(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110100
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240807BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014459
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】更谷 安紀子
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】降水量に基づいて、内水及び外水のうち、少なくとも一方による浸水度を建物毎に予測する情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、建物に設けられ、建物の建設地での降水量を測定する測定部と、建物の建設地を含む地域での降水量の許容量を特定する許容量特定部と、降水量が許容量を超えた場合の降水量と許容量の差と、建物の浸水度の予測値との対応関係を、建物の仕様に基づいて特定する対応関係特定部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられ、前記建物の建設地での降水量を測定する測定部と、
前記建物の建設地を含む地域での降水量の許容量を特定する許容量特定部と、
前記降水量が前記許容量を超えた場合の前記降水量と前記許容量の差と、前記建物の浸水度の予測値との対応関係を、前記建物の仕様に基づいて特定する対応関係特定部とを備える、情報処理装置。
【請求項2】
複数の建物のそれぞれに設けられ、前記各建物の建設地での降水量を測定する測定部と、
前記建物毎に、前記各建物の建設地を含む地域での降水量の許容量を特定する許容量特定部と、
前記降水量が前記許容量を超えた場合の前記降水量と前記許容量の差と、前記各建物における浸水度の予測値との対応関係を、前記各建物の仕様に基づいて特定する対応関係特定部とを備える、情報処理装置。
【請求項3】
前記測定部で測定された降水量に対して、閾値を設定して、前記閾値を超えた場合に、前記建物の利用者に対して警告を実施する警告部を有する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記降水量の許容量は、前記建物の前記建設地を含む前記地域にある河川の水位が決壊水位となる場合の降水量を用いて設定される、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記降水量の許容量は、さらに前記河川の上流域の流域雨量指数を用いて設定される、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記降水量の許容量は、前記建物の前記建設地を含む前記地域の排水限界を用いて設定される、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記建物の浸水度の前記予測値は、前記建物の地盤面の高さ及び前記建物の床面の高さのうち、少なくとも一方をさらに用いて設定される、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記建物の浸水度の実測値が得られた場合に、前記対応関係特定部は、前記実測値に基づいて、前記対応関係を更新する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降水量に基づいた浸水度を予測する情報処理装置に係り、特に、降水量に基づいて、内水及び外水のうち、少なくとも一方による浸水度を建物毎に予測する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気象災害に対する防災行動又は避難行動を行うべきかどうかの判断は、多くの場合、降水量情報等若しくは気象警報等の気象情報、又は地方自治体から発表される災害情報等を参考にして行われている。また、豪雨時の河川氾濫による浸水の深さのハザードマップ、又は排水機能の限界による浸水マップも参考にされている。しかしながら、上記の判断は、個々人によって行われるため、判断結果が個人間で異なる場合があり得る。これに対して、近年、気象災害に対する対策の支援を行う支援装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、支援の対象場所に対応する気象情報であって、警報又は注意報を含む気象情報、及び対象場所の周辺における対象災害に関連する関連情報を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した気象情報及び関連情報のうちから、推定する予測情報に応じて選択された複数の情報に基づいて、対象災害の被害に関連して予測される予測情報を推定する予測処理部と、予測処理部が推定した予測情報に基づいて、対象災害に対する防災行動を提案する行動提案部と、行動提案部が提案した防災行動に対応した指示情報を出力部から出力させる出力処理部とを備える防災支援装置が記載されている。