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特開2024-110099スタンド及びキーボード・スタンドセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110099
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】スタンド及びキーボード・スタンドセット
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20240807BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G06F1/16 313F
G06F1/16 312E
G06F1/16 312T
H05K5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014458
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細貝 達哉
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB42
4E360AC24
4E360EA22
4E360EB03
4E360EC12
4E360EC14
4E360EC15
4E360ED02
4E360ED07
4E360ED24
4E360GA02
4E360GA04
4E360GA44
4E360GA52
4E360GB26
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC03
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】薄型化を維持しつつ、脚部を収容状態に保持することを可能とする。
【解決手段】スタンドは、電子機器を起立状態に支持するスタンドであって、開口部と、該開口部の周囲に設けられ、前記電子機器の背面を支持する支持部とを有する枠体と、前記開口部の内側で前記支持部に対してトルクヒンジを介して回動可能に接続され、少なくとも前記開口部の内側に収容される第1角度位置と、該第1角度位置から第1方向に回動して前記支持部から突出する第2角度位置との間を移動可能な脚部と、前記支持部の内側面に設けられ、前記開口部を臨む第1磁石と、前記支持部の内側面に対向する前記脚部の外側面に設けられ、前記第1磁石と吸着可能な第2磁石と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を起立状態に支持するスタンドであって、
開口部と、該開口部の周囲に設けられ、前記電子機器の背面を支持する支持部とを有する枠体と、
前記開口部の内側で前記支持部に対してトルクヒンジを介して回動可能に接続され、少なくとも前記開口部の内側に収容される第1角度位置と、該第1角度位置から第1方向に回動して前記支持部から突出する第2角度位置との間を移動可能な脚部と、
前記支持部の内側面に設けられ、前記開口部を臨む第1磁石と、
前記支持部の内側面に対向する前記脚部の外側面に設けられ、前記第1磁石と吸着可能な第2磁石と、
を備える
ことを特徴とするスタンド。
【請求項2】
請求項1に記載のスタンドであって、
前記枠体及び前記脚部は、矩形状に構成され、
前記トルクヒンジは、前記開口部の一縁に沿う前記支持部の第1内側面と、該第1内側面に対向する前記脚部の第1外側面との間を接続しており、
前記第1磁石は、前記第1内側面の一端と交差する前記支持部の第2内側面と、前記第1内側面の他端と交差する前記支持部の第3内側面とにそれぞれ設けられ、
前記第2磁石は、前記第2内側面に対向する前記脚部の第2外側面と、前記第3内側面に対向する前記脚部の第3外側面とにそれぞれ設けられている
ことを特徴とするスタンド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスタンドであって、
前記トルクヒンジの回転トルクは、前記脚部の回動角度によって変化するものであり、
前記トルクヒンジは、少なくとも前記脚部が前記第1角度位置にある場合に、前記回転トルクが最小となる
ことを特徴とするスタンド。
【請求項4】
請求項3に記載のスタンドであって、
前記トルクヒンジは、前記脚部が前記第1角度位置から前記第1方向に向かって所定角度まで回動される間は、前記最小の回転トルクが維持される
ことを特徴とするスタンド。
【請求項5】
請求項4に記載のスタンドであって、
