(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110045
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】治具配置システム
(51)【国際特許分類】
B23P 19/00 20060101AFI20240807BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B23P19/00 304Z
B23P19/00 304C
B23P19/00 304E
B25J9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014365
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】村居 健司
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】宮内 智寛
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 雄大
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田中 快斗
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS10
3C707CX01
3C707DS01
3C707EV14
3C707EW07
3C707HS14
3C707HS27
3C707KS03
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT18
3C707KV01
3C707LT07
3C707LT12
3C707LV17
3C707MT06
(57)【要約】
【課題】組立部品に応じて組立治具を好適に配置する。
【解決手段】治具配置システムは、ベース上に配置可能なロケータを把持するロボットアームと、ロボットアームの動作を制御する制御部と、を備えている。制御部は、ワークに対応する少なくとも1つのロケータを順次選択してロボットアームにより把持し、ワークの形状に応じて当該ロケータの位置及び姿勢を調整し、当該ロケータをベース上に配置する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立台上に配置可能な組立治具を把持するロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
組立部品に対応する少なくとも1つの前記組立治具を順次選択して前記ロボットアームにより把持し、
前記組立部品の形状に応じて当該組立治具の位置及び姿勢を調整し、当該組立治具を前記組立台上に配置する、
治具配置システム。
【請求項2】
前記組立治具と前記組立台とは、互いのピンと孔部とを嵌合方向に嵌合させて、当該組立治具が当該組立台上に配置され、
前記ロボットアームは、
前記組立治具を把持する把持部と、
前記組立治具を前記組立台上に配置するときに前記嵌合方向と直交する面内で前記把持部が移動可能なように当該把持部を支持する移動機構と、
を有する、
請求項1に記載の治具配置システム。
【請求項3】
前記ロボットアームは、前記組立治具を把持する把持部が、弾性部材で構成されている、
請求項1に記載の治具配置システム。
【請求項4】
前記ロボットアームは、前記組立治具を把持する把持部と、前記把持部を振動させる加振装置とを有し、
前記制御部は、前記組立治具と前記組立台とを互いのピンと孔部とを嵌合させて当該組立治具を当該組立台上に配置するときに、前記加振装置により前記把持部を振動させる、
請求項1に記載の治具配置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立治具を組立台上に配置する治具配置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機には、類似する形状の複数の組立部品が使用される。これらの複数の組立部品に対しては、位置決めや固定等のための組立治具を用い、打鋲による部品の結合や基準孔の穿孔等を行うサブ組立が個別に行われる。複数の組立部品は互いに似てはいても異なる形状であるため、組立部品の種類ごとに専用の組立治具を製作すると治具製作費が嵩む。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、組立部品の形状に対応させて、基台に対して面板等の位置を調整可能な組立治具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、組立部品に応じた組立治具の調整作業を作業員(人間)が行う必要がある。そのため、この調整作業に要する段取り工数が必要となるうえに、ヒューマンエラーが生じるおそれもある。
【0006】
本発明は、組立部品に応じて組立治具を好適に配置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、治具配置システムであって、
組立台上に配置可能な組立治具を把持するロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
組立部品に対応する少なくとも1つの前記組立治具を順次選択して前記ロボットアームにより把持し、
