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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011012
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】パンツ型吸収物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20240118BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20240118BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/496
A61F13/49 315Z
A61F13/49 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112668
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 佳祐
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA08
3B200DA01
3B200DA13
3B200DA25
3B200DB01
3B200DB05
(57)【要約】
【課題】パンツ型吸収物品において、着用者による補助吸収パッドの配置を一定位置に誘導することのできるものとする。
【解決手段】パンツ型使い捨ておむつ100は、腹側部110と股部120と背側部130とが長さ方向Lに連なり、腹側部110における長さ方向Lに直交する幅方向Wの側部111,112と背側部130における幅方向Wの側部131,132とが繋がって形成され、股部120の内面に吸収体150が配置されたパンツ型使い捨ておむつ100であって、股部120の内面に、パンツ型使い捨ておむつ100に重ねて使用される補助吸収パッド200の折り目240を配置する目標位置を示す目印10が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部と股部と背側部とが長さ方向に連なり、前記腹側部における前記長さ方向に直交する幅方向の側部と前記背側部における前記幅方向の側部とが繋がって形成され、前記股部の内面に吸収体が配置されたパンツ型吸収物品であって、
前記股部の前記内面に、前記パンツ型吸収物品に重ねて使用される補助吸収パッドを配置する目標位置を示す目印が形成された、パンツ型吸収物品。
【請求項2】
前記目印は、前記腹側部と前記背側部とが繋がって形成された胴回り開口を通して、視認可能に形成されている、請求項1に記載のパンツ型吸収物品。
【請求項3】
前記目印は、前記吸収体の厚さを、前記目印を除いた部分よりも薄くしたスリットにより形成された、請求項2に記載のパンツ型吸収物品。
【請求項4】
前記目印は、前記吸収体にフィットエンボスを形成したものである、請求項2に記載のパンツ型吸収物品。
【請求項5】
前記目印は、前記吸収体に、前記目印を除いた部分との間での色の差異によって視認可能に形成したものである、請求項2に記載のパンツ型吸収物品。
【請求項6】
前記目印は、前記補助吸収パッドを二つ折りにしたときの折り目に対応して、前記幅方向に沿って直線状に延びて形成されている、請求項3から5のうちいずれか1項に記載のパンツ型吸収物品。
【請求項7】
前記目印の各端部から前記幅方向の外側の領域で、かつ前記吸収体の肌面側に、前記吸収体を、前記目印を挟んで内側に向かい合わせるように変形させる弾性力を作用させる弾性部材を備えた、請求項6に記載のパンツ型吸収物品。
【請求項8】
前記目印は、前記パンツ型吸収物品の前記幅方向の中心に対して、左右対称の長さに形成されている、請求項6に記載のパンツ型吸収物品。
【請求項9】
前記目印の各端部に、前記幅方向の外側に向けて二股に分岐した、前記パンツ型吸収物品を二つ折りにしたときの折り目を誘起する誘導部が形成されている、請求項6に記載のパンツ型吸収物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型使い捨ておむつ等のパンツ型吸収物品は、その内面側、つまりパンツ型吸収物品を着用する着用者(ユーザ)の肌に接する面側に、補助吸収パッドを重ねて配置することができるようになっている。この場合、使用済みの補助吸収パッドを未使用のものに交換して、外側のパンツ型吸収物品を再使用する、という使い方ができるため、パンツ型吸収物品の消費量を抑制することができる。
【0003】
パンツ型吸収物品に補助吸収パッドを重ねて装着する場合、着用者は、便座等に座った状態でパンツ型吸収物品を膝下まで下げ、パンツ型吸収物品の胴回りの開口から内面の股部を上方からのぞき込んで、その股部に補助吸収パッドを配置する。
【0004】
