(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110082
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】X線診断装置、X線診断装置の制御方法、及びX線診断装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240807BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 350A
A61B6/00 333
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014438
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 隼人
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒駿
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA24
4C093CA01
4C093EA07
4C093EA12
4C093FA12
4C093FA15
4C093FA16
4C093FA22
4C093FA32
4C093FA36
4C093FF13
4C093FF28
4C093FG19
(57)【要約】
【課題】X線検出器の検出領域内に設定されたX線照射領域において、所望の高品質データを取得すること。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、X線管と、X線検出器と、X線可動絞りと、照射領域設定部と、部分領域設定部と、収集部と、を備える。X線管は、X線を発生する。X線検出器は、X線をX線検出領域において検出する。X線可動絞りは、X線検出領域より狭い照射領域に照射されるように、X線管で発生されたX線の照射範囲を限定する。照射領域設定部は、X線可動絞りを制御することで、照射領域をX線検出領域内に設定する。部分領域設定部は、X線検出領域内で、設定された照射領域を含み、かつ、照射領域よりも広い領域となるように部分領域を設定する。収集部は、X線の照射で検出される画像データを収集する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線をX線検出領域において検出するX線検出器と、
前記X線検出領域より狭い照射領域に照射されるように、前記X線管で発生された前記X線の照射範囲を限定するX線可動絞りと、
前記X線可動絞りを制御することで、前記照射領域を前記X線検出領域内に設定する照射領域設定部と、
前記X線検出領域内で、前記設定された前記照射領域を含み、かつ、前記照射領域よりも広い領域となるように部分領域を設定する部分領域設定部と、
前記X線の照射で検出される画像データを収集する収集部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
ディスプレイと、
前記照射領域の画像データに基づく画像を生成し、所定の画像サイズに拡大して前記画像を前記ディスプレイに表示する画像生成部をさらに備える、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記部分領域は、
前記部分領域以外の前記X線検出領域よりも品質の高い高品質データの読み出しが可能な領域である、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記高品質データの種類を規定する撮像モードを取得する撮像モード取得部をさらに備え、
前記部分領域設定部は、前記撮像モード取得部で取得した前記撮像モードに基づき、前記部分領域を設定し、
前記収集部は、前記部分領域から前記高品質データを読み出す、
請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記収集部は、前記X線検出器で定められるデータ処理容量に応じた品質で前記部分領域から前記高品質データを読み出す、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記高品質データの種類は、(a)前記部分領域以外の前記X線検出領域のデータよりも解像度の高いデータである高解像度データ、(b)前記部分領域以外の前記X線検出領域のデータよりもデータレートの高いデータである高速データ、(c)前記部分領域以外の前記X線検出領域のデータよりもダイナミックレンジの広いデータである広ダイナミックレンジデータ、及び(d)エネルギー弁別データの少なくとも一つを含む、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記撮像モード取得部は、
検査目的に応じてあらかじめ記憶回路に記憶された前記撮像モードを自動的に取得する、
請求項6に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記部分領域の設定を受け付ける部分領域の設定ボタンをさらに備え、
前記部分領域の設定ボタンは、前記X線検出領域を、縦と横の夫々の寸法に2分割、または、4分割する矩形の領域を設定するボタンを含む、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記部分領域設定部は、
被検体の検査目的に応じて前記部分領域の形状およびサイズを決定する、
請求項4記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記部分領域の形状は、(a)縦と横の寸法が前記X線検出領域の縦と横の夫々の寸法よりも小さい矩形形状、(b)縦の寸法が前記X線検出領域の縦の寸法と同じであり、横の寸法が前記X線検出領域の横の寸法よりも小さい縦長形状、または、(c)横の寸法が前記X線検出領域の横の寸法と同じであり、縦の寸法が前記X線検出領域の縦の寸法よりも小さい横長形状、のいずれかである、
請求項9に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記照射領域設定部は、前記照射領域をユーザの指示に基づいて移動可能に設定し、
前記部分領域設定部は、前記照射領域設定部で移動された後の移動後の照射領域が、前記部分領域内に含まれるか否かを判定し、
前記移動後の照射領域が前記部分領域内に含まれないと判定された場合に、前記X線検出領域内で、前記移動後の照射領域を含み、かつ、前記移動後の照射領域よりも広い領域となるように部分領域を再設定し、
前記移動後の照射領域が前記部分領域内に含まれると判定された場合に、前記部分領域を変更しない、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項12】
被検体を載置する天板と、
前記天板の移動、及び、前記X線管と前記X線検出器とで構成される映像系の移動を制御する駆動制御部と、
前記天板の長手方向である第1の方向と、前記第1の方向に直交する第2の方向の2方向に傾動自在に支持される共通操作レバーと、
をさらに備え、
前記駆動制御部は、前記共通操作レバーの前記第1の方向の傾動操作に応じて、前記天板を移動させることなく、前記映像系を前記第1の方向に移動させ、
前記照射領域設定部は、前記共通操作レバーの、前記第2の方向の傾動操作に応じて、前記天板、及び、前記映像系を移動させることなく、前記照射領域を前記第2の方向に移動させる、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項13】
