(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110040
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】導波管接続構造
(51)【国際特許分類】
H01P 1/04 20060101AFI20240807BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01P1/04
H01P3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014351
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 俊也
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 裕三
(72)【発明者】
【氏名】三浦 庸平
【テーマコード(参考)】
5J011
5J014
【Fターム(参考)】
5J011DA04
5J011DA05
5J014DA01
(57)【要約】
【課題】導波管と管体とを容易に接続可能にする導波管接続構造を提供する。
【解決手段】給電用立体回路2の端部に、導波管1に挿入可能な小管部21が設けられ、さらに、小管部21の反自由端側に空洞状のチョーク部2aが設けられ、小管部21の軸方向の長さが、導波管1と給電用立体回路2とのインピーダンスが整合されるように設定され、チョーク部2aの長さが、導波管1の端部に挿入された小管部21と導波管1との隙間からの電波漏れを抑制するように設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管と管体とを接続するための導波管接続構造であって、
前記管体の端部に、前記導波管に挿入可能な小管部が設けられ、さらに、前記小管部の反自由端側に空洞状のチョーク部が設けられ、
前記小管部の軸方向の長さが、前記導波管と前記管体とのインピーダンスが整合されるように設定され、
前記チョーク部の長さが、前記導波管の端部に挿入された前記小管部と前記導波管との隙間からの電波漏れを抑制するように設定されている、
ことを特徴とする導波管接続構造。
【請求項2】
前記導波管の端部に挿入された前記小管部と前記導波管とを固定するための固定手段が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の導波管接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導波管と管体とを接続するための導波管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上や船舶などで使用されるレーダアンテナとして、導波管の前面に複数のスロット(長孔)を形成し、各スロットの傾斜角度、幅、切込み深さ、配置などを調整することで、所定の指向性特性あるいは周波数特性を得るようにした放射導波管を備えたレーダアンテナが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。このレーダアンテナは、複数のスロットが形成された導波管を挟むように、上フレアと下フレアで構成されるホーン状のフレアが配設され、複数の導波管押え金具によって導波管とフレアとが組み付けられている。
【0003】
このようなレーダアンテナにおいて良好なアンテナ特性を得るには、導波管とフレアとが隙間なく密着していることが望ましいが、組付時に導波管とフレアとの間に部分的に隙間が生じてしまうことが避けられない。この結果、多数形成されたスロットの一部の特性が設計通りにならず、アレイアンテナ全体としての水平面指向性が設計値に対して劣る、という問題があった。
【0004】
このため、組付精度によらず、より良好な指向性特性を得ることが可能なレーダアンテナが知られている(例えば、特許文献2等参照。)。このレーダアンテナは、導波管とフレアとの間を介して電波が導波管の背面側に伝搬するのを防止するチョーク部を、導波管に備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-079424号公報
【特許文献2】特開2022-139410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、導波管の端部に給電用導波管(給電用立体回路)を接続する場合、従来、導波管の端部の切削加工やフランジのろう付けなどを要し、追加工のための手間と費用がかさんでいた。また、導波管の端部に給電用同軸導波管変換を接続する場合、部品点数が多く組立工数も増え、しかも、組立精度も要求されるため、同様に、手間と費用がかさんでいた。
【0007】
