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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110053
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
A61M25/09 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014384
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】上津原 才司
(72)【発明者】
【氏名】中園 美保
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB16
4C267BB52
4C267CC07
4C267HH17
4C267HH22
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】手術時間を短縮させる。
【解決手段】前後方向に延びる第1可撓管体11と、前後方向に延びるとともに、第1可撓管体11の内側に設けられた操作ワイヤ12と、第1可撓管体の前端開口を覆い、かつ操作ワイヤの前端縁が固着された第1被固着体13と、第1可撓管体の後端開口を覆い、かつ操作ワイヤの後端縁が固着された第2被固着体14と、を備え、第1可撓管体のうち、前端開口を有する前端部21は、これより後方に位置する他の部分より曲げ変形しやすく形成されるとともに、第1被固着体の前後動に伴い前後方向に伸縮変形し、第1可撓管体のうち、後端開口を有する後端部22は、後端部より前方に位置する前部分23に対して、分割されて変位可能に設けられ、第2被固着体は、第1可撓管体の後端部に固着され、操作ワイヤは、第1被固着体と第2被固着体とを各別に連結した第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる第1可撓管体と、
前後方向に延びるとともに、前記第1可撓管体の内側に設けられた操作ワイヤと、
前記第1可撓管体の前端開口を覆い、かつ前記操作ワイヤの前端縁が固着された第1被固着体と、
前記第1可撓管体の後端開口を覆い、かつ前記操作ワイヤの後端縁が固着された第2被固着体と、を備え、
前記第1可撓管体のうち、前端開口を有する前端部は、これより後方に位置する他の部分より曲げ変形しやすく形成されるとともに、前記第1被固着体の前後動に伴い前後方向に伸縮変形し、
前記第1可撓管体のうち、後端開口を有する後端部は、後端部より前方に位置する前部分に対して、分割されて変位可能に設けられ、
前記第2被固着体は、前記第1可撓管体の後端部に固着され、
前記操作ワイヤは、前記第1被固着体と前記第2被固着体とを各別に連結した第1ワイヤ部および第2ワイヤ部を備えている、ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記第1可撓管体の後端部の前部、および前記第1可撓管体の前部分の後端部は、前後方向に延びる第2可撓管体内に挿入され、かつ前記第2可撓管体を介して連結されている、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第1可撓管体の後端部の前部、および前記第1可撓管体の前部分の後端部それぞれの外周面は、前後方向に互いに近付くに従い径方向の内側に向けて延びている、請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記第1ワイヤ部および前記第2ワイヤ部は、互いに交差する向きに延びている、請求項1から3のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、ガイドワイヤが知られている。一般に、ガイドワイヤは、血管内に挿入され、血管内の慢性完全閉塞病変部等を貫いた状態で、バルーンやステントを慢性完全閉塞病変部等に案内するために用いられる。
ガイドワイヤにより慢性完全閉塞病変部等を貫通する際、例えば次の手順がとられている。
まず、ガイドワイヤを、カテーテル内に挿入した状態で血管内に進入させ、血管内の慢性完全閉塞病変部等に到達させたときに、カテーテルは血管内に残したまま、これまで用いていたガイドワイヤを抜き出し、その後、このガイドワイヤより先端荷重等が高いガイドワイヤを、改めてカテーテル内に挿入して慢性完全閉塞病変部等に突き刺し、ガイドワイヤおよびカテーテルにより慢性完全閉塞病変部等を貫通する。その後、カテーテルは慢性完全閉塞病変部等を貫通した状態で血管内に残したまま、先端荷重等が高いガイドワイヤを抜き出し、先端荷重等が低い元のガイドワイヤを再度カテーテル内に挿入して、慢性完全閉塞病変部等を貫く位置まで到達させた後に、このガイドワイヤを残したまま、カテーテルを抜き出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガイドワイヤでは、慢性完全閉塞病変部等を貫通するためには、先端荷重等の曲げ剛性が異なるガイドワイヤを血管等に対して抜き差しして交換し使い分ける必要があり、また、慢性完全閉塞病変部等に到達させるまでの間に、血管分岐部において血管を選択して目的の血管に進入させるためには、ガイドワイヤを血管に対して抜き差して、体外でガイドワイヤの前端部の曲げ形状(プリシェイプと呼ばれる曲げ癖)を微調整する必要があり、手術時間の短縮が求められていた。
