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特開2024-110043インクジェット記録装置、容量取得方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110043
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、容量取得方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240807BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240807BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/14 611
B41J2/015 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014361
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 祐樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB29
2C056EB39
2C056EC07
2C056EC38
2C056FA04
2C057AG44
2C057AG99
2C057AL13
2C057AL40
2C057AR08
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル容量の計測時間を短くすることである。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、インクを吐出する複数のノズルにそれぞれ設けられた複数の圧電素子22と、DC電源部932,933から出力された電力を蓄えて各圧電素子22に出力するキャパシターC2,C4と、DC電源部932によりキャパシターC2,C4をプリチャージした後に、DC電源部933に圧電素子22の容量を計測するための第1の電力を出力させて各圧電素子22の容量を取得する制御部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルにそれぞれ設けられた複数の圧電素子と、
電源部から出力された電力を蓄えて前記各圧電素子に出力するキャパシターと、
前記電源部により前記キャパシターをプリチャージした後に、前記電源部に前記圧電素子の容量を計測するための第1の電力を出力させて前記各圧電素子の容量を取得する制御部と、を備えるインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電源部から非計測用の第2の電力を出力させ前記キャパシターをプリチャージする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第2の電力は画像形成用に出力される電力に対応する請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
さらに前記各圧電素子へ流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電源部に前記第1の電力を出力させて前記電流を検出させ、検出された電流に基づき前記各圧電素子の容量を取得する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、取得した前記容量に基づき前記ノズルまたは前記圧電素子に関する異常を判断する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記キャパシターは複数のキャパシターを含む請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記電流検出部に前記プリチャージした場合のオフセット電流と、前記計測する場合の駆動電流とを検出させる請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
プリチャージ時の前記第2の電力の電圧は、前記第1の電力の電圧と同じである請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御部の制御により、前記圧電素子への前記第2の電力の出力の経路と、前記圧電素子への前記第1の電力及び前記第2の電力の出力を合流する経路とを切り替えるORスイッチを備える請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記制御部の制御により、前記圧電素子への前記第2の電力の出力の経路と、前記圧電素子への前記第1の電力の出力の経路とを切り替える切替スイッチを備える請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記プリチャージを行ったまま、漏れ電流が安定するまでの所定の第1待機時間を待機する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記プリチャージ後に、前記第1の電力の出力をオンしたまま、前記第2の電力の出力をオフする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第2の電力を出力させて前記キャパシターをプリチャージし、ついで前記第1の電力を出力させて当該キャパシターをプリチャージする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記電源部は、
前記第1の電力を出力する第1電源部と、
前記第2の電力を出力する第2電源部と、を備える請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記ノズルの圧電素子、前記第2電源部及び前記キャパシターは、複数のヘッドのそれぞれに対応して設けられ、
前記制御部は、前記複数のヘッドで一括して複数の前記第2電源部に前記第2の電力を出力させて複数の前記キャパシターをプリチャージする請求項14に記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記ノズルの圧電素子、前記第2電源部及び前記キャパシターは、複数のヘッドのそれぞれに設けられ、
前記制御部は、前記ヘッドごとに、前記第2電源部に前記第2の電力を出力させて複数の前記キャパシターをプリチャージ開始することを時間的にずらして行う請求項14に記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
さらに前記各圧電素子へ流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電源部に前記第1の電力を出力させて前記電流を検出させ、検出された電流に基づき前記各圧電素子の容量を取得し、
前記ノズルの圧電素子、前記第2電源部及び前記キャパシターは、複数のヘッドのそれぞれに設けられ、
前記電流検出部及び前記第1電源部は、前記複数のヘッドに共通して設けられている請求項14に記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記第1の電力を出力させてインクを吐出しない非吐出波形の電力を前記圧電素子に出力させて前記電流検出部に駆動電流を検出させる請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
前記キャパシターの容量は、前記圧電素子の容量よりも大きい請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記第1の電力を出力させたまま、駆動電流が安定するまでの所定の第2待機時間を待機する請求項1から19のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項21】
さらに前記各圧電素子へ流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電源部に前記第1の電力を出力させて前記電流を検出させ、検出された電流に基づき前記各圧電素子の容量を取得し、
前記制御部は、前記第2待機時間の待機後に、前記電流検出部に駆動電流を検出させる請求項20に記載のインクジェット記録装置。
【請求項22】
前記制御部は、所定の取得周期及び所定の取得回数を用いて、前記電流検出部に駆動電流を検出させ、検出した複数の駆動電流を平均した駆動電流を取得する請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項23】
前記制御部は、前記第1の電力の電圧を可変に設定する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項24】
インクを吐出する複数のノズルにそれぞれ設けられた複数の圧電素子と、
電源部から出力された電力を蓄えて前記各圧電素子に出力するキャパシターと、を備えるインクジェット記録装置の容量取得方法であって、
前記電源部により前記キャパシターをプリチャージした後に、前記電源部に前記圧電素子の容量を計測するための第1の電力を出力させて前記各圧電素子の容量を取得する工程を含む容量取得方法。
【請求項25】
インクを吐出する複数のノズルにそれぞれ設けられた複数の圧電素子と、
電源部から出力された電力を蓄えて前記各圧電素子に出力するキャパシターと、を備えるインクジェット記録装置のコンピューターを、
前記電源部により前記キャパシターをプリチャージした後に、前記電源部に前記圧電素子の容量を計測するための第1の電力を出力させて前記各圧電素子の容量を取得する制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、容量取得方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクをノズルから吐出して媒体上に着弾させ、画像や構造を記録するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、通常、多数のノズルが用いられ、これらのノズルに吐出不良が生じたりノズル間で吐出状態にむらが生じたりすると記録の質が劣化する。
【0003】
吐出不良や吐出状態のむらの原因の一つとして、インクに圧力を印加するための圧力素子やその駆動回路の不良や劣化がある。これを検出する技術として、ノズルの圧電素子の容量(ノズル容量)を計測して基準値と比較することにより異常を検出するインクジェット記録装置が知られている(特許文献1参照)。シェアモード(せん断モード)のヘッドのノズルの圧電素子は、コンデンサーと等価とみなされる。ノズル容量は、ノズルの圧電素子の電気容量(静電容量)である。ノズル容量は、電源変換部から出力された電圧の電力が安定化キャパシターを介して圧電素子に流れ、その駆動電流を計測し、計測した駆動電流から算出される。
【0004】
また、同様にノズル容量を算出して異常を検出し、異常ノズルの隣接ノズルからのインク吐出により画像を補間するインクジェット記録装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-10748号公報
【特許文献2】特開2019-5945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノズル容量の計測では、実際には、アイドル時のオフセット電流が存在する。このため、「計測電流値」-「オフセット電流」=「ノズルのみの駆動電流」から、ノズル容量を算出しないと精度が低い。上記オフセット電流は一定であるが、回路構成により、駆動電圧印加からオフセット電流が安定するまでに所定の時間がかかる。たとえば、上記のインクジェット記録装置では、一般的に駆動電圧の安定化のため大容量の安定化キャパシターを使用している。図15は、時間に対する電解コンデンサーの漏れ電流を示す図である。