前記トルクヒンジは、前記脚部が前記第1角度位置から、前記第1方向とは逆の第2方向に向かって回動される場合には、前記第1角度位置から前記所定角度よりも小さい角度で前記回転トルクが増大する
ことを特徴とするスタンド。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のスタンドであって、
前記第1磁石は、前記内側面に対してN極とS極とが並んで設けられ、
前記第2磁石は、前記外側面に対してN極とS極とが並んで設けられると共に、該第2磁石のN極が前記第1磁石のS極と対向し、且つ該第2磁石のS極が前記第1磁石のN極と対向する位置にある
ことを特徴とするスタンド。
【請求項7】
電子機器に対して無線形式で入力を行うキーボード、及び前記電子機器を起立状態に支持するスタンドを備えるキーボード・スタンドセットであって、
前記スタンドは、
開口部と、該開口部の周囲に設けられ、前記電子機器の背面を支持する支持部とを有する枠体と、
前記開口部の内側で前記支持部に対してトルクヒンジを介して回動可能に接続され、少なくとも前記開口部の内側に収容される第1角度位置と、該第1角度位置から第1方向に回動して前記支持部から突出する第2角度位置との間を移動可能な脚部と、
前記支持部の内側面に設けられ、前記開口部を臨む第1磁石と、
前記支持部の内側面に対向する前記脚部の外側面に設けられ、前記第1磁石と吸着可能な第2磁石と、
前記支持部の一縁に沿って設けられると共に、前記電子機器の側面を支持可能な幅を有し、当該スタンドと前記キーボードの一縁との間を回動可能に接続する帯部と、
を備える
ことを特徴とするキーボード・スタンドセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を起立状態に支持するスタンド及びキーボード・スタンドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式のディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないノート型PC或いはタブレット型PC等の薄型の電子機器が普及している。この種の電子機器は、持ち運びが容易で入力作業もタッチパネルによって行うことができるため操作が容易である。しかしながら、このような電子機器は、一般的なクラムシェル型のノート型のように自立させて使用することができない。そこで本出願人は特許文献1において、電子機器を起立状態に支持するキックスタンド式のスタンドを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-105961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスタンドは、キックスタンドとなる脚部を使用しない際、脚部を畳んだ収容状態に保持できることが望ましい。ところが、例えば脚部を収容状態に保持するための物理的なストッパ部材等を設けると、スタンド全体の薄型化が損なわれる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、薄型化を維持しつつ、脚部を収容状態に保持することが可能となるスタンド及びキーボード・スタンドセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るスタンドは、電子機器を起立状態に支持するスタンドであって、開口部と、該開口部の周囲に設けられ、前記電子機器の背面を支持する支持部とを有する枠体と、前記開口部の内側で前記支持部に対してトルクヒンジを介して回動可能に接続され、少なくとも前記開口部の内側に収容される第1角度位置と、該第1角度位置から第1方向に回動して前記支持部から突出する第2角度位置との間を移動可能な脚部と、前記支持部の内側面に設けられ、前記開口部を臨む第1磁石と、前記支持部の内側面に対向する前記脚部の外側面に設けられ、前記第1磁石と吸着可能な第2磁石と、を備える。
【0007】
