(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110065
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】燃料タンクの保護構造
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240807BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F02M37/00 301Z
B60K15/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014412
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】白木原 健人
(72)【発明者】
【氏名】福山 博
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 恭平
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA03
3D038CA18
3D038CB01
3D038CC01
(57)【要約】
【課題】プロテクタの板厚を過剰に大きくすることなく、プロテクタに荷重が入力したときに、当該プロテクタが燃料タンクの最弱な突出部に衝突することを防止して燃料タンクを保護する構造。
【解決手段】燃料タンク1の側面に外側へ向けて突出する最弱な突出部13が設けられており、燃料タンク1の側面に板状のプロテクタ3が緩衝板2を介して当接するように配置されており、緩衝板2は、突出部13が食い込み可能でかつ板厚方向への荷重入力に伴い板厚方向に圧縮変形可能な材料で形成されており、プロテクタ3において突出部13と対向する領域には、突出部13が入り込むような凹部35が設けられており、プロテクタ3への荷重Fの入力前において突出部13の先端から凹部35の底までの離隔距離Aは、緩衝板2の初期板厚Bよりも大きく、かつ緩衝板2の板厚方向の圧縮変形許容量Cよりも大きく設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの側面に外側へ向けて突出する最弱な突出部が設けられており、この燃料タンクの側面に板状のプロテクタが緩衝板を介して当接するように配置されており、
前記緩衝板は、前記突出部が食い込み可能でかつ板厚方向への荷重入力に伴い板厚方向に圧縮変形可能な材料で形成されており、
前記プロテクタにおいて前記突出部と対向する領域には、前記突出部が入り込むような凹部が設けられており、
前記プロテクタへの荷重の入力前において前記突出部の先端から前記凹部の底までの離隔距離は、前記緩衝板の初期板厚よりも大きく、かつ前記緩衝板の板厚方向の圧縮変形許容量よりも大きく設定されていることを特徴とする燃料タンクの保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両では、燃料タンクの周辺に、車両を駆動するモータやそのブラケットなどの構造物が配置されている場合がある。
【0003】
前記のように燃料タンクの周辺の前記構造物が、車両の衝突事故の際に移動して前記燃料タンクのタンク取付フランジに衝突するおそれがある。
【0004】
例えば特許文献1の段落0018には、「車両10の衝突事故が発生した際に、燃料タンク11の周辺に配置されたモータおよびそのブラケット80(構造物)が、燃料タンク11のタンク取付フランジ14に向かって移動してくる。しかし、本実施形態の車両10は、タンク取付フランジ14の端部が断熱プロテクタ22の延出部24で覆われているため、モータおよびそのブラケット80が、タンク取付フランジ14に直接、衝突することを抑制することができる」ということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、燃料タンクの下半分を覆う断熱プロテクタのプロテクタ取付フランジおよび延出部を、燃料タンクのタンク取付フランジに対して所定隙間を介して対向させるようにしているだけであるために、衝突事故などにより前記断熱プロテクタが前記燃料タンクに向けて押し込み変形されると、前記プロテクタ取付フランジおよび延出部が前記タンク取付フランジに当接するおそれがある。
【0007】
そこで、前記断熱プロテクタのプロテクタ取付フランジおよび延出部が変形しないようにするには、当該プロテクタ取付フランジおよび延出部の板厚を上げる必要があるため、質量が増加するとともに、前記断熱プロテクタを固定する部分の強度を高める必要がある。また、前記断熱プロテクタの周辺部品に対して搭載上の制約が発生することも懸念される。
【0008】
このような事情に鑑み、本発明は、プロテクタの板厚を過剰に大きくすることなく、プロテクタに荷重が入力したときに、当該プロテクタが燃料タンクの最弱な突出部に直接衝突することを防止して燃料タンクを保護する構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料タンクの保護構造は、燃料タンクの側面に外側へ向けて突出する最弱な突出部が設けられており、この燃料タンクの側面に板状のプロテクタが緩衝板を介して当接するように配置されており、前記緩衝板は、前記突出部が食い込み可能でかつ板厚方向への荷重入力に伴い板厚方向に圧縮変形可能な材料で形成されており、前記プロテクタにおいて前記突出部と対向する領域には、前記突出部が入り込むような凹部が設けられており、前記プロテクタへの荷重の入力前において前記突出部の先端から前記凹部の底までの離隔距離は、前記緩衝板の初期板厚よりも大きく、かつ前記緩衝板の板厚方向の圧縮変形許容量よりも大きく設定されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、前記プロテクタに荷重が入力された場合には、当該プロテクタが前記燃料タンク側に向けて変位させられることになって、前記緩衝板が板厚方向に圧縮変形されるために、前記板状のプロテクタの平坦部分が前記緩衝板を介して前記燃料タンクの側面に面で当接することになるものの、前記プロテクタの凹部が前記燃料タンクの最弱な突出部に当接せずに済むようになる。
【0011】