前記組立部品の形状に応じて当該組立治具の位置及び姿勢を調整し、当該組立治具を前記組立台上に配置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、組立部品に応じて組立治具を好適に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る治具配置システムの要部を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る治具配置システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3B】実施形態に係るロケータの固定用ピン及び把持用ピンの側面図である。
【
図4B】実施形態に係るベースに形成された1区画分の孔部の拡大図である。
【
図5】実施形態に係るロケータの固定用ピンとベースの孔部との嵌合について説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る治具配置処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
[治具配置システムの構成]
図1は、本実施形態に係る治具配置システム1の要部を示す斜視図であり、
図2は、治具配置システム1の概略構成を示すブロック図である。
これらの図に示すように、治具配置システム1は、ワーク(組立部品)Wの位置決めや固定等のためのロケータ(組立治具)4をベース(組立台)3上に配置し、ワークWに対して所定の組立作業を行うための作業台を組み上げる。特に本実施形態の治具配置システム1は、2つのベース3(3a、3b)の間でロケータ4の組み替えを行う。本実施形態では、ワークWは航空機部品であり、ワークWに対する組立作業として、打鋲による部品の結合や基準孔の穿孔等が行われる。
具体的に、治具配置システム1は、ロボットアーム2と、2つのベース3と、ロケータラック5と、制御装置6とを備えている。
【0012】
ロボットアーム2は、本実施形態では垂直多関節ロボットであり、ベース部21と、複数のアーム22と、エンドエフェクタ23と、複数の関節部24と、コントローラ29とを有している。ただし、ロボットアーム2は垂直多関節ロボットに限定されない。
【0013】
複数のアーム22は、ベース部21を基端部として互いに直列に連結されている。
複数の関節部24は、ベース部21と、複数のアーム22と、エンドエフェクタ23とを回動可能に連結している。各関節部24には、当該関節部24の先端側に連結されたアーム22(又はエンドエフェクタ23)を駆動するモータ241と、このモータ241の位置(速度)を検出してコントローラ29に出力するエンコーダ242とが設けられている。
【0014】
エンドエフェクタ23は、複数のアーム22の先端に連結されている。エンドエフェクタ23には、把持機構25とビジョンセンサ26が設けられている。
把持機構25は、エンドエフェクタ23の先端に配置され、ロケータ4を把持する。本実施形態の把持機構25は、後述するベース3のクランパー34と同様の構造を有し、空気圧の供給及びその解除によってロケータ4の把持及びその解放(把持解除)が可能となっている。なお、把持機構25は、ロケータ4を把持可能であって制御装置6が把持及び把持解除を制御可能な機構であれば、その構造は特に限定されない。
ビジョンセンサ26は、エンドエフェクタ23の基端部に先端向きに取り付けられている。ビジョンセンサ26は、エンドエフェクタ23の先端部側方を含む撮像範囲26Rを有し、当該撮像範囲26R内を撮影して、取得した画像を制御装置6に出力する。また、ビジョンセンサ26は、撮像範囲26Rを照らす照明261を有している。なお、ビジョンセンサ26は、ベース3(後述する1区画B分の孔部31)の画像を取得可能であれば、そのセンサ種別等は特に限定されない。
【0015】
エンドエフェクタ23の基端部には、スライド機構27と加振装置28が設けられている。
スライド機構27は、エンドエフェクタ23の延在方向と直交する平面内でエンドエフェクタ23を移動可能に支持する。具体的に、スライド機構27は、上記平面内で直交する2本のリニアガイド(図示省略)を有しており、当該2本のリニアガイドを介して先端側のエンドエフェクタ23が支持されている。スライド機構27は、空気圧で動作するピン(図示省略)が挿抜されることにより、その固定及び固定解除が制御可能となっている。ピンを動作させるための空気源はエンドエフェクタ23に搭載され、制御装置6からの制御指令により動作制御される。
加振装置28は、エンドエフェクタ23の延在方向と直交する面内でエンドエフェクタ23を振動させる。
【0016】
コントローラ29は、制御装置6からの制御指令に基づいて、ロボットアーム2の各部の動作を制御する。具体的に、コントローラ29は、各モータ241や把持機構25、スライド機構27を動作させたり、各エンコーダ242やビジョンセンサ26が検出した情報を制御装置6に出力したりする。
【0017】
図3Aは、ロケータ4の斜視図であり、
図3Bは、ロケータ4のうち後述の固定用ピン41及び把持用ピン42の側面図である。
ロケータ4は、ベース3上に配置されてワークWを保持する。ロケータ4は、ワークWを固定するクランプを支持するもの、ワークWが載置されるもの、ワークWを位置決めするもの等、複数種類のものを含む。