被検体を載置する天板と、
前記天板の移動、及び、前記X線管と前記X線検出器とで構成される映像系の移動を制御する駆動制御部と、
をさらに備え、
前記駆動制御部は、前記照射領域が移動されたとき、前記照射領域の移動量が相殺されるように、前記天板、及び、前記映像系の少なくとも一方を移動させ、
前記照射領域設定部は、前記天板、及び、前記映像系の少なくとも一方が移動されたとき、当該移動量が相殺されるように、前記照射領域を移動させ、
前記部分領域設定部は、移動後の前記照射領域に対して前記部分領域を設定する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項14】
前記照射領域は、前記照射領域が前記X線検出領域の略中央となるように移動される、
請求項13に記載のX線診断装置。
【請求項15】
前記天板、及び、前記映像系の少なくとも一方を移動させる前に、その旨の情報をユーザに提示する提示部をさらに備える、
請求項13に記載のX線診断装置。
【請求項16】
前記提示部は、プロジェクションマッピング、カメラ画像への重畳表示、エリア表示、又は、音声により、前記その旨の情報、前記天板、及び、前記映像系の少なくとも一方を移動させる駆動情報の少なくとも一つを提示する、
請求項15に記載のX線診断装置。
【請求項17】
X線検出領域より狭い照射領域に照射されるように、X線管で発生されたX線の照射範囲をX線可動絞りで限定するステップと、
前記X線可動絞りを制御することで、前記照射領域を前記X線検出領域内に設定するステップと、
前記X線検出領域内で、前記設定された前記照射領域を含み、かつ、前記照射領域よりも広い領域となるように部分領域を設定するステップと、
前記X線の照射で検出される画像データを収集するステップと、
を備えるX線診断装置の制御方法。
【請求項18】
コンピュータに
X線検出領域より狭い照射領域に照射されるように、X線管で発生されたX線の照射範囲をX線可動絞りで限定するステップと、
前記X線可動絞りを制御することで、前記照射領域を前記X線検出領域内に設定するステップと、
前記X線検出領域内で、前記設定された前記照射領域を含み、かつ、前記照射領域よりも広い領域となるように部分領域を設定するステップと、
前記X線の照射で検出される画像データを収集するステップと、
を実行させるためのX線診断装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置、X線診断装置の制御方法、及びX線診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置には、天板と映像系(X線管とX線検出器を含む)とのいずれの機械的な動作も行うことなく、X線可動絞りの絞り羽根の制御によって、X線検出器の検出範囲内に収まる任意の位置に視野(すなわち、X線照射領域)の設定を可能とする技術がある。そのような技術によれば天板と映像系とのいずれも動作させずに視野を移動させることができるため、例えば、内視鏡併用検査でスコープが体内に入っている状況や、椎体穿刺等カテーテルによる手技等の、透視撮影中において、機械的な動作に伴う細かな振動等なく被検体の診断部位(又は、治療部位)の観察が可能になり、被検体の負担が軽減され、術者の安全な手技がサポートされる。
【0003】
この種のX線診断装置を利用した場合に、X線検出器の検出範囲内の任意のX線照射領域において、例えば、高品質(高解像、高速、高ダイナミックレンジ等)データを取得する等、被検体の診断部位のより詳細な観察に特化したX線透視撮影が望まれる場合がある。さらに、この種のX線診断装置を利用した場合に、X線検出器のデータ処理容量等X線診断装置の構成によっては、X線検出器の検出範囲内の特定の領域に移動された移動後のX線照射領域において、所望の高品質データを継続的に取得するために、高品質データ取得の停止、通常のX線透視撮影画像への切り替え、天板と映像系との少なくとも一方の動作、高品質データ取得の再開等、操作が煩雑となる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、X線検出器の検出領域内に設定されたX線照射領域において、所望の高品質データを取得することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態のX線診断装置は、X線管と、X線検出器と、X線可動絞りと、照射領域設定部と、部分領域設定部と、収集部と、を備える。X線管は、X線を発生する。X線検出器は、X線をX線検出領域において検出する。X線可動絞りは、X線検出領域より狭い照射領域に照射されるように、X線管で発生されたX線の照射範囲を限定する。照射領域設定部は、X線可動絞りを制御することで、照射領域をX線検出領域内の位置に設定する。部分領域設定部は、X線検出領域内で、設定された照射領域を含み、かつ、照射領域よりも広い領域となるように部分領域を設定する。収集部は、X線の照射で検出される画像データを収集する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示す概略図。
【
図2】第1の実施形態に係るX線検出領域、照射領域、及び、部分領域についての説明図。
【
図3】第1の実施形態に係る第1操作レバー、及び、第2操作レバーの動作例についての説明図。
【
図4】第1の実施形態に係るX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
【
図5】第1の実施形態に係るX線検出領域、照射領域、及び、部分領域の第一例の説明図。
【
図6】第1の実施形態に係るX線検出領域、照射領域、及び、部分領域の第二例の説明図。
【
図7】第1の実施形態に係るX線検出領域、照射領域、及び、部分領域の第三例の説明図。
【
図8】第1の実施形態に係るX線検出領域、照射領域、及び、部分領域の第四例の説明図。
【
図9】第2の実施形態に係るX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
【
図10】第2の実施形態に係る照射領域の移動に伴う部分領域の再設定についての説明図。
【
図11】第3の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示す概略図。
【
図12】第3の実施形態に係る共通操作レバーの動作例についての説明図。
【
図13】第4の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示す概略図。
【
図14】第4の実施形態に係るX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
【
図15】第4の実施形態に係るワンタッチボタンの動作例についての説明図。
【
図16】第4の実施形態に係る部分領域の設定についての説明図。
【
図17】第5の実施形態に係る駆動情報の提示方法の第一例についての説明図。
【
図18】第5の実施形態に係る駆動情報の提示方法の第二例についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置、X線診断装置制御方法、及び制御プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成例を示す概略図である。
図1は、臥位の被検体PをX線撮影するX線診断装置1の一例である。尚、X線診断装置1は、一般撮影装置やX線回診装置、X線アンギオ装置、X線TV装置等を含む。また、X線診断装置1は、例えば、消化管造影検査等で用いられるX線透視診断装置、血管造影検査等で用いられる循環器用X線透視診断装置等でもよい。
