(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110047
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】可変容量コンデンサおよび給電装置
(51)【国際特許分類】
H01G 7/06 20060101AFI20240807BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20240807BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20240807BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240807BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240807BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01G7/06
H01G4/40 321
H01F38/14
H02J50/12
H02J50/40
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014374
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】疋田 育之
【テーマコード(参考)】
5E082
5G503
【Fターム(参考)】
5E082BC11
5E082DD07
5E082FF05
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】制御電圧を低電圧化できる可変容量コンデンサを提供すること。
【解決手段】第1制御電極21と、第1制御電極と向かい合う第2制御電極22と、少なくとも第1制御電極と第2制御電極との間に配置された誘電体層32と、誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極11と、第2取出電極12とを備え、第1取出電極と第2取出電極とは、第1制御電極と第2制御電極との間に制御電圧が印加された場合に、第1制御電極と第2制御電極との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている、可変容量コンデンサ1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量コンデンサ(1,201,301)であって、
第1制御電極(21)と、
前記第1制御電極と向かい合う第2制御電極(22)と、
少なくとも前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に配置された誘電体層(32)と、
前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極(11)と、第2取出電極(12)とを備え、
前記第1取出電極と前記第2取出電極とは、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に制御電圧が印加された場合に、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている、可変容量コンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、分極の動きをアシストするためのアシスト領域の前記制御電圧が印加された場合の比誘電率が、前記制御電圧が印加されていない場合の比誘電率よりも大きい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、分極の動きを拘束するための飽和領域の前記制御電圧が印加された場合の比誘電率が、前記制御電圧が印加されていない場合の比誘電率よりも小さい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
【請求項4】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、抗電界の電圧値を含む分極反転領域の前記制御電圧が印加された場合の比誘電率が、前記制御電圧が印加されていない場合の比誘電率よりも大きい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
【請求項5】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記第1制御電極と前記第2制御電極とは第1方向に向かい合い、前記第1取出電極と前記第2取出電極とは、前記第1方向と直交する第2方向に向かい合う、可変容量コンデンサ。
【請求項6】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記第1制御電極と前記第2制御電極とが前記誘電体層を挟んで交互に配置された第1配置体(ST1)と、
前記第1制御電極と前記第2制御電極とが、前記第1配置体を挟んで交互に配置された第2配置体(ST2)と、を有する、可変容量コンデンサ。
【請求項7】
請求項6に記載の可変容量コンデンサであって、
前記第1配置体の配置数は20000以上であり、前記第2配置体の配置数は100以上である、可変容量コンデンサ。
【請求項8】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層の誘電特性は異方性を有する、可変容量コンデンサ。
【請求項9】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、強誘電体ポリマーと、無機強誘電体とのいずれかを含む、可変容量コンデンサ。
【請求項10】
請求項1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、強誘電体リラクサーを含む、可変容量コンデンサ。
【請求項11】
請求項1に記載の可変容量コンデンサを有する給電装置(70)であって、
前記誘電体層は、強誘電体を含み、
前記給電装置は、前記可変容量コンデンサと1次側コイル(L1)とで構成される共振回路(72)と、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に前記制御電圧を印加する制御電圧印加回路(76)と、を有し、
