(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110038
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
A61B6/03 331
A61B6/03 321D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014348
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢悟
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA35
4C093EC02
4C093EC43
4C093FA13
4C093FA53
4C093FA55
(57)【要約】
【課題】撮影位置の精度を担保し、架台本体と床面との干渉を防止すること。
【解決手段】本実施形態に係るX線CT装置は、被検体が配置可能な固定部開口を有し、X線管を搭載した回転部を回転可能に支持する固定部と、固定部を鉛直方向に移動可能に支持しかつ固定部を鉛直方向に垂直なチルト軸を中心に回動可能に支持する可動部を有し、床面に設けられるスタンドと、固定部開口に対向する第1の開口を有し、固定部と可動部とに接続される第1の円環状フレームと、固定部開口を介して第1の開口に対向する第2の開口を有し、可動部に接続される第2の円環状フレームと、第1の円環状フレームの外周と第2の円環状フレームの外周とを接続する外周フレームと、外周フレームの外側の側面のうち、スタンド側に関する外周フレームの外側の側面を複数の接続点で支持し可動部に接続されるアーム状フレームとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が配置可能な固定部開口を有し、X線管を搭載した回転部を回転可能に支持する固定部と、
前記固定部を鉛直方向に移動可能に支持し、かつ前記固定部を前記鉛直方向に垂直なチルト軸を中心に回動可能に支持する可動部を有し、床面に設けられるスタンドと、
前記固定部開口に対向する第1の開口を有し、前記固定部と前記可動部とに接続される第1の円環状フレームと、
前記固定部開口を介して前記第1の開口に対向する第2の開口を有し、前記可動部に接続される第2の円環状フレームと、
前記第1の円環状フレームの外周と前記第2の円環状フレームの外周とを接続する外周フレームと、
前記外周フレームの外側の側面のうち、スタンド側に関する前記外周フレームの外側の側面を複数の接続点で支持し、前記可動部に接続されたアーム状フレームと、
を備えるX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記スタンドは、前記可動部と前記第1の円環状フレームと前記第2の円環状フレームと前記外周フレームとを介して、前記固定部を片持ち状態で支持し、
前記スタンドは、前記可動部を介して、前記固定部開口の向きを、前記鉛直方向と水平方向との間で回動させる、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記固定部開口が前記床面を向き、かつ前記第1の開口の上方に前記第2の開口が位置している場合、前記第2の円環状フレームは、前記外周フレームを介して前記第1の円環状フレームを前記鉛直方向に引っ張る作用により、前記固定部を支持する前記第1の円環状フレームを支持する、
請求項2に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記アーム状フレームは、前記固定部を支持する前記第1の円環状フレームに接続された前記外周フレームを、前記複数の接続点により挟んで支持する、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記第1の円環状フレームと前記外周フレームとのうち少なくとも一つは、前記複数の接続点を除く部分において複数の肉抜き部分を有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記複数の肉抜き部分は、前記第1の円環状フレームと前記外周フレームとのうち少なくとも一つにおいて、前記スタンド側とは反対側の領域に位置する、
請求項5に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記複数の肉抜き部分は、前記第1の円環状フレームと前記外周フレームとのうち少なくとも一つに設けられた穴に対応する、
請求項5に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記複数の肉抜き部分は、前記複数の接続点に対応する部分の厚みより薄い、
請求項5に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臥位状態または立位状態の被検体を撮影可能なX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT(computed tomography)装置と呼ぶ)が知られている。臥位状態の被検体に対する撮影(以下、臥位撮影と呼ぶ)と立位状態の被検体に対する撮影(以下、立位撮影と呼ぶ)との間において、当該X線CT装置では、撮影系を備えた架台本体を回転させる機構を有する。立位撮影および臥位撮影を実行するために、架台本体は、を片持ちでスタンド(スタンドとも称される)に支持されることがある。
【0003】
このとき、撮影位置の精度の担保と、立位撮影時における架台本体の下端とスタンドとが床面に干渉することを避けるために、架台本体における回転フレームを支持する固定部の変形を抑えることが重要である。すなわち、架台本体の両側を支持するX線CT装置または立位撮影または臥位撮影のみを実行可能なX線CT装置と異なり、片持ちで架台本体を支持するX線CT装置では、固定部の変形を抑えると同時に、立位撮影および臥位撮影のいずれの撮影状態においても、固定部の変形を抑えられる構造が求められる。
【0004】
図8は、架台本体を片持ちで支持する従来の機構において、固定部における回転部の支持面(回転支持面)RSSの傾き、および回転部支持面RSSにおけるスタンドSTとは反対側(回転部支持面RSSの自由端側FE)のたわみの一例を示す図である。
図8において、鉛直方向をZ軸方向、水平方向をX方向、およびZ方向とX方向とに互いに直交する方向をY軸方向としてそれぞれ示されている。