本発明の第1態様に係るキーボード・スタンドセットは、電子機器に対して無線形式で入力を行うキーボード、及び前記電子機器を起立状態に支持するスタンドを備えるキーボード・スタンドセットであって、前記スタンドは、開口部と、該開口部の周囲に設けられ、前記電子機器の背面を支持する支持部とを有する枠体と、前記開口部の内側で前記支持部に対してトルクヒンジを介して回動可能に接続され、少なくとも前記開口部の内側に収容される第1角度位置と、該第1角度位置から第1方向に回動して前記支持部から突出する第2角度位置との間を移動可能な脚部と、前記支持部の内側面に設けられ、前記開口部を臨む第1磁石と、前記支持部の内側面に対向する前記脚部の外側面に設けられ、前記第1磁石と吸着可能な第2磁石と、前記支持部の一縁に沿って設けられると共に、前記電子機器の側面を支持可能な幅を有し、当該スタンドと前記キーボードの一縁との間を回動可能に接続する帯部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、薄型化を維持しつつ、脚部を収容状態に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るキーボード・スタンドセットの平面図である。
図2図2は、キーボード及びスタンドを裏側から見た分解斜視図である。
図3図3は、スタンドの内部構造を示す正面図である。
図4図4は、起立している状態のスタンドの斜視図である。
図5図5は、電子機器を縦置きにしてスタンド14に立てかけた状態を示す模式斜視図である。
図6A図6Aは、図3中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す位置から脚部を第1方向に回動させた状態を示す断面図である。
図6C図6Cは、図6Aに示す状態から脚部を第2方向に回動させた状態を示す断面図である。
図7図7は、脚部を両開き可能に構成する変形例を示すトルクヒンジ及びその周辺部の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るスタンド及びキーボード・スタンドセットについての好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るキーボード・スタンドセット10の平面図である。図2は、キーボード12及びスタンド14を裏側から見た分解斜視図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のキーボード・スタンドセット10は、キーボード12と、スタンド14とを備える。
【0012】
先ず、キーボード12について説明する。
【0013】
キーボード12は、電子機器に対して無線形式で入力を行う装置である。電子機器としては主に物理的なキーボードを持たない携帯型コンピュータが対象となり、例えばフォルダブルPC、タブレット式PC、及びスマートフォンなどの薄型の電子機器が挙げられる。キーボード12と電子機器との間で行われる無線通信は、例えばブルートゥース(登録商標)がある。
【0014】
キーボード12は一般的なサイズの偏平な箱形状となっている。キーボード12の上面には、整列配置された複数のキー12aと、タッチパッド12bと、ポインティングスティック12cとが設けられている。図1で例示するキーボード12は、テンキーのないコンパクト式であるが、テンキーや独立配置のカーソルキーなどを有するフルサイズ式であってもよい。キーボード12はバッテリーを有している。キーボード12は、タッチパッド12b及びポインティングスティック12cの一方又は両方を省略してもよい。
【0015】
キーボード12は、後側の縁部12dに凹部16が形成されている。凹部16は、縁部12dに沿って延在し、下面側に臨んで開口している。凹部16は、後述するバー30を挿入及び装着可能な高さと長さを有する。凹部16の上面16aには複数の磁石18が設けられている。本実施形態の場合、磁石18は、上面16aの両端近傍に2つずつ、中央部に1つで合計5つが設けられている(図2参照)。磁石18の数、位置及び大きさはこれに限られない。磁石18は、上面16aを形成する薄いカバーで覆われている。
【0016】
次に、スタンド14について説明する。
【0017】
図3は、スタンド14の内部構造を示す正面図である。図4は、起立している状態のスタンド14の斜視図である。図5は、電子機器50を縦置きにしてスタンド14に立てかけた状態を示す模式斜視図である。スタンド14は、例えば図5に示すような薄型の電子機器50を起立状態に支持するものである。図1図4に示すように、スタンド14は、枠体24と、脚部26と、帯部28とを備える。なお、図3は、例えばスエードで形成され、スタンド14の表面を覆う表面材を取り外してスタンド14の内部構造を露呈させた図であり、帯部28の図示を省略している。
【0018】