前記制御電圧印加回路は、前記給電装置の待機状態において、分極の動きを拘束するための飽和領域の電圧を印加する、給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変容量コンデンサおよび給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流バイアスを印加するための1対の電極の間に誘電体層が配置された、静電容量が可変であるコンデンサがある(例えば、特許文献1)。従来のコンデンサでは、アース用電極と直流バイアス用電極との間に誘電体層が配置され、アース用電極と直流バイアス用電極との間に誘電体層を介して容量取得用電極が配置されている。アース用電極と直流バイアス用電極との間に直流バイアスが印加されることにより、誘電体層の誘電特性が変化して、コンデンサの静電容量が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコンデンサでは、アース用電極と、直流バイアス用電極と、容量取得用電極とが、誘電体層を介して同じ方向に積層されている。このため、アース用電極と直流バイアス用電極との間の距離と、アース用電極と容量取得用電極との距離とを連動して設定する必要が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、可変容量コンデンサ(1)が提供される。この可変容量コンデンサは、第1制御電極(21)と、前記第1制御電極と向かい合う第2制御電極(22)と、少なくとも前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に配置された誘電体層(32)と、前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極(11)と、第2取出電極(12)とを備え、前記第1取出電極と前記第2取出電極とは、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に制御電圧が印加された場合に、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている。
【0007】
この形態によれば、第1制御電極と第2制御電極との間の距離と、第1取出電極と第2取出電極との間の距離とを独立に設定することができる。よって、第1制御電極と第2制御電極との間の距離を短くすることで、同じ制御電圧でも誘電体層に印加される電界を大きくすることができるため、制御電圧の低電圧化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す可変容量コンデンサのII-II線断面図。
【
図5】第2実施形態に係る可変容量コンデンサの斜視図。
【
図7】第3実施形態に係る可変容量コンデンサの断面図。
【
図9】第4実施形態に係る非接触給電システムの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、可変容量コンデンサ1は、第1取出電極としての第1取出電極層11と、第2取出電極としての第2取出電極層12と、第1制御電極としての第1制御電極層21と、第2制御電極としての第2制御電極層22と、第1誘電体層31と、誘電体層としての第2誘電体層32と、第1取出電極共通層41と、第2取出電極共通層42とを有する。
【0010】
図1には、互いに直交する3つの空間軸であるXYZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向とよぶ。これ以降に示す図及び説明についても同様である。
【0011】
図2に示すように、第1制御電極層21と第2制御電極層22とは、可変容量コンデンサ1の静電容量を調整するための電極層である。第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、可変容量コンデンサ1の静電容量を利用するための電極層である。典型的には、可変容量コンデンサ1は、第1制御電極層21と第2制御電極層22とに直流電圧である制御電圧が印加され、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電力が印加されて用いられる。
【0012】
第2制御電極層22は、第1制御電極層21と向かい合う。第2誘電体層32は、少なくとも第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に配置されている。第1取出電極層11と、第2取出電極層12とは、第2誘電体層32を挟んで向かい合う。第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加された場合に、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている。本実施形態では、第1制御電極層21と第2制御電極層22とは第1方向としてのX方向に向かい合う。また、第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、第2方向としてのZ方向に向かい合う。
【0013】
図2に示すように、可変容量コンデンサ1は積層構造を有している。具体的には、第1取出電極層11の上に、第1誘電体層31が配置されている。第1誘電体層31の上に第1制御電極層21と、第2制御電極層22と、第2誘電体層32とが配置されている。第2誘電体層32は、第1制御電極層21と、第2制御電極層22とを覆っている。第2誘電体層32の上に第2取出電極層12が配置されている。各層の膜面方向が、XY方向である。各層が積層されている積層方向がZ方向である。
【0014】
図1に示すように、第1制御電極層21と第2制御電極層22とは、それぞれ、Y方向に長軸な平板形状を有する。第1制御電極層21と、第2制御電極層22とは、X方向において、間隔を空けて交互に配置されている。各第1制御電極層21の-Y方向の端部は、第1取出電極共通層41と電気的に接続されている。各第2制御電極層22の+Y方向の端部は、第2取出電極共通層42と電気的に接続されている。
【0015】