そこで本発明は、導波管と管体とを容易に接続可能にする導波管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、導波管と管体とを接続するための導波管接続構造であって、前記管体の端部に、前記導波管に挿入可能な小管部が設けられ、さらに、前記小管部の反自由端側に空洞状のチョーク部が設けられ、前記小管部の軸方向の長さが、前記導波管と前記管体とのインピーダンスが整合されるように設定され、前記チョーク部の長さが、前記導波管の端部に挿入された前記小管部と前記導波管との隙間からの電波漏れを抑制するように設定されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の導波管接続構造において、前記導波管の端部に挿入された前記小管部と前記導波管とを固定するための固定手段が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、管体の小管部の自由端側を導波管に挿入するだけで、導波管と管体とを容易かつ迅速に接続することが可能となる。また、管体の小管部の自由端側を導波管に挿入するだけでよいため、特殊な形状の導波管にも管体を容易に接続することが可能となる。しかも、導波管と管体とのインピーダンスが整合されるように小管部の長さが設定され、導波管と小管部との隙間からの電波漏れを抑制するようにチョーク部の長さが設定されているため、導波管と管体とを電気的に適正に接続することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、導波管の端部に挿入された小管部と導波管とを固定するための固定手段が設けられているため、管体と導波管との接続状態を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態に係る導波管接続構造を示す断面図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係るレーダアンテナを示す側面図である。
【
図3】
図1の導波管接続構造のA-A断面図である。
【
図4】
図1の導波管接続構造における小管部と導波管との第1の固定状態を示す断面図である。
【
図5】
図1の導波管接続構造における小管部と導波管との第2の固定状態を示す断面図である。
【
図6】
図1の導波管接続構造による電界分布の計算例を示す図である。
【
図7】
図1の導波管接続構造による反射特性の計算例を示す図である。
【
図8】
図1の導波管接続構造による通過特性の計算例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係る導波管接続構造を示す断面図(導波管1の長手方向に平行な垂直面での断面図)である。この導波管接続構造は、導波管1と管体とを接続するための接続構造であり、この実施の形態では、管体が導波管1に電力を供給するための給電用立体回路2の場合について説明するが、その他の管体であってもよい。
【0015】
また、この実施の形態では、
図2に示すように、導波管1の導波管本体11に耳部12を備え、導波管1がレーダアンテナ10を構成する場合について説明する。このレーダアンテナ10については、公知であるため詳細な説明を省略するが(例えば、特開2022-139410号公報参照。)、概略次のような構成となっている。
【0016】
すなわち、導波管1は、断面が略四角形の筒状の導波管本体11の前面部にスロット11aが複数形成され、この導波管本体11が水平に延びた状態での上下面部に、筒状の耳部12が設けられている。そして、この耳部12に上フレア31と下フレア32が接続される。
【0017】
この実施の形態における導波管接続構造は、このような導波管1の端部(開口端部)に給電用立体回路2を接続する構造であり、給電用立体回路2の端部に、導波管1に挿入可能な小管部21が設けられ、さらに、小管部21の反自由端側に空洞状のチョーク部2aが設けられている。
【0018】
すなわち、
図1に示すように、給電用立体回路2の本体部22から延びる端部・小管部21の外形状が、略四角形で導波管1の導波管本体11の内形状D1よりもやや小さく形成されている。従って、小管部21の内形状(大きさ)D2は、導波管本体11の内形状D1よりも小さく、また、本体部22の内形状D3は、導波管本体11の内形状D1と同等形状となっている。
【0019】
この小管部21の反自由端側、つまり、本体部22側に小管部21を囲むように略四角形の筒部23が形成され、この筒部23と小管部21との間の空間がチョーク部2aとなり、反本体部22側が開口している。換言すると、小管部21の反自由端側が二重管状となってチョーク部2aが設けられている。そして、小管部21の自由端側、つまり、筒部23から突出した小管部21の先端部を導波管本体11に挿入することで、導波管1と給電用立体回路2とが接続される。この際、この実施の形態では、筒部23の端面が導波管1の耳部12の端面に当接することで、小管部21の挿入量が規定される。
【0020】