【0007】
安定化キャパシターに、一般的な電解コンデンサーを用いる場合を考える。図15に、一般的な電解コンデンサーが、駆動電圧(DC(Direct Current:直流)電圧)印加オンからの経過の時間[s]に対応する漏れ電流[μA]を示す。図15によれば、駆動電圧オンから漏れ電流[μA]が安定するまでおおよそ1分以上かかることが分かる。
【0008】
この漏れ電流が安定するまでの時間は、待機が必要であり、漏れ電流が安定するとオフセット電流も安定する。このため、この待機時間を「オフセット電流安定待機時間」とする。1つの計測回路にて複数ヘッドを連続計測する際、1ヘッド毎にオフセット電流安定待機時間がかかる。検査対象のヘッドの数が少ない場合は、オフセット電流安定待機時間の待機の影響は小さい。しかし、多い数のヘッドのノズル容量を計測する際は、合計計測時間が多くかかってしまう。
【0009】
本発明の課題は、ノズルの容量の計測時間を短くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のインクジェット記録装置は、
インクを吐出する複数のノズルにそれぞれ設けられた複数の圧電素子と、
電源部から出力された電力を蓄えて前記各圧電素子に出力するキャパシターと、
前記電源部により前記キャパシターをプリチャージした後に、前記電源部に前記圧電素子の容量を計測するための第1の電力を出力させて前記各圧電素子の容量を取得する制御部と、を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記電源部から非計測用の第2の電力を出力させ前記キャパシターをプリチャージする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2の電力は画像形成用に出力される電力に対応する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
さらに前記各圧電素子へ流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電源部に前記第1の電力を出力させて前記電流を検出させ、検出された電流に基づき前記各圧電素子の容量を取得する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、取得した前記容量に基づき前記ノズルまたは前記圧電素子に関する異常を判断する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記キャパシターは複数のキャパシターを含む。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記電流検出部に前記プリチャージした場合のオフセット電流と、前記計測する場合の駆動電流とを検出させる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
プリチャージ時の前記第2の電力の電圧は、前記第1の電力の電圧と同じである。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部の制御により、前記圧電素子への前記第2の電力の出力の経路と、前記圧電素子への前記第1の電力及び前記第2の電力の出力を合流する経路とを切り替えるORスイッチを備える。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部の制御により、前記圧電素子への前記第2の電力の出力の経路と、前記圧電素子への前記第1の電力の出力の経路とを切り替える切替スイッチを備える。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記プリチャージを行ったまま、漏れ電流が安定するまでの所定の第1待機時間を待機する。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記プリチャージ後に、前記第1の電力の出力をオンしたまま、前記第2の電力の出力をオフする。
【0022】
請求項13に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記第2の電力を出力させて前記キャパシターをプリチャージし、ついで前記第1の電力を出力させて当該キャパシターをプリチャージする。
【0023】
請求項14に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記電源部は、
前記第1の電力を出力する第1電源部と、
前記第2の電力を出力する第2電源部と、を備える。
【0024】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載のインクジェット記録装置において、
前記ノズルの圧電素子、前記第2電源部及び前記キャパシターは、複数のヘッドのそれぞれに対応して設けられ、
前記制御部は、前記複数のヘッドで一括して複数の前記第2電源部に前記第2の電力を出力させて複数の前記キャパシターをプリチャージする。
【0025】
請求項16に記載の発明は、請求項14に記載のインクジェット記録装置において、
前記ノズルの圧電素子、前記第2電源部及び前記キャパシターは、複数のヘッドのそれぞれに設けられ、
前記制御部は、前記ヘッドごとに、前記第2電源部に前記第2の電力を出力させて複数の前記キャパシターをプリチャージ開始することを時間的にずらして行う。
【0026】
請求項17に記載の発明は、請求項14に記載のインクジェット記録装置において、
さらに前記各圧電素子へ流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電源部に前記第1の電力を出力させて前記電流を検出させ、検出された電流に基づき前記各圧電素子の容量を取得し、
前記ノズルの圧電素子、前記第2電源部及び前記キャパシターは、複数のヘッドのそれぞれに設けられ、
前記電流検出部及び前記第1電源部は、前記複数のヘッドに共通して設けられている。
【0027】
請求項18に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記第1の電力を出力させてインクを吐出しない非吐出波形の電力を前記圧電素子に出力させて前記電流検出部に駆動電流を検出させる。
【0028】
請求項19に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記キャパシターの容量は、前記圧電素子の容量よりも大きい。
【0029】
請求項20に記載の発明は、請求項1から19のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記第1の電力を出力させたまま、駆動電流が安定するまでの所定の第2待機時間を待機する。
【0030】
請求項21に記載の発明は、請求項20に記載のインクジェット記録装置において、
さらに前記各圧電素子へ流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電源部に前記第1の電力を出力させて前記電流を検出させ、検出された電流に基づき前記各圧電素子の容量を取得し、
前記制御部は、前記第2待機時間の待機後に、前記電流検出部に駆動電流を検出させる。
【0031】
請求項22に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、所定の取得周期及び所定の取得回数を用いて、前記電流検出部に駆動電流を検出させ、検出した複数の駆動電流を平均した駆動電流を取得する。
【0032】
請求項23に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記第1の電力の電圧を可変に設定する。
【0033】
請求項24に記載の発明は、
インクを吐出する複数のノズルにそれぞれ設けられた複数の圧電素子と、
電源部から出力された電力を蓄えて前記各圧電素子に出力するキャパシターと、を備えるインクジェット記録装置の容量取得方法であって、
前記電源部により前記キャパシターをプリチャージした後に、前記電源部に前記圧電素子の容量を計測するための第1の電力を出力させて前記各圧電素子の容量を取得する工程を含む。
【0034】
請求項25に記載の発明のプログラムは、
インクを吐出する複数のノズルにそれぞれ設けられた複数の圧電素子と、
電源部から出力された電力を蓄えて前記各圧電素子に出力するキャパシターと、を備えるインクジェット記録装置のコンピューターを、
前記電源部により前記キャパシターをプリチャージした後に、前記電源部に前記圧電素子の容量を計測するための第1の電力を出力させて前記各圧電素子の容量を取得する制御部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ノズルの容量の計測時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施の形態のインクジェット記録装置を示す全体斜視図である。
図2】ヘッドユニットのノズル面を模式的に示す図である。
図3】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態のヘッド制御手段及び画像記録部の概略回路図である。
図5】電力供給部及びヘッド駆動部の電流及び電圧の変化を示す図である。
図6】ノズルのみの駆動電流の計算方法を示す図である。
図7】ヘッド制御手段及び画像記録部の一例を示すブロック図である。
図8】定期検査処理を示すフローチャートである。
図9】実施例の第1のノズル容量計測処理を示すフローチャートである。
図10】比較例の第2のノズル容量計測処理を示すフローチャートである。
図11】(a)は、第1のノズル容量計測処理におけるオフセット電流安定待機時間及びノズル容量計測時間を示す図である。(b)は、第2のノズル容量計測処理におけるオフセット電流安定待機時間及びノズル容量計測時間を示す図である。
図12】印刷異常時検査処理を示すフローチャートである。
図13】第2の変形例のヘッド制御手段及び画像記録部を示すブロック図である。
図14】第3のノズル容量計測処理におけるオフセット電流安定待機時間及びノズル容量計測時間を示す図である。
図15】時間に対する電解コンデンサーの漏れ電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付図面を参照して本発明に係る実施の形態、第1~第3の変形例を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0038】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態のインクジェット記録装置1を示す全体斜視図である。
【0039】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、搬送部10と、画像記録部20と、クリーニング部30と、制御部40と、読取部60と、を備える。
【0040】
搬送部10は、駆動ローラー11と、搬送ベルト12と、従動ローラー13と、搬送モーター14と、押圧ローラー15と、剥がしローラー16と、を有する。無端状の搬送ベルト12は、駆動ローラー11及び従動ローラー13の間で架け渡され、搬送モーター14の駆動によって駆動ローラー11が回転動作するのに従って周回移動する。搬送ベルト12は、搬送ベルト12の外周面を搬送面として画像記録部20に対して所定の搬送方向に相対移動させる。これにより、搬送ベルト12は、搬送面上に載置された記録媒体Pを当該搬送方向に移動させる搬送動作を行う。搬送ベルト12としては、駆動ローラー11及び従動ローラー13との接触面で柔軟に屈曲し、かつ確実に記録媒体Pを支持する材質のものが用いられる。搬送ベルト12は、例えば、ゴムなどの樹脂製のベルトや、スチールベルトなどが挙げられる。搬送ベルト12は、記録媒体Pが吸着される材質及び/又は構成を有することで、より記録媒体Pを安定して搬送ベルト12に載置可能とすることができる。この場合、画像記録部20よりも搬送方向について下流側で記録媒体Pを搬送ベルト12から剥離させるための構成が更に設けられていてもよい。
