IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-梁接合構造及び鉄骨造建物 図1
  • 特開-梁接合構造及び鉄骨造建物 図2
  • 特開-梁接合構造及び鉄骨造建物 図3
  • 特開-梁接合構造及び鉄骨造建物 図4
  • 特開-梁接合構造及び鉄骨造建物 図5
  • 特開-梁接合構造及び鉄骨造建物 図6
  • 特開-梁接合構造及び鉄骨造建物 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110072
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】梁接合構造及び鉄骨造建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240807BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
E04B1/58 506F
E04B1/24 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014421
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 恵
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AB01
2E125AC15
2E125AG45
2E125AG57
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】H形鋼の梁せいが小さい場合であっても、第二ガセットプレートを長くすることなく、構造強度を確保できること。
【解決手段】H形鋼の梁を用いる梁接合構造において、第一梁の上下フランジの間に第一ガセットプレートが設けられ、第二梁のウェブに前記第一ガセットプレートの側に突出させて第二ガセットプレートが設けられ、前記第一ガセットプレートと前記第二ガセットプレートとが締結材により接合され、前記第二ガセットプレートは、前記第二梁のウェブに溶接される溶接部分と、前記第一ガセットプレートの側に突出する突出部分と、前記溶接部分と前記突出部分の間に段差部分とを備え、前記突出部分のせいは前記溶接部分のせいよりも大きく形成され、前記段差部分は前記ウェブに溶接されることを特徴とする梁接合構造。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H形鋼の梁を用いる梁接合構造において、
第一梁の上下フランジの間に第一ガセットプレートが設けられ、第二梁のウェブに前記第一ガセットプレートの側に突出させて第二ガセットプレートが設けられ、前記第一ガセットプレートと前記第二ガセットプレートとが締結材により接合され、
前記第二ガセットプレートは、前記第二梁のウェブに溶接される溶接部分と、前記第一ガセットプレートの側に突出する突出部分と、前記溶接部分と前記突出部分の間に段差部分とを備え、前記突出部分のせいは前記溶接部分のせいよりも大きく形成され、前記段差部分は前記ウェブに溶接されることを特徴とする梁接合構造。
【請求項2】
前記第二梁のフランジの内壁と、前記内壁に対向する前記第二ガセットプレートの前記溶接部分の側縁との寸法が、前記第二梁のフランジの幅の1/2の寸法とほぼ等しく設定されることを特徴とする請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項3】
前記第一ガセットプレート及び前記第二ガセットプレートにシノ孔が形成されることを特徴とする請求項2に記載の梁接合構造。
【請求項4】
前記第一ガセットプレート及び前記第二ガセットプレートに前記締結材が挿入される孔が形成され、前記孔及び前記締結材の径の差δが0.1~0.5mmに設定されることを特徴とする請求項3に記載の梁接合構造。
【請求項5】
前記第一ガセットプレートは略長方形の板であり、
前記第一ガセットプレートの長辺が延びる方向は前記第一梁の長さ方向と直交し、前記第一ガセットプレートの短辺が延びる方向は前記第一梁の幅方向と一致し、前記第一ガセットプレートは前記第一梁の前記上下フランジの間に接合されることを特徴とする請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項6】