X方向において、第1制御電極層21と第2制御電極層22とが、第2誘電体層32を挟んで交互に配置されて形成された配置体を第1配置体ST1とも呼ぶ。第1制御電極層21と第2制御電極層22とが交互に配置されていることにより、隣り合う第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に形成される各コンデンサは互いに並列に接続されるため、可変容量コンデンサ1の容量値を大きくすることができる。
【0016】
図2に示すように、第2誘電体層32は、少なくとも第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に配置されている。具体的には、第2誘電体層32は、X方向において、第1制御電極層21と第2制御電極層22とに挟まれた制御領域RG1に配置されている。これにより、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に直流電圧である制御電圧が印加された場合には、X方向に概ね平行である電界ベクトルが、制御領域RG1に生じる。
【0017】
第1取出電極層11と、第2取出電極層12とは、Z方向において、第2誘電体層32を挟んで向かい合う。これにより、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電界ベクトルは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電圧ベクトルと交わる。本実施形態において、第1取出電極層11と第2取出電極層12とはZ方向に向かい合う。第1制御電極層21と第2制御電極層22とはX方向に向かい合う。このため、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電界ベクトルは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加された場合に制御領域RG1に生じる電圧ベクトルと概ね直交する。
【0018】
第1取出電極層11と第2取出電極層12とが向かい合う方向と、第1制御電極層21と第2制御電極層22とが向かう合う方向とは異なる。これにより、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離と、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離とを独立に設定できる。第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離を短くすることなく、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離を短くことができる。よって、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に印加される電圧に耐え得る、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間の距離を維持しつつ、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離を短くすることにより、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に印加される電界を大きくすることができる。よって、制御電圧を低電圧化できる。
【0019】
仮に、第1取出電極層11と第2取出電極層12とが向かい合う方向と、第1制御電極層21と第2制御電極層22とが向かう合う方向とが同じである場合には、誘電体の比誘電率を調整するために、制御電圧を第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に印加される電圧よりも大きくする必要がある。この点、本実施形態によれば、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離と、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離とを独立に設定できる。このため、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離を短くすることにより、制御電圧を低電圧化できる。
【0020】
また、上記の理由により、第1取出電極層11と第2取出電極層12とが向かい合う方向と、第1制御電極層21と第2制御電極層22とが向かう合う方向とが同じである場合と比較して、第2誘電体層32に印加される電圧を低くできる。このため、第2誘電体層32が印加される電圧に耐え得る程度に、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離を短くすることができる。よって、可変容量コンデンサ1の体格を小さくすることができる。また、第1制御電極層21と第2制御電極層22とはX方向に向き合うため、制御領域RG1の外の領域の第2誘電体層32にも電界を印加することができる。よって、比誘電率εrが変化する第2誘電体層32の領域を広げることができる。
【0021】
第2誘電体層32の誘電特性は異方性を有する。ここで、誘電特性が異方性を有するとは、第2誘電体層32に制御電圧が印加された状態で、交流電圧が印加された場合の比誘電率εrが、交流電圧が印加されることにより生じる電界ベクトルの向きにより異なることをいう。第2誘電体層32の誘電特性が異方性を有することにより、制御電圧が印加される方向と、交流電圧が印加される方向が異なる場合に、後に詳述するように、制御電圧の大きさにより比誘電率εrが特徴的に変化する。
【0022】
本実施形態において、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは同じ材料の強誘電体を含む。詳細には、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を含む。他の形態として、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは、P(VDF-TrFE)(ポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン))などのフッ素樹脂などの強誘電体ポリマーを含んでもよい。第1誘電体層31が強誘電体を含むことにより、第1誘電体層31も可変容量コンデンサとして機能させることができる。