具体的には、
図3Aに示すように、ロケータ4は、ロケータ本体40と、ロケータ本体40の下面4aに立設された2本の固定用ピン41と、ロケータ本体40の側面4bに立設された2本の把持用ピン42とを有している。
ロケータ本体40は、特に限定はされないが、立方体状に形成されている。固定用ピン41は、ベース3にロケータ4を固定するときにベース3に挿入される部分である。把持用ピン42は、ロボットアーム2がロケータ4を把持するときにロボットアーム2が保持する部分である。本実施形態では、固定用ピン41と把持用ピン42とが同様に構成されているため、以下では固定用ピン41の構成についてのみ説明し、把持用ピン42の構成の説明は省略する。
【0018】
図3Bに示すように、固定用ピン41は、ロケータ4に固定されるピン本体43と、ピン本体43の先端に同軸状に取り付けられるクランプピン44とを有している。
ピン本体43は、挿入されるベース3の孔部31に対して所定の嵌め合い公差(例えば0.01mmオーダーの隙間嵌め)となる外径寸法に形成されている。ただし、2本の固定用ピン41のピン本体43のうち、1本は丸ピン、もう1本はダイヤピンとなっている。ピン本体43の先端側の角部には面取り43aが形成されている。面取り43aは、後述するベース3の孔部31の面取り31a(
図5参照)よりも急峻な角度(例えばピン本体43の中心軸との角度が30°以下)に形成されている。
クランプピン44は、後述するベース3のクランパー34(
図5参照)に保持される部分であり、クランパー34の固定ボールが押し付けられる溝44aを有している。
【0019】
図4Aは、ベース3の平面図であり、
図4Bは、ベース3に形成された1区画分の孔部31の拡大図である。
図4Aに示すように、各ベース3は、矩形板状の鉄製の定盤であり、水平面に略沿った上面を有している。各ベース3の上面には、ロケータ4の固定用ピン41が挿入される複数の孔部31が形成されている。
複数の孔部31は、ベース3上面の長手方向(X方向)と短手方向(Y方向)とに沿って格子状に配列されている。複数の孔部31は、所定の相対位置精度で配列されている。複数の孔部31は、図中に二点鎖線(仮想線)で示すように、3×3個=9個で1区画Bを構成している。ただし、
図4Aの例では、Y方向に1列だけ、1区画Bに満たない孔部31の余剰列がある。また、1区画Bを構成する孔部31の個数や配列は、特に限定されない。
図4Bに示すように、各区画Bには、所定の位置に十字マーク32(ケガキ線)が形成されている。十字マーク32は、各区画Bにおける複数の孔部31の基準位置を示すマークであり、複数の孔部31に対して所定の相対位置精度で形成されている。なお、各区画B内における十字マーク32の位置は特に限定されない。
【0020】
図5に示すように、各孔部31は、挿入されるロケータ4の固定用ピン41に対して所定の嵌め合い公差(例えば0.01mmオーダーの隙間嵌め)となる内径寸法に形成されている。各孔部31の表面(上面)側の角部には面取り31aが形成されている。面取り31aは、ロケータ4の固定用ピン41の面取り43aよりも緩やかな角度(例えば45°の面取り)に形成されている。
各孔部31には、ロケータ4の固定用ピン41を保持するクランパー34が、ベース3の裏面(下面)側に取り付けられている。クランパー34は、図示は省略するが、孔部31に挿入された固定用ピン41に対し、空気圧を利用して押し出された固定ボールがクランプピン44の溝44aを抑え込むことにより、当該固定用ピン41を引き込んで固定する。クランパー34には、バルブ35を介して接続されたエアーポンプ7から駆動用空気が供給される。バルブ35の開度は制御装置6に制御される。なお、クランパー34の具体構造は特に限定されず、例えば油圧式等であってもよい。
【0021】
図2に示すように、ロケータラック5は、ベース3上に配置されていない余剰ロケータ4を保持するラックである。ロケータラック5は、ベース3と同様に、ロケータ4を固定可能な構成(孔部31、クランパー34、バルブ35を含む)を有している。ただし、ロケータラック5は、単純に複数のロケータ4が載置されているだけの構成としてもよい。
【0022】
制御装置6は、治具配置システム1の動作を制御するコンピュータである。具体的に、制御装置6は、操作部62と、表示部63と、記憶部66と、制御部67とを備える。
操作部62は、ユーザが制御装置6を動作させるための各種操作を行う操作手段であり、例えばマウス等のポインティングデバイスやキーボードを含む。
表示部63は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイその他のディスプレイで構成され、制御部67からの表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部63は、操作部62の一部を兼ねるタッチパネルであってもよいし、音声出力を行ってもよい。
【0023】
記憶部66は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部67の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部66には、後述の治具配置処理を実行するためのプログラムが予め記憶されている。