図8に示すように、従来、架台本体を片持ちで支持する機構では、架台本体の自重により、回転支持面RSSが傾くことTL、および回転部支持面RSSの自由端側FEがたわむことBDが想定される。回転部支持面RSSが傾くことTLにより、本来、地面(床面)に対して水平な画像を撮影するつもりが地面に対して傾いた画像が撮影され、撮影位置の精度が悪化することが考えられる。また、回転部支持面RSSは水平を保っていて自由端FEがたわむ場合BDにおいても、架台本体か床面に近づくと、架台本体と床面との間のクリアランス、または架台本体と周囲の部品との間のクリアランスが減少することがある。これらのクリアランスの減少により、架台本体と床面、架台本体と数位の部品との干渉が発生することが考えられる。
【0005】
従来、架台本体を片持ちで支持する機構を有するX線CT装置において、回転支持面RSSの傾き、および回転部支持面RSSの自由端側FEのたわみ(ダレ)BDを低減するために、回転部支持面RSSの底面に補強リブが追加されることがある。このとき、立位撮影時および臥位撮影時の両者で重力がかかる方向にリブが必要になると同時に、架台の大型化、ひいては立位撮影時の撮影ストローク(架台本体の移動範囲)の減少につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/17747号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、撮影位置の精度を担保しつつ、架台本体と床面との干渉を防止可能なX線CT装置を実現することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、固定部と、スタンドと、第1の円環状フレームと、第2の円環状フレームと、外周フレームと、アーム状フレームと、を有する。固定部は、被検体が配置可能な固定部開口を有する。固定部は、X線管を搭載した回転部を回転可能に支持する。スタンドは、前記固定部を鉛直方向に移動可能に支持し、かつ前記固定部を前記鉛直方向に垂直なチルト軸を中心に回動可能に支持する可動部を有する。スタンドは、床面に設けられる。第1の円環状フレームは、前記固定部開口に対向する第1の開口を有する。第1の円環状フレームは、前記固定部と前記可動部とに接続される。第2の円環状フレームは、前記固定部開口を介して前記第1の開口に対向する第2の開口を有する。第2の円環状フレームは、前記可動部に接続される。外周フレームは、前記第1の円環状フレームの外周と前記第2の円環状フレームの外周とを接続する。アーム状フレームは、前記外周フレームの外側の側面のうち、スタンド側に関する前記外周フレームの外側の側面を複数の接続点で支持する。アーム状フレームは、前記可動部に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図。
【
図2】
図2は、実施形態に係り、立位撮影状態において、スタンドと、固定部を支持するリング状フレームと、アーム状フレームとの位置関係の一例を示す斜視図。
【
図3】
図3は、実施形態に係り、
図2において、スタンドと固定部とを取り除いた一例を示す斜視図。
【
図4】
図4は、実施形態に係り、臥位撮影状態において、スタンドと、固定部を支持するリング状フレームと、アーム状フレームとの位置関係の一例を示す斜視図。
【
図5】
図5は、実施形態に係り、
図4において、スタンドと固定部とを取り除いた一例を示す斜視図。
【
図6】
図6は、実施形態の変形例に係り、立位撮影状態において、リング状フレームとアーム状フレームと肉抜き部分との位置関係の一例を示す斜視図。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例に係り、臥位撮影状態において、リング状フレームとアーム状フレームと肉抜き部分との位置関係の一例を示す斜視図。
【
図8】
図8は、架台本体を片持ちで支持する従来の機構において、固定部における回転部の支持面の傾き、および回転部支持面におけるスタンドとは反対側のたわみの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT(computed tomography)装置と呼ぶ)の実施形態について説明する。本実施形態に係るX線CT装置は、被検体を立位で撮影可能な立位撮影状態と、被検体を臥位で撮影可能な臥位撮影状態との間で、架台の姿勢を変更可能な構造を有し、かつ架台本体を片持ちで支持する構造をさらに有する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。
図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置40と、コンソール装置100とを有する。例えば、架台装置10および寝台装置40はCT検査室に設置され、コンソール装置100はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台装置10と寝台装置40とコンソール装置100とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。架台装置10及び寝台装置40は、コンソール装置100を介したユーザからの操作、或いは架台装置10、又は寝台装置40に設けられた操作部を介したユーザからの操作に基づいて動作する。なお、本実施形態では、床面に対し垂直である軸方向すなわち鉛直方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、かつ互いに直交する2方向を、X軸方向およびY軸方向としてそれぞれ定義するものとする。
【0012】
架台装置10は、立位状態または臥位状態の被検体Pに対して、X線CT撮影をするための構成を有するスキャン装置である。コンソール装置100は、架台装置10を制御するコンピュータである。架台装置10は、架台(架台本体、ガントリとも称される)11と、スタンド(支柱とも称される)13と、回転駆動装置23と、架台制御装置25と、を備える。架台11は、被検体Pの撮影に関する撮影系と当該被検体Pを挿入可能な開口15とを有する。スタンド13は、鉛直方向と水平方向との間で開口15の向きを変更可能に、かつ架台11を鉛直方向に沿って移動可能に、当該架台11を支持する。なお、スタンド13は、スタンド部と称されてもよい。
