(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110101
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】転写シートおよび外装部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240807BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B44C1/17 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014460
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】秋田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 沙織
(72)【発明者】
【氏名】川崎 啓史
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
3B005FA04
3B005FB03
3B005FB04
3B005FB05
3B005FB13
3B005FB14
3B005FB34
3B005FC04Y
3B005FC08X
3B005FC08Y
3B005FC09X
3B005FC09Y
3B005FE04
3B005FF01
3B005FF06
3B005FG02Z
3B005FG04X
3B005GA04
3B005GB01
4F100AH03B
4F100AH03C
4F100AK01E
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK42A
4F100AK53C
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA05B
4F100CA05C
4F100CA07B
4F100CA07C
4F100CA30B
4F100CA30C
4F100CB00E
4F100EC04B
4F100EC04C
4F100EC04D
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ08B
4F100EJ08C
4F100EJ53B
4F100EJ91B
4F100EJ91C
4F100GB08
4F100HB00D
4F100JB13C
4F100JB14B
4F100JD03
4F100JD04
4F100JD09D
4F100JL09B
4F100JL09C
4F100JL14A
4F100JN01
4F100JN01D
4F100JN01E
4F100JN02D
4F100JN08D
4F100YY00D
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な耐候性を有し、かつ、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材を製造することができる転写シートを提供する。
【解決手段】透明樹脂部材を有する外装部材を製造するための転写シート10であって、離型フィルム1と、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層2と、を有し、上記転写層は、上記離型フィルム側から、第1保護層3、第2保護層4および絵柄層5を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層および上記第2保護層は、耐候剤を有し、上記転写層は、JIS K 5600-4-1に準拠して測定された隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を有し、上記低隠蔽領域において、紫外線透過率は1%以下であり、かつ、可視光透過率は40%以上である、転写シートを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂部材を有する外装部材を製造するための転写シートであって、
離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記転写層は、前記離型フィルム側から、第1保護層、第2保護層および絵柄層を、厚さ方向において、この順に有し、
前記第1保護層および前記第2保護層は、耐候剤を有し、
前記転写層は、JIS K 5600-4-1に準拠して測定された隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を有し、
前記低隠蔽領域において、紫外線透過率は1%以下であり、かつ、可視光透過率は40%以上である、転写シート。
【請求項2】
前記転写層の厚さは、5μm以上、28μm以下である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記転写層は、JIS Z 0208に準拠して測定された透湿度が、200g/m2・day以上である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項4】
前記転写層は、JIS K 7126-2に準拠して測定された酸素透過度が、1000ml/(m2・day・MPa)以上である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項5】
前記転写層は、前記絵柄層の前記第2保護層とは反対側の面に、接着層を有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項6】
前記透明樹脂部材の可視光透過率は、90%以上である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項7】
前記第1保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の転写シート。
【請求項8】
前記第2保護層が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の転写シート。
【請求項9】
前記第1保護層が、ウレタン(メタ)アクリレートを含む電子線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の転写シート。
【請求項10】
前記第2保護層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の転写シート。
【請求項11】
前記第1保護層が、前記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項12】
前記第1保護層が、前記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項13】
前記第2保護層が、前記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項14】
前記第2保護層が、前記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、請求項1に記載の転写シート。
【請求項15】
透明樹脂部材を有する外装部材の製造方法であって、
請求項1から請求項14までのいずれかの請求項に記載の転写シートを準備する準備工程と、
前記転写シートの前記絵柄層側の面が前記透明樹脂部材と対向するように、前記転写シートを前記透明樹脂部材に積層させる積層工程と、
を有する、外装部材の製造方法。
【請求項16】
前記転写シートにおける前記転写層は、前記絵柄層の前記第2保護層とは反対側の面に、接着層を有し、
前記積層工程において、前記接着層を透明樹脂部材に接着することにより、前記転写シートを透明樹脂部材に積層させる、請求項15に記載の外装部材の製造方法。
【請求項17】
前記積層工程の後に、前記転写シートから前記離型フィルムを剥離する剥離工程を有する、請求項15に記載の外装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写シートおよび外装部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建築物の内装部材または外装部材として、基体および化粧シートを有する化粧部材が用いられている。基体が透明樹脂部材である場合、透過視認性を活かすことにより、独特の意匠(透け感を有する意匠)を得ることができる。また、表現できる意匠のバリエーションの幅が広がる。しかしながら、化粧シートは、一般的に基材層を有しており、この基材層は着色されている場合がある。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂からなる着色基材層の一方の面に、印刷層、接着剤層、アンカー層およびオーバーレイフィルム層がこの順に積層された化粧シートが記載されている。また、化粧シートは、化粧シート自体の厚さが比較的厚いため、意匠に影響する場合がある。従って、化粧シートを用いた場合、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠表現には向上の余地がある。また、外装部材には、屋外曝露による劣化、特に、紫外線の影響による劣化を抑制するために、内装部材に比べて、高い耐候性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、基体である透明樹脂部材の透過視認性を活かすために、離型フィルムと、絵柄層を少なくとも含む転写層と、を有する転写シートを使用し、転写法により、透明樹脂部材に絵柄層を設けることを検討した。転写シートを用いた場合、化粧シートにおける基材層を用いる必要がないため、透明樹脂部材の透過視認性を阻害しにくい。
【0005】
また、本願発明者らは、優れた耐候性を得るために、転写シートにおける転写層に、絵柄層に加えて保護層(耐候層)を配置することを検討した。すなわち、離型フィルム、保護層および絵柄層をこの順に有する転写シートを使用し、転写法により、透明樹脂部材に、絵柄層および保護層を設けることを検討した。
【0006】
外装部材には、高い耐候性が求められるため、転写層の紫外線透過率は、できるだけ低いことが好ましい。転写層の紫外線透過率を低下させるためには、保護層における耐候剤の使用量を増やすことが有効である。耐候剤の使用量を増やすと、耐候剤による黄変が生じやすくなる。そのため、転写層の可視光透過率が下がり、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠が得られにくくなる。一方、透明樹脂部材の透過視認性を活かすために、転写層の可視光透過率を高くすると、転写層の紫外線透過率を十分に低下させることが困難となる。その結果、良好な耐候性が得られにくくなる。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な耐候性を有し、かつ、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材を製造することができる転写シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示においては、透明樹脂部材を有する外装部材を製造するための転写シートであって、離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、上記転写層は、上記離型フィルム側から、第1保護層、第2保護層および絵柄層を、厚さ方向において、この順に有し、上記第1保護層および上記第2保護層は、耐候剤を有し、上記転写層は、JIS K 5600-4-1に準拠して測定された隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を有し、上記低隠蔽領域において、紫外線透過率は1%以下であり、かつ、可視光透過率は40%以上である、転写シートを提供する。
