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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110046
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】可変容量コンデンサおよび給電装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 7/06 20060101AFI20240807BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20240807BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240807BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240807BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240807BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01G7/06
H01G4/40 321
H01F38/14
H02J50/12
H02J50/40
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014372
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】疋田 育之
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
【テーマコード(参考)】
5E082
5G503
【Fターム(参考)】
5E082BC11
5E082DD07
5E082FF05
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】制御電圧を低電圧化できる可変容量コンデンサを提供すること。
【解決手段】装置70の動作を制御する制御回路73に用いられる可変容量コンデンサC1であって、第1制御電極層21と、第1制御電極層と向かい合う第2制御電極層22と、少なくとも、第1制御電極層と第2制御電極層との間に配置された誘電体層32と、誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極層11と、第2取出電極層12とを備え、第1取出電極層と第2取出電極層とは、第1制御電極層と第2制御電極層との間に電圧が印加された場合に、第1制御電極層と第2制御電極層との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されており、第1制御電極層と第2制御電極層との間に印加される電圧が調整されて、第1取出電極層と第2制御電極層との間に蓄えられる静電容量の容量値が調整される、可変容量コンデンサ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(70)の動作を制御する制御回路(73)に用いられる可変容量コンデンサ(C1)であって、
第1制御電極層(21)と、
前記第1制御電極層と向かい合う第2制御電極層(22)と、
少なくとも、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に配置された誘電体層(32)と、
前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極層(11)と、第2取出電極層(12)とを備え、
前記第1取出電極層と前記第2取出電極層とは、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に電圧が印加された場合に、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されており、
前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に印加される電圧が調整されて、前記第1取出電極層と前記第2制御電極層との間に蓄えられる静電容量の容量値が調整される、可変容量コンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記装置は、前記可変容量コンデンサと1次側コイル(L1)とで構成される共振回路(72)をさらに有し、
前記制御回路は、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に前記誘電体層の誘電率を変化させるための制御電圧を印加する制御電圧印加回路(76,276,376,476)をさらに有し、
前記可変容量コンデンサは、前記制御電圧を用いて容量値を調整することにより、前記共振回路の共振周波数を調整する、可変容量コンデンサ。
【請求項3】
請求項2に記載の可変容量コンデンサであって、
前記装置は、受電装置に非接触給電する給電装置であり、
前記制御電圧印加回路は、
前記制御電圧を第1制御電圧に設定することにより、前記共振回路に予め定められた動作周波数の交流電力が印加された場合に、前記共振回路を共振状態に設定する給電動作と、
前記制御電圧を前記第1制御電圧とは異なる第2制御電圧に設定することにより、前記共振回路に前記動作周波数の前記交流電力が印加された場合に、前記共振回路を非共振状態に設定する待機動作、とを実行可能であり、
前記可変容量コンデンサは、前記第1制御電圧が印加された場合に第1容量値に設定され、前記第2制御電圧が印加された場合に前記第1容量値とは異なる第2容量値に設定される、可変容量コンデンサ。
【請求項4】
請求項3に記載の可変容量コンデンサであって、
前記共振回路は、直列共振回路であり、
前記第2容量値は、前記第1容量値よりも小さい、可変容量コンデンサ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の可変容量コンデンサであって、
前記1次側コイルに印加される交流電力の電圧がゼロボルトである時点付近から前記第2制御電圧の印加が開始される、可変容量コンデンサ。
【請求項6】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、予め定められた動作温度より高い温度における比誘電率が、前記動作温度における比誘電率よりも小さい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
【請求項7】
受電装置(80)に非接触給電する給電装置(70)であって、
