(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110064
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240807BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240807BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L25/08 B
H01L27/146 F
H01L27/144 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014410
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山口 正臣
(72)【発明者】
【氏名】松宮 康夫
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA19
4M118CA14
4M118CA40
4M118CB01
4M118CB02
4M118CB14
4M118EA14
4M118FA06
4M118FA27
4M118GA10
4M118HA25
4M118HA31
(57)【要約】
【課題】突出電極を介して相互に接続されたチップの対向部の隙間にアンダーフィル材を充填するときに空洞の発生を抑制する。
【解決手段】半導体デバイスは、互いに対向する第1チップおよび第2チップと、前記第1チップおよび前記第2チップを互いに接続する複数の突出電極と、前記第1チップおよび前記第2チップの対向部の隙間に充填された樹脂と、前記第1チップにおいて前記突出電極が接続される第1面に設けられる凹部と、前記凹部の底、前記第2チップにおける前記凹部の対向部、または、前記底および前記対向部の両方に設けられた金属と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1チップおよび第2チップと、
前記第1チップおよび前記第2チップを互いに接続する複数の突出電極と、
前記第1チップおよび前記第2チップの対向部の隙間に充填された樹脂と、
前記第1チップにおいて前記突出電極が接続される第1面に設けられる凹部と、
前記凹部の底、前記第2チップにおける前記凹部の対向部、または、前記底および前記対向部の両方に設けられた金属と、
を有する半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1チップに設けられ、入射する電磁波を電気信号に変換する複数の変換部と、
前記第2チップに設けられ、前記複数の変換部の各々に接続される前記突出電極を介して前記第1チップから受信する電気信号を処理する信号処理回路と、
前記第1チップの前記第1面と反対側である第2面に設けられ、前記複数の変換部に共通に接続される共通コンタクト層と、
前記凹部と前記凹部の周囲とに設けられ、前記突出電極を介して前記第2チップから供給される電圧を前記共通コンタクト層に伝達する配線と、を有し、
前記金属は、前記底に設けられて前記共通コンタクト層に接続される前記配線である
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記複数の変換部は、赤外線を電気信号に変換する
請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記金属は、Ag、Al、Au、Cu、Fe、Mg、Ni、Pb、Pt、Sn、Ti、Zn、In、Wの1つまたは複数を含む
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記金属は、前記凹部の底、前記第2チップにおける前記凹部の対向部、または、前記底および前記対向部の両方に設けられたダミー突出電極である
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記ダミー突出電極は、前記底および前記対向部の両方に設けられ、
前記底に設けられる前記ダミー突出電極と、前記対向部に設けられる前記ダミー突出電極とは、相互に接続されている
請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記ダミー突出電極は、前記底および前記対向部の両方に設けられ、
前記底に設けられる前記ダミー突出電極と、前記対向部に設けられる前記ダミー突出電極とは、非接触である
請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記ダミー突出電極は、InまたはInの化合物である
