(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110059
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ボイラの腐食抑制装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F22B 37/00 20060101AFI20240807BHJP
F22B 37/10 20060101ALI20240807BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20240807BHJP
F23J 15/02 20060101ALI20240807BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20240807BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20240807BHJP
B01D 53/70 20060101ALI20240807BHJP
B01D 53/64 20060101ALI20240807BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20240807BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F22B37/00 A
F22B37/10 602Z
F23J15/00 B
F23J15/00 J
F23J15/02
F22B37/00 B
F23J15/00 Z
B01D53/50 100
B01D53/68 100
B01D53/70 ZAB
B01D53/64 100
B01D53/82
B01D53/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014400
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】川畑 秀駿
【テーマコード(参考)】
3K070
4D002
【Fターム(参考)】
3K070DA02
3K070DA03
3K070DA05
3K070DA07
3K070DA16
3K070DA22
3K070DA24
3K070DA77
4D002AA02
4D002AA12
4D002AA19
4D002AA21
4D002AA29
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA04
4D002BA14
4D002CA07
4D002CA11
4D002CA13
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA41
4D002DA47
4D002DA70
4D002EA02
4D002EA07
4D002EA08
4D002HA01
(57)【要約】
【課題】ボイラの腐食の抑制と排ガスの無害化を同時になすことができるボイラの腐食抑制装置を提供する。
【解決手段】廃棄物焼却炉1の排ガスを熱回収するボイラ2から排出される排ガスに含まれる煤塵を除去する第1集塵装置4と、煤塵を除去した排ガスからSOxを選択的に分離するSOx分離装置5,6と、SOx分離装置によってSOxを分離した後の排ガスからHCl、水銀、又はダイオキシン類の少なくとも一つを除去する第2集塵装置7と、SOx分離装置5,6によって分離されたSOxをボイラ2及び/又は廃棄物焼却炉1に吹き込む吹込み装置9と、を備えるボイラの腐食抑制装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉の排ガスを熱回収するボイラから排出される排ガスに含まれる煤塵を除去する第1集塵装置と、
煤塵を除去した排ガスからSOxを選択的に分離するSOx分離装置と、
前記SOx分離装置によってSOxを分離した後の排ガスからHCl、水銀、又はダイオキシン類の少なくとも一つを除去する第2集塵装置と、
前記SOx分離装置によって分離されたSOxを前記ボイラ及び/又は前記廃棄物焼却炉に吹き込む吹込み装置と、を備えるボイラの腐食抑制装置。
【請求項2】
前記SOx分離装置は、再生可能な吸着材を備えることを特徴とする請求項1に記載のボイラの腐食抑制装置。
【請求項3】
廃棄物焼却炉の排ガスを熱回収するボイラから排出される煤塵を除去する工程と、
煤塵を除去した排ガスからSOxを選択的に分離する工程と、
SOxが分離された排ガスからHCl、水銀、又はダイオキシン類の少なくとも一つを除去する工程と、
分離されたSOxを前記ボイラ及び/又は前記廃棄物焼却炉に吹き込む工程と、を備えるボイラの腐食抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却炉から排出される排ガスから熱を回収するボイラの腐食抑制装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉には、廃棄物焼却炉から排出される排ガスから熱を回収するボイラが設けられる。ボイラは、煙道を構成する水冷壁と、煙道に配置される過熱器を備える。水冷壁は、水を加熱して蒸気を発生させる。過熱器は、蒸気を過熱して過熱蒸気にする。過熱蒸気は、蒸気タービンに供給される。