可変容量コンデンサ(C1)と1次側コイル(L1)とで構成される共振回路(72)と、
前記可変容量コンデンサに制御電圧を印加する制御電圧印加回路(76)と、を備え、
前記可変容量コンデンサは、
第1制御電極層(21)と、
前記第1制御電極層と向かい合う第2制御電極層(22)と、
少なくとも、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に配置された誘電体層(32)と、
前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極層(11)と、第2取出電極層(12)とを備え、
前記第1取出電極層と前記第2取出電極層とは、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に前記制御電圧が印加された場合に、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されており、
前記制御電圧印加回路は、
前記制御電圧を第1制御電圧に設定して、前記可変容量コンデンサを第1容量値に設定することにより、前記共振回路に予め定められた動作周波数の交流電力が印加された場合に、前記共振回路を共振状態に設定する給電動作と、
前記制御電圧を前記第1制御電圧とは異なる第2制御電圧に設定して、前記可変容量コンデンサを前記第1容量値とは異なる第2容量値に設定することにより、前記共振回路に前記動作周波数の前記交流電力が印加された場合に、前記共振回路を非共振状態に設定する待機動作、とを実行可能である、給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変容量コンデンサおよび給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流バイアスを印加するための1対の電極の間に誘電体層が配置された、静電容量が可変であるコンデンサがある(例えば、特許文献1)。従来のコンデンサでは、アース用電極と直流バイアス用電極との間に誘電体層が配置され、アース用電極と直流バイアス用電極との間に誘電体層を介して容量取得用電極が配置されている。アース用電極と直流バイアス用電極との間に直流バイアスが印加されることにより、誘電体層の誘電特性が変化して、コンデンサの静電容量が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-344845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンデンサでは、アース用電極と、直流バイアス用電極と、容量取得用電極とが、誘電体層を介して同じ方向に積層されている。このため、アース用電極と直流バイアス用電極との間の距離と、アース用電極と容量取得用電極との距離とを連動して設定する必要が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1形態によれば、装置(70)の動作を制御する制御回路(73)に用いられる可変容量コンデンサ(C1)が提供される。この可変容量コンデンサは、第1制御電極層(21)と、前記第1制御電極層と向かい合う第2制御電極層(22)と、少なくとも、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に配置された誘電体層(32)と、前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極層(11)と、第2取出電極層(12)とを備え、前記第1取出電極層と前記第2取出電極層とは、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に電圧が印加された場合に、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されており、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に印加される電圧が調整されて、前記第1取出電極層と前記第2制御電極層との間に蓄えられる静電容量の容量値が調整される。
【0007】
この形態によれば、第1制御電極層と第2制御電極層との間に直流電圧が印加されることにより誘電体層に印加される電界の方向と、第1取出電極と第2取出電極とに交流電圧が印加されることにより誘電体層に印加される電界の方向とを異ならせることができる。第1制御電極層と第2制御電極層との間の距離と、第1取出電極と第2取出電極との間の距離とを独立に設定することができる。よって、第1制御電極層と第2制御電極層との間の距離を短くすることで、同じ直流電圧でも誘電体層に印加される電界を大きくすることができるため、直流電圧を低電圧化できる。また、可変容量コンデンサC1は、制御電圧の大きさにより容量値が変わるため、コンデンサの容量値を変更するために、複数のコンデンサとスイッチとで構成する回路を使用する場合と比較して、回路規模を小さくできる。
【0008】
本開示の第2形態によれば、受電装置(80)に非接触給電する給電装置(70)が提供される。この給電装置は、可変容量コンデンサ(C1)とコイル(L1)とで構成される共振回路(72)と、前記可変容量コンデンサに制御電圧を印加する制御電圧印加回路(76)と、を備える。前記可変容量コンデンサは、第1制御電極層(21)と、前記第1制御電極層と向かい合う第2制御電極層(22)と、少なくとも、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に配置された誘電体層(32)と、前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極層(11)と、第2取出電極層(12)とを備え、前記第1取出電極層と前記第2取出電極層とは、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に前記制御電圧が印加された場合に、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている。前記制御電圧印加回路は、前記制御電圧を第1制御電圧に設定して、前記可変容量コンデンサを第1容量値に設定することにより、前記共振回路に予め定められた動作周波数の交流電力が印加された場合に、前記共振回路を共振状態に設定する給電動作と、前記制御電圧を前記第1制御電圧とは異なる前記第2制御電圧に設定して、前記可変容量コンデンサを前記第1容量値とは異なる第2容量値に設定することにより、前記共振回路に前記動作周波数の前記交流電力が印加された場合に、前記共振回路を非共振状態に設定する待機動作、とを実行可能である。
【0009】