【0010】
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、撮影装置10、及び、画像処理装置の一例としてのコンソール20を有する。撮影装置10は、X線照射装置12、X線検出器13、サポートフレーム14、被検体Pを載置する天板15を有する寝台16、コントローラ17を備えている。
【0011】
X線照射装置12は、X線管31とX線可動絞り32とを有する。X線管31は、X線高電圧装置30からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管である。X線管31によって発生されたX線は、被検体Pに照射される。
【0012】
X線高電圧装置30は、変圧器、及び、整流器等の電気回路から構成され、X線管31に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管31が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とから構成される。
【0013】
X線可動絞り32は、X線検出範囲より狭い領域に照射されるように、X線管31で発生されたX線の照射範囲を限定する。X線可動絞り32がX線の照射範囲を限定することによって、ユーザが所望する被検体Pの撮影部位(又は、撮影範囲)にだけX線を照射することができる。即ち、X線可動絞り32は、撮影部位とは異なる部位(又は、範囲)に対して、不要な被曝をさせないようにすることができる。また、X線可動絞り32は、散乱X線の低減、及び、焦点外X線の除去ができる。
【0014】
X線可動絞り32は、鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってX線が通過する開口を形成する。例えば、X線可動絞り32は複数の絞り羽根を有し、コントローラ17を介して、X線可動絞り制御機構41によって、各対の絞り羽根が開閉することでX線管31から照射されるX線の照射範囲を調整する。
【0015】
図1に示すように、X線の照射方向の中心軸をZ軸とする。また、Z軸に垂直であって、天板15の長手方向の軸をY軸とし、Z軸とY軸とに垂直な軸をX軸とする。X線可動絞り32は、例えば、X軸方向に広がるX線を絞る一対の絞り羽根と、Y軸方向に広がるX線を絞る一対の絞り羽根とを有する。尚、X線可動絞り制御機構41は、X線可動絞り32の絞り羽根を各方向について非対称に制御してもよいし、各対の絞り羽根を対称に制御してもよい。例えば、X線可動絞り制御機構41は、全ての絞り羽根がそれぞれ独立して動くように制御する機構であってもよいし、二つの対になった絞り羽根が、それぞれ左右対称、上下対称に動くように制御する機構であってもよい。また、X線可動絞り32は、上述した絞り羽根をZ軸方向に複数設けることによって多層構造にしてもよい。
【0016】
本実施形態に係るX線可動絞り32は、X線照射装置12を移動させることなく、絞り羽根を動かすだけで、X線が通過する開口の形状、及び、位置を移動させることにより、X線の照射範囲の外形、サイズ、及び、位置を移動させることができる(
図3)。本明細書では、天板15と映像系とのいずれの機械的な動作も行うことなく、X線可動絞り32の絞り羽根の制御のみによって、X線検出器13の検出範囲内の任意の位置に設定されるX線の照射範囲を「視野」と呼ぶ。ここで、映像系とは、X線管31とX線検出器13とを少なくとも含む構成のことである。そして、映像系を移動させる、或いは、映像系を駆動するとは、X線管31とX線検出器13とを一体的に移動させる、或いは、X線管31とX線検出器13とを一体的に駆動することである。
【0017】
X線検出器13は、例えば、2次元に配列された複数のX線検出素子を有する平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)、及び、電気信号をディジタルデータに変換するアナログディジタル変換器(A/D変換器:Analog to Digital converter)を備える。X線検出器13は、X線管31から発生され、被検体Pに照射されて、被検体Pを透過したX線を検出し、この検出したX線に基づいて、時系列的に連続したX線画像(フレーム画像)をリアルタイムに撮影するX線透視撮影により生成した透視撮影データや、1枚のX線画像を撮影する単純X線撮影により生成した単純撮影データ等のX線画像データをコンソール20に与える。
【0018】
なお、X線検出器13は、イメージインテンシファイア、TVカメラ等を含むものであってもよいし、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する半導体素子により構成されたX線検出素子を複数有するCMOS-FPDであってもよい。
【0019】
ここで、X線検出器13におけるX線検出領域101、照射領域103、及び、部分領域102について、
図2を用いて以下に説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線検出領域101、照射領域103、及び、部分領域102についての説明図である。
図2に示すように、照射領域103は、X線可動絞り32によって限定される、X線検出領域101より狭い、X線の照射範囲のことである。ここで、X線検出領域101は、X線検出器13のX線を検出可能な検出面の全領域である。部分領域102は、X線検出領域101内に設定される領域であり、部分領域102以外のX線検出領域101よりも品質の高い高品質データの読み出しが可能な領域である。
【0020】
部分領域102で読み出される高品質データの種類としては、例えば、部分領域102以外のX線検出領域101のデータよりも解像度の高いデータである高解像度データ、部分領域102以外のX線検出領域101のデータよりもデータレートの高いデータである高速データ、部分領域102以外のX線検出領域101のデータよりもダイナミックレンジの広いデータである広ダイナミックレンジデータ、エネルギー弁別データ等を挙げることができる。
【0021】
また、X線検出器13のデータ処理容量等の制約に応じて、高品質データの種類を満たしながら、部分領域102で読みだされるX線検出のデータ量を調整してもよい。具体的には、撮像素子上の複数の画素を一つの画素とみなすビニング処理の有無、一つの画像に使用されるピクセルの総数である画素数、1ピクセルあたりに割り当てられるデータ量であるビット深度、1秒間の動画が何枚の画像で構成されているかを示すフレームレート(FPS)を用いて、画像データ容量=(ビニング、又は非ビニング)×画素数×ビット深度×フレームレートと表される。
【0022】
X線検出器13のデータ処理容量(転送速度およびサイズを含む)により、部分領域102の読み出しに利用できる最大のデータ処理容量が定まる場合には、最大のデータ処理容量内に収まり、かつ、所望の高品質データの画像が取得されるように、X線検出の読み出しの品質(データ量)を調整してもよい。例えば、X線検出器13のデータ処理容量を最大限まで利用すれば、最大のデータ処理容量内に収まる範囲内で可能な限り高い品質のデータを取得できる。また、例えば、X線検出器13のデータ処理容量が少ない場合であっても、ビット深度を下げる等により、高品質データを取得できる。
【0023】