前記第二ガセットプレートの前記突出部分の基部は前記ウェブの端部に溶接されることを特徴とする請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項7】
前記第一ガセットプレートは前記フランジ側縁より所定寸法内方に接合されることを特徴とする請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項8】
H形鋼の梁を用いる鉄骨造建物において、
前記梁を接合する十字接合部、T字接合部、及びL字接合部を備え、
前記H形鋼に接合される鉄骨柱を備え、
前記接合部はそれぞれ請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の梁接合構造を備えることを特徴とする鉄骨造建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、梁接合構造及びそれを用いた鉄骨造建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、H形鋼の梁を用いた鉄骨造建物が知られている(特許文献1参照)。
この種の従来の建方は、工場内でH形鋼に梁同士を接合するためのガセットプレートなどを溶接し、現場に搬入して組み立てる。
工場内でのガセットプレートの溶接は、自動溶接ラインに設けたロボット溶接機などを用いて溶接するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―133461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば住宅用鉄骨躯体(梁部材)の生産においては、溶接個所を低減し、ボルト数を削減し、環境負荷を低減することなどが望まれる。
また、自動溶接ラインでは、H形鋼のウェブの側面をコンベアに対向させた状態でコンベア搬送しているため、H形鋼のフランジの側縁より突出する突起物を設けることができない。H形鋼のフランジ側縁より突出する突起物があると、工場から現場までの搬送時に嵩張り、搬送効率が低下し、積載効率悪化などによりCO2削減が図れない。加えて、ガセットプレートを溶接する際には、H形鋼の梁せいが小さい場合、フランジを避けて溶接棒を挿入するため、ガセットプレートのせいを小さくし、一方、構造強度の不足を補うため、ガセットプレートを長くするなどの必要がある。
【0005】
本開示の目的は、工場内で自動溶接ラインを利用してガセットプレートを溶接し、H形鋼の現場までの搬送効率を向上し、生産性・施工性が図れ、省力化が図れ、物流積載効果が図れ、更には、梁接合構造において、H形鋼の梁せいが小さい場合であっても、ガセットプレートを長くすることなく、構造強度を確保できる梁接合構造及びそれを用いた鉄骨造建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、H形鋼の梁を用いる梁接合構造において、第一梁の上下フランジの間に第一ガセットプレートが設けられ、第二梁のウェブに前記第一ガセットプレートの側に突出させて第二ガセットプレートが設けられ、前記第一ガセットプレートと前記第二ガセットプレートとが締結材により接合され、前記第二ガセットプレートは、前記第二梁のウェブに溶接される溶接部分と、前記第一ガセットプレートの側に突出する突出部分と、前記溶接部分と前記突出部分の間に段差部分とを備え、前記突出部分のせいは前記溶接部分のせいよりも大きく形成され、前記段差部分は前記ウェブに溶接されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、溶接個所が低減され、自動搬送・自動溶接(検査)がし易くなり、環境負荷の低減、また積載効率化によるCO2削減が図れ、ボルト数の削減による省力化が図れる。また、H形鋼の上下フランジの間に第一ガセットプレートを接合するため、H形鋼のフランジ側縁より突出する突起物がなく、自動溶接ラインを利用してガセットプレートを溶接でき、溶接個所の単純化による生産性・施工性の向上が図れ、H形鋼の現場までの搬送効率を向上でき、物流積載効果が得られる。更に、H形鋼の梁せいが小さい場合であっても、第二ガセットプレートを長くすることなく、構造強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る鉄骨造建物の梁接合構造の斜視図である。