【0005】
本発明は、手術時間を短縮させることができるガイドワイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るガイドワイヤは、前後方向に延びる第1可撓管体と、前後方向に延びるとともに、前記第1可撓管体の内側に設けられた操作ワイヤと、前記第1可撓管体の前端開口を覆い、かつ前記操作ワイヤの前端縁が固着された第1被固着体と、前記第1可撓管体の後端開口を覆い、かつ前記操作ワイヤの後端縁が固着された第2被固着体と、を備え、前記第1可撓管体のうち、前端開口を有する前端部は、これより後方に位置する他の部分より曲げ変形しやすく形成されるとともに、前記第1被固着体の前後動に伴い前後方向に伸縮変形し、前記第1可撓管体のうち、後端開口を有する後端部は、後端部より前方に位置する前部分に対して、分割されて変位可能に設けられ、前記第2被固着体は、前記第1可撓管体の後端部に固着され、前記操作ワイヤは、前記第1被固着体と前記第2被固着体とを各別に連結した第1ワイヤ部および第2ワイヤ部を備えている。
【0007】
第1可撓管体のうち、後端部を、後端部より前方に位置する前部分に対して、それぞれの中心軸線が互いに傾斜し、かつ第1ワイヤ部および第2ワイヤ部のうちのいずれか一方のワイヤ部が、いずれか他方のワイヤ部よりも引張される向きに傾けると、第1被固着体が、前後方向に対して傾いた状態で後方に移動することで、前記他方のワイヤ部の前端縁に対して前記一方のワイヤ部の前端縁が位置している側に向けて、第1可撓管体の前端部が曲げられることとなり、第1可撓管体の後端部を操作して、ガイドワイヤの前端部を曲げながら、血管分岐部において血管を選択して目的の血管に進入させることができる。これにより、ガイドワイヤを血管に沿わせながら慢性完全閉塞病変部等に到達させる際の、医師の操作感覚に対する依存を低減することができるとともに、ガイドワイヤを血管に対して抜き差して、体外でガイドワイヤの前端部の曲げ形状を微調整する必要を無くすことができる。
第1可撓管体のうち、後端部を前部分に対して後方に引くと、第1被固着体が後方に移動して、第1可撓管体の前端部が前後方向に圧縮変形することで、第1可撓管体の前端部の曲げ剛性が高くなる。したがって、ガイドワイヤを血管内に挿入した状態で、第1可撓管体の後端部を操作することで、第1可撓管体の前端部の曲げ剛性を変化させることができる。
これにより、ガイドワイヤにより慢性完全閉塞病変部等を貫通する際、ガイドワイヤを、血管内に進入させ、血管内の慢性完全閉塞病変部等に到達させるまでは、第1可撓管体の前端部の曲げ剛性を低くしておき、ガイドワイヤを慢性完全閉塞病変部等に突き刺して、ガイドワイヤにより慢性完全閉塞病変部等を貫通するときに、第1可撓管体の後端部を引いて第1可撓管体の前端部の曲げ剛性を高くし、慢性完全閉塞病変部等の貫通後は、第1可撓管体の後端部の操作を解除して第1可撓管体の前端部の曲げ剛性を元の低い状態に戻すことができる。したがって、慢性完全閉塞病変部等を貫通するために、前端部の曲げ剛性が異なるガイドワイヤを血管等に対して抜き差しして交換し使い分ける必要を無くすことができる。
以上より、手術時間を短縮させることができる。
【0008】
操作ワイヤが、第1可撓管体の内側に設けられ、操作ワイヤの前端縁が、第1被固着体に固着され、操作ワイヤの後端縁が、第2被固着体に固着されているので、操作ワイヤの露出が抑えられ、ガイドワイヤをカテーテル内に容易に挿入することができる。さらに、例えばバルーンカテーテルやマイクロカテーテルを、ガイドワイヤに、ガイドワイヤの後方から容易に外挿することもできる。
【0009】
前記第1可撓管体の後端部の前部、および前記第1可撓管体の前部分の後端部は、前後方向に延びる第2可撓管体内に挿入され、かつ前記第2可撓管体を介して連結されてもよい。
【0010】
前後方向で互いに隣接する、第1可撓管体の後端部の前部、および第1可撓管体の前部分の後端部が、第2可撓管体を介して連結されているので、第1可撓管体の後端部の操作を解除したときに、第2可撓管体の復元変形に伴い、第1可撓管体の後端部が元の位置に復帰することとなり、操作性を向上させることができる。
【0011】
前記第1可撓管体の後端部の前部、および前記第1可撓管体の前部分の後端部それぞれの外周面は、前後方向に互いに近付くに従い径方向の内側に向けて延びてもよい。
【0012】
