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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110070
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ヘッドランプ
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/663 20180101AFI20240807BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20240807BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240807BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240807BHJP
【FI】
F21S41/663
F21S41/143
F21W102:155
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014418
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香ノ木 良二
(57)【要約】
【課題】走行ビーム用ランプ光学系およびすれ違いビーム用ランプ光学系を備えた車両用灯具において、車両前方からの視認性を向上した車両用灯具を提供する。
【解決手段】
車体の左右方向の両側に対をなすように左右方向のそれぞれに走行ビーム用ランプ光学系とすれ違いビーム用ランプ光学系の両方を備えた第1ランプユニット41および第2ランプユニット42を備える。第1ランプユニット41および第2ランプユニット42において、投影レンズは光源側の後側投影レンズと前方側の投影レンズとを備える光学系であり、前方側の投影レンズは一体化されている。これによって、走行ビーム用ランプ光学系またはすれ違いビーム用ランプ光学系の一方の光学系の光が他方の光学系の前方側の投影レンズ内にも光が漏れることになり両方の光学系が同じランプユニットから照射される視認性を向上した小型のヘッドランプユニットとすることができる。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に配置され、車体の左右方向の中心線を基準として左側に位置する左側ランプユニットと、右側に位置する右側ランプユニットを備えたヘッドランプであって、
前記左側ランプユニットおよび前記右側ランプユニットは、前記中心線側に位置する第1ランプユニットと、前記第1ランプユニットよりも前記中心線から離れている第2ランプユニットを備え、
前記第1ランプユニットには、走行ビーム用の配光パターンの一部を構成する走行ビーム用の第1走行ビーム光学系と、すれ違いビーム用の配光パターンの一部を構成するすれ違いビーム用の第1すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されており、
前記第1走行ビーム光学系および前記第1すれ違いビーム光学系のそれぞれには、光源と、当該光源の前方に配置され当該光源から出射した光を車両前方に向かって照射する投影レンズとを備えており、
前記第1走行ビーム光学系の光源および前記第1すれ違いビーム光学系の光源は、第1の基板の同一表面上に並んで実装され、
前記第1走行ビーム光学系の投影レンズと前記第1すれ違いビーム光学系の投影レンズは、連なったレンズ体を備えており、
前記第2ランプユニットには、走行ビーム用の配光パターンの一部を構成する走行ビーム用の第2走行ビーム光学系と、すれ違いビーム用の配光パターンの一部を構成するすれ違いビーム用の第2すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されており、
前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系のそれぞれには、光源と、当該光源の前方に配置され当該光源から出射した光を車両前方に向かって照射する投影レンズとを備えており、
前記第2走行ビーム光学系の光源および前記第2すれ違いビーム光学系の光源は、第2の基板の同一表面上に並んで実装され、
前記第2走行ビーム光学系の投影レンズと前記第2すれ違いビーム光学系の投影レンズは、連なったレンズ体を備えており、
前記第1ランプユニットおよび前記第2ランプユニットは、走行ビーム配光を照射する場合およびすれ違いビーム配光を照射する場合には、次の(A)または(B)のいずれかのように点灯して照射することを特徴とするヘッドランプ。
(A)走行ビーム配光を照射する場合には、
前記第2走行ビーム光学系が、走行ビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第1走行ビーム光学系が、前記第2走行ビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1走行ビーム光学系と前記第2走行ビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成し、
すれ違いビーム配光を照射する場合には、
前記第1すれ違いビーム光学系が、すれ違いビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第2すれ違いビーム光学系が、前記第1すれ違いビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1すれ違いビーム光学系と前記第2すれ違いビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成する、
(B)走行ビーム配光を照射する場合には、
前記第1走行ビーム光学系が、走行ビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第2走行ビーム光学系が、前記第1走行ビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1走行ビーム光学系と前記第2走行ビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成し、
すれ違いビーム配光を照射する場合には、
前記第2すれ違いビーム光学系が、すれ違いビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第1すれ違いビーム光学系が、前記第2すれ違いビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1すれ違いビーム光学系と前記第2すれ違いビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成する。
【請求項2】
前記左側ランプユニットにおける、前記第1ランプユニットの前記第1走行ビーム光学系および前記第1すれ違いビーム光学系の配置と、前記第2ランプユニットの前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系の配置と、
前記右側ランプユニットにおける、前記第1ランプユニットの前記第1走行ビーム光学系および前記第1すれ違いビーム光学系の配置と、前記第2ランプユニットの前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系の配置とは、
前記中心線を基準として、左右対称とされている請求項1に記載のヘッドランプ。
【請求項3】
前記第1ランプユニットの前記第1走行ビーム光学系の投影レンズには、前記第1すれ違いビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射し、且つ、前記第1すれ違いビーム光学系の投影レンズには、前記第1走行ビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射するように、前記第1走行ビーム光学系と前記第1すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されており、
前記第2ランプユニットの前記第2走行ビーム光学系の投影レンズには、前記第2すれ違いビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射し、且つ、前記第2すれ違いビーム光学系の投影レンズには、前記第2走行ビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射するように、前記第2走行ビーム光学系と前記第2すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されている請求項2に記載のヘッドランプ。
【請求項4】
前記第1走行ビーム光学系、前記第1すれ違いビーム光学系、前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系は、それぞれの光学系の光源としてLEDを用いた直射型の光学系であり、
前記第1走行ビーム光学系の光源の水平方向の幅が、前記第1すれ違いビーム光学系の光源の水平方向の幅よりも狭い光源とされ、第1の基板の同一面側に搭載されており、
前記第2走行ビーム光学系の光源の水平方向の幅が、前記第2すれ違いビーム光学系の光源の水平方向の幅よりも広い光源とされ、第2の基板の同一面側に搭載されている請求項2または請求項3に記載のヘッドランプ。
【請求項5】
前記左側ランプユニットの前記第1の基板と前記右側ランプユニットの前記第2の基板が、同一の基板であり、
前記左側ランプユニットの前記第2の基板と前記右側ランプユニットの前記第1の基板が、同一の基板である請求項4に記載のヘッドランプ。
【請求項6】
前記第1の基板および前記第2の基板には、誤組防止構造が形成されている請求項5に記載のヘッドランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具、特に走行ビームを照射する光学系と、すれ違いビームを照射する光学系のそれぞれを備えたヘッドランプアッセンブリを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯(ヘッドランプ)には、車両の前方を相当程度にわたって照射する走行用前照灯と、他の交通を妨げないように車両の前方を照射するすれ違い用前照灯がある。走行用前照灯は走行ビームを照射し、すれ違い用前照灯はすれ違いビームを照射する。走行ビームとすれ違いビームを交互に出すように設計されており、1個のランプユニットから走行ビームおよびすれ違いビームを照射できる車両用灯具が実用化されている。また、走行ビームとすれ違いビームを同一のランプユニットから照射するのではなく、複数のランプユニットからの照射光を合成することで、走行ビームおよびすれ違いビームのそれぞれを照射する車両用前照灯も実用化されており、光源としてLED(発光ダイオード)を用いた車両用前照灯も提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用前照灯は、LED等の半導体発光素子を用いた光源と光源の前方に配置された投影レンズを備え、光源からの直射光を投影レンズにより投影する直射型の自動二輪車用の前照灯を開示する。特許文献1の図6では、前照灯の灯室内にロービーム用光学系(同図の符号18A)及びハイビーム用光学系(同図の符号18B)をそれぞれ配置した2灯式とし、アウターレンズを通して車両前方を照射している。
【0004】
上記の2つのランプユニットを設けた前照灯は、ロービーム(すれ違いビーム)用光学系を車両中央側に配置し、外側寄りにハイビーム(走行ビーム)を用光学系配置している。それぞれの光学系は、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の光学系で、投影レンズと、投影レンズの後方に配置されるLED光源を備え、ヒートシンクに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6142463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1の車両用前照灯では、車両中央側に配置したロービーム用光学系の光源を点灯したときにロービーム用の配光パターンを形成する。外側寄りに配置したハイビーム用光学系の光源を点灯したときにハイビーム用の配光パターンを形成するものとされている。何れか一方が選択的に点灯するように専用に設計されており、両方の光学系が同時に照明することはない。すなわち、いずれか一方の光学系が照射しているときに他方の光学系が同時に照明することはない。