【0009】
本開示においては、透明樹脂部材を有する外装部材の製造方法であって、上述した転写シートを準備する準備工程と、上記転写シートの上記絵柄層側の面が上記透明樹脂部材と対向するように、上記転写シートを上記透明樹脂部材に積層させる積層工程と、を有する、外装部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示においては、良好な耐候性を有し、かつ、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示における転写シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における外装部材の製造方法を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。
【0013】
本明細書において、ある部材に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0014】
以下、本開示における、転写シート、外装部材の製造方法および外装部材について、詳細に説明する。
【0015】
A.転写シート
図1は、本開示における転写シートを例示する概略断面図である。
図1に示す転写シート10は、離型フィルム1、離型フィルム1の一方の面に配置された転写層2と、を有し、転写層2は、離型フィルム1側から、第1保護層3、第2保護層4および絵柄層5を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。本開示において、転写層2は、JIS K 5600-4-1に準拠して測定された隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を有し、上記低隠蔽領域において、紫外線透過率は1%以下であり、かつ、可視光透過率は40%以上である。
【0016】
図2は、
図1に示す転写シート10を用いた、透明樹脂部材を有する外装部材の製造方法を例示する概略断面図である。まず、
図2(a)に示すように、上述した転写シート10を準備する。
図2(a)に示す転写層2は、厚さ方向D
Tにおいて、絵柄層5を基準として第2保護層4とは反対側に、接着層6を有する。次に、
図2(b)に示すように、転写シート10における接着層6が透明樹脂部材20と対向するように、転写シート10を透明樹脂部材20に積層させる。次に、
図2(c)に示すように、転写シート10から離型フィルム1を剥離する。これにより、転写シート10における転写層2が、透明樹脂部材20側に転写され、第1保護層3、第2保護層4、絵柄層5、接着層6および透明樹脂部材20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する、外装部材100が得られる。
【0017】
本開示によれば、転写層の低隠蔽領域において、紫外線透過率が1%以下であり、かつ、可視光透過率が40%以上であるため、良好な耐候性を有し、かつ、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材となる。上述したように、外装部材には、高い耐候性が求められるため、転写層の紫外線透過率は、できるだけ低いことが好ましい。転写層の紫外線透過率を低下させるためには、保護層における耐候剤の使用量を増やすことが有効である。耐候剤の使用量を増やすと、耐候剤による黄変が生じやすくなる。そのため、転写層の可視光透過率が下がり、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠が得られにくくなる。一方、透明樹脂部材の透過視認性を活かすために、転写層の可視光透過率を高くすると、転写層の紫外線透過率を十分に低下させることが困難となる。その結果、良好な耐候性が得られにくくなる。
【0018】
本開示においては、耐候性の向上と、透明樹脂部材の透過視認性を活かすこととの両立を図ることに着目し、鋭意研究を重ねたところ、低隠蔽領域における紫外線透過率および可視光透過率を、所定の範囲にすることにより、上記両立を図ることができることを見出した。
【0019】
また、本開示における転写シートは、通常、透明樹脂部材を有する外装部材を製造するために用いられる。外装部材(屋外用の部材)には、内装部材(屋内用の部材)に比べて、高い耐候性が求められる。例えば、化粧シートを用いて外装部材を製造する場合、強度向上を目的として、化粧シートに樹脂フィルム層を設ける場合がある。この場合、樹脂フィルム層は比較的厚い層であるため、例えば樹脂フィルム層に十分な量の耐候剤を添加することで、高い耐候性が付与される。これに対して、樹脂フィルム層に該当する層を有しない転写シートに、高い耐候性を付与することは、技術的な困難性が高い。本開示においては、通常、第1保護層および第2保護層の両方が耐候剤を含有する。これにより、第1保護層に求められる特性(例えば、耐摩耗性等の表面特性)、および、第2保護層に求められる特性(例えば密着性)を維持しつつ、高い耐候性を付与することができる。
【0020】
また、転写シートの場合、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。ここで、化粧シートの場合、通常、基材層上に絵柄層を形成し、次に、絵柄層上に第2保護層を形成し、次に、第2保護層上に第1保護層を形成する。第1保護層は、典型的には、第2保護層上に形成された第1保護層用樹脂組成物を硬化することで作製されるため、第1保護層および第2保護層の密着性は良好になる。これに対して、転写シートの場合、通常、離型フィルム上に第1保護層を形成し、次に、第1保護層上に第2保護層を形成し、次に、第2保護層上に絵柄層を形成する。第1保護層は、典型的には、離型フィルム上に第1保護層用樹脂組成物を硬化することで作製される。その硬化した第1保護層上に、第2保護層を形成するため、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。本開示においては、第2保護層は第1保護層よりも柔軟性が高い層であることが好ましい。これにより、第1保護層および第2保護層の密着性を高くすることができる。
【0021】
1.転写層
本開示における転写層は、離型フィルム側から順に、第1保護層、第2保護層および絵柄層を少なくとも有する。
【0022】
(1)隠蔽率
本開示における転写層は、JIS K 5600-4-1に準拠して測定された隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を有する。具体的に、本開示における転写層は、平面視した場合に、隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を少なくとも有する。一方、本開示における転写層は、平面視した場合に、隠蔽率が50%より大きい領域(高隠蔽領域)を有していてもよく、有していなくてもよい。高隠蔽領域は、絵柄層が濃く、透明樹脂部材の透過視認性を活かす必要がない領域である。
【0023】
本開示における転写層の隠蔽率は、以下のように測定する。
1)転写シートの隠蔽率を測定したい箇所を所定のサイズにカットする。
2)カットした転写シートの転写面の上端にテープを貼り、離型フィルムから転写層を剥離させる。その後、テープを取り除き、転写層単層を得る。
3)JIS K 5600-4-1に準拠した隠蔽率試験紙に、上記転写層単層を重ね、分光色差計(コニカミノルタ社製 分光測色計CM-3700A)にて三刺激値YWおよびYBを測定し、隠蔽率YB/YWを百分率で計算する。
【0024】
転写層の平面視面積に対する低隠蔽領域の割合は、絵柄層の着色程度や絵柄層の模様によって異なるが、例えば、5%以上であり、10%以上であってもよく、15%以上であってもよく、30%以上であってもよい。一方、転写層の平面視面積に対する低隠蔽領域の割合は、例えば、100%以下であり、95%以下であってもよく、90%以下であってもよく、80%以下であってもよい。また、上記低隠蔽領域における隠蔽率は40%以下であってもよく、35%以下であってもよい。
【0025】
(2)可視光透過率
低隠蔽領域において、可視光透過率は、通常、40%以上であり、45%以上であってもよく、50%以上であってもよい。転写層の可視光透過率が上記範囲であれば、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠表現が可能となる。上記可視光透過率は、可視光領域(波長380nm以上780nm以下の領域)の平均透過率をいう。
【0026】
また、低隠蔽領域における隠蔽率が40%以下である場合、低隠蔽領域での可視光透過率は、例えば、45%以上であってもよく、50%以上であってもよい。
【0027】
(3)紫外線透過率
低隠蔽領域において、紫外線透過率は、通常、1%以下であり、0.5%以下であってもよく、0.2%以下であってもよく、0.1%以下であってもよい。転写層の紫外線透過率が上記範囲であれば、耐候性に優れたものとなる。上記紫外線透過率は、紫外光領域(波長280nm以上350nm以下の領域)の平均透過率をいう。
【0028】
また、低隠蔽領域における隠蔽率が40%以下である場合、低隠蔽領域での紫外線透過率は、例えば、1%以下であり、0.5%以下であってもよく、0.2%以下であってもよく、0.1%以下であってもよい。
【0029】
本開示における転写層の隠蔽率が50%より大きい領域における紫外線透過率は、1%以下であってもよく、0.5%以下であってもよく、0.2%以下であってもよく、0.1%以下であってもよい。すなわち、転写層は、平面視における全領域において、紫外線透過率が1%以下であってもよく、0.5%以下であってもよく、0.2%以下であってもよく、0.1%以下であってもよい。また、本開示における転写層の隠蔽率が50%より大きい領域における可視光透過率は、絵柄層の着色程度等によっても異なるが、例えば、40%より小さく、20%以下であってもよい。
【0030】
なお、本開示においては、上記低隠蔽領域の全域で可視光透過率および紫外線透過率が上記範囲である必要はなく、少なくとも隠蔽率が50%以下と測定された箇所と同じ箇所で測定した可視光透過率および紫外線透過率が上記値以下であればよい。一方、上記低隠蔽領域の合計面積に対する、可視光透過率および紫外線透過率が上記範囲である領域の割合は、10%以上であってもよく、20%以上であってもよく、30%以上であってもよい。一方、上記低隠蔽領域の合計面積に対する、可視光透過率および紫外線透過率が上記範囲である領域の割合は、100%以下であってもよく、90%以下であってもよく、80%以下であってもよい。
【0031】
(4)厚さ