請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記第1チップは、III-V族化合物半導体またはII-VI族化合物半導体を使用して製造され、
前記第2チップは、Si半導体を使用して製造される
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップを基板に実装した半導体デバイスでは、基板とフリップチップとの間にアンダーフィル材を充填することで、基板とフリップチップとの機械的な接続強度が補強される。この種の半導体デバイスでは、基板およびフリップチップの一方または両方に、アンダーフィル材の非充填領域を囲んでアンダーフィル材の毛細管現象による浸入を抑止する溝構造が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数の画素を含む赤外線検出器と信号処理回路素子とをIn等のバンプを介して相互に接続した赤外線検知装置では、画素間に設けられる画素の分離溝に、隣の画素からの赤外線の入射を抑止する反射膜が設けられる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
相互に通信を行う複数のチップが基板に接合される広帯域モジュールでは、チップから突出するCuピラーが基板に設けられた溝に挿入されて接合された後、溝の隙間にアンダーフィル材が充填される(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-243444号公報
【特許文献2】特開2017-139417号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0288025号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンダーフィル材は、表面張力による毛細管現象を利用して、バンプにより接合された2つのチップの対向部の隙間に充填される。例えば、アンダーフィル材が充填される隙間の表面が、金属膜に比べて毛細管現象の弱いシリコン酸化膜の場合、アンダーフィル材が十分に充填されない場合がある。アンダーフィル材の充填不足によりチップの対向部に空洞が発生すると、バンプによる接合部の歪みのバランスが崩れるおそれがあり、バンプ等に亀裂が発生するおそれがある。また、チップの一方がエピ基板である場合、2つのチップの対向部に空洞があると、チップの接合後にエピ基板のベース基板をバックグラインドにより切削するときのダメージ耐性が低下するおそれがある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、突出電極を介して相互に接続されたチップの対向部の隙間にアンダーフィル材を充填するときに空洞の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの観点によれば、半導体デバイスは、互いに対向する第1チップおよび第2チップと、前記第1チップおよび前記第2チップを互いに接続する複数の突出電極と、前記第1チップおよび前記第2チップの対向部の隙間に充填された樹脂と、前記第1チップにおいて前記突出電極が接続される第1面に設けられる凹部と、前記凹部の底、前記第2チップにおける前記凹部の対向部、または、前記底および前記対向部の両方に設けられた金属と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
突出電極を介して相互に接続されたチップの対向部の隙間にアンダーフィル材を充填するときに空洞の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態における半導体デバイスの一例を示す部分断面図である。
【
図2】
図1の半導体デバイスの一例を示す分解平面図である。
【
図3】
図1の第1チップ用のエピ基板の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図4】他の半導体デバイスの一例を示す部分断面図である。
【
図5】別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す部分断面図である。
【
図6】別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す部分断面図である。
【
図7】別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す部分断面図である。
【