図2図1の矢視A図である。
図3】十字接合部の拡大図である。
図4】(A)~(D)は、第一ガセットプレート又は第二ガセットプレートを示す図である。
図5】(A)~(C)は別の実施の形態を示す図である。
図6】T字接合部の拡大図である。
図7】L字接合部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
図1は、鉄骨造建物の1階と2階の間の梁接合構造を示す。
本梁接合構造は、十字接合部51、T字接合部52、L字接合部53、梁・梁接合部54などを備える。符号55は1階の鉄骨柱、符号56は2階の鉄骨柱である。
【0010】
図2は、図1の矢視A図である。
十字接合部51は、H形鋼の第一梁(大梁)1の両側に、同じくH形鋼の2本の第二梁(小梁)10が十字状に接続される。第二梁10は、第一梁1に対し直交する。
第一梁1は、上フランジ2と、下フランジ3と、上下フランジ2、3をつなぐウェブ4とを備える。第二梁10は、上フランジ12と、下フランジ13と、上下フランジ12、13をつなぐウェブ14とを備える。
【0011】
図3は、十字接合部51の拡大図である。
第一梁1のウェブ4の両側には、図3に示すように、一対の第一ガセットプレート5、5が設けられる。図中左右の第一ガセットプレート5、5は同じ形態で設けられる。
第一ガセットプレート5は略長方形の板であり、第一ガセットプレート5の長辺が延びる方向は第一梁1の長さ方向と直交し、第一ガセットプレート5の短辺が延びる方向は第一梁1の幅方向と一致し、第一ガセットプレート5は第一梁1の上下フランジ2、3の間に接合される。
第一ガセットプレート5は、フランジ側縁2A、3Aより側方に突出させない状態で第一梁1に接合される。
第一ガセットプレート5は、フランジ側縁2A、3Aから所定寸法Lだけ内方に位置させる。
第一ガセットプレート5の短辺は溶接(溶接ビード5A、5B)により、上下フランジ2、3の内面に接合され、第一ガセットプレート5のウェブ4側の長辺は溶接(溶接ビード5C)によりウェブ4に接合される。
【0012】
第二梁10のウェブ14の側面(第二梁10の長手方向に延びる面)には、第一梁1の第一ガセットプレート5の側に突出させた状態で、第二ガセットプレート15が設けられる。第二ガセットプレート15は第二梁10のウェブ14の端面(第二梁10の長手方向の端部14Cの面)より張り出して第二梁10の長手方向に延出する。図中で左右の第二ガセットプレート15は同じ形態で設けられる。
【0013】
第二ガセットプレート15は、図中で右の第二ガセットプレート15を参照し、第一ガセットプレート5の側に突出する突出部分101と、第二梁10のウェブ14に溶接される溶接部分103とを備える。突出部分101のせい(高さH1)は大きく形成され、溶接部分103のせい(高さH2)は小さく形成され、突出部分101と溶接部分103の間には、段差部分104が形成される。上段差部分104Aでは、突出部分101の後端105と、溶接部分103の上側縁103Aとが連続し、この連続部分には、応力集中を避けるための面取りRが形成される。また、下段差部分104Bでは、突出部分101の後端106と、溶接部分103の下側縁103Bとが連続し、この連続部分には、応力集中を避けるための面取りRが形成される。
【0014】
溶接部分103においては、第二梁10の上フランジ12の内壁と、該内壁に対向する溶接部分103の上側縁103Aとの間の寸法W1(所定寸法)が、第二梁10の上フランジ12の幅Wの1/2Wの寸法とほぼ等しく設定される。
また、同様に、第二梁10の下フランジ13の内壁と、該内壁に対向する溶接部分103の下側縁103Bとの間の寸法W1が、第二梁10の下フランジ13の幅Wの1/2Wの寸法とほぼ等しく設定される。
【0015】
第二ガセットプレート15の溶接部分103は、第二梁10のウェブ14の一方の面(図中で表面)に溶接(溶接ビード14A)により接合される。