この形態によれば、第1制御電極層と第2制御電極層との間に直流電圧が印加されることにより誘電体層に印加される電界の方向と、第1取出電極と第2取出電極とに交流電圧が印加されることにより誘電体層に印加される電界の方向とを異ならせることができる。第1制御電極層と第2制御電極層との間の距離と、第1取出電極と第2取出電極との間の距離とを独立に設定することができる。よって、第1制御電極層と第2制御電極層との間の距離を短くすることで、同じ直流電圧でも誘電体層に印加される電界を大きくすることができるため、直流電圧を低電圧化できる。また、可変容量コンデンサC1は、制御電圧の大きさにより容量値が変わるため、コンデンサの容量値を変更するために、複数のコンデンサとスイッチとで構成する回路を使用する場合と比較して、共振回路および制御電圧印加回路の回路規模を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】非接触給電システムの構成を示す模式図。
図2】非接触給電システムの回路図。
図3】可変容量コンデンサの斜視図。
図4図3に示す可変容量コンデンサのIV-IV線断面図。
図5】制御電界と比誘電率との関係を示す図。
図6】給電装置の回路図。
図7】第2実施形態に係る給電装置の回路図。
図8】第3実施形態に係る給電装置の回路図。
図9】第4実施形態に係る給電装置の回路図。
図10】制御電圧の印加開始時期とコイル電圧との関係を示す図。
図11】第5実施形態に係る誘電体層の誘電特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態:
A1.非接触給電システムの構成:
図1に示すように、非接触給電システム1は、給電装置70と、受電装置80とを備える。本実施形態では、給電装置70は、道路RSの下に埋設されている。受電装置80は、道路RSを走行する移動体としての車両VEに搭載されている。車両VEの走行中に、受電装置80は、給電装置70から給電される。ここで、走行中とは、車両VEが移動している場合と、信号待ち等で車両が停止している場合とを含む。車両VEは、例えば、電気自動車やハイブリッド車として構成される。
【0012】
給電装置70は、1次側コイルL1と、可変容量コンデンサC1とを有する直列共振回路である1次側共振回路72と、1次側共振回路72に給電する交流電源71とを有する。交流電源71は、複数の1次側共振回路72に対して給電する。複数の1次側コイルL1は、道路RSの延在方向に沿って配列されている。受電装置80は、2次側コイルL2を有する。
【0013】
なお、受電装置80が搭載される移動体は、道路RSを走行する車両VEに限られず、例えば、AGV(無人搬送車)や、走行ロボットなどでもよい。また、給電装置70は、道路RSの下ではなく、道路RSに隣接する歩道や駐車場、AGVが走行する経路に設置されてもよい。
【0014】
A2.非接触給電システムの回路構成:
図2に示すように、給電装置70は、上記構成に加え、制御回路73と、1次側検出回路78とを備えている。制御回路73は、制御電圧印加回路76と、1次側制御回路77とを有する。1次側コイルL1と可変容量コンデンサC1とが直列に接続されて、共振回路としての1次側共振回路72が構成されている。
【0015】
制御回路73は、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に印加される電界を調整して、第1取出電極層11と第2制御電極層22との間に蓄えられる静電容量の容量値を調整することによって給電装置70の動作を制御する。制御電圧印加回路76は、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧を印加する。制御電圧は、第2誘電体層32の誘電率を変化させるための電圧である。可変容量コンデンサC1は、制御電圧を用いて容量値を調整することにより、1次側共振回路72の共振周波数を調整する。
【0016】
交流電源71は、直流電源74と、インバータ75とを有する。インバータ75は、直流電源74から供給される直流電力を、予め定められた動作周波数の交流電力に変換して1次側共振回路72に印加する。本実施形態では、動作周波数は、85kHzである。可変容量コンデンサC1は、1次側共振回路72を動作周波数にて共振状態とするとともに、1次側共振回路72を動作周波数にて非共振状態とする機能を有する。本実施形態では、可変容量コンデンサC1は、第1容量値と、第1容量値よりも小さい第2容量値とに切り替え可能に構成されている。そして、可変容量コンデンサC1の容量値は、制御電圧印加回路76から出力される切替信号Sig1により、第1容量値と第2容量値とのいずれかに切り替えられる。1次側コイルL1と2次側コイルL2とが磁気的に結合している場合であって、可変容量コンデンサC1が第1容量値の場合、1次側共振回路72は動作周波数にて共振状態となる。つまり、可変容量コンデンサC1の第1容量値は、1次側共振回路72の共振周波数が動作周波数と一致する値に設定されている。対して、可変容量コンデンサC1が第2容量値の場合、1次側共振回路72の共振周波数が動作周波数からずれるため、1次側共振回路72は動作周波数にて非共振状態となる。
【0017】
制御電圧印加回路76は、後に詳述するように、交流電源71から出力される交流電力を用いて生成した切替信号Sig1を可変容量コンデンサC1に印加する。
【0018】
1次側検出回路78は、1次側コイルL1近傍の磁束の大きさを検出する磁気センサ、詳細には、1次側コイルL1近傍に設けられたコイルを内蔵した磁気センサである。1次側検出回路78は、磁束密度を検出し、検出した磁束密度を示す信号を1次側制御回路77へ出力する。1次側制御回路77は、1次側検出回路78から出力される信号を用いて、制御電圧印加回路76に可変容量コンデンサC1に切替信号Sig1の電圧値を切り替えるように指令する。具体的には、1次側制御回路77は、信号が示す磁束密度が予め定められた閾値よりも大きい場合に、制御電圧印加回路76に可変容量コンデンサC1に切替信号Sig1の電圧値を切り替えるように指令する。
【0019】
受電装置80は、上記構成に加え、2次側共振回路81と、整流器82と、バッテリ83とを有する。2次側コイルL2と2次側コンデンサC2とが直列に接続されて、2次側共振回路81が構成されている。整流器82は、2次側共振回路81から出力される交流電力を直流電力に変換し、バッテリ83へ供給する。バッテリ83は、供給される直流電力により充電される。
【0020】
1次側コイルL1と2次側コイルL2とが磁気的に結合している場合において、1次側共振回路72の共振周波数と、2次側共振回路81の共振周波数とは、略同一になるように設定されている。これにより、1次側コイルL1と、2次側コイルL2との磁界共振によって、受電装置80への非接触給電を行うことができる。