また、特許文献1には、内水氾濫における降雨強度と水位の上昇速度との対応関係が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、支援の対象場所に対応する気象情報を利用しており、気象災害時の被害を場所(エリア)単位で特定することができる。一方、特許文献1の技術では、土地の水捌け、及び建物の排水能力等が反映されていない。また、建物の立地状況又は建物の構造等によっては降水量が少ない場合でも浸水する可能性があり、その点を考慮する必要がある。以上の理由から、建物毎に浸水度を予測するシステムの開発が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、降水量に基づいて、内水及び外水のうち、少なくとも一方による浸水度を建物毎に予測する情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の情報処理装置によれば、建物に設けられ、建物の建設地での降水量を測定する測定部と、建物の建設地を含む地域での降水量の許容量を特定する許容量特定部と、降水量が許容量を超えた場合の降水量と許容量の差と、建物の浸水度の予測値との対応関係を、建物の仕様に基づいて特定する対応関係特定部とを備える、ことにより解決される。
上記のように構成された本発明の情報処理装置では、建物の建設地での降水量に基づいて、内水及び外水のうち、少なくとも一方による浸水度を建物毎に予測できる。
【0008】
また、本発明の情報処理装置によれば、複数の建物のそれぞれに設けられ、各建物の建設地での降水量を測定する測定部と、建物毎に、各建物の建設地を含む地域での降水量の許容量を特定する許容量特定部と、降水量が許容量を超えた場合の降水量と許容量の差と、各建物における浸水度の予測値との対応関係を、各建物の仕様に基づいて特定する対応関係特定部とを備える、ことにより解決される。
上記のように構成された本発明の情報処理装置では、各建物の建設地での降水量に基づいて、内水及び外水のうち、少なくとも一方による浸水度を建物毎に予測できる。
【0009】
また、上記の情報処理装置において、測定部で測定された降水量に対して、閾値を設定して、閾値を超えた場合に、建物の利用者に対して警告を実施する警告部を有すると、好適である。
上記の構成によれば、豪雨時に避難する等の退避行動を促すことができる。
また、上記の情報処理装置において、降水量の許容量は、建物の建設地を含む地域にある河川の水位が決壊水位となる場合の降水量を用いて設定されると、より好適である。
上記の構成によれば、降水量の適切な許容量が得られる。
また、上記の情報処理装置において、降水量の許容量は、さらに河川の上流域の流域雨量指数を用いて設定されると、さらに好適である。
上記の構成によれば、降水量の許容量の精度が高くなる。
【0010】
また、上記の情報処理装置において、降水量の許容量は、建物の建設地を含む地域の排水限界を用いて設定されると、なお一層好適である。
上記の構成によれば、降水量の適切な許容量が得られる
また、上記の情報処理装置において、建物の浸水度の予測値は、建物の地盤面の高さ及び建物の床面の高さのうち、少なくとも一方をさらに用いて設定されると、より一段と好適である。
上記の構成によれば、建物の浸水度の予測値の精度が高くなる。
また、上記の情報処理装置において、建物の浸水度の実測値が得られた場合に、対応関係特定部は、実測値に基づいて、対応関係を更新すると、より一段と好適である。
上記の構成によれば、建物の浸水度の予測値の精度が高くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の情報処理装置によれば、降水量に基づいて、内水及び外水のうち、少なくとも一方による浸水度を建物毎に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態の情報処理装置の配置例を示す模式図であり、(b)は本発明の一実施形態の情報処理装置の機能の一例を示す模式図である。
【
図2】河川水位と、降水量との関係を示すグラフである。
【
図3】外水における建物の浸水の深さと、降水量との関係を示すグラフである。
【
図4】内水における建物の浸水の深さと、降水量との関係を示すグラフである。
【
図5】外水と内水における建物の浸水の深さと、降水量との関係を合わせて示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態の情報処理装置の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<本発明の一つの実施形態に係る情報処理装置について>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して図示している。また、図中に示すサイズ(寸法)等についても、実際のものとは異なっている。