ここで、着用者は、補助吸収パッドを、着用者の肌に接する面を内側にして、長手方向に二つ折りの状態とし、その二つ折りの折り目を下にして手に持ち、パンツ型吸収物品の内面の股部に差し入れ、補助吸収パッドの折り目を股部に突き当てた状態とする。
【0005】
その状態で、着用者は、二つ折りによって2枚重ねとなっている補助吸収パッドの前側部分の上端部を一方の手で持ち、後側部分の上端部を他方の手で持って、折り目を中心として前後に開くことで、二つ折り状態の補助吸収パッドを展開する。そして、着用者は、前方に開いた部分の上端付近の外面に設けられた止着部を、パンツ型吸収物品の腹側部の内面の吸収体やトップシートに係止し、後方に開いた部分の上端付近の外面に設けられた止着部を、パンツ型吸収物品の背側部の内面の吸収体やトップシートに係止して、補助吸収パッドをパンツ型吸収物品に固定する。
【0006】
しかし、着用者が、パンツ型吸収物品の股部に補助吸収パッドの折り目を突き当てる際の、その突き当てる目標位置は、着用者の勘に依存するところが大きい。しかも、パンツ型吸収物品を膝下まで下げた状態でのパンツ型吸収物品の形状はその都度異なるものであり、着用者が上方から股部をのぞき込むときの見る角度もその都度異なる。このため、着用者が補助吸収パッドの折り目を突き当てる目標位置を一定にすることが難しい。
【0007】
ところで、着用者の身体の適切な位置におむつを装着することができるように、おむつの、着用者の鼠径部に対応する位置に、外面側から視認可能の目印を設けた吸収性物品の発明(例えば、特許文献1参照)や、吸収性物品を構成するシート部材に形成される皺と重なる領域に表示が形成された表示領域を備え、その表示領域は皺が伸ばされることによって表示されるようにした吸収性物品の発明(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-216957号公報
【特許文献2】特開2022-041882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した先行技術文献は、いずれも、パンツ型吸収物品に対する補助吸収パッドを一定の位置に配置することを目的とするものではない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、着用者による補助吸収パッドの配置を一定位置に誘導することのできるパンツ型吸収物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、腹側部と股部と背側部とが長さ方向に連なり、前記腹側部における前記長さ方向に直交する幅方向の側部と前記背側部における前記幅方向の側部とが繋がって形成され、前記股部の内面に吸収体が配置されたパンツ型吸収物品であって、前記股部の前記内面に、前記パンツ型吸収物品に重ねて使用される補助吸収パッドを配置する目標位置を示す目印が形成された、パンツ型吸収物品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るパンツ型吸収物品は、着用者による補助吸収パッドの配置を一定位置に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】着用者が着用した状態を想定したパンツ型使い捨ておむつを示す斜視図である。
図2】パンツ型使い捨ておむつの両側部を切り離して前後に開いた状態を示す平面図である。
図3図2におけるA-A線に沿った面による断面を示す断面図である。
図4図2におけるB-B線に沿った面による断面を示す断面図である。
図5】二つ折りに畳まれた状態の補助吸収パッドを示す斜視図である。
図6】補助吸収パッドの折り目をおむつの内面の股部に突き当てた状態を示す模式図である。
図7】補助吸収パッドの前側部分をおむつの腹側部に向け、後側部を背側部に向けて開かれた使用状態を示す模式図である。
図8】弾性部材が、目印を挟んだ吸収体の前後の部分を、肌面側を内側にして向かい合わせるように弾性力Fを吸収体に作用させている状態を示す模式図である。
図9】周囲の領域に着色を施すことで、着色を施された領域によって囲まれて着色が施されていない目印を示す図2相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るパンツ型吸収物品の実施形態は、以下において、図面を参照して説明される。
【0015】
[構成]
<パンツ型使い捨ておむつ>
図1は着用者300が着用した状態を想定したパンツ型使い捨ておむつ100を示す斜視図、図2はパンツ型使い捨ておむつ100の両側部を切り離して前後に開いた状態を示す平面図、図3図2におけるA-A線に沿った面による断面を示す断面図、図4図2におけるB-B線に沿った面による断面を示す断面図である。図示のパンツ型使い捨ておむつ100は、本発明に係るパンツ型吸収物品の一実施形態である。
【0016】