【0021】
A3.待機状態と送電状態:
可変容量コンデンサC1が第1容量値に設定され、1次側コイルL1に送電電流が流れて、給電が行われている状態を給電状態と呼ぶ。可変容量コンデンサC1が第2容量値に設定され、1次側コイルL1に送電電流よりも小さい待機電流が流れて、給電を行っていない状態を待機状態と呼ぶ。
【0022】
1次側コイルL1は、道路RSの延在方向に配列されており、2次側コイルL2は、最寄りの1次側コイルL1から非接触給電を受ける。待機状態において、1次側コイルL1に待機電流が流れることにより、1次側コイルL1は磁束を発生させている。受電装置80は、図示しない磁気センサを備えている。そして、受電装置80が対象の1次側共振回路72に近づくと、1次側コイルL1が発生させる磁束を磁気センサにより検出する。受電装置80は、磁束を検出すると、2次側コイルL2に交流電流を流して、磁束を発生させる。2次側コイルL2が発生させる磁束が1次側検出回路78により検出されると、1次側制御回路77は、制御電圧印加回路76に切替信号Sig1の電圧値を切り替えるように指令する。可変容量コンデンサC1は、切替信号Sig1の電圧値を用いて、容量値を第2容量値から第1容量値に切り替える。これにより、1次側共振回路72が共振状態となり、給電が開始される。
【0023】
給電装置70が、2次側コイルL2の存在を検出する方法は上記に限られない。他の形態として、給電装置70は、1次側コイルL1に流れる電流を検出し、電流の増加を検出する形態や1次側コイルL1の電圧を検出し、電圧の増加を検出する形態でもよい。
【0024】
A4.可変容量コンデンサの構造:
図3に示すように、可変容量コンデンサC1は、第1取出電極層11と、第2取出電極層12と、第1制御電極層21と、第2制御電極層22と、第1誘電体層31と、第2誘電体層32と、第1取出電極共通層41と、第2取出電極共通層42とを有する。第1取出電極層11と第2取出電極層12とを総称して取出電極層10とも呼ぶ。第1制御電極層21と第2制御電極層22とを総称して制御電極層20とも呼ぶ。
【0025】
図3には、互いに直交する3つの空間軸であるXYZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向とよぶ。これ以降に示す図及び説明についても同様である。
【0026】
図4に示すように、第1制御電極層21と第2制御電極層22とは、可変容量コンデンサC1の静電容量を調整するための電極層である。第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、可変容量コンデンサC1の静電容量を利用するための電極層である。典型的には、可変容量コンデンサC1は、第1制御電極層21と第2制御電極層22とに直流電圧である制御電圧が印加され、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電力が印加されて用いられる。
【0027】
可変容量コンデンサC1は、さらに、外部回路と電気的に接続するための第1端子ACpと、第2端子ACnと、第3端子DCpと、第4端子DCnとを有する。第1端子ACpは、第1取出電極層11と電気的に接続している。第2端子ACnは、第2取出電極層12と電気的に接続している。第3端子DCpは、第1制御電極層21と電気的に接続している。第4端子DCnは、第2制御電極層22と電気的に接続している。
【0028】
第2制御電極層22は、第1制御電極層21と向かい合う。第2誘電体層32は、少なくとも第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に配置されている。第1取出電極層11と、第2取出電極層12とは、第2誘電体層32を挟んで向かい合う。第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加された場合に、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている。本実施形態では、第1制御電極層21と第2制御電極層22とはX方向に向かい合う。また、第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、Z方向に向かい合う。
【0029】
図4に示すように、可変容量コンデンサC1は積層構造を有している。具体的には、第1取出電極層11の上に、第1誘電体層31が配置されている。第1誘電体層31の上に第1制御電極層21と、第2制御電極層22と、第2誘電体層32とが配置されている。第2誘電体層32は、第1制御電極層21と、第2制御電極層22とを覆っている。第2誘電体層32の上に第2取出電極層12が配置されている。各層の膜面方向が、XY方向である。各層が積層されている積層方向がZ方向である。
【0030】
図3に示すように、第1制御電極層21と第2制御電極層22とは、それぞれ、Y方向に長軸な平板形状を有する。第1制御電極層21と、第2制御電極層22とは、X方向において、間隔を空けて交互に配置されている。各第1制御電極層21の-Y方向の端部は、第1取出電極共通層41と電気的に接続されている。各第2制御電極層22の+Y方向の端部は、第2取出電極共通層42と電気的に接続されている。
【0031】
X方向において、第1制御電極層21と第2制御電極層22とが、第2誘電体層32を挟んで交互に配置されて形成された構造体を第1構造体ST1とも呼ぶ。第1制御電極層21と第2制御電極層22とが交互に配置されていることにより、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に形成されるコンデンサは互いに並列に接続されるため、可変容量コンデンサC1の容量値を大きくすることができる。
【0032】
図4に示すように、第2誘電体層32は、少なくとも第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に配置されている。具体的には、第2誘電体層32は、X方向において、第1制御電極層21と第2制御電極層22とに挟まれた制御領域RG1に配置されている。これにより、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に直流電圧である制御電圧が印加された場合には、概ねX方向に平行である電界ベクトルが、制御領域RG1に生じる。
【0033】
