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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110095
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】光源装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240807BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240807BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240807BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20240807BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20240807BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240807BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240807BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21S2/00 311
F21S2/00 375
F21V29/502 100
F21V29/70
F21V9/32
F21S2/00 340
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014454
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】座光寺 誠
(72)【発明者】
【氏名】河村 俊哉
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA62
2K203GA35
2K203HA27
2K203HB22
2K203LA02
2K203LA12
2K203LA36
2K203MA12
(57)【要約】
【課題】所望の強度を有する第2光が安定して得られる光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の光源装置は、第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、蛍光体を含み、発光素子から射出される第1光を、第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、波長変換部材を支持する支持部材と、を備える。波長変換部材は、波長変換部材の長手方向である第1方向において互いに反対側に位置する第1面および第2面と、第1方向に垂直な仮想面内における第2方向において互いに反対側に位置する第3面および第4面と、を有する。第2光は、第1面から射出される。発光素子は、第3面に対向して設けられる。支持部材は、第4面に対向する対向面を有する。第4面は、熱伝導性部材を介して対向面と熱的に接続される接続領域と、空気層を介して対向面から離間する非接続領域と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、
蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記波長変換部材の長手方向である第1方向において互いに反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1方向に垂直な仮想面内における第2方向において互いに反対側に位置する第3面および第4面と、を有し、
前記第2光は、前記第1面から射出され、
前記発光素子は、前記第3面に対向して設けられ、
前記支持部材は、前記第4面に対向する対向面を有し、
前記第4面は、熱伝導性部材を介して前記対向面と熱的に接続される接続領域と、空気層を介して前記対向面から離間する非接続領域と、を有する、
光源装置。
【請求項2】
前記接続領域と前記非接続領域とは、前記第1方向に沿って並んでいる、
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記波長変換部材を前記第3面から前記支持部材の前記対向面に向けて押圧する押圧部材をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記第3面の前記接続領域に対向する位置を押圧する、
請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記熱伝導性部材は、グリスである、
請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記熱伝導性部材は、接着剤である、
請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項7】
前記接続領域の少なくとも一部において前記第4面と前記熱伝導性部材との間に介在し、前記第1光および前記第2光を反射する第1反射膜をさらに備え、
前記非接続領域の少なくとも一部において前記第4面と前記空気層との間には前記第1反射膜を備えていない、
請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項8】
前記対向面のうち、前記接続領域に対応する領域に、前記非接続領域に対応する領域に対して前記第4面の側に向けて突出する凸部が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項9】
前記対向面のうち、前記非接続領域に対応する領域を含む少なくとも一部に設けられ、前記第1光を反射する第2反射膜をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、
を備える、
プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いる光源装置として、発光素子から射出された励起光を蛍光体に照射した際に蛍光体から発せられる蛍光を利用した光源装置が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、励起光を射出する励起光源と、励起光を蛍光に変換するロッド状の蛍光体と、蛍光体を支持するホルダーと、を備える光源装置が開示されている。蛍光体は、ばね部材によってホルダーに押圧されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/254455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光源装置において、ホルダーは、蛍光体で発生する熱を外部に放出し、蛍光体の温度上昇を抑制する放熱部材として機能する。そのため、蛍光体は、ホルダーに確実に密着していることが望ましい。ところが、蛍光体およびホルダーの表面は完全な平滑面ではないため、蛍光体をホルダーに押圧しただけでは、表面の凹凸や反りの状況によって蛍光体とホルダーとの接触状態が変化し、蛍光体の温度が不安定になる場合がある。