これにより、前記プロテクタに荷重が入力された場合、前記プロテクタが前記燃料タンクの最弱な突出部に直接衝突することを防止できるとともに、前記プロテクタの強度を高めるために当該プロテクタの板厚を過剰に大きくする必要が無くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プロテクタの板厚を過剰に大きくすることなく、プロテクタに荷重が入力したときに、当該プロテクタが燃料タンクの最弱な突出部に直接衝突することを防止して燃料タンクを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る燃料タンクの保護構造の一実施形態で、一部を断面にした側面図である。
【
図2】プロテクタへ荷重が入力したときの様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1および
図2に本発明の一実施形態を示している。
図1において、燃料タンク1は側面で示されており、緩衝板2およびプロテクタ3は断面で示されている。
【0016】
図示例の燃料タンク1は、例えば自動車などの車両に搭載されるもので、前記車両の内燃機関へ供給するガソリンや軽油等の燃料を貯留する。
【0017】
燃料タンク1は、上タンク11と下タンク12とを上下方向から組み合わせた構成であって、上タンク11の下部と下タンク12の上部とには、径方向外向きに突出するフランジ11a,12aが設けられており、各フランジ11a,12aが重ね合われて結合されることによって形成されている。
【0018】
この燃料タンク1の側面において上下方向の中間には、外側へ向けて突出する最弱な突出部13が設けられている。この突出部13は、各フランジ11a,12aを重ね合わせた部分である。
【0019】
燃料タンク1の側面には、プロテクタ3が緩衝板2を介して当接するように配置されている。
【0020】
緩衝板2は、突出部13が食い込み可能な可撓性材料(例えば発泡ウレタンなど)で適宜の板厚に形成されている。これにより、
図1に示すように、燃料タンク1とプロテクタ3との間に緩衝板2を組み込んだ状態では、突出部13が緩衝板2に食い込んだ状態になる。
【0021】
プロテクタ3は、例えば比較的硬質な金属材(ステンレス鋼など)で板状に形成されている。
【0022】
このプロテクタ3の上部と下部とには、外向きに傾斜するように屈曲形成される上傾斜部31と下傾斜部32とが設けられている。
【0023】
また、プロテクタ3の上下方向の中間において燃料タンク1の突出部13と対向する領域には、突出部13が入り込むような凹部35が設けられている。
【0024】
なお、凹部35は、プロテクタ3の上下方向の中間を外向きに突出するように湾曲することに伴い形成される凸状湾曲部36の内側に作られるものである。
【0025】
そして、プロテクタ3は、詳細に図示していないが中継部材を介して燃料タンク1に支持されるようになっている。
【0026】
次に、プロテクタ3に他の車両が衝突した場合、または道路上の設置物にプロテクタ3が衝突した場合には、プロテクタ3が荷重Fの入力に伴い燃料タンク1側に向けて変位させられることになり、当該プロテクタ3が緩衝板2を板厚方向に圧縮変形させることになる。
【0027】
そこで、この実施形態では、プロテクタ3の上平坦部33および下平坦部34が緩衝板2を介して燃料タンク1の側面に面で当接するようになって、プロテクタ3の凹部35の底を突出部13に直接当接させないようにするために、
図2に示すように、荷重Fの入力前における燃料タンク1の突出部13の先端からプロテクタ3の凹部35の底までの離隔距離Aは、緩衝板2の初期板厚Bよりも大きく、かつ緩衝板2の板厚方向の圧縮変形許容量(つぶれ量とも言う)Cよりも大きく設定している。
【0028】
なお、緩衝板2の圧縮変形許容量Cとは、プロテクタ3への荷重Fの入力に伴い緩衝板2が板厚方向に最大に圧縮変形する量のことである。これに伴い、緩衝板2が最大に圧縮変形して残存する板厚を、最大圧縮残存板厚D(
図2参照)と言う。
【0029】
ここで、圧縮変形許容量Cや最大圧縮残存板厚Dは、プロテクタ3に入力しうる最大の荷重Fと、緩衝板2の素材や板厚などとの相関関係を予め実験やシミュレーションなどによって把握し、特定することができる。
【0030】
前記のような設定を行っているので、プロテクタ3に荷重Fが入力されることにより、
図2の二点鎖線および実線で示すように、プロテクタ3が燃料タンク1側に向けて変位させられることになって、緩衝板2が板厚方向に圧縮変形された場合、プロテクタ3の上平坦部33および下平坦部34が緩衝板2を介して燃料タンク1の側面に面で当接することになるものの、その際、緩衝板2の圧縮変形が最大の圧縮変形許容量Cに到達したとしても、プロテクタ3の凹部35の底が燃料タンク1の最弱な突出部13に当接せずに済むようになる。
【0031】
なお、前記のようにプロテクタ3が燃料タンク1に面で当接する場合、例えば点で当接する場合に比べると、単位面積当たりの荷重負荷が軽減される。
【0032】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によれば、プロテクタ3に荷重Fが入力された場合、プロテクタ3が燃料タンク1の最弱な突出部13に直接衝突することを防止できるので、燃料タンク1を保護できる。しかも、プロテクタ3の強度を高めるために当該プロテクタ3の板厚を過剰に大きくする必要が無くなるので、設備コストの上昇を抑制することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0034】
上記実施形態では、プロテクタ3の凹部35について凸状湾曲部36を形成することに伴い作られる凹みとした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。例えば図示していないが、例えば凹部35を単なる凹みとして形成することが可能である。このような実施形態においても、上記実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、燃料タンクの保護構造に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 燃料タンク
11 上タンク
11a フランジ
12 下タンク
12a フランジ
13 突出部
2 緩衝板
3 プロテクタ
33 上平坦部
34 下平坦部
35 凹部
36 凸状湾曲部