第1取出電極層11と、第2取出電極層12とは、Z方向において、第2誘電体層32を挟んで向かい合う。これにより、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電界ベクトルは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電圧ベクトルと概ね交わる。本実施形態において、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電界ベクトルは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電圧ベクトルと概ね直交する。
【0034】
第1取出電極層11と第2取出電極層12とが向かい合う方向と、第1制御電極層21と第2制御電極層22とが向かう合う方向とは異なる。これにより、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離と、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離とを独立に設定できる。第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離を短くすることなく、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離を短くことができる。よって、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に印加される電圧に耐え得る、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間の距離を維持しつつ、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離を短くすることにより、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に印加される電界を大きくすることができる。よって、制御電圧を低電圧化できる。
【0035】
本実施形態において、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは同じ材料の強誘電体を含む。詳細には、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を含む。他の形態として、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは、P(VDF-TrFE)(ポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン))などのフッ素樹脂などの強誘電体ポリマーを含んでもよい。第1誘電体層31が強誘電体を含むことにより、第1誘電体層31も可変容量コンデンサとして機能させることができる。
【0036】
第1誘電体層31と第2誘電体層32との他の形態として、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは、互いに異なる材料の誘電体を含んでもよい。
【0037】
PVDF分子は、炭素鎖に水素原子とフッ素原子とが結合している。水素原子は正に帯電し、フッ素原子は負に帯電するため、PVDF分子は、双極子モーメントを有する。PVDF分子が分子間力により凝集した場合、各PVDF分子の炭素鎖が延びる方向が揃う。水素原子とフッ素原子とは、炭素鎖の延びる方向に対して、垂直な方向に位置する。よって、PVDFの結晶では、自発分極する。PVDFの結晶に電界が印加された場合、炭素鎖の延びる方向であるX軸を中心軸として回転するように、分極の向きが変化する。よって、制御電圧が印加された状態においても、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧が印加されることにより分極の向きが変化する。このため、第2誘電体層32にPVDFを用いることにより、制御電圧の電圧値が変更された場合に、比誘電率が変化する可変容量コンデンサC1を提供することができる。
【0038】
図5は、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加されることにより生じる制御電界Edの大きさと、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧を印加した場合の比誘電率εrとの関係を示す図である。可変容量コンデンサC1は、比誘電率εrが2つのピークを有する誘電特性を有する。
【0039】
強誘電体は、制御電界がゼロV/mにおいて自発分極している。制御電界を抗電界Ecまで大きくすると、分極がゼロとなり、比誘電率εrは最大になる。抗電界Ec付近では、双極子モーメントは、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に印加された交流電圧に応じた向きに動き易いため、比誘電率εrは大きくなると考えられる。
【0040】
制御電界Edが抗電界Ecよりも大きくなると、比誘電率εrは小さくなる。電気双極子が、制御電界Edに拘束されて、交流電圧に応じて動きにくくなるためだと考えられる。
【0041】
本実施形態では、制御電界Edの向きと、交流電圧が印加されることによる電界の向きとは交わる。また、第2誘電体層32に含まれるPVDFは、分極の方向が炭素鎖を回転軸として回転する。このため、抗電界Ecより小さい制御電界Edの領域でも、比誘電率εrのピークが出現する。制御電界Edが印加されることにより、交流電圧が印加されることに応じて、制御電界Edが印加されていない場合よりも電気双極子が動き易くなるためであると考えられる。
【0042】
可変容量コンデンサC1の誘電特性は、アシスト領域と、分極反転領域、飽和領域とを有する。アシスト領域の制御電圧が印加されると、第2誘電体層32の分極の動きがアシストされる。具体的には、アシスト領域は、制御電界Edが抗電界Ecよりも小さく、比誘電率εrが比誘電率ε1よりも大きく、比誘電率ε2より小さい領域である。ここで、比誘電率ε1は、制御電界Edがゼロである場合の比誘電率εrである。比誘電率ε2は、比誘電率εrの2つのピークの間の極小点である。
【0043】
抗電界Ecの電圧を含む分極反転領域の制御電圧が印加されると、第2誘電体層32の分極は、交流電圧に応じて、アシスト領域よりもさらに反転し易くなる。具体的には、分極反転領域は、制御電界Edが抗電界Ecを含む電界範囲であり、アシスト領域における比誘電率εrのピーク値ε3よりも比誘電率εrが大きい領域である。
【0044】
飽和領域の制御電圧が印加されると、第2誘電体層32の分極の動きが拘束される。具体的には、飽和領域は、制御電界Edが抗電界Ecよりも大きく、制御電界Edが抗電界Ecよりも大きい領域である。
【0045】