図1に戻り、サポートフレーム14は、互いに対向配置されたX線管31、及び、X線可動絞り32から構成されるX線照射装置12とX線検出器13とを移動可能に支持する。具体的には、サポートフレーム14は、天板15の面に対して上方にX線照射装置12が設置されるオーバーチューブ方式のフレームに相当する。尚、サポートフレーム14は、天板15の面に対して下方にX線照射装置12が設置されるアンダーチューブ方式のフレームが用いられてもよい。サポートフレーム14は、Cアーム等による構造が用いられてもよい。
【0024】
さらに、サポートフレーム14の有無に限らず、X線照射装置12、及び、X線検出器13で構成される映像系が共に連動し、同じ移動量で駆動されればよく、X線照射装置12、及び、X線検出器13をそれぞれ独立に支持する2つのアーム(例えば、ロボットアーム等)による構造が用いられていてもよい。
また、サポートフレーム14は、コントローラ17を介して、映像系駆動制御機構42によって、スライド(X、Y軸方向)動をさせることができる。
【0025】
寝台16は、床面に支持され、被検体Pが載置される天板15(臥位テーブルとも言う)を有する。天板15には、被検体Pが載置される。被検体Pは、X線撮影において、X線照射装置12とX線検出器13との間に、配置される。天板15は、コントローラ17を介して、寝台駆動制御機構43によって、スライド(X、Y軸方向)動、上下(Z軸方向)動、及び、ローリングをさせることができる。
【0026】
コントローラ17は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、及び、メモリを少なくとも有し、コンソール20の処理回路24に制御されて撮影装置10の各コンポーネントを統括制御する。
【0027】
一方、画像処理装置の一例としてのコンソール20は、通信インターフェース21、ディスプレイ22、記憶回路23、処理回路24、入力インターフェース25を有する。なお、コンソール20は独立して設けられずともよく、記憶回路23、及び、処理回路24の機能を撮影装置10のコントローラ17の記憶回路、及び、プロセッサがそれぞれ担ってもよい。また、以下の説明ではコンソール20が単一のコンソールにて全ての機能を実行するものとして以下説明するが、これらの機能は複数のコンソールが実行してもよい。
【0028】
コンソール20の入力インターフェース25は、ユーザによって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、例えば、操作卓26、ジョイスティック、トラックボールマウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパネル、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。
【0029】
第1の実施形態に係るX線診断装置1のコンソール20は、入力インターフェース25として、第1操作レバー251、及び、第2操作レバー252を有している。
図3は、第1の実施形態に係る第1操作レバー251、及び、第2操作レバー252の動作例についての説明図である。第1操作レバー251、及び、第2操作レバー252は、例えば、コンソール20の操作卓26に設けられる。
図3(a)に示すように、第1操作レバー251は、例えば、天板15の長手方向に対応する第1の方向と、第1の方向に直交する第2の方向の2方向に傾動自在に支持され、その傾動動作の組み合わせにより、天板15、及び、映像系の駆動を制御するレバーである。
【0030】
例えば、ユーザは、第1操作レバー251を第1の方向に沿って傾動させることにより、映像系を天板15の長手方向に沿って移動させることで照射領域103を天板15の長手方向に沿って移動させることができる。また、ユーザは、第1操作レバー251を第2の方向に沿って傾動させることにより、天板15を天板15の短手方向に沿って移動させることで照射領域103を天板15の短手方向に沿って移動させることができる。
【0031】
また、
図3(b)に示すように、第2操作レバー252は、例えば、天板15の長手方向に対応する第1の方向と、第1の方向に直交する第2の方向の2方向に傾動自在に支持される。第2操作レバー252は、第1の方向に沿った傾動操作と、第2の方向に沿った傾動操作の組み合わせにより、天板15と映像系とのいずれも移動させない照射領域103の移動を制御するレバーである。具体的には、ユーザは、第2操作レバー252を操作することにより、天板15と映像系とのいずれも移動させることなく、絞り羽根が駆動されることで照射領域103を移動させることができる。
【0032】
さらに、操作卓26には、例えば、撮影部位、照射領域103の設定、部分領域102の設定、撮像モード等をユーザが押下選択できる各種ボタンが備えられていてもよい。撮像モードは、部分領域102から高解像度データを読み出す高解像度モード、部分領域102から高速データを読み出す高速モード、部分領域102から広ダイナミックレンジデータを読み出す広ダイナミックレンジモード、部分領域102からエネルギー弁別データを読み出すエネルギー弁別モード等を含む。撮像モードボタンは、撮像モードごとのボタンであり、例えば、高解像度モードボタン、高速モードボタン、広ダイナミックレンジモードボタン、エネルギー弁別モードボタン等を含むとよい。また、部分領域102の設定を受け付ける部分領域102の設定ボタンは、X線検出領域101を、縦と横の夫々の寸法に2分割、または、4分割する矩形の領域を設定するボタンを含むとよい。
【0033】
再び
図1に戻り、通信インターフェース21は、有線、又は、無線で、ネットワークに接続された通信を行うためのインターフェースである。例えば、ネットワークと記憶回路23等との間で各種データのやり取りを行うことができる。
【0034】
ディスプレイ22は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成され、処理回路24の制御に従って生成されたX線透視撮影画像、単純X線撮影画像のX線画像等を表示する。
【0035】
ディスプレイ22は、ディスプレイの全面を、表示ウィンドウとしてもよいし、ディスプレイの一部を表示ウィンドウとしてもよいし、その両方を切り替えられるようにしてもよい。また、ディスプレイ22は、X線画像と後述する参照画像とを並べて表示ウィンドウに表示させてもよい。尚、ディスプレイ22は、撮像モード、駆動可否の確認等、各種入力に関する画面を更に表示してもよい。
【0036】
記憶回路23は、コントローラ17の制御、及び、画像生成処理等を行なうための各種プログラム、診断情報、診断プロトコル、入力インターフェース25から送られてくるユーザの指示、X線撮影に関する撮影条件、及び、X線透視撮影に関する透視撮影条件等の各種データ群、駆動情報等の各種データ、参照画像等の画像データ等を記憶する。記憶回路23は、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は、半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記録媒体内のプログラム、及び、データの一部、又は、全部は通信インターフェース21を介してネットワークからダウンロードされるように構成してもよい。
【0037】
処理回路24は、専用、又は、汎用のプロセッサを有し、記憶回路23に記憶させるプログラムを実行することによるソフトウェア処理によって、後述する各種の機能を実現する。また、処理回路24は、コントローラ17を介して撮影装置10の各コンポーネントを統括制御する。処理回路24は、ASIC(Application Specific Integration Circuit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブル論理デバイス等のハードウェアを備えて構成されてもよい。これらのデバイスを用いたハードウェア処理によっても、後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路24は、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組みわせて、後述する各種の機能を実現してもよい。