その結果、蛍光体の波長変換効率がばらつき、所望の強度を有する蛍光が安定して得られないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の光源装置は、第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材を支持する支持部材と、を備える。前記波長変換部材は、前記波長変換部材の長手方向である第1方向において互いに反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1方向に垂直な仮想面内における第2方向において互いに反対側に位置する第3面および第4面と、を有する。前記第2光は、前記第1面から射出される。前記発光素子は、前記第3面に対向して設けられる。前記支持部材は、前記第4面に対向する対向面を有する。前記第4面は、熱伝導性部材を介して前記対向面と熱的に接続される接続領域と、空気層を介して前記対向面から離間する非接続領域と、を有する。
【0007】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置からの前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図2】第1実施形態の第1照明装置の概略構成図である。
図3】第1実施形態の光源装置の斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿う光源装置の断面図である。
図5図3のV-V線に沿う光源装置の断面図である。
図6】第2実施形態の光源装置の断面図である。
図7】第3実施形態の光源装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1図5を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光変調装置として液晶パネルを用いたプロジェクターの一例である。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0010】
図1は、本実施形態のプロジェクター1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーン(被投写面)SCR上にカラー画像を表示する投写型画像表示装置である。プロジェクター1は、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの各色光に対応した3つの光変調装置を備える。
【0011】
プロジェクター1は、第1照明装置20と、第2照明装置21と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、光合成素子5と、投写光学装置6と、を備える。
【0012】
第1照明装置20は、黄色の蛍光Yを色分離光学系3に向けて射出する。第2照明装置21は、青色光LBを光変調装置4Bに向けて射出する。第1照明装置20および第2照明装置21の詳細な構成については後述する。
【0013】
以下、図面においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明する。Z軸は、プロジェクター1の上下方向に沿う軸である。X軸は、第1照明装置20の光軸AX1および第2照明装置21の光軸AX2と平行な軸であり、プロジェクター1の前後方向に沿う軸である。Y軸は、X軸およびZ軸に直交する軸であり、プロジェクター1の左右方向に沿う軸である。これらの表記は、プロジェクター1の各構成部材の配置関係を説明するためのものであり、プロジェクター1の設置姿勢や方向を限定するものではない。第1照明装置20の光軸AX1は、第1照明装置20から射出される蛍光Yの中心軸である。第2照明装置21の光軸AX2は、第2照明装置21から射出される青色光LBの中心軸である。
【0014】
色分離光学系3は、第1照明装置20から射出される黄色の蛍光Yを赤色光LRと緑色光LGとに分離する。色分離光学系3は、ダイクロイックミラー7と、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、を備える。
【0015】
ダイクロイックミラー7は、蛍光Yを赤色光LRと緑色光LGとに分離する。ダイクロイックミラー7は、赤色光LRを透過するとともに、緑色光LGを反射する。第2反射ミラー8bは、緑色光LGの光路中に配置されている。第2反射ミラー8bは、ダイクロイックミラー7で反射した緑色光LGを光変調装置4Gに向けて反射する。第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置されている。第1反射ミラー8aは、ダイクロイックミラー7を透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。
【0016】
一方、第2照明装置21から射出される青色光LBは、反射ミラー9によって光変調装置4Bに向けて反射される。
【0017】
以下、第2照明装置21の構成について説明する。
第2照明装置21は、光源部81と、集光レンズ82と、拡散板83と、ロッドレンズ86と、リレーレンズ87と、を備える。光源部81は、少なくとも一つの半導体レーザーで構成されている。光源部81は、レーザー光からなる青色光LBを射出する。なお、光源部81は、半導体レーザーに限らず、青色光を発光するLEDで構成されていてもよい。
【0018】
集光レンズ82は、凸レンズから構成されている。集光レンズ82は、光源部81から射出される青色光LBを略集光した状態で拡散板83に入射させる。拡散板83は、集光レンズ82から射出される青色光LBを所定の拡散度で拡散させ、第1照明装置20から射出される蛍光Yと同様の略均一な配光分布を有する青色光LBを生成する。拡散板83としては、例えば、光学ガラスからなる磨りガラスが用いられる。
【0019】
拡散板83で拡散された青色光LBは、ロッドレンズ86に入射する。ロッドレンズ86は、第2照明装置21の光軸AX2方向に沿って延びる角柱状の形状を有する。ロッドレンズ86は、光入射端面86aと、光入射端面86aとは反対側に位置する光射出端面86bと、を有する。拡散板83は、ロッドレンズ86の光入射端面86aに光学接着剤(図示略)を介して固定されている。拡散板83の屈折率とロッドレンズ86の屈折率とは、できるだけ一致させることが望ましい。
【0020】
青色光LBは、ロッドレンズ86の内部を全反射しつつ伝播することで照度分布の均一性が高められた状態で光射出端面86bから射出される。ロッドレンズ86から射出された青色光LBは、リレーレンズ87に入射する。リレーレンズ87は、ロッドレンズ86によって照度分布の均一性が高められた青色光LBを反射ミラー9に入射させる。
【0021】
ロッドレンズ86の光射出端面86bの形状は、光変調装置4Bの画像形成領域の形状と略相似形の矩形状である。これにより、ロッドレンズ86から射出された青色光LBは、光変調装置4Bの画像形成領域に効率良く入射する。
【0022】