【0013】
架台11は、被検体Pの撮影に関する撮影空間を成す開口15を有する。架台11は、開口15が形成された略円筒形状の構造体である。
図1に示すように、架台11は、開口15を挟んで対向するように配置されたX線管17とX線検出器19とを収容する。X線管17とX線検出器19とは、本実施形態における被検体Pの撮影に関する撮影系に含まれる。なお、撮影系は、さらに、データ収集回路(以下、DAS(Data Acquisition System)と呼ぶ)33、高電圧発生器31、コリメータ、およびウェッジ等を含んでもよい。すなわち、架台11は、被検体Pの撮影に関する撮影系を有する。架台11は、スタンド13に沿って鉛直方向に移動可能に、スタンド13に支持される。また、架台11は、鉛直方向と水平方向との間で開口15の向きを変更可能に、スタンド13に支持される。開口15の向きは、例えば立位撮影状態である場合、回転軸A1に沿った方向に対応する。回転軸A1は、例えば、立位撮影状態である場合は鉛直方向であり、臥位撮影状態である場合は水平方向である。
【0014】
架台11は、アルミ等の金属により形成された固定部12と、立位撮影状態である場合固定部12により回転軸A1回りに軸受等を介して回転可能に支持された回転部21と、固定部12を支持するリング状フレーム(円筒状フレームと称されてもよい)14と、リング状フレーム14を支持するアーム状フレーム(
図1では不図示)とを有する。固定部12は、被検体Pが配置可能な固定部開口を有し、X線管17を搭載した回転部21を回転可能に支持する。固定部開口は、固定部12に設けられた開口15に相当する。以下、開口15に関して、固定部12に設けられた開口に注目する場合、当該開口15を、必要に応じて固定部開口と呼ぶこととする。固定部12は、例えば、メインフレーム、または固定フレームとも称される。また、回転部21は、回転フレーム21と称される。メインフレーム12と回転フレーム21との接触部には環状電極(図示せず)が設けられている。メインフレームの当該接触部には環状電極に摺り接触するように導電性の摺動子(図示せず)が取り付けられている。リング状フレーム14とアーム状フレームとについては後ほど説明する。
【0015】
スタンド13は、架台11を床面から離反して支持する基体である。スタンド13は、例えば、円柱形状や角柱形状等の柱状形状を有する。スタンド13は、例えば、架台11の側面部に取付けられる。スタンド13は、座位または立位姿勢の被検体PをX線CT撮影するため、開口15の回転軸A1が床面に対して略垂直を向いた状態の架台11を、鉛直方向にスライド可能に支持する。具体的には、スタンド13は、例えば、被検体Pを検査する検査室の床面に設けられる。また、スタンド13は、固定部12を鉛直方向に移動可能に支持し、かつ当該固定部12を鉛直方向に垂直なチルト軸を中心に回動可能に支持する可動部133を有する。可動部133については、後ほど説明する。
【0016】
典型的には、スタンド13は、架台11の一つの側部に設けられる。また、スタンド13は柱状形状を有するとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、スタンド13は、架台11の少なくとも一方の側部を支持可能であれば、U字形状等の如何なる形状を有していてもよい。なお、スタンド13は、検査室の床面に設置されることに限定されず、スタンド13の一端が検査室の床面に固定されスタンド13の他端は、検査室の天井に固定されてもよい。
【0017】
スタンド13は、回転軸A1が鉛直方向と水平方向との間で、床面に対して平行する水平軸(以下、チルト軸と呼称する。)回りに回転可能に、架台11を支持する。スタンド13と架台11とは、架台11がチルト軸回りに回転可能に、例えば旋回座軸受等を介して接続される。具体的には、スタンド13には、鉛直方向に沿って直動ガイドが設けられる。直動ガイドに沿って移動可能なブロックには、旋回座軸受けが設けられる。ブロックは、移動制御回路27による制御の下でのモータの駆動により、直動ガイドに沿って移動する。また、旋回座軸受における歯車(内歯)と嵌合する歯車は、所定のトルクを生じさせる各種歯車等を介してモータの回転軸と接続される。旋回座軸受における内歯は、移動制御回路27による制御の下でのモータの駆動により、回転する。これらにより、架台11は、
図1におけるX軸を回転軸として回転可能であって、鉛直方向に沿って移動可能となる。上記直動ガイドおよび旋回座軸受けは、架台11の移動に関する可動部133に相当する。すなわち、可動部133は、スタンド13に搭載される。
【0018】
架台移動機構131は、移動制御回路27による制御の下で、鉛直方向に沿って配置された直動ガイドに沿ってブロックを移動させることで、架台11を移動させる。これにより、架台11は、鉛直方向に沿って、上下に移動が可能となる。なお、鉛直方向に沿った架台11の移動に関する機構は、直動ガイドなどに限定されず例えばラックアンドピニオンなどの既知の機構により実現されてもよい。また、架台移動機構131は、移動制御回路27による制御の下で、旋回座軸受けにおける内歯の回転により、水平方向と鉛直方向との間で架台11を回転させる。なお、架台11を回転させる回転機構は、旋回座軸受けに限定されず、既知の機構により、実現されてもよい。回転機構による架台11の回転により、立位撮影状態と臥位撮影状態との切り替えが可能となる。
【0019】
例えば、被検体Pに対して臥位撮影を行う場合、架台移動機構131は、移動制御回路27による制御の下で、開口15が垂直になるように架台11を回転させる。被検体Pが天板43に横たわった後、寝台駆動装置32により天板43を移動させることで、通常のX線CT装置と同様に被検体Pに対する臥位撮影が可能となる。また、被検体Pに対して立位撮影を行う際は、架台移動機構131における回転機構は、移動制御回路27による制御の下で、開口15が水平になるように架台11を回転させる。被検体Pは開口15の真下で立ち、架台11が上下することで立位撮影が実行される。立位撮影状態と臥位撮影状態とにおける架台11の構造については、後ほど説明する。
【0020】