図1に示したパンツ型使い捨ておむつ100(以下、単におむつ100という)は、腹側部110と股部120と背側部130とが長さ方向Lに連なって形成されている。腹側部110は、おむつ100の着用者(ユーザ)300の前面である腹側の主に下腹部を覆う部分に相当し、股部120は着用者300の主に股間部を覆う部分に相当し、背側部130は着用者の主に臀部を覆う部分に相当する。なお、図2に示した平面図において、長手方向(前後方向)Lに直交する方向を幅方向Wとする。幅方向Wは、おむつ100が着用者300に着用された状態で、着用者300の胴回りの周方向に対応する。
【0017】
おむつ100は、図2に示す、腹側部110の、幅方向Wにおける一方の側部111と、背側部130の、幅方向Wにおける一方の側部131とが接合され、かつ、腹側部110の、幅方向Wにおける他方の側部112と、背側部130の、幅方向Wにおける他方の側部132とが接合されている。これにより、腹側部110と背側部130とが、図1に示すように、着用者300の胴回りの周方向に繋がって、図2の長さ方向Lの端部側で胴回り開口P1を形成し、股部120の両側で足回り開口P2,P3を形成している。
【0018】
また、おむつ100は、図3に示すように、厚さ方向Dの図示下側に、つまり着用者300の肌から遠い外面側(非肌面側)に外装シート140が配置されている。そして、おむつ100は、厚さ方向Dの図示上側、つまり着用者300の肌に接する内面側(肌面側)に吸収体150が配置されている。さらに、吸収体150の長さ方向Lの両端部を、肌面側から覆うように、腹側部110及び背側部130の、幅方向Wの全域に亘る胴回り不織布170が配置されている。
【0019】
吸収体150は、図3に示すように、パルプ繊維に高吸収性樹脂(SAP;SUPERABSORBENT POLYMERS)を絡めて分布させた吸収部材152を、肌面側となる表面の液透過性シート151と非肌面側となる裏面の液不透過性シート153とで挟んで形成されている。前述したギャザーシート160は、液不透過性シート153と外装シート140との間に、一部が挟まれて接合されている。吸収体150は、図2に示すように、長さ方向Lにおいて、腹側部110の全長の半分程度と股部120の全長と背側部130の全長の半分程度とに亘って配置されている。
【0020】
(目印)
吸収体150には、股部120における長さ方向Lの略中央部に、おむつ100に重ねて使用される、後述の補助吸収パッド200を突き当てる目標位置となる目印10が形成されている。目印10は、図2の平面視において、おむつ100の幅方向Wに沿って直線状に延びて形成されている。
【0021】
目印10は、おむつ100の幅方向Wの中心Cに対して、左右対称の長さに形成されている。目印10の長手方向の長さW1は、補助吸収パッド200の幅W0(図5参照)より長い寸法であるが、補助吸収パッド200の幅W0と同じ長さでもよいし、補助吸収パッド200の幅W0より短くてもよい。
【0022】
また、目印10の長手方向(おむつ100の幅方向Wに一致)に直交する方向の寸法である幅d1は、補助吸収パッド200が二つ折りに折り畳まれた状態での厚さd0(図5参照)より長い寸法であるが、補助吸収パッド200の厚さd0と同じ幅であってもよいし、補助吸収パッド200の厚さd0より薄い幅であってもよい。
【0023】
なお、この幅d1は、後述する弾性部材20の作用によって、補助吸収パッド200の折り目240の近傍部分を、吸収体150の、目印10を挟んだ前後の部分で軽く挟むのに適した幅であることが好ましい。
【0024】
目印10は、一例として図4に示すように、吸収体150の表面の液透過性シート151と裏面の液不透過性シート153とを接合して、厚さ方向Dの寸法が、目印10以外の部分よりも薄く形成されている。つまり、目印10においては、吸収部材152が全く配置されていないか、又は吸収部材152が仮に配置されていても厚さ方向Dに圧縮された状態で液透過性シート151と液不透過性シート153とを接合していることで、厚さが薄く形成されている。なお、目印10においては、吸収部材152が仮に配置されていても、液体を吸収する機能は発揮されない。
【0025】
上述した例の目印10は、吸収部材152を予め除去したり又は薄くしたりすることで、目印10を除いた他の部分よりも厚さを薄くしたスリットを形成した状態で、そのスリットの全域で液透過性シート151と液不透過性シート153とを熱で接合して形成している。
【0026】
このように、目印10は、目印10以外の部分よりも薄く形成されていることで、着用者300が、厚さの違いに基づいた肉厚感の差異や厚さ方向の透け感の差異によって、目印10を視認することができる。なお、目印10が、この例のように、厚さの違いで形成されている場合、視覚的に認識できるのに加えて、触覚的にも認識することができる。
【0027】
なお、液透過性シート151と液不透過性シート153とが熱で接合して形成された目印10は、液不透過性となっている。
