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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011007
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】水底地盤掘削装置
(51)【国際特許分類】
   E21C 50/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E21C50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112659
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065FA03
2D065FA18
2D065FA22
(57)【要約】
【課題】水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げ、レアメタルを含む砂泥の周囲に微細気泡を付着させることで効率的に水上へ押し上げることができる水底地盤掘削装置を提供する。
【解決手段】円筒状の揚泥管3と、揚泥管3の内部に圧縮された空気を微細気泡として水流とともに送り込む第一水管15と、を設け、第一水管15の排出口を揚泥管3の下端部3aに連結し、揚泥管3の下端部3aから噴出する微細気泡によって水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げて、空気を含んだ砂泥を、揚泥管3を介して水上へ押し上げる水底地盤掘削装置1であって、第一水管15および第二水管16の上端には、炭素系の多孔質素材で形成された気泡発生媒体11が設けられた微細気泡発生装置6が連結され、、気泡発生媒体11は、空気を通す気泡発生媒体内通路11aを有し、気泡発生媒体内通路11aの空気を微細気泡として揚泥管3内へ流入する液体へ放出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上から採掘箇所まで連通する円筒状の揚泥管と、
前記揚泥管の内部に圧縮された空気を微細気泡として水流とともに送り込む水管と、を設け、
前記水管の排出口を揚泥管の下端部に連結し、前記揚泥管の下端部から噴出する微細気泡によって水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げて、空気を含んだ砂泥を、前記揚泥管を介して水上へ押し上げる水底地盤掘削装置であって、
前記水管の上端には、炭素系の多孔質素材で形成された気泡発生媒体が設けられた微細気泡発生装置が連結され、
前記気泡発生媒体は、空気を通す気泡発生媒体内通路を有し、
前記気泡発生媒体内通路の空気を微細気泡として前記揚泥管内へ流入する水流へ放出する、
ことを特徴とする水底地盤掘削装置。
【請求項2】
前記水管の排出口は、水面からの深さが200m以上となる位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の水底地盤掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地盤掘削装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水深200m付近の海底に、レアアースやレアメタルが分布しているエリアが確認されている。レアメタル等が分布しているエリアは広く、レアメタル等の含有率の高い泥土が薄く層状に存在すると予想されている。このレアメタル等の含有率の高い泥土の層は、レアメタル等をほとんど含んでいない表土で覆われた状態である。泥土内に含まれるレアメタル等の鉱物資源を利用するために、水底地盤掘削装置で表土を除去または回収して、レアメタル等を含む砂泥を回収することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