図8】別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態が説明される。図中の符号X、Y、Zは、それぞれチップの平面方向X、平面方向Y、チップの厚み方向Zを示す。各図において、平面方向X、Yのサイズおよび厚み方向Zのサイズとサイズの比とは、実際のデバイスと異なる場合がある。例えば、膜の厚さは、実際より厚く示されている。
【0012】
図1は、一実施形態における半導体デバイスの一例を示す。
図1は、矩形状の半導体デバイス100の端部の断面を示す。半導体デバイス100は、化合物半導体を用いた複数の画素15を有する第1チップ10と、信号処理回路21が搭載された第2チップ20とをバンプ30a、30bを介してハイブリッド接合することで製造される。例えば、バンプ30a、30bの材料は、Inである。バンプ30a、30bは突出電極の一例である。
【0013】
例えば、半導体デバイス100は、赤外線を検知する冷却型の赤外線検知装置である。なお、半導体デバイス100は、紫外線、X線または可視光等の電磁波を検知する機能を有する第1チップ10を有してもよい。また、半導体デバイス100は、例えば、2つのシリコンチップ等をバンプを介してハイブリッド接続したものでもよく、画素を持たなくてもよい。
【0014】
第1チップ10は、図示しないIII-V族化合物半導体またはII-VI族化合物半導体等の結晶基板上にエピタキシャル成長により順に積層されたコンタクト層11、活性層12およびコンタクト層13を有する。活性層12およびコンタクト層13は、画素溝14により区切られることで、コンタクト層11側から入射する赤外線を検知し、検知した赤外線の強度を電気信号に変換する画素15として機能する。
【0015】
画素15は、入射する電磁波を電気信号に変換する変換部の一例である。コンタクト層11は、複数の画素15に共通に接続される共通コンタクト層の一例である。例えば、活性層12は、GaAsやAlGaAs等の化合物半導体により形成され、量子井戸構造または量子ドット構造を有し、コンタクト層11側から入射する赤外線を検知する。
【0016】
矩形状の第1チップ10は、マトリックス状に配置された複数の画素15を有する。コンタクト層11は、全ての画素15に共通に接続され、例えば、面形状を有する。各画素15のコンタクト層13は、電極16aを介してバンプ30aに接続される。第1チップにおいて、バンプ30aが接続される面は、第1面の一例であり、コンタクト層11が位置する面(第1面の反対側の面)は、第2面の一例である。
【0017】
マトリックス状に設けられた複数の画素15を含む画素アレイ15aの周囲には、コンタクト層13および活性層12をエッチングすることにより設けられた溝17を有する。溝17は、バンプ30bが接続される第1面に設けられた凹部の一例である。溝17において、コンタクト層11側の底17aと、溝17の側壁17bと、溝17の第2チップ20側の開口部17cの周囲とには、電極16bが設けられる。電極16bは、バンプ30bに接続される。電極16bは、バンプ30bを介して第2チップ20から供給される電圧をコンタクト層11に伝達する配線の一例である。
【0018】
画素溝14および電極16a、16bの表面(第1面)は、溝17の底17aに設けられた電極16bを除いてSiO2膜等の絶縁膜18により覆われている。特に限定されないが、電極16a、16bは、コンタクト層13側からAuGe/Ni/Auを順に積層することで形成される。Au等の金属は、SiO2に比べて表面張力が高く、濡れ性が悪い。
【0019】
ここで、主要な固体材料の融点付近での表面張力γs(mN/m)は、以下の通りである(改訂4版 日本金属学会,2004 金属データブックより抜粋)。表面張力γSは、温度の減少関数であるため、室温付近では、下記に示す値よりも大きくなる。また、下記に示すように、金属の表面張力は、SiO2の表面張力よりも一桁程度高い値を示すものも多い。このため、金属の表面は、SiO2の表面に比べて濡れ性が悪くなり、接触した液体の接触角が大きくなる。
【0020】
W: γs=2500(測定温度3377℃)
Pt: γs=1800(測定温度1769℃)
Fe: γs=1872(測定温度1536℃)
Ni: γs=1778(測定温度1454℃)
Cu: γs=1285(測定温度1083℃)
Au: γs=1140(測定温度1063℃)
Si: γs= 865(測定温度1410℃)
Ag: γs= 903(測定温度960.7℃)
Al: γs= 914(測定温度660℃)
In: γs= 556(測定温度1566℃)
SiO2:γs= 296(測定温度927℃)
【0021】
第2チップ20は、例えば、シリコン半導体の基板を使用して製造される。第2チップ20は、信号を処理する信号処理回路21と、外部電極22と、バンプ30a、30bにそれぞれ接続される配線23a、23bと、外部電極22に接続される配線23cとを有する。信号処理回路21は、実際には、第2チップ20の表面側(第1チップ10側)の半導体層に形成されるトランジスタ、配線、ビア等により実現されるが、
