(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110120
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】情報提供方法、管理システム及び充放電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240807BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240807BHJP
【FI】
H02J7/00 U
H02J7/00 P
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014496
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國田 智士
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503EA08
5G503GB06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD03
5H125EE21
(57)【要約】
【課題】蓄電素子による温室効果ガスの削減効果の把握のための新しい技術を提供すること。
【解決手段】移動体2に搭載されて負荷11,12,13Bに電力を供給する蓄電素子13Aの情報提供方法は、移動体2の運用に伴う、移動関連負荷11への蓄電素子13Aの放電電気量と、移動非関連負荷12,13Bへの蓄電素子13Aの放電電気量とをそれぞれ取得し、それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子の情報提供方法であって、
前記移動体の運用に伴う、移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得し、
前記それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する
情報提供方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提供方法であって、
前記蓄電素子の製造時に排出された温室効果ガスの排出量と、前記それぞれの放電電気量とを用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する、情報提供方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の情報提供方法であって、
前記移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量の取得の際、移動用負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動関連補機への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得する、情報提供方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の情報提供方法であって、
前記移動関連負荷及び移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電による温室効果ガスの削減量を、前記移動体が移動する距離を、化石燃料を使用して同種の移動体が移動する場合に排出される温室効果ガスの排出量から取得する、情報提供方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の情報提供方法であって、
前記移動関連負荷及び移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電による温室効果ガスの削減量を、前記移動体が移動に要した費用と同じ費用で、化石燃料を使用して同種の移動体が移動する場合に排出される温室効果ガスの排出量から取得する、情報提供方法。
【請求項6】
請求項5に記載の情報提供方法であって、
前記移動体が移動に要した費用を電費に基づいて取得する、情報提供方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の情報提供方法であって、
前記蓄電素子の充電時に、いずれの電力源で充電されているかの情報を取得する、情報提供方法。
【請求項8】
移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子を管理する管理システムであって、
前記移動体の運用に伴う、移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得し、
前記それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する
管理システム。
【請求項9】
移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子の充放電システムであって、
前記移動体の運用に伴う、移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得し、
前記それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する
充放電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、情報提供方法、移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子を管理する管理システム、及び、蓄電素子の充放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルの実現のためにCO2などの温室効果ガスの排出量の削減が求められており、電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車などの電動車両の普及が進められている。