【0014】
図1(a)は本発明の一実施形態の情報処理装置の配置例を示す模式図であり、(b)は本発明の一実施形態の情報処理装置の機能の一例を示す模式図である。
図1(a)及び(b)に示す情報処理装置10は、建物11が1棟の建物である場合の例である。
1棟の建物11は、定められた建設地B、つまり、建設地Bとして計画された土地に建てられている。
情報処理装置10は、
図1(a)に示すように、例えば、建物11に設けられている。
情報処理装置10は、
図1(b)に示すように、測定部12、許容量特定部14、及び対応関係特定部16を有する。測定部12は、建物に設けられており、建物11の建設地Bでの降水量を測定する。許容量特定部14は、建物11の建設地Bを含む地域での降水量の許容量を特定する。対応関係特定部16は、建設地Bでの降水量が許容量を超えた場合の降水量と許容量の差と、建物11の浸水度の予測値との対応関係を建物11の仕様に基づいて特定する。
また、情報処理装置10は、
図1(b)に示すように、建物11の利用者(図示せず)に警告を実施する警告部18を有する。さらに、情報処理装置10は、取得部20を有し、取得部20は、建物11の建設地Bを含む地域での近隣に存在する河川の水位上昇量、河川の上流域の流域雨量指数、豪雨時の河川氾濫による浸水の深さのハザードマップ情報、及び排水機能の限界による浸水マップ情報等を取得する。
【0015】
また、情報処理装置10は、
図1(b)に示すように、メモリ22と制御部24と表示制御部25と表示部26とを有する。情報処理装置10の測定部12、許容量特定部14、対応関係特定部16、警告部18、取得部20、メモリ22及び表示制御部25は、制御部24によって制御される。
表示制御部25は表示部26に接続されており、表示部26の画面(図示せず)に画像を表示させる。
情報処理装置10では、測定部12、許容量特定部14、対応関係特定部16、警告部18、取得部20、メモリ22、表示制御部25及び表示部26により、処理ユニット13が構成されている。
【0016】
表示部26は、例えば、情報処理装置10の機能によって得られた各種の画像を表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。
また、情報処理装置10は、スマートフォン(図示せず)又はタブレット端末(図示せず)の情報端末の画面に、情報処理装置10の機構によって得られた画像を表示させることもできる。この場合、情報端末が表示装置15を兼ねる。
【0017】
メモリ22は、測定部12、許容量特定部14、対応関係特定部16及び取得部20での各種の情報を記憶するものである。メモリ22は、特に限定されるものではなく、公知の各種の記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)を利用できる。
表示制御部25は、測定部12、許容量特定部14、対応関係特定部16及び取得部20によって得られた各種の情報を、表示装置15の画面に表示させる。
情報処理装置10において、許容量特定部14、対応関係特定部16、警告部18、取得部20及び表示制御部25は、例えば、ROM(Read Only Memory)等に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)が実行されるコンピュータによって構成されてもよいし、専用回路で構成された専用装置であってもよく、上述のようにプログラムがクラウド上で実行されるようにサーバーで構成してもよい。
【0018】
測定部12は、建物11の建設地Bでの降水量を測定するものである。降水量を測定することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。本発明の一つの実施形態では、測定部12として、公知の降水量計を用いることができる。また、測定部12は、制御部24に接続されている。
【0019】
許容量特定部14は、上述のように建物11の建設地Bを含む地域での降水量の許容量を特定する。
対応関係特定部16は、上述のように降水量が上記の許容量を超えた場合の降水量と許容量の差と、建物11の浸水度の予測値との対応関係を建物11の仕様に基づいて特定する。
【0020】
警告部18は、建物11の利用者(図示せず)に、例えば、音、振動、又は画像を用いて、降水量が閾値を超えたことを警告するものである。警告部18は、建物11の利用者(図示せず)に警告できれば、その構成は特に限定されるものではなく、ベル、スピーカ、及びモニター等が利用可能である。これ以外に、警告部18として、例えば、スマートフォン又はタブレット端末等の情報端末を利用することもできる。情報端末の機能を利用して、音、振動、又は画像を用いて建物11の利用者に警告する。