上記のように、アシスト領域の制御電界Edを印加することにより、制御電界Edを印加しない場合よりも、分極を動き易くすることができる。よって、可変容量コンデンサC1にアシスト領域の制御電界Edを印加することにより、可変容量コンデンサC1の静電容量を、制御電界Edを印加しない場合の静電容量よりも大きくすることができる。
【0046】
また、分極反転領域の制御電界Edを印加することにより、分極を、アシスト領域よりも、さらに動き易くすることができる。よって、可変容量コンデンサC1に分極反転領域の制御電界Edを印加することにより、可変容量コンデンサC1の静電容量を、アシスト領域の制御電界Edを印加した場合の静電容量よりも大きくすることができる。
【0047】
また、飽和領域の制御電界Edを印加することにより、分極を動きにくくすることができる。よって、可変容量コンデンサC1に飽和領域の制御電界Edを印加することにより、可変容量コンデンサC1の静電容量を、アシスト領域の制御電界Edを印加していない場合の静電容量よりも小さくすることができる。よって、可変容量コンデンサC1によれば、制御電界Edの大きさを調整することにより、可変容量コンデンサC1の容量値を目的の容量値に設定することができる。
【0048】
A5.制御電圧印加回路の回路構成:
図6に示すように、制御電圧印加回路76は、整流器79と、平滑コンデンサC10と、スイッチSWとを有する。整流器79は、交流電源71から出力される交流電流を整流し、配線N1と配線N2とに直流電圧を出力する。整流器79として、例えばダイオードブリッジ回路を用いることができる。配線N1に印加される電圧は、配線N2に印加される電圧よりも高い。配線N1に、スイッチSWが配置されている。スイッチSWは例えばトランジスタである。配線N1と配線N2との間に平滑コンデンサC10が接続されている。切替信号Sig1は、具体的には、配線N1と配線N2間の電圧である。
【0049】
配線N1は、可変容量コンデンサC1の第3端子DCpに接続されている。配線N2は、可変容量コンデンサC1の第4端子DCnに接続されている。インバータ75の一方の出力端子に接続されている配線は、可変容量コンデンサC1の第1端子ACpに接続されている。インバータ75の他方の出力端子に接続されている配線は、可変容量コンデンサC1の第2端子ACnに接続されている。
【0050】
1次側制御回路77は、スイッチSWを開放状態または導通状態に設定する信号を制御電圧印加回路76に出力する。具体的に1次側制御回路77は、給電装置70を給電状態に設定する場合には、スイッチSWを開放状態に設定する信号を出力する。制御電圧印加回路76は、1次側制御回路77から信号が入力されると、スイッチSWを開放状態に設定する供給動作を行う。供給動作において、制御電圧印加回路76は、制御電圧を第1制御電圧としてのゼロボルトに設定する。これにより、可変容量コンデンサC1の第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に印加される制御電圧Vdはゼロボルトとなる。可変容量コンデンサC1の容量値は、第2誘電体層32の比誘電率εrが比誘電率ε1の場合の第1容量値に設定される。よって、1次側共振回路72は共振状態となる。
【0051】
対して、給電装置70を待機状態に設定する場合には、1次側制御回路77は、スイッチSWを導通状態に設定する信号を出力する。制御電圧印加回路76は、1次側制御回路77から信号が入力されると、スイッチSWを導通状態に設定する待機動作を行う。待機動作において、制御電圧印加回路76は、制御電圧を第2制御電圧としての飽和領域の制御電界Edとなる電圧値に設定する。これにより、可変容量コンデンサC1の第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に印加される制御電界Edは飽和領域の電界となる。可変容量コンデンサC1の容量値は、第2誘電体層32の飽和領域の比誘電率εrの場合の第2容量値に設定される。上記のように、第2容量値は、第1容量値よりも小さい。これにより、1次側共振回路72は非共振状態となる。
【0052】
以上説明した第1実施形態によれば、第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、制御電圧が印加された場合に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている。これにより、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離と、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離とを独立に設定できる。このため、制御電圧を低電圧化できる。また、可変容量コンデンサC1は、非接触給電システム1において、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に印加される制御電界Edを調整して、第1取出電極層11と第2制御電極層22との間に蓄えられる静電容量の容量値を調整することによって非接触給電システム1の動作を制御する制御電圧印加回路76に用いられる。これにより、1次側共振回路72の容量成分の容量値を変更するために、複数のコンデンサとスイッチとで構成する場合と比較して、回路規模を小さくできる。また、機械的に容量値を変更するコンデンサと比較して小型化できる。
【0053】
また、可変容量コンデンサC1は、1次側共振回路72の共振周波数を調整して、1次側共振回路72の動作を制御するために用いられる。これにより、1次側共振回路72の容量成分の容量値を変更するために複数のコンデンサを有する回路構成と比較して、回路規模を小さくできる。
【0054】
また、制御電圧印加回路76は、制御電圧Vdをゼロボルトに設定することにより、1次側共振回路72を共振状態に設定する給電動作と、制御電圧を飽和領域の電圧に設定することにより、1次側共振回路72を非共振状態に設定する待機動作とを実行する。可変容量コンデンサC1は、制御電圧Vdがゼロボルトに設定されることにより、第1容量値に設定され、制御電圧Vdが飽和領域の制御電界Edの電圧値に設定されることにより、第2容量値に設定される。磁界共鳴を用いて非接触給電を行う給電装置70においては、1次側共振回路72を共振状態に設定するか、非共振状態に設定するかにより、給電装置に給電動作させるか否かを制御することができる。本実施形態に係る可変容量コンデンサC1は、このような給電装置70に好適に適用することができる。
【0055】
また、第2容量値は、第1容量値よりも小さい。これにより、非接触給電システム1の待機状態において、1次側共振回路72のインピーダンスを小さくできるため、1次側コイルL1に流れる電流を小さくすることができる。