電動車両に搭載される蓄電素子のライフサイクル全体での温室効果ガスの削減効果に対する関心が高まっている。特許文献1は、原材料の製造、電池の製造、電池の使用といった各段階における情報を共有し、各段階の排出CO2量などの情報を提供する電池評価システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様は、蓄電素子による温室効果ガスの削減効果の把握のための新しい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様に係る、移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子の情報提供方法は、前記移動体の運用に伴う、移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得し、前記それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によって、蓄電素子による温室効果ガスの削減効果の把握のための新しい技術を提供できる。蓄電素子からの、移動関連負荷への放電電気量と移動非関連負荷への放電電気量とを分けて把握することで、温室効果ガス削減効果に関する、より適正な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係るレンタカーシステムの模式図である。
【
図2】電気自動車の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】車載ECUの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】充放電装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5B】車両走行時の高電圧バッテリーの放電を説明する図である。
【
図6】高電圧バッテリーの放電電気量の内訳の計算方法を説明する図である。
【
図7】高電圧バッテリーの電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】CO
2排出量の計算例を説明する模式図である。
【
図9】電気自動車の移動距離と合計CO
2排出量との関係を示すグラフである。
【
図10】合計CO
2排出量を送信する処理のフローチャートである。
【
図11】実施形態2に係る充放電システムの模式図である。
【
図12】実施形態3に係るレンタカーシステムの模式図である。
【
図13】車両電源システムの変形例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
(1)実施形態に係る、移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子の情報提供方法は、前記移動体の運用に伴う、移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得し、前記それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する。
【0009】
「情報提供方法」を実施する主体は適宜に決定できる。例えば、情報提供方法は、蓄電素子に近接して配置される、BMS(Battery Management System)や、車載ECU(Electronic Control Unit)によって実施されてもよいし、蓄電素子とは離れて配置される遠隔コンピュータによって実施されてもよい。
情報提供方法は、V2X(Vehicle to Everything)システムによって実施されてもよい。V2Xシステムとは、電動車両などの移動体と家庭との間(V2H:Vehicle to Home)、移動体とビルとの間(V2B:Vehicle to Building)、移動体と電力網との間(V2G:Vehicle to Grid)などで電力を融通するシステムである。V2Xシステムは、充放電システムの一例である。
【0010】
「蓄電素子」は、蓄電セルであってもよいし、複数の蓄電セルを組み合わせた蓄電装置(蓄電モジュール、蓄電パック、蓄電システムなど)であってもよい。以降の説明では蓄電素子をバッテリーとも称する。
蓄電素子は、電動車両等の移動体の移動のために用いられる移動関連負荷(例えば、モーター、ヘッドライト)と、移動非関連負荷(例えば、エアーコンディショナ)に電力を供給する、複数の蓄電セルを含む蓄電素子(いわゆる、高電圧バッテリー)であってもよい。大容量であり、V2Xシステムに接続されてそれに充電状態(SOC:State Of Charge)などの情報が送られる、車載高電圧バッテリーに、本技術を適用することが好ましい。
「温室効果ガス」は、二酸化炭素ガスであってもよいし、二酸化炭素とメタン等のその他の成分とを含むガスであってもよい。
【0011】
上記構成によって、蓄電素子による温室効果ガスの削減効果の把握のための新しい技術を提供できる。蓄電素子からの、移動関連負荷への放電電気量と移動非関連負荷への放電電気量とを分けて把握することで、温室効果ガス削減効果に関する、より適正な情報を提供できる。
【0012】
(2)上記(1)に記載の情報提供方法は、前記蓄電素子の製造時に排出された温室効果ガスの排出量と、前記それぞれの放電電気量とを用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供してもよい。
