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特開2024-110063画像形成システム、情報処理装置、および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110063
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】画像形成システム、情報処理装置、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G21/00 386
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014408
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】泉宮 賢二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】小山 弘
(72)【発明者】
【氏名】白熊 拓美
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270KA69
2H270KA70
2H270LA22
2H270LC04
2H270LC05
2H270LD08
2H270LD14
2H270MB07
2H270MB25
2H270MB27
2H270MC55
2H270MH11
2H270PA14
2H270QB07
2H270RB09
2H270RC03
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】読取画像データにより検知した画像不良の原因を精度よく特定する。
【解決手段】画像形成システム100は、搬送路を搬送されたシート上に画像を形成する画像形成部30と、シートの物性に対応する物性情報を検知するメディア物性検知部51と、画像形成部30によって画像形成されたシート上の画像を読み取る読取部52と、
読取部52の読み取りに得られた読取画像データにより不良の有無、および不良の種類を判定する不良検知部212と、不良検知部212により不良が検知された場合に、不良の検知結果とメディア物性検知部51の検知結果により、不良の原因を特定する不良原因特定部213と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を搬送されたシート上に画像を形成する画像形成部と、
シートの物性に対応する物性情報を検知するメディア物性検知部と、
前記画像形成部によって画像形成されたシート上の画像を読み取る読取部と、
前記読取部の読み取りに得られた読取画像データにより不良の有無、および不良の種類を判定する不良検知部と、
前記不良検知部により不良が検知された場合に、不良の検知結果と前記メディア物性検知部の検知結果により、不良の原因を特定する不良原因特定部と、
を備える画像形成システム。
【請求項2】
前記不良原因特定部は、不良の原因が、前記シートであると特定した場合に、警告を通知する、および/または、実行中の印刷を停止させる、請求項1に記載の形成システム。
【請求項3】
前記メディア物性検知部は、第1の検知モードと、第1の検知モードよりも多くの物性を検知する、および/または、物性の検知精度を高くした第2の検知モードを実行可能であり、
前記不良検知部により不良が検知された場合には、以降に、前記第2の検知モードによりシートの物性を検知する、請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記第1の検知モードでの検知により得られた前記物性情報により印刷時の画像形成パラメータが設定される、請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記不良検知部による不良が検知された以降は、前記不良原因特定部は、前記不良の検知結果と、前記第2の検知モードで得られた前記物性情報に基づき、不良の原因を特定する、請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記第1の検知モードでは、シートを搬送させながら、シートの物性を検知し、
前記第2の検知モードでは、搬送したシートを一時停止させて、シートの物性情報を検知する、請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記第1の検知モードでは、シートを第1の搬送速度で搬送させながら、シートの物性情報を検知し、
前記第2の検知モードでは、シートを前記第1の搬送速度よりも遅い第2の搬送速度で搬送させながら、シートの物性情報を検知する、請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記第1の検知モードで検知する物性には、シートの水分率、表面性、坪量、紙厚の少なくともいずれかが含まれる、請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記第2の検知モードで検知する物性には、前記第1の検知モードで検知する物性に加えて、シートの剛度、体積抵抗、目方向の少なくともいずれかが含まれる、請求項8に記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記メディア物性検知部は、第1の検知モードと、第1の検知モードよりも多くの物性を検知する、または、検知する物性の検知精度が高くした第2の検知モードを実行可能であり、
通常の印刷時には、前記第1の検知モードによりシートの物性情報を検知し、および該第1の検知モードでの検知により得られた物性により印刷時の画像形成パラメータを設定し、
前記不良検知部により不良が検知された場合には、以降の印刷時に、前記第2の検知モードによりシートの物性情報を検知し、ならびに、前記第2の検知モードでの検知により得られた物性により、前記画像形成パラメータを補正し、補正後の前記画像形成パラメータにより画像形成を行う、請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項11】
画像形成部によってシート上に形成された画像を読み取る読取部により得られた読取画像データ、および前記シートの物性に対応する物性情報を検知するメディア物性検知部により得られた前記物性情報を取得する取得部と、
前記読取画像データにより、不良の有無、および不良の種類を判定する不良検知部と、
前記不良検知部により不良が検知された場合に、不良の検知結果と前記メディア物性検知部の検知結果により、不良の原因を特定する不良原因特定部と、を備える情報処理装置。
【請求項12】
画像形成システムを制御する制御プログラムであって、