当該レアメタル等の鉱物資源を採掘し、水上へ揚泥する方法として、ポンプリフトによる揚泥と、エアリフトによる揚泥が知られている。ポンプリフトによる揚泥においては、掘削機構に一端が接続される圧送ホースと、この圧送ホースの他端に接続される圧送ポンプと、圧送ポンプによる圧力で被搬送物を水上まで搬送する揚泥ラインとを備え、圧送ポンプからの圧力で非搬送物を水上まで圧送する。また、エアリフトによる揚泥においては、水上から採掘箇所まで円筒状の揚泥管を設け、揚泥管の内部に圧縮された空気を送り込む空気管を、揚泥管の先端部に連結し、揚泥管の下端から噴出する圧縮空気によって水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げて、揚泥管を介して空気を含んだ砂泥を水上へ押し上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6386802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエアリフトによる揚泥においては、圧縮空気が気泡として送られていた当該気泡のサイズは直径数百μm-数mmであり、水底のレアメタルを含む砂泥の粒子に付着することにより浮上する。ところが、気泡のサイズが大きいと微細なレアメタルを含む砂泥の粒子の周囲に付着することができず、圧縮空気による押し上げ効率が下がる原因となっていた。
【0006】
また、通常の気泡は、電位がゼロであり、帯電されていない。このため、微細なレアメタルを含む砂泥付着するのは表面張力による作用のみであり、レアメタル成分を含まない砂泥と同様の確率で揚泥されることとなっていた。
【0007】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げ、レアメタルを含む砂泥の周囲に微細気泡を付着させることで効率的に水上へ押し上げることができる水底地盤掘削装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明においては、前記揚泥管の内部に圧縮された空気を微細気泡として水流とともに送り込む水管と、を設け
前記水管の排出口を揚泥管の下端部に連結し、前記揚泥管の下端部から噴出する微細気泡によって水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げて、空気を含んだ砂泥を、前記揚泥管を介して水上へ押し上げる水底地盤掘削装置であって、
前記水管の上端には、炭素系の多孔質素材で形成された気泡発生媒体が設けられた微細気泡発生装置が連結され、、
前記気泡発生媒体は、空気を通す気泡発生媒体内通路を有し、
前記気泡発生媒体内通路の空気を微細気泡として前記揚泥管内へ流入する液体へ放出するものである。
【0010】
また、本発明においては、前記水管の排出口は、水面からの深さが200m以上となる位置に配置されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
本発明においては、揚泥管の中に含まれる空気を微細気泡にすることにより、粒径の小さな砂泥の周囲にも微細気泡が付着することとなり、揚泥の効率が向上する。また、従前の気泡では表面張力によって砂泥に付着していたが、微細気泡として排出される空気には、マイナス電子が帯電しているため、プラスの電位を有するレアメタルの周囲により付着しやすくなる。これにより、効率的にレアメタルの揚泥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一の実施形態に係る水底地盤掘削装置を示す正面概略図。
図2】第一の実施形態に係る揚泥管の下端部を示す正面一部断面図。
図3】第二の実施形態に係る揚泥管の下端部を示す正面一部断面図。
図4】第三の実施形態に係る揚泥管の下端部を示す正面一部断面図。
図5】第四の実施形態に係る揚泥管の下端部を示す正面一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一の実施形態]
本発明の一実施形態に係る水底地盤掘削装置1について、図1を用いて説明する。本発明の実施形態に係る水底地盤掘削装置1は、図1に示すように、洋上もしくは湖上などの水上に設置され、海底もしくは湖底などの水底の地盤に埋蔵された鉱物等を採掘して、洋上まで揚泥し、陸上に設けられた貯蔵施設100へ輸送する装置である。特に、水底地盤掘削装置1は、海底または湖底などの大深度の水中からのレアメタルなどの資源の揚泥に有効なエアリフトによる揚泥を行う装置である。