図1では、簡単化のため、矩形で示される。
【0022】
信号処理回路21を含む第2チップ20は、画素15で検出された赤外線の強度を示す信号をバンプ30aを介して読み出す信号読み出し回路ROIC(Read-Out Integrated Circuit)として機能する。第2チップ20における第1チップ10側の表面は、バンプ30a、30bおよび外部電極22の領域を除いてSiO2膜等の絶縁膜24により覆われている。
【0023】
配線23aは、図示しないビアおよび配線を介して信号処理回路21に接続される。信号処理回路21は、バンプ30aおよび配線23aを介して第1チップ10から受ける電気信号(画素信号)を処理する。配線23bは、コンタクト層11を介して各画素15に供給するコモン電圧を、バンプ30bを介して電極16bに伝達する。
【0024】
溝17を設けることにより、電極16bのみにより第1チップ10の表面(バンプ30a、30bの形成面)からコンタクト層11にコモン電圧を供給することができる。換言すれば、第2チップ20から第1チップ10の裏面側に位置するコンタクト層11へのコモン電圧の供給経路を簡易な製造プロセスにより形成することができる。
【0025】
配線23cは、例えば、信号処理回路21による信号処理で得た画像データ等を外部電極22に伝達する。外部電極22に伝達された画像データ等は、外部電極22に接続される図示しないバンプまたはボンディングワイヤ等により、半導体デバイス100の外部の装置に出力される。なお、
図2に示すように、半導体デバイス100は、複数の外部電極22を有する。このため、配線23cは、外部電極22で受信する制御信号等を信号処理回路21等に伝達するために設けられてもよい。
【0026】
第1チップ10および第2チップ20が互いに対向する対向部の隙間には、バンプ30a、30bによる第1チップ10および第2チップ20の接合部を補強するためにアンダーフィル材40が充填されている。例えば、アンダーフィル材40は、接着剤となる液状の樹脂に硬化剤を混ぜ合わせた有機物であり、熱を加えることで硬化剤との反応が促進されて硬化される。アンダーフィル材40を硬化させることで、第1チップ10と第2チップ20との接合力を高めることができる。この実施形態では、溝17の底17aに設けられる電極16bの表面は、絶縁膜18を介することなく開口部17cに露出しており、アンダーフィル材40と直接接触している。
【0027】
電極16bの表面であるAuは、SiO2に比べて表面張力が大きく、濡れ性が悪い。このため、第1チップ10および第2チップ20の対向部の隙間に充填されるアンダーフィル材40におけるAuの表面での接触角は、SiO2の表面での接触角に比べて大きくなる。したがって、Auが露出する面では、SiO2の表面に比べて毛細管現象の作用が強くなり、電極16bに接触したアンダーフィル材40を溝17の内部に入りやすくすることができる。
【0028】
この結果、アンダーフィル材40が充填されない空洞が溝17にできることを抑制することができる。溝17に空洞ができることを抑制できるため、バンプ30a、30bの歪みのバランスが崩れることを抑制することができ、バンプ等に亀裂が発生することを抑制することができる。さらに、
図3で説明する半導体デバイス100の製造工程において、III-V族化合物半導体等の結晶基板をバックグラインドにより切削する際に、ダメージ耐性が劣化することを抑制することができる。
【0029】
図2は、
図1の半導体デバイス100の一例を示す。例えば、
図2の一点鎖線で示す領域の断面が、
図1で示されている。
図2では、説明を分かりやすくするために、第1チップ10および第2チップ20の各々の表面側(バンプ30a、30bの形成面)が示される。符号A、B、C、Dは、第1チップ10と第2チップ20との接合位置を示す。
【0030】
溝17は、第1チップ10の画素アレイ15aの周囲に、第1チップ10の各辺に沿って配置される。画素アレイ15aの周囲に複数の溝17を設けることで、溝17に対応して設けられる電極16b(
図1)により、第1チップ10の裏面の全体に設けられるコンタクト層11にコモン電圧を十分に供給することができる。
【0031】
なお、
図1のアンダーフィル材40は、第1チップ10と第2チップ20とをバンプ30a、30bにより接合した状態で、例えば、第1チップ10の4つの辺のいずれかと、第2チップ20との間の隙間から充填される。
【0032】
図3は、
図1の第1チップ10用のエピ基板の製造方法の一例を示す。なお、エピ基板は、ウェハの状態で製造されるが、以下では、説明の簡単化のため、