画像形成部によってシート上に形成された画像を読み取る読取部により得られた読取画像データにより不良の有無、および不良の種類を判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で、不良が検知された場合に、不良の検知結果と、前記シートの物性に対応する物性情報を検知するメディア物性検知部の検知結果により、不良の原因を特定するステップ(b)と、を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、情報処理装置、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の印刷物に不良がないことを確認するため、後段の搬送路上にスキャナー等の読取装置を設け、印刷出力される各用紙の画像を読み取って得た読取画像を画像検査装置が検査する検査システムがある。この画像検査装置は、印刷した用紙を1枚ずつスキャナーで読み取って得た画像(読取画像)を、印刷の元となった原本の画像データと比較することで、印刷物の不良を検出する。
【0003】
不良の原因は、画像形成装置内部のユニットの不良、故障である場合だけでなく、用紙が原因である場合もある。用紙が原因の不良としては、印刷設定で設定された用紙の種類とは異なる用紙が用いられることによる用紙取り違えを原因にするものと、用紙の物性変化、例えば、用紙の吸湿状態が大きく変化することによる生じる物性変化を原因とするものがある。
【0004】
特許文献1には、画像不良が発生した場合に、その後、テスト画像を出力し、これを読み取って得られたスキャン画像を画像解析して、画像不良の原因を特定する画像形成装置が開示されている。この特許文献1の画像形成装置では、画像不良が発生した状況で用いられた用紙と、テスト画像により不良の原因を特定する状況で用いた用紙の物性が大きく異なる場合、例えば、普通紙とエンボス紙との違いのような場合に、不良が再現できずに原因が特定できないことを避けるための以下の構成を備える画像形成装置が開示されている。「画像形成装置により画像が形成され出力された原稿を読み取ることにより得られる第1の画像を入力する第1の入力手段と、第1の画像における原稿の非画像形成領域を検出する検出手段と、非画像形成領域の画像特徴量に基づいて原稿の記録媒体種別を特定する特定手段と、特定手段により特定された記録媒体種別に対応する記録媒体に対し所定のテスト画像を形成するよう画像形成装置に指示する指示手段と、指示手段による指示に基づいて画像形成装置が出力したテスト画像が形成された記録媒体を読み取ることにより得られる第2の画像を入力する第2の入力手段と、第2の画像を解析し画像形成装置の異常原因を判定する判定手段と、を有する」(要約書)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-132735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置では、スキャン画像の非画像形成領域の画像特徴量により用紙の種類(例えばエンボス紙、普通紙)を判別し、異常発生時と同じ紙種を用いて、テスト画像を形成した画像をスキャンして、異常原因を判定しており、用紙を原因とする異常の判定を精度よく行えない虞がある。すなわち、特許文献1の技術では、スキャン画像で用紙種類を判定しているのみであり、用紙物性の検知精度が十分でない。例えば、同じ紙種類であっても異なる物性の用紙(例えば製造メーカーが異なる用紙)が使われたり、高湿環境下において給紙トレイ内に放置された用紙が使われたりすることで吸湿量の違いにより変化した物性の用紙が使われたりした場合に、異常原因を精度よく特定できない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、読取画像データにより検知した画像不良の原因を精度よく特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)搬送路を搬送されたシート上に画像を形成する画像形成部と、
シートの物性に対応する物性情報を検知するメディア物性検知部と、
前記画像形成部によって画像形成されたシート上の画像を読み取る読取部と、
前記読取部の読み取りに得られた読取画像データにより不良の有無、および不良の種類を判定する不良検知部と、
前記不良検知部により不良が検知された場合に、不良の検知結果と前記メディア物性検知部の検知結果により、不良の原因を特定する不良原因特定部と、
を備える画像形成システム。
【0010】
(2)前記不良原因特定部は、不良の原因が、前記シートであると特定した場合に、警告を通知する、および/または、実行中の印刷を停止させる、上記(1)に記載の形成システム。
【0011】
(3)前記メディア物性検知部は、第1の検知モードと、第1の検知モードよりも多くの物性を検知する、および/または、物性の検知精度を高くした第2の検知モードを実行可能であり、
前記不良検知部により不良が検知された場合には、以降に、前記第2の検知モードによりシートの物性を検する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0012】
(4)前記第1の検知モードでの検知により得られた前記物性情報により印刷時の画像形成パラメータが設定される、上記(3)に記載の画像形成システム。
【0013】
(5)前記不良検知部による不良が検知された以降は、前記不良原因特定部は、前記不良の検知結果と、前記第2の検知モードで得られた前記物性情報に基づき、不良の原因を特定する、上記(3)に記載の画像形成システム。
【0014】
(6)前記第1の検知モードでは、シートを搬送させながら、シートの物性を検知し、
前記第2の検知モードでは、搬送したシートを一時停止させて、シートの物性情報を検知する、上記(3)に記載の画像形成システム。
【0015】
(7)前記第1の検知モードでは、シートを第1の搬送速度で搬送させながら、シートの物性情報を検知し、
前記第2の検知モードでは、シートを前記第1の搬送速度よりも遅い第2の搬送速度で搬送させながら、シートの物性情報を検知する、上記(3)に記載の画像形成システム。
【0016】
(8)前記第1の検知モードで検知する物性には、シートの水分率、表面性、坪量、紙厚の少なくともいずれかが含まれる、上記(3)に記載の画像形成システム。
【0017】
(9)前記第2の検知モードで検知する物性には、前記第1の検知モードで検知する物性に加えて、シートの剛度、体積抵抗、目方向の少なくともいずれかが含まれる、上記(8)に記載の画像形成システム。
【0018】
(10)前記メディア物性検知部は、第1の検知モードと、第1の検知モードよりも多くの物性を検知する、または、検知する物性の検知精度が高くした第2の検知モードを実行可能であり、
通常の印刷時には、前記第1の検知モードによりシートの物性情報を検知し、および該第1の検知モードでの検知により得られた物性により印刷時の画像形成パラメータを設定し、