【0038】
処理回路24は、
図1に示すように、撮像モード取得機能241、照射領域設定機能242、部分領域設定機能243、収集機能244、及び、画像生成機能245の各機能を実現する。撮像モード取得機能241は、高品質データの種類を規定する撮像モードを取得する。照射領域設定機能242は、X線可動絞り32を制御することで、照射領域103をX線検出領域101内の任意の位置に設定する。部分領域設定機能243は、X線検出領域101内で、任意の位置に設定された照射領域103を含み、かつ、任意の位置に設定された照射領域103よりも広い領域となるように部分領域102を設定する。画像生成機能245は、照射領域103の画像データに基づく画像を生成し、所定の画像サイズに拡大して当該画像をディスプレイ22に表示する。
【0039】
処理回路24の上記各機能の構成、及び、動作について、
図4のフローチャート、及び、
図5乃至
図8を用いて、説明する。始めに、寝台16の天板15の上に被検体Pが載置される。X線診断装置1は、ユーザの操作により、予め設定された検査種別、検査名等に基づいて、X線透視撮影条件が設定され、X線検出領域101のX線透視撮影が開始され、ディスプレイ22上にX線検出領域101のX線画像が表示される。ディスプレイ22上に表示されたX線検出領域101のX線画像は、記憶回路23に記憶され、本実施形態のステップST10以降の処理において、例えば、照射領域103の設定等の参照画像として用られる。
【0040】
ステップST10において、撮像モード取得機能241は、部分領域102で読み出される高品質データの種類を規定する撮像モード(高解像度モード、高速モード、広ダイナミックレンジモード、エネルギー弁別モード等のうちのいずれか1つ)を取得する。撮像モード取得機能241は、入力インターフェース25を通じてユーザに指定された撮像モードを取得してもよい。また、撮像モード取得機能241は、被検体Pの診断部位、検査内容、検査目的、診断プロトコル等に応じて予め記憶回路23に記憶された撮像モードを自動的に取得してもよい。また、撮像モード取得機能241は、操作卓26上の撮像モードボタンのユーザによる押下選択に基づいて撮像モードを取得してもよい。
【0041】
ステップST20において、照射領域設定機能242は、照射領域103をX線検出領域101内の任意の位置に設定する。ステップST20で設定された照射領域103は、後述するステップST40で、X線可動絞り32の制御によりX線を照射される領域となる。
【0042】
ステップST20の照射領域103は、例えば、入力インターフェース25を通じてユーザにより設定される。照射領域103の形状、サイズ、および位置は、ユーザにより例えば被検体Pの撮影部位(又は、撮影範囲)に応じて設定される。また、照射領域103は、ディスプレイ22上に表示された参照画像を参照したユーザにより設定されてもよい。また、照射領域103は、検査内容、検査目的、診断プロトコル等に応じて予め記憶回路23に記憶された領域が自動的に設定されてもよい。
【0043】
ステップST30において、部分領域設定機能243は、X線検出領域101内で、任意の位置に設定された照射領域103を含み、かつ、任意の位置に設定された照射領域103よりも広い領域となるように部分領域102を設定する。
【0044】
部分領域102には、撮像モード取得機能241が取得した撮像モードが設定される。ステップST30で設定された部分領域102は、後述するステップST50で、X線検出において高品質データを読み出す領域となる。
【0045】
部分領域102の形状、サイズ、および位置は、例えば被検体Pの撮影部位(又は、撮影範囲)に応じて、入力インターフェース25を通じてユーザにより照射領域103よりも広い領域となるように設定されてもよい。部分領域102の設定は、ディスプレイ22上に表示された参照画像に基づいて行われてもよい。また、部分領域102の形状、サイズ、および位置は、操作卓26上の部分領域102の設定ボタンのユーザによる押下選択で指定されてもよい。また、部分領域102は、検査内容、検査目的、診断プロトコル、X線検出器13のデータ処理容量等の制約条件等に応じて予め記憶回路23に記憶された領域が自動的に設定されてもよい。また、部分領域設定機能243は、X線検出器13のデータ処理容量等の制約に応じて、高品質データの種類を満たしながら、部分領域102で読み出されるX線検出のデータ量を調整してもよい。
【0046】
図5は、矩形形状の照射領域103がX線検出領域101内の端部に位置し、照射領域103を内包しX線検出領域101内の端部に位置する部分領域102の縦と横の寸法が、X線検出領域101の縦と横の夫々の寸法よりも小さい矩形形状であり、また、撮像モードが高解像度モードである場合を示している。照射領域103を内包するように部分領域102を設定することにより、絞り羽根の制御のみで照射領域103を部分領域102内で移動させる場合、天板15、及び、映像系を動かすことなく、高解像度モードに設定された部分領域102内の任意の位置で照射領域103の高解像撮影が可能になる。
【0047】
図6は、矩形形状の照射領域103a、103bがX線検出領域101内の中央部に位置し、照射領域103a、103bを含みX線検出領域101内の中央部に位置する部分領域102の形状が、その横の寸法がX線検出領域101の横の寸法と同じであり、その縦の寸法がX線検出領域101の縦の寸法よりも小さい横長形状であり、また、撮像モードが高解像度モードである場合を示している。
【0048】
部分領域102の形状は、検査目的や検査内容、治療目的等に応じて設定してもよい。例えば、血管等の横に長い部位を透視する場合は、部分領域設定機能243は、
図6に示すように横に長い部分領域102を設定するとよい。この場合、照射領域103を部分領域102内で横方向に移動させながら透視することで、横に長い部位の高解像データ収集が可能になる。
【0049】
図7は、矩形形状の照射領域103がX線検出領域101内の中央部に位置し、照射領域103を含み、X線検出領域101内の中央部に位置する部分領域102の形状が、その縦の寸法がX線検出領域101の縦の寸法と同じであり、その横の寸法がX線検出領域101の横の寸法よりも小さい縦長形状であり、撮像モードが高速モードである場合を示している。このような部分領域102の設定によれば、例えば、嚥下/食道造影検査等において縦に長い部位を透視する場合であっても、縦に長い部位の高速データ収集が可能になる。
【0050】
図8は、矩形形状の照射領域103がX線検出領域101内の端部に位置し、照射領域103を含みX線検出領域101内の端部に位置する部分領域102a、102bの形状が、それぞれ、その縦と横の寸法がX線検出領域101の縦と横の夫々の寸法よりも小さい縦長形状、横長形状であり、撮像モードが高解像度モードである場合を示している。
【0051】
図8に示すように、横に長い診断部位を透視する場合は、横に長い部分領域102bを設定し、照射領域103を部分領域102内で横方向に移動させながら透視することで、横に長い部位の高解像データ収集が可能になる。また、縦に長い診断部位を透視する場合は、縦に長い部分領域102aを設定し、照射領域103を部分領域102内で縦方向に移動させながら透視することで、縦に長い部位の高解像データ収集が可能になる。