第1可撓管体の後端部の前部、および第1可撓管体の前部分の後端部それぞれの外周面が、前後方向に互いに近付くに従い径方向の内側に向けて延びているので、この部分に外装された第2可撓管体が、第1可撓管体の外周面から径方向の外側に張り出す量を抑えることが可能になり、ガイドワイヤの外径を小さく抑えることができる。
【0013】
前記第1ワイヤ部および前記第2ワイヤ部は、互いに交差する向きに延びてもよい。
【0014】
第1ワイヤ部および第2ワイヤ部が、互いに交差する向きに延びているので、第1可撓管体の後端部を前述のように傾ける向きと、第1可撓管体の前端部が曲がる向きと、を一致させることが可能になり、操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記態様によれば、手術時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のガイドワイヤの縦断面図である。
図2図1において、第1可撓管体の後端部を傾け、第1可撓管体の前端部を曲げ変形させた状態を示す図である。
図3図1において、第1可撓管体の後端部を後方に引き、第1可撓管体の前端部の曲げ剛性を高くした状態を示す図である。
図4】第2実施形態のガイドワイヤの縦断面図である。
図5図4において、第1可撓管体の後端部を傾け、第1可撓管体の前端部を曲げ変形させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ガイドワイヤの第1実施形態を、図1図3を参照しながら説明する。
ガイドワイヤ1は、第1可撓管体11と、操作ワイヤ12と、第1被固着体13と、第2被固着体14と、を備えている。第1可撓管体11、操作ワイヤ12、第1被固着体13、および第2被固着体14は、例えば金属材料等で形成されている。なお、第1可撓管体11、操作ワイヤ12、第1被固着体13、および第2被固着体14を形成する材質は、適宜変更してもよい。
【0018】
以下、第1可撓管体11の中心軸線Oに沿う第1被固着体13側を前側といい、中心軸線Oに沿う第2被固着体14側を後側といい、中心軸線Oに沿う方向を前後方向という。前後方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、前後方向から見て、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
第1可撓管体11の外径は、血管内に挿入可能な大きさとなっている(例えば0.2mm以上1.0mm以下)。第1可撓管体11の前端開口は、第1被固着体13に覆われている。第1可撓管体11の前端部21に第1被固着体13が固着され、第1可撓管体11の前端開口が、第1被固着体13に閉塞されている。第1可撓管体11の後端開口は、第2被固着体14に覆われている。第1可撓管体11の後端部22に第2被固着体14が固着され、第1可撓管体11の後端開口が、第2被固着体14に閉塞されている。
【0020】
第1可撓管体11のうち、前端開口を有する前端部21は、これより後方に位置する他の部分より曲げ変形しやすく形成されるとともに、第1被固着体13の前後動に伴い前後方向に伸縮変形可能に形成されている。
第1可撓管体11の前端部21は、前後方向に延びるコイルばね(以下、第1ばねという)により構成されている。
【0021】
第1ばねにおいて、後部21aの曲げ剛性は、前部21bの曲げ剛性よりも高くなっている。なお、第1ばねの曲げ剛性を、前後方向の全長にわたって同じにしてもよい。
第1ばねを形成する線材の直径は、全長にわたって同じになっている。前後方向から見た、第1ばねの外形形状、およびその大きさは、前後方向の全長にわたって同じになっている。なお、第1ばねを形成する線材の直径は、全長にわたって同じになっていなくてもよく、また、前後方向から見た、第1ばねの外形形状、およびその大きさは、前後方向の全長にわたって同じになっていなくてもよい。例えば、第1ばねの外径は、前方に向かうに従い小さくなっていてもよい。
【0022】
第1可撓管体11のうち、後端開口を有する後端部22は、後端部22より前方に位置する前部分23に対して、分割されて変位可能に設けられている。第1可撓管体11の後端部22は、医師が摘まむ等して操作可能な程度の大きさに形成されてもよい。第1可撓管体11の後端部22の前部22a、および第1可撓管体11の前部分23の後端部23aそれぞれの外周面は、前後方向に互いに近付くに従い径方向の内側に向けて延びている。
【0023】
第1可撓管体11の後端部22の前部22a、および第1可撓管体11の前部分23の後端部23aは、前後方向に延びる第2可撓管体15内に挿入され、かつ第2可撓管体15を介して連結されている。第2可撓管体15は、前後方向に延びるコイルばねとなっている。第2可撓管体15は、第1可撓管体11の後端部22、および第1可撓管体11の前部分23を前後方向に互いに突き当てる向きに付勢している。なお、第2可撓管体15は、第1可撓管体11の後端部22、および第1可撓管体11の前部分23を前後方向に付勢していなくてもよい。