前記不良検知部により不良が検知された場合には、以降の印刷時に、前記第2の検知モードによりシートの物性情報を検知し、ならびに、前記第2の検知モードでの検知により得られた物性により、前記画像形成パラメータを補正し、補正後の前記画像形成パラメータにより画像形成を行う、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0019】
(11)画像形成部によってシート上に形成された画像を読み取る読取部により得られた読取画像データ、およびシートの物性に対応する物性情報を検知するメディア物性検知部により得られた前記物性情報を取得する取得部と、
前記読取画像データにより、不良の有無、および不良の種類を判定する不良検知部と、
前記不良検知部により不良が検知された場合に、不良の検知結果と前記メディア物性検知部の検知結果により、不良の原因を特定する不良原因特定部と、を備える情報処理装置。
【0020】
(12)画像形成システムを制御する制御プログラムであって、
画像形成部によってシート上に形成された画像を読み取る読取部により得られた読取画像データにより不良の有無、および不良の種類を判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で、不良が検知された場合に、不良の検知結果と、シートの物性に対応する物性情報を検知するメディア物性検知部の検知結果により、不良の原因を特定するステップ(b)と、を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る画像形成システムは、搬送路を搬送されたシート上に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部の上流側に配置され、シートの物性を検知するメディア物性検知部と、前記画像形成部の下流側に配置され、画像形成されたシート上の画像を読み取る読取部と、前記読取部の読み取りに得られた読取画像データにより不良の有無、および不良の種類を判定する不良検知部と、前記不良検知部により不良が検知された場合に、不良の検知結果と前記メディア物性検知部の検知結果により、不良の原因を特定する不良原因特定部と、備える。これにより、読取画像データにより検知した画像不良の原因を精度よく特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る画像形成システムの外観を示す正面図である。
図2】画像形成システムの搬送路に配置された各構成要素を示す概略図である。
図3】画像形成システムの構成を示す機能ブロック図である。
図4】第1の実施形態における不良原因の特定処理を示すフローチャートである。
図5A】操作パネルに表示した警告表示画面の例である。
図5B】操作パネルに表示した警告表示画面の例である。
図6】第2の実施形態における不良原因の特定処理を示すフローチャートである。
図7】第1の検知モード、および第2の検知モードで検知する物性測定項目を示す図である。
図8】他の例における、第1の検知モード、および第2の検知モードで検知する物性測定項目を示す図である。
図9】操作パネルに表示した警告表示画面の例である。
図10】第2の実施形態の変形例における不良原因の特定処理を示すフローチャートである。
図11】操作パネルに表示した、警告を表示し、指示を受け付ける操作画面の例である。
図12】画像形成システムと通信接続した情報処理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の範囲は、開示される実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本実施形態においては、「シート」には、印刷用紙(以下、単に用紙という)、および各種フィルムが含まれる。特に用紙としては、植物由来の機械パルプ、および/または化学パルプを用いて製造されたものが含まれる。また用紙の種類としては、コート紙のグロス紙(後述の図5では「CoatedG」と表記)およびマット紙(同「CoatedM」と表記)、ならびに非コート紙の普通紙および上質紙等が含まれる。
【0024】
図1は、本実施形態に係る画像形成システム100の概略構成を示す図である。図2は、画像形成システム100の搬送路に配置された各構成要素を示す概略図である。図3は、画像形成システム100の構成を示す機能ブロック図である。
【0025】
図1に示す、画像形成システム100には、互いに機械的、および電気的に接続された給紙装置11、プリンタ本体部12、画像検査装置13、および排紙装置14が含まれる。給紙装置11は、大容量の給紙トレイを内蔵し、プリンタ本体部12に用紙を供給する。プリンタ本体部12は、給紙装置11、または自装置の給紙トレイから給紙、搬送された用紙90に対して画像を形成する。画像検査装置13は、プリンタ本体部12で画像形成された用紙90上の画像を読み取り、読み取りに得られた読取画像データにより不良の有無、および不良の種類を判定する。排紙装置14は、複数の排紙トレイ148、149を有し、上流側から送られた用紙90を搬送し、排紙する。例えば排紙トレイ148には、正常の用紙90が排出され、排紙トレイ149には不良(ヤレ紙)の用紙90が排出される。また排紙装置14は、各種の後処理(ステイプル処理、折処理、断裁処理)を行えるようにしてもよい。
【0026】
(画像形成システム100)
図2図3に示すように画像形成システム100は、制御部21、記憶部22、給紙部23、搬送部24、操作パネル25、通信部26、画像形成部30、メディア物性検知部51、および読取部52を有する。給紙装置11は、給紙部23、および搬送部24を含む。プリンタ本体部12は、給紙部23、搬送部24、画像形成部30、およびメディア物性検知部51(メディアセンサーともいう)を含む。画像検査装置13は、搬送部24、および読取部52を含む。
【0027】
(制御部21)
制御部21は、CPUと、メモリーを有する。CPUは、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行するマルチコアのプロセッサ等から構成される制御回路であり、画像形成システム100の各機能は、それに対応するプログラムをCPUが実行することにより発揮される。
【0028】
制御部21は、全体制御部211、不良検知部212、および不良原因特定部213として機能する。全体制御部211は、画像形成システム100全体の制御を行う。不良検知部212は、画像検査装置13を制御し、不良の有無、および不良の種類を判定する。不良原因特定部213は、不良が発生した場合に、不良の原因を特定する。具体的には、不良原因特定部213は、メディア物性検知部51が検知した物性に関する情報により不良原因が、用紙に起因するものか、用紙以外であるかを特定する(分別する)。
【0029】