【0041】
従動ローラー13は、搬送ベルト12の移動に伴って回転する。記録媒体Pとしては、特には限られないが、ここでは搬送方向に連続した布帛などが用いられ、記録媒体P上に適宜な間隔で記録された複数の画像は、図示略の後処理装置で乾燥され、また、巻取り若しくは振り落としがなされ、及び/又は各々裁断される。
【0042】
搬送モーター14は、制御部40からの制御信号に応じた回転速度で駆動ローラー11を回転動作させる。搬送モーター14は、駆動ローラー11を通常の搬送方向とは反対方向に逆回転させることも可能となっている。これにより、搬送ベルト12は、駆動ローラー11の回転速度に応じた搬送速度で記録媒体Pを搬送する。
【0043】
押圧ローラー15は、搬送ベルト12の載置面に供給される記録媒体Pを当該載置面に対して押圧することでしわなどの載置面からの浮きを除去する。剥がしローラー16は、搬送ベルト12に吸着された状態で搬送されてきた記録媒体Pを所定の圧力で引っ張ることで、記録媒体Pを搬送面から引き剥がして後処理装置へ送る。
【0044】
クリーニング部30は、画像記録部20のノズル24(図3)やノズル開口24a(図2)が設けられた面(ノズル面210(図2))のクリーニング(清掃)を行う。ノズル面210は、搬送面上に載置された記録媒体Pと対向する面である。クリーニング部30は、例えば、不織布やブレード部材などを有し、ノズル面210に付着固化したインクや異物などを払拭する。不織布やブレード部材には、必要に応じて洗浄液などが含有、付着され得る。また、クリーニング部30は、ノズル24内のインクを吐出させることで当該ノズル内の異物や気泡などを取り除くクリーニングの実行時に吐出されたインクを回収するためのインクトレイなどを有していてもよい。クリーニング部30は、クリーニング動作を行う場合に画像記録部20と相対移動されてノズル面210と対向配置される。
【0045】
制御部40は、インクジェット記録装置1の各部の動作を統括制御する。
【0046】
読取部60は、撮像センサーなどを備え、記録媒体Pの表面(特に、記録された記録対象画像)を撮像して読み取る動作を行う。読取部60は、画像記録部20の搬送方向について下流側かつ記録媒体Pが剥がしローラー16により搬送ベルト12から剥がされる位置よりも上流側で記録媒体Pの表面の撮像を行い、画像記録部20により記録された画像を読み取ることが可能となっている。
【0047】
画像記録部20は、インクをノズル24(図3)から吐出して記録媒体Pの上面に着弾(付与)させることで画像を記録(形成)する記録動作を行う。記録媒体Pの上面は、搬送面に接する側とは反対側の面である。画像記録部20は、複数、ここでは、4つのヘッドユニット21Y,21M,21C,21K(以降、一部又は全部をまとめてヘッドユニット21とも記す)を有する。ヘッドユニット21からは、図示略のインク貯留部から供給される各々異なる色のインク、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、黒色の各色のインクが吐出される。ヘッドユニット21は、いずれも搬送面に平行な面内で記録媒体Pの搬送方向と交差(直交)する幅方向に記録媒体Pの所定の記録可能幅に亘ってノズル24が設けられている。ノズル24により、インクが吐出可能となっている。
【0048】
図2は、ヘッドユニット21Kのノズル面を模式的に示す図である。図2を参照してヘッドユニット21Kを説明する。なお、ヘッドユニット21C,21M,21Yは、ヘッドユニット21Kと同一の構成を有するので、これらについては説明を省略する。
【0049】
ヘッドユニット21Kには、底面に所定の間隔(ノズル間隔)でノズル開口24a(1つのみ符号を明示)が配列されたヘッド211が複数(例えば、16個)設けられている。ヘッド211は、インク吐出用のヘッドであり、例えば360dpi(dot per inch)に対応して約70.6μm間隔で配列されている。2個のヘッド211が組になり、各ヘッド211のノズル開口24aが幅方向について交互に配置される。このため、ヘッド211により、合わせて720dpi(ノズル間隔は約35.3μm)の記録解像度による画像記録が可能となっている。このヘッド211の組が更に千鳥格子状に配置されることで、幅方向に均一な間隔で上述の記録可能幅に亘ってノズル開口24aが配列されたラインヘッドを構成している。
【0050】
ヘッドユニット21Kは、ワンパス方式で画像を記録する。ワンパス方式は、画像記録動作の間、ノズル面が搬送面と対向した状態で固定され、記録媒体Pの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔で順次インクを吐出していく方式である。搬送方向についての記録解像度は、ノズル24からの吐出周波数と搬送速度などによって定まるが、上述の720dpiと等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
図3は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、インクジェット記録装置1は、上述の搬送部10、画像記録部20、クリーニング部30、制御部40及び読取部60に加えて、記憶部50と、通信部70と、操作表示部80と、ヘッド制御手段90と、を備える。
【0052】
制御部40は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御するシステム制御部である。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などを備える。CPUは、各種演算処理を行い、制御動作に係る制御プログラムの種々の命令を実行する。制御動作には、記録対象画像の画像データの画像処理、記録対象画像の画像データに応じて搬送部10及び画像記録部20の動作(各圧電素子22への駆動電圧の印加)を制御して記録媒体に画像を記録させる処理や、各圧電素子22及び/又はノズル24の動作異常を判断する処理(図8の定期検査処理)、検出結果に基づいてクリーニング部30を動作させる処理などが含まれる。RAMは、CPUに作業用のメモリー空間を提供し、一次データを記憶する。RAMには、フラッシュメモリーなどの書き込み更新可能な不揮発性メモリーが含まれていてもよい。
【0053】
記憶部50は、各種制御プログラム、設定データや記録対象の画像データ及び当該画像データの画像記録用加工データを記憶する。各種制御プログラム及び設定データは、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーやHDD(Hard Disk Drive)などに記憶されるのが好ましい。また、記録対象の画像に係るデータは、DRAMなどの大容量高速処理が可能な揮発性メモリーなどに記憶されるのが好ましい。記憶部50は、これら不揮発性メモリー及びDRAMを有する。制御プログラムには、後述する定期検査処理を実行するための定期検査プログラムP1が含まれる。記録対象の画像に係るデータは、例えば、通信部70を介して外部機器から入力された画像データが含まれる。設定データには、テストチャートの画像データ51や、ノズル24の圧電素子22の電気容量(以下、ノズル容量とする)の計測の際に用いられる容量検査パラメーター52が含まれる。また、記憶部50には、計測後のノズル容量の値である容量履歴データ53も記憶される。
【0054】
ここで、容量検査パラメーター52の一例を次表Iに挙げる。
【表1】
【0055】
第1待機時間としてのオフセット電流安定待機時間[s]は、キャパシターC2,C4(図4)にプリチャージしてオフセット電流を安定化させるための待機時間である。プリチャージは、ヘッド211のノズル24のノズル容量計測前のキャパシターC2,C4のチャージである。オフセット電流取得周期[μs]は、オフセット電流の取得周期である。オフセット電流取得回数[回]は、オフセット電流の取得回数である。
【0056】
駆動電圧[V]は、ノズル容量計測時の駆動電圧(電圧VH2)である。電圧VH2は、ノズル24からインクを吐出させない程度(ノズル24内でインク液面が振動する)の電圧(非吐出電圧)である。駆動周期[μs]は、ノズル24への駆動電圧の印加のオン/オフの周期である。後述する駆動周波数[kHz]は、1/駆動周期である。駆動回数[回]は、ノズル24への駆動電圧の印加のオン/オフの回数である。
【0057】
第2待機時間としての駆動電流安定待機時間[ms]は、ヘッド211のノズル24に電圧VH2を印加した駆動電流の安定化に必要な待機時間である。駆動電流取得周期[μs]は、駆動電流の取得周期である。駆動電流取得回数[回]は、駆動電流の取得回数である。
【0058】
搬送部10は、記録媒体Pを画像記録部20による画像記録位置に供給し、画像が記録された記録媒体Pを排出する。搬送部10は、画像記録位置において、画像記録部20に対して適切な位置関係で記録媒体Pを移動、保持させる。搬送部10は、上述のように、搬送モーター14を有し、駆動ローラー11を所定の速度で回転動作させることで搬送ベルト12上の記録媒体を移動させる。
【0059】
画像記録部20は、画像記録位置において、搬送部10により供給された記録媒体上にCMYK各色のインクを吐出させて画像を記録する。画像記録部20の各ヘッド211には、複数のノズル24と、複数の圧電素子22と、複数のヘッド駆動部23と、を有する。
各ノズル24は、インクを吐出する。各圧電素子22は、配列された複数のノズル24に各々連通し、当該複数のノズル24にインクを供給するインク流路の途中(圧力室)を変形させてそれぞれインクに圧力変化を与える。各ヘッド駆動部23は、電圧を印加して、印加電圧により圧電素子22の変形動作を行わせる。圧電素子22は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)など周知の材質のものが用いられ、変形モードは、例えばシェアモードとするが、特には限られない。
【0060】
クリーニング部30は、上述のように、不織布やブレードなどを有し、ノズル面210に対してこれらを相対移動させる駆動部を有する。また、クリーニング部30を搬送方向に移動させる機構を有し、複数のヘッドユニット21のノズル面210に対して不織布、ブレードやインクトレイを共通に利用可能とすることができる。
【0061】
読取部60は、撮像センサーを有し、制御部40の制御により適切なタイミングで記録媒体Pの表面を撮像し、撮像データを制御部40に出力する。撮像センサーとしては、例えば、RGB3色で撮像可能なラインセンサーが用いられ、記録媒体Pの搬送に応じて撮像を繰り返すことで二次元画像を取得することが可能である。
【0062】
通信部70は、インクジェット記録装置1と外部との間でのデータの送受信を所定の通信規格に従って制御する。通信部70には、例えば、LAN(Local Area Network)によるTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)接続を制御するネットワークカードなどが含まれる。通信部70を介してインクジェット記録装置1と通信を行う外部機器としては、プリントサーバー、各種PC(Personal Computer)や携帯端末などのコンピューターが挙げられる。
【0063】