図1と同様にチップ状で示される。
【0033】
まず、
図3(A)において、GaAs基板等のIII-V族化合物半導体等の結晶基板50上に混合比の異なるIII-V族化合物半導体の結晶をエピタキシャル成長させることによりコンタクト層11、活性層12およびコンタクト層13が順次積層される。次に、コンタクト層13上にフォトレジストが塗布され、フォトマスクを使用して露光および現像を行うことにより、画素溝14および溝17の形成領域に開口部を有する図示しないレジストパターンが形成される。
【0034】
この後、レジストパターンをマスクとして、画素溝14および溝17の形成領域のコンタクト層13および活性層12が選択的にエッチングされ、画素溝14および溝17が形成され、画素溝14の間に画素15が形成される。この後、不要となったレジストパターンは除去される。以下では、エッチング用のレジストパターンを形成するためのフォトレジストの塗布、露光および現像は、フォトリソグラフィ手法と称される。
【0035】
次に、コンタクト層13、画素溝14および溝17上に金属膜が蒸着またはスパッタリングされる。次に、フォトリソグラフィ手法を使用して、画素溝14と、溝17に最も近い画素溝14と溝17との間の領域19とに開口部を有する図示しないレジストパターンが形成される。この後、レジストパターンを使用して、金属膜が選択的にエッチングされ、電極16a、16bが形成され、レジストパターンが除去される。
【0036】
次に、電極16a、16bおよび画素溝14を覆ってSiO
2膜等の絶縁膜18が形成される。次に、フォトリソグラフィ手法を使用して、領域19に開口部を有する図示しないレジストパターンが形成される。この後、レジストパターンを使用して、領域19に位置する絶縁膜18が選択的にエッチングされ、レジストパターンが除去される。
図3(A)の断面形状が形成される。
【0037】
次に、
図3(B)において、フォトリソグラフィ手法を使用して、溝17に開口部を有する図示しないレジストパターンが形成される。この後、レジストパターンを使用して、底17aに位置する絶縁膜18が選択的にエッチングされ、溝17の底17aから電極16bが露出される。そして、レジストパターンが除去されることで、
図3(B)に示すエピ基板が完成する。以下では、III-V族化合物半導体等の結晶基板50を含む第1チップ10の構造は、第1チップ10とも称される。
【0038】
エピ基板が完成した後、
図1に示したバンプ30a、30bのうち、第1チップ10側のバンプ30a、30bが第1チップ10上に形成されることで、第2チップ20(
図1)に接合する前の結晶基板50付きの第1チップ10が完成する。第2チップ20には、予めバンプ30a、30bが形成される。
【0039】
次に、第1チップ10のバンプ30a、30bと第2チップ20のバンプ30a、30bとが相互に接合される。次に、第1チップ10および第2チップ20の対向部の隙間からアンダーフィル材40(
図1)が注入される。注入されたアンダーフィル材40は、毛細管現象により、第1チップ10および第2チップ20の対向部の隙間に侵入していく。その後、アンダーフィル材40は、アニール処理等により硬化される。
【0040】
この後、結晶基板50がバックグラインドとウェットエッチングとにより除去されることで、
図1に示した半導体デバイス100が完成する。結晶基板50を除去してコンタクト層11を第1チップ10の裏面に露出させることで、コンタクト層11側から入射される赤外線の受光感度を向上することができる。
【0041】
図4は、他の半導体デバイスの一例を示す。
図1と同一または同様の要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図4に示す半導体デバイス102は、溝17の底17aにおける電極16bが絶縁膜18で覆われていることを除き、
図1の半導体デバイス100と同様の構造を有する。
【0042】
溝17の底17aにおける電極16bが絶縁膜18で覆われている場合、間隙が大きい溝17の開口部17cにおいて、底17aに設けられる絶縁膜18により、濡れ性が良くなる。このため、底17aでの絶縁膜18の接触角は、電極16bの表面(Au)での接触角に比べて小さくなり、第1チップ10および第2チップ20の対向部の隙間へのアンダーフィル材40の充填時に、毛細管現象の作用が弱くなる。これにより、アンダーフィル材40は、溝17に入り込みにくくなり、アンダーフィル材40が充填されない空洞が開口部17cに発生する場合がある。
【0043】
アンダーフィル材40の熱膨張率は、Si半導体、III-V族化合物半導体およびエピ基板の熱膨張率より10倍程度大きい。このため、熱処理により硬化したアンダーフィル材40は、常温状態で歪を帯びた状態となる。