転写層の厚さ(転写層を構成する各層の総厚)は、例えば、5μm以上であり、10μm以上であってもよく、12μm以上であってもよく、14μm以上であってよい。転写層が薄いと、十分な耐候性が得られない可能性がある。一方、転写層の厚さは、30μm以下が好ましく、28μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。転写層が厚いと、透明樹脂部材の透過視認性を活かすことが困難となる可能性がある。また、転写層が厚いと、アウトガス発生時に膨れが発生する可能性がある。
【0032】
(5)層構成
本開示における転写層は、第1保護層、第2保護層および絵柄層のみを有していてもよく、他の層を含んでいてもよい。
【0033】
(i)第1保護層
本開示における転写シートは、第1保護層を有する。第1保護層は、耐候剤を含むことにより、耐候性向上に寄与する。さらに、第1保護層は、外装部材の表面特性(例えば、耐擦傷性および耐汚染性)向上にも寄与する。また、外装部材の表面特性を向上させるために、第1保護層の硬度を高くすると、第1保護層および絵柄層の密着性は低下しやすい。第1保護層および離型フィルムは、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0034】
第1保護層は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物(架橋構造体)を含むことが好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、第1保護層を構成する全樹脂成分に対して、例えば、70質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0035】
硬化性樹脂組成物の硬化物としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物としては、例えば、電子線硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらの中でも、重合開始剤が不要のため臭気が少なく、着色が生じにくいことから、電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0036】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基が挙げられる。なお、本開示において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクロイル基をいう。また、本開示において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートをいう。
【0037】
電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものをいう。電離放射線としては、例えば、電子線(EB)および紫外線(UV)が挙げられる。また、電離放射線の他の例としては、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線が挙げられる。
【0038】
電離放射線硬化性化合物は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。中でも、電離放射線硬化性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートは、カプロラクトン系ウレタンアクリレートであることが好ましい。第1保護層の耐候性および耐擦傷性を向上させやすいからである。
【0039】
また、電離放射線硬化性化合物は、カプロラクトン系ウレタンアクリレートと、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートと含んでいてもよい。この場合、第1保護層に含まれるカプロラクトン系ウレタンアクリレートの含有量をMCLUAとし、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートの含有量をMUAとする。MUAおよびMCLUAの合計に対するMCLUAの質量比(MCLUA/(MUA+MCLUA))は、例えば、40質量%以上90質量%以下であり、45質量%以上80質量%以下であってもよく、50質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0040】
カプロラクトン系ウレタンアクリレートは、通常、カプロラクトン系ポリオールと、有機イソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。合成法としては、例えば、ポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に-NCO基(イソシアナート基)を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が挙げられる。
【0041】
カプロラクトン系ポリオールとして、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500~3000、より好ましくは750~2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のポリオールを1種又は複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、カプロラクトン変性-2-ヒドロキシエチルアクリレート等が好ましく挙げられる。
【0042】
電離放射線硬化性樹脂組成物が、カプロラクトン系ポリオールを含む場合、カプロラクトン系ウレタンアクリレートは、カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートであることが好ましい。カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートとは、カプロラクトン系ウレタンアクリレートのうち、末端がジエチレングリコールであるウレタンアクリレートをいう。カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートを用いることで、第1保護層に、割れおよび白化が生じることを抑制できる。
【0043】
電離放射線硬化性化合物の数平均分子量は、例えば、300以上10000以下であり、1000以上10000以下であってもよく、2000以上10000以下であってもよい。数平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0044】
例えば、電離放射線硬化性化合物が、紫外線硬化性化合物である場合、電離放射線硬化性化合物は、光重合開始剤および光重合促進剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、チオキサントン類が挙げられる。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが挙げられる。
【0045】
第1保護層は、耐候剤を含有する。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第1保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。第1保護層は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含んでいてもよい。同様に、第1保護層は、1種または2種以上の光安定剤を含んでいてもよい。
【0046】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノ(メタ)アクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0047】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールが挙げられる。
【0048】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上10質量部以下であり、0.8質量部以上8質量部以下であってもよく、1質量部以上5質量部以下であってもよい。紫外線吸収剤の含有量が多いと、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生する可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が少ないと、十分な紫外線吸収性能が得られない可能性がある。
【0049】
第1保護層に含まれる光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0050】
第1保護層に含まれる光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、1質量部以上10質量部以下であり、1.5質量部以上8質量部以下であってもよく、2質量部以上5質量部以下であってもよい。光安定剤の含有量が多いと、光安定剤のブリードアウトが発生する可能性があり、光安定剤の含有量が少ないと、十分な光安定性が得られない可能性がある。
【0051】
第1保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤等の添加剤を含有していてもよい。第1保護層は、充填剤(フィラー)を含有していてもよく、含有していなくてもよい。充填剤としては、例えば、有機系充填剤および無機系充填剤が挙げられる。無機系充填剤としては、シリカが挙げられる。また、第1保護層が充填剤を含有しないことで、透明性の低下が抑制される。その結果、意匠性の低下が抑制される。
【0052】
また、第1保護層の厚さは、例えば2μm以上であり、3μm以上であってもよく、4μm以上であってもよい。第1保護層が薄いと、十分な耐候性が得られない可能性がある。一方、第1保護層の厚さは、例えば20μm以下であり、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。第1保護層の厚いと、第1保護層の硬度が増加し、第2保護層に対する第1保護層の追従性が低くなり、第1保護層にクラックが生じやすくなり、良好な耐候密着性が得られない可能性がある。
【0053】
(ii)第2保護層
本開示における転写シートは、第2保護層を有する。第2保護層は、耐候剤を含むことにより、耐候性向上に寄与しつつ、絵柄層との密着性向上に寄与する。第2保護層および第1保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0054】
第2保護層は、樹脂を含有する。上記樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステルが挙げられる。これらの中でも、ウレタン系樹脂が好ましい。第2保護層は、上記樹脂の硬化物(架橋構造体)を含むことが好ましい。
【0055】
第2保護層は、硬化性樹脂組成物の硬化物(特に、熱硬化性樹脂組成物の硬化物)を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。また、熱硬化性樹脂組成物は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加したものであってもよい。
【0056】
熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂またはウレタンアクリル系樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましく、ウレタンアクリル系樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物がより好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の構造をよりリジットにするために、イソシアネート系硬化剤又はエポキシ系硬化剤を含むことが好ましく、イソシアネート系硬化剤を含むことがより好ましい。中でも、黄変を抑制する観点から、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系硬化剤が好ましい。
【0057】
また、第2保護層がウレタンアクリル系樹脂を含む場合、ウレタンアクリル系樹脂は、ウレタンアクリル共重合体であることが好ましく、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体であることがより好ましい。ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、ポリカーボネートジオールと(ジ)イソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子に、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
【0058】
(ジ)イソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、o-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネートが挙げられる。
【0059】
アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0060】
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体における、アクリル成分およびウレタン成分の合計に対するウレタン成分の質量比([ウレタン成分]/([アクリル成分]+[ウレタン成分])は、例えば、70質量%以上95質量%以下であり、75質量%以上95質量%以下であってもよく、80質量%以上90質量%以下であってもよい。上記質量比を70質量%以上にすることで、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるポリカーボネート構造の割合を多くすることができるため、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体の構造がよりリジットになる。そのため、温度変化に対する変形を小さくできる。また、上記質量比を95質量%以下にすることで、第2保護層の柔軟性を確保しやすくなり、絵柄層との密着性が向上する。
【0061】
第2保護層は、耐候剤を含有する。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第2保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。耐候剤の好ましい種類および態様については、上記「(i)第1保護層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。特に、第2保護層は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。また、第2保護層は、ヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。
【0062】
第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上50質量部以下であり、3質量部以上40質量部以下であってもよく、10質量部以上35質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0063】
第2保護層に含まれる光安定剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上15質量部以下であり、1質量部以上15質量部以下であってもよく、3質量部以上10質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0064】
第2保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。また、第2保護層は、充填剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0065】
また、第2保護層の厚さは、例えば、2μm以上であり、3μm以上であってもよい。第2保護層が薄いと、絵柄層との密着性が不足する可能性がある。一方、第2保護層の厚さは、例えば、10μm以下であり、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。第2保護層が厚いと、熱による第2保護層の動きが大きくなり、第1保護層にクラックが生じやすくなり、良好な耐候密着性が得られない可能性がある。
【0066】
(iii)絵柄層
本開示における転写シートは、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、絵柄層を有する。絵柄層を設けることで、外装部材の意匠性が向上する。絵柄層および第2保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0067】
絵柄層は、インキを印刷した層である。絵柄層における絵柄(模様)としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、波目模様、ストライプ模様、金属調(メタリック)模様、錆風模様が挙げられる。
【0068】
絵柄層は、通常、着色剤およびバインダー樹脂を含有する。着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料(染料を含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等のパール顔料が挙げられる。
【0069】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂が挙げられる。
【0070】
絵柄層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、可塑剤、触媒等の添加剤を含有していてもよい。絵柄層の厚さは、例えば、0.5μm以上、20μm以下であり、1μm以上、10μm以下であってもよく、2μm以上、5μm以下であってもよい。
【0071】
(iv)接着層
本開示における転写層は、厚さ方向において、絵柄層の第2保護層とは反対側の面に、接着層を有していてもよく、有していなくてもよい。接着層は、転写シートにおける転写層を構成する層において、透明樹脂部材と接する層であることが好ましい。この場合、接着層は、転写層と透明樹脂部材との密着性を向上させるために配置される。接着層は、接着性を有する成分を含有してもよい。接着性を有する成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。
【0072】
接着層は、いわゆる粘着層であってもよい。粘着層は、常温で粘着性を有している。粘着層に含まれる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー系樹脂が挙げられる。
【0073】
また、接着層は、熱溶着層(ヒートシール層)であってもよい。熱溶着層は、熱により粘着性を発現する。熱溶着層に含まれる樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルポリオール、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、スチレン-アクリル共重合系樹脂、アクリル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミド系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、これらを単独で、または、複数種を組み合わせて使用できる。
【0074】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、例えば、90℃以上150℃以下であり、95℃以上120℃以下であってもよい。また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、例えば、50℃以上85℃以下であり、55℃以上80℃以下であってもよい。また、熱溶着層が(メタ)アクリル系樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂を含有する場合、(メタ)アクリル系樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂の合計に対する、(メタ)アクリル系樹脂の割合は、例えば、30質量%以上70質量%以下であり、40質量%以上60質量%以下であってもよい。
【0075】
接着層の厚さは、例えば、0.5μm以上10μm以下であり、0.5μm以上5μm以下であってもよい。接着層の厚みが上記範囲内であると、外装部材の製造時に、接着層と透明樹脂部材との密着性を良好にしやすくできる。
【0076】
(v)転写層
本開示における転写層は、ベタ層(インキをベタ塗りした層)を有さないことが好ましい。ベタ層は、下地隠蔽層として機能し、例えば不透明色の層である。ベタ層を有さないことで、低隠蔽領域が得られやすい。
【0077】
上記転写層は、JIS Z 0208に準拠して測定された透湿度が、高いことが好ましい。アウトガス発生時に膨れが発生することを抑制できるからである。上記透湿度は、例えば200g/m2・day以上であり、250g/m2・day以上であってもよく、280g/m2・day以上であってもよい。一方、上記透湿度は、例えば400g/m2・day以下である。
【0078】
上記転写層は、JIS K 7126-2に準拠して測定された酸素透過度が、高いことが好ましい。アウトガス発生時に膨れが発生することを抑制できるからである。上記酸素透過度は、例えば1000ml/(m2・day・MPa)以上である。一方、上記酸素透過度の上限は特に限定されない。
【0079】
2.離型フィルム
本開示における転写シートは、第1保護層の第2保護層とは反対側の面に、離型フィルム(第1離型フィルム)を有する。離型フィルムおよび第1保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0080】
離型フィルムは、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、例えば、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、カーボネート系樹脂が挙げられる。
【0081】
離型フィルムは、エステル系樹脂またはオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。エステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、PETまたはPBTが好ましく、PETがより好ましい。