【0023】
第1誘電体層31と第2誘電体層32との他の形態として、第1誘電体層31と第2誘電体層32とは、互いに異なる材料の誘電体を含んでもよい。
【0024】
図3に示すように、PVDF分子は、炭素鎖に水素原子とフッ素原子とが結合している。水素原子は正に帯電し、フッ素原子は負に帯電するため、PVDF分子は、電気双極子モーメントを有する。PVDF分子が分子間力により凝集した場合、各PVDF分子の炭素鎖が延びる方向が揃う。水素原子とフッ素原子とは、炭素鎖の延びる方向に対して、垂直な方向に位置する。よって、PVDFの結晶では、自発分極する。PVDFの結晶に電界が印加された場合、炭素鎖の延びる方向であるX軸を中心軸として回転するように、分極の向きが変化する。よって、制御電圧が印加された状態においても、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧が印加されることにより分極の向きが変化する。このため、第2誘電体層32にPVDFを用いることにより、制御電圧の電圧値が変更された場合に、比誘電率εrが大きく変化する可変容量コンデンサ1を提供することができる。
【0025】
図4は、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に制御電圧が印加されることにより生じる制御電界Edの大きさと、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に交流電圧を印加した場合の比誘電率εrとの関係を示す図である。可変容量コンデンサ1は、比誘電率εrが2つのピークを有する誘電特性を有する。
【0026】
強誘電体は、制御電界が0V/mにおいて自発分極している。制御電界を抗電界Ecまで大きくすると、分極がゼロとなり、比誘電率εrは最大になる。抗電界Ec付近では、双極子モーメントは、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に印加された交流電圧に応じた向きに動き易いため、比誘電率εrは大きくなると考えられる。
【0027】
制御電界Edが抗電界Ecよりも大きくなると、比誘電率εrは小さくなる。電気双極子が、制御電界Edに拘束されて、交流電圧に応じて動きにくくなるためだと考えられる。
【0028】
本実施形態では、制御電界Edの向きと、交流電圧が印加されることによる電界の向きとは交わる。このため、抗電界Ecより小さい制御電界Edの領域でも、比誘電率εrのピークが出現する。制御電界Edが印加されることにより、交流電圧が印加されることに応じて、制御電界Edが印加されていない場合よりも電気双極子が動き易くなるためであると考えられる。
【0029】
可変容量コンデンサ1の誘電特性は、アシスト領域と、分極反転領域、飽和領域とを有する。アシスト領域の制御電圧が印加されると、第2誘電体層32の分極の動きがアシストされる。具体的には、アシスト領域は、制御電界Edが抗電界Ecよりも小さく、比誘電率εrが比誘電率ε1よりも大きく、比誘電率ε2より小さい領域である。ここで、比誘電率ε1は、制御電界Edがゼロである場合の比誘電率εrである。比誘電率ε2は、比誘電率εrの2つのピークの間の極小点である。
【0030】
抗電界Ecの電圧を含む分極反転領域の制御電圧が印加されると、第2誘電体層32の分極は、交流電圧に応じて、アシスト領域よりもさらに反転し易くなる。具体的には、分極反転領域は、制御電界Edが抗電界Ecを含む電界範囲であり、アシスト領域における比誘電率εrのピーク値ε3よりも比誘電率εrが大きい領域である。
【0031】
飽和領域の制御電圧が印加されると、第2誘電体層32の分極の動きが拘束される。具体的には、飽和領域は、制御電界Edが抗電界Ecよりも大きく、制御電界Edが抗電界Ecよりも大きい領域である。
【0032】
上記のように、アシスト領域の制御電界Edを印加することにより、制御電界Edを印加しない場合よりも、分極を動き易くすることができる。よって、可変容量コンデンサ1にアシスト領域の制御電界Edを印加することにより、可変容量コンデンサ1の静電容量を、制御電界Edを印加しない場合の静電容量よりも大きくすることができる。
【0033】
また、分極反転領域の制御電界Edを印加することにより、分極を、アシスト領域よりも、さらに動き易くすることができる。よって、可変容量コンデンサ1に分極反転領域の制御電界Edを印加することにより、可変容量コンデンサ1の静電容量を、アシスト領域の制御電界Edを印加した場合の静電容量よりも大きくすることができる。
【0034】
また、飽和領域の制御電界Edを印加することにより、分極を動きにくくすることができる。よって、可変容量コンデンサ1に飽和領域の制御電界Edを印加することにより、可変容量コンデンサ1の静電容量を、アシスト領域の制御電界Edを印加していない場合の静電容量よりも小さくすることができる。よって、可変容量コンデンサ1によれば、制御電界Edの大きさを調整することにより、可変容量コンデンサ1の容量値を目的の容量値に設定することができる。
【0035】
上記のように、PVDFは、炭素鎖の延びる方向を中心軸として回転する。よって、本願のように、制御電界Edの向きと異なる方向から交流電圧が印加された場合に分極が動き易い。このため、第2誘電体層32の誘電特性は異方性を有する。そして、第2誘電体層32は、制御電界Edの大きさによって、比誘電率εrが変化するため、良好な可変率を有する可変容量コンデンサ1を提供することができる。ここで、可変率とは、印加電界の変化量に対する比誘電率の変化量をいう。
【0036】
以上説明した第1実施形態によれば、第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、制御電圧が印加された場合に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている。これにより、第1取出電極層11と第2取出電極層12との距離と、第1制御電極層21と第2制御電極層22との距離とを独立に設定できる。このため、制御電圧を低電圧化できる。
【0037】
また、第2誘電体層32は、アシスト領域の制御電圧が印加された場合の比誘電率εrが、制御電圧が印加されていない場合の比誘電率εrよりも大きい誘電特性を有する。よって、第2誘電体層32にアシスト領域の制御電圧を印加することにより、制御電圧を印加していない場合よりも、可変容量コンデンサ1の容量値を大きくすることができる。