【0052】
例えば、診断部位を内包するように、縦に長い部分領域102aや横に長い部分領域102bを部分領域102として設定することにより、照射領域103は、天板15、及び、映像系を動かすことなく、絞り羽根の制御のみで部分領域102内での移動が可能になり、高解像度モードに設定された部分領域102内の任意の位置で照射領域103の高解像撮影が可能になる。
【0053】
図5乃至
図8に示すように、本実施形態の撮像モードと部分領域102の設定により、部分領域102において他の領域よりも臨床上有用な高品質データのX線画像撮影が可能になる。なお、撮像モードと部分領域102は、
図5乃至
図8の各例に限らず、検査内容、検査目的等に応じて任意に設定できる。
【0054】
ステップST40において、照射領域設定機能242は、X線管31から被検体Pに照射されるX線が、X線可動絞り32の絞り羽根の駆動により、天板15と映像系とのいずれも移動させることなく、設定された照射領域103に照射されるように、コントローラ17を介してX線可動絞り制御機構41を制御する。
【0055】
ステップST50において、収集機能244は、X線の照射で検出されるX線画像データを収集する。収集機能244は、照射領域103を含む部分領域102全体から、部分領域102以外のX線検出領域101よりも品質の高い高品質データを読み出す。また、収集機能244が読み出す高品質データは、X線検出器で定められるデータ処理容量に応じた品質でもよい。なお、収集機能244は、照射領域103のみから高品質データを読み出してもよい。
【0056】
ステップST60において、画像生成機能245は、照射領域103の画像データに基づく画像を生成し、当該画像をディスプレイ22に表示する。画像生成機能245は、例えば、X線の照射領域103の画像を、X線検出領域101に対して設定された照射領域103の外形を示す枠線とともにX線検出領域101のX線画像(参照画像)に重畳して表示してもよい。また、照射領域103の画像は、所定の画像サイズに拡大してディスプレイ22に表示してもよい。また、これらの拡大表示と参照画像への重畳表示を組み合わせてもよい。
【0057】
以上の手順により、撮像モードと部分領域102の設定により、臨床上有用な高品質データのX線画像撮影を行うことができる。
【0058】
第1実施形態に係るX線診断装置1によれば、部分領域102以外のX線検出領域101よりも品質の高い高品質データの読み出しが可能である部分領域102が照射領域103よりも大きく設定されることにより、照射領域103を部分領域102の内部に位置させることができ、照射領域103に含まれる診断部位における所望の高品質データを取得することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係るX線診断装置1の動作例を示すフローチャートである。
図9に示すように、第2の実施形態では、ステップST60において照射領域103の画像を表示した後に照射領域103を移動可能とする点で第1実施形態と異なる。他の構成および作用については
図1に示すX線診断装置1と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。また、
図7と同等のステップには同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
ステップST70において、照射領域設定機能242は、一連の手順を終了するか否かを判定する。終了すべき旨の指示をユーザから入力インターフェース25を介して受け付けた場合は、一連の手順は終了となる。一方、終了しない場合はステップST80に進む。
【0061】
ステップST80において、照射領域設定機能242は、照射領域103をユーザの指示に基づいて移動可能に設定する。ここで、「移動可能に設定する」とは、照射領域103をステップST20で設定された照射領域103とは異なる位置に移動させる(再設定する)ことを意味する。
【0062】
ステップST80の移動後の照射領域103は、例えば、入力インターフェース25を通じてユーザにより設定される。照射領域103の形状、サイズ、および位置は、ユーザにより例えば被検体Pの撮影部位(又は、撮影範囲)に応じて設定される。また、照射領域103は、ディスプレイ22上に表示された参照画像を参照したユーザにより設定されてもよい。
【0063】
ステップST90において、部分領域設定機能243は、移動後の照射領域103が、部分領域102内に含まれるか否かを判定する。そして、部分領域設定機能243は、移動後の照射領域103が部分領域102内に共通操作レバーに、X線検出領域101内で、移動後の照射領域103を含み、かつ、移動後の照射領域103よりも広い領域となるように部分領域102を再設定する。
【0064】
図10は、第2の実施形態に係る照射領域103の移動に伴う部分領域102の再設定についての説明図である。
図10(a)に示すように、移動前には部分領域102内に含まれていた照射領域103が、
図10(b)に示すように、X線検出領域101内で、部分領域102内に含まれない位置に移動するよう再設定された場合(ステップST90のNO)、
図10(c)に示すように、移動後の照射領域103を含み、かつ、移動後の照射領域103よりも広い領域となるように部分領域102を再設定するため、ステップST30に進む。
【0065】
一方、移動後の照射領域103が部分領域102内に含まれると判定された場合には、部分領域102を変更しなくともよい(ステップST90のYES)。この場合はステップST40に進み、移動後の照射領域103にX線が照射される。
【0066】
以上の手順によれば、移動後の照射領域103が部分領域102内に含まれないと判定された場合には、X線検出領域内で、移動後の照射領域を含み、かつ、移動後の照射領域よりも広い領域となるように部分領域を再設定することができる。また、移動後の照射領域103が部分領域102内に含まれると判定された場合には、部分領域を変更しないことにより、例えば、部分領域の再設定の回数を抑えながら、照射領域が部分領域内に含まれる状態を保つことができる。
【0067】
また、絞り羽根の制御と映像系の移動の組み合わせによって再設定後の照射領域103に移動が可能な場合は、天板15を動かすことなく、すなわち被検体Pを動かすこと無く、照射領域103を移動させつつ診断部位における所望の高品質データを継続的に取得することができる。また、照射領域103の当該移動が絞り羽根の制御のみで可能である場合は、天板15および映像系を動かすことなく、照射領域103を移動させつつ絞り羽根の制御のみで診断部位における所望の高品質データを継続的に取得することができる。
【0068】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係るX線診断装置1の構成例を示す概略図である。
図11に示すように、第3の実施形態は、処理回路24が駆動制御機能246をさらに実現し、入力インターフェース25の入力デバイスである操作卓26に共通操作レバー254をさらに備える点で第2の実施形態と異なる。他の構成および作用については
図1に示すX線診断装置1と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
駆動制御機能246は、コントローラ17を介して、寝台駆動制御機構43による天板15の移動と、映像系駆動制御機構42による、X線管31とX線検出器13とで構成される映像系の移動と、を制御する。