【0007】
また、それぞれの光学系の投影レンズは、1個の非球面レンズを用いて所定の配光を形成している。LED光源から上下方向および左右方向に放射状に出射した光を集光して所定の配光を形成するために投影レンズは上下方向および左右方向の両方に延びる入射面を設けており、投影レンズの外観寸法が大きく、特に天地方向(上下方向)を小さくした薄型の前照灯とすることが難しかった。また、天地を薄くして照明光の光度を高くした所定の配光を得るために複数のランプユニットによる合成配光にて形成しようとすると、ランプユニットを構成する部品の種類が増加する。
【0008】
こうした背景から、交通の安全に寄与するために車両用前照灯の点灯時の視認性を高め、モーターサイクルの被視認性を高めることが望まれている。また、多灯式の前照灯を構成するためランプユニットを構成する部品の種類を減じてコスト上昇を抑制した車両用前照灯が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様は、以下の特徴を備えた車両用灯具(ヘッドランプ)である。
[1] 車両前方に配置され、車体の左右方向の中心線を基準として左側に位置する左側ランプユニットと、右側に位置する右側ランプユニットを備えたヘッドランプであって、
前記左側ランプユニットおよび前記右側ランプユニットは、前記中心線側に位置する第1ランプユニットと、前記第1ランプユニットよりも前記中心線から離れている第2ランプユニットを備え、
前記第1ランプユニットには、走行ビーム用の配光パターンの一部を構成する走行ビーム用の第1走行ビーム光学系と、すれ違いビーム用の配光パターンの一部を構成するすれ違いビーム用の第1すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されており、
前記第1走行ビーム光学系および前記第1すれ違いビーム光学系のそれぞれには、光源と、当該光源の前方に配置され当該光源から出射した光を車両前方に向かって照射する投影レンズとを備えており、
前記第1走行ビーム光学系の光源および前記第1すれ違いビーム光学系の光源は、第1の基板の同一表面上に並んで実装され、
前記第1走行ビーム光学系の投影レンズと前記第1すれ違いビーム光学系の投影レンズは、連なったレンズ体を備えており、
前記第2ランプユニットには、走行ビーム用の配光パターンの一部を構成する走行ビーム用の第2走行ビーム光学系と、すれ違いビーム用の配光パターンの一部を構成するすれ違いビーム用の第2すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されており、
前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系のそれぞれには、光源と、当該光源の前方に配置され当該光源から出射した光を車両前方に向かって照射する投影レンズとを備えており、
前記第2走行ビーム光学系の光源および前記第2すれ違いビーム光学系の光源は、第2の基板の同一表面上に並んで実装され、
前記第2走行ビーム光学系の投影レンズと前記第2すれ違いビーム光学系の投影レンズは、連なったレンズ体を備えており、
前記第1ランプユニットおよび前記第2ランプユニットは、走行ビーム配光を照射する場合およびすれ違いビーム配光を照射する場合には、次の(A)または(B)のいずれかのように点灯して照射することを特徴とするヘッドランプ。
(A)走行ビーム配光を照射する場合には、
前記第2走行ビーム光学系が、走行ビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第1走行ビーム光学系が、前記第2走行ビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1走行ビーム光学系と前記第2走行ビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成し、
すれ違いビーム配光を照射する場合には、
前記第1すれ違いビーム光学系が、すれ違いビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第2すれ違いビーム光学系が、前記第1すれ違いビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1すれ違いビーム光学系と前記第2すれ違いビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成する、
(B)走行ビーム配光を照射する場合には、
前記第1走行ビーム光学系が、走行ビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第2走行ビーム光学系が、前記第1走行ビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1走行ビーム光学系と前記第2走行ビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成し、
すれ違いビーム配光を照射する場合には、
前記第2すれ違いビーム光学系が、すれ違いビーム配光パターンの中心領域を照射するスポット配光を照射し、
前記第1すれ違いビーム光学系が、前記第2すれ違いビーム光学系が形成する配光パターンに比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射し、
前記第1すれ違いビーム光学系と前記第2すれ違いビーム光学系が同時に照射して合成配光パターンを形成する。
【0010】
上記発明によれば、走行ビーム用光学系とすれ違いビーム用光学系とを隣接して配置し、両者の投影レンズの一部が連なったものとしている。それゆえ、走行ビーム用ランプ光学系が点灯したときおよびすれ違いビーム用ランプ光学系が点灯したときの何れの場合であっても、連なった投影レンズにより他方の光学系の投影レンズの照射発光面として外部から視認することができる。これによってモーターサイクルの被視認性をより一層高めることができる。
【0011】
また、車両の左側のランプユニットと右側のランプユニットにおいて、走行ビーム用光学系とすれ違いビーム用光学系のそれぞれを、少なくともワイド配向を行うものとスポット配光を行うものの合成配光で所定の配光パターンを行うように複数の光学系とし、それらを所定の配置としている。これにより、構成部品の共通化をはかり構成部品の種類の抑制を図ることができる。
【0012】
本発明に係る他の態様は、例えば[2]前記左側ランプユニットにおける、前記第1ランプユニットの前記第1走行ビーム光学系および前記第1すれ違いビーム光学系の配置と、前記第2ランプユニットの前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系の配置と、
前記右側ランプユニットにおける、前記第1ランプユニットの前記第1走行ビーム光学系および前記第1すれ違いビーム光学系の配置と、前記第2ランプユニットの前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系の配置とは、
前記中心線を基準として、左右対称とされている[1]に記載のヘッドランプである。
また、[3]前記第1ランプユニットの前記第1走行ビーム光学系の投影レンズには、前記第1すれ違いビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射し、且つ、前記第1すれ違いビーム光学系の投影レンズには、前記第1走行ビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射するように、前記第1走行ビーム光学系と前記第1すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されており、
前記第2ランプユニットの前記第2走行ビーム光学系の投影レンズには、前記第2すれ違いビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射し、且つ、前記第2すれ違いビーム光学系の投影レンズには、前記第2走行ビーム光学系の光源が点灯したときの漏れ光が入射するように、前記第2走行ビーム光学系と前記第2すれ違いビーム光学系とが隣接して配置されている[2]に記載のヘッドランプである。
また、[4]前記第1走行ビーム光学系、前記第1すれ違いビーム光学系、前記第2走行ビーム光学系および前記第2すれ違いビーム光学系は、それぞれの光学系の光源としてLEDを用いた直射型の光学系であり、
前記第1走行ビーム光学系の光源の水平方向の幅が、前記第1すれ違いビーム光学系の光源の水平方向の幅よりも狭い光源とされ、第1の基板の同一面側に搭載されており、
前記第2走行ビーム光学系の光源の水平方向の幅が、前記第2すれ違いビーム光学系の光源の水平方向の幅よりも広い光源とされ、第2の基板の同一面側に搭載されている[2]または[3]に記載のヘッドランプなどである。
【0013】
上記発明の他の態様によれば、[2]および[3]に記載の発明によって、モーターサイクルの被視認性の質感を高めることができる。また、[4]に記載の発明とすることでヘッドランプの天地方向の寸法を薄型とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、コスト上昇を抑制しつつ、交通の安全に寄与するためにヘッドランプ点灯時の視認性を高める。光源からの出射される光を有効に利用して一方の光学系からの出射光を用いて他方の光学系を照明して視認性を高めることができる。したがって、モーターサイクルの被視認性を高めることができる、という利点がある。また、ヘッドランプを構成する部品の共通化を図り、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態の車両用灯具を搭載した四輪自動車を模式的に示す正面図である。
図2図2は、一実施形態の車両用灯具が照射する照射エリアを説明する概略図である。
図3図3は、一実施形態の車両用灯具を示す正面図である。
図4図4は、ヘッドランプユニットを説明する斜視図である。
図5図5は、第1ヘッドランプユニットおよび第2ヘッドランプユニットを分解して示す概略斜視図である。
図6図6は、第1ヘッドランプユニットのブラケットへの固定構造を示す斜視図である。
図7図7は、ヘッドランプ(第1ヘッドランプユニットおよび第2ヘッドランプユニット)を車両前方から観察したときにおけるそれぞれのランプユニットに含む光学系の配置を模式的に示す説明図である。図7(A)が走行ビーム用ランプ光学系を非点灯、すれ違いビーム用ランプ光学系を点灯としてすれ違いビーム用配光パターンPLを形成している状態を示し、図7(B)が走行ビーム用ランプ光学系を点灯、すれ違いビーム用ランプ光学系を非点灯として走行ビーム用配光パターンPHを形成している状態を示す。
図8図8は、本実施形態における路面照射パターンをシュミレーションした路面配光パターンを等照度曲線で示す概略図である。図8(A)がすれ違いビーム用の配光パターンを照射したときの状態、図8(B)が走行ビーム用の配光パターンを照射したときの状態である。
図9図9は、図8で示した路面照射パターンと同一条件でシュミレーションした仮想スクリーン上の配光パターンを等照度曲線で示す概略図である。図9(A)がすれ違いビーム用の配光パターンを照射したときの状態、図9(B)が走行ビーム用の配光パターンを照射したときの状態である。
図10図10は、第1ヘッドランプユニットの第1投影レンズと基板を分解して示す斜視図である。
図11図11は、第1すれ違いビーム用ランプ光学系について、前後方向に延びる鉛直面にて切断した切断面を模式的に示すものである。
図12図12は、第2ヘッドランプユニットの第2基板と第2投影レンズを分解して示す後側の斜視図である.