なお、画像検査装置13に内蔵した制御部(図示せず)が、不良検知部212として機能し、プリンタ本体部12側において、画像検査装置13による不良の判定結果(不良の有無、不良の種類)が受信されるようにしてもよい。
【0030】
(記憶部22)
記憶部22は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを格納する大容量の補助記憶装置である。
【0031】
(給紙部23、搬送部24)
給紙部23は、複数の給紙トレイを含む。搬送部24は、主搬送路241、両面搬送路242、ならびにこれらの搬送路に配置された複数の搬送ローラ、および駆動モータを有する。給紙トレイは、プリンタ本体部12、および給紙装置11に配置される。プリンタ本体部12、または給紙装置11の各給紙トレイは、用紙(カット紙)を収納し、収納した用紙を1枚ずつ、搬送部24の主搬送路241に送り出す。画像形成システム100の給紙装置11、プリンタ本体部12等の各装置の搬送路は連結しており全体として、給紙部23から排紙トレイ148(または排紙トレイ149)に至る主搬送路241を構成する。また、搬送部24の両面搬送路242は、両面モードで用紙90の両面に画像形成する場合には、おもて面(第1面)に画像形成された用紙90を受け入れ、用紙90の表裏を反転させてから、用紙90を主搬送路241上にある画像形成部30に再び導く。その後、画像形成部30では、搬送された用紙90に対する裏面(第2面)の画像形成が行われる。
【0032】
(操作パネル25)
操作パネル25は、タッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、ユーザーへの各種情報の表示および各種指示の入力に使用される。この操作パネル25を介して、ユーザーは、それぞれの給紙トレイに収納した用紙のサイズ、種類等の用紙情報を設定できる。ユーザーは、この操作パネル25の操作を通じて印刷ジョブの実行を指示できる。また、ユーザーは、操作パネル25により印刷ジョブで発生した不良の状態を確認できる。
【0033】
(通信部26)
通信部26は、他の装置と通信するためのインターフェースである。また通信部26は、PC(パソコン)等の外部の装置とネットワーク接続するインターフェースでもある。
【0034】
(画像形成部30)
画像形成部30は、例えば電子写真方式により画像を形成する。画像形成部30は、基本色(Y,M,C,K)のそれぞれに対応した4つの書込部(図示せず)、4つの作像ユニット、4つの1次転写部を備える。また、画像形成部30は、各作像ユニットで形成されたトナー画像が転写され重ねられる中間転写ベルト、2次転写部、および定着部を備える。作像ユニットには、感光体ドラム、現像器、帯電器、クリーニング部(いずれも図示せず)等が含まれる。現像器内部のトナーの色が異なる以外は、各色の作像ユニットは同等の構成を備える。
【0035】
(画像形成パラメータ)
制御部21により設定される画像形成パラメータ(プロセス条件ともいう)は、印刷ジョブの印刷設定、およびメディア物性検知部51により検知された使用する用紙90の物性の検知結果により、設定される。画像形成パラメータは、記憶部22に予め記憶されているLUT(ルックアップテーブル)を参照して、設定される。この画像形成パラメータには、転写条件と定着条件が含まれる。転写条件は、上述のように中間転写ベルトを用いた場合においては、2次転写部における2次転写出力(転写電流、または転写電圧)および転写押圧力である。定着条件は、定着部での定着温度、および定着押圧力である。
【0036】
(メディア物性検知部51)
メディア物性検知部51は、複数種類の互いに異なるセンサーを含む複数の検知部で構成され、各センサーの電流、電圧、受光量等に対応する出力値、すなわち、用紙90(シート)の物性に対応する物性情報を検知(判定)する。メディア物性検知部51は、第1の検知モードと、第2の検知モードを実行可能である(後述の第2の実施形態)。第2の検知モードは、第1の検知モードよりも、多くの項目の物性を検知し、または高精度で物性を検知する。このように多項目、または高精度とするために、第2の検知モードでは、用紙を一時停止させながら測定したり、遅い搬送速度で搬送させながら物性を検知したりするため(後述の図7図8)、第1の検知モードよりも生産性が低い。
【0037】
図2に示す例では、メディア物性検知部51は、主搬送路241上の画像形成部30よりも上流側に配置され、搬送された用紙90の物性に対応する物性情報を検知する。図3に示すように、メディア物性検知部51は、水分率検知部511、表面性検知部512、坪量検知部513、紙厚検知部514、剛度検知部515、体積抵抗検知部516、および目方向検知部517の複数の検知部で構成される。メディア物性検知部51は、このうち、剛度検知部515、体積抵抗検知部516、および目方向検知部517を用いる場合には、主搬送路241を搬送された用紙90を、検知位置で一時停止させて、各物性を検知する。メディア物性検知部51は、その他の水分率検知部511、表面性検知部512、坪量検知部513、紙厚検知部514を用いる場合には、一時停止させることなく(搬送させながら)、検知位置で主搬送路241を搬送された用紙90の各物性を検知する。これらの検知部(検知部511~514)のみを用いる場合には、一時停止させることなく物性を検知できることから、印刷ジョブの全ページの用紙90の物性を検知した場合であっても、生産性を悪化させない。
【0038】
なお、メディア物性検知部51は、必ずしもこれら全ての検知部を備えなくてもよく、いずれかを省略してもよい。メディア物性検知部51は、測定に応じた物性情報を出力する。物性情報は、直接的に、用紙物性に対応するものだけでなく、得られた1つ、または複数の測定値から用紙物性に変換するものもある。以下においては、検知部から直接得られた用紙物性、または測定値をまとめて、物性情報という。また、物性情報は、複数の要素(平滑度、坪量、厚さ、剛度、体積抵抗(電気抵抗)、目方向等)が含まれる。
【0039】
(水分率検知部511)
水分率検知部511は、光学センサーにより、搬送路を搬送された用紙90の水分率(水分量に関する物性値であり、含水率とも称される)を測定する。水分率検知部511は、発光素子、受光素子、およびレンズ、アパーチャー、コリメートレンズ等の光学素子を含む。水分率検知部511は、発光素子から近赤外線領域の所定の波長の光を用紙90に照射し、反射された光を受光素子で検出する。水分率検知部511では、用紙90の水分率に応じて、近赤外線領域の所定の波長の光の吸収率が変化する性質を利用することで、用紙の水分率を検知する。
【0040】
(表面性検知部512)