光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0023】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれには、例えば透過型の液晶パネルが用いられる。また、液晶パネルの入射側および射出側には、偏光板(図示略)がそれぞれ配置されている。偏光板は、特定の方向の直線偏光を通過させる。
【0024】
光変調装置4Rの入射側には、フィールドレンズ10Rが配置されている。光変調装置4Gの入射側には、フィールドレンズ10Gが配置されている。光変調装置4Bの入射側には、フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10Rは、光変調装置4Rに入射する赤色光LRの主光線を平行化する。フィールドレンズ10Gは、光変調装置4Gに入射する緑色光LGの主光線を平行化する。フィールドレンズ10Bは、光変調装置4Bに入射する青色光LBの主光線を平行化する。
【0025】
光合成素子5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bから射出された画像光が入射することにより、赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投写光学装置6に向けて射出する。光合成素子5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられる。
【0026】
投写光学装置6は、複数の投写レンズから構成されている。投写光学装置6は、光合成素子5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投写する。これにより、スクリーンSCR上に画像が表示される。
【0027】
以下、第1照明装置20の構成について説明する。
図2は、第1照明装置20の概略構成を示す模式図である。
図2に示すように、第1照明装置20は、光源装置30と、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳光学系33と、を備える。
【0028】
図3は、光源装置30の斜視図であり、一部の部材を分解した状態を示している。
図2および図3に示すように、光源装置30は、波長変換部材50と、光源部51と、角度変換部材52と、ミラー53と、支持部材54と、押圧部材65と、熱伝導性部材67(図4および図5参照)と、第1反射膜68(図4および図5参照)と、を備える。光源部51は、基板55と、発光素子56と、を備える。
【0029】
波長変換部材50は、X軸方向に延在する四角柱状の形状を有し、6つの面を有する。波長変換部材50のX軸方向に延在する辺は、Y軸方向に延在する辺およびZ軸方向に延在する辺よりも長い。すなわち、X軸方向は、波長変換部材50の長手方向に対応する。Y軸方向に延在する辺の長さとZ軸方向に延在する辺の長さとは等しい。換言すると、X軸方向に垂直な面で切断した波長変換部材50の断面形状は、正方形である。なお、X軸方向に垂直な面で切断した波長変換部材50の断面形状は、長方形であってもよい。
【0030】
波長変換部材50は、第1面50aおよび第2面50bと、第3面50cおよび第4面50dと、第5面50eおよび第6面50fと、を有する。第1面50aおよび第2面50bは、波長変換部材50の長手方向(X軸方向)に交差し、互いに反対側に位置する。第3面50cおよび第4面50dは、第1面50aおよび第2面50bと交差し、長手方向に垂直な仮想面内におけるY軸方向において互いに反対側に位置する。第5面50eおよび第6面50fは、第3面50cおよび第4面50dと交差し、長手方向に垂直な仮想面内におけるZ軸方向において互いに反対側に位置する。以下の説明で、第3面50c、第4面50d、第5面50e、および第6面50fをまとめて側面と称することがある。本実施形態のX軸方向は、特許請求の範囲の第1方向に対応する。本実施形態のY軸方向は、特許請求の範囲の第2方向に対応する。
【0031】
波長変換部材50は、蛍光体を含み、第1波長帯を有する励起光Eを、第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する蛍光Yに変換する。励起光Eは、第3面50cから波長変換部材50に入射する。蛍光Yは、波長変換部材50の内部を導光した後、第1面50aから射出される。本実施形態の励起光Eは、特許請求の範囲の第1光に対応する。本実施形態の蛍光Yは、特許請求の範囲の第2光に対応する。
【0032】
波長変換部材50は、励起光Eを蛍光Yに波長変換する多結晶蛍光体からなるセラミック蛍光体を含んでいる。蛍光Yが有する第2波長帯は、例えば490~750nmの黄色の波長帯である。すなわち、蛍光Yは、赤色光成分および緑色光成分を含む黄色の蛍光である。
【0033】
波長変換部材50は、多結晶蛍光体に代えて、単結晶蛍光体を含んでいてもよい。もしくは、波長変換部材50は、蛍光ガラスから構成されていてもよい。もしくは、波長変換部材50は、ガラスまたは樹脂からなるバインダー中に多数の蛍光体粒子が分散された材料から構成されていてもよい。このような材料からなる波長変換部材50は、励起光Eを第2波長帯を有する蛍光Yに変換する。
【0034】
具体的には、波長変換部材50の材料は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてのセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例に挙げると、波長変換部材50の材料として、Y、Al、CeO等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法、ゾルゲル法等の湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法、火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法により得られるYAG粒子等が用いられる。
【0035】
光源部51は、第1波長帯の励起光Eを射出する発光素子56を備える。発光素子56は、例えば発光ダイオード(LED)から構成されている。発光素子56は、波長変換部材50の第3面50cに対向して設けられている。発光素子56は、第3面50cに向けて励起光Eを射出する。第1波長帯は、例えば400nm~480nmの青色から紫色にかけての波長帯であり、ピーク波長は例えば445nmである。このように、光源部51は、波長変換部材50の長手方向に沿う4つの側面のうち、1つの側面に対向して設けられている。
【0036】
基板55は、発光素子56を支持する。本実施形態の場合、光源部51は、発光素子56と基板55とから構成されているが、その他、導光板、拡散板、レンズ等の他の光学部材を備えていてもよい。本実施形態では、複数の発光素子56が用いられているが、発光素子56の個数は特に限定されない。
【0037】
支持部材54は、波長変換部材50の第4面50d、第5面50e、および第6面50fを囲むように設けられている。支持部材54は、波長変換部材50を支持し、波長変換部材50で発生する熱を拡散して外部空間に放出する。そのため、支持部材54は、所定の強度を有し、熱伝導率が高い材料で構成されることが望ましい。支持部材54の材料として、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属が用いられ、特に6061系等のアルミニウム合金が用いられることが望ましい。