【0024】
第1可撓管体11の後端部22の前部22aの外周面は、第2可撓管体15の後端部に前後方向に当接し、第2可撓管体15の後端部を支持している。第1可撓管体11の前部分23の後端部23aの外周面は、第2可撓管体15の前端部に前後方向に当接し、第2可撓管体15の前端部を支持している。第2可撓管体15の前後方向の両端部は、第1可撓管体11の外周面に、例えばろう付け、若しくははんだ付け等により固着されている。
【0025】
第1可撓管体11の後端部22の後部22bの外周面は、周方向の全長にわたって前後方向に真直ぐ延びている。第1可撓管体11の後端部22の後部22b、および第2可撓管体15それぞれの、前後方向から見た外形形状、およびその大きさは、互いに同じになっている。なお、前後方向から見た第1可撓管体11の後端部22の後部22b、および第2可撓管体15それぞれの外形形状、およびその大きさを、互いに異ならせてもよい。この場合、前後方向から見て、第2可撓管体15は、第1可撓管体11の後端部22の後部22bの外周面から径方向の外側に張り出していないことが好ましい。
【0026】
第1可撓管体11の前部分23のうち、後端部23aに対して後端部23aの前方から連なる接続部分、および第2可撓管体15それぞれの、前後方向から見た外形形状、およびその大きさは、互いに同じになっている。なお、前後方向から見た第1可撓管体11の前部分23の接続部分、および第2可撓管体15それぞれの外形形状、およびその大きさを、互いに異ならせてもよい。この場合、前後方向から見て、第2可撓管体15は、第1可撓管体11の前部分23の接続部分の外周面から径方向の外側に張り出していないことが好ましい。
【0027】
ここで、第1可撓管体11の前部分23は、第1可撓管体11の前端部21を構成する前述した第1ばねと、周方向および前後方向に連続して延びる管状の中空体と、により構成され、第1ばねの後部21a内に中空体の前端部23bが挿入されている。中空体の前端部23bの外周面は、前方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。中空体の前端部23bの外周面は、第1ばねの後部21aに前後方向に当接し、第1ばねの後部21aを支持している。中空体は、第1被固着体13の前後動に伴い前後方向に伸縮変形しない剛性を有している。
中空体のうち、前端部23bに対して前端部23bの後方から連なる接続部分、および第1ばねそれぞれの、前後方向から見た外形形状、およびその大きさは、互いに同じになっている。なお、前後方向から見た中空体の接続部分および第1ばねそれぞれの外形形状、およびその大きさを、互いに異ならせてもよい。この場合、前後方向から見て、第1ばねは、中空体の接続部分の外周面から径方向の外側に張り出していないことが好ましい。
【0028】
操作ワイヤ12は、前後方向に延びるとともに、第1可撓管体11の内側に設けられている。操作ワイヤ12は、弾性変形可能に形成されている。操作ワイヤ12の前端縁は、第1被固着体13に固着され、操作ワイヤ12の後端縁は、第2被固着体14に固着されている。
【0029】
操作ワイヤ12は、第1被固着体13と第2被固着体14とを各別に連結した第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26を備えている。第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26はそれぞれ、1本のワイヤにより構成されている。第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26それぞれの前端縁および後端縁は、中心軸線Oから径方向に離れている。図示の例では、第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26は、中心軸線Oを径方向に挟む両側に各別に並列して設けられている。第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26は、前後方向に真直ぐ延びている。
なお、第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26は、1本のワイヤが折り返されて一体に形成されてもよい。
【0030】
第1被固着体13は、前方に向けて突の球面と、後方を向く平坦な後面と、を有する半球形状に形成されている。第1被固着体13は、中心軸線Oと同軸に配設されている。第1被固着体13の後面に、操作ワイヤ12の前端縁が、例えばろう付け、若しくは加締め等により固着されている。第1被固着体13の後面に、第1可撓管体11の前端部21が突き当てられている。第1被固着体13の後面に、第1可撓管体11の前端部21が、例えばろう付け、若しくははんだ付け等により固着されてもよい。
【0031】