枠体24は、矩形枠状の薄いプレート部材である。枠体24は、矩形状の開口部32と、開口部32の周囲に設けられ、電子機器50の背面50aを支持する矩形枠状の支持部33とを有する。枠体24の外周輪郭は、平面視でキーボード12と略同一である。支持部33には、複数の磁石34が分散した位置に埋め込まれている。各磁石34は、枠体24の支持面24aを臨んでいる。支持面24aは、支持部33の一面であり、電子機器50の背面50aが当接する面である。電子機器50の背面50aには磁石が設けられており、磁石34は電子機器50の磁石と吸着可能な位置に設けられている。
【0019】
脚部26は、キックスタンドとして機能する矩形状のプレートである。脚部26は、開口部32の内側で支持部33に対してトルクヒンジ36を介して接続され、支持部33に対して相対的に回動可能である。本実施形態の場合、トルクヒンジ36は、支持部33の一方の長辺枠33aに左右一対設けられている。長辺枠33aは、枠体24における帯部28から遠い側の縁を形成している。脚部26は、少なくとも第1角度位置と第2角度位置との間で回動可能である。
【0020】
第1角度位置は、脚部26が開口部32の内側に収容され、開口部32を略隙間なく塞ぐ位置である(図1及び図3参照)。第1角度位置において、スタンド14は、枠体24及び脚部26が全体として薄いプレート状に構成される。
【0021】
第2角度位置は、脚部26のトルクヒンジ36側とは逆側の先端縁26aが載置面Gに当接し、スタンド14を起立させるための位置である(図4参照)。第2角度位置は、例えば支持部33の面方向と脚部26の面方向とが略90度(図3参照)となる位置である。なお、脚部26は、先端縁26aと反対側の基端縁26bにトルクヒンジ36が接続される。
【0022】
脚部26は、第2角度位置よりも小さい角度、例えば図5に示す30度程度の角度でもキックスタンドとして機能させることができる。脚部26は、第2角度位置よりも大きい角度、例えば120度程度でキックスタンドとして機能させることもできる。トルクヒンジ36は、少なくとも脚部26がキックスタンドとして機能する角度、例えば30度以上とされた際に所定の回転トルクを発生する。これにより脚部26は、支持部33に対して任意の角度に維持することができる。なお、本実施形態のスタンド14は、脚部26が支持部33に対して実質的に一方向にのみ開くように構成されているが、後述するように両方向に開くように構成してもよい。脚部26は矩形以外の形状であってもよい。
【0023】
図3に示すように、スタンド14は、支持部33に埋め込まれた複数の第1磁石38N,38Sと、脚部26に埋め込まれた複数の第2磁石39N,39Sとを有する。磁石38N,38S,39N,39Sは、互いに吸着して脚部26を収容状態(第1角度位置)に保持するためのストッパとなる。本実施形態において、第1磁石38Nは、磁石の所望の吸着面がN極となる態様で配置されるものを示し、第1磁石38Sは、磁石の所望の吸着面がS極となる態様で配置されるものを示し、第2磁石39N,39Sについても同様である。
【0024】
各第1磁石38N,38Sは、開口部32を臨む面が吸着面となる。第1磁石38N,38Sは、トルクヒンジ36が接続される長辺枠33aの一端と交差する一方の短辺枠33bの内側面33b1に沿って、例えば3つ並設されている。第1磁石38N,38Sは、さらに、長辺枠33aの他端と交差する他方の短辺枠33cの内側面33c1に沿って、例えば3つ並設されている。本実施形態の第1磁石38N,38Sは、内側面33b1では開口部32を臨んでN極、S極、S極の順で配列され、内側面33c1では開口部32を臨んでS極、N極、N極の順で配列されている。
【0025】
各第2磁石39N,39Sは、支持部33の内側面33b1,33c1を臨む面が吸着面となる。第2磁石39N,39Sは、脚部26を収容状態とした場合に内側面33b1に対向する一方の外側面26cに沿って、例えば3つ並設されている。第2磁石39N,39Sは、さらに、収容状態で内側面33c1に対向する他方の外側面26dに沿って、例えば3つ並設されている。各第2磁石39N,39Sは、それぞれ各第1磁石38N,38Sと吸着可能に対向する。従って、本実施形態の第2磁石39N,39Sは、外側面26cでは内側面33b1を臨んでS極、N極、N極の順で配列され、外側面26dでは内側面33c1を臨んでN極、S極、S極の順で配列されている。このように磁石38N,38S,39N,39Sは、N極とS極が適宜交互に並ぶことで、より高い吸着力を発生できる。磁石38N,38S,39N,39Sの設置数や配置順は上記に限定されないことは勿論である。
【0026】