【0038】
図4は、図3のIV-IV線に沿う光源装置30の断面図である。
図3に示すように、支持部材54は、波長変換部材50の長手方向(X軸方向)に延在し、波長変換部材50を収容する溝部54hを有する。図4に示すように、支持部材54は、溝部54hを有することにより、X軸方向に垂直な断面がU字状の形状を有する。溝部54hは、対向面54sと、第1壁面54aと、第2壁面54bと、を有する。
【0039】
対向面54sは、溝部54hの底面に対応し、波長変換部材50の第4面50dに対向する。第1壁面54aは、溝部54hの一方の側面に対応し、波長変換部材50の第5面50eに対向し、第5面50eから離間する。第2壁面54bは、溝部54hの他方の側面に対応し、波長変換部材50の第6面50fに対向し、第6面50fから離間する。すなわち、第1壁面54aと波長変換部材50の第5面50eとの間に間隙が設けられている。第2壁面54bと波長変換部材50の第6面50fとの間に間隙が設けられている。
【0040】
第1壁面54aは、第3面50c側に位置している第1部分54a1と、対向面54s側に位置している第2部分54a2と、を有する。第1部分54a1は対向面54sに対して垂直な方向、すなわち、XY平面に対して平行に延在している。第2部分54a2は、第1部分54a1側から対向面54s側に向かうにつれて第5面50eに近づくように傾斜する。換言すると、対向面54s側における第2部分54a2と第5面50eとの間の距離は、第1部分54a1側における第2部分54a2と第5面50eとの間の距離よりも小さい。
【0041】
第2壁面54bは、第3面50c側に位置している第3部分54b3と、対向面54s側に位置している第4部分54b4と、を有する。第3部分54b3は対向面54sに対して垂直な方向、すなわち、XY平面に対して平行に延在している。第4部分54b4は、第3部分54b3側から対向面54s側に向かうにつれて第6面50fに近づくように傾斜している。換言すると、対向面54s側における第4部分54b4と第6面50fとの間の距離は、第3部分54b3側における第4部分54b4と第6面50fとの間の距離よりも小さい。
【0042】
対向面54s、第1壁面54aおよび第2壁面54bのそれぞれは、支持部材54の構成材料であるアルミニウム、ステンレス等の金属の表面から構成されている。より具体的には、対向面54s、第1壁面54aおよび第2壁面54bのそれぞれは、上記の金属表面に鏡面加工が施された加工面から構成されている。そのため、対向面54s、第1壁面54aおよび第2壁面54bのそれぞれは、光反射性を有し、入射した励起光Eを反射する。なお、対向面54s、第1壁面54aおよび第2壁面54bのそれぞれは、アルミニウム、ステンレス等の金属の表面に形成された他の金属膜または誘電体多層膜から構成されていてもよい。
【0043】
発光素子56から射出される励起光Eの多くは、第3面50cから波長変換部材50に入射する。また、発光素子56から射出され、第1壁面54aと第5面50eとの間隙、または第2壁面54bと第6面50fとの間隙に入射する励起光E1は、第1壁面54aまたは第2壁面54bで反射し、第5面50eまたは第6面50fから波長変換部材50に入射する。本実施形態の場合、XY平面に対して傾いた第2部分54a2および第4部分54b4が設けられているため、第1壁面54aまたは第2壁面54bで反射する励起光E1が第5面50eまたは第6面50fに入射する割合を増やすことができる。
【0044】
図4に示すように、押圧部材65は、波長変換部材50の第3面50cに当接して設けられている。押圧部材65は、例えば弾性変形可能な板ばねで構成されている。図3に示すように、押圧部材65は、波長変換部材50の長手方向と直交する方向(Z軸方向)に延在して配置され、両端がねじ70によって支持部材54に固定されている。押圧部材65は、波長変換部材50を第3面50cから支持部材54の対向面54sに向けて押圧する。これにより、熱伝導性部材67を介して波長変換部材50を支持部材54に確実に密着させることができる。なお、押圧部材65は、波長変換部材50を第3面50cから支持部材54の対向面54sに向けて押圧できるものであればよく、本実施形態の構成に代えて、例えば光源部51の基板55に設けられ、波長変換部材50に向けて突出する凸部などであってもよい。
【0045】
図2に示すように、ミラー53は、波長変換部材50の第2面50bに当接して設けられている。ミラー53は、波長変換部材50の内部を導光し、第2面50bに到達した蛍光Yを反射させる。ミラー53は、例えばガラス等の基板と、基板の一面に形成された金属膜または誘電体多層膜等の反射膜と、から構成されている。本実施形態の場合、ミラー53は、波長変換部材50とは別体の部材で構成されているが、波長変換部材50の第2面50bに形成された反射膜で構成されていてもよい。
【0046】
発光素子56から射出された励起光Eが波長変換部材50に入射すると、波長変換部材50の内部に含まれる蛍光体が励起され、任意の発光点から蛍光Yが発せられる。蛍光Yは任意の発光点からあらゆる方向に向かって進むが、4つの側面50c,50d,50e,50fに向かった蛍光Yは、側面50c,50d,50e,50fの複数の個所で全反射を繰り返し、第1面50aまたは第2面50bに向かって進む。第1面50aに向かって進む蛍光Yは、角度変換部材52に入射する。第2面50bに向かって進む蛍光Yは、ミラー53で反射され、第1面50aに向かって進む。
【0047】
波長変換部材50に入射した励起光Eのうち、蛍光体の励起に使われなかった励起光Eの一部は、光源部51の発光素子56を含む波長変換部材50の周囲の部材、または第2面50bに設けられたミラー53で反射される。そのため、励起光Eの一部は、波長変換部材50の内部に閉じ込められて再利用される。
【0048】
角度変換部材52は、波長変換部材50の第1面50aの光射出側に設けられている。角度変換部材52は、例えば複合放物面型集光器(Compound Parabolic Concentrator, CPC)から構成されている。角度変換部材52は、波長変換部材50から射出された蛍光Yが入射する光入射面52aと、蛍光Yを射出する光射出面52bと、入射した蛍光Yを光射出面52bに向けて反射させる側面52cと、を有する。
【0049】
角度変換部材52の光軸Jに垂直な断面積は、光入射面52aから光射出面52bに向かって大きくなっている。したがって、光射出面52bの面積は、光入射面52aの面積よりも大きい。光射出面52bおよび光入射面52aの中心を通り、X軸に平行な軸を角度変換部材52の光軸Jとする。角度変換部材52の光軸Jは、第1照明装置20の光軸AX1に一致する。
【0050】
角度変換部材52に入射した蛍光Yは、角度変換部材52の内部を進行する間に、側面52cで全反射する際に光軸Jに平行な方向に近付くように向きを変える。このようにして、角度変換部材52は、波長変換部材50の第1面50aから射出される蛍光Yの射出角度分布を変換する。具体的には、角度変換部材52は、光射出面52bにおける蛍光Yの最大射出角度を光入射面52aにおける蛍光Yの最大入射角度よりも小さくする。