表面性検知部512は、筐体、発光部、コリメートレンズ、および複数の受光部(光学センサー)を備え、以下に説明するように用紙表面(照射面)からの正反射光、拡散反射光を光学的に検出する。これにより用紙90のコート層の特性が検出される。搬送路(主搬送路241)の通紙領域の一方のガイド板には開口(測定領域)が設けられ、この開口が、受光部の照射領域になる。開口まで搬送された用紙90は、通紙領域の上方から沈下した押圧機構により押さえられる。これにより(ガイド板の)開口周辺の用紙90は、下方のガイド板と上からの押圧機構により抑えられる。この状態で発光部からはコリメートレンズにより略平行にされた照射光が、基準面に対して入射角75°で照射される。照射光の波長は、例えば465nmである。複数の受光部は、正反射光、および拡散反射光を受光する。複数の受光部は、例えば、反射角30度(拡散反射光用)、60度(拡散反射光用)、75度(正反射光用)の3箇所、または60度と75度の2箇所に配置される。各受光部の受ける光の強度の絶対値、および比率により、用紙90の表面性が検知される。表面性検知部512により光沢度(例えば入射角75度の鏡面光沢度)が測定される。なお、表面性検知部512が検知する光沢特性としては、光沢度に限られず、光沢を示す指標であれば他の特性であってもよい。
【0041】
(坪量検知部513)
坪量検知部513は、用紙90の坪量を検知するセンサーであり、発光部と受光部を備え、用紙90を透過する光の減衰量により、坪量を測定する。例えば、坪量センサーは用紙が搬送される主搬送路241の一方側に発光部を配置し、他方側に受光部を配置し、用紙90を通過し、受光部で受ける光の強度に基づいて、用紙90の坪量を検知する。
【0042】
(紙厚検知部514)
紙厚検知部514は、搬送ローラ間のニップを通過する用紙90の厚みに応じて、少なくとも一方が可動する搬送ローラ対、およびこの搬送ローラ対の軸間距離を測定する測定部を含む。この測定部は、例えばアクチュエーター、エンコーダ、発光・受光部で構成される。搬送ローラ対で挟み込んだ用紙90の厚みに応じて、可動する従動ローラの軸位置が変位する。紙厚検知部514は、この変位した軸の高さを測ることにより、用紙90の厚みを測定する。
【0043】
(剛度検知部515)
剛度検知部515は、用紙90の先端(または後端)を自由端として、曲げ剛性を検知する。剛度検知部515は保持部材と、用紙90の下側から上方に持ち上げる押し上げ部材、および押し上げ部材の押圧力を検出する圧力検知センサーから構成される。保持部材としては、搬送ローラが兼用される。押し上げ部材の用紙90との当接面は、搬送ローラの軸方向に平行である。剛度検知部515は、用紙90の端部(縁)よりも少し内側を搬送ローラで保持し、自由端の先端を、押し上げ部材で持ち上げ、その際の押圧力により用紙90の剛度を測定する。押し上げ部材の上下動は、駆動モータ、例えばステッピングモータにより制御される。剛度検知部515は、保持部材として搬送ローラを用い、保持領域(ローラニップ)と押し上げ部材の当接面は、共に用紙90の搬送方向、および用紙90の紙面(搬送面)に直交する方向であり、用紙搬送方向の剛度を測定する。
【0044】
(体積抵抗検知部516)
体積抵抗検知部516は、搬送された用紙90の体積電気抵抗を検知する。体積抵抗検知部516は、用紙90を挟み込む一対の搬送ローラ、およびHV(高電圧)ユニットを含む。紙抵抗を測定する際は、搬送路上の所定の検知位置で、搬送ローラの駆動モータを停止させ、用紙90を一時停止させる。この状態で、HVユニットにより、一対の搬送ローラの上側ローラ(検知ローラともいう)に高圧を印加させ、用紙90を経由して接地された下側ローラ(対向ローラ)に流れる電流値が測定される。
【0045】
(目方向検知部517)
目方向検知部517は、剛度検知部515と同様の構成を備える。剛度検知部515は、用紙搬送方向の剛度を測定するが、目方向検知部517は、用紙搬送方向に交差する方向、例えば、(搬送面に垂直方向から視た)上面視において搬送方向に対して所定角度、例えば45度、または90度傾けた方向に、保持領域および押し上げ部材の当接面があるように配置する。この場合、保持部材としては、一対の幅が狭い板部材を用いる。目方向検知部517が検知した所定角度(例えば45度)傾けた方向における剛度と、剛度検知部515が検知した用紙搬送方向の剛度との比較により、制御部21は、用紙90の目方向(すき目方向ともいう)が縦目であるか、横目であるかを判定する。
【0046】
(画像検査装置13)
画像検査装置13は、読取部52、および不良検知部212を有する。読取部52は、用紙90上に形成された画像を読み取ることで読取画像データを生成する。不良検知部212は、読取画像データを解析することによって画像不良の有無を判定し、および画像不良が有る場合には、その画像不良の種類(以下、単に不良種類ともいう)を判定する。
【0047】
(読取部52)
読取部52は、いわゆるスキャナーである。読取部52は、主搬送路241上の画像形成部30の下流側に配置される。図2に示すように読取部52は、主搬送路241を搬送された用紙90の両面の画像を読み取れるように共通の構成を備える2つの読取部52aおよび読取部52bで構成される。読取部52aは、片面モード時の画像形成面、または両面モード時の裏面(第2面)の画像を読み取るように、主搬送路241の上側に配置される。読取部52bは、両面モード時のおもて面(第1面)の画像を読み取るように、主搬送路241の下側に配置される。
【0048】
読取部52a(読取部52bも同様)は、画像形成部30で画像形成された用紙90上の画像を読み取り、読取画像(読取画像データ)を生成する。読取部52は、センサーアレイ、光学系、およびLED光源を備える。センサーアレイは、複数のCCDなどの光学素子を幅方向(主走査方向)に沿ってライン状に配置したものであり、用紙90の幅方向における全幅の範囲を読み取り可能なカラーラインセンサーである。光学系は、複数のミラーとレンズから構成される。LED光源からの光は、主搬送路241上の読取位置を通過する用紙Sの表面を照射する。読取位置の像は、光学系により導かれ、センサーアレイ上に結像する。
【0049】
(不良検知部212)
不良検知部212は、読取部52の読み取りにより得られた読取画像データを解析し、画質判定を行う。例えば、不良検知部212は、用紙上の評価対象領域において、読取画像の画像濃度と、印刷元データの画像信号から想定される濃度(正常時の濃度)を比較し、濃度不足に応じて、画像不良、または正常を判定する。用紙上の評価対象領域とは、例えば、印刷元データから、ある程度均一な高濃度の画像で形成される領域を抽出し、その領域を評価の対象領域に設定する。あるいは、不良検知部212は、用紙90の端部領域(トンボの外側領域)に評価用カラーパッチを配置し、このパッチから画質を判定するようにしてもよい。この端部領域は、画像形成後に裁断されて破棄され、製品として用いられない領域である。
【0050】