ここで、小管部21の軸方向の長さは、導波管1と給電用立体回路2とのインピーダンスが整合されるように設定されている。すなわち、上記のように、小管部21の内形状D2が導波管本体11の内形状D1よりも小さくインピーダンスがずれるため、小管部21の長さを所定の長さにすることで、インピーダンスが整合するようになっている。
【0021】
具体的には、チョーク部2aの底部(本体部22側の端部)から小管部21の先端縁までの長さD11が、λg/2(λg:管内波長)の整数倍に設定され、小管部21の基端縁(本体部22との境)から先端縁までの長さが、D11+αに(D11よりもやや長く)設定されている。このように小管部21の長さが設定されることで、小管部21の内部空間がインピーダンスを整合するインピーダンス整合部2bとなっている。すなわち、インピーダンス整合部2bは、小管部21の挿入による(内部の高さ・形状が異なることによる)インピーダンスのずれを整合する空間部となっている。
【0022】
また、チョーク部2aの軸方向の長さは、導波管本体11の端部に挿入された小管部21と導波管本体11との隙間からの電波漏れを防止・抑制するように設定されている。すなわち、導波管本体11に挿入された小管部21と導波管本体11との間には隙間が生じるが、この隙間から電波が外部に漏れ出ないように(電波を絞って漏れ出ないように)、チョーク部2aの長さ・形状が設定されている。具体的には、チョーク部2aの底部から先端縁までの長さD12が、λg/4(λg:管内波長)の奇数倍に設定されている。
【0023】
このような給電用立体回路2は、この実施の形態では、2分割されて組み付けられている。すなわち、導波管1(小管部21)が水平に延びた状態で、導波管1の長手方向に平行な垂直面で2分割され、ボルトによって連結されている。このため、
図3に示すように、導波管本体11に挿入された小管部21が、中央部で分割された状態となっている。ここで、
図3では小管部21の分割面で隙間が生じているが、隙間が生じないように面接触していてもよい。
【0024】
また、導波管本体11の端部に挿入された小管部21と導波管本体11とが、固定手段によって固定されている。この固定手段は、小管部21と導波管本体11とを固定できればどのようなものであってもよいが、この実施の形態では、
図4に示すように、固定手段がボルト4で構成されている。すなわち、導波管本体11の前面部と背面部にボルト挿入孔11bが形成され、小管部21の前面部と背面部に雌ネジ21aが形成されている。そして、それぞれのボルト挿入孔11bにボルト4を挿入して雌ネジ21aに締め付けることで、管部21と導波管本体11とが固定されている。
【0025】
この他、
図5に示すように、テープ5を固定手段とし、導波管1の耳部12と給電用立体回路2の筒部23との境をテープ5で固定するようにしてもよい。
【0026】
このような構成の導波管接続構造によれば、給電用立体回路2の小管部21の自由端側を導波管1の導波管本体11に挿入するだけで、導波管1と給電用立体回路2とを容易かつ迅速に接続することが可能となる。また、給電用立体回路2の小管部21の自由端側を導波管1の導波管本体11に挿入するだけでよいため、特殊な形状の導波管1にも給電用立体回路2を容易に接続することが可能となる。
【0027】
しかも、導波管1と給電用立体回路2とのインピーダンスが整合されるように小管部21の長さが設定され、導波管本体11と小管部21との隙間からの電波漏れを抑制するようにチョーク部2aの長さが設定されているため、導波管1と給電用立体回路2とを電気的に適正に接続することが可能となる。
【0028】
すなわち、
図6の電界分布に示すように、導波管1と給電用立体回路2との接続部周辺から電波が漏れ出るのを防止・抑制することが可能となる。また、
図7、
図8に示すように、使用周波数帯域FUにおいて、反射特性や通過特性を良好にすることが可能となる。
【0029】
また、導波管本体11に挿入された小管部21と導波管1とを固定するための固定手段が設けられているため、給電用立体回路2と導波管1との接続状態を安定させることが可能となる。
【0030】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、給電用立体回路2の本体部22の内形状(大きさ)D3が導波管本体11の内形状D1と同等形状の場合について説明したが、異なる形状・大きさであってもよい。この場合、小管部21の長さ、つまり、インピーダンス整合部2bの長さを調整して、導波管1と給電用立体回路2とのインピーダンスが整合するようにすればよい。また、導波管1の導波管本体11に耳部12を備える場合について説明したが、耳部12を備えない場合にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 導波管
10 レーダアンテナ
11 導波管本体
12 耳部
2 給電用立体回路(管体)
2a チョーク部
2b インピーダンス整合部
21 小管部
22 本体部
23 筒部
4 ボルト(固定手段)
5 テープ(固定手段)