【0051】
一般的に、光射出領域の面積と光の立体角(最大射出角)との積で規定される光のエテンデューは保存されるため、角度変換部材52の透過前後においても蛍光Yのエテンデューは保存される。角度変換部材52は、上述したように、光射出面52bの面積を光入射面52aの面積よりも大きくした構成を有する。そのため、エテンデュー保存の観点から、角度変換部材52は、光射出面52bにおける蛍光Yの最大射出角度を光入射面52aに入射する蛍光Yの最大入射角度よりも小さくすることができる。
【0052】
角度変換部材52は、光入射面52aが波長変換部材50の第1面50aに対向するように光学接着剤(図示略)を介して波長変換部材50に固定されている。すなわち、角度変換部材52と波長変換部材50とは光学接着剤を介して接触しており、角度変換部材52と波長変換部材50との間に空隙(空気層)は設けられていない。仮に角度変換部材52と波長変換部材50との間に空隙が設けられていた場合、角度変換部材52の光入射面52aに到達した蛍光Yのうち、臨界角以上の角度で光入射面52aに入射した蛍光Yは、光入射面52aで全反射し、角度変換部材52に入射できない。これに対して、本実施形態のように、角度変換部材52と波長変換部材50との間に空隙が設けられていない場合には、角度変換部材52に入射できない蛍光Yを減らすことができる。この観点から、角度変換部材52の屈折率と波長変換部材50の屈折率とは、できるだけ一致させることが望ましい。
【0053】
角度変換部材52として、CPCに代えて、例えば四角錐台状の形状を有するテーパーロッドが用いられてもよい。角度変換部材52としてテーパーロッドを用いた場合であっても、CPCを用いた場合と同様の効果が得られる。なお、光源装置30は、必ずしも角度変換部材52を備えていなくてもよい。
【0054】
光源装置30とインテグレーター光学系31との間に、コリメーターレンズ等からなる平行化光学系63が設けられている。平行化光学系63は、角度変換部材52から射出される蛍光Yの角度分布をさらに小さくし、平行度の高い蛍光Yをインテグレーター光学系31に入射させる。なお、平行化光学系63は、角度変換部材52から射出される蛍光Yの平行度が十分に高い場合には設けられていなくてもよい。
【0055】
インテグレーター光学系31は、第1レンズアレイ61と、第2レンズアレイ62と、を有する。インテグレーター光学系31は、重畳光学系33とともに光源装置30から射出された蛍光Yの強度分布を、被照明領域である光変調装置4R,4Gのそれぞれにおいて均一化する均一照明光学系として機能する。平行化光学系63から射出される蛍光Yは、第1レンズアレイ61に入射する。第1レンズアレイ61は、光源装置30の後段に設けられた第2レンズアレイ62とともに、インテグレーター光学系31を構成する。
【0056】
第1レンズアレイ61は、複数の第1レンズ61aを有する。複数の第1レンズ61aは、第1照明装置20の光軸AX1と直交するYZ平面に平行な面内にマトリクス状に配列されている。複数の第1レンズ61aは、角度変換部材52から射出される蛍光Yを複数の部分光束に分割する。第1レンズ61aの各々の形状は、光変調装置4R,4Gの画像形成領域の形状と略相似形の矩形状である。これにより、第1レンズアレイ61から射出された部分光束の各々は、光変調装置4R,4Gの画像形成領域にそれぞれ効率良く入射する。
【0057】
第1レンズアレイ61から射出された蛍光Yは、第2レンズアレイ62に向かって進む。第2レンズアレイ62は第1レンズアレイ61に対向して配置されている。第2レンズアレイ62は、第1レンズアレイ61の複数の第1レンズ61aに対応する複数の第2レンズ62aを有する。第2レンズアレイ62は、重畳光学系33とともに、第1レンズアレイ61の複数の第1レンズ61aの像の各々を光変調装置4R,4Gの画像形成領域の近傍に結像させる。複数の第2レンズ62aは、第1照明装置20の光軸AX1に直交するYZ平面に平行な面内にマトリクス状に配列されている。
【0058】
本実施形態において、第1レンズアレイ61の各第1レンズ61aと第2レンズアレイ62の各第2レンズ62aとは、互いに同じサイズを有しているが、互いに異なるサイズを有していてもよい。また、本実施形態において、第1レンズアレイ61の第1レンズ61aと第2レンズアレイ62の第2レンズ62aとは、互いの光軸が一致する位置に配置されているが、互いに偏心した状態に配置されていてもよい。
【0059】
偏光変換素子32は、第2レンズアレイ62から射出される蛍光Yの偏光方向を変換する。具体的に、偏光変換素子32は、第1レンズアレイ61で分割され、第2レンズアレイ62から射出された蛍光Yの各部分光束を直線偏光に変換する。
【0060】
偏光変換素子32は、光源装置30から射出される蛍光Yに含まれる偏光成分のうち、一方の直線偏光成分をそのまま透過させるとともに、他方の直線偏光成分を光軸AX1に垂直な方向に反射する偏光分離層(図示略)と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を光軸AX1に平行な方向に反射する反射層(図示略)と、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する位相差層(図示略)と、を有する。
【0061】
以下、本実施形態の光源装置30の特徴点について説明する。
図5は、図3のV-V線に沿う光源装置30の断面図である。
図5に示すように、本実施形態の光源装置30において、波長変換部材50の第4面50dは、全面にわたって支持部材54の対向面54sと接触していない。具体的には、第4面50dのうち、一部の領域は、熱伝導性部材67を介して支持部材54の対向面54sと熱的に接続され、他の一部の領域は、空気層72を介して支持部材54の対向面54sから離間している。すなわち、第4面50dは、熱伝導性部材67を介して対向面54sと熱的に接続される接続領域A1と、空気層72を介して対向面54sから離間する非接続領域A2と、を有する。接続領域A1は、第4面50dのうち、熱伝導性部材67が設けられている領域と定義する。非接続領域A2は、第4面50dのうち、接続領域A1以外の領域であって、熱伝導性部材67が設けられていない領域と定義する。
【0062】
本実施形態の場合、第4面50dは、2つの接続領域A1と、3つの非接続領域A2と、を有する。これらの接続領域A1と非接続領域A2とは、波長変換部材50の長手方向であるX軸方向に沿って並んでいる。波長変換部材50のX軸方向の長さを55mmとし、第3面50cに垂直な方向から見て波長変換部材50と支持部材54とが重なる部分の長さを50mmとしたとき、1つの接続領域A1のX軸方向の長さは、例えば5~15mm程度であることが望ましい。非接続領域A2のX軸方向の長さは、合計で例えば30mm程度であることが望ましい。このように、複数の接続領域A1と複数の非接続領域A2とがX軸方向に並んだ配置によれば、波長変換部材50を支持部材54に安定して支持することができる。また、この配置によれば、接続領域A1の全面積、すなわち、波長変換部材50から支持部材54への伝熱面積を十分に確保できるため、波長変換部材50の放熱性を高めることができる。