X線管17は、高電圧発生器31からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。X線管17における管球焦点で発生したX線は、例えばコリメータを介してコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。例えば、X線管17には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。なお、本実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管17とX線検出器19との複数のペアを回転フレーム21に搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
【0021】
X線検出器19は、X線管17から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS33へと出力する。X線検出器19は、例えば、X線管17の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器19は、例えば、当該検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。なお、X線CT装置1には、X線管17とX線検出器19とが一体として被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、およびリング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管17のみが被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)があり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。以下、説明を具体的にするために、本実施形態のX線CT装置1は、第3世代CTを例にとり説明する。
【0022】
また、X線検出器19は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器19は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器19は、光子計数型X線検出器であってもよい。X線検出器19は、X線検出部の一例である。
【0023】
回転フレーム21は、開口15を有し、X線を発生するX線管17が取り付けられる。具体的には、回転フレーム21は、X線管17とX線検出器19とを対向支持し、後述する架台制御装置25によってX線管17とX線検出器19とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム21は、支持軸受を介してメインフレーム12に回転可能に支持される。回転フレーム21は、架台制御装置25による制御の下での回転駆動装置23からの動力を受けて、回転軸A1回りに一定の角速度で回転する。
【0024】
なお、回転フレーム21は、X線管17とX線検出器19とに加えて、高電圧発生器31やDAS33を更に備えて支持する。このような回転フレーム21は、撮影空間をなす開口15が形成された略円筒形状の筐体に収容されている。開口15の中心軸は、回転フレーム21の回転軸A1に一致する。なお、DAS33が生成した検出データは、例えば発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分(例えばメインフレーム12)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置100へと転送される。なお、回転フレーム21から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0025】
回転駆動装置23は、架台制御装置25からの制御に従って回転フレーム21を回転させるための動力を発生する。回転駆動装置23は、架台制御装置25からの駆動信号のデューティ比等に応じた回転速度で駆動することにより、動力を発生する。回転駆動装置23は、例えば、ダイレクトドライブモータやサーボモータ等のモータにより実現される。回転駆動装置23は、例えば、架台11に収容されている。
【0026】
架台制御装置25は、コンソール装置100からの指令に従い、高電圧発生器31、回転駆動装置23、移動制御回路27およびDAS33などを制御する。架台制御装置25は、コンソール装置100や架台装置10に取り付けられた入力インタフェースからの入力信号を受けて、架台装置10の動作制御を行う機能を有する。例えば、架台制御装置25は、入力信号を受けて回転フレーム21を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御などを行う。なお、架台制御装置25は、架台装置10におけるスタンド13に設けられてもよいし、コンソール装置100に設けられても構わない。また、架台制御装置25により実現される機能は、コンソール装置100における処理回路107において、架台制御機能として搭載されてもよい。
【0027】
架台制御装置25は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御装置25は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。
【0028】
当該処理装置は、当該記憶装置に保存されたプログラムを読み出して実現することで、上記機能を実現する。なお、当該記憶装置にプログラムを保存する代わりに、当該処理装置の回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、当該処理装置は、当該回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで上記機能を実現する。
【0029】
操作パネル29等を介したユーザの指示として開口15の向きが鉛直方向である立位撮影状態を実現させる指示が入力されると、移動制御回路27は、架台移動機構131の旋回座軸受けにおける内歯の回転により、水平方向から鉛直方向に架台11を回転させる。また、操作パネル29等を介したユーザの指示として開口15の向きが水平方向である臥位撮影状態を実現させる指示が入力されると、移動制御回路27は、架台移動機構131の旋回座軸受けにおける内歯の回転により、鉛直方向から水平方向に架台11を回転させる。操作パネル29等を介したユーザによりチルト角が入力されると、移動制御回路27は、架台移動機構131の旋回座軸受けにおける内歯の回転により、入力されたチルト角を実現するように、架台11を回転させる。