操作表示部80は、操作部と、表示部と、を有する。操作部は、ユーザーなど外部からの入力操作を受け付けて、受け付けた操作内容を電気信号として制御部40に出力する。表示部は、制御部40の制御に基づいてインクジェット記録装置1のステータス、警告表示やユーザーの入力操作に係るメニューなどを表示させる。表示部としては、例えば、液晶ディスプレイが含まれる。この液晶ディスプレイにタッチセンサーが重ねて設けられてタッチパネルとして動作させることで、操作部として外部からの入力操作を受け付ける。操作表示部80としては、その他の構成、LED(Light Emitting Diode)ランプや押しボタンスイッチなどが設けられていてもよく、これらが併用されてもよい。また、操作表示部80は、表示部により警告表示が行われる場合などに、合わせてビープ音の発生や音声出力が可能であってもよい。
【0064】
ヘッド制御手段90は、制御部40の指示に従って、画像記録部20のヘッド211などの制御を行う。ヘッド制御手段90は、ヘッド制御部91と、電流検出部92と、電力供給部93と、を備える。ヘッド制御部91は、CPU、RAM、FPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成され、画像記録部20のヘッド211、電力供給部93などの制御を行う制御部である。ヘッド制御部91は、例えば、ヘッド211の圧電素子22の変形制御をするためのヘッド制御デジタル信号を生成してヘッド駆動部23に送信して制御する。ヘッド制御デジタル信号は、画像データや、後述する駆動電圧パターン制御信号が含まれる。また、ヘッド制御部91は、電力供給部93のDC電源部933、ORスイッチ934(ともに図4)のオン/オフ制御信号を生成して電力供給部93に送信して制御する。また、ヘッド制御部91は、電流検出部92で計測されたDC電流の電流値を電流検出部92から受信する。
【0065】
電流検出部92は、非吐出電圧である電圧VH2を圧電素子22に印加する経路に流れる電流の電流値を計測する。電流検出部92としては、所定の抵抗値の抵抗素子が回路に直列に挿入され、当該抵抗素子における降下電圧に基づいて電流値(出力電流)を計測する方式のものが用いられる。また、電流検出部92は、計測した降下電圧を電流値に変換する電流計測IC(Integrated Circuit)として、IV(電流/電圧)変換部と、オペアンプと、ADC(Analog to Digital Converter)と、を有する。オペアンプは、計測した電流値を信号増幅する。ADCは、計測したアナログの電流値をデジタルの電流値に変換する。
【0066】
電力供給部93は、インクジェット記録装置1の各部に必要な電力を供給する電力供給部(図示略)のうち、ヘッド211のヘッド駆動部23などに電力供給を行う。電力供給部93は、DC電源部931と、第2電源部としてのDC電源部932と、第1電源部としてのDC電源部933(図4)と、を有する。DC電源部931は、外部電源から電力供給を受け、電源電力をDCの駆動電圧としての電圧VH1の電力に変換してヘッド駆動部23に出力する電流変換部である。外部電源からの電力は、例えば、DC電圧の24[V]である。電圧VH1は、ノズル24からインクを吐出させる電圧(吐出電圧)である。DC電源部932は、外部電源から電力供給を受け、電源電力を通常時(計測時以外)のDCの駆動電圧としての電圧VH2の電力に変換してヘッド駆動部23に出力する電流変換部である。DC電源部933は、外部電源から電力供給を受け、電源電力を電流計測時のDCの駆動電圧の電力としての電圧VH2に変換して電流検出部92に出力する電流変換部である。例えば、DC電源部931,932に、各種周知のDC/DC変換部を用い、DC電源部933に、LDO(Low DropOut)を用いるものとするが、これに限定されるものではない。
【0067】
このように、電力供給部93は、画像記録部20のヘッド駆動部23に対し、圧電素子22の駆動電圧の印加に係る2種類のDCの電圧VH1、VH2で電力を出力(供給)可能である。
【0068】
つぎに、図4を参照して、本実施の形態のインクジェット記録装置1における圧電素子22への電圧印加に係る回路構成について説明する。図4は、本実施の形態のヘッド制御手段90及び画像記録部20の概略回路図である。
【0069】
図4では、一つのノズル24に対応する圧電素子22及びヘッド駆動部23への電力供給に係る構成を代表的に示す。しかし、複数のノズル24に対応する複数の圧電素子22及びヘッド駆動部23に対して共通に電力供給を行い、各ヘッド駆動部23において各々個別に圧電素子22への供給電圧を切り替えることが可能である。
【0070】
ヘッド制御手段90において、外部電源から入力された電力は、DC電源部931,932,933により電圧VH1、VH2に変換されて各々出力される。電圧VH2の出力は2系統並列に設けられており、一方は、直接(電流検出部92の抵抗素子を経ない短絡回路で)ヘッド駆動部23に入力される。他方は、計測回路として電流検出部92及びORスイッチ934を介してヘッド駆動部23に入力される。ORスイッチ934のオフ時に、DC電源部932からの出力電圧がヘッド駆動部23へ出力される。ORスイッチ934のオン時に、DC電源部932からの出力電圧と、DC電源部933から出力され電流検出部92を介する出力電圧と、の両方がヘッド駆動部23へ出力される。
【0071】
なお、DC電源部932からの電圧VH2の出力が一本であって、当該一本の出力から短絡回路と計測回路とに分岐されてもよい。また、この場合には、分離部分にORスイッチ934が設けられ、図4でORスイッチ934が設けられている部分では、単純に短絡回路と計測回路が合流するだけであってもよい。
【0072】
電圧VH2は、DC電源部932からヘッド駆動部23のスイッチ233に入力される。DC電源部932とORスイッチ934との合流点との間の経路上には、抵抗R2の一端が接続され、他端が接地されている。また、当該経路上の抵抗R2よりもORスイッチ934側に、キャパシターC2の一端が接続され、他端が接地されている。さらに、ORスイッチ934との合流点とスイッチ233との間の経路上には、抵抗R4の一端が接続され、他端が接地されている。また、当該経路上の抵抗R4よりもスイッチ233側に、キャパシターC4の一端が接続され、他端が接地されている。
【0073】
電圧VH1は、ヘッド駆動部23のスイッチ234に入力される。DC電源部931とスイッチ234との間の経路上には、抵抗R1の一端が接続され、他端が接地されている。また、当該経路上の抵抗R1よりもスイッチ234側に、キャパシターC1の一端が接続され、他端が接地されている。さらに、当該経路上のキャパシターC1よりもスイッチ234側に、抵抗R3の一端が接続され、他端が接地されている。さらに、当該経路上の抵抗R3よりもスイッチ234側に、キャパシターC3の一端が接続され、他端が接地されている。
【0074】
キャパシターC1~C4の電気容量は、全ての圧電素子22に対して電力供給可能である。すなわち、キャパシターC1~C4の電気容量は、電力を供給してもキャパシターC1~C4が駆動動作に問題を生じるほど低下しない程度に圧電素子22のノズル容量よりも十分に大きい。また、抵抗R1,R2及びキャパシターC1,C2が無い構成としてもよい。
【0075】
ドライバー回路231には、ヘッド制御部91などから、画像データの信号、駆動電圧パターン制御信号及び所定のクロック信号が入力され、これらの信号に応じてスイッチ232,233及び234のうちいずれか一つがオンされる。当該オンにより(切替期間にいずれもオンされない期間が挟まれるように構成することもできる)、いずれかの電圧が圧電素子22の一端に供給される。スイッチ232がオンされた場合には、圧電素子22に蓄えられていた電荷が接地部に放電される。圧電素子22の他端は接地されている。これにより圧電素子22には、供給された電圧が印加されることになる。つまり、電圧VH1が圧電素子22に印加された場合に、ノズル24からインクが吐出される。電圧VH2が圧電素子22に印加された場合に、ノズル24からインクが吐出されない。
【0076】
図5は、電力供給部93及びヘッド駆動部23の電流及び電圧の変化を示す図である。なお、ここでは、定性的な説明のために電流及び電圧の過渡的状況を誇張して示しており、定量的に特定の代表的な値に応じた波形を意図していない。
【0077】
圧電素子22は容量性素子である。スイッチ233又はスイッチ234がオンされる。すると、供給される電圧及び圧電素子22のノズル容量に応じて、DC電源部931~933から圧電素子22の一端へ電位差に応じて電流Ia(>0)が流れる。すなわち、圧電素子22の一端の電圧VaがDC電源部931~933により出力される電圧Vbと等しくなるまで一時的に圧電素子22の一端への電流Iaが流れる。また、スイッチ232がオンされると、圧電素子22の一端から接地面へ当該一端の電位に応じた一時的な電流Ia(<0)が流れる。すなわち、圧電素子22の一端が接地電圧になるまでの一時的な電流Iaが流れる。
【0078】
スイッチ233又はスイッチ234がオンされた(接続がなされた)場合、キャパシターC1,C3、又はキャパシターC2,C4、及びDC電源部931,932又は933から圧電素子22に電流が流れる。電流の大きさは、抵抗R1又はR2から圧電素子22にかけての回路抵抗に応じた(すなわち、これらを時定数とする)大きさとなる。抵抗R1又はR2から圧電素子22にかけての回路抵抗は、キャパシターC1~C4と圧電素子22の電圧差、抵抗R1~R4、及びスイッチ233又は234のオン抵抗などを含む。
【0079】
DC電源部931,932又は933からは、出力インピーダンスに応じた出力電流が生じ、残りの電流がキャパシターC1,C3、又はキャパシターC2,C4からのものである。回路抵抗は、出力インピーダンスと比較して十分に小さいので、スイッチ233又は234がオンされた直後の大きな電流Iaの大部分は、キャパシターC1,C3、又はキャパシターC2,C4から流れる電流となる。キャパシターC1,C3、又はキャパシターC2,C4からの放電がなされると、放電量に応じてキャパシターC1,C3、又はキャパシターC2,C4の電圧が僅かに低下する。
【0080】
圧電素子22に駆動電圧が印加された後、スイッチ233及び234がオフされる場合(接続が切断されている場合)を考える。この場合、キャパシターC1,C3、又はキャパシターC2,C4の放電分の電荷がDC電源部931,932又は933により再充電されることになる。特に、電流検出部92を介してキャパシターC2,C4を充電する場合には、電流検出部92の抵抗素子が他の回路抵抗などと比較して大きい。このため、これらに応じた時定数(上述の圧電素子22への放電に係る時定数より大きい)により再充電時に電流検出部92により検出される出力電流Ibがより小さくかつより長い時間継続することになる。すなわち、スイッチ233は、キャパシターC2,C4と圧電素子22との間の接続状態を切り替える。スイッチ233のオンオフに応じてキャパシターC2,C4の充放電が切り替えられることによるDC電源部933の供給電力の変動成分(直流成分を含む)は、キャパシターC2,C4の電気容量と電流検出部92の抵抗素子の抵抗値とを含む。キャパシターC2,C4の電気容量と電流検出部92の抵抗素子の抵抗値とに応じて定まる所定の低周波数帯(直流成分を含む)が電流検出部92により検出されることになる。
【0081】
このような構成により、圧電素子22への突入電流による一時的な電圧Vbの低下、すなわち、圧電素子22に印加される電圧Vaの低下が低減される。また、DC電源部933から電流値の時間変化の小さい出力電流Ib(平均電流値Ir)が生じることになる。このような用途に必要なキャパシターC1~C4の電気容量は、通常、全ての圧電素子22に対して同時に駆動電圧を印加する場合に、インク吐出性能に問題を生じさせるほどの電圧Vbの低下を生じさせない程度である。すなわち、当該電気容量は、圧電素子22のノズル容量と圧電素子22の数の積に対して更に1~2桁以上大きい値である。