「製造時に排出された温室効果ガス」は、部品原料の採掘・加工の際や、部品や蓄電素子の輸送の際に排出された温室効果ガスを含んでもよい。
【0013】
上記構成では、移動体の運用に伴う、移動関連負荷及び移動非関連負荷への蓄電素子の放電電気量を把握することにより、蓄電素子の製造時(上流)から使用時(下流)に亘る(製品ライフサイクルの複数段階に亘る)、温室効果ガスの削減効果に関する、詳細な情報を提供できる。これにより、当該情報を提供された装置(あるいは人)は、蓄電素子のライフサイクルの複数段階に亘る、温室効果ガスの削減効果を、より適正に把握できる。そのため、移動体(蓄電素子)のユーザーが、温室効果ガスの削減効果を高める移動体の使用方法を選択したり、そのような選択をすることによるインセンティブを得たり、といったサービスの提供が可能となる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)に記載の情報提供方法は、前記移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量の取得の際、移動用負荷(例えば、モーター)への前記蓄電素子の放電電気量と、移動関連補機(例えば、ヘッドライト)への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得してもよい。
【0015】
上記構成により、温室効果ガスの削減効果を、より詳細に把握できる。例えば、他の移動体との比較から、温室効果ガス削減効果に関する情報を求める場合に、他の移動体が備えていない移動関連補機への放電電気量は除外して計算を行うことができる。
【0016】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の情報提供方法は、前記移動関連負荷及び移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電による温室効果ガスの削減量を、前記移動体が移動する距離を、化石燃料を使用して同種の移動体が移動する場合に排出される温室効果ガスの排出量から取得してもよい。
【0017】
ここでいう「同種の移動体」とは、例えば、蓄電素子を搭載する移動体が車両である場合、その車両とほぼ同等の重量・体積をもつ内燃機関搭載車両である。
上記構成により、ユーザーが理解し易く、納得性の高い数値を、温室効果ガスの削減量として取得し、温室効果ガス削減効果に関す適正な情報を提供できる。
【0018】
(5)上記(1)~(3)のいずれかに記載の情報提供方法は、前記移動関連負荷及び移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電による温室効果ガスの削減量を、前記移動体が移動に要した費用と同じ費用で、化石燃料を使用して同種の移動体が移動する場合に排出される温室効果ガスの排出量から取得してもよい。
【0019】
上記構成により、ユーザーが理解し易く、納得性の高い数値を、温室効果ガスの削減量として取得し、温室効果ガス削減効果に関する適正な情報を提供できる。
【0020】
(6)上記(5)に記載の情報提供方法は、前記移動体が移動に要した費用を電費に基づいて取得してもよい。
【0021】
電費に基づいて移動体が移動に要した費用を取得することで、ユーザーが理解し易く、納得性の高い情報を提供できる。
【0022】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載の情報提供方法は、前記蓄電素子の充電時に、いずれの電力源で充電されているかの情報を取得してもよい。
【0023】
上記構成により、蓄電素子が、太陽光などのクリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量や、火力発電などの非クリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量を、温室効果ガスの排出量の計算に用いることができる。
【0024】
(8)実施形態に係る、移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子を管理する管理システムは、前記移動体の運用に伴う、移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得し、前記それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する。
【0025】
(9)実施形態に係る、移動体に搭載されて負荷に電力を供給する蓄電素子の充放電システムは、前記移動体の運用に伴う、移動関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量と、移動非関連負荷への前記蓄電素子の放電電気量とをそれぞれ取得し、前記それぞれの放電電気量を用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を提供する。
【0026】
上記構成のシステムにより、蓄電素子による温室効果ガスの削減効果の把握のための新しい技術を提供できる。蓄電素子からの、移動関連負荷への放電電気量と移動非関連負荷への放電電気量とを分けて把握することで、温室効果ガス削減効果に関する、より適正な情報を提供できる。。
【0027】
[実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本開示の実施形態は装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0028】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図10を参照して説明する。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0029】