図13図13は、他の実施形態におけるすれ違いビーム用ランプ光学系の光源から出射した光の一部について説明するランプ本体の概略断面図である。
図14図14は、第2の実施形態におけるヘッドランプを車両前方から観察したときにおけるそれぞれのランプユニットに含む光学系の配置を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用灯具について好適な実施の形態を挙げて、図面を参照して説明する。
【0017】
〔第1の実施の形態〕
最初に車両用灯具の全体構成を図1から図4を用いて説明する。図1は、一実施形態の車両用灯具2を搭載した四輪自動車を模式的に示す正面図である。自動車の進行方向である前方側から観視した状態である。なお、自動車は特定の種類に限定するものではなくスポーツタイプ、オフロードタイプ、トラックタイプ、バスなど種々の種類の車両に適用する。また、自動車に限らず自動二輪車(オートバイ)にも適用可能である。以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、自動車前方にヘッドランプを設置した状態において運転者から見た方向を指すものとする。従って「前」はヘッドライトからの光の照射方向である車両の前方(自動車の進行方向)に相当し、「後」は車両の後方側(運転者の背面方向)に相当し、「左」は車両の走行方向を基準としたときの左側に相当する。「下」は路面側(運転者の足元側)に相当する。
【0018】
自動車1は、運転手が座るシートなどを設けた車室部と、車輪を駆動する推進力を発生するエンジンやモーターなどの駆動源などを収容する動力部とを設けた車体3と、車体3に取り付けられた車輪とを備え、車体3の前方側には車両用灯具2が固定されている。車両用灯具2は車体3の前方左隅領域および前方右隅領域にそれぞれ配置され、車体3の左右方向の中心を通る法線CLを中心として左側の車両用灯具2Lと右側の車両用灯具2Rが左右対称の外観形状をなしている。車両用灯具2(2L,2R)には、前照灯(ヘッドランプ)の機能を発揮するヘッドランプアッセンブリと、前照灯以外の機能、例えば方向指示灯(ターンランプ)などのランプアッセンブリを収納している。前照灯(ヘッドランプ)の機能を発揮するヘッドランプアッセンブリのみを収納しても良く、その場合には車両用灯具が車両用前照灯を意味することになる。
【0019】
図2は、一実施形態の車両用灯具が照射する照射エリアを説明する概略図である。図2において車両1の前方に示すものが仮想スクリーン4であり、車両用灯具2の前方25mの位置において車両用灯具の基準軸と直交する配光特性を測定するスクリーンである。仮想スクリーン4上におけるHV点が基準軸とスクリーンの交点、直線hがHV点を通る水平線、直線vがHV点を通る鉛直線を示す。仮想スクリーン4上において点線で示した範囲が走行ビーム用配光パターンPHの概略形状を示し、実線で示した範囲がすれ違いビーム用配光パターンPLの概略形状を示す。すれ違いビーム用配光パターンには上半分と下半分との明暗境界を示すカットオフを有する。なお、走行ビーム用配光パターンPHを形成する走行ビームをハイビーム、すれ違いビーム用配光パターンPLを形成するすれ違いビームをロービームとも呼ぶ。
【0020】
図3は、一実施形態の車両用灯具2を示す正面図である。具体的には、車体の前方左隅領域に設ける左側の車両用灯具2Lを示している。車体の前方右隅領域に設ける右側の車両用灯具2Rは、左側の車両用灯具と対象形状をなす点を除いて同様であるので、ここでの説明は左側の車両用灯具2Lを例に説明する。車両用灯具2は、前方に向かって開口し後方側などに車体に固定するための固定部10aを有するハウジング10と、ハウジング10の開口を覆い、ハウジング10との間に光源を含む光学系を収容可能な空間を形成するアウターレンズ11とを備える。アウターレンズ11は、ハウジングの周囲縁部に設けたシール部において図示しないシール部材を用いて水密に固定されている。アウターレンズ11は、素通し状の透光カバーで、図3では正面視においてハウジング10の全面を覆っている。アウターレンズ11に照射光を屈折させる屈折素子を部分的に設けても良い。
【0021】
アウターレンズ11で覆われたハウジング10の開口内には、ランプ収容部12が形成されている。ランプ収容部12には、前照灯(ヘッドランプ)の機能を発揮するヘッドランプアッセンブリ13と、前照灯以外の機能、例えば方向指示灯(ターンランプ)などの他の機能を発揮するランプアッセンブリ14を収納している。
【0022】
ヘッドランプアッセンブリ13には、図2に概略形状を示した走行ビーム用配光パターンPHを照射する走行ビーム用ランプ光学系と、すれ違いビーム用配光パターンPLを照射するすれ違いビーム用ランプ光学系とを備えている。ランプアッセンブリとは、前照灯の機能を発揮するために必要な構成の全ての部品が組み立てられた製品をいう。
【0023】
他のランプアッセンブリ14として方向指示灯の機能を有するターンランプユニット15と、ポジションランプおよびDRL(デイタイムランニングランプ)の機能を有するDRLユニット16とを備える。他のランプアッセンブリ14は、更に他の機能を発揮するランプユニットを備えていても良い。図3に示した実施形態の車両用灯具2においては、ターンランプユニット15がヘッドランプアッセンブリ13の上側に位置し、DRLユニット16がターンランプユニット15およびヘッドランプアッセンブリ14の側方に沿って上下方向に延びるとともにヘッドランプアッセンブリ14の下側縁に沿って水平方に延びてライン状に発光するように配置されている。
【0024】
ヘッドランプアッセンブリ13は、図3に示したように車両用灯具2の中心領域において、複数のランプユニットからなるヘッドランプユニット40を有する。本実施形態では、上下方向の寸法に比べて左右方向の寸法を長くした矩形の2個のヘッドランプユニット、すなわち第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42からなる。ヘッドランプユニット40は、さらに他のランプユニットを含んでいても良い。第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42は、水平方向(左右方向)において隣り合うように並んで配置されている。図3は、左側の車両用灯具2Lを示しているから、図3中に示す座標系で右側が車両の中心方向、図3に示す座標系で左側が車両の左側面方向を示す。図3に示す座標系において右側に位置するランプユニットが、図1に示した中心線CL、すなわち車体の左右方向の中心線CLに近い側に位置する第1ランプユニット41であり、本願発明における第1ランプユニットに相当する。第1ヘッドランプユニット41よりも中心線CLから離れている側、すなわち図3に示す座標系において左側に位置するランプユニットが第2ヘッドランプユニットであり、本願発明における第2ランプユニットに相当する。
【0025】
図4は、ヘッドランプユニット40を説明する斜視図である。第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42は、それぞれのランプユニット41,42を取り付けるための2箇所の図示しない矩形形状の開口部を設けた枠状のブラケット43に固定されている。ブラケット43は、ヘッドランプユニット40の光軸を上下方向に調整をするためのレベリング装置を介してハウジング10に固定される。レベリング装置は周知のレベリング構造を用いることができ、ここでの説明は省略する。なお、符号43aが上下方向の光軸調整を行う際の支点となるレベリング軸であり、ブラケット43の左下および右下のそれぞれの側面から左右の水平方向に延びている。また、ブラケット43の前面、即ちブラケット43とアウターレンズ11との間には、第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42のそれぞれの投影レンズの大きさに対応した開口44a、44bを設けたエクステンション44が設けられる。エクステンション44は、着色樹脂又は表面に金属層を設けた樹脂材料からなり、ブラケット43などがアウターレンズ11を通して外部から見えにくくする意匠部品である。
【0026】
図5は、第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42を分解して示す概略斜視図である。第1ヘッドランプユニット41は、前方側から順に第1投影レンズ50、LED光源を前面側に搭載した第1基板51、第1ヒートシンク52が所定位置に位置決めした状態でネジ45などの固定出段で固定されている。第1ヒートシンク52には、第1基板51のLED光源を実装した表面と反対側となる後面に密着するように熱伝導性シート53が設けてある。第2ヘッドランプユニット42は、前方側から順に第2投影レンズ60、LED光源を搭載した第2基板61、第2ヒートシンク62が所定位置に位置決めした状態でネジ45などの固定出段で固定されている。第2ヒートシンク62には、第2基板61のLED光源を実装した表面と反対側となる後面に密着するように熱伝導性シート63が設けてある。
【0027】
図6は、第1ヘッドランプユニット41のブラケット43への固定構造を示す斜視図である。第1投影レンズ50、第1基板51および第1ヒートシンク52を相互に位置決め固定した第1ヘッドランプユニット41は、ブラケット43取り付ける際に補助ブラケット46を中間に設けて取付けが行われる。補助ブラケット46は、図6に示したように第1ヒートシンク52の放熱フィンが通過可能な大きさの補助ブラケット開口46aを設けた枠状体である。
【0028】
第1ヒートシンク52には、後面側の第1基板51上に設けたLED光源の位置およびその周囲領域に対応する位置に設けた上下方向に延びる板状の複数の放熱フィン52aと、左右方向の側方端に設けた第1基板51を固定するためのフランジ部52bが設けてある。第1ヒートシンク52は軽量化と放熱性に優れた材質を用いて形成することが好ましく、本実施形態ではアルミニウム合金を用いて形成している。LED光源の発熱が小さい場合、例えば通電する電流の最大値が小さい場合には放熱フィン52aを設けなくても良い。第1ヒートシンクのフランジ部52bおよび第1基板51の側方端部が、補助ブラケット46の左右方向に位置する枠にネジ45を用いて固定される。補助ブラケット46は、第1ヘッドランプユニット41の光軸調整を行うために2個のエーミングナット47を介してブラケット43に位置調整可能に取付けられる。これにより、第1ヘッドランプユニット41はブラケット43を基準にして上下方向および左右方向の光軸調整が実施できるようになる。特に第1ヘッドランプユニット41には、詳細は後述するが、すれ違いビーム用配光パターンPLの中のHV点付近を照射するスポット光を照射するすれ違い配光光学系を備えているので、エーミング装置を設けることでカットオフの位置を調整する光軸調整構造とすることが好ましい。