【0056】
B.第2実施形態:
図7に示す、第2実施形態に係る給電装置70は、第1実施形態と制御電圧印加回路276の構成が異なる。上記実施形態と同じ構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0057】
本実施形態に係る制御電圧印加回路276は、整流器79と、平滑コンデンサC10と、DC-DCコンバータ100とを有する。DC-DCコンバータ100は、整流器79から出力される直流電圧を降圧または昇圧して、配線N1と配線N2とに出力する。制御電圧印加回路276が出力する制御電圧は、第1実施形態と同様である。制御電圧印加回路276は、降圧または昇圧する場合には、時間に対して、線形に電圧を出力する。これにより、電流の急激な変動が抑制されるため、サージ電圧を抑制することができる。
【0058】
C.第3実施形態:
図8に示す、第3実施形態に係る給電装置70は、上記各実施形態と制御電圧印加回路376の構成が異なる。上記実施形態と同じ構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0059】
本実施形態に係る制御電圧印加回路376は、コンデンサC30と、第1ダイオードD1と、第2ダイオードD2と、平滑コンデンサC10と、DC-DCコンバータ100とを有する。コンデンサC30と、第1ダイオードD1と、第2ダイオードD2と、平滑コンデンサC10で、半波倍電圧整流回路が構成されている。これにより、大きな制御電圧Vdを出力することができる。制御電圧印加回路376が出力する制御電圧は、第1実施形態と同様である。
【0060】
D.第4実施形態:
図9に示す、第4実施形態に係る給電装置70は、上記各実施形態と制御電圧印加回路476の構成が異なる。上記実施形態と同じ構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0061】
本実施形態に係る制御電圧印加回路476は、1次側コイルL1の両端子のそれぞれと接続している。そして、制御電圧印加回路476は、1次側コイルL1に印加されている交流電圧であるコイル電圧を直流電圧に変換して、配線N1と配線N2とに供給する。
【0062】
図10に示すように、制御電圧印加回路476は、給電動作から待機動作に切り替える場合、コイル電圧の電圧がゼロボルトである時点t1付近から待機動作を開始する。具体的には、制御電圧印加回路476は、時点t1付近から、第3端子DCpと第4端子DCn間に飽和領域の制御電圧Vdの印加を開始する。ここで、時点t1付近とは、交流電力の電圧が、交流電力の電圧値の最大値の10%以下となる時刻t1前後の期間をいう。本実施形態では、制御電圧印加回路476は、時刻t1から待機動作を行う。これにより、可変容量コンデンサC1の第2誘電体層32は、交流電力が印加されることによる電界を受けにくい状態で、制御電界Edが印加されるため、第2誘電体層32に効果的に制御電界を印加することができる。
【0063】
以上説明した第4実施形態によれば、可変容量コンデンサC1は、1次側コイルL1に印加される交流電力の電圧がゼロボルト付近から制御電圧の印加が開始される。これにより、第2誘電体層32には、交流電力が印加されることによる電界を受けにくい状態で、制御電界Edが印加されるため、第2誘電体層32に効果的に制御電界を印加することができる。
【0064】
E.第5実施形態:
図11に示すように、本実施形態では第2誘電体層32は、動作温度としての相転移温度Tcより高い温度における比誘電率εrが、相転移温度Tcにおける比誘電率εrよりも小さい誘電特性を有する。具体的には、第2誘電体層32は、相転移温度Tcより温度が高くなると、比誘電率εrが低下する。本実施形態では、相転移温度Tcは、給電装置70が異常状態となった場合の動作温度より小さい値となるように、第2誘電体層32に用いられる誘電体が作製されている。これにより、制御回路73が異常により高温となった場合に、可変容量コンデンサC1の容量値が低下する。このため、1次側共振回路72に電流が流れにくくなり、1次側共振回路72を保護することができる。
【0065】
以上説明した第5実施形態によれば、第2誘電体層32は、相転移温度Tcより高い温度では、比誘電率εrが小さくなる誘電特性を有する。給電装置70の異常状態において、可変容量コンデンサC1の容量値は小さくなるため、1次側コイルL1に流れる電流を小さくして、1次側共振回路72を保護することができる。
【0066】
F.他の実施形態:
(F1)上記第1実施形態では、第2誘電体層32は、強誘電体ポリマーを含む。他の実施形態として、第2誘電体層32は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)などの無機強誘電体を含んでもよい。無機強誘電体でも、制御電圧の大きさに応じて、比誘電率εrが変化する。このため、可変容量コンデンサC1の誘電体層として用いることができる。複数の方向に分極する無機強誘電体であるとさらによい。制御電圧が印加される方向と、交流電圧が印加される方向が異なる場合にも、制御電圧の大きさにより比誘電率が変化するため、良好な可変率を有する可変容量コンデンサC1を提供することができるからである。
【0067】
(F2)上記第1実施形態では、制御電圧印加回路76は、給電装置70の待機状態において飽和領域の制御電圧を印加して、給電装置70の送電状態において制御電圧を印加しない。他の形態として、制御電圧印加回路76は、給電装置70の待機状態において分極反転領域またはアシスト領域の制御電圧を印加して、給電装置70の送電状態において制御電圧を印加しなくてもよい。
【0068】
(F3)上記第1実施形態では、1次側共振回路72では、1次側コイルL1に可変容量コンデンサC1が直列に接続され、2次側共振回路81では、2次側コイルL2に2次側コンデンサC2を直列に接続された、いわゆるS-S方式の回路構成である。1次側共振回路72の回路構成および2次側共振回路81の回路構成は、S-S方式に限られない。(a)例えば、1次側共振回路72では、1次側コイルL1に可変容量コンデンサC1が並列に接続され、2次側共振回路81では、2次側コイルL2に2次側コンデンサC2を直列に接続された、いわゆるP-S方式の回路構成でもよい。(b)また、1次側コイルL1に直列に接続された可変容量コンデンサC1に加え、1次側コイルL1に並列に接続されたコンデンサを備え、2次側共振回路81では、2次側コイルL2の両端子のそれぞれに2つの2次側コンデンサC2のそれぞれが直列に接続された、いわゆるP-SS方式の回路構成でもよい。(c)また、1次側共振回路72は、コイルとコンデンサとが直列に接続された閉回路を備えてもよい。この閉回路のコイルは、1次側コイルL1と2次側コイルL2と磁気結合した場合に、2次側コイルL2と磁気結合可能な位置に配置される。(d)さらに、閉回路のコンデンサが、コイルと直列ではなく、並列に接続されもよい。(e)また、1次側共振回路72は、1次側コイルL1と直列に接続されたコイルを備えると共に、コイルと並列に接続されたコンデンサを備えてもよい。このコイルは、1次側コイルL1と2次側コイルL2と磁気結合した場合に、2次側コイルL2と磁気結合可能な位置に配置される。