制御部67は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、制御装置6の各部の動作を制御する。具体的に、制御部67は、操作部62の操作内容等に基づいて制御装置6の各部を動作させたり、記憶部66に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0024】
[治具配置処理]
続いて、2つのベース3の間でロケータ4を組み替える治具配置処理について説明する。
図6は、治具配置処理の手順を示すフローチャートである。
治具配置処理では、或るワークWの組立作業に使用した一方のベース3上から、異なるワークWの組立作業をこれから行う他方のベース3上に、少なくとも1つのロケータ4を組み替えて配置する。この治具配置処理は、制御装置6の制御部67が記憶部66から所定のプログラムを読み出して展開することで実行される。
なお、以下の説明では、2つのベース3のうち、ロケータ4が既に配置された状態である組み替え元のものを「第1ベース3a」、新たにロケータ4が配置される組み替え先のものを「第2ベース3b」という。
また、第1ベース3a(又はロケータラック5)上のいずれのロケータ4を、第2ベース3b(又はロケータラック5)上のどの位置にどんな姿勢で配置するといった情報は、ワークWの形状等に基づいて予めプログラム内に組み込まれている。したがって、ロケータ4は、当該プログラムに基づいて、組立予定のワークWに応じた位置及び姿勢で第2ベース3b上に配置される。
【0025】
図6に示すように、治具配置処理が実行されると、まず制御部67は、ロボットアーム2のエンドエフェクタ23を、第1ベース3aのうち、取り外し対象のロケータ4の上方まで移動させる(ステップS1)。
次に、制御部67は、取り外し対象のロケータ4を固定している第1ベース3aのクランパー34の駆動を停止させ、当該ロケータ4の固定を解除する(ステップS2)。
【0026】
次に、制御部67は、ロボットアーム2のエンドエフェクタ23により、取り外し対象のロケータ4を把持して上方に持ち上げ、第1ベース3aの孔部31から当該ロケータ4の固定用ピン41を抜く(ステップS3)。
このとき、制御部67は、スライド機構27の固定を解除し、かつ、加振装置28によりエンドエフェクタ23を振動させながら、ロケータ4を持ち上げてもよい。これにより、第1ベース3aの孔部31からロケータ4の固定用ピン41を抜きやすくすることができる。
なお、第1ベース3aでなくロケータラック5からロケータ4を持ち出す場合がある。この場合には、制御部67は、上記ステップS1~S3の処理を、第1ベース3aでなくロケータラック5において行う。
【0027】
次に、制御部67は、ロボットアーム2のエンドエフェクタ23を、第2ベース3bのうち、ロケータ4(固定用ピン41)を配置する予定の孔部31を含む区画Bの上方まで移動させる(ステップS4)。
次に、制御部67は、ビジョンセンサ26により、ロケータ4を配置する孔部31を含む区画Bの画像を取得し、当該区画B内の十字マーク32を認識する(ステップS5)。これにより、制御部67は十字マーク32の位置情報を取得する。ロケータ4の2つの固定用ピン41を配置する2つの孔部31が2つの区画Bに跨る場合、例えば、2つの区画Bの十字マーク32のうち当該2つの孔部31により近い一方の十字マーク32のみを認識してもよいし、両方の区画Bの十字マーク32を認識してもよい。
次に、制御部67は、取得した十字マーク32の位置情報に基づいて、エンドエフェクタ23の位置を補正する(ステップS6)。これにより、制御部67は、ロケータ4を配置する孔部31の位置をより正確に認識できる。
【0028】
次に、制御部67は、エンドエフェクタ23を加振装置28により振動させながら下方に移動させ、把持したロケータ4の固定用ピン41を第2ベース3bの孔部31に挿入する(ステップS7)。
より詳しくは、まず制御部67は、スライド機構27の固定を解除しただけの状態で、孔部31への固定用ピン41の挿入を開始する。固定用ピン41(ピン本体43)と孔部31とは比較的にタイトな嵌め合いであるため、ピン本体43が孔部31内にそのまま挿入されることはなく、固定用ピン41の面取り43aと孔部31の面取り31aとが接触する。固定用ピン41の面取り43aと孔部31の面取り31aとが接触すると、孔部31に倣うようにして固定用ピン41が芯出しされる。このとき、スライド機構27は固定解除されておりエンドエフェクタ23は挿入方向に垂直な平面内で自在に移動できるため、固定用ピン41は好適に芯出しされる。
この固定用ピン41の芯出しが始まった時点から、制御部67は、加振装置28によるエンドエフェクタ23の振動を開始する。この加振により、固定用ピン41は孔部31に挿入されやすくなる。
【0029】
そして、制御部67は、固定用ピン41が挿入された孔部31のクランパー34を駆動させ、当該固定用ピン41を引き込んで固定する(ステップS8)。このとき、制御部67は、ステップS7により、固定用ピン41(クランプピン44)を引き込むことが可能な所定の長さだけ当該固定用ピン41が孔部31に挿入された時点で、クランパー34を駆動させる。これにより、ロケータ4が第2ベース3bに固定される。ロケータ4が固定されたら、制御部67は、加振装置28を停止させる。