また不良検知部212は、不良種類として、画像の均一性、画像ムラ(縦筋、横筋)、用紙皺(シワ)等を判定し、および不良種類によってはその発生位置を判定する。不良種類には、画像の不均一、画像ムラ(縦筋、横筋)、用紙皺の他に、さらに、濃度異常、および白抜けが含まれてもよい。濃度異常は、転写プアとも称されるもので、転写電流(または転写電圧)が不十分なことにより生じる中間転写ベルト上のトナーが十分に用紙90に転写しないことにより生じる画質異常である。画像ムラは、転写が部分的に不十分なことにより生じる濃度不均一のことである。白抜けは、白プチともいうものであり、転写電流(または転写電圧)が過剰な場合に、用紙90が転写ニップに近づいたときに、用紙90と2次転写ローラ(中間転写ベルト)との極小の隙間で発生する異常放電により生じる転写不良である。用紙皺、および転写不良は、高湿環境下等で、用紙90が過剰に吸湿した場合に発生しやすい。不良種類には、さらに画像散りが含まれてもよい。また不良種類には、用紙90の進入起因の画像不良が含まれてもよい。進入起因の画像不良とは、2次転写部の転写ニップ位置付近において、2次転写部または中間転写ベルト、に用紙90の先端が衝突することにより衝撃や、転写ニップに用紙90が進入すること自体で、生じる色ずれ、ショックノイズである。進入起因の画像不良は、用紙90の剛度が高い場合、または、目方向が縦目(目方向が搬送方向に沿う)の場合に発生しやすい。不良検知部212によるこれらの画像不良の判定は、読取画像と印刷元データを比較する公知の処理により行える。
【0051】
(不良原因特定部213)
不良原因特定部213は、不良検知部212が読取画像データにより不良を検知した場合に、その検知結果、およびメディア物性検知部51が検知した物性に関する検知結果に基づいて、不良原因が、用紙に起因するものか、用紙以外であるかを特定する(分別する)。不良原因特定部213は、第1の原因特定処理、および第2の原因特定処理により、不良の原因を特定する。第1の原因特定処理は、物性の検知結果と、不良の検知結果(不良種類、発生位置)から直接的に、不良の原因を特定する。第2の原因特定処理は、物性検知結果のずれが所定以上の場合に、用紙が原因であると推定するものである。具体的には、不良が検知されることにより検査モードに移行した場合に(後述の第2の実施形態)、メディア物性検知部51は、第2の検知モードでより詳細(多くの測定項目)に、またはより高精度に用紙90の物性を検知する。そして、不良原因特定部213は、その物性の検知結果を印刷ジョブの印刷設定(特に用紙設定情報の紙種情報、坪量の情報)、または第1の検知モードでの物性の検知結果(体積抵抗が含まれない)と比較し、物性のずれ(または、物性から設定される画像形成パラメータの設定値のずれ)が所定以上(閾値以上)の場合に、用紙90が原因であると特定する。この閾値は、不良種類毎に設定されている。例えば用紙設定情報、またはこの設定情報と第1の検知モードの検知結果から設定された画像形成パラメータの転写電流と、第2の検知モードで検知された体積抵抗から算出される最適な転写電流(例えば、上述のように予め記憶されたLUTを用いて設定される)の差が所定値以上であれば、ずれがあると判定する。
【0052】
(第1の実施形態における画像不良の原因特定処理)
以下、図4図5A図5Bを参照し、画像形成システム100で実行される画像不良の原因特定処理について説明する。図4は、第1の実施形態における不良原因の特定処理を示すフローチャートである。
【0053】
(ステップS101)
ここでは、画像形成システム100は、取得した印刷ジョブの実行を開始する。この印刷ジョブは、操作パネル25を通じて、または、画像形成システム100に接続したPC等から受け付けられる。この印刷ジョブには、印刷元データ(印刷画像データ)、印刷設定(用紙種類、用紙サイズ、枚数、モード等)が含まれる。この処理では、制御部21は、給紙部23、搬送部24を制御することで、印刷設定の用紙設定情報(用紙サイズ、紙種情報、坪量等)に応じて、給紙条件を設定し、設定に応じた給紙トレイから用紙90の給紙を開始させ、主搬送路241に用紙90を搬送させる。
【0054】
(ステップS102)
制御部21は、メディア物性検知部51、および搬送部24を制御し、主搬送路241に搬送した用紙90の物性の検知を行わせる。メディア物性検知部51の水分率検知部511、表面性検知部512、坪量検知部513、紙厚検知部514、剛度検知部515、体積抵抗検知部516、および目方向検知部517の各検知部により、搬送された用紙90の複数の物性が検知される。なお、ここでの物性の検知は、第1、第2の検知モードのいずれを適用してもよい。
【0055】
(ステップS103)
制御部21は、ステップS102で取得した物性の検知結果に基づいて、判別処理を行い、紙種(用紙の種類)と坪量を判別する。この判別処理では、区分化された複数の紙種と区分化された複数の坪量のいずれかであると判別される。また、制御部21は、ここで判別した紙種、坪量と、印刷ジョブの印刷設定の用紙設定情報を比較する。一致していれば(YES)処理をステップS105に進め、一致していなければ(NO)処理をステップS104に進める。
【0056】
(ステップS104)
制御部21は、実行中の印刷ジョブを中止し、画像形成部30による画像形成をせずに、用紙90を排紙トレイ149に排出する(パージする)。また、画像形成システム100の全体制御部211は、操作パネル25に警告を表示する。図5Aは、操作パネル25に表示した警告表示画面d1の例である。
【0057】
(ステップS105)
制御部21は、画像形成部30、読取部52等を制御し、搬送した用紙90に画像を形成し、および画像形成された用紙90を読み取って読取画像データを生成する。このときの画像形成部30での画像形成パラメータは、印刷ジョブの印刷設定、およびステップS102で得られた物性の検知結果に基づいてLUTを用いて設定されたものである。不良検知部212は、読取画像データを検査し、不良を検知する。画像形成システム100は、画像不良が検知されなければ(NO)、印刷ジョブの印刷設定で設定された枚数までの印刷を行ってから終了する。一方で、制御部21は、不良検知部212により画像不良が検知された場合(YES)処理をステップS111に進める。
【0058】
(ステップS111、ステップS112)
(第1の原因特定処理)
不良原因特定部213は、第1の原因特定処理により不良原因を特定する。不良原因特定部213は、ステップS102で検知した用紙物性の検知結果と、不良の検知結果、すなわち、(1)検知された不良種類、または(2)不良種類および不良の発生位置により不良の原因を特定する。例えば、用紙物性の水分率が所定値以上の場合において、用紙全面に画像散りの画像濃度ムラ、または用紙の皺が発生した場合には、不良原因特定部213は、用紙90が原因であると特定し(S112:YES)、処理をステップS114に進める。また、画像不良の不良種類、位置が用紙90の進入起因である場合には、剛度が高い場合、および/または目方向が縦目の場合に、用紙90が原因であると特定する。一方で、例えば、周期的な横筋(搬送方向に直行する幅方向に延在)が発生した場合には、用紙90が原因である可能性は低いとして(S112:NO)、処理をステップ113に進める。