【0015】
エアリフトによる揚泥方法においては、掘削する地盤に対して、揚泥管3の開口した下端部3aを近接して配置する。また、揚泥管3中に、第一水管15から揚泥用の水流を発生させて揚泥管3中の資源を海上へ押し上げる。
【0016】
水底地盤掘削装置1は、水上に各装置を搭載するためのフロート2と、フロート2から下方に延設される揚泥管3と、揚泥管3内部に微細気泡を供給するための第一水管15と、フロート2の着水面に配置され、揚泥されたレアメタル等の砂泥を捕集する捕集装置5と、揚泥管3の先端部に連結し、揚泥管3中に揚泥に用いる水流を送る第一水管15と、地盤掘削に用いる水流を送る第二水管16と、第一水管15および第二水管16に水流を圧送する圧送ポンプ17と、圧送ポンプ17の上流側に設けられ、第一水管15および第二水管16に微細気泡を含んだ水流を供給する微細気泡発生装置6と、を備える。
【0017】
フロート2は、洋上もしくは湖上に浮遊可能な構造物であり、図示せぬ錨等によって、水上の所定位置において浮遊している。フロート2の上面には、微細気泡発生装置6、捕集装置5によって捕集されたレアメタルを一時貯蔵する一時貯蔵タンク8、圧送ポンプ17が搭載される。
【0018】
揚泥管3は、洋上もしくは湖上のフロート2から採掘箇所である水底まで連通する円筒状の管である。揚泥管3は、鋼管などの金属管またはCFRPなどの炭素系樹脂管によって形成されている。揚泥管3は、その下端部3aがレアメタル鉱床の存在する水深約200mよりも深い場所まで届くように延設されている。下端部3aは開口端となっており、湖底もしくは海底付近の水の出入が可能となっている。揚泥管3は200m以上の長さを有することから、質量が重くなる金属製よりも、軽量で耐久性の高い樹脂製や炭素系樹脂製の管で形成されることが望ましい。揚泥管3の内部には、海水や湖水を通すための水流通路3bが設けられている。
【0019】
揚泥管3の下端部3aは、採掘箇所の近傍に設けられている。第二の水管16から放出される多量の微細気泡によって、水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げる。巻き上げられたレアメタルを含む砂泥は、微細気泡の浮力によって揚泥管3を介して水上へ押し上げられる。
【0020】
捕集装置5は、例えば背圧タンクによって形成されており、水面付近で微細気泡が破裂することにより再び水中へ沈下しようとする砂泥を、背圧によって水上のタンク内に取り込む。捕集装置5によって捕集された砂泥は、コンベアなどにより、一時貯蔵タンク8へと搬送されて一時的に貯蔵される。
【0021】
揚泥管3には、揚泥を補助するための水流を送る第一水管15が連結されている。第一水管15は揚泥管3の側面に連結され、揚泥管3の水流通路3b内に水を送る。第一水管15には、エジェクタ15aが設けられている。エジェクタ15aは、内部通路に狭隘な部分を設けることにより、真空引きを行い、水流を作る装置である。また、揚泥管3の水流通路3b内にもアスピレータとなる狭隘通路3dが設けられている。これにより、揚泥管3内部において、減圧状態となる部分を作り出し、上向きの水流を作ることができる。また、エジェクタ15aの部分に小型のポンプを設ける構成としてもよい。
また、水底に向けて、地盤掘削を行うための第二水管16が配置されている。第二水管16は、水流によって地盤を掘削する装置の一例であり、レアメタル等の含有率の高い泥土の層を覆う表土を掘削により除去して、レアメタル等の含有率の高い泥土の層を露出させて、さらに水流によって攪拌する装置である。第二水管16の先端部には、ジェット水流ノズル16aが取り付けられており、口径の狭い噴射孔からジェット水流を発生っさせることにより、表層を掘削することができる。
なお、地盤を掘削する方法としては、例えば、無線操縦できる掘削ショベルを有するロボットであってもよい。
【0022】
第一水管15は、揚泥管3の下端部3a付近に圧縮された空気を微細気泡として送り込む管であり、第一水管15の排出口は、揚泥管3の下端部3aと連結している。第一水管15の水上側端部には、圧送ポンプ17が連結されている。また、圧送ポンプ17は、第二水管16にも連結されている。圧送ポンプの上流側には、微細気泡発生装置6が連結されている。微細気泡発生装置6は、周囲の空気を圧送する圧縮ポンプ6aと、微細気泡を含む水を貯める貯水槽6bと、貯水槽6b内において、圧縮ポンプ6aから送られた空気を水中において微細気泡として発生させる気泡発生媒体11と、を備える。