【0082】
なお、画像記録動作時に電流検出部92の抵抗素子を介して電圧VH2を多数の圧電素子22に一度に出力しようとすると、圧電素子22の数に応じて抵抗素子での発熱量が増大する。また、電圧低下の影響を低減させるためのキャパシターC2,C4の電気容量を更に大きくする必要が生じる。したがって、ORスイッチ934を設けることで、電流の計測が不要な場合には、電流検出部92をバイパスさせる経路に切り替えて駆動電圧を出力するのが好ましい。
【0083】
次に、本実施の形態のインクジェット記録装置1におけるインク吐出に係る動作不良のノズル24(動作不良ノズルとする)の検出動作について説明する。動作不良ノズル24には、ノズル24からのインク吐出を個別に回復不能なものと、クリーニング動作や回復動作によってインク吐出を各々回復可能なものとがある。回復不能なものは、圧電素子22の劣化や駆動回路の断線などである。回復可能なものは、ノズル24の詰まりやインク流路への気泡や異物の混入などである。
【0084】
インクジェット記録装置1では、制御部40は、ドライバー回路231に所定のテスト画像(吐出不良検査画像)の画像データを出力する。これにより、制御部40は、記録媒体P上の余白などに定期的に吐出不良検査画像を記録させ、読取部60により読み取られた当該テスト画像の異常を検出する。そして、制御部40は、各ノズル24からのインク吐出不良の有無を判断(検出)する。所定のテストチャートとしては、いずれのノズル24からインクが吐出されたかを識別可能に各ノズル24により各々別個の線分を記録させたラダーチャートなどが広く用いられる。この場合、上述の動作不良の原因によらず、一律にインク吐出不良のあるノズル24が検出される。
【0085】
一方で、本実施の形態のインクジェット記録装置1では、上述の電力供給部93の電流検出部92で出力電流Ib(供給電力に応じた代表値)を計測(取得)することにより、圧電素子22及びその駆動回路(電気系)に異常があるか否かの検出を行う。圧電素子22及び駆動回路の異常を検出する場合には、選択された圧電素子22に対し、スイッチ234をオフにした状態で駆動電圧パターン制御信号に応じて所定の切替周期でスイッチ232,233を交互にオンさせる。そして、各ノズル24に対し、周期的に非吐出電圧である電圧VH2の駆動電圧の印加有無を切り替える。これにより、選択されている圧電素子22の充放電が繰り返される(非吐出波形である所定の駆動電圧パターン)。オンオフの切替周期は、圧電素子22の充放電が十分になされる時間以上とされる。すなわち、スイッチ233,234のオン抵抗などの回路抵抗及び圧電素子22のノズル容量によって下限時間が定まる。回路抵抗は、圧電素子22への印加波形の鈍りが圧電素子22の動作に問題を及ぼさない範囲内となるように回路が構成される。一方で、オンオフの切替周期は、キャパシターC4の充電が終了せず、圧電素子22への放電量とバランスして適切な充電電流が継続的に流れる状況が好ましい。例えば、0.1nF~1.0nF程度の圧電素子22に対して15V程度の電圧を印加する場合を考える。この場合に、測定可能な出力電流Ibの電流値を得るのに適切なオンオフの駆動周波数fとして10kHz程度が定められる。
【0086】
具体的には、圧電素子22のノズル容量Cpに対して電圧「0」から電圧V1まで充電するまでの仕事E=Cp・V1/2を毎秒スイッチ233のオンオフの駆動周波数fの回数実行する。仕事Eは、圧電素子22の電圧V1における静電エネルギーである。このため、1秒当たりの仕事量、すなわち、DC電源部933の供給電力量は、E・f=∫(Ib・Vb)dt~Ir・V1となる。よって、圧電素子22のノズル容量Cp=2・Ir/(V1・f)~2・Ir/(V0・f)となる。そして、ノズル容量Cpは、既知の印加電圧V0(すなわち、電圧VH2)及び駆動周波数f、並びに計測された出力電流Ibの平均電流値Irに応じて求められる。2つの圧電素子22をシェアモードで同時に変形動作させる構成の場合、圧電素子22のノズル容量Cpが2倍であるとしてノズル容量の算出を行えばよい。
【0087】
実際には、計測される出力電流Ibの電流値はリップルの影響を受けて若干(±ε)変動する(ここでいう±εは、正負に変動範囲が同一であることを意味しない)。このため、複数回出力電流Ibを計測して平均することなどにより平均電流値Irが求められる。電圧VH2及び駆動周波数fが固定値である場合には、実際にノズル容量Cpを計算せずとも、平均電流値Irがノズル容量Cpに対応する値となる。
【0088】
ここで、キャパシターC2,C4の電圧Vbが変化すると、キャパシターC2,C4の充放電速度(電流)も変化する。キャパシターC2,C4の充電の速さには、キャパシターC4の電気容量及び電流検出部92の内部抵抗(抵抗素子の抵抗値)などの回路抵抗が影響する。また、キャパシターC2,C4の放電には、上述の圧電素子22の充電に係る各構成が影響する。電圧Vbが高過ぎると、放電速度と比較して充電速度が遅くなり、電圧Vbが徐々に低下していく。電圧Vbが低すぎると、放電速度と比較して充電速度が速くなり、電圧Vbが徐々に上昇していく。駆動周波数fでのオンオフ動作が連続してなされる場合、キャパシターC2,C4の電圧Vbは、設定された印加電圧V0よりも僅かに低下する。そして、電圧Vbは、放電と充電の速度がバランスする値(平衡値の電圧V1)で上下に周期変動する形で安定する。印加電圧V0から電圧V1への低下幅は、キャパシターC1~C4の電気容量に応じて圧電素子22への印加電圧(すなわち、変形動作)への影響を無視可能に小さくすることができる。一方、当該電気容量に応じて、微小な低下によりキャパシターC2,C4の充放電速度への影響が大きくなる。したがって、充電電流の平均電流値Irの計測を行う場合には、駆動周波数fでの電流検出部92を経由した検査対象の圧電素子22への電圧VH2印加開始後、駆動電流安定待機時間trmsを待機する。駆動電流安定待機時間trmsは、検査対象の圧電素子22への電圧VH2印加開始から、電圧Vbが平衡値の電圧V1に十分漸近する(放電速度と充電速度が基準差以下になる)までの待機時間である。つまり、駆動電流安定待機時間trmsは、駆動電流が落ち着くまでの待機時間である。駆動電流安定待機時間trmsの待機後に圧電素子22のノズル容量の計測を行うことで、計測精度が向上する。
【0089】
駆動電流安定待機時間trmsは、実際に毎回電圧Vbが電圧V1に十分に近づいて変動が所定の基準範囲内(例えば、数%程度)になるまで待機してもよい。また、駆動電流安定待機時間trmsは、予め数式を保持し、設定された各パラメーターの値に基づいて(すなわち、RC回路による上記電気容量及び抵抗値の積)算出されてもよい。あるいは、駆動電流安定待機時間trmsに係る計測値を書き込み保持させることができる。駆動電流安定待機時間trmsは、概ねキャパシターC2,C4の充放電に係る応答速度、すなわち、時定数を定めるキャパシターC2,C4の電気容量と電流検出部92の抵抗素子の積に応じて定まる固定値である。したがって、出荷前検査やヘッドユニット21の交換装着などに応じて行われる初期設定時に、駆動電流安定待機時間を計測して記憶部50などに記憶させておいてもよい。ここでは、駆動電流安定待機時間を容量検査パラメーター52として記憶するものとする。また、キャパシターC2,C4を可変容量として時定数を変更させることも可能であるが、電気容量を低下させて時定数を低下させると、出力電流Ibの計測時に平均電流値Irからのばらつき±εも大きくなる。この場合には、出力電流Ibの計測回数を増加させて平均値の精度を向上させるなどが望ましい。また、電流検出部92の抵抗素子の抵抗値を可変とすることもできるが、電流検出部92の検出精度を低下させない必要がある。この場合、抵抗値を「0」又は「0」に十分近づけることが可能であれば、上述の短絡回路を設ける代わりに抵抗値を変更することで実質上短絡回路とすることができる。
【0090】
ここで、圧電素子22のノズル容量Cpの算出に用いる電流値について説明する。図6は、ノズル24のみの駆動電流の計算方法を示す図である。
【0091】
図6に、グラフG1,G2,G3を示す。グラフG1は、ノズル24の駆動時(DC電源部933の電圧VH2の出力電力の非吐出のオンオフ切替の制御時)の時間に対する電流を示す。グラフG2は、ノズル24のアイドル時(DC電源部933の電圧VH2の出力電力のオンオフ切替の非制御時)の時間に対する電流を示す。グラフG3は、時間に対するノズル24のみの駆動電流を示す。ノズル24のアイドル時の電流は、オフセット電流である。オフセット電流は、DC電源部933の定常時の負荷電流のことである。オフセット電流は、例えば、抵抗R2,R4が影響し、IC消費電流、コンデンサー(キャパシターC2,C4)の漏れ電流を含む。圧電素子22のノズル容量Cpは、実際には、グラフG3のノズル24のみの駆動電流を用いて計算される。
【0092】
まず、ORスイッチ934がオフされ、DC電源部932,933に電圧VH2の電力を出力させ、DC電源部932の出力電力によりキャパシターC2,C4をプリチャージする。そして、ORスイッチ934をオンし、DC電源部932の電圧VH2の電力をオフして、電流検出部92により、グラフG2のオフセット電流としてのノズル24のアイドル時の電流値があらかじめ計測される。そして、ノズル24の非吐出の駆動時に、DC電源部933に電圧VH2の電力を出力させたまま、スイッチ232,233をスイッチングさせる。そして、電流検出部92により、グラフG1のノズル24の駆動時の電流値(平均電流値Ir)が計測される。そして、計測されたノズル24の駆動時の電流値(平均電流値Ir)からノズル24のアイドル時の電流値が減算される。これにより、グラフG3のノズル24のみの駆動電流が算出される。例えば、グラフG2のオフセット電流の電流値が7.5[mA]であり、グラフG1の駆動電流が得られたとする。すると、グラフG3に示すように、ノズル24のみの駆動電流の電流値は、45[μA]となる。
【0093】
また、図15に示すように、キャパシターC2,C4について、上記のオフセット電流計測前のプリチャージ時に、漏れ電流が小さく安定化するまで待機することが好ましい。例えば、キャパシターC2,C4が、例えば、数十~数百[μF]のアルミ電解コンデンサーであるものとする。この場合に、電圧VH2のオンから漏れ電流が安定するまで、1~2分かかる。ここでは、上述したように、例えば、オフセット電流安定待機時間が60[s]に設定され、その待機がされるものとする。
【0094】
そして、計測されたノズル24のみの駆動電流と、各測定条件と、を用いて、下記式(1)により、ノズル容量Cpが算出される。
Cp=Aave/(VH2×f) …(1)
ただし、Cp:ノズル24の圧電素子22のノズル容量、VH2:駆動電圧(印加電圧)[V]、Aave:ノズル24のみの駆動電流、f:駆動周波数[kHz]である。
【0095】
例えば、電圧VH2=15[V]、ノズル24のみの駆動電流Aave=45[μA]、駆動周波数f=10[kHz]である場合に、ノズル容量Cp=300[pF]となる。なお、圧電素子22のノズル容量Cpは、電圧VH2とノズル24の温度とに比例する特性を一般的には持つ、つまり、異常検出の判定基準となるノズル容量Cp[pF]は固定値である必要があるため、計測時の電圧VH2は固定値である必要がある。例えば、正常時のノズル容量300[pF]の場合に、その判定閾値は300±50[pF]である。電圧VH2=15[V]、駆動周波数f=10[kHz]は、固定条件であり、各ノズル24に対応する圧電素子22の駆動電流(μAオーダー)が計測される。
【0096】