【0044】
開口部17cに空洞ができた場合、空洞がある位置と空洞がない位置とでバンプ30a、30bの歪みのバランスが崩れるおそれがあり、歪みが大きい位置のバンプ30a、30b等に亀裂が発生するおそれがある。また、半導体デバイス102の製造工程において、III-V族化合物半導体等の結晶基板50をバックグラインドにより切削する際に、ダメージ耐性が劣化するおそれがある。
【0045】
以上、この実施形態では、第1チップ10の溝17の底17aに位置する絶縁膜18を除去して電極16bを開口部17cに露出させた。これにより、溝17に浸入するアンダーフィル材40の毛細管現象の作用を強くすることができ、電極16bに接触したアンダーフィル材40を溝17の内部に入りやすくすることができる。
【0046】
この結果、アンダーフィル材40が充填されない空洞が溝17にできることを抑制することができ、バンプ30a、30b等に亀裂が発生することを抑制することができる。また、III-V族化合物半導体等の結晶基板50のバックグラインド時のダメージ耐性の劣化を抑制することができる。したがって、半導体デバイス100および半導体デバイス100が搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。
【0047】
図5は、別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す。
図1と同一または同様の要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図5に示す半導体デバイス100Aは、
図1の半導体デバイス100と同様に、赤外線を検知する冷却型の赤外線検知装置である。半導体デバイス100Aの全体構成は、
図2と同様である。
【0048】
なお、半導体デバイス100Aは、紫外線、X線または可視光等の電磁波を検知する機能を有する第1チップ10を有してもよい。また、半導体デバイス100Aは、例えば、2つのシリコンチップ等をバンプを介してハイブリッド接続したものでもよく、画素を持たなくてもよい。
【0049】
半導体デバイス100Aは、溝17の底17aにおける電極16bが絶縁膜18で覆われている。また、半導体デバイス100Aは、第2チップ20の表面の絶縁膜24上において溝17の対向部にAu等の金属膜25が設けられている。半導体デバイス100Aのその他の構造は、
図1の半導体デバイス100の構造と同様である。金属膜25は、例えば、第2チップ20の表面にAu等を蒸着またはスパッタリングした後、金属膜25の形成領域のみにレジストパターンを形成し、Au膜を選択的にエッチングすることで形成される。
【0050】
溝17の対向部に金属膜25を設けることで、溝17の底17aに電極16bを露出する場合と同様に、毛細管現象の作用を強くすることができる。したがって、金属膜25に接触したアンダーフィル材40を溝17の内部に入りやすくすることができ、アンダーフィル材40が充填されない空洞が溝17にできることを抑制することができる。この結果、バンプ30a、30b等に亀裂が発生することを抑制することができ、III-V族化合物半導体等の結晶基板50(
図3)のバックグラインド時にダメージ耐性が劣化することを抑制することができる。したがって、半導体デバイス100Aおよび半導体デバイス100Aが搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。
【0051】
なお、金属膜25は、Auより表面張力が大きいCu、Pt、W等にすることで、毛細管現象の作用をより強くすることができ、空洞が溝17にできることをさらに抑制することができる。例えば、金属膜25は、Ag、Al、Au、Cu、Fe、Mg、Ni、Pb、Pt、Sn、Ti、Zn、In、Wの1つまたは複数を含んでもよい。
【0052】
この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、
図5では、金属膜25が第2チップ20の表面の絶縁膜24上において溝17の対向部に設けられる例が示されるが、金属膜25は、溝17の底17aに位置する絶縁膜18上に設けられてもよい。あるいは、金属膜25は、第2チップ20の表面の溝17の対向部と溝17の底17aとの両方に設けられてもよい。
【0053】
図6は、別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す。
図1と同一または同様の要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に示す半導体デバイス100Bは、