【0023】
図1および図2に示すように、気泡発生媒体11は、直径数μm~数十μmの細かな孔11bを多数有している。気泡発生媒体11は炭素系の多孔質素材で構成される。炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材である。また、気泡発生媒体11は、固体組織がイオン結合による分子構造である導電体であり、気泡発生媒体11から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体11を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0024】
気泡発生媒体11は、空気を通す気泡発生媒体内通路11aを有する。気泡発生媒体11は円筒形状となるように構成されており、その内部に気泡発生媒体内通路11aが設けられている。また、気泡発生媒体11は、無数の細かい孔11bを有する多孔質の複合体で形成されている。無数の細かい孔11bは、気泡発生媒体11全体に分布しており、その孔径は直径数μm~数十μmである。気泡発生媒体11の気泡発生媒体内通路11aと表面部11cとは、孔11bによって連通している。気泡発生媒体11の側面および底面の表面部11cから、微細気泡が発生する。
【0025】
次に、地盤掘削により掘り起こされたレアメタルを含む砂泥を揚泥する方法について説明する。
【0026】
まず、第一に、第二水管16からの微細気泡を含む水流の放出によって水底のレアメタルが含まれる地盤を掘削する。深度の深い水底には、レアメタルを含む地盤が比較的表面に存在している。そのため、第二水管16からの微細気泡を含む水流の放出によって掘削することにより、容易に水底の表面にレアメタルを含む砂泥の層を露出させることができる。
【0027】
第二に、微細気泡を含む水流を第一水管15に圧送する。第一水管15に送られた微細気泡を含む水流は、第一水管15の排出口から揚泥管3の下端部3aに送り込まれる。送り込まれた微細気泡は、揚泥管3の下端部3a付近の水中に放出されることになる。
【0028】
気泡発生媒体11から吐出される多量の微細気泡は、第一の工程で第二水管16からの水流の放出によって舞い上げられた砂泥周辺の水とともに攪拌される。第二水管16のジェット水流ノズル16aから噴射されたジェット水流は、表層を掘削し、レアメタルの鉱床となる泥層を表出させる。さらにジェット水流を噴出することにより、レアメタルを含む砂泥が水底付近に浮上する。微細気泡には、発生時において自由電子により表面が負の電位を有しており、正の電位を有するレアメタルの特性と対応して互いに引き合う力が働く。また、微細気泡の表面張力による付着力も働き、周囲の砂泥が微細気泡の表面に付着しやすくなる。
【0029】
また、微細気泡を砂泥の周辺の水に噴出することにより、砂泥の中にプラスの電位を有するレアメタルが含まれる場合、微細気泡の表面張力による付着力よりも電気的結合力の方が上回り、優先的にレアメタルと微細気泡が付着し、レアメタルの回収率が向上する。
【0030】
レアメタルを含む砂泥が付着した微細気泡は、浮力によって上方へ浮上する。さらに、第一水管15から送られる水流によって上向きの水流が作られ、揚泥を促進する。第一水管15に設けられたエジェクタ15aにより、ベンチュリ効果が働き減圧された第一水管15内に水が流れ込むことで水流が作られる。また、揚泥管3の水流通路3b内に設けられたアスピレータとしての狭隘通路3dによって、揚泥管3内部において、減圧状態となる部分を作り出し、上向きの水流を作ることができる。この上向きの水流が作られた水流通路3b内に微細気泡を含む泥水が入ると、微細気泡の浮力も併せて働くため、泥水が浮上する。このように構成することにより、揚泥が行われ、レアメタルを含んだ砂泥が捕集装置5へと集められる。
【0031】
微細気泡は、浸透性を有するため、砂泥の中に正の電位を有するレアメタルが含まれる場合、その他の成分とは分離しつつ、レアメタルのみを付着させることができる。この微細気泡の性質を利用して効率的にレアメタルを分離しつつ回収することができる。