このようにして算出されるノズル24のノズル容量Cpが所定の基準値(基準範囲)と比較して非常に小さい(「0」を含む)場合、圧電素子22に不良があることが分かる。圧電素子22の不良は、DC電源部933から圧電素子22まで(両端を含む)の断線などである。一方で、ノズル容量Cpが基準範囲と比較して非常に大きい場合には、DC電源部933から圧電素子22までに短絡などの通電状態不良があることが分かる。通電状態不良は、例えば、変形や発熱の影響による電極の保護膜の劣化などによる。
【0097】
また、算出された圧電素子22のノズル容量Cpは、容量履歴データ53に記憶された過去の初期値や算出履歴(計時変化)である基準値と比較される。基準値から外れた場合には、当該圧電素子22に劣化などが生じていると判断される。基準値としては、出荷前検査などで予め計測、保持された初期範囲であってもよいし、最初の所定数回の平均電流値Irに基づいて得られた値を平均したものとすることもできる。基準値は、記憶部50などに記憶される。また、基準値から外れる前でも、履歴に基づいてまもなく(例えば、所定の基準日数内に)基準値から外れることが想定される場合には、注意表示などを行わせてもよい。
【0098】
これらノズル容量Cpの異常から検出される断線、短絡や劣化などの電気系の異常(動作異常)は、個別には回復不能な異常である。異常検出されたノズル24が、不良ノズルリストに回復不能な異常ノズルとして記憶される。あるいは、ヘッド駆動部23により共通に駆動される複数のノズル24が同様に劣化している場合には、印加電圧V0を変更する設定を行うことで全体の調整がなされてもよい。個別に回復不能な異常ノズルがある又は新たに生じた場合には、インクジェット記録装置1では、電気系の動作異常を有する圧電素子22がノズル24(異常ノズル)の駆動を中止させる。このノズル24のインク吐出量を当該ノズル24と隣り合って配置されているノズル24(隣接ノズル)により補完的にインク吐出動作を行わせる。このように各ノズル24の吐出設定を行って欠補完設定として記憶させる。なお、本実施の形態のインクジェット記録装置1では、ノズル開口24aが二次元配置されており、あるノズルに対して隣り合うノズル24が幅方向について両端を除いて3~4個存在する。しかし、欠補完に係る補完的なインク吐出動作をこれら全ての隣り合うノズル24により行わせる必要はなく、少なくとも一部の隣り合うノズル24によって欠補完の設定がなされればよい。
【0099】
一方、上述のテストチャートを用いて吐出不良が検出されたノズル24(吐出不良ノズル)のうち、回復不能(異常ノズル)ではないものについては、回復可能と判断される。回復可能なノズル24が生じた場合には、そのノズル24の数が少ないうちは、上述の欠補完の設定を行う。そして、回復可能なノズル24の数がある程度増えてきたり、欠補完が困難となったりなどの所定の条件を満たした場合に、クリーニング部30を動作させてノズル面210のクリーニングを行う。欠補完が困難な場合は、例えば、隣り合って配置される複数のノズル24がいずれも吐出不良となった場合などである。あるいは、一つでも回復可能なノズル24が生じた場合には、欠補完の設定を行わずに直ちにノズル面210のクリーニングを行ってもよい。
【0100】
図7は、ヘッド制御手段90及び画像記録部20の一例を示すブロック図である。ヘッド制御手段90は、DC電源部932から非吐出の電圧VH2の電源電力を圧電素子22に出力する駆動系は、ヘッド211の数に応じた複数経路あるものとする。図7に示すように、例えば、ヘッド制御手段90は、非吐出の電圧VH2の電源電力を圧電素子22に出力する駆動系の経路が2ラインある例を考える。図7では、吐出の電圧VH1の電源電力を圧電素子22に出力する駆動系の経路は省略している。
【0101】
図7の例では、圧電素子群としての圧電素子22a,22bに対して複数(所定グループ数)のヘッド駆動部23a,23bが設けられている。ヘッド制御手段90において、圧電素子22a,22bに対してそれぞれ設けられたDC電源部932a,932bは、圧電素子22a,22bに電圧VH2の出力を行う。一方で、DC電源部933は、電流検出部92を介して電圧VH2をORスイッチ934a,934bへ出力している。
【0102】
DC電源部932aからヘッド駆動部23aまでの間のラインには、順に、一端が接地された抵抗R2a,キャパシターC2aの各他端と、ORスイッチ934aと、一端が接地された抵抗R4a、キャパシターC4aの各他端と、が接続されている。DC電源部932bからヘッド駆動部23bまでの間のラインには、順に、一端が接地された抵抗R2b,キャパシターC2bの各他端と、ORスイッチ934bと、一端が接地された抵抗R4b、キャパシターC4bの各他端と、が接続されている。
【0103】
ORスイッチ934a,934bは、ヘッド制御部91からの各々独立したオン/オフ制御信号により切り替え可能となっている。ORスイッチ934aは、オフ時に、DC電源部932aからヘッド駆動部23aまで導通する経路に切り替えられる。ORスイッチ934aは、オン時に、DC電源部932aからヘッド駆動部23aまでの経路と、DC電源部933からヘッド駆動部23aまでの経路と、を合流する経路の導通に切り替えられる。ORスイッチ934bも、ORスイッチ934aと同様に、DC電源部932b,933からヘッド駆動部23bまでの導通する経路が切り替えられる。また、DC電源部932a,932bは、ヘッド制御部91からの各々独立したオン/オフ制御信号により電圧VH2の電源電力出力のオン/オフが切り替え可能となっている。
【0104】
このように、DC電源部932a~圧電素子22aに対応するヘッド211と、DC電源部932b~圧電素子22bに対応するヘッド211とは、異なる。ただし、DC電源部933及び電流検出部92は、複数のヘッド211で共通である。
【0105】
なお、以下、説明を簡単にするために、基本的に、図4のヘッド制御手段90及び画像記録部20の構成に基づいて、説明を行うものとする。
【0106】
これらの異常検出動作に係る処理は、インクジェット記録装置1の起動時(電力供給開始時)や、画像記録動作の実行中に定期的に行われる。
【0107】
連続した記録媒体P上に続けて複数の記録対象画像が記録される場合に、例えば、各記録対象画像の間隙に、非吐出による各ノズル24の平均電流値Irの計測がなされる。そして、平均電流値Irに基づくノズル24のみの駆動電流に応じて、各ノズル24のノズル容量Cpが計測され異常が検出される。ただし、一つの間隙で全てのノズル24のノズル容量を計測する必要はない。複数個の間隙の間に実行された複数回の電流計測により、全ての圧電素子22の電流計測がなされ、その全てのノズル24のノズル容量が算出されてもよい。
【0108】
記録媒体P上の複数の記録対象画像の間隙には、吐出によるノズル24の異常検出(吐出不要ノズルの検出)のためのテストチャートが形成される構成としてもよい。
【0109】
毎回全てのノズル24のノズル容量を識別可能とせず、複数のノズル24(圧電素子22)のグループ内にインク吐出不良や動作異常があるか否かを検出可能としてもよい。グループ内に容量の異常があると検出された場合に、当該グループに属する複数のノズル24について各々検査を行い、動作異常を生じている圧電素子22を同定することとしてもよい。
【0110】
つぎに、図8図11(b)を参照して、インクジェット記録装置1で実行するノズル容量の計測に関する実施例及び比較例の処理を説明する。図8は、定期検査処理を示すフローチャートである。図9は、実施例の第1のノズル容量計測処理を示すフローチャートである。図10は、比較例の第2のノズル容量計測処理を示すフローチャートである。図11(a)は、第1のノズル容量計測処理におけるオフセット電流安定待機時間及びノズル容量計測時間を示す図である。図11(b)は、第2のノズル容量計測処理におけるオフセット電流安定待機時間及びノズル容量計測時間を示す図である。
【0111】
図8図9を参照して、インクジェット記録装置1で実行される定期検査処理を説明する。定期検査処理は、定期的なタイミングで画像記録部20の全てのヘッド211のノズルの異常を検査する処理である。定期的なタイミングは、インクジェット記録装置1の起動時、所定の間隔で画像の記録時のヘッド211を間隙が通過中、画像の記録に係るプリントジョブが完了した待機状態時などにおける所定の時間ごとの定期的なタイミングである。なお、この動作異常検出処理は、上述のテストチャートを用いた吐出不良ノズルの検出に係る処理と組み合わされて呼び出され、実行されてもよい。
【0112】
インクジェット記録装置1において、定期的なタイミングになったことをトリガーとして、制御部40は、記憶部50に記憶された定期検査プログラムP1に従い、定期検査処理を実行する。
【0113】
図8に示すように、まず、制御部40は、全てのヘッド211について非吐出時のノズル容量を計測し異常を判断する第1のノズル容量計測処理を実行する(ステップS11)。ステップS11の第1のノズル容量計測処理は、詳細に後述する。そして、制御部40は、第1のノズル容量計測処理のノズル容量の異常の判断結果に基づき、いずれかのノズル24のノズル容量に異常があるか否かを判別する(ステップS12)。
【0114】
異常がない場合(ステップS12;NO)、定期検査処理が終了する。異常がある場合(ステップS12;YES)、制御部40は、異常のノズル24及びそのヘッド211におけるノズル容量の異常情報を操作表示部80に表示する(ステップS13)。そして、制御部40は、異常のヘッド211の交換待ちを行い(ステップS14)、定期検査処理が終了する。ステップS14において、インクジェット記録装置1の保守員は、表示された異常情報を視認して、異常のあるノズル24のヘッド211を正常なものに交換する。
【0115】
図9を参照して、ステップS11の全てのヘッド211についての第1のノズル容量計測処理を説明する。まず、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、画像記録部20の全てのヘッド211のDC電源部931からの通常用(画像形成用)の電圧VH1の電力出力をオフする(ステップS21)。そして、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、全てのヘッド211のDC電源部932,933からの通常用、計測用の電圧VH2の電力出力をオンする(ステップS22)。ステップS22により、全てのヘッド211の全てのノズル24に対応するキャパシターC2,C4が、DC電源部932の電圧VH2の電力によりプリチャージ開始される。
【0116】
そして、制御部40は、記憶部50に記憶された容量検査パラメーター52からオフセット電流安定待機時間を読み出し、オフセット電流安定待機時間の待機を行う(ステップS23)。ステップS23により、全てのヘッド211の全てのノズル24に対応するキャパシターC2,C4の漏れ電流が安定化される。そして、制御部40は、記憶部50に記憶されたオフセット電流安定待機時間以外の容量検査パラメーター52の各情報を設定する(ステップS24)。
【0117】
そして、制御部40は、全てのヘッド211のうち、ステップS25で未選択の検査対象の1つのヘッド211を選択する(ステップS25)。ここでは、検査対象は全てのヘッド211である。そして、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、選択中のヘッド211に対応するORスイッチ934をオンする(ステップS26)。ステップS26により、選択中のヘッド211の全てのノズル24に対応してDC電源部932,933から圧電素子22に電圧VH2の電力が出力される。
【0118】