前後方向から見た第1被固着体13および第1可撓管体11の前端部21それぞれの外形形状、およびその大きさは、互いに同じになっている。なお、前後方向から見た第1被固着体13および第1可撓管体11の前端部21それぞれの外形形状、およびその大きさを、互いに異ならせてもよい。
【0032】
第2被固着体14は、後方に向けて突の球面と、前方を向く平坦な前面と、を有する半球形状に形成されている。第2被固着体14は、中心軸線Oと同軸に配設されている。第2被固着体14の前面に、操作ワイヤ12の後端縁が、例えばろう付け、若しくは加締め等により固着されている。第2被固着体14の前面は、第1可撓管体11の後端開口縁に、例えばろう付け、若しくははんだ付け等により固着されている。
【0033】
前後方向から見た第2被固着体14および第1可撓管体11の後端部22の後部22bそれぞれの外形形状、およびその大きさは、互いに同じになっている。なお、前後方向から見た第2被固着体14および第1可撓管体11の後端部22の後部22bそれぞれの外形形状、およびその大きさを、互いに異ならせてもよい。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によるガイドワイヤ1によれば、第1可撓管体11のうち、後端部22を、後端部22より前方に位置する前部分23に対して、それぞれの中心軸線が互いに傾斜し、かつ第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26のうちのいずれか一方のワイヤ部が、いずれか他方のワイヤ部よりも引張される向きに傾けると、第1被固着体13が、前後方向に対して傾いた状態で後方に移動することで、前記他方のワイヤ部の前端縁に対して前記一方のワイヤ部の前端縁が位置している側に向けて、第1可撓管体11の前端部21が曲げられることとなる。
【0035】
例えば、図2に示されるように、第1可撓管体11の後端部22を、第1可撓管体11の前部分23に対して、それぞれの中心軸線が互いに傾斜し、かつ第1ワイヤ部25が、第2ワイヤ部26よりも引張される向き(図示の例では下向き)に傾けると、第1被固着体13が、前後方向に対して傾いた状態で後方に移動することで、第2ワイヤ部26の前端縁に対して第1ワイヤ部25の前端縁が位置している側に向けて(図示の例では上向き)、第1可撓管体11の前端部21が曲げられることとなる。
【0036】
したがって、第1可撓管体11の後端部22を操作して、ガイドワイヤ1の前端部を曲げながら、血管分岐部において血管を選択して目的の血管に進入させることができる。これにより、ガイドワイヤ1を血管に沿わせながら慢性完全閉塞病変部等に到達させる際の、医師の操作感覚に対する依存を低減することができるとともに、ガイドワイヤ1を血管に対して抜き差して、体外でガイドワイヤ1の前端部の曲げ形状を微調整する必要を無くすことができる。
【0037】
図3に示されるように、第1可撓管体11のうち、後端部22を前部分23に対して後方に引くと、第1被固着体13が後方に移動して、第1可撓管体11の前端部21が前後方向に圧縮変形することで、第1可撓管体11の前端部21の曲げ剛性が高くなる。したがって、ガイドワイヤ1を血管内に挿入した状態で、第1可撓管体11の後端部22を操作することで、第1可撓管体11の前端部21の曲げ剛性を変化させることができる。
【0038】
これにより、ガイドワイヤ1により慢性完全閉塞病変部等を貫通する際、ガイドワイヤ1を、血管内に進入させ、血管内の慢性完全閉塞病変部等に到達させるまでは、第1可撓管体11の前端部21の曲げ剛性を低くしておき、ガイドワイヤ1を慢性完全閉塞病変部等に突き刺して、ガイドワイヤ1により慢性完全閉塞病変部等を貫通するときに、第1可撓管体11の後端部22を引いて第1可撓管体11の前端部21の曲げ剛性を高くし、慢性完全閉塞病変部等の貫通後は、第1可撓管体11の後端部22の操作を解除して第1可撓管体11の前端部21の曲げ剛性を元の低い状態に戻すことができる。したがって、慢性完全閉塞病変部等を貫通するために、前端部の曲げ剛性が異なるガイドワイヤ1を血管等に対して抜き差して交換し使い分ける必要を無くすことができる。
【0039】
以上より、手術時間を短縮させることができる。
【0040】
操作ワイヤ12が、第1可撓管体11の内側に設けられ、操作ワイヤ12の前端縁が、第1被固着体13に固着され、操作ワイヤ12の後端縁が、第2被固着体14に固着されているので、操作ワイヤ12の露出が抑えられ、ガイドワイヤ1をカテーテル内に容易に挿入することができる。さらに、例えばバルーンカテーテルやマイクロカテーテルを、ガイドワイヤ1に、ガイドワイヤ1の後方から容易に外挿することもできる。
【0041】
前後方向で互いに隣接する、第1可撓管体11の後端部22の前部22a、および第1可撓管体11の前部分23の後端部23aが、第2可撓管体15を介して連結されているので、第1可撓管体11の後端部22の操作を解除したときに、第2可撓管体15の復元変形に伴い、第1可撓管体11の後端部22が元の位置に復帰することとなり、操作性を向上させることができる。