建物11の利用者は、建物11の住民だけでなく、建物11に居る人も含まれる。このため、建物11に偶然居合わせた人も、建物11の利用者に該当する。
【0021】
取得部20は、上述の建物11の建設地Bを含む地域での近隣に存在する河川の水位上昇量、河川の上流域の流域雨量指数、豪雨時の河川氾濫による浸水の深さのハザードマップ情報、及び排水機能の限界による浸水マップ情報を取得することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。取得部20は、例えば、インターネットに接続し、上述の近隣に存在する河川の水位上昇量、河川の上流域の流域雨量指数、浸水の深さのハザードマップ情報、及び排水機能の限界による浸水マップ情報をダウンロードする通信部(図示せず)を有する。
なお、取得部20は、取得先からの取得情報が更新できるように構成されていることが好ましい。取得情報の更新は、図示しないキーボード及びマウス等の入力部を用いてもよい。また、例えば、通信部にインターネット等を通じてアクセスして、取得先からの取得情報を更新してもよい。
【0022】
次に、上述の降水量の許容量、浸水の深さと降水量との関係等について説明する。
ここで、
図2は河川水位と、降水量との関係を示すグラフである。
図3は外水における建物の浸水の深さと、降水量との関係を示すグラフである。
図4は内水における建物の浸水の深さと、降水量との関係を示すグラフである。
先ず、降水量の許容量のうち、外水を想定した場合について説明する。
ここで、外水とは、堤外地を流れる川の水のことである。外水による氾濫を外水氾濫という。なお、外水氾濫については、建物11の近隣に河川があり、その河川の決壊により、近隣の建物11において浸水が発生するケースが想定される。
これに対して、建物11の建設地Bを含む地域の排水能力を超える多量の雨が降ることで、排水量が降水量に追い付かず建物11又は当該地域の土地が水に浸かる現象を内水氾濫という。内水氾濫時に排水しきれない水を内水という。
【0023】
決壊の対象の河川について、
図2に示すように河川水位のうち、決壊水位の降水量を求める。決壊水位の降水量のことを決壊降水量という。決壊降水量を特定することが、建物11の建設地Bを含む地域での降水量の許容量を特定することである。河川の水位が決壊水位となる場合の降水量を用いて、降水量の許容量を設定することにより、降水量の適切な許容量が得られるため、好ましい。
許容量特定部14は、決壊降水量を、例えば、決壊の対象となる河川の水位に基づいて特定するが、対象の河川の近隣に存在する河川の水位上昇量、及び河川の上流域の流域雨量指数を用いて決壊降水量を特定してもよい。対象の河川の近隣に存在する河川の水位上昇量、又は河川の上流域の流域雨量指数を用いることにより、降水量の許容量の精度が高くなるため、好ましい。
許容量特定部14で得られた決壊降水量が降水量の許容量である。ここで、対象の河川の決壊により、その河川の周辺に建設された建物11に浸水が発生するとする。すなわち、本発明では、降水量が決壊降水量を超えた場合に、建物11において外水による浸水が発生するという前提が設定されている。
【0024】
対応関係特定部16は、降水量と、浸水度(浸水の深さ)との対応関係を建物11の仕様に基づいて特定する。
建物11の仕様とは、建物11の外部状況等である。建物11の外部状況は、例えば、対象の河川からの距離、建設地Bの周囲における近隣に存在する河川の有無、平地、丘陵地、及び崖下等の建設地Bの地形である。また、建物11の地盤面の高さ(GL)及び建物11の床面の高さ(FL)のうち、少なくとも一方が、建物11の仕様に含まれる。建物11の排水機能も建物11の仕様に含まれる。建物11の地盤面の高さ(GL)及び建物11の床面の高さ(FL)のうちの、少なくとも一方、又は建物11の排水機能を、建物の浸水度の予測値に用いることにより、建物11の浸水度の予測値の精度が高くなるため、好ましい。
特定された降水量と浸水度(浸水の深さ)との対応関係として、例えば、
図3に示すように外水における建物の浸水の深さと降水量との関係が例示される。
図3では、
図2に示す決壊降水量(降水量の許容量)を、浸水の深さをゼロ、すなわち、基準にしている。
図3の降水量は、降水量が許容量を超えた場合の降水量と許容量の差に該当する。
【0025】
図3の曲線30は、降水量に対する浸水の深さの変化を示している。同図の曲線30が表しているように、降水量に対して、浸水の深さは必ずしも単調に増加していない。これは、建物11の仕様、例えば、建物11の外部状況、及び建物11の排水機能等によっては、建物11の周囲に外水が入りにくかったり、外水が来ても排水量が外水量に勝る場合には浸水に至らないからである。また、対象の河川の大きさにより、当該河川が決壊した場合に発生する外水の量が異なる。河川が大きいと、決壊後に浸水の深さが急激に増加するが、河川が小さいと、決壊後の浸水の深さの増加は緩やかである。なお、