【0038】
また、第2誘電体層32は、飽和領域の制御電圧が印加された場合の比誘電率εrが、制御電圧が印加されていない場合の比誘電率εrよりも小さい誘電特性を有する。よって、第2誘電体層32に飽和領域の制御電圧を印加することにより、制御電圧を印加していない場合よりも、可変容量コンデンサ1の容量値を小さくすることができる。
【0039】
また、第2誘電体層32は、分極反転領域の制御電圧が印加された場合の比誘電率εrが、制御電圧が印加されていない場合の比誘電率εrよりも大きい誘電特性を有する。よって、第2誘電体層32に分極反転領域の制御電圧を印加することにより、制御電圧を印加していない場合よりも、可変容量コンデンサ1の容量値を大きくすることができる。
【0040】
また、第1制御電極層21と第2制御電極層22とはX方向に向かい合い、第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、X方向と直交するZ方向に向かい合う。これにより、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に印加される交流電圧により生じる電界の向きによらず、制御電界Edを第2誘電体層32に均一に印加することができる。
【0041】
また、第2誘電体層32の誘電特性は異方性を有する。このため、制御電圧と異なる方向に交流電圧が印加された場合に、制御電圧の電圧値に応じて容量値が変化する可変容量コンデンサ1を提供することができる。また、第2誘電体層32は、強誘電体ポリマーを含む。強誘電体ポリマーを含むため、容量値の良好な可変率を有する可変容量コンデンサ1を提供することができる。
【0042】
B.第2実施形態:
図5に示すように、本実施形態に係る可変容量コンデンサ201は、第1配置体ST1と第2配置体ST2とを有する。上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0043】
第2配置体ST2は、第1配置体ST1がZ方向に配置されて構成されている。第1取出電極層11と第2取出電極層12とは、Z方向に交互に配置されている。複数の第1取出電極層11は、図示しない第1取出電極共通層に電気的に接続されている。複数の第2取出電極層12は、図示しない第2取出電極共通層に電気的に接続されている。第1配置体ST1がZ方向に積層されていることにより、隣り合う第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に形成される各コンデンサは互いに並列に接続されるため、可変容量コンデンサ201の容量値を大きくすることができる。
【0044】
可変容量コンデンサ1の体格を固定した場合には、可変容量コンデンサ1の容量値と可変容量コンデンサ1の耐電界とはトレードオフの関係になる。例えば、
図6に示す第1配置体ST1の場合、第1配置体ST1の第1配置数をn1、印加電圧をV1とすると、容量値C1は、平行板コンデンサの式を用いて、下記の式(1)で示される。ここで、第1配置数とは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との組の数である。つまり、第1配置数は、第1制御電極層21の層数と、第2制御電極層22の層数とが同じである場合、層数をnとした場合、(2×n-1)と一致する。
C1=ε
0・ε
r・S1/(D/n1)・n1
=ε
0・ε
r・S1・n1
2/D ・・・(1)
式(1)のパラメータは、以下の通りである。
ε
0:真空の誘電率
ε
r:誘電体の比誘電率
S1:第1制御電極層と第2制御電極層とにより形成されるコンデンサの面積
D:積層方向の長さ
なお、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間の距離である電極間距離d1は、
d1=W/n1
また、第1配置体ST1における誘電体に印加される電界E1は、下記の式(2)で示される。
E1=V1/(W/n1)
=V1・n1/W ・・・(2)
式(1)および式(2)より、第1配置数n1を大きくすると、容量値は大きくなるものの、印加電界も大きくなる。印加電界の大きさは、誘電体に印加可能な電界である耐電界に制限される。このため、第1配置数n1は、誘電体の耐電界により定まる。
【0045】
第2配置体ST2についても、同様に、第2配置体ST2の第2配置数をn2、印加電圧をV2とすると、容量値C2は、下記の式(3)で示される。
C2=ε0・εr・S2/H・n22 ・・・(3)
式(3)のパラメータは、以下の通りである。
S2:第1取出電極層と第2取出電極層とにより形成されるコンデンサの面積
H:積層方向の長さ
また、第2配置体ST2における誘電体に印加される電界E2は、下記の式(4)で示される。
E2=V2・n2/H ・・・(4)
【0046】
発明者らは、可変容量コンデンサ1の体格を固定した場合における第1配置数n1および第2配置数n2の最適値について検討した。検討に用いた各値は以下の通りである。
可変容量コンデンサの幅(W:Y方向の長さ):20mm
可変容量コンデンサの奥行き(D:X方向の長さ):20mm
可変容量コンデンサの高さ(H:Z方向の長さ):2mm
第1容量値(容量値が大きい場合):300nF
第2容量値(容量値が小さい場合):60nF
制御電圧(V1):10V
交流電圧(V2):200V(実効値)
検討した結果、第1配置数n1が20000以上、かつ第2配置数n2が100以上の場合に、耐電界の条件を満たし、かつ目標の容量値を得られることがわかった。
図6には、第1配置数n1が20000である場合の電界E1と、第2配置数n2が100である場合の電界E2とが示されている。式(3)を変形して得られる「H=ε
0・ε
r・S2・n2
2/C2」を、式(4)の「H」に代入することにより、電界E2は、下記の式(5)で示される。
E2=C2・V2/(ε
0・ε
r・S2・n2) ・・・(5)
よって、
図6に示されるように、容量値C2、電圧V2、面積S2、第2配置数n2を固定値に設定した場合、比誘電率ε
rを大きくするほど、電界E2は小さくなる。
【0047】
ここで、誘電体にP(VDF-TrFE)を用いた場合、目標の容量値を満たす比誘電率εrは、「20」である。そして、