【0029】
第2ヘッドランプユニット42は、第2投影レンズ60、第2基板61および第2ヒートシンク62を相互に位置決めして固定されている。第2ヘッドランプユニット42はブラケット43に直接固定する。第1ヘッドランプユニット41は、補助ブラケット46を介してブラケット43取り付けが行われるが、第2ヘッドランプユニット42は補助ブラケット46を介さずにブラケット43に取付けが行われる。第2ヘッドランプユニット42には、すれ違いビーム用配光パターンPLの中のHV点付近を照射するスポット光を照射するすれ違い配光光学系を備えていないので、光軸調整を実施してカットオフの位置を調整する必要性に乏しい。それ故、ブラケット43を基準とした光軸調整を実施するための補助ブラケットなどを含むエーミング装置を省略している。
【0030】
また、本実施形態において第1ヒートシンク52と第2ヒートシンク62は同一のものを用いている。同一構造のヒートシンクとすることで、準備する部品の種類を減らすことができる。これにより取付ミスを減じるとともに、コスト低減に寄与することができる。
【0031】
次に図2および図7を参照しながら、第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42からなるヘッドランプユニット40が形成する配光パターンについて説明する。図2に示したように右側の車両用灯具2Rと左側の車両用灯具2Lのそれぞれに備えたヘッドランプユニット40により配光パターンを形成する。配光パターンとして、走行ビーム用配光パターンPHとすれ違いビーム用配光パターンPLの少なくとも2種類を形成することができる。この2種類の配光パターンは、右側の車両用灯具2Rに備えたヘッドランプユニットと、左側の車両用灯具2Lに備えたヘッドランプユニットとの合成光である。本実施形態では、右側の車両用灯具2Rのヘッドランプユニット40が形成する配光パターンと左側の車両用灯具2Lのヘッドランプユニット40が形成する配光パターンが仮想スクリーン4上において同一となるように照射するものとしている。
【0032】
図7は、ヘッドランプ40(第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42)を車両前方から観察したときにおけるそれぞれのランプユニットに含む光学系の配置を模式的に示す説明図であり、右側の車両用灯具2Rと左側の車両用灯具2Lとを並べて示している。図面においてLoと示した範囲がすれ違いビーム用ランプ光学系20であり、Hiと示した範囲が走行ビーム用ランプ光学系である。また、斜線で塗りつぶした状態がそれぞれの光学系の点灯状態を示し、網点で塗りつぶした状態がそれぞれの光学系が非点灯状態であることを示す。よって、上段の図7(A)が走行ビーム用ランプ光学系を非点灯、すれ違いビーム用ランプ光学系を点灯としてすれ違いビーム用配光パターンPLを形成している状態を示し、下段の図7(B)が走行ビーム用ランプ光学系30を点灯、すれ違いビーム用ランプ光学系を非点灯として走行ビーム用配光パターンPHを形成している状態を示す。なお、wideおよびspotの表記については後述する。
【0033】
左側の車両用灯具2Lには、前述したように第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42が左右方向に並んで設けられている。第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42は、それぞれ正面視で横長の矩形形状の第1投影レンズ50、第2投影レンズ60を有している。第1ヘッドランプユニット41の第1投影レンズ50には、図7に示したようにLoで示した範囲とHiで示した範囲が設けられている。同様に第2ヘッドランプユニット42の第2投影レンズ60にもLoで示した範囲とHiで示した範囲が設けられている。
【0034】
具体的には、図7において符号CLが車体の左右方向中心線であるから、正面視で右側に位置する2つのランプユニットを囲った角丸四角形の破線で示した領域が左側の車両用灯具2Lのヘッドランプユニットであり、車体の左右方向中心線CL側から順に、第1ヘッドランプユニット41の第1投影レンズ50、第2ヘッドランプユニット42の第2投影レンズ60が順に位置している。より具体体的には、車体の左右方向中心線CL側から順に、第1投影レンズ50のLoで示した範囲およびHiで示した範囲、第2投影レンズ60のLoで示した範囲およびHiで示した範囲が順に並んでいる。なお、右側の車両用灯具2Rは、左右方向中心線CLを中心線とした左右線対象であるから、正面視で、車体の左右方向中心線CL側から順に、第1投影レンズ50のLoで示した範囲およびHiで示した範囲、第2投影レンズ60のLoで示した範囲およびHiで示した範囲が順に並んでいる。
【0035】
第1ヘッドランプユニット41には、走行ビーム用の配光パターンを構成する所定の範囲内を照射する走行ビーム用の第1走行ビーム光学系31と、すれ違いビーム用の配光パターンを構成する所定の範囲内を照射するすれ違いビーム用の第1すれ違いビーム光学系21とが隣接して配置されている。第1すれ違いビーム光学系21の出射面が、第1投影レンズ50の正面視における第1領域Lo/Spotと記した領域である。また、第1走行ビーム光学系31の出射面が、第1投影レンズ50の正面視における第2領域Hi/wideと記した領域である。
【0036】
ここで、第1ヘッドランプユニット41の第1投影レンズ50にLoで示した範囲とHiで示した範囲が設けられているということは、第1投影レンズ50にはすれ違いビーム用ランプ光学系(Loで示した範囲)を構成する第1領域50LSと走行ビーム用ランプ光学系(Hiで示した範囲)を構成する第2領域50HWという、2つの光学系に応じた2つのレンズ領域を有することを意味する。第1領域50LSと第2領域50HWとは隣接配置され連なった一つのレンズ体を形成している。
【0037】
第2ヘッドランプユニット42には、走行ビーム用の配光パターンの一部を構成する走行ビーム用の第2走行ビーム光学系32と、すれ違いビーム用の配光パターンの一部を構成するすれ違いビーム用の第2すれ違いビーム光学系22とが隣接して配置されている。第2すれ違いビーム光学系22の出射面が、第2投影レンズ60の正面視における第1領域Lo/wideである。また、第1走行ビーム光学系31の出射面が、第1投影レンズ60の正面視における第2領域Hi/spotである。
【0038】
ここで、第2ヘッドランプユニット42の第2投影レンズ60にLoで示した範囲とHiで示した範囲が設けられているということは、第2投影レンズ60にはすれ違いビーム用ランプ光学系(Loで示した範囲)を構成する第1領域60LWと走行ビーム用ランプ光学系(Hiで示した範囲)を構成する第2領域60HSという、2つの光学系に応じ2つのレンズ領域を有することを意味する。第1領域60LWと第2領域60HSとは隣接配置され連なった一つのレンズ体を形成している。
【0039】
次にwideおよびspotの表記に関連する説明を行う。
【0040】
図8は、本実施形態における路面照射パターンをシュミレーションした路面配光パターンを等照度曲線で示す概略図である。図8Aがすれ違いビーム用の配光パターンを照射したときの状態、図8Bが走行ビーム用の配光パターンを照射したときの状態である。なお、それぞれの図面において横軸は角度(Deg.)を示し縦軸は距離(メートル)を示す。0が車両用前照灯2を設置した基準点である。Lが左側、Rは右側である。図9は、図8で示した路面照射パターンと同一条件でシュミレーションした仮想スクリーン上の配光パターンを等照度曲線で示す概略図である。図9Aがすれ違いビーム用の配光パターンを照射したときの状態、図9Bが走行ビーム用の配光パターンを照射したときの状態である。なお、それぞれの図面において横軸および縦軸は角度(Deg.)を示す。(0,0)の原点がHV点に相当する。LおよびRはHV点を通る鉛直線vを基準として左側および右側を示す。UおよびDはHV点を通る水平線hを基準として上側および下側を示す。
【0041】
すれ違いビーム用の配光パターンPLは、第1ヘッドランプユニット41に設けた第1すれ違いビーム光学系21からの照射光と、第2ヘッドランプユニット42に設けた第2すれ違いビーム光学系22からの照射光との合成光により形成され、図8Aおよび図9Aに示したように水平線より下側領域を中心として車両前方手前路面を左右方向にも広い範囲を照明するように照射する。第1すれ違いビーム光学系21と第2すれ違いビーム光学系22を合せてすれ違いビーム用ランプ光学系20と称する。
【0042】
すれ違いビーム用の配光パターンPLはすれ違いビーム用ランプ光学系20によって形成され、具体的には次のように形成される。
【0043】
第1ヘッドランプユニット41に設けた第1すれ違いビーム光学系21が、第1投影レンズ50の正面視における第1領域50LSより光を前方方向に出射して、すれ違いビーム配光パターンPLの中心領域、即ちHV点周囲を照射するスポット配光を照射する。また、第2ヘッドランプユニット42に設けた第2すれ違いビーム光学系22が、第2投影レンズ60の正面視における第1領域60LWより光を前方方向に出射して、第1すれ違いビーム光学系21が形成するスポット配光に比べて左右方向に広い領域を照射するワイド配光を照射する。ここでスポット配光およびワイド配光とは仮想スクリーン4上における照射範囲の大きさを示すものであり、具体的な照射範囲を定めるものではない。本実施形態では、第1投影レンズ50の第1領域50LSから照射した光が形成する範囲は、図9Aにおける左側8度から右側8度付近までのHV点を中心としたスポット照射範囲PLSを照射し、第2投影レンズ60の第1領域60LWから照射した光が形成する範囲は、図9Aにおける左側27度から右側27度付近までのHV点を中心としたワイド照射範囲PLWを照射する。