そして、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、選択中のヘッド211のDC電源部932からの通常用の電圧VH2の出力をオフする(ステップS27)。ステップS27により、選択中のヘッド211の全てのノズル24において、DC電源部933の電圧VH2の出力電力により圧電素子22へオフセット電流が流れる。そして、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、選択中のヘッド211の全てのノズル24の電流検出部92でオフセット電流を検出して取得する(ステップS28)。ステップS28では、選択中のヘッド211の全てのノズル24のオフセット電流が取得される。このとき、ステップS24で設定された容量検査パラメーターのオフセット電流取得周期[μs]、オフセット電流取得回数[回]に基づき、オフセット電流が複数計測される。さらに、複数(オフセット電流取得回数[回])のオフセット電流の平均値が算出されてオフセット電流として取得される。
【0119】
そして、制御部40は、選択中のヘッド211の全てのノズル24のうち、ステップS29で未選択の検査対象の1つのノズル24を選択する(ステップS29)。ここでは、検査対象のノズル24は、選択中のヘッド211の全てのノズル24である。制御部40は、ヘッド制御部91を介して、選択中のノズル24に対応するDC電源部933を電圧VH2でオンしたまま、当該ノズル24を非吐出波形の駆動電圧パターン制御信号で駆動する(ステップS30)。
【0120】
そして、制御部40は、ステップS24で設定された容量検査パラメーターの駆動電流安定待機時間trmsを待機する(ステップS31)。そして、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、選択中のノズル24に流れる非吐出の駆動電流を計測して電流値を取得する(ステップS32)。ステップS32では、ステップS24で設定された容量検査パラメーターの駆動電流取得周期[μs]、駆動電流取得回数[回]に基づき、駆動電流が複数計測される。さらに、計測された複数(駆動電流取得回数[回])の駆動電流の平均値が算出されて駆動電流として取得される。
【0121】
そして、制御部40は、ステップS29で選択中のヘッド211の全ての検査対象のノズル24が選択されたか否かを判別する(ステップS33)。全てのノズル24が選択されていない場合(ステップS33;NO)、ステップS29に移行される。全てのノズル24が選択された場合(ステップS33;YES)、制御部40は、ステップS25で全ての検査対象のヘッド211が選択されたか否かを判別する(ステップS34)。全てのヘッド211が選択されていない場合(ステップS34;NO)、ステップS25に移行される。
【0122】
全てのヘッド211が選択された場合(ステップS34;YES)、制御部40は、全てのヘッド211の全てのノズル24について、ノズル容量Cpを算出する(ステップS35)。ステップS35では、ステップS32で取得された駆動電流からステップS28で取得されたオフセット電流が減算されてノズル24のみの駆動電流Aaveが算出される。さらに、ステップS24で設定された容量検査パラメーターの駆動電圧[V]、駆動電流取得周期[μs]が読み出される。駆動電圧[V]と、駆動電流取得周期[μs]に対応する駆動周波数fと、ノズル24のみの駆動電流Aaveとから、式(1)によりノズル容量Cpが算出されて取得される。
【0123】
そして、制御部40は、全てのヘッド211の全てのノズル24について、ノズル容量Cpによる異常があるか否かを判断し(ステップS36)、第1のノズル容量計測処理を終了する。ステップS36では、ステップS32で算出されたノズル容量Cpが、記憶部50に記憶されたノズル容量の基準値と比較され、比較結果により異常があるか否かが判断される。
【0124】
ここで、図10を参照して、第1のノズル容量計測処理の比較例としての第2のノズル容量計測処理を説明する。第2のノズル容量計測処理は、第1のノズル容量計測処理と同様の処理であるが、オフセット電流安定待機時間の待機のタイミングが異なる。
【0125】
まず、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、全てのヘッド211のDC電源部931,932からの通常用の電圧VH1,VH2の出力をオフする(ステップS40)。そして、制御部40は、ヘッド制御部91を介して、全てのヘッド211のDC電源部933からの計測用の電圧VH2の出力をオンする(ステップS41)。ステップS42~S54は、それぞれ、図9の第1のノズル容量計測処理のS24~26,S23,S28~S36と同様である。
【0126】
第1のノズル容量計測処理では、ステップS23のオフセット電流安定待機時間の待機は、ステップS25~S34のヘッド211の選択のループに含まれていない。一方、第2のノズル容量計測処理では、ステップS45のオフセット電流安定待機時間の待機は、ステップS43~S58のヘッド211の選択のループに含まれている。図11(a)に、第1のノズル容量計測処理のオフセット電流安定待機時間と、ノズル容量計測時間と、を示した。図11(b)に、第2のノズル容量計測処理のオフセット電流安定待機時間と、ノズル容量計測時間と、を示した。図11(a)、図11(b)では、4つのヘッド211(ヘッドh1~h4とする)のノズル24のノズル容量Cpを計測する場合であるものとする。また、説明を簡単にするために、オフセット電流安定待機時間の長さと、ノズル容量計測時間の長さとは、同じものとして図示したが実際には異なる。
【0127】
図11(a)の第1のノズル容量計測処理では、ステップS23のオフセット電流安定待機時間の待機は、ヘッドh1~h4の選択ごとに行わない。このため、ヘッドh1~h4のノズル容量計測時間(ステップS25~S34)を連続させることができる。これに対し、図11(b)の第2のノズル容量計測処理では、ステップS45のオフセット電流安定待機時間の待機は、ヘッドh1~h4の選択ごとに行う。このため、ヘッドh1~h4のノズル容量計測時間(ステップS43,S44,S46~S52)は、オフセット電流安定待機時間の待機後の都度現れる。このため、第1のノズル容量計測処理のトータル計測時間は、第2のノズル容量計測処理のトータル計測時間よりも短い。
【0128】
以上、本実施の形態によれば、インクジェット記録装置1は、インクを吐出する複数のノズル24にそれぞれ設けられた複数の圧電素子22と、DC電源部932,933から出力された電力を蓄えて各圧電素子22に出力するキャパシターC2,C4と、DC電源部932によりキャパシターC2,C4をプリチャージした後に、DC電源部933に圧電素子22の容量を計測するための計測用の電力(第1の電力)を出力させて各圧電素子22のノズル容量Cpを取得する制御部40と、を備える。
【0129】
このため、ノズル24のみの駆動電流を計測することで、ノズル24のみの駆動電流に基づくノズル容量Cpを取得できる。また、プリチャージするので、ノズル容量Cpの計測時間を短くすることができる。
【0130】
インクジェット記録装置1の電源部は、計測用の電力を出力するDC電源部933と、通常用の電力(第2の電力)を出力するDC電源部932と、を備える。制御部40は、DC電源部932から非計測用の通常用の電力を出力させキャパシターC2,C4をプリチャージする。このため、キャパシターC2,C4を容易にプリチャージできる。
【0131】
インクジェット記録装置1は、さらに各圧電素子22へ流れる電流を検出する電流検出部92を備える。制御部40は、DC電源部933に計測用の電力を出力させて電流検出部92に駆動電流を検出させ、検出された駆動電流に基づき各圧電素子22のノズル容量Cpを取得する。このため、ノズル24の駆動電流を容易に検出できる。
【0132】
制御部40は、取得したノズル容量Cpに基づきノズル24又は圧電素子22に関する異常を判断する。このため、ノズル容量Cpからノズル24の異常を正確に検出できる。なお、ノズル容量Cpに基づくノズル24又は圧電素子22の異常判断は、インクジェット記録装置1の外部装置で行う構成としてもよい。
【0133】
通常用の電力は、画像形成用の電力に対応する。このため、画像形成時のノズル24の異常を正確に検出できる。
【0134】
インクジェット記録装置1のキャパシターは、複数のキャパシターC2,C4を含む。このため、インクジェット記録装置1のキャパシターを複数のキャパシターC2,C4で容易に構成できる。なお、インクジェット記録装置1のキャパシターを1つのキャパシターとする構成としてもよい。
【0135】
制御部40は、電流検出部92に、プリチャージした場合のオフセット電流と、計測する場合の駆動電流とを検出させる。このため、プリチャージに応じたオフセット電流を計測することで、検出した駆動電流及びオフセット電流に応じたノズル24のみの駆動電流を正確に取得できる。
【0136】
DC電源部932の通常用の電力の電圧は、DC電源部933の計測用の電力の電圧と同じ(電圧VH2)である。このため、オフセット電流のバラツキを抑制でき、オフセット電流及びノズル容量Cpを正確に取得できる。
【0137】
制御部40の制御により、DC電源部932から圧電素子22への通常用の電力の出力の経路と、DC電源部932,933から圧電素子22への通常用の電力及び計測用の電力の出力を合流する経路とを切り替えるORスイッチ934を備える。このため、ORスイッチ934を用いるので、切替スイッチに比べて電圧変動を抑制できる。ORスイッチ934を用いるので、既存回路にアドオンしやすくでき、回路設計をしやすくできる。ORスイッチ934を用いるので、既存回路への影響を無くすことができる。例えば、あるラインに直列に切替スイッチを追加すると、既存回路への特性影響がある。しかし、ORスイッチ934をDC電源部932のラインに追加しても、当該ライン上の回路への影響がない。
【0138】
制御部40は、プリチャージを行ったまま、漏れ電流が安定するまでの所定のオフセット電流安定待機時間を待機する。このため、オフセット電流安定待機時間の待機によりキャパシターC2,C4の漏れ電流を小さく安定させることができ、オフセット電流をより正確に計測できる。
【0139】
制御部40は、プリチャージ後に、DC電源部933の計測用の電力の出力をオンしたまま、DC電源部932の通常用の電力の出力をオフする。このため、DC電源部932の通常用の電力からDC電源部933の計測用の電力の出力へ適切に切り替えることができる。
【0140】
制御部40は、DC電源部932から通常用の電力を出力させてキャパシターC2,C4をプリチャージし、ついでDC電源部933から計測用の電力を出力させてキャパシターC2,C4をプリチャージする。このため、ヘッド211が複数ある場合に、あるヘッドのDC電源部933から計測用の電力を出力している間に、次のヘッドのDC電源部932から電力を出力させてプリチャージでき、ノズル容量Cpの計測時間を短縮できる。
【0141】
ノズルの圧電素子22、DC電源部932及びキャパシターC2,C4は、複数のヘッド211のそれぞれに対応して設けられる。制御部40は、複数のヘッド211で一括して複数のDC電源部932に電力を出力させて複数のキャパシターC2,C4をプリチャージする。このため、複数のヘッド211の複数のキャパシターC2,C4を容易かつ確実にプリチャージできる。
【0142】
電流検出部92及びDC電源部933は、複数のヘッド211に共通して設けられている。このため、電流検出部92の装置構成を簡単にできる。
【0143】
制御部40は、DC電源部933に計測用の電力を出力させてインクを吐出しない非吐出波形の電力を圧電素子22に出力させて電流検出部92に駆動電流を検出させる。このため、ノズル容量の計測時にインクを消費することを抑制できる。
【0144】
キャパシターC2,C4の電気容量は、圧電素子22のノズル容量Cpよりも大きい。このため、圧電素子22へ入力する電圧を安定化できる。