図6のポイントPOは、比誘電率εrが20である場合のP(VDF-TrFE)の耐電界を示している。
図6に示すように、第1配置数n1が20000、かつ第2配置数n2が100である場合には、電界E1と電界E2とのいずれも誘電体の耐電界より小さいため、誘電体の耐電界条件を満たすことができる。
【0048】
以上説明した第2実施形態によれば、可変容量コンデンサ201は、第1配置体ST1と第2配置体ST2とを有することにより、各電極が交互に配置された構造を有さないコンデンサと比較して、可変容量コンデンサ201の容量値を大きくすることができる。また、第1配置体ST1の第1制御電極層21と第2制御電極層22とが配置される方向と第2配置体ST2の第1取出電極層11と第2取出電極層12とが配置される方向とは異なるため、耐電界と容量値とのいずれも満たす可変容量コンデンサ201を提供することができる。また、第1配置数n1を20000以上、第2配置数n2を100以上とすることにより、目的の容量値の可変容量コンデンサ201を提供することができる。
【0049】
C.第3実施形態:
図7に示すように、第3実施形態に係る可変容量コンデンサ301は、第1取出電極層11と第2取出電極層12との向かい合う方向と、第1制御電極層21と第2制御電極層22との向かい合う方向とが、第1実施形態とは異なる。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0050】
図7に示すように、可変容量コンデンサ301は、第1取出電極層11と、第2取出電極層12と、第1制御電極層21と、第2制御電極層22と、第2誘電体層32とに加え、第1絶縁層51と、第2絶縁層52とを有する。第1制御電極層21の上に第1絶縁層51が配置されている。第1絶縁層51の上に第1取出電極層11と、第2取出電極層12と、第2誘電体層32とが配置されている。第1取出電極層11と、第2取出電極層12とは、第2誘電体層32を挟んで、X方向に向かい合う。第2誘電体層32の上に、第2絶縁層52が配置されている。第2絶縁層52は、第1取出電極層11と、第2誘電体層32と、第2取出電極層12とを覆う。第2絶縁層52の上に、第2制御電極層22が配置されている。第1制御電極層21と、第2制御電極層22とは第2誘電体層32を挟んで、Z方向に向かい合う。
【0051】
本実施形態では、第1絶縁層51および第2絶縁層52は、同じ材料を含む。第1絶縁層51および第2絶縁層52として、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や二酸化ケイ素(SiO2)などの酸化膜を用いることができる。なお、他の実施形態として、第1絶縁層51と、第2絶縁層52とは、互いに異なる材料を含んで実現されてもよい。
【0052】
第2誘電体層32と第1制御電極層21との間に第1絶縁層51が配置され、第2誘電体層32と第2制御電極層22との間に第2絶縁層52が配置されていることにより、制御電圧が印加された場合に生じる電界を第2誘電体層32に均等に印加することができる。第1絶縁層51および第2絶縁層52が配置されていることにより、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に交流電圧が印加されることにより生じる電界の影響を抑えることができるからである。
【0053】
発明者らは、可変容量コンデンサ301の第1取出電極層11と第2制御電極層22との電極間距離Lcと、第2制御電極層22の長さである電極長Leの最適値について検討した。
図8に示す可変容量領域Rcvは、第1制御電極層21と第2制御電極層22との間に印加される制御電圧により比誘電率εrが変化して容量値が可変する領域である。固定容量領域Rcfは、制御電圧が印加された場合にも電界が印加されにくいため、比誘電率εrが変化しない領域、つまり容量値が固定の領域である。可変容量領域Rcvに形成されるコンデンサを可変容量コンデンサCv、固定容量領域Rcfに形成されるコンデンサを固定容量コンデンサCfと称する。第1取出電極層11と第2取出電極層12との間には、固定容量コンデンサCfと、可変容量コンデンサCvと、固定容量コンデンサCfとが直列に接続されたコンデンサが形成される。第1取出電極層11と第2取出電極層12との間に形成されるコンデンサの容量値、すなわち、合成容量Csは以下の式(6)により示される。
Cs=1/(1/Cf+1/Cv+1/Cf) ・・・(6)
式(6)において、「Cf」は、固定容量コンデンサCfの容量値を示す。「Cv」は、可変容量コンデンサCvの容量値を示す。
【0054】
図8に示すグラフの横軸は可変容量コンデンサCvの可変率であり、縦軸は合成容量Csの可変率である。可変率とは、電界の変化量に対する容量の変化量、すなわち(ΔC/ΔE)である。
図8は、第1取出電極層11と第2取出電極層12との間の距離、すなわち(Lc+Le+Lc)を固定値に設定し、電極間距離Lcと電極長Leとの比率を変化させて算出した可変率をプロットしたグラフである。
図8に示すように、電極長Leに対する電極間距離Lcの割合を小さくするほど、合成容量Csの可変率を大きくすることができる。
【0055】
D.第4実施形態:
図9に示す第4実施形態に係る可変容量コンデンサ1は、非接触給電システム400が備える給電装置70に用いられる。上記各実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0056】
図9に示すように、非接触給電システム400は、給電装置70と、受電装置80とを備える。本実施形態では、給電装置70は、道路の下に埋設されている。受電装置80は、道路を走行する移動体としての車両に搭載されている。車両の走行中に、受電装置80は、給電装置70から給電される。ここで、走行中とは、車両VEが移動している場合と、信号待ち等で車両が停止している場合とを含む。
【0057】
なお、受電装置80が搭載される移動体は、道路を走行する車両に限られず、例えば、AGV(無人搬送車)や、走行ロボットなどでもよい。
【0058】