【0082】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0083】
また、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する離型フィルム付外装部材を得る観点から、離型フィルムは、60°グロス値が25%以上であることが好ましい。上記60°グロス値は、30%以上であってもよく、35%以上であってもよい。離型フィルムの60°グロス値は、グロスメーター(BYK社製 micro-TRI-gloss光沢計)を用い、JIS Z8741:1997に準拠した方法により測定した値である。具体的には、離型フィルムの転写面と反対側の面を上に向け、グロスメーターを置き60°の光沢値を読み取ることによって行う。なお、60°グロス値は、例えば、離型フィルムの任意の10箇所において測定した値の平均値である。
【0084】
また、離型フィルムの転写層とは反対側の面は、算術平均表面粗さSaが0.5μm以下であることが好ましい。透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する離型フィルム付外装部材が得られるからである。上記算術平均表面粗さSaは、0.4μm以下であってもよい。
【0085】
算術平均表面粗さSaは、JIS B0601:1994に記載されている2次元粗さパラメータであるRaを3次元に拡張したものであり、基準面に直交座標軸X、Y軸を置き、粗さ曲面をZ(x,y)、基準面の大きさをLx、Lyとすると、下記式(i)で算出される。なお、式(i)中、A=Lx×Lyである。
【0086】
【0087】
離型フィルムの転写層とは反対側の面の算術平均表面粗さSaの測定は、具体的には、以下の測定機器および測定条件で行う。
・測定機器
キーエンス社製3D形状測定機 VK-X1000
・解析ソフト
形状測定レーザマイクロスコープ VK-X100/X200シリーズ 解析アプリケーション
・測定条件
5倍レンズ
・測定面積
横幅500μm×縦幅500μm
【0088】
離型フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムにおける機械方向(MD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。延伸フィルムにおける幅方向(TD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。また、離型フィルムの厚さは、例えば、10μm以上200μm以下であり、15μm以上150μm以下であってもよく、20μm以上100μm以下であってもよい。
【0089】
3.転写シート
本開示における転写シートは、離型フィルムおよび転写層(少なくとも、第1保護層、第2保護層および絵柄層)を、厚さ方向において、この順に有する。
【0090】
本開示における転写シートは、転写層の離型フィルムとは反対側の面に、第2離型フィルムを有していてもよい。例えば、転写シートをロール状に巻き取って製造した場合に、ブロッキングの発生を抑制できる。第2離型フィルムは、通常、後述する積層工程の前に、転写シートから剥離される。第2離型フィルムの詳細については、上述した第1離型フィルムに記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0091】
4.転写シートの製造方法
本開示における転写シートの製造方法は特に限定されないが、例えば、離型フィルムの面に第1保護層を形成し、次いで、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に第2保護層を形成し、次いで、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に絵柄層を形成する方法が挙げられる。
【0092】
第1保護層の形成方法としては、例えば、離型フィルムの面に、第1保護層を形成するための組成物を塗工し、硬化させる方法が挙げられる。上記組成物の塗工方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。上記硬化方法としては、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線を照射する方法が挙げられる。
【0093】
第2保護層の形成方法としては、例えば、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、第2保護層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて硬化させる方法が挙げられる。上記組成物の塗工方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。上記硬化方法としては、例えば、熱が挙げられる。また、絵柄層の形成方法としては、例えば、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、着色剤、バインダー樹脂および溶剤を含有するインキを塗工する方法が挙げられる。また、転写層は、上述した接着層を有していてもよい。接着層の形成方法としては、例えば、絵柄層の第2保護層とは反対側の面に、接着層を形成するための組成物を塗工する方法が挙げられる。
【0094】
5.用途
本開示における転写シートは、透明樹脂部材を有する外装部材の製造に用いられる。本開示における転写シートを用い、転写法により、透明樹脂部材に上述した転写層を設けることにより、良好な耐候性を有し、さらに、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材を得ることができる。
【0095】
B.外装部材の製造方法
本開示においては、透明樹脂部材を有する外装部材の製造方法であって、上述した転写シートを準備する準備工程と、上記転写シートの上記絵柄層側の面が上記透明樹脂部材と対向するように、上記転写シートを透明樹脂部材に積層させる積層工程と、を有する、外装部材の製造方法を提供する。「転写シートの絵柄層側の面」とは、例えば
図1に示すように、離型フィルム1を基準とした場合に絵柄層5側に位置する、転写シート10の面をいう。
【0096】
本開示によれば、上述した転写シートを用いることで、良好な耐候性を有し、さらに、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材を得ることができる。
【0097】
図2は、本開示における外装部材の製造方法を例示する概略断面図である。
図2については、上述した「A.転写シート」で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0098】
1.準備工程
本開示における準備工程は、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および絵柄層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを準備する工程である。転写シートは、上述した「A.転写シート」と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0099】
2.積層工程
本開示における積層工程は、転写シートの絵柄層側の面が透明樹脂部材と対向するように、転写シートを透明樹脂部材に積層させる工程である。
【0100】
(1)透明樹脂部材
本開示における透明樹脂部材は、樹脂を含む。透明樹脂部材に含まれる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂(ABS系樹脂)、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂が挙げられる。
【0101】
透明樹脂部材の可視光透過率は、例えば70%以上であり、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。透明樹脂部材の可視光透過率が低いと、透過視認性を活かした意匠表現が困難になる場合がある。可視光透過率の測定方法については、上述した内容と同様である。一方、透明樹脂部材の紫外線透過率は、例えば10%以下であり、8%以下であってもよく、6%以下であってもよい。紫外線透過率の測定方法については、上述した内容と同様である。透明樹脂部材は、無色透明であってもよく、着色透明であってもよい。
【0102】
透明樹脂部材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、シート状、立体形状が挙げられる。また、透明樹脂部材は、平面部を有していてもよく、曲面部を有していてもよく、平面部および曲面部の両方を有していてもよい。また、透明樹脂部材は、凸部、凹部、凸条部、凹条部、貫通部の少なくとも一つを有していてもよい。
【0103】
(2)積層方法
積層工程においては、転写シートの絵柄層側の面が透明樹脂部材と対向するように、転写シートを上記透明樹脂部材に積層させる。例えば、転写シートが、上述した接着層を有する場合、転写シートにおける接着層を透明樹脂部材に接着することにより、転写シートを透明樹脂部材に積層させることが好ましい。
【0104】
例えば、転写シートが上述した接着層を有しない場合、転写シートおよび透明樹脂部材を、接着剤層を介して積層してもよい。具体的には、転写シートの絵柄層側の面が透明樹脂部材と対向するように、転写シートを透明樹脂部材に接着剤層を介して積層させてもよい。
【0105】
接着剤層は、転写シートと透明樹脂部材との接着性を得るために、転写シートの絵柄層側の面、および、透明樹脂部材の間に配置される。透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を得るために、接着剤層は、透明であることが好ましい。
【0106】
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができる。例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。この接着剤層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂、スチレン-アクリル共重合系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も適用し得る。また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の各種粘着剤を適宜選択して用いることができる。接着剤層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上、5μm以下である。
【0107】
転写シートおよび透明樹脂部材を密着させる方法としては、例えば、ラミネート法が挙げられる。ラミネート法では、例えば、転写シートおよび透明樹脂部材を有する積層体を、転写シート側から加熱および加圧する。加熱および加圧の方法としては、例えば、ロール転写装置を用いる方法が挙げられる。加熱時の温度および加圧時の圧力は、転写シートおよび透明樹脂部材が良好に接着するように、適宜選択される。
【0108】