【0044】
図7において、このようなスポット配光を照射する光を出射する領域をspotと表記し、ワイド配光を照射する光を出射する領域をwideと表記している。spotおよびwideは、走行ビーム用配光パターンPHを形成するときにもすれ違いビーム用の配光パターンPLの場合と同様に相対的な照射範囲の狭い/広いを示している。
【0045】
第1すれ違いビーム光学系21および第2すれ違いビーム光学系22の両方が同時に点灯することで、第1ヘッドランプユニット41と第2ヘッドランプユニット42の両方が点灯した状態となる。すなわち、第1ヘッドランプユニット41によるスポット配光と第2ヘッドランプユニット42によるワイド配光の両方の配光を形成するように両方のユニットが同時に点灯した状態となる。このとき、第1ヘッドランプユニット41の第1投影レンズ50は、第1領域50LSと第2領域50HWとが隣接配置され連なった一つのレンズ体を形成しているので、第1領域50LSから照射しているときには、第1領域50LSのみでなく第2領域50HW側にも第1投影レンズ50の出射面からの反射光などによって導光した光が到達し第2領域50HWも低照度で光っているように観察される。このように第2領域50HWが第1領域50LSからの漏れ光によって低照度で光るようにした場合でも、仮想スクリーン4上においてすれ違いビーム用の配光パターンPLに悪影響が出るような照度では照射しないように第1投影レンズの形状を制御している。同様に、第2ヘッドランプユニット42の第1投影レンズ60も、第1領域60LWと第2領域60HSとが隣接配置され連なった一つのレンズ体を形成しているので、第1領域60LWから照射しているときには、第1領域60LWのみでなく第2領域60HS側にも第1投影レンズ50の出射面からの反射光などによって導光した光が到達し第2領域60HSも低照度で光っているように観察される。これによって、ヘッドランプアッセンブリ13は、第1ヘッドランプユニット41と第2ヘッドランプユニット42の2つのヘッドランプユニットが光っているように観察される。
【0046】
第1すれ違いビーム光学系21および第2すれ違いビーム光学系22の両方が同時に点灯することで、すれ違いビーム用の配光パターンPLを形成されている。すなわち、スポット配光PLSとワイド配光PLWが重ねて照射される合成光により所望のすれ違いビーム用の配光特性を形成することができる。具体的には、HV点近傍はワイド配光PLWとスポット配光PLSの両方の光が照射される。これにより、HV点近傍を明るく照射する合成配光からなるすれ違いビーム配光パターンを形成することができる。
【0047】
走行ビーム用の配光パターンPHは、第1ヘッドランプユニット41に設けた第1走行ビーム光学系31からの照射光と、第2ヘッドランプユニット42に設けた第2走行ビーム光学系32からの照射光との合成光により形成され、図8(B)および図9(B)に示したように水平線より下側領域を中心としてHV点を含む中央領域では水平線よりも上部を照射し、路面照射においてはすれ違いビーム光学系20よりも遠方を照明するように照射する。第1走行ビーム光学系31と第2走行ビーム光学系32を合せて走行ビーム用ランプ光学系30と称する。
【0048】
走行ビーム用の配光パターンPHは走行ビーム用ランプ光学系30によって形成され、具体的には次のように形成される。
【0049】
第1ヘッドランプユニット41に設けた第1走行ビーム光学系31が、第1投影レンズ50の正面視における第2領域50HWより光を前方方向に出射して、走行ビーム配光パターンPHの左右方向の広い領域、特に直線hより下側においてHV点を含む左右方向の広い範囲を照射するワイド配光を照射する。また、第2ヘッドランプユニット42に設けた第2走行ビーム光学系32が、第2投影レンズ60の正面視における第2領域60HSより光を前方方向に出射する。第2領域60HSから照射される光は、第1走行ビーム光学系31が形成するワイド配光に比べて左右方向の幅が狭く、HV点およびその近傍領域を照射するスポット配光を形成する。ここでスポット配光およびワイド配光とは仮想スクリーン4上における照射範囲の大きさを示すものであり、具体的な照射範囲を定めるものではない。本実施形態では、第1投影レンズ50の第2領域50HWから照射した光が形成する範囲は、図9Bにおける左側27度から右側27度付近までのHV点を中心としたワイド照射範囲PHWを照射し、第2投影レンズ60の第2領域60HSから照射した光が形成する範囲は、図9Bにおける左側9度から右側9度付近まで、且つ、上側8度から下側6度のHV点を中心としたスポット照射範囲PHSを照射する。
【0050】
第1走行ビーム光学系31および第2走行ビーム光学系32の両方が同時に点灯する走行ビーム用ランプ光学系30とすることで、第1ヘッドランプユニット41と第2ヘッドランプユニット42の両方が点灯した状態となる。すなわち、第1ヘッドランプユニット41によるワイド配光と第2ヘッドランプユニット42によるスポット配光の両方の配光を形成するように両方のユニットが同時に点灯した状態となる。このとき、第1ヘッドランプユニット41の第1投影レンズ50は、第1領域50LSと第2領域50HWとが隣接配置され連なった一つのレンズ体を形成しているので、第2領域50HWから照射しているときには、第2領域50HWのみでなく第1領域50LS側にも第1投影レンズ50の出射面からの反射光などによって導光した光が到達し第1領域50LSも低照度で光っているように観察される。
【0051】
次に車体の左右方向中央線CL側から順に第1すれ違いビーム光学系21および第1走行ビーム光学系31を配置した第1ヘッドランプユニット41の構成について説明する。
【0052】
第1ヘッドランプユニット41は、図7に示したように正面視において第1領域50LSおよび第2領域50HWを有し、第1領域50LSが第1すれ違いビーム光学系21の出射面領域に相当し、第2領域50HWが第1走行ビーム光学系31の出射面領域に相当する。
【0053】
図10は、第1ヘッドランプユニット41の第1投影レンズ50と基板を分解して示す斜視図である。図11は、第1ヘッドランプユニット41の第1投影レンズ50と、LED光源を実装した第1基板51を分解して示す斜視図である。第1投影レンズ50は、図10に示したように第1ヘッドランプユニット41の前方側に位置する前方側第1投影レンズ50aと、前方側第1投影レンズ50aの後方側に位置し前方側第1投影レンズ50aと第1基板51との間に位置する後方側第1投影レンズ50bとからなる。前方側第1投影レンズ50aと後方側第1投影レンズ50bは、互いが所定位置で嵌合するための嵌合突起50cおよび嵌合凹部50dを光学的なレンズ機能に影響を与えない周囲領域に備えており、嵌合凹部50dに嵌合突起50cを嵌め込んだ状態で一体化している。本実施形態では、前方側第1投影レンズ50aおよび後方側第1投影レンズ50bをともにポリカーボネート樹脂を用いて射出成型により形成し、両者を溶着して一体化している。図10においては、前方側第1投影レンズ50aに嵌合凹部50dを設けたが、逆に嵌合突起50cを前方側第1投影レンズ50aに設け嵌合凹部50dを後方側第1投影レンズ50bに設ける構成などとしても良い。
【0054】
後方側第1投影レンズ50bには、図10に示したように前方側第1投影レンズ50aに向かって突出する2つのレンズ部21b,31bが形成されている。2つのレンズ部21b,31bは、嵌合突起50cを設けた後方側第1投影レンズ50bのフランジ部50b1の前方側表面から前方に突出して形成している。また、フランジ部50b1の後方表面には、図10に示したように後方側に向かって突出する2つのレンズ部21a,31aが形成されている。また、フランジ部50b1の左右方向の側方部分は、後方に向かって屈曲するとともに後面側に突出する位置決めピン50b2および第1基板51をネジ固定するためのネジ穴部50b3を有する。後方側に向かって突出する2つのレンズ部21a,22aには、それぞれのレンズ部に対応する光源からの出射光が入光する入射部が形成されている。
【0055】
前方側第1投影レンズ50aには、後方側第1投影レンズ50bの前方に所定の間隔を空けて位置する第1投影レンズ部50a1と、第1投影レンズ部50a1を保持し後方側第1投影レンズ50bと嵌合する保持部50a2とを備える。保持部50a2は第1投影レンズ部50a1の上部縁および下部縁から後方に延びており、第1投影レンズ50aの左側縁および右側縁には形成していない。これにより。第1投影レンズ50bを射出成型する際に、複雑な金型を用いる必要がなくなり、成形作業が容易になり、かつ成形不良が発生しにくくすることができる。
【0056】
後方側第1投影レンズ50bは、光源から照射され後方側第1投影レンズ50bに入射した光を主に左右方向に集光制御して出射する機能を担う。前方側第1投影レンズ50aは、後方側第1投影レンズ50bから出射した光を主に上下方向に集光制御して出射する機能を行う。ここで「主に」としたのは、後方側第1投影レンズ50bにおいても左右方向に集光制御するのみでなく上下方向についても集光制御する機能を有し、前方側第1投影レンズ50aにおいても上下方向に集光制御するのみでなく他の方向についても集光制御する機能を有するからであり、相対的に配光制御する作用が強い機能を主たる機能として表現している。
【0057】
なお、このように2つのレンズ体にて異なる機能を担って配光制御する構成については、同一出願人による先願、例えば特許第6523418号に記載の発明を用いることができる。特許第6523418号では、次の発明を開示している「光源、第1レンズ部及び第2レンズ部を含み、前記光源からの光が、前記第1レンズ部の第1入射面から前記第1レンズ部内部に入射して前記第1レンズ部の第1出射面から出射し、さらに、前記第2レンズ部の第2入射面から前記第2レンズ部内部に、前記第1レンズ部と前記第2レンズ部との間の空間を通って入射して前記第2レンズ部の第2出射面から出射して前方に照射されることにより、車両前照灯用配光パターンを形成するように構成されたレンズ体を備えた車両用前照灯において、
前記第1レンズ部は、前記第1出射面から出射する前記光源からの光を第1方向に関し集光させるレンズ体として構成されており、