図1の半導体デバイス100と同様に、赤外線を検知する冷却型の赤外線検知装置である。半導体デバイス100Bの全体構成は、
図2と同様である。
【0054】
なお、半導体デバイス100Bは、紫外線、X線または可視光等の電磁波を検知する機能を有する第1チップ10を有してもよい。また、半導体デバイス100Bは、例えば、2つのシリコンチップ等をバンプを介してハイブリッド接続したものでもよく、画素を持たなくてもよい。
【0055】
半導体デバイス100Bは、第2チップ20の表面の絶縁膜24上において溝17の対向部にAu等の金属膜25が設けられることを除き、
図1の半導体デバイス100と同様の構造を有する。金属膜25の形成方法は、
図5で説明した形成方法と同様である。なお、金属膜25は、Auより表面張力が大きいCu、Pt、W等でもよい。
【0056】
この実施形態では、溝17の底17aに電極16bを露出させることに加えて、第2チップ20の表面の絶縁膜24上において溝17の対向部に金属膜25を形成することで、毛細管現象の作用をさらに強くすることができる。したがって、電極16bおよび金属膜25にそれぞれ接触したアンダーフィル材40を溝17の内部に入りやすくすることができ、アンダーフィル材40が充填されない空洞が溝17にできることを抑制することができる。
【0057】
この結果、バンプ30a、30b等に亀裂が発生することを抑制することができ、III-V族化合物半導体等の結晶基板50(
図3)のバックグラインド時にダメージ耐性が劣化することを抑制することができる。したがって、半導体デバイス100Bおよび半導体デバイス100Bが搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
図7は、別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す。
図1と同一または同様の要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図7に示す半導体デバイス100Cは、
図1の半導体デバイス100と同様に、赤外線を検知する冷却型の赤外線検知装置である。半導体デバイス100Cの全体構成は、
図2と同様である。
【0059】
なお、半導体デバイス100Cは、紫外線、X線または可視光等の電磁波を検知する機能を有する第1チップ10を有してもよい。また、半導体デバイス100Cは、例えば、2つのシリコンチップ等をバンプを介してハイブリッド接続したものでもよく、画素を持たなくてもよい。
【0060】
半導体デバイス100Cは、第1チップ10における溝17の底17aと、第2チップ20の表面における溝17の対向部とのそれぞれに複数のダミーバンプ60が設けられている。例えば、ダミーバンプ60の材料は、InまたはInの化合物である。ダミーバンプ60は、ダミー突出電極の一例である。
【0061】
各ダミーバンプ60は、底17aに設けられるSiO
2膜等の絶縁膜18、または、第2チップ20の表面に設けられる絶縁膜24に接続される。底17aは、絶縁膜18で覆われているため、電極16bがダミーバンプ60と電気的に接続されることはない。半導体デバイス100Cのその他の構造は、
図1の半導体デバイス100の構造と同様である。
【0062】
図7に示す例では、第1チップ10側のダミーバンプ60と第2チップ20側のダミーバンプ60とは互いに接合される。なお、第1チップ10側と第2チップ20側とにそれぞれ設けられるダミーバンプ60の数は、2個に限定されず、1個でもよく、3個以上でもよい。
【0063】
溝17と、第2チップ20における溝17の対向部にダミーバンプ60をそれぞれ設けることで、溝17の開口部17cに存在する隙間を小さくすることができ、毛細管現象の作用をさらに強くすることができる。したがって、ダミーバンプ60に接触したアンダーフィル材40を溝17の内部に入りやすくすることができ、アンダーフィル材40が充填されない空洞が溝17にできることを抑制することができる。この結果、バンプ30a、30b等に亀裂が発生することを抑制することができ、III-V族化合物半導体等の結晶基板50(
図3)のバックグラインド時のダメージ耐性の劣化とを抑制することができる。したがって、半導体デバイス100Cおよび半導体デバイス100Cが搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。
【0064】
なお、ダミーバンプ60の材料は、Inより表面張力が大きいAu、Cu、Ni等でもよい。表面張力が大きいほど、毛細管現象の作用を強くして、アンダーフィル材40を溝17の内部に入りやすくすることができる。この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