【0069】
図12は、第3の実施形態に係る共通操作レバー254の動作例についての説明図である。共通操作レバー254は、天板15の長手方向に対応する第1の方向と、第1の方向に直交する第2の方向の2方向に傾動自在に支持され、その両操作の傾動動作の組み合わせにより、天板15を移動させることなく、映像系と視野との移動のみで照射領域103の移動を制御するレバーである。
【0070】
図12(a)には、共通操作レバー254の第1の方向への傾動操作には映像系の駆動指示が割り当てられ、第2方向への傾動操作には絞り羽根の駆動による開口移動指示が割り当てられる場合の例を示した。この場合、駆動制御機能246は、共通操作レバー254の第1の方向の傾動操作に応じて、天板15を移動することなく、映像系を第1の方向に移動する。また、照射領域設定機能242は、共通操作レバー254の第2の方向の傾動操作に応じて、天板15、及び、映像系を移動することなく、X線可動絞り32の絞り羽根の制御のみによって、天板15の短手方向に沿って移動した照射領域103を設定する。
【0071】
例えば、
図12(a)に示すように、ユーザは、共通操作レバー254を第1の方向に沿って傾動させることにより、X線可動絞り32を含む映像系ごと天板15の長手方向に沿って移動させることで、照射領域103を天板15の長手方向に沿って移動させることができる。また、ユーザは、共通操作レバー254を第2の方向に沿って傾動させることにより、天板15を移動させることなく、X線可動絞り32の絞り羽根の制御のみによって、照射領域103を天板15の短手方向に沿って移動させることができる。
【0072】
また、
図12(b)に示すように、共通操作レバー254の第1の方向への傾動操作に対し、天板15の長手方向に沿った照射領域103の移動が部分領域102内に収まるときは絞り羽根の駆動による開口移動指示が割り当てられてもよい。この場合、共通操作レバー254の第1の方向の傾動操作に応じて、照射領域設定機能242が、部分領域102内での移動については、天板15、及び、映像系を移動することなく、X線可動絞り32の絞り羽根の制御のみによって照射領域103を第1の方向に移動させる。一方、駆動制御機能246は、部分領域102を超える移動については、天板15を移動することなく、照射領域103が部分領域102内に収まるように映像系を第1の方向に移動させる。
【0073】
ユーザは、共通操作レバー254を操作することにより、天板15を移動させずに、X線検出領域101内で照射領域103を移動する操作を1本の操作レバーででき、X線検出領域101内における照射領域103の移動が簡便にできる。
【0074】
また、共通操作レバー254を用いて、X線の照射領域103の移動を開始する場合には、1本の共通操作レバー254の操作で映像系と視野との少なくとも一方の移動のみによる照射領域103の移動の制御が行われる特殊制御モードである旨をユーザに提示してもよい。また、特殊制御モードでの制御を開始する前に、ユーザにその旨の提示をし、例えばOKやNGなどの制御開始可否の選択ボタンをディスプレイ22に表示し、ユーザによる選択ボタンの押下に応じて特殊制御開始可の許可を得てもよい。また、特殊制御モード中には、特殊制御モード中であることを、例えば、コンソール20のディスプレイ22上にアイコンで表示する等により、ユーザに明示してもよい。
【0075】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態に係るX線診断装置1の構成例を示す概略図である。
図13に示すように、第4の実施形態は、処理回路24に、提示機能247をさらに実現する点で第3実施形態と異なる。他の構成および作用については
図11に示すX線診断装置1と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。第4の実施形態では、照射領域103の設定後に、部分領域102の設定を行う前に、天板15、及び、映像系の少なくとも一方を移動する。また、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の移動の前に、被検体Pやユーザにその移動に関する駆動情報が提示され、移動の許可を仰いでもよい。
【0076】
処理回路24の提示機能247の構成、及び、動作とステップST25乃至ステップST27について
図14のフローチャートを用いて説明する。また、
図9と同等のステップには同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図14に示すように、第4の実施形態では、ステップST20において照射領域103の設定をした後に、ステップST25が開始される。
【0077】
ステップST25において、提示機能247は、天板15、及び、映像系の少なくとも一方を移動させる前に、その旨の情報をユーザに提示する。
【0078】
提示機能247が提示するその旨の情報は、天板15、及び、映像系の少なくとも一方が移動する旨の情報の他に、例えば、天板15、及び、映像系の移動方向や移動量や、照射領域103、部分領域102、及び、X線検出領域101の移動に関する情報等を有していてもよい。例えば、天板15の駆動に伴い被検体Pが動く場合等では、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の駆動を行う前に、その旨の情報をユーザや被検体Pに事前に提示することで、被検体Pの許可を仰ぐことができ、さらにユーザや被検体Pの安全性が確保できる。また、ユーザや被検体Pに提示する方法は、例えば、音声出力回路やディスプレイ等を介した方法が挙げられる。音声出力回路等によるその旨の情報の提示により、ユーザは移動に関する駆動情報が事前に容易に認識できるようになる。
【0079】
ステップST26において、駆動制御機能246は、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の駆動に関する情報の提示に対して、天板15、及び、映像系の少なくとも一方を駆動するか否かの判断をする。
【0080】
駆動制御機能246は、具体的には、被検体Pの許可を得た後や被検体Pの安全が確認された後の入力インターフェース25を介したユーザの入力等によって、天板15および映像系の少なくとも一方を駆動するか否かを判断する。ユーザの入力は、例えば、ワンタッチボタン等でされてもよい。
図15は、ワンタッチボタンの動作例についての説明図である。
図15に示すように、例えば、設定された照射領域103に対して、部分領域102が移動するために映像系の駆動が必要とされる場合に、移動に関する駆動情報が提示される。提示された駆動情報に対してユーザが、例えばOKやNGなどの駆動開始可否の選択ボタンで駆動の可否を選択でき、OK(すなわち、駆動可)を選択すると、ステップST27の処理に進む。一方、ユーザから駆動不可の旨の指示を受けた場合は一連の手順は終了となる。
【0081】
ステップST27において、駆動制御機能246は、ステップST26で駆動すると判定した場合に、移動に関する駆動情報に基づいて天板15、及び、映像系の少なくとも一方の駆動を制御する。
【0082】
図16は、第4の実施形態に係る部分領域102の設定についての説明図である。
図16(a)から
図16(c)は、被検体P(天板15)に対する照射領域103の位置は移動させずに、X線検出領域101に対する照射領域103の相対的な位置を移動させる場合の例を示している。被検体P(天板15)に対する照射領域103の位置を維持しつつX線検出領域101に対する照射領域103の相対的な位置を移動させるために、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の駆動が制御される(