また、当該第二ガセットプレート15は、他方の面(図中で裏面)の側からも、図中で左の第二ガセットプレート15を参照し、後述の突出部分101の基部101Aが第二梁10のウェブ14の端部14Cに溶接(溶接ビード14B)されることにより接合される。なお、この構成では、溶接ビード14Bの部分を溶接しているが、この部分は、溶接しなくてもよい。
【0016】
溶接ビード14Aは、ロボット自動溶接機(不図示)により溶接される。自動溶接する際は、溶接棒120を約45°傾かせて(図4(D)参照)、溶接部分103の上側縁103Aを溶接し、さらに、面取りRの周囲から鉛直部107に至るまで連続して溶接する。また同様にして、溶接部分103の下側縁103Bを溶接し、さらに、面取りRの周囲から鉛直部108に至るまで連続して溶接する。
本実施の形態では、溶接部分103のせいH2が突出部分101のせいH1よりも小さく形成されるため、自動溶接し易いスペースを確保でき、第二梁10のせい(高さH3)が小さい場合であっても、溶接棒120を約45°傾かせて、溶接する部位に容易に進入でき、自動溶接が可能となる。
【0017】
また、突出部分101のせいH1を大きく形成できるため、十分な構造強度を確保できる。溶接部分103の上下側縁103A、103Bのほぼ全長に亘って、溶接することが可能となるため、溶接長さL2を十分に確保でき、ガセットプレート15を長くすることなく、十分な構造強度を確保できる。
上段差部分104A及び下段差部分104Bでは、上下側縁103A、103Bから、面取りRの周囲、鉛直部107、108に至るまで連続して溶接するため、プレート弱点となる面取りRの周辺の構造強度を向上できる。
【0018】
第一ガセットプレート5の高さHは、上下フランジ2、3の内法の寸法H1よりも小さくされる。第二ガセットプレート15の他方の面の溶接ビード14Bを逃がした状態で、第一梁1に第二梁10を接合できる。
また、第一梁1と第二梁10の間には隙間L1が設けられる。これにより梁と梁が重なる部位の干渉を防止できる。
【0019】
図中で右の第二梁10の第二ガセットプレート15の突出部分101は、第一梁1の上下フランジ2、3の間で、第一ガセットプレート5に対し、図中で手前側から面合わせされ、2本のボルト17、ナット18で留められる。2本のボルト17、ナット18は締結材を構成する。
本構成によれば、ボルト17に高力ボルトではなく、普通ボルトが使用される。ここで高力ボルトは、ボルトで締め付けることによって、第一ガセットプレート5と第二ガセットプレート15の接触面に摩擦力を生じさせて接合するのに対し、普通ボルトは、ボルト17と、第一ガセットプレート5及び第二ガセットプレート15のボルト孔壁と、の接触面で固定する。
図中で左の第二梁10の第二ガセットプレート15は、第一梁1の上下フランジ2、3の間で、第一ガセットプレート5に対し、図中で裏側から面合わせされ、2本のボルト17、ナット18で留められる。2本のボルト17は、第一梁1の上下フランジ2、3間方向に一列に配列される。
【0020】
図4(A)~図4(D)は、第一ガセットプレート5又は第二ガセットプレート15を示す図である。第一ガセットプレート5と第二ガセットプレート15には、2本のボルト17が貫通するボルト孔(孔)117がそれぞれ設けられる。
本実施の形態では、ボルト孔117及びボルト17の径の差δが、1mmよりも小さく設定され、より好ましくは0.1mm~0.5mmに設定される。図4の例では、12mmのボルト17に対し、ボルト孔117の径が12.2mmに設定されており、径の差δは、0.2mmである。2つのボルト孔117の間には、図4(A)~図4(C)に示すように、上下フランジ2、3間方向に一列に配列される、2つのシノ孔118、119が設けられる。
【0021】
溶接ビード14Aを自動溶接する際、位置決めロボット(不図示)で、第二ガセットプレート15を、第二梁10のウェブ14の所定位置に位置を合わせて、上記ロボット自動溶接機(不図示)により溶接する。位置決めロボット(不図示)は、シノ(不図示)を保持し、シノをシノ孔118、119に挿入することで、第二ガセットプレート15を保持し、第二梁10のウェブ14の所定位置に位置を合わせる。
【0022】
本実施の形態では、第一ガセットプレート5と第二ガセットプレート15とをボルト17で締結する際、該シノ孔118、119が利用される。
【0023】