【0028】
(誘導部)
また、本実施形態のおむつ100は、図2に示すように、目印10の各端部10aに、幅方向Wの外側に向けて二股に分岐して、例えばV字状の誘導部12が形成されている。誘導部12は、目印10に沿っておむつ100を二つ折りに折り畳んだ際に、股部120の両側部(足回り開口P2,P3)が、二つ折りで重ねられた前側部分(腹側部110及び股部120の前側半分の部分)と後側部分(背側部130及び股部120の後側半分の部分)との間に折り込まれるように、折り目を誘起する部分である。この誘導部12は、上述した目印10と同じ構造で形成されている。
【0029】
二股に分岐した誘導部12のV字を形成する各直線Kに沿った2つの部分12aは、幅方向Wに対する長さ方向Lの前側への傾きと、幅方向Wに対する長さ方向Lの後側への傾きとが同一に形成されている。つまり、2つの部分12a,12aは、幅方向Wに対して互いに線対称で形成されている。
【0030】
そして、目印10に沿った折り目によりおむつ100を二つ折りに折り重ねた際に、直線Kに沿った各部分12aが折り目となって、股部120の両側部を内側に折り込む。
【0031】
(弾性部材)
また、図2に示すように、目印10の各端部10a付近から幅方向Wの外側の領域(図2において、例えば実線で示した矩形の領域)で、かつ図4に示すように、吸収体150の肌面側の液透過性シート151に、長さ方向Lに沿って長さを縮める方向の弾性力Fを作用させる弾性部材20が貼り付けられている。
【0032】
弾性部材20は、例えば、長さ方向Lに沿って伸ばされた状態の複数本の糸ゴムが不織布に固定されたものや、長さ方向Lに沿って伸ばされた状態の伸縮フィルムによって構成される。
【0033】
弾性部材20は、図2,4に示すように、その弾性力Fによって、吸収体150の肌面側に配置された液透過性シート151を長さ方向Lに縮める。一方、吸収体150の非肌面側に配置された液不透過性シート153は縮められない。したがって、弾性部材20は、吸収体150の肌面側を内側にして向かい合わせるように変形させる荷重を、吸収体150に作用させている。
【0034】
<補助吸収パッド>
図5は二つ折りに折りに畳まれた状態の補助吸収パッド200を示す斜視図、図6は補助吸収パッド200の折り目240をおむつ100の内面の股部120に突き当てた状態を示す模式図、図7は補助吸収パッド200の前側部分210をおむつ100の腹側部110に向け、後側部分220を背側部130に向けて開かれた使用状態を示す模式図である。
【0035】
図5に示した補助吸収パッド200は、本実施形態のおむつ100に重ねて用いられる補助吸収パッドの一例である。補助吸収パッド200は、細長の矩形に形成されている。着用者300が、補助吸収パッド200をおむつ100に重ねて配置するときは、図5に示すように、補助吸収パッド200の、着用者300の肌に接する面を内側にして、長手方向に二つ折りに畳まれた状態とする。
【0036】
そして、着用者300は、その二つ折り状態の補助吸収パッド200の折り目240を下に向けた姿勢で、上端部211,221を挟んで手に持ち、図6に示すように、おむつ100の内面の股部120に差し入れ、補助吸収パッド200の折り目240を股部120に突き当てた状態とする。
【0037】
補助吸収パッド200は、折り目240を中心として、図5の二点鎖線で示すように、二つ折りに畳まれた前側部分210と後側部分220を前後に離すように開いた状態で、使用される。つまり、補助吸収パッド200は、図6に示すように、折り畳まれた状態でおむつ100の股部120の内面に差し入れられた後に、図7に示すように、前側部分210をおむつ100の腹側部110に向け、後側部分220を背側部130に向けて開かれることで、おむつ100の内面に重ねられて使用される。
【0038】
補助吸収パッド200は、前側部分210の、図5に示した折り畳まれた状態での外側となる面における図示の上端部211に、止着部213が設けられている。後側部分220の外側となる面における図示の上端部221にも、止着部213と同様の止着部223が設けられている。止着部213,223は、補助吸収パッド200をおむつ100の内面に重ねた使用状態で、おむつ100の内面に配置された吸収体150の液透過性シート151に係合するものであり、この係合により、補助吸収パッド200はおむつ100に対する位置ずれを防止される。
【0039】
[作用]
本実施形態のおむつ100は、以下に説明する作用を奏する。すなわち、おむつ100に補助吸収パッド200を重ねて装着する場合、着用者300は、便座等に座った状態でおむつ100を膝下まで下げ、二つ折りに折り畳まれた補助吸収パッド200の折り目240を下にして手に持ち、上方から、おむつ100の胴回り開口P1を通して、内面の股部120をのぞき込んで、図6に示すように、胴回り開口P1から股部120に、補助吸収パッド200を差し入れ、折り目240を、股部120に突き当てた状態とする。