【0063】
熱伝導性部材67は、例えば熱伝導性グリス、放熱グリスなどと呼ばれる熱伝導率の高いグリスから構成されている。この種のグリスの熱伝導率は、例えば1~9W/m・K程度である。また、熱伝導性部材67は、熱伝導性接着剤から構成されていてもよい。熱伝導性接着剤の熱伝導率は、例えば0.5~2W/m・K程度である。熱伝導性部材67として熱伝導性グリスを用いる場合、一般的に熱伝導性接着剤よりも高い熱伝導率が得られる点で好ましい。また、熱伝導性部材67として熱伝導性接着剤を用いる場合、波長変換部材50と支持部材54とを接着でき、場合によっては押圧部材65を省略できる点で好ましい。熱伝導性部材67は、上述のグリスや接着剤のように、液体状またはゲル状の材料、すなわち、ある程度の流動性を有する材料で構成されることが望ましい。熱伝導性部材67の厚さは、1~30μm程度であることが望ましく、10~20μm程度であることがより望ましい。グリス、接着剤のいずれを用いた場合も、熱伝導性部材67の熱伝導率は、空気の熱伝導率である約0.02W/m・Kに比べて、1~2桁高い。
【0064】
第1反射膜68は、接続領域A1において、波長変換部材50の第4面50dと熱伝導性部材67との間に設けられている。第1反射膜68は、波長変換部材50の第4面50dに形成されたアルミニウム等の金属膜、または誘電体多層膜から構成されている。第1反射膜68は、励起光Eおよび蛍光Yを反射する。本実施形態の場合、第1反射膜68のX軸方向の長さは熱伝導性部材67のX軸方向の長さよりも大きく、第1反射膜68の端部は熱伝導性部材67の外側、すなわち非接続領域A2にまではみ出している。第1反射膜68が設けられることにより、波長変換部材50の内部を進行する励起光Eおよび蛍光Yが熱伝導性部材67に入射し、熱伝導性部材67で吸収されて損失となるのを抑制することができる。第1反射膜68は、波長変換部材50から熱伝導性部材67への熱の伝達を阻害しない。
【0065】
なお、励起光Eおよび蛍光Yの吸収を確実に抑制する観点では、第1反射膜68のX軸方向の長さが熱伝導性部材67のX軸方向の長さよりも大きいことが望ましいが、第1反射膜68のX軸方向の長さは、熱伝導性部材67のX軸方向の長さと同じでもよいし、熱伝導性部材67のX軸方向の長さよりも小さくてもよい。仮に第1反射膜68のX軸方向の長さが熱伝導性部材67のX軸方向の長さよりも小さかったとしても、熱伝導性部材67に入射しようとする励起光Eおよび蛍光Yの一部の吸収を抑えることができる。すなわち、本実施形態の光源装置30は、接続領域A1の少なくとも一部において第4面50dと熱伝導性部材67との間に介在し、励起光Eおよび蛍光Yを反射する第1反射膜68を備える。
【0066】
なお、波長変換部材50の第4面50dと熱伝導性部材67との間に、必ずしも第1反射膜68が設けられていなくてもよい。この場合、熱伝導性部材67は、透光性を有することが望ましい。熱伝導性部材67が遮光性を有すると、波長変換部材50から熱伝導性部材67に入射する蛍光Yが吸収されて損失となるおそれがあるためである。これに対して、波長変換部材50の第4面50dと熱伝導性部材67との間に第1反射膜68が設けられる場合、熱伝導性部材67は、透光性を有していてもよいし、遮光性を有していてもよい。
【0067】
一方、非接続領域A2のうち、第1反射膜68の端部が熱伝導性部材67の外側にはみ出した部分を除く大部分の領域において、波長変換部材50の第4面50dと空気層72との間には、第1反射膜68が設けられていない。これにより、波長変換部材50の内部を進行する蛍光Yが第1反射膜68に入射し、蛍光Yの損失が生じるのを抑えることができる。第1反射膜68が非常に高い反射率を有していたとしても、第1反射膜68による蛍光Yの損失がわずかに生じるのに対し、蛍光Yが波長変換部材50の第4面50dと空気層72との界面で全反射する構成においては、蛍光Yの損失がほとんど生じない。
【0068】
熱伝導性部材67の厚さが1~30μm程度であり、第1反射膜68が設けられている場合、波長変換部材50の第4面50dと支持部材54の対向面54sとの距離、すなわち、空気層72の厚さは、1~30μm以上となる。仮に熱伝導性部材67の厚さが1μm未満となると、空気層72の厚さが可視光の波長域程度となり、蛍光Yが波長変換部材50から支持部材54に浸み出して損失となるおそれがある。また、熱伝導性部材67の厚さが1μm未満の場合、熱伝導性部材67の構成材料であるグリスや接着剤を塗布する際の厚さの制御が難しい。一方、熱伝導性部材67の厚さが30μmを超えると、熱伝導性部材67の熱抵抗が大きくなり、放熱性が低下する。
【0069】
押圧部材65は、波長変換部材50の第3面50cにおいて、接続領域A1に対向する位置を押圧する。また、押圧部材65のX軸方向の長さは、熱伝導性部材67のX軸方向の長さよりも短い。換言すると、押圧部材65は、非接続領域A2に対向する位置には設けられていない。この場合、波長変換部材50が押圧部材65によって押圧される領域と押圧されない領域との境界においても、波長変換部材50と熱伝導性部材67と支持部材54との接触状態が維持されるため、波長変換部材50の放熱性をより高めることができる。
【0070】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の光源装置30は、励起光Eを射出する発光素子56と、蛍光体を含み、発光素子56から射出される励起光Eを蛍光Yに変換する波長変換部材50と、波長変換部材50を支持する支持部材54と、を備える。波長変換部材50は、X軸方向において互いに反対側に位置する第1面50aおよび第2面50bと、Y軸方向において互いに反対側に位置する第3面50cおよび第4面50dと、を有する。蛍光Yは、第1面50aから射出される。発光素子56は、第3面50cに対向して設けられる。支持部材54は、第4面50dに対向する対向面54sを有する。第4面50dは、熱伝導性部材67を介して対向面54sと熱的に接続される接続領域A1と、空気層72を介して対向面54sから離間する非接続領域A2と、を有する。
【0071】
従来の光源装置は、波長変換部材と支持部材とを直接当接させることにより、波長変換部材の熱を支持部材に伝達させる構成を有する。ところが、波長変換部材および支持部材の表面は完全な平滑面ではなく、微細な凹凸や反りを有する。そのため、熱伝導率が約0.02W/m・K程度の微小な空気層が波長変換部材と支持部材との間に介在することから、波長変換部材の熱を支持部材に十分に伝達させることが難しい。また、凹凸や反りの状況によって波長変換部材と支持部材との接触状態が変化し、波長変換部材の温度が不安定になる場合がある。以上の結果、波長変換部材の変換効率がばらつき、所望の強度を有する蛍光が安定して得られないおそれがある。
【0072】