前記第2レンズ部は、前記第2出射面から出射する前記光源からの光を前記第1方向に直交する第2方向に関し集光させるレンズ体として構成されている車両用前照灯」。この先願の発明における第1レンズ部が本実施形態の後方側第1投影レンズ50bのレンズ体に相当し、第2レンズ部が本実施形態の前方側第1投影レンズ50aのレンズ体に相当する。なお、本願発明においても、上記先願と同様に後方側の投影レンズ(第1レンズ部)と前方側の投影レンズ(第2レンズ部)とが連結しているものでも良い。
【0058】
図11は、第1すれ違いビーム用ランプ光学系21について、前後方向に延びる鉛直面にて切断した切断面を模式的に示すものである。後側から順に、第1基板51、第1基板上に実装したLED光源51a、後方側第1投影レンズ50bに設けたすれ違いビーム用ランプの光源側レンズ体21A、前方側第1投影レンズ50aに設けたすれ違いビーム用ランプの前方側レンズ体21Bを有する。光源側レンズ体21Aは、後方側第1投影レンズ50bのフランジ部50b1から前方に突出しているレンズ部21bと後方に突出しているレンズ部21aを含む。LED光源51a、光源側レンズ体21Aおよび前方側レンズ体21Bにてすれ違いビーム用配光の所定領域を照射する光学系を構成する。
【0059】
光源側レンズ体21Aには、LED光源51aと対向する位置に、LED光源51aから上下方向および左右方向に広がって前方に向けて放射状に出射した光を入光させるための入光部21A1と、すれ違い配光の配光パターンにおけるカットオフを形成する先端エッジを備えた反射部21A2と、入光部21A1と反射部21A2の間に位置し入光部21A1から入光した光の一部を内面反射する周面反射部21A3と、前方側レンズ体21Bに向けて出射する出射部21A4を備える。入光部21A1は、LED光源21aからの出射光を高い効率で光源側レンズ体21Aの内部に取り込むための形状とされている。本実施形態ではLED光源21aに対向する領域の正面入射面と正面入射面の縁部から第1基板51側に延びる周囲入射面を備えている。反射部21A2は、入光部21A1から入射し周面反射部21A3、特に上側の外周面にて反射した光を反射することで明暗境界を行うカットオフラインを形成する先端エッジを出射部21A4側の先端に備える。反射部21A2は、フランジ部50b1から後方に突出しているレンズ部21aの領域に形成されている。
【0060】
前方側レンズ体21Bには、光源側レンズ体21Aの出射面21A4と対向する位置に光源側レンズ体21Aの出射部21A4から出射した光を入光させるための入光部21B1と、すれ違い配光の配光パターン範囲を照射する光を出光する出射部21B4を備える。前方側レンズ体21Bの出射部21B4から出射したLED光源51aからの光は、図9(A)に示したすれ違い配光パターンのワイド配向PLWを照射する光を出射する。なお、前方側レンズ体21Bは、図10に示した前方側第1投影レンズ50aの第1投影レンズ部50a1の中の一部領域、より具体的には後方側第1投影レンズ50bのフランジ部50b1から前方に向かって突出するレンズ部21bに対応した領域である。出射部21B4の外側表面は、上下方向の断面においては集光するための半円状の凸形状とし、左右方向の断面において直線状とした半円筒形状として、第1領域50LSと第2領域50HWの両方が滑らかに連なった連続面とされ一体感を高めている。入光部21Bは、第1領域50LSと第2領域50HWとで形状を変えた入射面を有する。スポット配光を形成する第1領域50LSの入射面は、上下方向の断面においては直線を基調とし左右方向の断面においては走行ビーム配光用の光学系に対応する領域をすれ違い配光用の光学系に対応する領域に比べて曲率を大きくした光源側レンズ体21A側に凸の円弧面としている。またた、第1領域50LSと第2領域50が、ワイド配向を形成するものかスポット配光を形成するものかによっても曲率が異なる。スポット配光を形成する領域の方がワイド配向を形成する領域に比べて曲率を大きくしている。
【0061】
LED光源51aは、前方に向かってLED光源の光軸を中心とした広がりをもつランバーシアン配光の光を出射する。図11にて点線で示した矢印は、ランバーシアン配光の特性を持つLED光源51aからの光が、光源側レンズ体21Aの内部を導光して最終出射面である出射部21B4から出光する光を説明するために屈折角および反射角などを簡略化して模式的に示す代表的な光線である。光線L1は、光源側レンズ体21A内で内面反射することなく出射部21A4から出光し、前方側レンズ体21Bの入光部21B1および出射部21B4を通って出光する光線であり、LED光源51aの光軸もしくは光軸周辺に照射された光度の高い光である。光線L2は、光源側レンズ体21A内において反射部21A2で内面反射した後に出射部21A4から出光し、前方側レンズ体21Bの入光部21B1および出射部21B4を通って出光する光線であり、主にすれ違い配光のカットオフラインの形成に関係する光である。光線L3は、光源側レンズ体21A内において周面反射部21A3で内面反射した後に出射部21A4から出光し、前方側レンズ体21Bの入光部21B1および出射部21B4を通って出光する光線であり、LED光源51aの光軸から離れた方向に出射した光度の低い光である。なお、それぞれの光線L1,L2,L3は、光源側レンズ体21Aの出射部21A4から出光する際にその界面においてそれぞれの出射角に応じて屈折して出光する。このとき上下方向においては略平行光となる成分を多くし、左右方向においては所定の範囲内の広がりとなるように制御するように界面形状を定めている。前方側レンズ体21Bの入光部21B1および出射部21B4は、左右方向の集光作用は小さくし、上下方向の集光作用を大きくした集光レンズとなるように形状を定めている。
【0062】
次に第1ヘッドランプユニット41の第1走行ビーム光学系31の構成について説明する。
【0063】
第1走行ビーム光学系31も、第1すれ違いビーム用ランプ光学系21と同様に後側から順に、第1基板51、第1基板上に実装したLED光源51a、後方側第1投影レンズ50bに設けた走行ビーム用ランプの光源側レンズ体、前方側第1投影レンズ50aに設けた走行ビーム用ランプの前方側レンズ体を有する。光源側レンズ体は、後方側第1投影レンズ50bのフランジ部50b1から前方に突出しているレンズ部31bと後方に突出しているレンズ部31aを含む。LED光源51a、光源側レンズ体および前方側レンズ体にて走行ビーム用配光の所定領域を照射する光学系を構成する。第1走行ビーム光学系31を構成するLED光源51aは、第1すれ違いビーム用ランプ光学系21を構成するLED光源51aとは異なる。LED光源51aについては後述する。
【0064】
第1走行ビーム光学系31も第1すれ違いビーム光学系21と同様に光源側レンズ体と前方側レンズ体とを有する。走行ビーム用配光においてはすれ違いビーム用配光と異なりカットオフが必須ではないため図11に示した反射部21A2に対応する反射部を備えていない。他の点については目的とする配光特性の違いに応じて形状が異なるものの、光源側レンズ体の出射部から出光する際にその界面において屈折して出光する。このとき上下方向においては略平行光となる成分を多くし、左右方向においては所定の範囲内の広がりとなるように制御するように界面形状を定めている点は同一である。また、前方側レンズ体の入光部および出射部は、左右方向の集光作用は小さくし、上下方向の集光作用を大きくした集光レンズとなるように形状を定めている点も同一であるので、ここでの説明は省略する。また、第1走行ビーム光学系31の前方側レンズ体と第1すれ違いビーム光学系の前方側レンズ体は同一形状であることが好ましい。同一形状とすることができれば、前方側第1投影レンズ50aを容易に製造することができ、第1ヘッドランプユニット41を外部から視認したときに、特に非点灯時に視認したときに第1走行ビーム光学系31と第1すれ違いビーム光学系21の2種類が並んで配置されていることに気づきにくくなり、ヘッドランプユニットの外観品位を高めることができるからである。
【0065】
次に第2ヘッドランプユニット42について説明する。
【0066】
第2ヘッドランプユニット42は、第1ヘッドランプユニット41よりも車体の左右方向中央線CL側から離れている側に位置し、第1ヘッドランプユニット41の横方向に並んで設置されている。第1ヘッドランプユニット41の真横に限るものではなく斜め上、斜め下でも良い。また、外観として第1ヘッドランプユニット41と統一感が得られるように同一の外観形状、大きさとしている。同一とは厳密な意味の同一ではなくヘッドランプユニット40を見る看視者にとって同一もしくは類似と認識できるものをいう。
【0067】
第2ヘッドランプユニット42は、図7に示したように車体の左右方向中央線CL側から順に正面視において第1領域60LWおよび第2領域60HSを有し、第1領域60LWが第2すれ違いビーム光学系22の出射面領域に相当し、第2領域60HSが第2走行ビーム光学系32の出射面領域に相当する。
【0068】
図12は、第2ヘッドランプユニット42の第2基板61と第2投影レンズ60を分解して示す後側の斜視図である。第2投影レンズ60は、図10および図11に示した第1投影レンズ50と基本的には同様の配置をした構造である。第2ヘッドランプユニット42の前方側に位置する前方側第2投影レンズ60aと、前方側第2投影レンズ60aの後方側に位置し前方側第2投影レンズ60aと第2基板61との間に位置する後方側第2投影レンズ60bとからなる。前方側第2投影レンズ60aと後方側第2投影レンズ60bは、図10に示した第1投影レンズ50と同様に互いが所定位置で嵌合するための位置決め構造および嵌合構造を備えており、一体化して第2投影レンズ60としてハンドリングする。
【0069】
後方側第2投影レンズ60bには、図12に示したようにフランジ部60b1の後方表面から後方側に向かって突出する2つのレンズ部22a,32aが形成されている。また、フランジ部60b1の左右方向の側方部分は、後方に向かって屈曲するとともに後面側に突出する位置決めピンと第2基板61をネジ固定するためのネジ穴部を有する。後方側に向かって突出する2つのレンズ部22a,32aには、それぞれのレンズ部に対応する光源からの出射光が入光する入射部が形成されている。レンズ部22aが第2すれ違いビーム光学系22のレンズ体の一部をなし、レンズ部32aが第2走行ビーム光学系32のレンズ体の一部をなす。また、後方側第2投影レンズ60bに第2すれ違いビーム光学系22の後方側レンズ体と第2走行ビーム光学系32の後方側レンズ体を設け、前方側第2投影レンズ60aに第2すれ違いビーム光学系22の前方側レンズ体と第2走行ビーム光学系32の前方側レンズ体を設ける構成は、第1ヘッドランプユニット41と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