また、本開示における外装部材の製造方法は、積層工程の後に、第1保護層から離型フィルムを剥離する剥離工程を有していてもよい。
【0109】
3.外装部材
本開示において製造される外装部材は、第1保護層、第2保護層、絵柄層および透明樹脂部材を、この順に有する。外装部材は、第1保護層の第2保護層とは反対側の面に、離型フィルムを有している離型フィルム付外装部材であってもよく、離型フィルムを有しない外装部材であってもよい。
【0110】
本開示において製造される外装部材は、良好な耐候性を有し、さらに、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材となる。外装部材の用途としては、例えば、建材が挙げられる。建材の具体例としては、住宅、カーポート、工場、店舗、病院等の建築物の軒天井、外壁、屋根等の外装部材が挙げられる。また、外装部材は、屋外フェンスまたは屋外パーテーションとして用いることもできる。
【0111】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0112】
[実施例1]
(転写シートの作製)
離型フィルムとして、PETフィルム(ダイアホイルE130-26、三菱ケミカル製)を用意した。離型フィルムの転写層が配置される側の面とは反対側の面の60°グロス値は27%、算術平均表面粗さSaは0.3μmであった。PETフィルムの面に、下記の第1保護層形成用の樹脂組成物を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の樹脂組成物>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/多官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:4質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)3質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)1質量部)
・光安定剤:3質量部
(製品名:LS-3410、日本乳化剤株式会社製)
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0113】
次に、得られた第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ2μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=90/10(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)18質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)17質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0114】
次に、得られた第2保護層の面に、グラビア印刷機を用いて、厚さ2μmの絵柄層(抽象柄A)を形成した。抽象柄Aは、黄褐色系着色部、青緑色系着色部および紫色系着色部を含む柄である。さらに、得られた絵柄層の面に、下記の熱溶着層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ1μmの熱溶着層を形成した。
<熱溶着層形成用の樹脂組成物>
・塩ビ-酢ビ共重合体(Tg:約65℃)/アクリル系樹脂(Tg:約100℃)の混合物:100質量部
(塩酢ビ成分/アクリル成分=50/50(質量比))
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0115】
これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層は、転写層となる。転写層の厚さは、10μmであった。
【0116】
(外装部材の作製)
上記で得られた転写シートにおける熱溶着層と、透明樹脂部材(アクリル部材、厚さ2mm、可視光透過率92.9%、紫外線透過率6.2%)とが対向するように配置し、ラミネーター(ナビタスマシナリー製RT-300)を用い、ラミロール温度180℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し、転写シートおよび透明樹脂部材を密着させた。その後、離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0117】
[実施例2]
(転写シートの作製)
離型フィルムとして、PETフィルム(ダイアホイルE130-26、三菱ケミカル製)を用意した。離型フィルムの転写層が配置される側の面とは反対側の面の60°グロス値は27%、算術平均表面粗さSaは0.3μmであった。PETフィルムの面に、下記の第1保護層形成用の樹脂組成物を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の樹脂組成物>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/多官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:4質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)3質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)1質量部)
・光安定剤:3質量部
(製品名:LS-3410、日本乳化剤株式会社製)
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0118】
次に、得られた第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ2μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=90/10(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)18質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)17質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0119】
次に、得られた第2保護層の面に、グラビア印刷機を用いて、厚さ2μmの絵柄層(抽象柄B)を形成した。抽象柄Bは、濃灰色系着色部および白色系着色部を含む柄である。さらに、得られた絵柄層の面に、下記の熱溶着層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ1μmの熱溶着層を形成した。
<熱溶着層形成用の樹脂組成物>
・塩ビ-酢ビ共重合体(Tg:約65℃)/アクリル系樹脂(Tg:約100℃)の混合物:100質量部
(塩酢ビ成分/アクリル成分=50/50(質量比))
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0120】
これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層は、転写層となる。転写層の厚さは、10μmであった。
【0121】
(外装部材の作製)
上記で得られた転写シートにおける熱溶着層と、透明樹脂部材(アクリル部材、厚さ2mm、可視光透過率92.9%、紫外線透過率6.2%)とが対向するように配置し、ラミネーター(ナビタスマシナリー製RT-300)を用い、ラミロール温度180℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し、転写シートおよび透明樹脂部材を密着させた。その後、離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0122】
[実施例3]
(転写シートの作製)
離型フィルムとして、PETフィルム(ダイアホイルE130-26、三菱ケミカル製)を用意した。離型フィルムの転写層が配置される側の面とは反対側の面の60°グロス値は27%、算術平均表面粗さSaは0.3μmであった。PETフィルムの面に、下記の第1保護層形成用の樹脂組成物を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の樹脂組成物>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/多官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:4質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)3質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)1質量部)
・光安定剤:3質量部
(製品名:LS-3410、日本乳化剤株式会社製)
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0123】
次に、得られた第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ2μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=90/10(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)18質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)17質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0124】
次に、得られた第2保護層の面に、グラビア印刷機を用いて、厚さ2μmの絵柄層(木目柄A)を形成した。木目柄Aは、黒色着色部および茶色着色部を含む柄である。さらに、得られた絵柄層の面に、下記の熱溶着層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ1μmの熱溶着層を形成した。
<熱溶着層形成用の樹脂組成物>
・塩ビ-酢ビ共重合体(Tg:約65℃)/アクリル系樹脂(Tg:約100℃)の混合物:100質量部
(塩酢ビ成分/アクリル成分=50/50(質量比))
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0125】
これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層は、転写層となる。転写層の厚さは、10μmであった。
【0126】
(外装部材の作製)
上記で得られた転写シートにおける熱溶着層と、透明樹脂部材(アクリル部材、厚さ2mm、可視光透過率92.9%、紫外線透過率6.2%)とが対向するように配置し、ラミネーター(ナビタスマシナリー製RT-300)を用い、ラミロール温度180℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し、転写シートおよび透明樹脂部材を密着させた。その後、離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0127】
[実施例4]
(転写シートの作製)