【0145】
制御部40は、DC電源部933に計測用の電力を出力させたまま、駆動電流が安定するまでの所定の駆動電流安定待機時間trmsを待機する。このため、駆動電流を正確に精度よく取得できる。
【0146】
制御部40は、駆動電流安定待機時間trmsの待機後に、電流検出部92に駆動電流を検出させる。このため、駆動電流を正確に精度よく取得できる。
【0147】
制御部40は、所定の駆動電流取得周期及び駆動電流取得回数を用いて、電流検出部92に電流を検出させ、検出した複数の駆動電流を平均した駆動電流(平均電流値Ir)を取得する。このため、駆動電流を正確に精度よく取得できる。
【0148】
なお、制御部40が、計測用の電力の電圧である電圧VH2を可変に設定する構成としてもよい。例えば、複数の電圧VH2の設定値から1つを選択して設定してもよい。というのは、例えば、インク高温時に15[V]→10[V]として、電圧VH2を非吐出の駆動電圧保持するためである。また、例えば、駆動電圧を上げて、駆動電流を増やしてSN比を高くし駆動電流の検出精度を上げるためである。
【0149】
(第1の変形例)
図12を参照して、上記実施の形態の第1の変形例を説明する。図12は、印刷異常時検査処理を示すフローチャートである。
【0150】
上記実施の形態では、定期的にノズル24の異常を検査する定期検査処理で、ノズル容量Cpを計測しノズル24の異常を判断していた。本変形例では、印刷の異常時に、ノズル容量Cpを計測しノズル24の異常を判断する。
【0151】
本変形例の装置構成として、上記実施の形態と同様に、インクジェット記録装置1を用いる。ただし、記憶部50に、定期検査プログラムP1に代えて、後述する印刷異常時検査処理を実行するための印刷異常時検査プログラムが記憶されているものとする。
【0152】
図12を参照して、本変形例のインクジェット記録装置1の動作を説明する。あらかじめ、インクジェット記録装置1において、印刷ジョブが投入され、記録対象の画像データを用いて、記録対象画像が記録媒体P上に記録されるものとする。そして、記録媒体P上にスジなどの異常が発生し、例えば、ユーザーが操作表示部80への操作入力により印刷ジョブを中断させたものとする。インクジェット記録装置1において、ユーザーから操作表示部80に、異常発生に応じた印刷異常時検査処理の実行指示が入力される。この実行指示の入力をトリガーとして、制御部40は、記憶部50に記憶されている印刷異常時検査プログラムに従い、印刷異常時検査処理を実行する。
【0153】
まず、制御部40は、搬送部10、ヘッド制御手段90及び画像記録部20により、テストチャートの画像データ51に基づきテストチャートを記録媒体Pに印刷させ、読取部60に当該テストチャートを読み取らせる(ステップS61)。ステップS61では、テストチャートの読取データが取得される。そして、制御部40は、ステップS61で取得された読取データと、画像データ51とを比較し、比較結果に基づき、印刷された画像の異常があるか否かを判別する(ステップS62)。
【0154】
画像の異常がない場合(ステップS62;NO)、制御部40は、中断中の印刷ジョブを再開し(ステップS63)、印刷異常時検査処理を終了する。画像の異常がある場合(ステップS62;YES)、制御部40は、画像の異常に対応する指定ヘッド211に対する第1のノズル容量計測処理を実行する(ステップS65)。ステップS65の第1のノズル容量計測処理は、上記実施の形態の第1のノズル容量計測処理と同様であるが、検査対象が指定ヘッド211のみとなる。
【0155】
ステップS65~S67は、それぞれ、図8の定期検査処理のステップS12~S14と同様である。ステップS67の実行後、ステップS63に移行される。異常がない場合(ステップS65;NO)、制御部40は、クリーニング部30により、全てのヘッド211のノズル面210などをクリーニングする(ステップS68)。そして、制御部40は、ステップS69,S70を実行する。ステップS69,S70は、ステップS61,S62と同様である。
【0156】
画像の異常がない場合(ステップS70;NO)、ステップS63に移行される。画像の異常がある場合(ステップS70;YES)、制御部40は、テストチャートの画像の異常情報を操作表示部80に表示する(ステップS71)。そして、制御部40は、ステップS70;NOの回数が、あらかじめ設定された所定回数であるか否かを判別する(ステップS72)。所定回数でない場合(ステップS72;NO)、ステップS68に移行される。所定回数である場合(ステップS72;YES)、ステップS67に移行される。
【0157】
以上、本変形例によれば、印刷異常発生時に、ノズル容量Cpに基づくノズル24の異常を検出できる。
【0158】
(第2の変形例)
図13を参照して、上記実施の形態の第2の変形例を説明する。図13は、第2の変形例のヘッド制御手段90C及び画像記録部20を示すブロック図である。
【0159】
本変形例の装置構成は、上記実施の形態のインクジェット記録装置1を用いるものとする。ただし、インクジェット記録装置1は、ヘッド制御手段90に代えて、図13に示すヘッド制御手段90Cを備えるものとする。
【0160】
ヘッド制御手段90Cの電力供給部93Cは、図7に示すヘッド制御手段90のORスイッチ934a,934bを、切替スイッチ935a,935bに代えたものである。切替スイッチ935aは、ヘッド駆動部23aへの出力電力の出力元を、DC電源部932aと、DC電源部933(電流検出部92)と、のいずれか一方に切り替えるスイッチである。切替スイッチ935bは、ヘッド駆動部23bへの電力の出力元を、DC電源部932bと、DC電源部933(電流検出部92)と、のいずれか一方に切り替えるスイッチである。切替スイッチ935a,935bは、ヘッド制御部91の切替制御信号に応じて、切り替えられる。
【0161】
以上、本変形例によれば、インクジェット記録装置1は、制御部40の制御により、DC電源部932(932a,932b)からの圧電素子22への通常用の電力の出力の経路と、DC電源部933からの圧電素子22への計測用の電力の出力の経路とを切り替える切替スイッチ935a,935bを備える。このため、ORスイッチより回路構成を簡単に構成できる。
【0162】
(第3の変形例)
図14を参照して、上記実施の形態の第3の変形例を説明する。図14は、第3のノズル容量計測処理におけるオフセット電流安定待機時間及びノズル容量計測時間を示す図である。
【0163】
本変形例の装置構成は、上記実施の形態のインクジェット記録装置1を用いるものとする。ただし、インクジェット記録装置1の制御部40は、第1のノズル容量計測処理に代えて、第3のノズル容量計測処理を実行するものとする。
【0164】
図11(a)に示すように、第1のノズル容量計測処理は、検査対象の全てのヘッド211(ヘッドh1~h4)で同時にオフセット電流安定待機時間の待機が開始され、各ヘッドでオフセット電流安定待機時間が異なる処理である。
【0165】
第3のノズル容量計測処理は、第1のノズル容量計測処理と同様の処理である。ただし、図14に示すように、検査対象の全てのヘッドh1~h4のオフセット電流安定待機時間の待機の開始をずらし、各ヘッドh1~h4でオフセット電流安定待機時間が同一である処理とする。このため、電圧VH2を印加する余分な待機時間がなくなり、無駄な消費電力を抑えることができる。また、各ヘッドh1~h4でノズル容量Cpの計測条件(オフセット電流安定待機時間)が統一されるため、計測の確度(精度)が安定する。
【0166】
以上、本変形例によれば、制御部40は、ヘッド211ごとに、DC電源部932に通常用の電力を出力させて複数のキャパシターC2,C4をプリチャージ開始することを時間的にずらして行う。このため、消費電力を抑制でき、オフセット電流安定待機時間を統一して駆動電流の計測の精度を安定化できる。
【0167】
なお、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施の形態及び変形例の少なくとも2つを適宜組み合わせる構成としてもよい。
【0168】
上記実施の形態及び変形例では、電流検出部92により駆動電流の計測を行ったが、供給電力の算出が可能であれば、電圧値を計測してもよい。
【0169】
上記実施の形態及び変形例では、単純に駆動電圧のオンオフを繰り返す矩形波状の駆動電圧パターンを検査用の波形として用いたが、台形状の波形などでも本発明を適用して圧電素子のノズル容量Cpの検査を行うことができる。
【0170】
上記実施の形態及び変形例では、インクの吐出が生じない程度の電圧VH2により、非吐出でノズル容量Cpの異常検出を行う構成とした。しかし、通常の駆動動作ではインクを吐出する程度の電圧(電圧VH1など)であっても、駆動周波数を切り替える構成としてもよい。例えば、圧電素子22の変形が追随しない、及び/又はインク流路内のインクが圧力室の変形(圧力変化)に追随しない程度に高い周波数とする構成である。この構成でも、非吐出波形を得ることができ、当該電圧(電圧VH1など)の供給に係る回路の異常検出を行うことが可能となる。このように高い周波数では、圧電素子22への電流Iaの出力頻度が高くなり、これに伴って平均電流値Irも上昇するので、計測が容易になる。あるいは、このような吐出電圧の供給に係る回路の異常を検出する場合には、インクを吐出させてノズル容量Cpの異常検出を行ってもよい。
【0171】
上記実施の形態及び変形例では、電力供給部93のキャパシターC2,C4の容量を利用し、電流検出部92の抵抗素子や回路内の抵抗などの影響による供給電力の平滑化を利用した。しかし、これに限定されるものではなく、DC電源部933などの誘導成分が含まれて利用されてもよい。また、回路内の抵抗値が十分であれば、電流検出部92としては、計測回路に直列に抵抗素子が設けられるものでなくてもよい。
【0172】
上記実施の形態及び変形例では、ラインヘッドを有し、ワンパスで連続的な記録媒体に対して画像記録を行うインクジェット記録装置1を例に挙げて説明した。しかし、これに限定されるものではない。記録媒体Pを搬送する動作と、ヘッド211を停止した記録媒体Pに対して移動させながらインクを吐出させる動作とを繰り返すスキャン方式のインクジェット記録装置であってもよい。また、記録媒体は、連続的なものに限られず、枚葉紙など1又は所定数の記録対象画像ごとに区切られたものであってもよい。この場合、インクを吐出させない異常動作の検出動作は、複数の記録媒体間で行われてもよい。その他、上記実施の形態及び変形例で示した構成、回路配置、処理内容やその手順などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0173】
1 インクジェット記録装置
10 搬送部
11 駆動ローラー
12 搬送ベルト
13 従動ローラー
14 搬送モーター
15 押圧ローラー
16 剥がしローラー
20 画像記録部
21,21C,21M,21Y,21K ヘッドユニット
210 ノズル面
211 ヘッド
22,22a,22b 圧電素子
23,23a,23b ヘッド駆動部
231 ドライバー回路
232,233,234 スイッチ
24 ノズル
24a ノズル開口
R1,R2,R2a,R2b,R3,R4,R4a,R4b 抵抗
C1,C2,C2a,C2b,C3,C4,C4a,C4b キャパシター
30 クリーニング部
40 制御部
50 記憶部
60 読取部
70 通信部
80 操作表示部
90,90C ヘッド制御手段
91 ヘッド制御部
92 電流検出部
93,93C 電力供給部
931,932,932a,932b,933 DC電源部
934,934a,934b ORスイッチ
935a,935b 切替スイッチ
P 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15