給電装置70は、交流電源71と、複数の1次側共振回路72と、複数の制御電圧印加回路76とを備える。交流電源71は、複数の1次側共振回路72に対して給電する。1次側共振回路72は、1次側コイルL1と、可変容量コンデンサ1とを有する直列共振回路である。複数の1次側コイルL1は、道路の延在方向に沿って配列されている。制御電圧印加回路76は、可変容量コンデンサ1に印加する制御電圧の電圧値を変更することにより、可変容量コンデンサ1の容量値を変更する。
【0059】
受電装置80は、2次側共振回路81と、受電側回路83とを備える。2次側共振回路81は、2次側コイルL2と、コンデンサ82とを有する直列共振回路である。受電側回路83は、受電した電力を利用する回路である。受電側回路83は、図示しない整流回路と、バッテリとを含む。
【0060】
交流電源71は、予め定められた動作周波数の交流電力を1次側共振回路72に印加する。本実施形態では、動作周波数は、85kHzである。可変容量コンデンサ1は、1次側共振回路72を動作周波数にて共振状態とするとともに、1次側共振回路72を動作周波数にて非共振状態とする機能を有する。本実施形態では、可変容量コンデンサ1は、第1容量値と、第1容量値よりも小さい第2容量値とに切り替え可能に構成されている。そして、可変容量コンデンサ1の容量値は、制御電圧印加回路76から出力される制御電圧により、第1容量値と第2容量値とのいずれかに切り替えられる。1次側コイルL1と2次側コイルL2とが磁気的に結合している場合であって、可変容量コンデンサ1が第1容量値の場合、1次側共振回路72は動作周波数にて共振状態となる。つまり、可変容量コンデンサ1の第1容量値は、1次側共振回路72の共振周波数が動作周波数と一致する値に設定されている。対して、可変容量コンデンサ1が第2容量値の場合、1次側共振回路72の共振周波数が動作周波数からずれるため、1次側共振回路72は動作周波数にて非共振状態となる。第2容量値は、第1容量値よりも小さいため、可変容量コンデンサ1が第2容量値に設定されている場合には、1次側共振回路72のインピーダンスは大きくなり、1次側コイルL1を流れる電流は小さくなる。
【0061】
可変容量コンデンサ1が第1容量値に設定され、1次側コイルL1に送電電流が流れて、給電が行われている状態を給電状態と呼ぶ。可変容量コンデンサ1が第2容量値に設定され、1次側コイルL1に送電電流よりも小さい待機電流が流れて、給電を行っていない状態を待機状態と呼ぶ。
【0062】
1次側コイルL1と2次側コイルL2とが磁気的に結合している場合において、1次側共振回路72の共振周波数と、2次側共振回路81の共振周波数とは、略同一になるように設定されている。これにより、1次側コイルL1と、2次側コイルL2との磁界共振によって、受電装置80への非接触給電を行うことができる。
【0063】
1次側コイルL1は、道路の延在方向に配列されており、2次側コイルL2は、最寄りの1次側コイルL1から非接触給電を受ける。待機状態において、1次側コイルL1に待機電流が流れることにより、1次側コイルL1は磁束を発生させている。受電装置80は、図示しない磁気センサを備えている。そして、受電装置80が対象の1次側共振回路72に近づくと、1次側コイルL1が発生させる磁束を磁気センサにより検出する。受電装置80は、磁束を検出すると、2次側コイルL2に交流電流を流して、磁束を発生させる。給電装置70は、図示しない磁気センサを備えている。そして、2次側コイルL2が発生させる磁束を磁気センサにより検出すると、制御電圧印加回路76は、制御電圧の電圧値を変更して、可変容量コンデンサ1を第1容量値に切り替える。これにより、1次側共振回路72が共振状態となり、給電が開始される。
【0064】
給電装置70が、2次側コイルL2の存在を検出する方法は上記に限られない。他の形態として、給電装置70は、1次側コイルL1に流れる電流を検出し、電流の増加を検出する形態や1次側コイルL1の電圧を検出し、電圧の増加を検出する形態でもよい。
【0065】
図10に示すように、給電状態において、制御電圧印加回路76は、制御電圧を0Vに設定する。これにより、第2誘電体層32に印加される制御電界Edは0V/mとなる。そして、可変容量コンデンサ1の容量値は、第1容量値に設定される。なお、比誘電率εrは、電界の変化量に対する分極の変化量、すなわち、ヒステリシス曲線の傾きで示される。待機状態において、制御電圧印加回路76は、制御電圧を飽和領域の電圧値に設定する。これにより、給電状態よりも比誘電率εrは、小さくなるため、可変容量コンデンサ1の容量値は、給電状態における容量値よりも小さい第2容量値となる。待機状態の場合には、ヒステリシス曲線における面積が小さくなるため、低損失とすることができる。
【0066】
以上説明した第4実施形態によれば、可変容量コンデンサ1は、給電装置70に用いられる。制御電圧印加回路76は、給電装置70の待機状態において、飽和領域の電圧を印加することにより、可変容量コンデンサ1の容量値を給電状態における容量値よりも小さくする。これにより、待機状態における可変容量コンデンサ1に発生する損失を低減することができる。
【0067】
E.他の実施形態:
(E1)上記第1実施形態では、第2誘電体層32は、強誘電体ポリマーを含む。他の実施形態として、第2誘電体層32は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの無機強誘電体を含んでもよい。強誘電体ポリマーと同様に、無機強誘電体は、制御電圧の大きさに応じて、比誘電率εrが変化する。このため、可変容量コンデンサ1を提供することができる。誘電特性が異方性を有する無機強誘電体であるとさらによい。制御電圧が印加される方向と、交流電圧が印加される方向が異なる場合にも、制御電圧の大きさにより比誘電率が変化するため、良好な可変率を有する可変容量コンデンサ1を提供することができるからである。なお、チタン酸バリウムは結晶構造の3軸のそれぞれに分極することができるため、チタン酸バリウムの誘電特性は異方性を有する。
【0068】
(E2)上記第1実施形態では、第2誘電体層32は、強誘電体ポリマーを含む。他の実施形態として、第2誘電体層32は、強誘電体リラクサーを含んでもよい。強誘電体リラクサーとは、