第一ガセットプレート5と、第二ガセットプレート15と、をボルト17で締結する際には、2つのボルト孔117のうち、まず一方のボルト孔117をボルト17で締結する。ついで、他方のボルト孔117を締結する。
この際には、シノを準備し、シノを何れかのシノ孔118、119に挿入し、他方のボルト孔117の上下または左右のずれが解消するまで、シノを上下または左右にこじって第二梁10をわずかにずらす。
このようにすれば、第一ガセットプレート5のボルト孔117の位置と、第二ガセットプレート15のボルト孔117の位置とが一致するため、ボルト17の挿入が容易になり、連結の作業性が向上する。また、上述したように、径の差δが0.2mmと小さく設定されていても、シノを上下または左右にこじってずらすことにより、ボルト17をボルト孔117に簡単に挿入することができる。この場合、下のシノ孔118にシノを挿入して、こじってずらせば、シノ孔118でずらした寸法以上にボルト孔117を上下左右ずらすことができ、連結がさらに容易になる。シノ孔118、119の径はボルト孔117の径よりも小さく形成されているため、作業者の視認によるシノ孔118、119とボルト孔117との区別は容易である。
【0024】
本実施の形態では、上述したように、ボルト17に普通ボルトを使用した場合でも、径の差δが0.2mmと小さく設定されているため、ボルト17と、第一ガセットプレート5及び第二ガセットプレート15の各ボルト孔壁と、の間のずれ量が少なく、各ガセットプレート5、15間の位置ずれが抑えられる。
【0025】
図1に示すように、第一梁1同士は、水平ブレース130により連結される。この場合、本構成では、ブレースシートが省略されて、図4(A)に示すように、第一梁1の下フランジ3に、ブレース固定部131が固定され、水平ブレース130は、このブレース固定部131に取付けられる。水平ブレース130が取付けられるとき、水平ブレース130の緊張により、水平方向への応力が第一梁1へ負荷される。
本構成では、梁接合部に普通ボルト17が使用され、かつブレースシートが省略されているため、水平方向への応力が負荷される場合、第一梁1が、2つのボルト孔117の中心を軸にして回転し、第一ガセットプレート5及び第二ガセットプレート15の接合が、ボルト孔117のクリアランスの分だけずれることがある。
本実施の形態では、ボルト孔117の径が小さく設定されるため、水平ブレース130の緊張時に生じる第一梁1のずれを抑制できる。
【0026】
本実施の形態では、シノ孔118、119を利用することで、ボルト孔117の位置合わせが可能となるため、図4の例で示したように、ボルト17とボルト孔117の径の差δを、0.2mmと小さく設定できる。通常は、ボルト孔117の上下のずれを考慮し、径の差δは1.0mm程度と大きく設定するが、本実施の形態では、径の差δを通常と比較して小さく設定できるため、第二梁10の緊張時のボルト17のすべりによる、第二梁10の傾斜を小さくできる。
【0027】
本実施の形態では、第一梁1のフランジの側縁より突出する突起物がなく、工場内で自動溶接ラインを利用して第一ガセットプレート5を接合することが可能となる。また、溶接個所の単純化による生産性・施工性の向上が図れ、H形鋼の現場までの搬送効率を向上でき、物流積載効果が得られる。
また、H形鋼の梁せいが小さい場合であっても、第二ガセットプレート15を長くすることなく、構造強度を確保できる。
【0028】
本実施の形態では、第一、第二ガセットプレート5、15を第一梁1の上下フランジの間でボルト17により接合する際の作業性が向上する。また、第二梁10のウェブに第二ガセットプレート15を堅固に接合できる。更に、第一梁1の上下フランジの間で第一、第二ガセットプレート5、15を面合わせして、ボルト17により接合する際、面合わせが容易となる。
【0029】
図5(A)~図5(C)は、別の実施の形態を示す。
上記実施の形態では、ボルト17とボルト孔117の径の差δを0.2mmと小さく設定したが、別の実施の形態では、該径の差δを通常の1.0mmとし、その代わりに、図5(B)に示すように、第二ガセットプレート15のボルト孔127は、第一ガセットプレート5のボルト孔128よりも僅かに上位に設けられる。
【0030】