(1)レンタカーシステム
図1を参照して、実施形態1に係るレンタカーシステム1について説明する。レンタカーシステム1は、ユーザーに貸し出し(レンタル)される1以上の電動車両2(移動体の一例)、電動車両2に搭載されている蓄電装置13(蓄電素子の一例)を充放電する充放電装置3、及び、管理コンピュータ4を備えている。充放電装置3と管理コンピュータ4とは通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0030】
電動車両2はモーター11(
図2参照)によって移動(走行)する車両であり、具体的には電気自動車(以下、電気自動車2ともいう)である。電動車両2はプラグインハイブリッド電気自動車であってもよい。電気自動車2は蓄電装置13の充放電時に充放電ケーブル28(
図4参照)を介して充放電装置3に接続される。
管理コンピュータ4は電気自動車2のレンタルを管理するコンピュータである。管理コンピュータ4は電気自動車2のレンタル料金や充電料金の管理なども行う。
【0031】
詳しくは後述するが、電気自動車2には、電気自動車2を駆動するためのモーター11に電力を供給する大容量・高電圧の蓄電装置13Aと、小容量・低電圧の蓄電装置13B(
図2参照)とが搭載されている。実施形態1に係る情報提供方法は、大容量・高電圧の蓄電装置13Aの製造時に排出された温室効果ガスの排出量と、電気自動車2の運用に伴う蓄電装置13Aの放電による温室効果ガスの削減量とを取得し、取得した排出量と削減量とを用いて得られる、温室効果ガス削減効果に関する情報を管理コンピュータ4に送信(提供)する。管理コンピュータ4(あるいは管理コンピュータ4のオペレータ)は、受信した当該情報に基づいてレンタル料金や充電料金を設定する。
実施形態1では、温室効果ガスとして二酸化炭素ガス(CO
2)を例示する。温室効果ガスは二酸化炭素とメタン等のその他の成分とを含むガスであってもよい。
【0032】
(1-1)電気自動車の電気的構成
図2に示すように、電気自動車2は、電気自動車2を駆動するためのモーター11(移動用負荷の一例)、補機12(パワーステアリング、電動ブレーキシステム、ヘッドライト、エアコンなど)、モーター11に電力を供給する大容量・高電圧(例えば400V)の蓄電装置13A、補機12に電力を供給する小容量・低電圧(例えば12V)の蓄電装置13B、DC/DCコンバータ14、充放電装置3が備える充放電ケーブル28が接続される充放電インレット15、及び、車載ECU16を備えている。
【0033】
図3に示すように、車載ECU16はCPU40、RAM41、記憶部42及び通信部43を備えている。記憶部42にはCPU40によって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。CPU40は記憶部42に記憶されているプログラムを実行することによって電気自動車2の各部を制御する。通信部43はCPU40が充放電装置3や電気自動車2の各部(蓄電装置13を含む)と通信するための通信回路である。
【0034】
(1-2)充放電装置の電気的構成
図4に示すように、充放電装置3はAC端子21、双方向変換ユニット22、制御部23、第1の通信部24、第2の通信部25、表示部26、操作部27及び充放電ケーブル28を備えている。
【0035】
AC端子21は系統電力61(
図1参照)に接続されている。系統電力61は電力事業者によって供給される電力であってもよい。双方向変換ユニット22は一端がAC端子21に接続されており、他端が充放電ケーブル28に接続されている。双方向変換ユニット22は交流電力ACを直流電力DCに変換する順変換(コンバータ機能)と、直流電力DCを交流電力ACに変換する逆変換(インバータ機能)とを選択的に行う双方向の変換回路である。
【0036】
制御部23はCPU、RAM、記憶部などを備えている。記憶部にはCPUによって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。CPUは記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって充放電装置3の各部を制御する。
第1の通信部24は制御部23が車載ECU16と通信するための通信回路である。通信は有線通信であってもよいし無線通信であってもよいが、実施形態1では有線通信を例に説明する。第2の通信部25は制御部23が管理コンピュータ4と通信するための通信回路である。
【0037】
充放電ケーブル28は電力線と信号線とを有している。充放電ケーブル28が電気自動車2の充放電インレット15に接続されると、充放電装置3の双方向変換ユニット22と蓄電装置13とが電力線を介して電気的に接続される。充放電装置3は、双方向変換ユニット22を順変換動作させることによって蓄電装置13を充電し、逆変換動作させることによって蓄電装置13を放電する。充放電ケーブル28が充放電インレット15に接続されると、制御部23と車載ECU16とが信号線を介して通信可能に接続される。
【0038】
(1-3)管理コンピュータの電気的構成
管理コンピュータ4は例えばPC(パーソナルコンピュータ)であり、CPU、RAM、記憶部、表示部及び操作部を備えている。記憶部にはCPUによって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。CPUは記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって管理コンピュータ4の各部を制御する。表示部は液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイを駆動する駆動回路などで構成されている。操作部はキーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0039】