図11に示すように、分子の分極が互いに揃っているドメインが局所的に形成されているポリマーである。強誘電体リラクサーは、局所的に分極の向きを変更することができるため、小さい電界で分極が動く特性を有する。第2誘電体層32として強誘電体リラクサーを用いることにより、可変容量コンデンサ1の容量の可変率を向上させることができる。また、ヒステリシス曲線の面積が、強誘電体のヒステリシス曲線の面積と比較して小さいため、低損失の可変容量コンデンサ1を提供することができる。強誘電体リラクサーの具体例は、P(VDF-TrFE)をベースにCTFEやCFEなどの第3のモノマーを共重合させた共重合体である、例えば、P(VDF-TrFE-CTFE)やP(VDF-TrFE-CTE)である。この他に、強誘電体リラクサーは、例えば、P(VDF-TrFE)などの強誘電体ポリマーに電子ビームを照射して欠陥を作ることにより作製することができる。
【0069】
(E3)上記第4実施形態では、制御電圧印加回路76は、給電装置70の待機状態において飽和領域の制御電圧を印加して、給電装置70の送電状態において制御電圧を印加しない。他の形態として、制御電圧印加回路76は、給電装置70の待機状態において分極反転領域またはアシスト領域の制御電圧を印加して、給電装置70の送電状態において制御電圧を印加しなくてもよい。
【0070】
(E4)上記第1実施形態では、第1制御電極層21と第2制御電極層22とがX方向に交互に配置されている。他の実施形態として、第1制御電極層21と第2制御電極層22とをそれぞれ1つ有する構成としてもよい。また、第1実施形態では、第1取出電極層11と第2取出電極層12とはZ方向に向かい合い、第1制御電極層21と第2制御電極層22とはX方向に向かい合う。向かい合う方向は、これに限られない。例えば、第1取出電極層11と第2取出電極層12とはX方向に向かい合い、第1制御電極層21と第2制御電極層22とはZ方向に向かい合う構造でもよい。
【0071】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0072】
他の形態:
本開示の特徴を以下の通り示す。
(形態1)
可変容量コンデンサ(1,201,301)であって、
第1制御電極(21)と、
前記第1制御電極と向かい合う第2制御電極(22)と、
少なくとも前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に配置された誘電体層(32)と、
前記誘電体層を挟んで向かい合う第1取出電極(11)と、第2取出電極(12)とを備え、
前記第1取出電極と前記第2取出電極とは、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に制御電圧が印加された場合に、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に生じる電界ベクトルと交わる方向に沿って電界を生じさせる位置に配置されている、可変容量コンデンサ。
(形態2)
形態1に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、分極の動きをアシストするためのアシスト領域の前記制御電圧が印加された場合の比誘電率が、前記制御電圧が印加されていない場合の比誘電率よりも大きい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
(形態3)
形態1または2に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、分極の動きを拘束するための飽和領域の前記制御電圧が印加された場合の比誘電率が、前記制御電圧が印加されていない場合の比誘電率よりも小さい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
(形態4)
形態1から3のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、抗電界の電圧値を含む分極反転領域の前記制御電圧が印加された場合の比誘電率が、前記制御電圧が印加されていない場合の比誘電率よりも大きい誘電特性を有する、可変容量コンデンサ。
(形態5)
形態1から4のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサであって、
前記第1制御電極と前記第2制御電極とは第1方向に向かい合い、前記第1取出電極と前記第2取出電極とは、前記第1方向と直交する第2方向に向かい合う、可変容量コンデンサ。
(形態6)
形態1から5のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサであって、
前記第1制御電極と前記第2制御電極とが前記誘電体層を挟んで交互に配置された第1配置体(ST1)と、
前記第1制御電極と前記第2制御電極とが、前記第1配置体を挟んで交互に配置された第2配置体(ST2)と、を有する、可変容量コンデンサ。
(形態7)
形態6に記載の可変容量コンデンサであって、
前記第1配置体の配置数は20000以上であり、前記第2配置体の配置数は100以上である、可変容量コンデンサ。
(形態8)
形態1から7のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層の誘電特性は異方性を有する、可変容量コンデンサ。
(形態9)
形態1から8のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、強誘電体ポリマーと、無機強誘電体とのいずれかを含む、可変容量コンデンサ。
(形態10)
形態1から9のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサであって、
前記誘電体層は、強誘電体リラクサーを含む、可変容量コンデンサ。
(形態11)
形態1から10のいずれか一項に記載の可変容量コンデンサを有する給電装置(70)であって、
前記誘電体層は、強誘電体を含み、
前記給電装置は、前記可変容量コンデンサと1次側コイル(L1)とで構成される共振回路(72)と、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間に前記制御電圧を印加する制御電圧印加回路(76)と、を有し、
前記制御電圧印加回路は、前記給電装置の待機状態において、分極の動きを拘束するための飽和領域の電圧を印加する、給電装置。
【符号の説明】
【0073】
1,201,301…可変容量コンデンサ、11…第1取出電極、12…第2取出電極層、21…第1制御電極層、22…第2制御電極層、31…第1誘電体層、32…第2誘電体層