本実施形態において、ヘッドランプユニット40は第1ヘッドランプユニット41から照射される出射光と第2ヘッドランプユニット42から照射される出射光の合成光で所定の配光パターンを形成する。
【0071】
第1ヘッドランプユニット41から照射される出射光で形成する配光パターンは、上記した第1すれ違いビーム光学系21および第1走行ビーム光学系31にて形成する配光パターンである。具体的には、第1すれ違いビーム光学系21によってすれ違い配光の中心部を照射するスポット配光である図9(A)の配光パターンPLSと、第1走行ビーム光学系31によって走行ビーム配光の左右方向に広い範囲を照射するワイド配光である図9(B)の配光パターンPHWである。
【0072】
第2ヘッドランプユニット42から照射される出射光で形成する配光パターンは、上記した第2すれ違いビーム光学系22および第2走行ビーム光学系32にて形成する配光パターンである。具体的には、第2すれ違いビーム光学系22によってすれ違い配光の左右方向に広がって照射するワイド配光である図9(A)の配光パターンPLWと、第2走行ビーム光学系32によって走行ビーム配光の左右方向の中央部を照射するスポット配光である図9(B)の配光パターンPHSである。
【0073】
次に第1基板51および第2基板52およびそれぞれの基板に搭載しているLED光源110について説明する。
【0074】
図13は、第1ヘッドランプユニットおよび第2ヘッドランプユニットで用いる第1基板51および第2基板52を示す正面図であり、図13(A)が第1基板51、図13(B)が第2基板52である。なお、LED光源が前方方向に出射するように設置してあるヘッドランプアッセンブリであり自動車前方にヘッドランプを設置した状態において運転者から見た方向を基準とする点は上記した説明と同一であるので、上、下、左、右は、図面中に示した方向となる。
【0075】
第1基板51および第2基板52はプリント回路基板であり、搭載するLED光源を電気的に接続するためのプリント配線を設けたガラスエポキシ基板などのプリント配線板100の一方の表面に2種類の表面実装型のLED光源110と、外部電源などとプリント配線とを接続するコネクター部120とを備える。2種類のLED光源110は、LED光源の光軸を中心として上下方向の出射範囲よりも左右方向の出射範囲が広くなるように発光面を横長の矩形形状とした横長LED光源110Wと、横長LED光源110Wよりも左右方向の発光面の長さを短くした基準LED光源110Sの2種類である。基準LED光源110Sは、LED発光素子として1mm×1mmの方形状のLED素子を用いて発光面110S1も1mm×1mmの方形状としたLED光源である。横長LED光源110Wは、LED発光素子として基準LED光源110Sと同一の1mm×1mmの方形状のLED素子を複数個(図13(A)では3個)を左右方向に密接に並べることで、発光面110W1を基準LED光源110Sの発光面110S1の整数倍の大きさの左右方向長さ(図13(A)では1mm×3mm)の発光面とした横長の矩形形状としたLED光源である。第1基板51および第2基板52には、上記したLED光源以外の電子部品、例えば抵抗素子や点灯を制御するIC素子などの回路部品を搭載したプリント回路基板としても良い。
【0076】
第1基板51と第2基板52は、同一の外形寸法とし、同一材料のプリント配線板を用いている。また、それぞれの基板に搭載する2種類のLED光源も同一のものを用いている。第1基板51に搭載したLED光源51aとして、図13(A)に示すようにLED光源を実装した表面側を見る正面視で基準LED光源110Sを右側、横長LED光源110Wを左側となるように2つのLED光源を配置している。第2基板52は第1基板51とは逆の配置とする。すなわち、図13(B)に示すようにLED光源を実装した表面側を見る正面視で基準LED光源110Sを左側、横長LED光源110Wを右側となるようにした2つのLED光源からなるLED光源52aを配置している。
【0077】
ここでの説明は、第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42が左右方向に並んで設けられている左側の車両用灯具2Lについての説明である。それゆえ、図7に示したように、第1ヘッドランプユニット41がヘッドランプユニットの正面視において第1領域50LSおよび第2領域50HWを有している。第1領域50LSが第1すれ違いビーム光学系21の出射面領域に相当し、第2領域50HWが第1走行ビーム光学系31の出射面領域に相当する。そこで、第1基板51では、第1領域50LSがスポット配光を形成する光学系であるため、スポット配光を形成するのに適した基準LED光源110Sを第1領域50LSのために使用し、ワイド配光を形成するのに適した横長LED光源110Wを第2領域50HWの形成のために使用できるように配置したものである。
【0078】
一方、図7に示したように、第2ヘッドランプユニット42が車体の左右方向中央線CL側から順に正面視において第1領域60LWおよび第2領域60HSを有し、第1領域60LWが第2すれ違いビーム光学系22の出射面領域に相当し、第2領域60HSが第2走行ビーム光学系32の出射面領域に相当する。そこで、第2基板52では、第1領域60LWがワイド配光を形成する光学系であるため、ワイド配光を形成するのに適した横長LED光源110Wを第1領域60LWのために使用し、スポット配光を形成するのに適した基準LED光源110Sを第2領域60HSの形成のために使用するように配置したものである。
【0079】
ところで、車両用灯具2は、右側の車両用灯具2Rと左側の車両用灯具2Lを有する。左側の車両用灯具2Lのために第1基板51と第2基板52の2種類を準備する必要がある。右側の車両用灯具2Rと左側の車両用灯具2Lとは、車体の左右方向中央線CLを挟んで対象である。そのため右側の車両用灯具2Rのためには、左側の車両用灯具2Lのために必要な第1基板51と第2基板52の2種類と左右を対象に配置した2種類のプリント回路基板が必要となる。すなわちLED光源を搭載した4種類のプリント回路基板を準備しなければならない。
【0080】
車両用灯具2は、図7に示したように右側から順にスポット配光(Hi)、ワイド配向(Lo)、ワイド配向(Hi)、スポット配光(Lo)の順番に出射面領域が並ぶ右側の車両用灯具2R、右側から順にスポット配光(Lo)、ワイド配向(Hi)、ワイド配向(Lo)、スポット配光(Hi)の順番に出射面領域が並ぶ左側の車両用灯具2Lとなる。
【0081】
前記したように、右側の車両用灯具2Rと左側の車両用灯具2Lのそれぞれにおいて第1ヘッドランプユニットと第2ヘッドランプユニットの2つのランプユニットを用いる。また、第1ヘッドランプユニットおよび第2ヘッドランプユニットのそれぞれに走行ビーム用ランプ光学系とすれ違い配光ビーム用光学系の2種類を設ける。第1ヘッドランプユニットの走行ビーム用ランプ光学系と、第2ヘッドランプユニットの走行ビーム用ランプ光学系が離れると合成配光を形成するときに位置ズレが生じやすく好ましくない。点灯時において発光面の距離が離れすぎることは各国の車両用灯具に関する法律や規格などの面からも好ましくない。同じことはすれ違いビーム用ランプ光学系にも言える。従って、第1ヘッドランプユニットおよび第2ヘッドランプユニットのそれぞれに走行ビーム用ランプ光学系とすれ違い配光ビーム用光学系の2種類を設け、且つ、それぞれのランプユニットに対応する基板上にワイド配光およびスポット配光に適した光源を設けることが好ましく、図7に記載したレイアウトが好適である。また、基準LED光源110Sと横長LED光源110W都では発熱量が異なる。それぞれの基板の発熱量を平均化することで、ヒートシンクも共通化が可能となる。したがって、熱の面からも同一基板上にワイド配光に適したLED光源とスポット配光に適したLED光源を設けることが好ましい。
【0082】
すれ違いビーム用ランプ光学系20および走行ビーム用ランプ光学系30は、それぞれの光源からの放射された光を集光制御して、所定の配光パターンを形成するように光源像を投影する光学系である。光源像、すなわちLED光源の発光面の大きさは、それぞれの光学系において、ワイド配光とスポット配光という照射範囲の広狭が異なる配光パターンを形成する場合に影響する。具体的には、小さな発光面はスポット配光に適し、左右方向(水平方向)に長い発光面はワイド配向に適したものとなる。そこで、本実施形態では、スポット配光を行う光学系においては基準LED光源110Sを使用し、ワイド配光を行う光学系においては横長LED光源110Wを使用するものとしている。また、すれ違いビーム用ランプ光学系20および走行ビーム用ランプ光学系30において、どちらの光学系に用いる光源も同じ種類のLED光源を用いる。これにより、LED光源としては、基準LED光源110Sと横長LED光源110Wの2種類のみを準備すれば良い。基準LED光源110Sは正方形形状の青色LED素子を1個使用し、青色LED素子の上面に波長変換層を設けて白色光を照射する構造にするとともに青色LED素子の側面を覆うように白色の反射性樹脂材料を設けたものを用いている。横長LED光源110Wは正方形形状のLED素子を3個並べて使用し3個のLED素子を同時に点灯するようにし、3個の青色LED素子の上面に波長変換層を設けて白色光を照射する構造にするとともにそれらの側面を覆うように白色の反射性樹脂材料を設けたものを用いている。なお、横長LED光源110Wとして3個の青色LED素子を用いるものとしたが2個以上でも良く、また、正方形のLED素子でなくLED素子自体を横長としたものでも良い。
【0083】
一方、図7に示したような出射面領域を形成するために4種類の基板を準備するのは、左側の車両用灯具の第1ヘッドランプユニットのための第1基板を誤って他のランプユニットに組付けをする組立工程の問題が生じ易い。また、異なった基板を準備することでコストが上昇する。そこで、本実施形態においては、図13に示した2種類の基板、すなわち第1基板51と第2基板52の2種類のみを用いることを可能としている。