【0059】
(ステップS113)
全体制御部211は、本体側要因である可能性が高いとして、要因解析を行う。例えば、画像形成システム100は、記憶部22に記憶されているチャート画像データを印刷することで、検査チャート(前面ハーフトーン画像、および/または所定周期の細線)を出力し、この検査チャートを読取部52で読み取って得られた読取画像データを検査することで、不良の原因を解析する。例えば、読取画像データを周波数解析することで、所定の空間周波数の画像ムラが検出された場合には、この空間周波数に対応する回転周期の機械構成部品に異常がある可能性が高いとして、この機械構成部品を異常原因の候補として抽出し、操作パネル25に表示する(図示省略)。
【0060】
(ステップS114)
ここでは、画像形成システム100の全体制御部211は、操作パネル25に用紙が原因である旨を示す警告を表示する(エンド)。図5Bは、操作パネル25に表示した警告表示画面d2の例である。また、全体制御部211は、この表示とともに、実行中の印刷を停止させてもよい。
【0061】
このように第1の実施形態に係る画像形成システム100では、読取部52で読み取ることで得られた読取画像データにより不良の有無、および不良種類を判定する不良検知部212と、印刷実行時に、不良検知部212により不良が検知された場合に、不良の検知結果とメディア物性検知部51の検知結果により、不良の原因を特定する不良原因特定部213と、を備える。これにより、読取画像データにより検知した画像不良の原因を精度よく特定することが可能となる。
【0062】
(第2の実施形態における画像不良の原因特定処理)
次に図6から図9を参照し、第2の実施形態における画像不良の原因特定処理について説明する。第2の実施形態においては、画像不良が検知された場合に、メディア物性検知部51により検知精度を向上、または検知項目を増加させる検査モード(不良原因検査モードともいう)に移行するものである。通常時は第1の検知モードを実行し、検査モードでは、第2の検知モードを実行する。図6は、第2の実施形態における不良原因の特定処理を示すフローチャートである。図7は、第1の検知モード、および第2の検知モードで検知する物性測定項目を示す図である。図8は、他の例における第1の検知モード、および第2の検知モードで検知する物性測定項目、および測定条件を示す図である。
【0063】
(ステップS301)
ここでの処理は、図4のステップS101と同様の処理である。制御部21は、印刷設定の用紙設定情報(用紙サイズ、紙種情報、坪量等)に応じて、給紙条件を設定し、設定に応じた給紙トレイから用紙90の給紙を開始させ、主搬送路241に用紙90を搬送させる。
【0064】
(ステップS302)
制御部21は、第1の検知モードでは、メディア物性検知部51の複数の物性検知部のうち、水分率検知部511、表面性検知部512、坪量検知部513、および紙厚検知部514の少なくともいずれかを作動させ、作動した物性検知部により搬送された用紙90の用紙物性を検知する。図7に示す例では、メディア物性検知部51は、第1の検知モードでは、水分率検知部511、表面性検知部512、坪量検知部513、および紙厚検知部514を作動させ、水分率、紙厚、表面性、および坪量の物性を検知する。また、図8に示す他の例では、第1、第2の検知モードでは、物性測定項目は同じであるが、画像形成システム100は、第2の検知モードでは、測定時の用紙90の搬送速度を第2の搬送速度にして、高精度で測定する。ここで第2の搬送速度は第1の搬送速度よりも遅い。第1の搬送速度は、通常の印刷時の搬送速度と同じである。例えば、水分率検知部511では、1枚の用紙90を測定する際に、搬送方向においてより多くの箇所を測定することで、測定精度を向上させる。なお、図7図8に示す例は、組み合わせて適用してもよい。例えば、第2の検知モードでは、第1の検知モードよりも、より多くの物性測定項目で、第2の搬送速度により高精度に検知する。
【0065】
(ステップS303~S306)
ここでの処理は、図4のステップS103~S106と同様の処理である。制御部21は、読取画像データにより用紙90の画像不良の発生有無を判定する。
【0066】
(ステップS311)
制御部21は、画像不良が発生したことを受けて、検査モードに移行する。検査モードでは、制御部21は、第1の検知モードで動作する物性検知部に加えて、剛度検知部515、体積抵抗検知部516、および目方向検知部517の少なくともいずれかを作動させる。図7に示す例では、第2の検知モードでは、第1の検知モードで作動する水分率検知部511、表面性検知部512、坪量検知部513、および紙厚検知部514に加えて、剛度検知部515、体積抵抗検知部516、および目方向検知部517を作動させる。これにより、第2の検知モードでは、水分率、紙厚、表面性、坪量、剛度、体積抵抗、および目方向の物性が検知される。また、図8に示す例では、主搬送路241のうち、メディア物性検知部51を付近では、搬送速度を第2の搬送速度(低速)で搬送する。なお、この場合でもメディア物性検知部51の検知領域を抜けた後、少なくとも画像形成部30以降は、通常の第1の搬送速度(高速)に戻して、搬送する。
【0067】
(ステップS312)
ここでは、制御部21は、印刷設定に応じた給紙トレイから用紙90の給紙を開始させ、主搬送路241に用紙90を搬送させる。
【0068】
(ステップS313)
制御部21は、第2の検知モードで、メディア物性検知部51を作動させ、作動した物性検知部により搬送された用紙90の用紙物性を検知する。なお、図7に示す例では、第1の検知モードでの物性検知では、用紙90は一時停止されることなく用紙物性が検知されるのに対し、このステップS312で実行される第2の検知モードでの物性検知では、用紙90は、主搬送路241上の検知位置で一時停止されて、物性が検知される。
【0069】
(ステップS314)
不良原因特定部213は、以下のように第1の原因特定処理に加えて、第2の原因特定処理によっても画像不良の原因を特定する。
【0070】
(第1の原因特定処理)
検査モードの第2の検知モードであらたに測定した用紙物性(剛度、体積抵抗、目方向)により、用紙物性の検知結果と、不良の検知結果により、画像不良の原因を特定する。この第1の原因特定処理は、ステップS111の処理と同様の処理でもある。また、図8の例であれば、第2の検知モードで検知した高精度の水分率を用いて、画像不良の原因を特定する。
【0071】
(第2の原因特定処理)