離型フィルムとして、PETフィルム(ダイアホイルE130-26、三菱ケミカル製)を用意した。離型フィルムの転写層が配置される側の面とは反対側の面の60°グロス値は27%、算術平均表面粗さSaは0.3μmであった。PETフィルムの面に、下記の第1保護層形成用の樹脂組成物を、乾燥後の塗工量が18g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ18μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の樹脂組成物>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/多官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:4質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)3質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)1質量部)
・光安定剤:3質量部
(製品名:LS-3410、日本乳化剤株式会社製)
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0128】
次に、得られた第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ7μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=90/10(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)18質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)17質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0129】
次に、得られた第2保護層の面に、グラビア印刷機を用いて、厚さ2μmの絵柄層(抽象柄A)を形成した。抽象柄Aは、黄褐色系着色部、青緑色系着色部および紫色系着色部を含む柄である。さらに、得られた絵柄層の面に、下記の熱溶着層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ1μmの熱溶着層を形成した。
<熱溶着層形成用の樹脂組成物>
・塩ビ-酢ビ共重合体(Tg:約65℃)/アクリル系樹脂(Tg:約100℃)の混合物:100質量部
(塩酢ビ成分/アクリル成分=50/50(質量比))
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0130】
これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層は、転写層となる。転写層の厚さは、28μmであった。
【0131】
(外装部材の作製)
上記で得られた転写シートにおける熱溶着層と、透明樹脂部材(アクリル部材、厚さ2mm、可視光透過率92.9%、紫外線透過率6.2%)とが対向するように配置し、ラミネーター(ナビタスマシナリー製RT-300)を用い、ラミロール温度180℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し、転写シートおよび透明樹脂部材を密着させた。その後、離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0132】
[実施例5]
(転写シートの作製)
離型フィルムとして、PETフィルム(ダイアホイルE130-26、三菱ケミカル製)を用意した。離型フィルムの転写層が配置される側の面とは反対側の面の60°グロス値は27%、算術平均表面粗さSaは0.3μmであった。PETフィルムの面に、下記の第1保護層形成用の樹脂組成物を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の樹脂組成物>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/多官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:4質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)3質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)1質量部)
・光安定剤:3質量部
(製品名:LS-3410、日本乳化剤株式会社製)
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0133】
次に、得られた第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ2μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=90/10(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)18質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)17質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0134】
次に、得られた第2保護層の面に、グラビア印刷機を用いて、厚さ2μmの絵柄層(抽象柄A)を形成した。抽象柄Aは、黄褐色系着色部、青緑色系着色部および紫色系着色部を含む柄である。さらに、得られた絵柄層の面に、下記の熱溶着層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ1μmの熱溶着層を形成した。
<熱溶着層形成用の樹脂組成物>
・塩ビ-酢ビ共重合体(Tg:約65℃)/アクリル系樹脂(Tg:約100℃)の混合物:100質量部
(塩酢ビ成分/アクリル成分=50/50(質量比))
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0135】
これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。第1保護層、第2保護層、絵柄層および熱溶着層は、転写層となる。転写層の厚さは、10μmであった。
【0136】
(外装部材の作製)
上記で得られた転写シートにおける熱溶着層と、透明樹脂部材(ポリカーボネート部材、厚さ2mm、可視光透過率86.5%、紫外線透過率0.25%)とが対向するように配置し、ラミネーター(ナビタスマシナリー製RT-300)を用い、ラミロール温度180℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し、転写シートおよび透明樹脂部材を密着させた。その後、離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0137】
[比較例1]
(転写シートの作製)
離型フィルムとして、PETフィルム(ダイアホイルE130-26、三菱ケミカル製)を用意した。離型フィルムの転写層が配置される側の面とは反対側の面の60°グロス値は27%、算術平均表面粗さSaは0.3μmであった。PETフィルムの面に、下記の第1保護層形成用の樹脂組成物を、乾燥後の塗工量が5g/m2となるように塗工し、乾燥した。その後、電子線(加圧電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmの第1保護層を形成した。
<第1保護層形成用の樹脂組成物>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/多官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:4質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)3質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)1質量部)
・光安定剤:3質量部
(製品名:LS-3410、日本乳化剤株式会社製)
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0138】
次に、得られた第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ2μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=90/10(質量比))
・トリアジン系紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)18質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)17質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0139】
次に、得られた第2保護層の面に、グラビア印刷機を用いて、厚さ2μmの絵柄層(木目柄B)および厚さ2μmのベタ層(下地隠蔽層)を形成した。木目柄Bは、黒色着色部および茶色着色部を含む柄である。さらに、得られたベタ層の面に、下記の熱溶着層形成用の樹脂組成物を塗工し、乾燥させ、厚さ1μmの熱溶着層を形成した。
<熱溶着層形成用の樹脂組成物>
・塩ビ-酢ビ共重合体(Tg:約65℃)/アクリル系樹脂(Tg:約100℃)の混合物:100質量部
(塩酢ビ成分/アクリル成分=50/50(質量比))
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
【0140】
これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層、絵柄層、ベタ層および熱溶着層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。第1保護層、第2保護層、絵柄層、ベタ層および熱溶着層は、転写層となる。転写層の厚さは、12μmであった。
【0141】
(外装部材の作製)
上記で得られた転写シートにおける熱溶着層と、透明樹脂部材(アクリル部材、厚さ2mm、可視光透過率92.9%、紫外線透過率6.2%)とが対向するように配置し、ラミネーター(ナビタスマシナリー製RT-300)を用い、ラミロール温度180℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱および加圧し、転写シートおよび透明樹脂部材を密着させた。その後、離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0142】
[比較例2]
木目柄を有する市販のウィンドウフィルム(株式会社サンゲツ製CLEAS/Bronze Pearl Wood柄(品番:GF1865))を準備した。上記ウィンドウフィルムは、厚さ方向において、ハードコート層、絵柄層、PETフィルム層、アクリル系粘着剤層、離型フィルムを、この順に有する。離型フィルムを除くウィンドウフィルムの厚さは71μmであり、ウィンドウフィルムを構成するPETフィルム層の厚さは50μmであった。
【0143】