図3に示す曲線30は、
図3に示す形状に、特に限定されるものではない。
図3に示す曲線30は、例えば、建物11の地盤面の高さ(GL)及び建物11の床面の高さ(FL)等の外部状況、建物外構の排水機能、並びに近隣河川の大きさに基づいて特定される。
以下、例えば、降水量x(mm)に対する浸水の深さをy(m)としたとき、浸水の深さがy=b(x-a)+c(x-a)
2のような二次関数で表されるとした場合について説明する。なお、上記式において、aは、y=0のときの降水量xの値である。b及びcは、それぞれ傾きを表す係数である。
上記式において、y=0のときの降水量xの値(a)は、外部状況(例えば、建物11の地盤面の高さ(GL)及び建物11の床面の高さ(FL))に応じて設定される。
傾きbは、建物外部状況として外構の排水機能及び近隣河川の大きさに応じて設定される。傾きcは、建物内部状況として建物内の排水機能に応じて設定される。
【0026】
図3に示す浸水の深さに対しては、閾値が設定される。この際、浸水の深さに対する閾値Dbについては、建物11に重要物が保管されていたり、建物11に免震構造が設置されている場合には、浸水の深さに対する閾値Dbを小さくする。そして、設定した閾値Dbに基づいて、危険降水量Rbを設定する。
以上までの手順により、複数の建物11のそれぞれについて、降水量に基づいて、外水による浸水度を建物11毎に予測できる。
そして、測定部12で測定された降水量が、
図3に示す危険降水量Rbを超えた場合、警告部18が建物11の利用者に警告を発する。これにより、例えば、豪雨時に河川の堤防が決壊した場合、建物11の利用者に対して、避難等の退避行動を促すことができる。
【0027】
次に、降水量の許容量のうち、内水を想定した場合について説明する。
内水を想定する場合、先ず、建物11の建設地Bを含む地域の排水限界に相当する降水量を求める。排水限界に相当する降水量のことを排水限界降水量という。
許容量特定部14は、例えば、各地域の排水機能の限界値を示す浸水マップを用いて排水限界降水量を求める。
なお、排水限界降水量を特定することが、建物11の建設地Bを含む地域での降水量の許容量を特定することである。降水量の許容量を、建物11の建設地Bを含む地域の排水限界を用いて設定することにより、降水量の適切な許容量が得られる。
許容量特定部14で得られた排水限界降水量が、降水量の許容量である。そして、本発明では、降水量が排水限界降水量を超えた場合に、建物11において内水による浸水が発生するという前提が設定されている。
【0028】
対応関係特定部16は、降水量と、浸水度(浸水の深さ)との対応関係を建物11の仕様に基づいて特定する。建物11の仕様は、上述の通りである。
特定された降水量と浸水度(浸水の深さ)との対応関係として、例えば、
図4に示すように内水における建物の浸水の深さと降水量との関係が例示される。
図4では、排水限界降水量(降水量の許容量)を、浸水の深さをゼロ、すなわち、基準にしている。
図4の降水量は、降水量が許容量を超えた場合の降水量と許容量の差に該当する。
【0029】
図4の曲線32は、降水量に対する浸水の深さの変化を示している。同図の曲線32が表しているように、降水量に対して、浸水の深さは必ずしも単調に増加していない。これは、建物11の仕様、例えば、建物11の外部状況、建物11の排水機能等によっては、建物11の周囲に内水が入りにくかったり、内水が来ても排水量が内水量に勝る場合には浸水に至らないからである。また、河川の決壊とは異なり、内水の場合、外水よりも水の流入量が少ないことから、降水量に対する浸水の深さの増加度合いは、比較的緩やかである。このため、浸水の深さの増加度合いは、外水の場合に比べて緩やかである。なお、
図4に示す曲線32は、
図4に示す形状に、特に限定されるものではない。
図4に示す曲線32は、例えば、建物11の地盤面の高さ(GL)及び建物11の床面の高さ(FL)等の外部状況、並びに建物外構の排水機能に基づいて特定される。
以下、例えば、降水量x(mm)に対する浸水の深さをy(m)としたとき、浸水の深さがy=b(x-a)+c(x-a)
2のような二次関数で表されるとした場合について説明する。なお、上記式において、aは、y=0のときの降水量xの値である。b及びcは、それぞれ傾きを表す係数である。
上記式において、y=0のときの降水量xの値(a)は、外部状況(例えば、建物11の地盤面の高さ(GL)及び建物11の床面の高さ(FL))に応じて設定される。
傾きbは、建物外部状況として外構の排水機能に応じて設定される。傾きcは、建物内部状況として建物内の排水機能に応じて設定される。
【0030】
図4に示す浸水の深さに対しては、外水と同様に閾値が設定される。この際、浸水の深さに対する閾値Dbについては、建物11に重要物が保管されていたり、建物11に免震構造が設定されている場合には、浸水の深さに対する閾値Dbを小さくする。そして、設定した閾値Dbに基づいて、危険降水量Rbを設定する。