さらに、この実施形態では、ダミーバンプ60により、溝17の開口部17cに存在する隙間を小さくできるため、毛細管現象の作用をさらに強くすることができ、アンダーフィル材40を溝17の内部にさらに入りやすくすることができる。また、第1チップ10と第2チップ20とをダミーバンプ60で相互に接続することで、ダミーバンプ60を設けない場合に比べて半導体デバイス100Cの強度を高くすることができる。
【0066】
図8は、別の実施形態における半導体デバイスの一例を示す。
図1と同一または同様の要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図8に示す半導体デバイス100Dは、
図1の半導体デバイス100と同様に、赤外線を検知する冷却型の赤外線検知装置である。半導体デバイス100Dの全体構成は、
図2と同様である。
【0067】
なお、半導体デバイス100Cは、紫外線、X線または可視光等の電磁波を検知する機能を有する第1チップ10を有してもよい。また、半導体デバイス100Cは、例えば、2つのシリコンチップ等をバンプを介してハイブリッド接続したものでもよく、画素を持たなくてもよい。
【0068】
半導体デバイス100Dは、第1チップ10における溝17の底17aと、第2チップ20の表面における溝17の対向部とのそれぞれに複数のダミーバンプ70が設けられている。例えば、ダミーバンプ70の材料は、InまたはInの化合物である。ダミーバンプ70は、ダミー突出電極の一例である。
【0069】
各ダミーバンプ70は、底17aに設けられるSiO
2膜等の絶縁膜18、または、第2チップ20の表面に設けられる絶縁膜24に接続される。底17aは、絶縁膜18で覆われているため、電極16bがダミーバンプ60と電気的に接続されることはない。半導体デバイス100Dのその他の構造は、
図1の半導体デバイス100の構造と同様である。
【0070】
図8に示す例では、第1チップ10側のダミーバンプ70と第2チップ20側のダミーバンプ70とは接合されず、非接触である。なお、第1チップ10側と第2チップ20側とにそれぞれ設けられるダミーバンプ70の数は、2個に限定されず、1個でもよく、3個以上でもよい。
【0071】
第1チップ10側のダミーバンプ70と第2チップ20側のダミーバンプ70とを接合されないように離れて配置することで、ダミーバンプ70の表面積を
図7のダミーバンプ60の表面積に比べて大きくすることが可能になる。溝17の開口部17cでのダミーバンプ70の表面積を大きくすることで、
図7に比べて、毛細管現象の作用を強くすることができ、ダミーバンプ70に接触したアンダーフィル材40を溝17の内部に入りやすくすることができる。
【0072】
なお、ダミーバンプ70は、第1チップ10側または第2チップ20側のいずれかに設けられても、毛細管現象の作用を強くすることができる。また、ダミーバンプ70の代わりにバンプ30a、30bと同じ大きさのダミーバンプが、溝17の底17aおよび第2チップ20における溝17の対向部に設けられてもよい。この場合、バンプ30a、30bの製造工程と一緒にダミーバンプを形成することができ、半導体デバイス100Dの製造コストを低減することができる。したがって、半導体デバイス100Dおよび半導体デバイス100Dが搭載されるシステムの信頼性を向上することができる。
【0073】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、ダミーバンプ70により、溝17の開口部17cに存在する隙間を小さくするとともに、ダミーバンプ70の表面積を、
図7のダミーバンプ60の表面積より大きくできる。このため、
図7に比べて、毛細管現象の作用をさらに強くすることができ、アンダーフィル材40を溝17の内部にさらに入りやすくすることができる。
【0074】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 第1チップ
11 コンタクト層
12 活性層
13 コンタクト層
14 画素溝
15 画素
15a 画素アレイ
16a、16b 電極
17 溝
17a 底
17b 側壁
17c 開口部
18 絶縁膜
19 領域
20 第2チップ
21 信号処理回路
22 外部電極
23a、23b、23c 配線
24 絶縁膜
30a、30b バンプ
40 アンダーフィル材
50 結晶基板
60 ダミーバンプ
70 ダミーバンプ
100、100A、100B、100C、100D 半導体デバイス
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