【0030】
また、臥位撮影時において、操作パネル29等を介したユーザにより架台11の移動指示が入力されると、移動制御回路27は、架台移動機構131のブロックを移動させることで、架台11を水平方向に沿って移動させる。また、立位撮影時において、操作パネル29等を介したユーザにより架台11の移動指示が入力されると、移動制御回路27は、架台移動機構131のブロックを移動させることで、架台11を鉛直方向に沿って移動させる。
【0031】
移動制御回路27は、上述のプロセッサなどにより実現される。移動制御回路27により実行される各種移動制御の処理を実現するプロセッサは、移動制御部に相当する。なお、
図1では、移動制御回路27は、スタンド13に搭載されているが、架台11に搭載されてもよいし、コンソール装置100に搭載されてもよい。また、移動制御回路27により実現される機能は、移動制御機能として、処理回路107に搭載されてもよいし、架台制御装置25に搭載されてもよい。
【0032】
操作パネル29は、スイッチボタン、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、および表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等により実現される。操作パネル29は、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換し、架台制御装置25へ出力する。操作パネル29は、例えば、立位姿勢の被検体Pの撮影に関する立位モード、または臥位姿勢の被検体Pの撮影に関する臥位モードを選択する選択操作を受け付ける。操作パネル29は、例えばスタンド13に設けられる。
【0033】
高電圧発生器31は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管17に印加する高電圧及びX線管17に供給するフィラメント電流を発生する。また、高電圧発生器31は、X線管17が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生器31は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、高電圧発生器31は、回転フレーム21に設けられてもよいし、架台11のメインフレーム12側に設けられても構わない。
【0034】
不図示のウェッジは、X線管17から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジは、X線管17から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管17から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。ウェッジは、例えばウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0035】
不図示のコリメータは、ウェッジを透過したX線をX線照射範囲に絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。
【0036】
DAS33は、X線検出器19の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS33が生成した検出データは、コンソール装置100へと転送される。
【0037】
寝台装置40は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台41と、寝台駆動装置42と、天板43と、天板支持フレーム44とを備えている。基台41は、天板支持フレーム44を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置42は、被検体Pが載置された天板43を天板43の長軸方向に移動させるモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置42は、コンソール装置100による制御に従い、天板43を移動する。天板支持フレーム44の上面に設けられた天板43は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置42は、天板43に加え、天板支持フレーム44を天板43の長軸方向に移動してもよい。
【0038】
コンソール装置100は、メモリ101と、ディスプレイ103と、入力インタフェース105と、処理回路107とを有する。メモリ101と、ディスプレイ103と、入力インタフェース105と、処理回路107との間のデータ通信は、例えば、バス(BUS)を介して行われる。
【0039】
メモリ101は、種々の情報を記憶するHDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ101は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ101は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ101の保存領域は、コンソール装置100内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。また、メモリ101は、本実施形態に係る制御プログラムを記憶する。メモリ101は、プリスキャンや本スキャンにより生成されたボリュームデータなどを記憶する。
【0040】
ディスプレイ103は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ103は、処理回路107によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ103としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。また、ディスプレイ103は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ103は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置100本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。ディスプレイ103は、表示部に相当する。