【0032】
水深の深い湖底もしくは海底では、水圧によって微細気泡の直径は数百nm~数μmであるが、水上へ浮上するにつれて水圧が下がるため、気泡の直径は大きくなる。浮上する過程で気泡の直径が大きくなり、気泡同士が合体してさらに大きくなると、気体だけが抜けて泥水を浮上させる力を失ってしまう。しかし、気泡発生媒体11から放出される微細気泡の直径が数百nm~数μmであるので、水面付近において気泡の直径が大きくなっても、エアリフト効果が十分に得られる。また微細気泡が帯電しているため、気泡同士の合体により大きくなるのを防止することでも、エアリフト効果が十分に得られるのである。
【0033】
微細気泡の浮上に伴い、揚泥管3の内部の水流通路3bを通って水面に浮上した砂泥は、水面付近に設けられた捕集装置5によってくみ上げられる。捕集装置5によってくみ上げられた砂泥は図示せぬコンベアなどによりフロート2上の一時貯蔵タンク8に貯蔵され、一時貯蔵タンク8に砂泥が所定量貯蔵された場合には、船などによって陸上の貯蔵施設100へ輸送される。
【0034】
以上のように、本発明に係る水底地盤掘削装置1は、水上から採掘箇所まで連通する円筒状の揚泥管3と、揚泥管3の内部に圧縮された空気を微細気泡として水流とともに送り込む第一水管15および第二水管16と、を設け、第一水管15の排出口を揚泥管3の下端部3aに連結し、揚泥管3の下端部3aから噴出する微細気泡によって水底のレアメタルを含む砂泥を巻き上げて、空気を含んだ砂泥を、揚泥管3を介して水上へ押し上げる水底地盤掘削装置1であって、第一水管15および第二水管16の上端には、炭素系の多孔質素材で形成された気泡発生媒体11が設けられた微細気泡発生装置6が連結され、、気泡発生媒体11は、空気を通す気泡発生媒体内通路11aを有し、気泡発生媒体内通路11aの空気を微細気泡として揚泥管3内へ流入する液体へ放出するものである。
【0035】
このように構成することにより、ポンプリフト形式と比較して、大型のポンプを用意する必要がなく揚泥を行うことができ、省コスト化を図ることができる。また、水圧の高い環境化においても、耐腐食性があり耐久性の高い気泡発生媒体11を用いることによりメンテナンスを行う回数が少なくて済む。また、微細気泡を多く含んだ泥水は、粘性が下がり摩擦抵抗が下がるので、揚泥の効率を向上させることができる。また、微細気泡を多く含んだ泥水が水流通路3bを通過することにより、微細気泡が水流通路3b表面の汚れを剥離させやすくなり、パイプの詰まりなども防ぐ。
【0036】
また、微細気泡発生装置6による空気の圧送はポンプリフトによる引き上げと比較して、深度と比例した大きなポンプ圧力を必要としないため、水深の深い採掘箇所でもレアメタルを採掘することができる。
【0037】
また、第一水管15の排出口は、水面からの深さが200m以上となる位置に配置されるものである。
【0038】
このように構成することにより、深度の深い水中において、微細気泡を発生させることができる。このため、レアメタルの鉱床が存在する水深200m以上となる位置においての作業を効率よく行うことができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、揚泥管3内部に圧縮された空気を微細気泡として水流とともに送り込む水管を、一本の第一水管15で構成しているが、これに限定されるわけではない。例えば、大深度での掘削、揚泥工程においては、一つの水管で作る水流では十分な揚泥ができないため、複数の水管を、所定の深度ごとに送り込むために配置してもよい。また、大深度での掘削、揚泥工程において、第一水管15で作られた水流の圧力を高めるために、第一水管15の中途部に加圧ポンプを設ける構成としてもよい。また、大深度での掘削、揚泥工程において、十分な揚水力を得るために、揚水管3の上端に揚水ポンプを補助的に設ける構成としてもよい。
【0040】
[第二の実施形態]
第二の実施形態として、図3に示すように、揚泥管3の下端に掘削装置として超音波破砕装置31を設ける構成としてもよい。
【0041】