図5(B)及び図5(C)では、上記径の差δが通常の1.0mmであり、図5(C)では、第二ガセットプレート15のボルト孔127は、第一ガセットプレート5のボルト孔128とほぼ同じ高さに設けられる。
図5(B)に示す対策を取らない場合、図5(C)に示すように、水平ブレース130の緊張により第一梁1へ水平方向に応力がかかり、第一ガセットプレート5と第二ガセットプレート15の間で、1.0mm分だけ水平方向へのずれが生じる。これに対し、図5(B)では、ボルト孔127とボルト孔128は上下方向にずれているため、ボルト17は、1.0mmのクリアランス以上にボルト孔127及びボルト孔128に内面に接近している。そのため、水平ブレース130が緊張し、第一梁1に水平方向の応力がかかったときに生じる第一梁1のずれを抑制できる。
【0031】
図6は、図1中で下方のT字接合部52の拡大図である。T字接合部52は、第一梁1に対し第二梁10が直交して接続される。図7は、L字接合部53の拡大図である。L字接合部53も同様に、第一梁1に対し第二梁10が直交して接続される。
図6のT字接合部52、及び図7のL字接合部53の接合構造は、図3と同一であるため、図3と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
本鉄骨造建物は、十字接合部51、T字接合部52、及びL字接合部53の各箇所で同一構造を備える。本接合構造に用いるH型鋼の第一梁1、第二梁10、第一ガセットプレート5、第二ガセットプレート15は、同じ形態、同じ寸法である。部品点数が低減され、部品管理が容易であり、ボルト数が低減され、省力化となる。
【0033】
本実施の形態では、本鉄骨造建物の梁に使用されるそれぞれの第一梁1は、上下フランジ2、3の間にフランジ側縁2A、3Aより側方に突出させないように第一ガセットプレート5が接合される。
そのため工場内では既設の自動溶接ライン(不図示)を利用して、第一梁1のウェブの側面をコンベア(不図示)に対し対向させた状態でコンベア搬送しながら、第一梁1に第一ガセットプレート5を溶接することができるので、溶接個所の単純化による生産性・施工性の向上が図れる。
第一ガセットプレート5が第一梁1のフランジ側縁2A、3Aより側方に張り出さないため、嵩張らず、工場から現場までの搬送効率が向上し、物流積載効果が得られる。
また、例えば住宅用鉄骨躯体(梁部材)の生産においては、溶接個所が低減され、ボルト数が削減され、環境負荷が低減される。
【0034】
第二ガセットプレート15は第二梁10の端部から突出する。
ただし、突出する方向が自動溶接ライン(不図示)の搬送方向と一致するために、コンベア搬送の支障とはならない。したがって、自動溶接ライン(不図示)を利用し、第二ガセットプレート15の溶接が可能となる。
【0035】
梁・梁接合部54は、図7に示すように、2つの第一梁1、1の端部同士をボルト接合する。
図中左の第一梁1のウェブ4の面4Aに、図3同様に、第二ガセットプレート15が接合される。第二ガセットプレート15は図中右の第一梁1のウェブ4の面4Bに面合わせされる。ウェブ4の面4Bにはボルト孔(不図示)が設けられる。
図中で左の第一梁1の第二ガセットプレート15は、図中で右の第一梁1のウェブ4の面4Bにボルト17、ナット18で留められる。
【0036】
2つの第一梁1、1の端部同士のボルト接合は、本鉄骨造建物の複数の箇所において同一の構造とされる。なお、図示は省略したが、2つの第二梁10、10の端部同士をボルト接合する場合も、同じ構造とされる。
本実施の形態では、自動溶接ライン(不図示)のロボット溶接機を利用して、第二ガセットプレート15の溶接が可能となる。
【0037】
本鉄骨造建物では、図1に示すように、第一梁1、第二梁10に対し1階の鉄骨柱55と2階の鉄骨柱56とが接合される。鉄骨柱55、56は中空状の角形鋼管である。
【0038】
以上説明したように、梁接合構造は、H形鋼の梁を用いる梁接合構造において、第一梁1の上下フランジ2、3の間に第一ガセットプレート5が設けられ、第二梁10のウェブ14に第一ガセットプレート5の側に突出させて第二ガセットプレート15が設けられ、第一ガセットプレート5と前記第二ガセットプレート15とがボルト17及びナット18(締結材)により接合され、第二ガセットプレート15は、第二梁10のウェブ1に溶接される溶接部分103と、第一ガセットプレート5の側に突出する突出部分101と、溶接部分103と突出部分101の間に段差部分104とを備え、突出部分101のせいH1は溶接部分103のせいH2よりも大きく形成され、段差部分104はウェブ14に溶接される。