【0041】
入力インタフェース105は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路107に出力する。例えば、入力インタフェース105は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。入力インタフェース105としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。
【0042】
なお、本実施形態において、入力インタフェース105は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路107へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース105の例に含まれる。また、入力インタフェース105は、入力部の一例である。また、入力インタフェース105は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インタフェース105は、コンソール装置100本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。入力インタフェース105は、入力部に相当する。
【0043】
処理回路107は、入力インタフェース105から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路107は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路107は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117を実行する。
【0044】
システム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117をそれぞれ実行する処理回路107は、システム制御部、前処理部、画像生成部、および画像処理部に相当する。なお、システム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117各々は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによりシステム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117各々を実現するものとしても構わない。
【0045】
処理回路107は、システム制御機能111により、入力インタフェース105を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路107の各機能を制御する。具体的には、システム制御機能111は、メモリ101に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路107内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置1の各部を制御する。例えば、処理回路107は、入力インタフェース105を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路107の各機能を制御する。
【0046】
処理回路107は、前処理機能113により、DAS33から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータを生データ、前処理後のデータを投影データと称する。
【0047】
処理回路107は、再構成機能115により、前処理機能113にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法(FBP法:Filtered Back Projection)や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。すなわち、再構成機能115は、撮影系からの出力に基づいて画像を生成する。再構成機能115は、再構成されたCT画像のデータをメモリ101に格納する。
【0048】
処理回路107は、画像処理機能117により、再構成機能115により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理機能117は、当該CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
【0049】
以上のように構成された本実施形態のX線CT装置1に関して、リング状フレーム14とアーム状フレームとの構造などについて、
図2乃至
図5を用いて説明する。
図2は、立位撮影状態において、スタンド13と、固定部12を支持するリング状フレーム14と、アーム状フレーム16との位置関係の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2において、スタンド13と固定部12とを取り除いた一例を示す斜視図である。また、
図4は、臥位撮影状態において、スタンド13と、固定部12を支持するリング状フレーム14と、アーム状フレーム16との位置関係の一例を示す斜視図である。
図5は、
図4において、スタンド13と固定部12とを取り除いた一例を示す斜視図である。
【0050】
図2および
図4に示すように、固定部12は、リング状フレーム14における凹部に嵌合されている。このとき、開口15は、リング状フレーム14における開口(以下、第1の開口と呼ぶ)147に対向している。
図3および
図5に示すように、リング状フレーム14は、第1の円環状フレーム141と、第2の円環状フレーム143と、外周フレーム145とを有する。
【0051】
第1の円環状フレーム141は、固定部開口15に対向する第1の開口147を有する。
図3および
図5に示すように、第1の開口147の大きさは、固定部開口15よりも大きいが、これに限定されない。例えば、第1の開口147の大きさは、固定部開口15と同程度であってもよい。第1の円環状フレーム141は、固定部12と可動部133とに接続される。これにより、第1の円環状フレーム141は、立位撮影状態において、
図3に示すように固定部12の下面を、鉛直方向上向きに支える。
