときの切欠き82が最も狭くなってヘッドランプユニット31の下端の露出が最小限に抑えられる(図2参照)。フロントアンダーカウリング55の切欠き82の車幅方向の両側縁に一対の固定部84が設けられている。一対の固定部84にはヘッドランプユニット31が固定されて、フロントアンダーカウリング55の切欠き82の車幅方向の両側縁がヘッドランプユニット31を介して連結されている。ヘッドランプユニット31がブリッジとして機能して、フロントアンダーカウリング55の切り欠かれた下面74の剛性が高められている。
【0026】
図5に示すヘッドランプユニット31は、ランプハウジング36の上半部よりも下半部が後方に突き出している。ランプハウジング36の上半部の背面には、右上の角付近に上側光軸調整部41aが設けられ、左側の中央付近に上側光軸調整部41bが設けられている。ランプハウジング36の下半部の背面では、右下の角付近に下側光軸調整部42aが設けられ、左側の中央付近に下側光軸調整部42bが設けられている。上側光軸調整部41a、41bによって上側ヘッドランプ32の光軸が上下左右に調整され、下側光軸調整部42a、42bによって下側ヘッドランプ34の光軸が上下左右に調整される。
【0027】
上側光軸調整部41a、41bは一対の通風穴76を通じて工具(不図示)による操作を受け付けており、下側光軸調整部42a、42bは切欠き82を通じて工具による操作を受け付けている。上側光軸調整部41a、41bの周辺には上側工具ガイド43a、43bが設けられ、上側工具ガイド43a、43bによって工具の挿入方向が一対の通風穴76と上側光軸調整部41a、41bを結ぶツールライン上に規制される。下側光軸調整部42a、42bの周辺には下側工具ガイド44a、44bが設けられ、下側工具ガイド44a、44bによって工具の挿入方向が切欠き82と下側光軸調整部42a、42bを結ぶツールライン上に規制される。
【0028】
一対の通風穴76から工具が挿し込まれることで、上側工具ガイド43a、43bによって工具の先端が上側光軸調整部41a、41bまでガイドされる。切欠き82から工具が挿し込まれることで、下側工具ガイド44a、44bによって工具の先端が下側光軸調整部42a、42bまでガイドされる。これにより、上側ヘッドランプ32及び下側ヘッドランプ34の光軸調整作業が容易になっている。一対の通風穴76は上側光軸調整部41a、41bの光軸調整穴になり、切欠き82は下側光軸調整部42a、42bの光軸調整穴になるため、フロントカウリング51に光軸調整穴を追加する必要がなく鞍乗型車両1の外観性が向上されている。
【0029】
一般的なカウリングは、溶融樹脂を金型に充填する射出成形によって製造されている。金型にはカウリングの穴形状に対向して凸部が形成されており、金型に溶融樹脂が充填されると凸部を避けるように溶融樹脂が分岐し、凸部を回り込んだ溶融樹脂が合流してウェルドラインが生じる。このため、カウリングの穴形状が多くなると、無塗装のカウリングの外観には多くのウェルドラインが現れる。本実施例のフロントアンダーカウリング55の穴形状の数が最小限に抑えられているため、フロントアンダーカウリング55のウェルドラインが少なくなって鞍乗型車両1の外観性が向上されている。
【0030】
図6を参照して、ランプユニットとフロントカウリングの位置関係について説明する。図6図2の車両前部をB-B線に沿って切断した断面図である。
【0031】
図6に示すように、フロントセンターカウリング52とフロントアンダーカウリング55の内側にはヘッドランプユニット31が設置されている。ヘッドランプユニット31のランプハウジング36が段状に形成されており、ランプハウジング36の上段には上側ヘッドランプ32が取り付けられ、ランプハウジング36の下段には下側ヘッドランプ34が取り付けられている。上側ヘッドランプ32のレンズ面33はフロントセンターカウリング52の開口71に入り込み、下側ヘッドランプ34のレンズ面35はフロントアンダーカウリング55の開口72に入り込んでいる。
【0032】
フロントアンダーカウリング55の下面74が切り欠かれ、切欠き82にランプハウジング36の下面37が入り込んでいる。これにより、ランプハウジング36の下面37が前輪16(図1参照)の上方空間に露出する。前輪16の上方空間には走行風が入り込んでくるため、走行風によってヘッドランプユニット31の放熱性が向上されている。ランプハウジング36の下面37はフロントアンダーカウリング55の横断部83よりも前方に突き出しており、下側ヘッドランプ34がランプハウジング36の下面37に下方から覆われている。前輪16に跳ね上げられた異物からランプハウジング36によって下側ヘッドランプ34が保護されている。
【0033】
フロントアンダーカウリング55の切欠き82にランプハウジング36の下面37に入り込むことで、ヘッドランプユニット31が低く位置付けられて車両前部の重心が下げられている。このとき、フロントアンダーカウリング55の切欠き82の高さにランプハウジング36の下面37前側の高さが揃えられ、ランプハウジング36の下面37がフロントアンダーカウリング55の切欠き82を補うように位置付けられている。ランプハウジング36の下面37がフロントアンダーカウリング55として認識されることで意匠性が向上される。また、フロントアンダーカウリング55を切り欠いた分だけ軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0034】
以上、本実施例のカウリング構造によれば、フロントアンダーカウリング55の下面74が切り欠かれることで、ヘッドランプユニット31がフロントアンダーカウリング55の下面74に近づけられても放熱性が十分に確保される。ヘッドランプユニット31を低い位置に設置することで、車両前部の重心が低くなって走行安定性が向上する。