ここで、トルクヒンジ36の具体的な構成例及びその動作について、脚部26の回動角度及び磁石38N,38S,39N,39Sによるストッパ作用との関係を示して説明する。
【0027】
図6Aは、図3中のVI-VI線に沿う模式的な断面図であり、脚部26を第1角度位置とした状態を示す。図6Bは、図6Aに示す位置から脚部26を第1方向に回動させた状態を示す断面図である。図6Cは、図6Aに示す状態から脚部26を第2方向に回動させた状態を示す断面図である。
【0028】
図3に示すように、トルクヒンジ36は、支持部33に対してはブラケット40を用いて長辺枠33aに連結され、脚部26に対してはブラケット41を用いて基端縁26bに連結されている。ブラケット40,41は、例えば薄い金属プレートであり、ねじ、両面テープ、又は接着剤等を用いて支持部33及び脚部26に固定される。
【0029】
図6A図6Cに示すように、トルクヒンジ36は、ブラケット40を介して支持部33に固定される軸筒部36aと、ブラケット41を介して脚部26に固定されるシャフト36bとを有する。軸筒部36a及びシャフト36bは、その軸方向が長辺枠33a及び基端縁26bの長手方向に沿って配置される。軸筒部36aは、例えば金属板金をC字状或いは円筒状に形成し、内側にシャフト36bが挿入される中空部を形成したものである。軸筒部36aの内周面の一部には、中空部側へと突出した平面部44が形成されている。シャフト36bは、例えば円柱状の金属シャフトであり、軸筒部36aの中空部に摺動可能に挿入することができる外径を有する。シャフト36bの外周面の一部には、切欠状の平面部45が形成されている。
【0030】
トルクヒンジ36は、軸筒部36aの内周面とシャフト36bの外周面の摺動抵抗、及び平面部44,45同士の摺動抵抗によって回転トルクを発生する。トルクヒンジ36は、平面部44,45同士が摺動しない位置では、軸筒部36aの内周面とシャフト36bの外周面の相互の嵌め合い設計や形状設計等によって生じる摺動抵抗によって回転トルクが制御され、角度に応じて適宜変化する。一方、トルクヒンジ36は、平面部44,45同士が摺動する位置では、平面同士の摩擦による大きな摺動抵抗を発生し、回転トルクが急激に増大する。
【0031】
図6Aに示す第1角度位置において、シャフト36bは、平面部45が軸筒部36aの平面部44に当接しない位置にある。例えば第1角度位置において、平面部45は、一方の第1端部45aが平面部44の一方の第1端部44aから大きく離間した位置にあり、他方の第2端部45bが平面部44の他方の第2端部44bに近接した位置にある。第1角度位置では、軸筒部36aの内周面とシャフト36bの外周面の摺動抵抗が最小となるように、好ましくは略ゼロとなるように設計されている。このため、脚部26は磁石38N,38S,39N,39Sの吸着力のみで第1角度位置に保持される。
【0032】
図6Aに示す第1角度位置にある脚部26をキックスタンドとして使用する場合は、脚部26を指先等で第1方向(支持面24aの裏面から突出する方向)に向かって押圧する。第1角度位置では、脚部26が磁石38N,38S,39N,39Sの吸着力のみで保持されているため、ユーザは容易に脚部26の回動を開始させることができる。
【0033】
トルクヒンジ36は、脚部26が第1角度位置と第2角度位置との間にある所定位置(例えば略10度)までは、回転トルクが最小の状態を維持されることが好ましい。そうするとユーザは脚部26を容易に第1方向へと回動開始させることができる。さらに、第1角度位置と所定角度との間で回転トルクが最小であると、例えば脚部26を第2角度位置から第1角度位置に戻して収容状態とする際の操作性が向上する。すなわち、第2角度位置から第1方向とは逆の第2方向に脚部26を回動させた際、所定角度を通過すると回転トルクが最小となるため、脚部26は実質的にフリーな状態となる。その結果、脚部26は磁石38N,38S,39N,39S同士の吸引力によって容易に且つ確実に第1角度位置に戻り、そのまま保持される。
【0034】
他方で、仮にトルクヒンジ36が第1角度位置である程度大きな回転トルクを生じる構成であると、回転トルクが磁石38N,38S,39N,39S同士の吸着力に勝ってしまい、脚部26が第1角度位置に完全に戻らない可能性も考えられる。勿論、トルクヒンジ36が発生する回転トルクの大きさや、磁石38N,38S,39N,39S同士の吸着力の大きさ等によっては、第1角度位置でも回転トルクをある程度は生じるにように構成してもよい。
【0035】