超音波破砕装置31は、超音波を発生させて岩盤の内部に振動を与えて破壊する装置である。気泡発生媒体11から吐出される多量の微細気泡は、超音波破砕装置31によって発生する超音波が当たった砂泥周辺の水にも放出される。微細気泡は、気泡サイズが小さいため、超音波を当てる前の岩盤に浸透しやすい。微細気泡が浸透した地盤に超音波を発生させることで、微細気泡が振動し微細気泡の周囲の岩盤がより崩壊しやすくなり、掘削を容易にすることができる。
【0042】
また、微細気泡には、発生時において自由電子により表面が負の電位を有しており、正の電位を有するレアメタルの特性と対応して互いに引き合う力が働く。また、微細気泡の表面張力による付着力も働き、周囲の砂泥が微細気泡の表面に付着しやすくなる。
【0043】
また、微細気泡を砂泥の周辺の水に噴出することにより、砂泥の中に正の電位を有するレアメタルが含まれる場合、微細気泡の表面張力による付着力よりも電気的結合力の方が上回り、優先的にレアメタルと微細気泡が付着し、レアメタルの回収率が向上する。
【0044】
周囲の砂泥が付着した微細気泡は、浮力によって上方へ浮上する。揚泥管3の水流通路3b内の水中に微細気泡を含む泥水が入ると、微細気泡の浮力によって泥水が浮上する。これにより、揚泥が行われる。
【0045】
このように構成することにより、ポンプリフト形式と比較して、大型のポンプを用意する必要がなく揚泥を行うことができ、省コスト化を図ることができる。また、水圧の高い環境化においても、耐腐食性があり耐久性の高い気泡発生媒体11を用いることによりメンテナンスを行う回数が少なくて済む。また、微細気泡を多く含んだ泥水は、粘性が下がり摩擦抵抗が下がるので、揚泥の効率を向上させることができる。また、微細気泡を多く含んだ泥水が水流通路3bを通過することにより、微細気泡が水流通路3b表面の汚れを剥離させやすくなり、パイプの詰まりなども防ぐ。
【0046】
また、微細気泡発生装置6による空気の圧送はポンプリフトによる引き上げと比較して、深度と比例した大きなポンプ圧力を必要としないため、水深の深い採掘箇所でもレアメタルを採掘することができる。
【0047】
[第三の実施形態]
第三の実施形態として、図4に示すように、揚泥管3の下端に掘削装置としてドリル41を設ける構成としてもよい。なお、ドリル41は、掘削装置の一例であって、ブレードや羽根であってもよい。
【0048】
気泡発生媒体11は、揚泥管3の下端部3aであって、ドリル41の刃に微細気泡を噴出するように配置されている。
【0049】
ドリル41の周囲には、潤滑液噴出装置42が設けられている。潤滑液噴出装置42は、ドリル41の切削時に切削土との潤滑性を高めることのできる潤滑剤を噴出する装置である。潤滑液噴出装置42は、噴射ノズル43を備えドリル41の近傍に備えられている。潤滑液噴出装置42に潤滑液を供給する潤滑液タンク44は水上のフロート2に配置されている。
【0050】
また、潤滑液用気泡発生媒体45は、潤滑液タンク44において、高圧状態の酸素を微細気泡として潤滑液中へ放出するものである。潤滑液用気泡発生媒体45は、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。潤滑液用気泡発生媒体45は炭素系の多孔質素材で構成される。炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材である。また、潤滑液用気泡発生媒体45は、固体組織がイオン結合による分子構造である導電体であり、潤滑液用気泡発生媒体45から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である潤滑液用気泡発生媒体45を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0051】
ドリル41を回転駆動させるとき、潤滑液噴出装置42から潤滑液を噴出させる。潤滑液噴出装置から噴出する潤滑液内には微細気泡が含まれる。この際、微細気泡がドリル41と掘削する地盤との間に存在することで、掘削する地盤とドリル41との接触機会が低減し、潤滑性を高めるものである。
【0052】
また、地盤によっては、掘進することで地盤内に腐食性の高い物質、例えば、硫化水素が噴出することがある。硫化水素は、ドリル41の刃を硫化させて劣化させる。しかし、潤滑液に酸素が微細気泡として含まれることにより、硫化水素を硫黄と水に分解することができるので、ドリル41の硫化を抑止することができる。これにより、ドリル41の寿命が延び、メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0053】