ウィンドウフィルムのセパレータを剥離し、粘着剤層と透明樹脂部材(アクリル部材、厚さ2mm、可視光透過率92.9%、紫外線透過率6.2%)とが対向するように配置し、ラミネーター(ナビタスマシナリー製RT-300)を用い、ラミロール温度30℃、搬送速度2m/minの条件で、ウィンドウフィルム側から加圧し、転写シートおよび透明樹脂部材を密着させた。その後、離型フィルムを剥離し、外装部材を得た。
【0144】
[評価]
各実施例および各比較例で得られた、転写シートおよび外装部材について、以下の評価を行った。
【0145】
(隠蔽率の測定)
得られた転写シートの転写層は、測定箇所によって隠蔽率が異なる。そのため、隠蔽率が最も大きくなると推定される箇所、および、隠蔽率が最も小さくなると推定される箇所を含む5ヶ所の測定箇所を特定し、以下の測定方法により隠蔽率を測定した。結果を表1に示す。
【0146】
・測定方法
1)得られた転写シートの隠蔽率を測定したい箇所を所定のサイズにカットした。
2)カットした転写シートの転写面の上端にテープを貼り、離型フィルムから転写層を剥離させる。その後、テープを取り除き、転写層単層を得た。
3)JIS K 5600-4-1に準拠した隠蔽率試験紙に、上記転写層単層を重ね、分光色差計(コニカミノルタ製CM-3700A)にて三刺激値YWおよびYBを測定し、隠蔽率YB/YWを百分率で計算した。
【0147】
なお、比較例2では、ウィンドウフィルムの隠蔽率を測定したい箇所を所定のサイズにカットし、その後、カットしたウィンドウフィルムの粘着剤層を、JIS K 5600-4-1に準拠した隠蔽率試験紙に重ね、分光色差計(コニカミノルタ製CM-3700A)にて三刺激値YWおよびYBを測定し、隠蔽率YB/YWを百分率で計算した。
【0148】
(可視光透過率および紫外線透過率の測定)
上記隠蔽率の測定において隠蔽率が最小値となった測定箇所(領域X)の可視光透過率および紫外線透過率を測定した。測定対象は、離型フィルムを剥離した転写層単層、または、離型フィルムを剥離したウィンドウフィルムとし、紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製U-4000)を用い、可視光領域(波長380nm以上780nm以下)の平均透過率を可視光透過率とし、紫外光領域(波長280nm以上350nm以下)の平均透過率を紫外線透過率とした。結果を表1に示す。
【0149】
(透湿度の測定)
得られた転写シートの転写層の透湿度を測定した。測定対象は、離型フィルムを剥離した転写層単層、または、離型フィルムを剥離したウィンドウフィルムとした。JIS Z 0208に準拠したカップ法において、湿度条件B(40℃/90%)にて行った。試験開始から、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後の質量を測定し、24時間単位あたりの増加質量mを求め、WVPR(g/m2・day)=240・m/t・s(m:増加質量、t:秤量間隔時間、s:透湿面積)から透湿度を算出した。結果を表1に示す。
【0150】
(酸素透過度の測定)
得られた転写シートの転写層の酸素透過度を測定した。測定対象は、離型フィルムを剥離した転写層単層、または、離型フィルムを剥離したウィンドウフィルムとした。JIS K 7126-2に準拠し、電解センサ法により、湿度条件(23℃/50%)にて行った。試験開始から、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後の透過度を測定し、それらの平均値から、酸素透過度を求めた。
【0151】
【0152】
表1に示すように、各実施例で得られた転写シートの転写層は、隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を有することが確認された。これに対して、比較例1で得られた転写シートの転写層は、ベタ層(下地隠蔽層)を有するため、低隠蔽領域を有しないことが確認された。一方、転写シートには該当しないウィンドウフィルムである比較例2は、低隠蔽領域自体は有していたが、厚いPETフィルム層を有するため、透湿度および酸素透過度が、著しく低かった。
【0153】
(目視透け感の評価)
得られた外装部材の外観を、任意の成人20人が目視で観察し、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
〇:室内蛍光灯下で透け感が良好と答えた人が15人以上
△:室内蛍光灯下で透け感が良好と答えた人が11人~14人
×:室内蛍光灯下で透け感が良好と答えた人が10人以下
【0154】
(可視光透過率の測定)
得られた外装部材の可視光透過率を測定した。可視光透過率の測定方法は、上記と同様である。結果を表2に示す。
【0155】
(耐候性の評価)
得られた外装部材の耐候性を評価した。得られた外装部材に対し、メタルハライドランプ(MWOM)による促進耐候試験(下記の照射条件で20時間紫外線を照射した後、下記の結露条件で4時間結露を行う工程を1サイクルとして、上記サイクルを繰り返し行う試験)を600時間実施した。
【0156】
<促進耐候試験の条件>
(試験装置)
ダイプラ・ウィンテス社製、商品名「ダイプラ・メタルウェザー」
(照射条件)
照度:65mW/cm2、ブラックパネル温度:63℃、槽内湿度:50%RH、時間:20時間
(結露条件)
照度:0mW/cm2、槽内湿度:98%RH、時間:4時間
【0157】
外装部材の耐候性は、色差に基づいて評価した。具体的には、透明樹脂基材に転写した外装部材において、促進耐候試験投入前後における色差(ΔE)の値を、分光色差計(コニカミノルタ社製 分光測色計CM-3700A)を用いて測定した。また、外装部材の耐候性は、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
〇:ΔEが3.2以下である
△:ΔEが3.2より大きく6.5以下である
×:ΔEが6.5より大きい、または、表面クラックの発生がある
【0158】
(耐アウトガス性の評価)
得られた外装部材の耐アウトガス性を評価した。耐アウトガス性の評価は、外装部材を80℃オーブン下で3日間静置することにより行い、アウトガスによる膨れ有無を下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
〇:室内蛍光灯環境下で目視にて観察した際に、気泡および膨れが確認されない
△:室内蛍光灯環境下で目視にて観察した際に、微細な気泡が確認され、かつ、50cm離れて観察した際に、その気泡が確認されない。
×:室内蛍光灯環境下で目視にて観察した際に、気泡または膨れが確認され、かつ、50cm離れて観察した際にも、気泡または膨れが確認される
【0159】
【0160】
表2に示すように、低隠蔽領域において、紫外線透過率が1%以下、かつ、可視光透過率が40%以上である転写層を有する転写シートを用いた各実施例においては、良好な耐候性を有し、かつ、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材を得ることができることが確認された。一方、比較例1では、透明樹脂部材の透過視認性を活かした意匠を有する外装部材が得られなかった。また、比較例2では、耐候性および耐アウトガス性が低くなった。
【0161】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
[1]
透明樹脂部材を有する外装部材を製造するための転写シートであって、
離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
上記転写層は、上記離型フィルム側から、第1保護層、第2保護層および絵柄層を、厚さ方向において、この順に有し、
上記第1保護層および上記第2保護層は、耐候剤を有し、
上記転写層は、JIS K 5600-4-1に準拠して測定された隠蔽率が50%以下である低隠蔽領域を有し、
上記低隠蔽領域において、紫外線透過率は1%以下であり、かつ、可視光透過率は40%以上である、転写シート。
【0162】
[2]
上記転写層の厚さは、5μm以上、28μm以下である、[1]に記載の転写シート。
【0163】
[3]
上記転写層は、JIS Z 0208に準拠して測定された透湿度が、200g/m2・day以上である、[1]または[2]に記載の転写シート。
【0164】
[4]
上記転写層は、JIS K 7126-2に準拠して測定された酸素透過度が、1000ml/(m2・day・MPa)以上である、[1]から[3]までのいずれかに記載の転写シート。
【0165】
[5]
上記転写層は、上記絵柄層の上記第2保護層とは反対側の面に、接着層を有する、[1]から[4]までのいずれかに記載の転写シート。
【0166】
[6]
上記透明樹脂部材の可視光透過率は、90%以上である、[1]から[5]までのいずれかに記載の転写シート。
【0167】
[7]
上記第1保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、[1]から[6]までのいずれかに記載の転写シート。
【0168】
[8]
上記第2保護層が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、[1]から[7]までのいずれかに記載の転写シート。
【0169】
[9]
上記第1保護層が、ウレタン(メタ)アクリレートを含む電子線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、[1]から[8]までのいずれかに記載の転写シート。
【0170】
[10]
上記第2保護層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、[1]から[9]までのいずれかに記載の転写シート。
【0171】
[11]
上記第1保護層が、上記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、[1]から[10]までのいずれかに記載の転写シート。
【0172】
[12]
上記第1保護層が、上記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、[1]から[11]までのいずれかに記載の転写シート。
【0173】
[13]
上記第2保護層が、上記耐候剤として、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、[1]から[12]までのいずれかに記載の転写シート。
【0174】
[14]
上記第2保護層が、上記耐候剤として、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する、[1]から[13]までのいずれかに記載の転写シート。
【0175】
[15]
透明樹脂部材を有する外装部材の製造方法であって、
[1]から[14]までのいずれかに記載の転写シートを準備する準備工程と、
上記転写シートの上記絵柄層側の面が上記透明樹脂部材と対向するように、上記転写シートを上記透明樹脂部材に積層させる積層工程と、
を有する、外装部材の製造方法。
【0176】
[16]
上記転写シートにおける上記転写層は、上記絵柄層の上記第2保護層とは反対側の面に、接着層を有し、
上記積層工程において、上記接着層を透明樹脂部材に接着することにより、上記転写シートを透明樹脂部材に積層させる、[15]に記載の外装部材の製造方法。
【0177】
[17]
上記積層工程の後に、上記転写シートから上記離型フィルムを剥離する剥離工程を有する、[15]または[16]に記載の外装部材の製造方法。