上記した所定角度を過ぎて脚部26がさらに第1方向に回動されると、軸筒部36aの内周面とシャフト36bの外周面の嵌め合い設計等による摺動抵抗が次第に増大する。例えば図5に示す略30度位置では、トルクヒンジ36が十分な回転トルクを生じるため、脚部26をキックスタンドとして安定して使用できる。
【0036】
脚部26がさらに第1方向に回動され、図6Bに示す角度(例えば略60度)になると、第1端部44a,45aが当接して平面部44,45同士が摺動を開始し、トルクヒンジ36の回転トルクが急速に増大する。このため、例えば図4に示す第2角度位置(略90度)ではスタンド14が大きく寝た角度にあるにも関わらず、大きな回転トルクによって脚部26を安定して保持することができる。その結果、スタンド14が潰れたり、ぐたついたりすることを防止できる。
【0037】
次に、例えばユーザが誤って第1角度位置にある脚部26を第1方向とは逆の第2方向に向かって押圧した場合を考える。この場合は、図6A及び図6Cに示すように、脚部26が第1角度位置から第2方向へと回動された直後に第2端部44b,45bが当接して平面部44,45同士が摺動を開始する。そのため、トルクヒンジ36の回転トルクは回動開始直後から急上昇する。その結果、ユーザは回動方向を間違えたことにすぐに気付くことができる。
【0038】
図7に示すように、トルクヒンジ36は、第1角度位置において、平面部44,45の第1端部44a,45a間だけでなく、第2端部44b,45b間もある程度離間した設計とすることもできる。そうすると、トルクヒンジ36は、実質的に第1方向及び第2方向への回動をいずれも許容した構造となる。その結果、スタンド14は、表裏面の区別なく、脚部26を所望の回動方向に開いて起立させることが可能となる。
【0039】
図1及び図2に戻り、帯部28は、上記の長辺枠33aとは反対側の長辺枠33dの縁に沿って接続されている。
【0040】
帯部28は、長辺枠33dの全長より僅かに短い全長を有し、電子機器50(図5参照)の側面50bを支持可能な幅を有している。帯部28の一面には長尺方向に沿って複数筋の滑り止め部材51が設けられている(図4参照)。滑り止め部材51は、例えばラバーである。帯部28は、2枚の表面材が張り合わされて形成されている。この表面材は、例えばスエード、フェルト、又は皮革等の生地材であり、厚み方向に多少の弾性を有している。これにより帯部28は可撓性があり柔軟である。本実施形態では、枠体24及び脚部26の表面も帯部28と同様な表面材で覆われている。図4及び図5に示すスタンド14の使用状態姿勢において、枠体24は適度な角度に維持された状態で、可撓性のある帯部28は長辺枠33dから曲げられて載置面Gに載置される。
【0041】
バー30は、帯部28における枠体24との接続縁28aとは逆の先端縁28bに沿って設けられている。バー30は磁石に対して吸着する材質であり、本実施の形態では鉄材(ステンレス材等の合金を含む)の丸棒である。バー30は、帯部28よりやや長く、該帯部28から突出している箇所にはキャップ30aが被せられている。バー30は上記の凹部16に挿入される部分であり、該凹部16に挿入可能な太さと長さになっている。凹部16とバー30との長さはほぼ等しく、該バー30は凹部16の内部で長尺方向にずれることがない。なお、帯部28を形成している表面材は、該帯部28だけでなく枠体24及びバー30を覆うように連続している。帯部28は、バー30を持たず、先端縁28bがキーボード12と着脱不能に接続されていてもよい。
【0042】
このようなキーボード・スタンドセット10において、スタンド14をキーボード12に装着する際には、図2に示すように、バー30を凹部16に挿入すると該バー30が磁石18によって吸着されて固定される。これによりキーボード12とスタンド14とが組み合わされる。一方、スタンド14をキーボード12から引っ張ると、バー30が磁石18との吸着力に抗して凹部16から抜ける。これにより、スタンド14はキーボード12から取り外される。
【0043】
本実施形態に係るスタンド14で支持される電子機器50の一例としては、図5に示すように、いわゆるフォルダブルPCを例示できる。勿論、スタンド14及びキーボード・スタンドセット10は、タブレット式PCやスマートフォン等の他の薄型電子機器にも適用可能である。
【0044】