【0003】
廃棄物には、プラスチック等の含塩素樹脂が含まれる。このため、廃棄物を燃焼させると、HClガスやCl2ガスが発生し、ボイラの過熱器の伝熱管群の表面にHClガスやCl2ガスに起因する塩素分を含んだ燃焼灰が堆積する。この塩素分を含んだ燃焼灰は、ボイラの過熱器を腐食させるという問題がある。
【0004】
ボイラの過熱器の腐食を抑制するために、ボイラの排ガス中のSOx濃度を高める試みがなされている。例えば特許文献1には、SO2ボンベに貯蔵したSO2をボイラの過熱器の上流側に吹き込み、SO2濃度を高める技術が開示されている。吹き込んだSO2は過熱器に付着した燃焼灰に吸着されるので、過熱器の腐食を抑制できる。
【0005】
また、特許文献2には、同目的を達成するため、硫黄分を含む廃タイヤ等を廃棄物燃料に混ぜ、燃焼灰中に硫黄分による硫化物を生成させる技術が開示されている。燃焼灰中に硫化物を生成させることにより、燃焼灰中の塩素分の濃度が下がるので、過熱器の腐食を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-180104号公報
【特許文献2】特許第4284251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のボイラの腐食抑制装置においては、系内にSを含む添加物(SO2、廃タイヤ)を加えるので、処理設備への負荷が増大したり、飛灰等の特別な管理が必要な廃棄物量が増加するなどの問題が生じたり、吹込み物確保のためのコストが増大したりするので、実現性に乏しい。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ボイラの腐食の抑制と排ガスの無害化を同時になすことができるボイラの腐食抑制装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、廃棄物焼却炉の排ガスを熱回収するボイラから排出される排ガスに含まれる煤塵を除去する第1集塵装置と、煤塵を除去した排ガスからSOxを選択的に分離するSOx分離装置と、前記SOx分離装置によってSOxを分離した後の排ガスからHCl、水銀、又はダイオキシン類の少なくとも一つを除去する第2集塵装置と、前記SOx分離装置によって分離されたSOxを前記ボイラ及び/又は前記廃棄物焼却炉に吹き込む吹込み装置と、を備えるボイラの腐食抑制装置である。
【0010】
本発明の他の態様は、廃棄物焼却炉の排ガスを熱回収するボイラから排出される煤塵を除去する工程と、煤塵を除去した排ガスからSOxを選択的に分離する工程と、SOxが分離された排ガスからHCl、水銀、又はダイオキシン類の少なくとも一つを除去する工程と、分離されたSOxを前記ボイラ及び/又は前記廃棄物焼却炉に吹き込む工程と、を備えるボイラの腐食抑制方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、系内にSを含む添加物を加えることなくボイラ内の排ガスのSOx濃度を高めることができるので、ボイラの腐食の抑制と排ガスの無害化を同時になすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のボイラの腐食抑制装置を用いた廃棄物焼却設備の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のボイラの腐食抑制装置を説明する。ただし、本発明のボイラの腐食抑制装置は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態のボイラの腐食抑制装置を用いた廃棄物焼却設備の系統図を示す。1は廃棄物焼却炉、2はボイラ、3はエコノマイザ、4は第1集塵装置、5,6はSOx分離装置、7は第2集塵装置、8は煙突、9は吹込み装置である。本実施形態のボイラの腐食抑制装置は、第1集塵装置4と、SOx分離装置5,6と、第2集塵装置7と、吹込み装置9と、を備える。以下に各部の構成を説明する。
【0015】
廃棄物焼却炉1は、例えばストーカ式焼却炉である。廃棄物焼却炉1は、廃棄物を乾燥・燃焼させる炉本体11と、炉本体11に廃棄物を投入するホッパ12と、を備える。炉本体11の下部には、廃棄物を燃焼させる燃焼用空気を供給すると共に、廃棄物を搬送するストーカ13が設けられる。ストーカ13の上方には、一次燃焼室15と二次燃焼室16が設けられる。排ガスは一次燃焼室15と二次燃焼室16を下方から上方に流れる。焼却灰は、ストーカ13によって排出口14まで搬送され、排出口14から排出される。なお、廃棄物焼却炉1の種類は特に限定されるものではなく、例えば流動層式焼却炉等でもよい。
【0016】
廃棄物焼却炉1の下流側には、廃棄物焼却炉1の排ガスから熱を回収するボイラ2が設けられる。ボイラ2の煙道は、放射伝熱室21と対流伝熱室22を備える。廃棄物焼却炉1の二次燃焼室16を下方から上方に流れる排ガスは、第1偏向部23によって流れの向きを変えられ、ボイラ2の放射伝熱室21を上方から下方に向かって流れ、第2偏向部24によって流れの向きを変えられ、対流伝熱室22を下方から上方に向かって流れる。放射伝熱室21と対流伝熱室22の内壁は、水冷壁によって構成される。水冷壁は、水を加熱して蒸気を発生させる。
【0017】