噴出する潤滑液内の微細気泡は、揚泥の際に用いられる第一水管15および第二水管16から供給される微細気泡とともに、舞い上がった砂泥を揚泥管3中に流し込み、水上へ浮上する。
気泡の浮上に伴い、揚泥管3の内部の水流通路3bを通って水面に浮上した砂泥は、水面付近に設けられた捕集装置5によってくみ上げられる。捕集装置5によってくみ上げられた砂泥は図示せぬコンベアなどによりフロート2上の一時貯蔵タンク8に貯蔵され、一時貯蔵タンク8に砂泥が所定量貯蔵された場合には、船などによって陸上の貯蔵施設100へ輸送される。
【0054】
このように構成することにより、ポンプリフト形式と比較して、大型のポンプを用意する必要がなく省コスト化を図ることができる。また、水圧の高い環境化においても、耐腐食性があり耐久性の高い気泡発生媒体を用いることによりメンテナンスを行う回数が少なくて済む。また、掘削装置であるドリル41等の部品の寿命が延び、メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0055】
[第四の実施形態]
第四の実施形態として、図5に示すように、揚泥管3の下端に掘削装置として微細気泡を含む水流をジェット水流として噴出するジェット水流噴出装置51を設ける構成としてもよい。
【0056】
ジェット水流噴出装置51は、噴出ノズル52を備える。噴出ノズル52は、地盤へジェット水流を噴出するノズルであり、噴出ノズル52の内部にジェット水流用気泡発生媒体53を備える。ジェット水流用気泡発生媒体53は、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。ジェット水流用気泡発生媒体53は炭素系の多孔質素材で構成される。炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材である。また、ジェット水流用気泡発生媒体53は、固体組織がイオン結合による分子構造である導電体であり、ジェット水流用気泡発生媒体53から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体であるジェット水流用気泡発生媒体53を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0057】
ジェット水流噴出装置51は、噴出ノズル52からジェット水流を噴出させる。噴出ノズル52からジェット水流を噴出するとき、ジェット水流用気泡発生媒体53から水流内に微細気泡を発生させて、ジェット水流内に微細気泡を含ませるものである。この際、微細気泡は、揚泥の際に用いられる空気管から供給される微細気泡とともに、舞い上がった砂泥を揚泥管3中に流し込み、水上へ浮上する。
微細気泡の浮上に伴い、揚泥管3の内部の水流通路3bを通って水面に浮上した砂泥は、水面付近に設けられた捕集装置5によってくみ上げられる。捕集装置5によってくみ上げられた砂泥は図示せぬコンベアなどによりフロート2上の一時貯蔵タンク8に貯蔵され、一時貯蔵タンク8に砂泥が所定量貯蔵された場合には、船などによって陸上の貯蔵施設100へ輸送される。
【0058】
このように構成することにより、ポンプリフト形式と比較して、大型のポンプを用意する必要がなく省コスト化を図ることができる。また、水圧の高い環境化においても、耐腐食性があり耐久性の高い気泡発生媒体を用いることによりメンテナンスを行う回数が少なくて済む。
【符号の説明】
【0059】
1 水底地盤掘削装置
2 フロート
3 揚泥管
3a 下端部
3b 水流通路
3d 狭隘通路
5 捕集装置
6 微細気泡発生装置
8 一時貯蔵タンク
11 気泡発生媒体
11a 気泡発生媒体内通路
11b 孔
11c 表面部
15 第一水管
15a エジェクタ
16 第二水管
16a ジェット水流ノズル
31 超音波破砕装置
41 ドリル
42 潤滑液噴出装置
43 噴射ノズル
44 潤滑液タンク
45 潤滑液用気泡発生媒体
51 ジェット水流噴出装置
52 噴射ノズル
53 ジェット水流用気泡発生媒体
図1
図2
図3
図4
図5