【0042】
第1可撓管体11の後端部22の前部22a、および第1可撓管体11の前部分23の後端部23aそれぞれの外周面が、前後方向に互いに近付くに従い径方向の内側に向けて延びているので、この部分に外装された第2可撓管体15が、第1可撓管体11の外周面から径方向の外側に張り出す量を抑えることが可能になり、ガイドワイヤ1の外径を小さく抑えることができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態に係るガイドワイヤ2を、図4および図5を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0044】
本実施形態のガイドワイヤ2では、第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26が、互いに交差する向きに延びている。第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26は、前後方向に傾斜する向きに直線状に延びている。径方向のうち、第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26それぞれの後端縁が並ぶ向きに対して直交する方向から見て、第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26は、1か所で交差してX字状を呈する。図示の例では、前述した直交する方向から見て、第1ワイヤ部25の後端縁は、第2ワイヤ部26の後端縁より上方に位置し、第1ワイヤ部25の前端縁は、第2ワイヤ部26の前端縁より下方に位置している。
【0045】
例えば、第1可撓管体11の後端部22を、第1可撓管体11の前部分23に対して、それぞれの中心軸線が互いに傾斜し、かつ第1ワイヤ部25が、第2ワイヤ部26よりも引張される向き(図示の例では下向き)に傾けると、第1被固着体13が、前後方向に対して傾いた状態で後方に移動することで、第2ワイヤ部26の前端縁に対して第1ワイヤ部25の前端縁が位置している側に向けて(図示の例では下向き)、第1可撓管体11の前端部21が曲げられることとなる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によるガイドワイヤ2によれば、第1実施形態のガイドワイヤ1と同様の作用効果が得られる。
第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26が、互いに交差する向きに延びているので、第1可撓管体11の後端部22を、第1可撓管体11の前部分23に対して、それぞれの中心軸線が互いに傾斜し、かつ第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26のうちのいずれか一方のワイヤ部が、いずれか他方のワイヤ部よりも引張されるように傾ける向きと、第1可撓管体11の前端部21が曲がる向きと、を一致させることが可能になり、操作性を向上させることができる。
【0047】
例えば、図5に示されるように、第1可撓管体11の後端部22を、第1可撓管体11の前部分23に対して、それぞれの中心軸線が互いに傾斜し、かつ第1ワイヤ部25が、第2ワイヤ部26よりも引張される向き(図示の例では下向き)に傾けると、第1被固着体13が、前後方向に対して傾いた状態で後方に移動することで、第2ワイヤ部26の前端縁に対して第1ワイヤ部25の前端縁が位置している側に向けて(図示の例では下向き)、第1可撓管体11の前端部21が曲げられることとなる。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
例えば、第1可撓管体11の前端部21、および第2可撓管体15は、コイルばねに限らず、周方向および前後方向に連続して延びる管状に形成されてもよい。
第2可撓管体15は設けなくてもよい。
第1可撓管体11の後端部22の前部22a、および第1可撓管体11の前部分23の後端部23aそれぞれの外周面は、周方向の全長にわたって前後方向に真直ぐ延びてもよい。
第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26のうちの少なくとも一方が、複数本のワイヤにより構成されてもよく、操作ワイヤ12が、第1ワイヤ部25および第2ワイヤ部26とは異なる第3ワイヤ部を備えてもよい。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、2 ガイドワイヤ
11 第1可撓管体
12 操作ワイヤ
13 第1被固着体
14 第2被固着体
15 第2可撓管体
21 第1可撓管体の前端部
22 第1可撓管体の後端部
22a 第1可撓管体の後端部の前部
23 第1可撓管体の前部分
23a 第1可撓管体の前部分の後端部
25 第1ワイヤ部
26 第2ワイヤ部
図1
図2
図3
図4
図5