図16(b)、(c)参照)。そして、
図16(d)に示すように、移動後の照射領域103を内包するように部分領域102が設定される。
【0083】
すなわち、ユーザ操作等によって照射領域103が移動されたとき、駆動制御機能246は、照射領域103の移動量が相殺されるように、天板15、及び、映像系の少なくとも一方を、照射領域103の移動方向と逆方向に、照射領域103の移動量と同じ移動量だけ移動させる駆動制御を行う。そして、部分領域設定機能243が、照射領域設定機能242により設定された移動後の照射領域103に対して部分領域102を設定する。
或いは逆に、ユーザ操作等によって天板15、及び、映像系の少なくとも一方が移動されたとき、照射領域設定機能242は、当該移動量が相殺されるように、当該移動と逆方向に、当該移動量と同じ移動量だけ照射領域103を移動させる。そして、部分領域設定機能243が、照射領域設定機能242により設定された移動後の照射領域103に対して部分領域102を設定する。
【0084】
第4の実施形態に係るX線診断装置1によれば、被検体P(天板15)に対する照射領域103の位置を移動させること無く、X線検出領域101に対する照射領域103の位置を移動することができる。このため、例えば
図16(d)に示すようにX線検出領域101の中央を含む位置に照射領域103移動することで、X線可動絞り32の絞り羽根の制御のみによって照射領域103である視野の移動が可能な範囲を広く確保することが可能となる。第4の実施形態は、カテーテルによるインターベンション等の手技の前に、手技開始後に天板15、及び、映像系の少なくとも一方の駆動が抑えられるようなX線検出領域101、部分領域102、及び、照射領域103等の設定を可能にするため、臨床上有用である。
【0085】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、
図14に示すステップST25において、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の移動に関する駆動情報等をその移動前にユーザや被検体Pに提示する提示方法において第4実施形態と異なる。他の構成および作用については
図13に示すX線診断装置1と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
第5の実施形態の提示方法として、音声出力回路等の他に、プロジェクタ、カメラ51(
図13参照)、ディスプレイ22等が挙げられる。また、提示機能247は、プロジェクションマッピング、カメラ画像への重畳表示、エリア表示、又は、音声により、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の移動をする旨の情報、天板15、及び、映像系の少なくとも一方を移動させる駆動情報の少なくとも一つを提示する。
【0087】
不図示のプロジェクタは、例えば、液晶プロジェクタ、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)を用いた映像表示システム、反射型液晶素子プロジェクタ、レーザプロジェクタ等の投影可能な表示出力装置により構成される。プロジェクタは、処理回路24の制御に従って、移動に関する駆動情報等をプロジェクションマッピング投影してユーザに提示する。
【0088】
図17は、移動に関する駆動情報の提示方法の第一例であるプロジェクタによる表示についての説明図であり、
図17(a)は表示前、
図17(b)は表示時を示す。
図17に示すように、提示機能247は、プロジェクタにより、被検体Pと天板15との少なくとも一方の上に、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の移動方向や移動量(
図17(b)の矢印参照)、照射領域103や部分領域102の外形等(
図17(b)のハッチング参照)をプロジェクションマッピング投影してユーザに提示してもよい。また、
図17(b)の表示には含まれていないが、提示機能247は、プロジェクタにより、X線検出領域101等他の移動に関する駆動情報をプロジェクションマッピング投影してユーザに提示してもよい。
【0089】
カメラ51は、光学カメラ、TVカメラ等から構成され、X線検出領域101における被検体Pのカメラ画像が取得可能なように配置される。例えば、カメラ51は、X線診断装置1のX線照射装置12の近傍に被検体Pに対抗するように配置されてもよい。カメラ51は、処理回路24の制御に従って、被検体Pのカメラ画像を取得する。
【0090】
提示機能247は、カメラ51により取得されたX線検出領域101における被検体Pのカメラ画像に対し、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の移動方向、及び、移動量や、照射領域103、部分領域102、及び、X線検出領域101等の駆動情報を重畳した重畳画像を生成してディスプレイ22上に表示して、ユーザに提示してもよい。
【0091】
また、
図18は、移動に関する駆動情報の提示方法の第二例であるエリア表示についての説明図である。
図18に示すように、提示機能247は、駆動情報に基づいて駆動させた後の映像系の位置のエリア表示を、予めユーザにディスプレイ22上への表示等で提示してもよい。また、提示機能247は、映像系の移動方向、及び、移動量を、映像系が移動する様子を示す動画で提示してもよい。
【0092】
プロジェクションマッピング、駆動情報のカメラ画像への重畳表示、エリア表示等により、ユーザは駆動情報が容易に視認できるようになり、天板15、及び、映像系の少なくとも一方の移動の操作が簡便になる。
【0093】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線検出器の検出領域内に設定されたX線照射領域において、所望の高品質データを取得することができる。
【0094】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、例えば、専用、又は、汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。或いは、また、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0095】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0096】
なお、各実施形態における、撮像モード取得機能241、照射領域設定機能242、部分領域設定機能243、収集機能244、画像生成機能245、駆動制御機能246、及び、提示機能247は、それぞれ特許請求の範囲における、撮像モード取得部、照射領域設定部、部分領域設定部、収集部、画像生成部、駆動制御部、及び、提示部の一例である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1 X線診断装置
12 X線照射装置
13 X線検出器
15 天板
22 ディスプレイ
31 X線管
32 X線可動絞り
51 カメラ
101 X線検出領域
102 部分領域
103 照射領域
241 撮像モード取得機能
242 照射領域設定機能
243 部分領域設定機能
244 収集機能
245 画像生成機能
246 駆動制御機能
247 提示機能
254 共通操作レバー