【0040】
ここで、おむつ100には、補助吸収パッド200の折り目240を突き当てる位置の目安となる目印10が形成されているため、着用者300は、上方から胴回り開口P1を通して、股部120の目印10を視認することができる。着用者300は、目印10を、補助吸収パッド200の折り目240を突き当てる目標位置として定め、補助吸収パッド200の折り目240をこの目印10に突き当てる。
【0041】
そして、着用者300は、図5に示すように、二つ折りによって2枚重ねとなっている補助吸収パッド200の前側部分210の上端部211を一方の手で持ち、後側部分220の上端部221を他方の手で持って、目印10に折り目240を突き当てた状態で、折り目240を中心として前側部分210と後側部分220を前後に開くことで、二つ折り状態の補助吸収パッド200を前後に展開する。
【0042】
着用者300は、前方に開いた前側部分210の止着部213を、おむつ100の腹側部110まで延びた吸収体150に係止し、後方に開いた後側部分220の止着部223を、おむつ100の背側部130まで延びた吸収体150に係止する。これにより、補助吸収パッド200をおむつ100に固定する。
【0043】
このように、実施形態のおむつ100は、目標位置として着用者300に視認させることができる目印10が形成されているため、着用者300は、補助吸収パッド200の折り目240を突き当てるべきおむつ100の目標位置を視認することができる。この結果、着用者300は、おむつ100の目印10を視覚的に確認しながら、補助吸収パッド200の折り目240をその目印10に一致させて配置することができる。
【0044】
したがって、実施形態のおむつ100は、着用者300が、補助吸収パッド200を前後に展開して補助吸収パッド200をおむつ100に固定したときの、おむつ100に対する補助吸収パッド200の、長さ方向Lに沿った配置位置を、常に一定にすることができる。
【0045】
また、目印10は、おむつ100の幅方向Wの中心Cに対して左右対称の長さに形成されているため、着用者300は、補助吸収パッド200の折り目240を目印10に沿わせた際に、目印10の各端部10aに対する折り目240の各端部と位置を視認することができる。
【0046】
これにより、着用者300は、折り目240の左端部と目印10の左端部10aとの位置関係と、折り目240の右端部と目印10の右端部10aとの位置関係とが、左右で均等になるように、目印10に対する折り目240の、幅方向Wに沿った位置を、視認しながら調整することで、おむつ100の幅方向Wの中心Cに対して、左右均等な位置に補助吸収パッド200を配置することができる。
【0047】
したがって、目印10は、おむつ100に補助吸収パッド200を配置する際の、おむつ100に対する補助吸収パッド200の、幅方向Wに沿った配置位置も一定にすることができる。
【0048】
図8は、弾性部材20が、目印10を挟んだ吸収体150の前後の部分を、肌面側を内側にして向かい合わせるように弾性力Fを吸収体150に作用させている状態を示す模式図である。
【0049】
本実施形態のおむつ100は、吸収体150に設けられている弾性部材20が、図8の矢印に示すように、目印10を挟んで吸収体150の前後の部分を、肌面側を内側にして向かい合わせるように変形させる弾性力Fを吸収体150に作用させている。したがって、図6に示すように、補助吸収パッド200の折り目240が目印10に突き当てられた際に、図8に示すように、目印10を挟んだ長さ方向Lの前後の吸収体150の部分が、目印10に突き当てられた補助吸収パッド200を挟む。
【0050】
これにより、おむつ100は、補助吸収パッド200の折り目240の近傍部分を、吸収体150によって軽く挟んで保持することができる。したがって、おむつ100は、止着部213,223がおむつ100に固定される前の補助吸収パッド200が、おむつ100に固定されるまでの期間中に位置ずれするのを防ぐことができる。
【0051】
本実施形態のおむつ10は、吸収体150の肌面側の液透過性シート151に弾性部材20が配置されているが、弾性部材20は、肌面側の液透過シート151に配置されなくてもよく、例えば、非肌面側の液不透過シート153に配置されてもよいし、又は吸収体150以外の部分に配置してもよい。つまり、本実施形態のおむつ100において、弾性部材20は、吸収体150を、その肌面側を内側にして向かい合わせるように変形させればよく、その配置に限定は無い。
【0052】
<目印の他の態様>