【0035】
なお、本実施例では、フロントカウリングが複数のカウリング部材を組み合わせて形成されているが、フロントカウリングが1つのカウリング部材によって形成されていてもよい。
【0036】
また、本実施例では、アウターカウリングが複数のカウリング部材を組み合わせて形成されているが、アウターカウリングが1つのカウリング部材によって形成されていてもよい。
【0037】
また、本実施例では、ランプユニットに上側ヘッドランプと下側ヘッドランプが設けられているが、ランプユニットには単一のヘッドランプが設けられていてもよい。
【0038】
また、本実施例では、カウリングとしてフロントカウリング、ランプユニットとしてヘッドランプ用のランプユニットを例示したが、カウリングはリアカウリング、ランプユニットはリアコンビランプでもよい。この場合、リアコンビランプを低い位置に設置することで、車両後部の重心が低くなって走行安定性が向上する。
【0039】
また、本実施例では、フロントカウリングの下面が切り欠かれて開放領域が形成されたが、フロントカウリングの下面の開放領域は、ランプユニットの下面を下方に露出可能な形状であればよい。例えば、フロントカウリングの下面が開口されて開放領域が形成されていてもよい。
【0040】
また、本実施例では、フロントカウリングの下面がランプユニットの下面全域を下方に露出させるように切り欠かれているが、フロントカウリングの下面がランプユニットの下面の一部を下方に露出させるように開放されていればよい。このような構成でも、ランプユニットの放熱性が向上されることで、フロントカウリングの下面にランプユニットの下面を近づけて車両前部の重心を下げることができる。
【0041】
また、本実施例では、フロントカウリングの下面の切欠きが前方から後方に向かって幅広に形成されているが、フロントカウリングの開放領域はランプユニットの下面を下方に露出可能であれば、開放領域の形状は特に限定されない。
【0042】
また、本実施例では、フロントカウリングの下面が上下二段に形成されているが、フロントカウリングの下面が段状に形成されていなくてもよい。
【0043】
また、本実施例では、フロントカウリングが、フロントセンターカウリング、一対のフロントサイドカウリング、フロントアッパーカウリング、フロントアンダーカウリングによって形成されたが、フロントカウリングが6つ以上のカウリングによって形成されていてもよい。
【0044】
また、本実施例のカウリング構造は上記の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0045】
以上の通り、第1態様は、ランプユニット(ヘッドランプユニット31)を覆うカウリング(フロントカウリング51)を備えた鞍乗型車両(1)のカウリング構造であって、カウリングの前面がランプユニットのレンズ面(35)を前方に露出させるように開口され、カウリングの下面(74)がランプユニットの下面(37)を下方に露出させるように開放されている。この構成によれば、カウリングの下面が開放されることで、ランプユニットがカウリングの下面に近づけられても放熱性が十分に確保される。ランプユニットを低い位置に設置することで、車両前部の重心が低くなって走行安定性が向上する。
【0046】
第2態様は、第1態様において、カウリングの下面がランプユニットの下面全域を露出させるように開放されており、当該ランプユニットの下面全域がカウリングの開放領域(切欠き82)に入り込んでいる。この構成によれば、カウリングの開放領域にランプユニットの下面全域が入り込むことでランプユニットがより低い位置に設置される。
【0047】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、カウリングの開口とカウリングの開放領域が連なっており、カウリングには、ランプユニットのレンズ面の下縁に沿ってカウリングの開口を横断する横断部(83)が形成されている。この構成によれば、カウリングの開口と開放領域が連なることでランプユニットがより低い位置に設置される。横断部によってランプユニットのレンズ面とランプハウジングの段差や部品の界面が隠されることで外観性が向上される。
【0048】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、カウリングの開放領域の車幅方向の両側縁がランプユニットを介して連結されている。この構成によれば、ランプユニットがブリッジとして機能して、カウリングの開放された下面の剛性が高められている。
【0049】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、カウリングの開放領域が前方から後方に向かって幅広に形成されている。この構成によれば、前方から見たときに開放領域が最も狭くなり、ランプユニットの下端の露出が最小限に抑えられる。
【0050】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0051】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0052】
1 :鞍乗型車両
31:ヘッドランプユニット(ランプユニット)
35:レンズ面(ランプユニットのレンズ面)
37:下面(ランプユニットの下面)
51:フロントカウリング(カウリング)
72:開口(カウリングの開口)
74:下面(カウリングの下面)
82:切欠き(カウリングの切欠き)
図1
図2
図3
図4
図5
図6