不良原因特定部213は、印刷ジョブの印刷設定の用紙設定情報と第2の検知モードでの物性の検知結果とを比較し、ずれがあるか否かにより、画像不良の原因を特定する。例えば用紙設定情報から設定された画像形成パラメータの転写電流(不良発生時(ステップS305)の転写電流)と、第2の検知モードで検知された体積抵抗から算出される最適な転写電流設定(例えば、上述のように予め記憶されたLUTを用いて設定される)の差が所定値以上であれば、ずれがあると判定する。不良原因特定部213は、ずれがある場合に、画像不良の原因は、用紙90であると特定する。
【0072】
または、不良原因特定部213は、第1の検知モードの物性の検知結果と第2の検知モードの物性の検知結果を比較し、ずれがあるか否かより、画像不良の原因を特定する。例えば、図8の例において、水分率の検知結果を比較し、ずれがあるか否かにより、画像不良の原因を特定する。不良原因特定部213は、ずれがある場合に、画像不良の原因は、用紙90であると特定する。
【0073】
(ステップS315)
不良原因特定部213は、第1の原因特定処理、または第2の原因特定処理により、用紙90が原因であると特定した場合(YES)には、処理をステップS317に進める。また、用紙90が原因であると特定できなかった場合(NO)は、処理をステップS316に進める。
【0074】
(ステップS316)
ここでは、全体制御部211は、本体側の要因解析を行う。ここでの処理は、図4のステップS113の処理と同様であり、説明を省略する。
【0075】
(ステップS317)
ここでは、画像形成システム100の全体制御部211は、操作パネル25に用紙が原因である旨を示す警告を表示する(エンド)。図9は、操作パネル25に表示した警告表示画面d3の例である。図9は、第2の原因特定処理により、用紙90が原因であると特定された場合に表示される警告表示画面の例である。
【0076】
(変形例における不良原因の特定処理)
図10は、第2の実施形態の変形例における不良原因の特定処理を示すフローチャートである。
【0077】
(ステップS501~S516)
ここまでの処理は、図6のステップS301~S316と同じ処理であり、説明を省略する。なお、図6図10において、ここでの画像形成処理(S305、S505)では、共通して、その直前の物性の検知結果(S302、S502(第1の検知モード))に基づいてLUTを参照して、設定された画像形成パラメータが用いられている。
【0078】
(ステップS517、S518)
図11は、変形例において、第2の原因特定処理により、用紙90が原因であると特定された場合に操作パネル25に表示される警告表示画面の例である。ユーザーは、「はい」ボタンを操作することで、画像形成パラメータの調整(補正)を行わせることができる。「はい」ボタンが操作された場合には(S518:YES)処理をステップS519に進める。一方で「いいえ」ボタンが操作された場合には(S518:NO)処理を終了する(エンド)。
【0079】
(ステップS519)
ここでは、全体制御部211は、画像形成パラメータを補正する。具体的には、LUTを使用し、ステップS513での第2の検知モードでの物性の検知結果と、印刷設定を用いて、画像形成パラメータを再設定する。
【0080】
このように第2の実施形態に係る画像形成システム100では、読取部52の読み取りに得られた読取画像データにより不良の有無、および不良種類を判定する不良検知部212と、印刷実行時に、不良検知部212により不良が検知された場合に、以降に、第1の検知モードよりも検知する物性が多い、および/または検知精度が高い第2の検知モードによりシートの物性を検知し、ならびに、不良原因特定部213は、不良の検知結果と、第2の検知モードでのメディア物性検知部51の検知により得られた検知結果により、不良の原因を特定する。これにより、読取画像データにより検知した画像不良の原因をより精度よく特定することが可能となる。
【0081】
(情報処理装置600)
以上に説明した画像形成システム100は、画像形成システム100内で、不良の検知および不良原因の特定処理を実行したが、これらの処理を、画像形成システムに接続した情報処理装置により実行するようにしてもよい。図12は、他の実施形態における画像形成システム10bと通信接続した情報処理装置600を示す模式図である。情報処理装置600は、例えばPCであり、制御部61、記憶部62、表示部65、および通信部66を備える。
【0082】
通信部26は、他の装置と通信するためのインターフェースであり、取得部として機能する。通信部26により、画像形成システム10bから、検査に用いる読取画像データ、印刷元データ、およびメディア物性検知部51の検知結果が取得される。
【0083】
制御部61は、CPUと、メモリーを有し、不良検知部612、および不良原因特定部613として機能する。不良検知部612、および不良原因特定部613はそれぞれ、図3で示した不良検知部212、および不良原因特定部213として機能する。不良検知部612は画像の不良の検知を行い、不良原因特定部613は、不良原因の特定処理(図4図6等参照)を実行する。また、原因を特定した場合には、制御部61は、表示部65に、図5Bに示したような警告または判定結果を表示させる。
【0084】
以上に説明した画像形成システム、および情報処理装置の構成は上記の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種種改変することができる。また、一般的な画像形成システム、情報処理装置が備える構成を排除するものではない。
【0085】
また、上述した実施形態に係る画像形成システム、および情報処理装置における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリーやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供され てもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0086】
100 画像形成システム
11 給紙装置
12 プリンタ本体部
13 画像検査装置
14 排紙装置
21 制御部
211 全体制御部
212 不良検知部
213 不良原因特定部
22 記憶部
23 給紙部
24 搬送部
241 主搬送路
25 操作パネル
26 通信部
30 画像形成部
51 メディアセンサー
511 水分率検知部
512 表面性検知部
513 坪量検知部
514 紙厚検知部
515 剛度検知部
516 体積抵抗検知部
517 目方向検知部
52 読取部
60 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
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図12