以上までの手順により、複数の建物11のそれぞれについて、例えば、豪雨時には、その時点での降水量に基づいて、内水による浸水度を建物11毎に予測できる。
そして、測定部12で測定された降水量が、
図4に示す危険降水量Rbを超えた場合、警告部18が建物11の利用者に警告を発する。これにより、内水による浸水が発生した場合、建物11の利用者に対して、避難等の退避行動を促すことができる。
【0031】
上述のように外水と内水について、それぞれ危険降水量Rbを設定したが、これに限定されるものではない。例えば、外水氾濫と内水氾濫とが考えられる場合には、上述のように外水と内水とについて、
図5に示すように、それぞれ危険降水量Rbを設定し、危険降水量Rbが小さい方を、浸水の深さに対する閾値とするとよい。
そして、測定部12で測定された降水量が、小さい方の危険降水量Rbを超えた場合、警告部18が建物11の利用者に警告を発する。これにより、外水氾濫及び内水氾濫のうちの少なくとも一方が発生した場合に、建物11の利用者に対して、避難等の退避行動を建物11毎に促すことができる。
【0032】
なお、豪雨災害等で、建物11について浸水度(浸水の深さ)の実測値を取得した場合、上述の浸水の深さと降水量との対応関係を、建物11毎に更新することが好ましい。これにより、危険降水量Rbの精度が高くなる。
具体的には、
図3に示す外水の曲線30、及び
図4に示す内水の曲線32を更新すること、詳しくは、各曲線の形状を補正することである。これにより、危険降水量Rbの精度が高くなり、ひいては建物の浸水度の予測値の精度が高くなる。
【0033】
<<その他の実施形態について>>
図6は本発明の一実施形態の情報処理装置の他の例を示す模式図である。
図6において、
図1(a)及び(b)に示す情報処理装置10、建物11、及び建設地Bと同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図6に示す情報処理装置10aは、
図1(a)及び(b)に示す情報処理装置10とは、複数の建物11をまとめて取り扱う点で相違する。より詳しく説明すると、
図6に示す情報処理装置10は、それぞれの建物11について、各建物11の建設地Bでの降水量(以下、便宜的に各建物11での降水量という)に基づいて、内水及び外水のうち、少なくとも一方による浸水度を建物11毎に予測する。
情報処理装置10aでは、各建物11の測定部12で得られた降水量の情報が、処理ユニット13に送信される。処理ユニット13は、測定部12で得られた降水量の情報を受信する入力部28を有する以外は、
図1に示す処理ユニット13と同じ構成である。処理ユニット13では、入力部28で受信された各建物11での降水量の情報に基づいて、警告部18による警告が実施される。
また、
図6に示す情報処理装置10aでは、警告部18が建物11内に配置されている。しかしながら、処理ユニット13の警告部18を用いて、情報端末を介して各建物11に警告してもよい。
【0034】
外水を想定した場合の情報処理装置10aの処理について説明すると、先ず、
図2に示す河川水位と、降水量との関係を示すグラフを建物11毎に作成して、決壊降水量(降水量の許容量)を建物11毎に特定する。そして、
図3に示す外水における建物の浸水の深さと降水量との対応関係を建物11毎に特定する。さらには、浸水の深さに対する閾値Dbに基づく、危険降水量Rbを建物11毎に設定する。これにより、降水量に基づいて、外水による浸水度を建物11毎に予測できる。さらには、例えば、豪雨時に河川の堤防が決壊した場合、建物11の利用者に対し、避難等の退避行動を促すことができる。
【0035】
内水を想定した場合の情報処理装置10aの処理について説明すると、先ず、排水限界降水量(降水量の許容量)を建物11毎に特定する。そして、
図4に示す内水における建物の浸水の深さと降水量との対応関係を建物11毎に特定する。さらには、浸水の深さに対する閾値Dbに基づく、危険降水量Rbを建物11毎に設定する。これにより、降水量に基づいて、内水による浸水度を建物11毎に予測できる。さらには、例えば、豪雨時に、建物11の利用者に対し、避難等の退避行動を促すことができる。
また、情報処理装置10aにおいても、建物11について、浸水度(浸水の深さ)の実測値を取得した場合、上述の浸水の深さと降水量との対応関係を、建物毎に更新することが好ましい。これにより、危険降水量の精度が高くなる。
【0036】
以上までに、本発明の情報処理装置に関する一つ実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10、10a 情報処理装置
11 建物
12 測定部
13 処理ユニット
14 許容量特定部
15 表示装置
16 対応関係特定部
18 警告部
20 取得部
22 メモリ
24 制御部
25 表示制御部
26 表示部
28 入力部
B 建設地
Db 閾値
Rb 危険降水量