【0084】
具体的には、上述したように左側の車両用灯具2Lでは、図7に示したように右側から順に第1ヘッドランプユニット41のスポット配光(Lo)、ワイド配向(Hi)と、第2ヘッドランプユニット42のワイド配向(Lo)、スポット配光(Hi)の順番に出射面領域が並ぶ。このときの基板は、右側から順に第1基板51,第2基板61となる。右側の車両用灯具2Rでは、図7に示したように右側から順にスポット配光(Hi)、ワイド配向(Lo)、ワイド配向(Hi)、スポット配光(Lo)の順番に出射面領域が並ぶ。このときの基板は、右側から順に第2基板52、第1基板51として左側の車両用灯具2Lとは用いる基板の順番を変更することで、ワイド配向に適したLED光源とスポット配光に適したLED光源の並びを最適なものとすることができる。したがって、準備する基板の種類を減少させるとともに誤組み発生の蓋然性を低くすることができる。
【0085】
本実施形態においては、第1ヘッドランプユニット41と第2ヘッドランプユニット42の外観を同一としている。上記したように左右の車両用灯具2L.2Rで基板を共通のものを利用可能とすることで準備すべき基板数を減ずることができている。しかしながら、それぞれの投影レンズとLED光源を搭載した基板との組付け作業において、誤った組付け作業が発生する可能性を完全に排除することは難しい。そこで、誤組防止の対策について説明する。
【0086】
図13に示したように第1基板51および第2基板61には、基準LED光源110Sと横長LED光源110Wの2種類を水平方向に並べて配置している。基準LED光源110Sと横長LED光源110Wとを結ぶ延長線上には、位置決め用の貫通孔(以後、中央位置決め孔と称する)101がプリント配線板100の両方の側縁部に設けている。一列に並ぶ光源の延長線上に中央位置決め孔101を設けることで、光源位置のブレを小さくすることができる。さらに中央位置決め孔101のうち、一方の中央位置決め孔101の上方もしくは下方にも第2位置決め孔102を設けている。この第2位置決め孔によるって回転方向の位置決め精度を向上させる。第1基板51においては右側縁部の中央位置決め孔101の上側に第2位置決め孔102を設けて、第2基板61においては左側縁部の中央位置決め孔101の下側に第2位置決め孔102を設ける。第2位置決め孔102は円形状ではなく左右方向を長くした長孔としている。また、図13において符号103は、ネジ止めするための貫通穴(ネジ孔)であり、図12に示したように投影レンズにネジにて固定するために用いる。ネジ孔103は、プリント配線板100の左側縁部および右側縁部の対角線上もしくはその近傍に設けている。本実施形態においては、図13(A)に示したように第1基板51においては貫通孔を左側に2個、右側に3個とし、図13(B)に示したように第2基板61においては貫通孔を左側に3個、右側に2個とした非対象としている。
【0087】
図12に示したように、後方側第2投影レンズ60bには、フランジ部60b1から後面側に突出する位置決めピンおよびネジ穴部が形成されている。位置決めピンは、第2基板61の中央位置決め孔101に対応する位置、すなわち、後方側に向かって突出する2つのレンズ部22a,32aを結ぶ延長線上に位置する一対の中央位置決めピン101Pと、第2位置決め孔102に対応する位置に形成されている第2位置決めピン102Pである。ネジ孔部は、第2基板61のネジ孔103に対応する位置に形成されている。第2基板61は、LED光源を搭載した面を第2投影レンズ60側として固定する。
【0088】
図12に示した第2投影レンズ60への第2基板61の固定に代えて、第2投影レンズ60に図13(A)に示す第1基板51を固定しようとする場合には、第2位置決め孔と第2位置決めピンの位置が合致しない。また第2位置決めピンに対応する位置には第2基板61に貫通孔が存在しない。従って、誤組を防止することができる。なお、第1投影レンズ50と第1基板51の固定についても同様である。このように第2位置決めピンおよび第2位置決め孔102を形成する位置を、第1投影レンズ50と第1基板51を組み立てる場合の位置と、第2投影レンズ60と第2基板61を組み立てる場合の位置とで、異なる位置とならうように調整することで、誤組の問題を解消することができる。
【0089】
また、本来ならば第1基板51および第2基板61は、LED光源を搭載した面を第1投影レンズ50または第2投影レンズ60側となるようにして組付ける必要があるが、誤ってLED光源を搭載した面を、第1投影レンズ50の反対側または第2投影レンズ60の反対側にして組立を実施しようとすることも考えられる。その場合において、第2位置決め孔102とネジ孔103との位置が左右対称の位置で一致する場合には、誤ってネジ固定することが可能となる。そこで、第2位置決め孔102とネジ孔103との位置が左右対称関係にある位置であっても、ネジ固定ができないように、誤って組み合わせた場合において第1基板51および第2基板61のネジ孔103のそれぞれが、投影レンズに設けたネジ穴部の中心位置に対して相対的に偏芯するようにしている。これにより、仮に第1基板または第2基板を、裏表を間違えて固定しようとした場合でもネジ孔が一致しないためネジ固定をすることができないので、誤組の問題を解消することができる。さらに、第1基板51と第2基板61とでは、第2位置決め孔102と隣接するに中央位置決め孔101との距離が異なる。それ故、第1基板51を取り付ける位置に上下を異なる向きとしたり、表裏を逆にしたりして第2基板61を取り付けようとした場合であっても位置決めピンやネジ孔位置がずれて正しく固定することができない。
【0090】
<第2の実施の形態>
次に第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態においては、右側の車両用灯具2Rおよび左側の車両用灯具2Lにおけるヘッドランプ40を車両前方から観察したときには、図7に示したように、右側から順(紙面においては左側から順)に第2領域60HS、第1領域60LW、第2領域50HW、第1領域50LS、車体の左右方向中心線CL、第1領域50LS、第2領域50HW、第1領域60LW、第2領域60HWの順に並んでいる。第2の実施形態においては、図14に示すように右側から順(紙面においては左側から順)に第2領域60HW(Hi/wide)、第1領域60LS(Lo/spot)、第2領域50HS(Hi/spot)、第1領域50LW(Lo/wide)、車体の左右方向中心線CL、第1領域50LW(Lo/wide)、第2領域50HS(Hi/spot)、第1領域60LH(Lo/wide)、第2領域60HS(Hi/spot)の順に並ぶようにして形成している。他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0091】
<他の変形例>
第1の実施の形態および第2の実施の形態において、第1ヘッドランプユニット41および第2ヘッドランプユニット42のそれぞれは、すれ違いビーム光学系を走行ビーム光学系よりも車体の左右方向中心線側に配置していたが、各ヘッドランプユニット内において互いの位置を入れ替えて、走行ビーム光学系をすれ違いビーム光学系よりも車体の左右方向中心線側に配置しても良い。
【0092】
以上に、本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、上記実施形態および変形例はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその趣旨から逸脱することなく他の様々な形で構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。例えば、ダイレクトプロジェクション方式(直射型)の光学系ではなく、第2の光源からの光を楕円形反射面で集光した後に第2の投影レンズにて照射する伝統的なプロジェクター方式の光学系を用いてもよい。また、スポット配光を実現する光学系で用いる光源を、左右幅方向に置いて複数に分割したLED素子を用いて、それぞれの狭幅としたLED素子を独立して点灯制御可能とすることで、いわゆるADBヘッドランプと呼ばれるランプ、すなわち、分割照射可能な光学系として対向車の運転手などにとって眩しい光を照射しないように、対向車の運転手の位置の領域を照射するLED素子を消灯/減光させる制御を行うものとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
オートバイ、自動二輪車、スクーター等のモーターサイクルおよびそれとみなされる車両の車両用灯具、四輪自動車、トラック、三輪車など車内空間を備える車両の車両用灯具に適用できる。
【符号の説明】
【0094】
1…車両(自動車)
2…車両用灯具
2R…右側の車両用灯具
2L…左側の車両用灯具
3…車体
4…仮想スクリーン
10…ハウジング
13…ヘッドランプアッセンブリ
20…すれ違いビーム用ランプ光学系
21…第1すれ違いビーム光学系
22…第2すれ違いビーム光学系
21A…光源側レンズ体
21B…前方側レンズ体
30…走行ビーム用ランプ光学系
31…第1走行ビーム光学系
32…第2走行ビーム光学系
40…ヘッドランプユニット
41…第1ヘッドランプユニット(第1ランプユニット)
42…第2ヘッドランプユニット(第2ランプユニット)
43…ブラケット
44…エクステンション
50…第1投影レンズ
50a…前方側第1投影レンズ
50b…後方側第1投影レンズ
51…第1基板
52…第1ヒートシンク
50LS…第1領域
50HW…第2領域
60…第2投影レンズ
61…第2基板
62…第2ヒートシンク
60LW…第1領域
60HS…第2領域
60a…前方側第2投影レンズ
60b…後方側第2投影レンズ
100…プリント配線板
101…中央位置決め孔
102…第2位置決め孔
CL…車体の左右方向中心線
PH…走行ビーム用配光パターン
PL…すれ違いビーム用配光パターン
PLW…ワイド配光(すれ違いビーム用配光パターン)
PLS…スポット配光(すれ違いビーム用配光パターン)
図1
図2
図3
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図5
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図14