【0052】
第2の円環状フレーム143は、
図2乃至
図5に示すように、固定部開口15を介して第1の開口147に対向する第2の開口を有する。第2の開口は、第2の円環状フレーム143における内側の空間に相当する。例えば、架台装置10の組み立て時において、固定部12は、第2の開口を介して、リング状フレーム14の凹部に嵌合されて第1の円環状フレーム141に接続される。第2の円環状フレーム143は、
図2乃至
図5に示すように、可動部133に接続される。第2の円環状フレーム143は、第1の円環状フレーム141における外縁に対向する他方の外縁に相当する。
【0053】
外周フレーム145は、
図2乃至
図5に示すように、第1の円環状フレーム141の外周と第2の円環状フレーム143の外周とを接続する。外周フレーム145は、リング状フレーム14の側面を形成するフレームに相当する。説明の都合上、第1の円環状フレーム141と、第2の円環状フレーム143と、外周フレーム145とは、異なる構造として説明したが、リング状フレーム14の製造において、第1の円環状フレーム141と、第2の円環状フレーム143と、外周フレーム145とは一体的に製造されてもよい。
【0054】
図1乃至
図5に示すように、スタンド13は、可動部133と第1の円環状フレーム141と第2の円環状フレーム143と外周フレーム145とを介して、固定部12を片持ち状態で支持する。また、
図2乃至
図5に示すように、スタンド13は、可動部133を介して、固定部開口15の向きを、鉛直方向と水平方向との間で回動させる。また、
図2および
図4に示すように、固定部開口15が床面を向き、かつ第1の開口147の上方に第2の開口が位置している場合、すなわち、立位撮影場である場合、第2の円環状フレーム143は、外周フレーム145を介して第1の円環状フレーム141を鉛直方向に引っ張る作用により、固定部12を支持する第1の円環状フレーム141を支持する。
【0055】
アーム状フレーム16は、
図2乃至
図5に示すように、外周フレーム145の外側の側面のうち、スタンド13側に関する外周フレーム145の外側の側面を、複数の接続点で支持する。例えば、アーム状フレーム16は、スタンド13側に関する外周フレーム145の外側の側面を、連続的に支持する。アーム状フレーム16は、可動部133に接続される。
図2乃至
図5に示すように、アーム状フレーム16は、固定部12を支持する第1の円環状フレーム141に接続された外周フレーム145を、複数の接続点により挟んで支持する。例えば、アーム状フレーム16は、可動部133との接続点を中心として、外周フレーム145を対称的に外側から挟んで支持する。
【0056】
以上に述べた実施形態に係るX線CT装置1は、被検体Pが配置可能な固定部開口15を有し、X線管17を搭載した回転部21を回転可能に支持する固定部12と、当該固定部12を鉛直方向に移動可能に支持し、かつ当該固定部12を鉛直方向に垂直なチルト軸を中心に回動可能に支持する可動部133を有し、床面に設けられるスタンド13と、当該固定部開口15に対向する第1の開口147を有し、当該固定部12と当該可動部133とに接続される第1の円環状フレーム141と、当該固定部開口15を介して第1の開口147に対向する第2の開口を有し、当該可動部133に接続される第2の円環状フレーム143と、当該第1の円環状フレーム141の外周と当該第2の円環状フレーム143の外周とを接続する外周フレーム145と、当該外周フレーム145の外側の側面のうち、スタンド13側に関する外周フレーム145の外側の側面を複数の接続点で支持し、当該可動部133に接続されたアーム状フレーム16と、を有する。
【0057】
また、実施形態に係るX線CT装置1におけるスタンド13は、当該可動部133と当該第1の円環状フレーム141と当該第2の円環状フレーム143と当該外周フレーム145とを介して、固定部12を片持ち状態で支持し、当該スタンド13は、当該可動部133を介して、当該固定部開口15の向きを、鉛直方向と水平方向との間で回動させる。
【0058】
また、実施形態に係るX線CT装置1において、当該固定部開口15が検査室の床面を向き、かつ第1の開口147の上方に第2の開口が位置している場合、当該第2の円環状フレーム143は、当該外周フレーム145を介して当該第1の円環状フレーム141を鉛直方向に引っ張る作用により、固定部12を支持する第1の円環状フレーム141を支持する。また、実施形態に係るX線CT装置1において、アーム状フレーム16は、当該固定部12を支持する当該第1の円環状フレーム141に接続された当該外周フレーム145を、複数の接続点により挟んで支持する。
【0059】
これらのことから、実施形態に係るX線CT装置1によれば、アーム状フレーム16により、固定部12における回転部支持面の傾きを抑制することができる。また、実施形態に係るX線CT装置1によれば、
図2および
図3に示すように、立位撮影状態において、固定部12のスタンド13側と、固定部12のスタンド13側とは反対側との間の中間点で、外周フレーム145を支えることができる。すなわち、実施形態に係るX線CT装置1によれば、立位撮影状態において、可動部133(チルト固定面)とアーム状フレーム16の2つの支持点との少なくとも3点で、リング状フレーム14を支持することで、固定部12における回転部支持面の傾きを抑制することができる。
【0060】
また、実施形態に係るX線CT装置1によれば、
図4および
図5に示すように、臥位撮影状態において、アーム状フレーム16の下方(下部アーム)で固定部12の下側を支えつつ、アーム状フレーム16の上方(上部アーム)で固定部12を引っ張り上げる作用により、固定部12が重力により変形することを防ぐことができる。
【0061】
また、実施形態に係るX線CT装置1によれば、リング状フレーム14により、回転支持面自由端側のたわみの原因となる荷重を、リング状フレーム14の円筒面(外周フレーム145)に沿って逃がすことができ、固定部12のたわみを抑制することができる。さらに、実施形態に係るX線CT装置1によれば、リング状フレーム14の自由端側およびアーム状フレーム16の外側には構造物が不要となり、架台11の厚みを変えることなく、片持ちで支持された架台11の剛性に関する補強を施すことができる。
【0062】