上記の問題を解決する手段として、空気の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する熱伝導性部材を介して、波長変換部材と支持部材とを熱的に接続する構成が考えられる。この構成によれば、波長変換部材の熱を支持部材に十分に伝達させることができる。ところが、この構成では、波長変換部材の内部を進行する蛍光の一部は、熱伝導性部材と波長変換部材との界面に入射する毎に熱伝導性部材に吸収されて損失となる。そのため、波長変換部材の温度上昇は抑えられたとしても、蛍光の損失が多くなり、所望の強度を有する蛍光が得られないという問題がある。
【0073】
これらの問題に対して、本実施形態の構成によれば、波長変換部材50の第4面50dが、熱伝導性部材67を介して対向面54sと熱的に接続される接続領域A1と、空気層72を介して対向面54sから離間する非接続領域A2と、を有するため、接続領域A1において、波長変換部材50の熱を支持部材54に伝達させて波長変換部材50の温度上昇を抑制できるとともに、非接続領域A2においては、蛍光Yを第4面50dで全反射させることで蛍光Yの損失を抑制できる。これにより、波長変換部材50の変換効率が安定し、所望の強度を有する蛍光Yを安定して射出可能な光源装置30を実現することができる。
【0074】
詳細には、接続領域A1において、グリスや接着剤のように、ある程度の流動性を有する熱伝導性部材67を波長変換部材50と支持部材54との間に介在させると、波長変換部材50および支持部材54の微細な凹凸や反りを熱伝導性部材67が埋め、波長変換部材50と熱伝導性部材67、熱伝導性部材67と支持部材54とが隙間なく密着する。これにより、波長変換部材50の熱を支持部材54に確実に伝達させることができる。非接続領域A2においては、波長変換部材50と支持部材54とが離間し、波長変換部材50と支持部材54との間に可視光の波長以上の厚さの空気層72が介在しているため、波長変換部材50の第4面50dに入射する蛍光Yは、支持部材54の側に浸み出すことがなく、第4面50dで全反射しつつ波長変換部材50の内部を進行することができる。これにより、波長変換部材50と支持部材54との間の全域に熱伝導性部材67を設けた場合に比べて、蛍光Yの損失を低減することができる。
【0075】
本実施形態のプロジェクター1は、本実施形態の光源装置30を備えているため、表示品質に優れる。
【0076】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図6を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、支持部材の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の基本構成の説明は省略する。
図6は、第2実施形態の光源装置40の断面図である。
図6において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
図6に示すように、本実施形態の光源装置40は、波長変換部材50と、光源部51と、角度変換部材52と、ミラー53と、支持部材44と、押圧部材65と、熱伝導性部材67と、第1反射膜68と、を備える。
【0078】
支持部材44の対向面44sのうち、接続領域A1に対応する領域、すなわち、熱伝導性部材67が設けられる領域に、非接続領域A2に対応する領域に対して第4面50dの側に向けて突出する凸部44tが設けられている。凸部44tの断面形状は矩形状であり、凸部44tの第4面50dに対向する面は第4面50dと平行である。凸部44tの高さHは、例えば0.2~0.5mmであることが望ましい。凸部44tの高さHが0.2mm未満であると、後述する本実施形態特有の効果を得ることが難しくなる。凸部44tの高さHが0.5mmを超えると、支持部材44の放熱性が低下する。
光源装置40のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0079】
[第2実施形態の効果]
本実施形態においても、接続領域A1により波長変換部材50の温度上昇を抑制できるとともに、非接続領域A2により蛍光Yの損失を抑制できるため、波長変換部材50の変換効率が安定し、所望の強度を有する蛍光Yを安定して射出可能な光源装置40を実現できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
さらに本実施形態の場合、以下の格別な効果が得られる。
第1実施形態の構成によれば、製造工程において熱伝導性部材67を構成するグリスや接着剤の塗布量がばらついた場合、グリスや接着剤の広がる面積がばらつき、伝熱面積がばらつくおそれがある。この場合、波長変換部材50の温度制御が不安定になるおそれがある。この問題に対して、本実施形態の構成によれば、グリスや接着剤の塗布量が所定量よりも多くなり、凸部44tの外側にまで広がったとしても、凸部44tが設けられた領域で伝熱面積が決まるため、放熱性に対する塗布量のばらつきの影響を少なくすることができる。これにより、波長変換部材50の温度を安定して制御することができ、所望の強度を有する蛍光Yを得られやすくなる。
【0081】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図7を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、支持部材の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の基本構成の説明は省略する。
図7は、第3実施形態の光源装置45の断面図である。
図7において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
図6に示すように、本実施形態の光源装置45は、波長変換部材50と、光源部51と、角度変換部材52と、ミラー53と、支持部材54と、押圧部材65と、熱伝導性部材67と、第1反射膜68と、第2反射膜69と、を備える。
【0083】
支持部材54の対向面54sのうち、熱伝導性部材67が設けられていない領域、すなわち、非接続領域A2に対応する領域に第2反射膜69が設けられている。第2反射膜69は、少なくとも励起光Eを反射することが望ましく、蛍光Yをさらに反射してもよい。なお、第2反射膜69は、非接続領域A2に対応する領域の少なくとも一部に設けられていてもよい。
光源装置45のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0084】
[第3実施形態の効果]
本実施形態においても、接続領域A1により波長変換部材50の温度上昇を抑制できるとともに、非接続領域A2により蛍光Yの損失を抑制できるため、波長変換部材50の変換効率が安定し、所望の強度を有する蛍光Yを安定して射出可能な光源装置45を実現できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
波長変換部材50の第3面50cから入射した励起光Eのうち、波長変換されなかった励起光Eの一部は、第4面50dの非接続領域A2から射出される場合がある。このような励起光Eは、支持部材54に吸収され、波長変換に寄与できないおそれがある。これに対して、本実施形態においては、支持部材54の対向面54sの非接続領域A2に対応する領域に第2反射膜69が設けられているため、第4面50dから射出される励起光Eを第2反射膜69で反射させ、波長変換部材50に戻すことができる。これにより、励起光Eの波長変換効率を高めることができる。