【0069】
(F4)上記第1実施形態では、可変容量コンデンサC1が給電装置70に適用される場合を例示した。可変容量コンデンサC1が適用される装置は、給電装置70に限られない。例えば、可変容量コンデンサC1は、周波数を変換する回路を内蔵する装置などに用いることができる。
【0070】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0071】
他の形態:
本開示の特徴を以下の通り示す。
(形態1)
装置(70)の動作を制御する制御回路(73)に用いられる可変容量コンデンサ(C1)であって、
第1制御電極層(21)と、
前記第1制御電極層と向かい合う第2制御電極層(22)と、
少なくとも、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に配置された誘電体層(32)と、
前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極層(11)と、第2取出電極層(12)とを備え、
前記第1取出電極層と前記第2取出電極層とは、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に電圧が印加された場合に、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されており、
前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に印加される電圧が調整されて、前記第1取出電極層と前記第2制御電極層との間に蓄えられる静電容量の容量値が調整される、可変容量コンデンサ。
(形態2)
形態1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記装置は、前記可変容量コンデンサと1次側コイル(L1)とで構成される共振回路(72)をさらに有し、
前記制御回路は、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に前記誘電体層の誘電率を変化させるための制御電圧を印加する制御電圧印加回路(76,276,376,476)をさらに有し、
前記可変容量コンデンサは、前記制御電圧を用いて容量値を調整することにより、前記共振回路の共振周波数を調整する、可変容量コンデンサ。
(形態3)
形態2に記載の可変容量コンデンサであって、
前記装置は、受電装置に非接触給電する給電装置であり、
前記制御電圧印加回路は、
前記制御電圧を第1制御電圧に設定することにより、前記共振回路に予め定められた動作周波数の交流電力が印加された場合に、前記共振回路を共振状態に設定する給電動作と、
前記制御電圧を前記第1制御電圧とは異なる第2制御電圧に設定することにより、前記共振回路に前記動作周波数の前記交流電力が印加された場合に、前記共振回路を非共振状態に設定する待機動作、とを実行可能であり、
前記可変容量コンデンサは、前記第1制御電圧が印加された場合に第1容量値に設定され、前記第2制御電圧が印加された場合に前記第1容量値とは異なる第2容量値に設定される、可変容量コンデンサ。
(形態4)
形態3に記載の可変容量コンデンサであって、
前記共振回路は、直列共振回路であり、
前記第2容量値は、前記第1容量値よりも小さい、可変容量コンデンサ。
(形態5)
形態3または4に記載の可変容量コンデンサであって、
前記1次側コイルに印加される交流電力の電圧がゼロボルトである時点付近から前記第2制御電圧の印加が開始される、可変容量コンデンサ。
(形態6)
形態1から5のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、予め定められた動作温度より高い温度における比誘電率が、前記動作温度における比誘電率よりも小さい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
(形態7)
受電装置(80)に非接触給電する給電装置(70)であって、
可変容量コンデンサ(C1)と1次側コイル(L1)とで構成される共振回路(72)と、
前記可変容量コンデンサに制御電圧を印加する制御電圧印加回路(76)と、を備え、
前記可変容量コンデンサは、
第1制御電極層(21)と、
前記第1制御電極層と向かい合う第2制御電極層(22)と、
少なくとも、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に配置された誘電体層(32)と、
前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極層(11)と、第2取出電極層(12)とを備え、
前記第1取出電極層と前記第2取出電極層とは、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に前記制御電圧が印加された場合に、前記第1制御電極層と前記第2制御電極層との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されており、
前記制御電圧印加回路は、
前記制御電圧を第1制御電圧に設定して、前記可変容量コンデンサを第1容量値に設定することにより、前記共振回路に予め定められた動作周波数の交流電力が印加された場合に、前記共振回路を共振状態に設定する給電動作と、
前記制御電圧を前記第1制御電圧とは異なる前記第2制御電圧に設定して、前記可変容量コンデンサを前記第1容量値とは異なる第2容量値に設定することにより、前記共振回路に前記動作周波数の前記交流電力が印加された場合に、前記共振回路を非共振状態に設定する待機動作、とを実行可能である、給電装置。
【符号の説明】
【0072】
11…第1取出電極層、12…第2取出電極層、21…第1制御電極層、22…第2制御電極層、32…第2誘電体層、70…給電装置、73…制御回路、76,276,376,476…制御電圧印加回路、C1…可変容量コンデンサ、L1…1次側コイル
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