電子機器50はフォルダブルPCであり、中央のヒンジ部52でつながった第1筐体54と第2筐体56とを備える。電子機器50の背面50aの裏側には、第1筐体54から第2筐体56にかけての略全面に亘る折り畳み可能なディスプレイを備える。このディスプレイは、例えばタッチパネル式の有機ELである。電子機器50はディスプレイに表示されるソフトウェアキーボードによって入力が可能であるとともに、キーボード12からの入力も可能である。第1筐体54と第2筐体56とをヒンジ部52で折り畳むとディスプレイも折り折り畳まれる。
【0045】
図5に示すように、キーボード・スタンドセット10は電子機器50を縦に起立した状態で保持することができる。第1筐体54には枠体24の磁石34に対応する位置に磁石又は鉄材等の吸着体が設けられている。この場合、スタンド14の枠体24は第1筐体54だけを支持しており、第2筐体56はスタンド14から突出していて重心がやや高い位置にあるが、スタンド14は第1筐体54を磁力により吸着しており、電子機器50は安定する。勿論、キーボード・スタンドセット10は電子機器50を横に起立した状態で保持することもできる。この場合、スタンド14と第1筐体54との間で磁力による吸着作用はないが、筐体54,56が左右に並ぶことで重心が低い位置にあるため電子機器50は安定する。
【0046】
電子機器50は、側面50bが帯部28に当接して滑り止め部材51の作用によって滑ることなく安定する。また、電子機器50の下端部はキーボード12の後側面に当接するため前方にずれることがない。脚部26はトルクヒンジ36の作用により任意の角度に維持することができるため、ディスプレイ58が見やすいように枠体24の傾斜角度を調整することができる。
【0047】
キーボード12は無線式であることから電子機器50との有線接続は不要である。そのため、キーボード12はスタンド14から取り外してある程度離れた箇所に置いてもキー入力等の操作が可能である。
【0048】
以上のように、本実施形態のスタンド14は、支持部33の内側面33b1,33c1に設けられ、開口部32を臨む第1磁石38N,38Sと、内側面33b1,33c1に対向する脚部26の外側面26c,26dに設けられ、第1磁石38N,38Sと吸着可能な第2磁石39N,39Sと、を備える。
【0049】
従って、当該スタンド14は、脚部26を開口部32に収容した収容状態において、脚部26が支持部33に対して各磁石38N,38S,39N,39Sによって保持される。その結果、スタンド14は、脚部26をキックスタンドとして使用しない持ち運び時等に全体を薄いプレート状に構成して小型・薄型化することができる。しかもスタンド14は、脚部26を収容状態に保持するためのストッパとして磁石38N等を用いており、物理的なストッパ部材が不要である。このため、脚部26及び支持部33の厚みを薄型化することができる。また、物理的なストッパではなく磁石38N等の吸着力で脚部26を保持する構成としたことで、逆方向への回動時にストッパが破損することもない。換言すれば、スタンド14は、脚部26を2方向へ回動可能に構成することもできる(図7参照)。
【0050】
上記では、脚部26の左右の外側面26c,26dに第2磁石39N,39Sを設け、これと対向する支持部33の左右の内側面33b1,33c1に第1磁石38N,38Sを設けた構成を例示した。しかしながら、磁石38N,38S,39N,39Sは、左右の内側面33b1,33c1及び外側面26c,26dの一方のみに設けてもよい。また、磁石38N,38S,39N,39Sは、トルクヒンジ36側とは反対の長辺枠33d及び先端縁26aに設けてもよい。但し、磁石の吸着力は、物理的なストッパに比べて低い傾向にあるため、脚部26の収容状態での安定性を考慮すると、上記したように左右の内側面33b1,33c1及び外側面26c,26dの両方にそれぞれ設けることが好ましい。
【0051】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0052】
上記では、スタンド14は、キーボード12と接続される構成を例示したが、スタンド14は、キーボード12と接続されない単独のスタンドとして用いることもできる。この場合、スタンド14は、例えばバー30を電子機器50の筐体54,56に搭載された磁石に吸着させて用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 キーボード・スタンドセット
12 キーボード
14 スタンド
24 枠体
26 脚部
28 帯部
32 開口部
33 支持部
36 トルクヒンジ
38N,38S 第1磁石
39N,39S 第2磁石
50 電子機器

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7