これによれば、溶接個所が低減され、自動搬送・自動溶接(検査)がし易くなり、環境負荷の低減、また積載効率化によるCO2削減が図れ、ボルト数の削減による省力化が図れる。また、第一梁1(H形鋼)の上下フランジ2、3の間に第一ガセットプレートを接合するため、第一梁1のフランジ側縁2A、3Aより突出する突起物がなく、自動溶接ラインを利用して第一ガセットプレート5を溶接でき、溶接個所の単純化による生産性・施工性の向上が図れ、第一梁1の現場までの搬送効率を向上でき、物流積載効果が得られる。更に、第二梁10(H形鋼)の梁せいが小さい場合であっても、第二ガセットプレート5を長くすることなく、構造強度を確保できる。
また、第二ガセットプレート15の段差部分104が、第二梁10のウェブ14の領域にあり、さらに該段差部分104を溶接することで、溶接箇所の長さを大きくできる。また、第一梁1との接合部分である突出部分101のせいH1を、溶接部分のせいH2に関わらず大きく保てる。
【0039】
また、梁接合構造は、第二梁10の上下フランジ12、13の内壁と、内壁に対向する第二ガセットプレート15の溶接部分103の側縁との寸法W1が、第二梁10の上下フランジ2、3の幅Wの1/2の寸法とほぼ等しく設定されてもよい。
これによれば、第二ガセットプレート15の自動溶接がし易くなる。
【0040】
また、梁接合構造は、第一ガセットプレート5及び第二ガセットプレート15にシノ孔118、119が形成されてもよい。
これによれば、第一ガセットプレート5及び第二ガセットプレート15の溶接がし易くなり、かつ、第一梁1と第二梁10の面合わせがし易くなる。
【0041】
また、梁接合構造は、第一ガセットプレート5及び第二ガセットプレート15にボルト17が挿入されるボルト孔117(孔)が形成され、ボルト孔117及びボルト17の径の差δが0.1~0.5mmに設定されてもよい。
これによれば、第一梁1に応力がかかったときの、第一梁1のずれを抑制できる。
【0042】
また、梁接合構造は、第一ガセットプレート5は略長方形の板であり、第一ガセットプレート5の長辺が延びる方向は第一梁1の長さ方向と直交し、第一ガセットプレート5の短辺が延びる方向は第一梁1の幅方向と一致し、第一ガセットプレート5は第一梁1の上下フランジ2、3の間に接合されてもよい。
これによれば、第一、第二ガセットプレート5、15を第一梁1の上下フランジ2、3の間でボルト17及びナット18により接合する際の作業性が向上する。
【0043】
また、梁接合構造は、第二ガセットプレート15の突出部分101の基部101Aはウェブ14の端部14Cに溶接されてもよい。
これによれば、第二梁10のウェブ14に第二ガセットプレート15を堅固に接合できる。
【0044】
また、梁接合構造は、第一ガセットプレート5はフランジ側縁2A、3Aより所定寸法L内方に接合されてもよい。
これによれば、第一梁1の上下フランジ2、3の間で第一、第二ガセットプレート5、15を面合わせしてボルト17及びナット18により接合する際、面合わせが容易となる。
【0045】
また、鉄骨建造物は、H形鋼の梁を用いる鉄骨造建物において、第一梁1、第二梁10を接合する十字接合部、T字接合部、及びL字接合部を備え、第一梁1、第二梁10(H形鋼)に接合される鉄骨柱56を備え、該接合部は本開示に記載の梁接合構造を備える。
これによれば、溶接個所の単純化による生産性・施工性の向上が図れ、第一梁1、第二梁10の現場までの搬送効率を向上でき、物流積載効果が得られる。
【符号の説明】
【0046】
1 第一梁(H形鋼)
2 上フランジ
3 下フランジ
4 ウェブ
5 第一ガセットプレート
10 第二梁(H形鋼)
12 上フランジ
13 下フランジ
14 ウェブ
14B 端部
15 第二ガセットプレート
17 ボルト(締結材)
55、56 鉄骨柱
101 突出部分
103 溶接部分
104 段差部分
118、119 シノ孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7