次に、制御部67は、ロボットアーム2のエンドエフェクタ23によるロケータ4の把持を解除(解放)する(ステップS9)。
なお、ステップS3で把持したロケータ4を、第2ベース3bでなくロケータラック5に配置する場合がある。この場合には、制御部67は、上記ステップS4、S7、S8の処理を、第2ベース3bでなくロケータラック5において行う(ステップS5、S6は省略する)。
【0030】
次に、制御部67は、治具配置処理を終了させるか否かを判定し(ステップS10)、終了させないと判定した場合には(ステップS10;No)、上述のステップS1へ処理を移行する。これにより、処理を終了させると判定されるまで、第1ベース3a(又はロケータラック5)上のロケータ4が順次選択されて第2ベース3b(又はロケータラック5)上に配置される。
そして、例えば全てのロケータ4の配置完了等により、治具配置処理を終了させると判定した場合には(ステップS10;Yes)、制御部67は、治具配置処理を終了させる。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、組立予定のワークWに対応する少なくとも1つのロケータ4が順次選択されてロボットアーム2により把持され、ワークWの形状に応じて当該ロケータ4の位置及び姿勢が調整され、当該ロケータ4がベース3上に配置される。
これにより、ワークWに対応させてロケータ4を自動で組み替えることができる。すなわち、ワークWに応じてロケータ4を好適に配置することができる。
ひいては、異なるワークWに対してロケータ4を共用できるため、治具点数を低減できる。これにより、製作コスト及び管理コストを削減でき、治具の保管エリアを縮小できる。また、作業者が行っていたロケータ4の組み替え作業を自動化できるため、段取り作業の削減による作業工数の低減、ヒューマンエラーによる不具合の防止、安全性の向上が期待できる。
【0032】
また、本実施形態によれば、ロボットアームのエンドエフェクタ23が、固定用ピン41と孔部31との嵌合方向(挿入方向)と直交する面内で移動可能なようにスライド機構27に支持されている。
これにより、ロケータ4をベース3上に配置するときに、固定用ピン41と孔部31との接触に応じて、ロケータ4を孔部31に倣って移動させることができる。すなわち、各種誤差等に起因する固定用ピン41と孔部31との位置ズレを好適に吸収できる。したがって、固定用ピン41と孔部31とがタイトな嵌め合いであっても、これらを好適に嵌合させることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、固定用ピン41と孔部31とを嵌合させてロケータ4をベース3上に配置するときに、加振装置28によりエンドエフェクタ23が振動される。
これにより、固定用ピン41を孔部31に挿入しやすくすることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、エンドエフェクタ23を移動可能に支持するスライド機構27によって、ロケータ4の固定用ピン41を孔部31に挿入するときにロケータ4が芯出しされることとした。
しかし、このスライド機構27に代えて(又はこれと併せて)、ロケータ4を把持するエンドエフェクタ23の本体部230(
図1参照)の少なくとも一部を、弾性部材(例えば樹脂等)で構成することとしてもよい。これにより、エンドエフェクタ23の本体部230の弾性変形によって、固定用ピン41と孔部31との相対位置のズレを吸収できる。
【0035】
また、上記実施形態では、ロケータ4に固定用ピン41が設けられ、ベース3に孔部31が設けられることとした。しかし、ロケータ4に孔部が設けられ、ベース3にピンが設けられてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、2つのベース3の間でロケータ4を組み替える場合について説明した。しかし、本発明は、ロケータラック5上のロケータ4をベース3上に配置したり、同一ベース3上でロケータ4を再配置したりする場合にも適用できる。そのため、まず、第1ベース3a上に配置されたロケータ4を用いて作業員がワークWに対して組立作業を行っている間に、ロボットアーム2が第2ベース3b上にロケータ4を配置する。その後に、第2ベース3b上で作業員が作業している間に、ロボットアーム2が第1ベース3a上のロケータ4を組み替える。この繰り返しにより、作業員と協働ロボットとで効率的に組立作業を行うことができる。これは、多品種少量生産である航空機の製造に適したシステムである。
【0037】
また、上記実施形態では、ワーク(組立部品)が航空機部品である場合について説明した。しかし、本発明は、組立部品が航空機部品以外のものである場合にも好適に適用できる。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 治具配置システム
2 ロボットアーム
3 ベース(組立台)
3a 第1ベース
3b 第2ベース
4 ロケータ(組立治具)
5 ロケータラック
6 制御装置
23 エンドエフェクタ(把持部)
25 把持機構
26 ビジョンセンサ
27 スライド機構(移動機構)
28 加振装置
31 孔部
32 十字マーク
34 クランパー
41 固定用ピン
43 ピン本体
44 クランプピン
67 制御部
230 本体部
B 区画
W ワーク(組立部品)