おむつ100における目印10は、着用者300が視認できればよく、上述した実施形態に限定されない。例えば、吸収部材152を予め除去したり又は薄くしたりすることなく、つまり、目印10は、吸収体150の、目印10以外の部分と同じ厚さのままで、目印10の輪郭となる周縁を厚さ方向Dに圧縮して薄くし、その薄くした周縁において、液透過性シート151と液不透過性シート153とを熱で接合して、輪郭だけを薄く形成した目印10であってもよい。
【0053】
また、目印10は、吸収体150の、目印10以外の部分と同じ厚さのままで、目印10の輪郭となる周縁だけ又は周縁とその内側の領域も含めた目印10の全体を、フィットエンボス(エンボス加工によって形成された多数の点状の圧搾痕)によって形成したものであってもよい。
【0054】
さらに、目印10は、上述したスリットを形成した部分の、液透過性シート151と液不透過性シート153との熱による接合と、そのスリットの輪郭の外側に形成されたフィットエンボスとを併せたものであってもよい。
【0055】
上述したスリットやフィットエンボスによって形成された目印10は、目印10以外の部分との間で、厚さの差異が形成されるため、視覚的に認識できるとともに、触覚的にも認識することが可能である。
【0056】
図9は、周囲の領域30に着色を施すことで、着色を施された領域によって囲まれて着色が施されていない目印10を示す図2相当の平面図である。おむつ100における目印10は、視覚的にのみ認識できるものであってもよい。すなわち、例えば図9に示すように、目印10の周囲の領域30に着色を施すことで、着色を施された周囲の領域30によって囲まれて着色が施されていない目印10を、色の差異によって視覚的に認識させるものであってもよい。
【0057】
なお、図9に示したものは、目印10と誘導部12との周囲の領域30を着色領域としたものであるが、着用者300に対して認識させる必要のない誘導部12については、その周囲の領域30に着色領域を設けずに、目印10のみの周囲の領域30を着色領域としてもよい。
【0058】
また、周囲の領域30は、所定の色で満遍なく均一に塗りつぶしたものであってもよいが、この場合、塗りつぶされた着色領域の液透過性が低下する可能性がある。そこで、着色領域は、所定の色で塗りつぶして形成するのではなく、周囲の領域30に、着色された小さいドットを分散して多数形成することにより、周囲の領域30の全体として着色領域であると視認できるように形成してもよい。この場合、着色された小さいドットが形成された点状部分を除いた領域は液透過性が確保されるため好ましい。
【0059】
上述した例では、目印10の周囲の領域30を着色することで、着色されていない目印10を視認可能としたが、周囲の領域30を着色する代わりに、目印10自体を着色することで、目印10を視認させるようにしてもよい。つまり、目印は、吸収体150に、目印10を除いた部分との間での色の差異によって視認可能に形成したものであってもよい。
【0060】
なお、本発明に係るパンツ型吸収物品における目印は、上述した各形態の目印10のように、細長矩形の形状として形成されたものでなくてもよい。すなわち、本発明に係るパンツ型吸収物品における目印は、目印となる細長矩形の領域の輪郭を形成するのに代えて、その目印とすべき細長矩形の領域内に、例えば「パッド装着位置」といった文字列を印字することによって、印字された文字列の範囲を、目印として視認させるようにしてもよい。この場合の文字は、上述した小さいドットの集合によって形成してもよい。
【0061】
本実施形態のおむつ10は、目印10を挟んで前後の吸収体150の肌面側を向かい合わせるように変形させる弾性部材20を有するが、おむつ100の所定位置に補助吸収パッド200を配置する上で、弾性部材20は必須のものではない。したがって、本発明に係るパンツ型吸収物品は、弾性部材20を備えていなくてもよい。
【0062】
本実施形態のおむつ10は、目印10の両端部10aにそれぞれ誘導部12を形成したものであるが、誘導部12は、おむつ10を畳む際に形成される折り目を、一定の位置に形成させるのを導くものであるため、本発明に係るパンツ型吸収物品において、誘導部は必須の構成ではなく、誘導部は無くてもよい。
【0063】
上述した説明においては、パンツ型使い捨ておむつ100を本発明に係るパンツ型吸収物品の一例として説明したが、本発明に係るパンツ型吸収物品は、補助吸収パッドを重ねて使用されるものであればよく、補助吸収パッドの交換とともに使い捨てられるおむつに限定されず、補助吸収パッドを複数回、交換するまでの期間に亘って、再使用され続けるものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 目印
100 パンツ型使い捨ておむつ(パンツ型吸収物品)
110 腹側部
120 股部
130 背側部
111,112,131,132 側部
150 吸収体
200 補助吸収パッド
240 折り目
C 中心
L 長さ方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9