【0086】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記の各実施形態の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0087】
上記実施形態の光源装置においては、波長変換部材の第4面に2つの接続領域が設けられた例を挙げたが、接続領域は1つであってもよい。また、上記実施形態の光源装置においては、複数の接続領域と複数の非接続領域とがX軸方向に並んだ構成の例を挙げたが、複数の接続領域と複数の非接続領域とが波長変換部材の幅方向であるZ軸方向に並んでいてもよい。
【0088】
上記実施形態では、支持部材の溝部の各壁面が、支持面に対して垂直な部分と、支持面に対して傾斜した部分と、を有しているが、溝部の形状は特に限定されず、例えば溝部の壁面の全ての領域が支持面に対して垂直であってもよい。また、溝部の壁面が湾曲していてもよい。
【0089】
その他、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶パネルを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有していてもよい。
【0090】
上記実施形態では、本発明の光源装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明の光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0091】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、
蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記波長変換部材の長手方向である第1方向において互いに反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1方向に垂直な仮想面内における第2方向において互いに反対側に位置する第3面および第4面と、を有し、
前記第2光は、前記第1面から射出され、
前記発光素子は、前記第3面に対向して設けられ、
前記支持部材は、前記第4面に対向する対向面を有し、
前記第4面は、熱伝導性部材を介して前記対向面と熱的に接続される接続領域と、空気層を介して前記対向面から離間する非接続領域と、を有する、
光源装置。
【0092】
付記1の構成によれば、波長変換部材の第4面が、熱伝導性部材を介して対向面と熱的に接続される接続領域と、空気層を介して対向面から離間する非接続領域と、を有するため、接続領域により波長変換部材の温度上昇を抑制できるとともに、非接続領域により蛍光の損失を抑制できる。これにより、波長変換部材の変換効率が安定し、所望の強度を有する第2光を安定して射出可能な光源装置を実現することができる。
【0093】
(付記2)
前記接続領域と前記非接続領域とは、前記第1方向に沿って並んでいる、
付記1に記載の光源装置。
【0094】
付記2の構成によれば、波長変換部材を支持部材に安定して支持することができる。また、接続領域の全面積、すなわち、波長変換部材から支持部材への伝熱面積を確保しやすいため、波長変換部材の放熱性を高めることができる。
【0095】
(付記3)
前記波長変換部材を前記第3面から前記支持部材の前記対向面に向けて押圧する押圧部材をさらに備える、
付記1または付記2に記載の光源装置。
【0096】
付記3の構成によれば、熱伝導性部材を介して波長変換部材を支持部材に確実に密着させることができる。
【0097】
(付記4)
前記押圧部材は、前記第3面の前記接続領域に対向する位置を押圧する、
付記3に記載の光源装置。
【0098】
付記4の構成によれば、波長変換部材が押圧部材によって押圧される領域と押圧されない領域との境界においても、波長変換部材と熱伝導性部材と支持部材との接触状態が維持されるため、波長変換部材の放熱性をより高めることができる。
【0099】
(付記5)
前記熱伝導性部材は、グリスである、
付記1から付記4までのいずれか一項に記載の光源装置。
【0100】
付記5の構成によれば、熱伝導性部材の熱伝導率を高めることができる。
【0101】
(付記6)
前記熱伝導性部材は、接着剤である、
付記1から付記4までのいずれか一項に記載の光源装置。
【0102】
付記6の構成によれば、波長変換部材と支持部材とを接着でき、場合によっては押圧部材を省略することができる。
【0103】
(付記7)
前記接続領域の少なくとも一部において前記第4面と前記熱伝導性部材との間に介在し、前記第1光および前記第2光を反射する第1反射膜をさらに備え、
前記非接続領域の少なくとも一部において前記第4面と前記空気層との間には前記第1反射膜を備えていない、
付記1から付記6までのいずれか一項に記載の光源装置。
【0104】
付記7の構成によれば、接続領域において、波長変換部材の内部を進行する第1光および第2光が熱伝導性部材で吸収されるのを抑制することができる。また、非接続領域において、波長変換部材の内部を進行する第1光および第2光が第1反射膜で吸収されるのを抑制することができる。
【0105】
(付記8)
前記対向面のうち、前記接続領域に対応する領域に、前記非接続領域に対応する領域に対して前記第4面の側に向けて突出する凸部が設けられている、
付記1から付記7までのいずれか一項に記載の光源装置。
【0106】
付記8の構成によれば、製造工程において熱伝導性部材の構成材料の供給量が所定量よりも多くなり、凸部の外側にまで広がったとしても、凸部が設けられた領域で伝熱面積が決まるため、供給量のばらつきの影響を少なくすることができる。これにより、波長変換部材の温度を安定して制御でき、所望の強度を有する蛍光を得られやすくなる。
【0107】
(付記9)
前記対向面のうち、前記非接続領域に対応する領域を含む少なくとも一部に設けられ、前記第1光を反射する第2反射膜をさらに備える、
付記1から付記8までのいずれか一項に記載の光源装置。
【0108】
付記9の構成によれば、第4面の非接続領域から射出される第1光の少なくとも一部を第2反射膜で反射させ、波長変換部材に戻すことができる。これにより、第1光の波長変換効率を高めることができる。
【0109】
(付記10)
付記1から付記9までのいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、
を備える、
プロジェクター。
【0110】
付記10の構成によれば、表示品質に優れる画像を投写可能なプロジェクターを実現することができる。
【符号の説明】
【0111】
1…プロジェクター、4B,4G,4R…光変調装置、6…投写光学装置、30,40,45…光源装置、44,54…支持部材、44t…凸部、50…波長変換部材、50a…第1面、50b…第2面、50c…第3面、50d…第4面、56…発光素子、65…押圧部材、67…熱伝導性部材、68…第1反射膜、69…第2反射膜、A1…接続領域、A2…非接続領域、E,E1…励起光(第1光)、Y…蛍光(第2光)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7