対流伝熱室22には、複数の過熱器25が配置される。過熱器25は、排ガスと熱交換を行う伝熱管群を備え、蒸気を過熱して過熱蒸気を発生させる。過熱器25は、例えば排ガスの下流側から初段過熱器、中段過熱器、終段過熱器を備える。
【0018】
ボイラ2の下流側には、エコノマイザ3が設けられる。エコノマイザ3は、排ガスと熱交換を行う伝熱管群を備え、水を加熱して加温水を発生させる。
【0019】
エコノマイザ3の下流側には、第1集塵装置4が設けられる。第1集塵装置4は、電気集塵機、濾過式集塵機等であり、排ガスに含まれる煤塵を除去する。第1集塵装置4は、やや高温(例えば200℃)で煤塵を除去するため、電気集塵機が望ましいが、濾過式集塵機を用いてもよい。第1集塵装置4は、SOx分離装置5,6の吸着材が煤塵によって目詰まりするのを防止する役割も持つ。
【0020】
第1集塵装置4の下流側には、SOxを選択的に分離するSOx分離装置5,6が設けられる。SOxは、硫黄酸化物であり、SO2、SO3、H2SO4ガス等の少なくとも一つである。SOx分離装置5は、セラミックフィルタ、無機系吸着材、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)等の吸着材によりSOxを選択的に分離してもよいし、過酸化物の吹込みによりSOxを選択的に分離してもよい。また、SOx分離装置5,6は、SOxのみを選択的に分離してもよいし、SOxと共にNOx(窒素酸化物)、HCl(塩化水素)を選択的に分離してもよい。
【0021】
SOx分離装置5,6が吸着材を備える場合、吸着材が再生可能、すなわち吸着材からSOxを離脱可能であることが望ましい。例えば吸着材に熱風を吹き込んだり、吸着材を処理したり、又は吸着材を振動させることにより、吸着材からSOxを離脱させることができる。
【0022】
2つのSOx分離装置5,6は、煙道の切り替えにより交互に使用される。すなわち、SOx分離装置5がSOxを吸着するとき、SOx分離装置6はSOxを離脱させる。また、SOx分離装置6がSOxを吸着するとき、SOx分離装置5はSOxを離脱させる。なお、煙道の切り替えを行うことなく、SOx分離装置5の吸着材を取り出して、SOx分離装置6に組み込むようにしてもよい。
【0023】
吹込み装置9は、SOx分離装置5,6によって分離されたSOxをボイラ2に吹き込む。吹込み装置9は、送風機を備え、SOx分離装置5,6に空気と熱(熱風)を吹き込む。吹込み装置9がSOx分離装置5,6に熱風を吹き込むと、SOx分離装置5,6からSOxが離脱する。離脱したSOxは、配管を介してボイラ2の過熱器25の上流に吹き込まれる。過熱器25の腐食抑制のためには、SOxをボイラ2に吹き込むのが効果的であるが、SOxを廃棄物焼却炉1に吹き込んでもよいし、ボイラ2と廃棄物焼却炉1に吹き込んでもよい。
【0024】
SOx分離装置5,6の下流側には、第2集塵装置7が設けられる。第2集塵装置7は、SOx分離装置5,6によってSOxを分離した後の排ガスからHCl、水銀、及びダイオキシン類を除去する。低温(例えば140℃)でHCl、水銀、及びダイオキシン類を除去するため、濾過式集塵機を使用するのが望ましい。また、第2集塵装置7には、HClを除去するためのアルカリ剤と、水銀、ダイオキシン類を除去するための活性炭を吹き込むのが望ましい。アルカリ剤は、消石灰、重曹、又はドロマイトの少なくとも1つを含む。アルカリ剤や活性炭は、SOxも除去するので、SOx分離装置5の下流側に第2集塵装置7を配置する。なお、第2集塵装置7にアルカリ剤のみを吹き込み、HClを除去するようにしてもよいし、第2集塵装置7に活性炭のみを吹き込み、水銀とダイオキシン類を除去するようにしてもよい。また、第2集塵装置7を湿式洗煙装置とし、HCl、水銀、及びダイオキシン類を除去しても良い。
【0025】
不純物が除去された排ガスは煙突8から大気に放出される。NOxを除去する必要があるときは、第2集塵装置7の下流に排ガスのNOxを除去する脱硝装置を設けてもよい。
【0026】
以下に本実施形態のボイラの腐食抑制装置の効果を説明する。
系内にSを含む添加物を加えることなくボイラ2内の排ガスのSOx濃度を高めることができるので、ボイラ2の腐食の抑制と排ガスの無害化を同時になすことができる。
【0027】
過熱器25の伝熱管の表面で起きる腐食は、HClや伝熱管に腐食した焼却灰中のCl分が引き起こす塩化-酸化腐食である。ボイラ2内の排ガスのSOx濃度を高めることにより、焼却灰中のClとSの交換反応が促進される。このため、塩化-酸化腐食が抑制される。
【0028】
SOx分離装置5,6の上流側に第1集塵装置4を設けるので、SOx分離装置5,6の吸着材が目詰まりするのを防止できる。また、SOx分離装置5,6の下流側に第2集塵装置7を設けるので、SOx分離装置5,6が排ガスからSOxを分離する前に第2集塵装置7により排ガスからSOxが除去されるのを防止できる。
【0029】
SOx分離装置5,6が再生可能な吸着材を備えるので、排ガスからSOxを分離したり、分離したSOxをボイラ2及び/又は廃棄物焼却炉1に吹き込むのが容易である。
【符号の説明】
【0030】
1…廃棄物焼却炉
2…ボイラ
3…エコノマイザ
4…第1集塵装置
5,6…SOx分離装置
7…第2集塵装置
8…煙突
9…吹込み装置