以上のことから、実施形態に係るX線CT装置1によれば、リング状フレーム14とアーム状フレーム16とを用いたフレーム構造により、固定部開口15に垂直な方向に沿った架台11の厚みを変えることなく、当該架台11の変形を抑えることができる。すなわち、実施形態に係るX線CT装置1によれば、リング状フレーム14とアーム状フレーム16との作用により立位撮影状態および臥位撮影状態のいずれの撮影時においても、撮影時の位置精度を担保し、かつ、架台11と検査室床面との干渉の原因となるたわみやダレを抑制することができる。
【0063】
図8に示すように、従来では、回転部支持面RSSが傾くことで大きく変位が発生している。これに対し、本実施形態に係るX線CT装置1では、アーム状フレーム16を追加することで、固定部12の傾きを抑制することができる。例えば、実施形態に係るX線CT装置1によれば、固定部12の変位は、従来に比べて、アーム状フレーム16の作用により1.0%程度まで低減することができる。
【0064】
加えて、本実施形態に係るX線CT装置1では、リング状フレーム14がさらに追加されているため、回転部支持面の自由端側のたわみを抑制することができる。また、本実施形態に係るX線CT装置1によれば、架台11の厚みを増やすことなく架台11の剛性を補強することが可能であり、架台11の省スペース化、立位撮影時のストローク確保(立位時の被検体Pの足元に対する撮影など)が可能となる。
【0065】
(変形例)
本変形例は、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とのうち少なくとも一つを軽量化することにある。具体的には、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とのうち少なくとも一つは、外周フレーム145とアーム状フレーム16とが接続される複数の接続点を除く部分において複数の肉抜き部分を有する。例えば、複数の接続点を除く部分は、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とのうち少なくとも一つにおいて、スタンド13側とは反対側の領域に位置する。換言すれば、複数の接続点を除く部分すなわち肉抜き部分は、リング状フレーム14の自由端側に位置する。
【0066】
複数の肉抜き部分は、例えば、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とのうち少なくとも一つに設けられた穴(抜き穴とも称される)に対応する。なお、複数の肉抜き部分は、複数の接続点に対応する部分の厚みより薄くてもよい。このとき、複数の肉抜き部分は、ラーメン構造、トラス構造、ハニカム構造などの各種肉抜き構造により実現される。なお、肉抜き構造は、ラーメン構造、トラス構造、ハニカム構造などに限定されず他の構造により実現されてもよい。
【0067】
図6は、立位撮影状態において、リング状フレーム14とアーム状フレーム16と肉抜き部分149との位置関係の一例を示す斜視図である。
図7は、臥位撮影状態において、リング状フレーム14とアーム状フレーム16と肉抜き部分149との位置関係の一例を示す斜視図である。
図6および
図7に示す肉抜き部分149は、リング状フレーム14の自由端側に設けられた穴として示されている。
【0068】
以上に述べた実施形態の変形例に係るX線CT装置1において、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とのうち少なくとも一つは、複数の接続点を除く部分において複数の肉抜き部分149を有する。例えば、実施形態の変形例に係るX線CT装置1における複数の肉抜き部分149は、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とのうち少なくとも一つにおいて、スタンド13側とは反対側の領域に位置する。実施形態の変形例に係るX線CT装置1における複数の肉抜き部分149は、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とのうち少なくとも一つに設けられた穴に対応する。なお、実施形態の変形例に係るX線CT装置1における複数の肉抜き部分149は、複数の接続点に対応する部分の厚みより薄くてもよい。
【0069】
これらのことから、実施形態の変形例に係るX線CT装置1によれば、回転部21が固定される面に対応する第1の円環状フレーム141と第2の円環状フレーム143とが、架台11の厚み方向に沿った外周フレーム145を介して接続されることで、外周フレーム145における複数の肉抜き部分149以外の部材を介して可動部133(チルト固定面)へ荷重を伝えることができる。このため、
図6および
図7に示すように、第1の円環状フレーム141と外周フレーム145とに肉抜き構造を設けることでアーム状フレーム16によるリング状フレーム14の複数の支持点より先の構造体(リング状フレーム14の自由端側)において、アーム状フレーム16およびリング状フレーム14の自重により発生する自由端のたわみを、肉抜き部分149による軽量化により、さらに低減することができる。本変形例における他の効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0070】
以上説明した少なくとも1つの実施形態、変形例などによれば、撮影位置の精度を担保しつつ、架台本体11と床面との干渉を防止可能なX線CT装置1を実現することができる。
【0071】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 架台(ガントリ)
12 固定部(メインフレーム、固定フレーム)
13 スタンド(支柱)
14 リング状フレーム
15 開口(固定部開口)
16 アーム状フレーム
17 X線管
19 X線検出器
21 回転フレーム
23 回転駆動装置
25 架台制御装置
27 移動制御回路
29 操作パネル
31 高電圧発生器
33 DAS(Data Acquisition System)
100 コンソール装置
101 メモリ
103 ディスプレイ
105 入力インタフェース
107 処理回路
111 システム制御機能
113 前処理機能
115 再構成機能
117 画像処理機能
131 架台移動機構
133 可動部
141 第1の円環状フレーム
143 第2の円環状フレーム
145 外周フレーム
147 第1の開口
149 肉抜き部分