(2)車両電源システムの構成
図5Aに示すように、高電圧系システムは、大容量・高電圧の蓄電装置(高電圧バッテリー)13Aと、モーター11を備える。補機12や、小容量・低電圧の蓄電装置(低電圧バッテリー)13Bを含む低電圧系システムは、高電圧バッテリー13Aの電圧を降圧するDC/DCコンバータ14を介して、高電圧系システムに電気的に接続される。高電圧バッテリー13Aの充放電電流を計測する電流センサ33Aと、低電圧バッテリー13Bの充放電電流を計測する電流センサ33Bとが、それぞれの充放電経路に設けられる。
【0040】
図5Bを参照し、車両走行時には、高電圧バッテリー13Aは矢印D1で示すようにモーター11に向けて放電するとともに、矢印D2で示すようにDC/DCコンバータ14を介して補機12に向けて放電する。さらに高電圧バッテリー13Aは、矢印D3で示すように低電圧バッテリー13Bに向けて放電して低電圧バッテリー13Bを充電する。すなわち、高電圧バッテリー13Aは、モーター11以外の電気負荷にも電力を供給する。車載高電圧バッテリー13Aに蓄積された電気のすべてが車両走行に用いられるわけではない。
【0041】
図6に示すように、高電圧バッテリー13Aから矢印D1で示すように、モーター11、パワーステアリング、ブレーキシステムといった、走行用負荷(移動関連負荷及び移動用負荷の一例)に電力が供給される。また、高電圧バッテリー13Aから矢印D2,D3で示すように、12Vの電圧で動作する各種負荷に電力が供給される。12V負荷は、ヘッドライト、低電圧バッテリーなどの走行関連補機(移動関連負荷及び移動関連補機の一例)と、エアコン、ラジオなどの走行非関連負荷(移動非関連負荷の一例)とを含む。
【0042】
高電圧バッテリー13Aからの放電は、以下のように分類できる。
分類1:走行用負荷への放電(走行に用いられた電力)
分類2:走行関連補機への放電
分類3:走行非関連負荷への放電
これら放電全体の電気量は、高電圧バッテリー13Aに設けられた電流センサ33Aを用いて取得できる。走行用負荷、各12V負荷への放電電気量(各負荷の消費電力量)は、動作電圧と、各負荷の消費電流と、車載ECU16にて取得される各負荷の動作時間とから計算できる。各12V負荷への放電電気量は、走行関連補機への放電電気量と、走行非関連負荷への放電電気量とを分けて把握できる。
【0043】
このような情報管理方法によって、エアコン、ラジオなどの走行非関連負荷に向けて高電圧バッテリー13Aから放電された電気量が、車両走行に用いられた電気量として扱われることを回避できる。
【0044】
図7を参照して、高電圧バッテリー13Aの電気的構成について説明する。高電圧バッテリー13Aは、複数の蓄電セル30Aが直列及び/又は並列に接続された組電池30、BMS31、及び、通信コネクタ32を備えている。BMS31は管理システムの一例である。
【0045】
組電池30はパワーライン34Pによって正の外部端子80Pに接続されており、パワーライン34Nによって負の外部端子80Nに接続されている。
【0046】
BMS31は高電圧バッテリー13Aを管理する装置である。BMS31は電流センサ33A、電圧センサ35、通信部36及び管理部37を備えている。BMS31は組電池30から供給される電力によって動作してもよい。
電流センサ33Aはパワーライン34Nに設けられている。電流センサ33Aは組電池30の充放電電流[I]を計測して管理部37に出力する。
電圧センサ35は各蓄電セル30Aの両端にそれぞれ接続されている。電圧センサ35は各蓄電セル30Aの電圧[V]を計測して管理部37に出力する。
通信部36は管理部37が車載ECU16と通信するための回路である。
【0047】
管理部37はCPUやRAMなどが1チップ化されたマイクロコンピュータ37A及び記憶部37Bを備えている。記憶部37Bにはマイクロコンピュータ37によって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。マイクロコンピュータ37は記憶部37Bに記憶されているプログラムを実行することによって高電圧バッテリー13Aの各部を管理する。
通信コネクタ32は管理部37が車載ECU16と通信するための信号線が接続されるコネクタである。
【0048】
(3)CO2削減効果に関する情報の提供
情報提供方法は、高電圧バッテリー13Aの製造時に排出されたCO2の排出量(以下、排出量Wという)と、電気自動車2の運用に伴う高電圧バッテリー13Aの放電によるCO2の削減量(以下、削減量Vという)とを用いて得られる、CO2削減効果に関する情報を管理コンピュータ4に送信(提供)する。
【0049】
実施形態1では、CO2削減効果に関する情報として、電気自動車2の合計CO2排出量を例示する。合計CO2排出量は排出量Wから削減量Vを減じた量(=排出量W-削減量V)である。合計CO2排出量は排出量Wから削減量Vを減じた量であるので、合計CO2排出量が少ないほどCO2削減効果が大きい。
以下、車載ECU16によって実行される排出量Wの取得、及び、削減量Vの取得について説明する。
【0050】
(3-1)CO2の排出量Wの取得
高電圧バッテリー13Aの製造時に排出されるCO2としては、高電圧バッテリー13Aの原料を採掘するときに排出されるCO2、採掘された原料を加工するときに排出されるCO2、加工された原料を用いて高電圧バッテリー13Aを製造する製造工程で排出されるCO2などがある。製造時に排出されるCO2には部品や高電圧バッテリー13Aの輸送の際に排出されるCO2などもあるが、便宜上、ここでは原料採掘、原料加工及び製造工程で排出されるCO2を例に説明する。
【0051】
原料を採掘するときに排出される蓄電装置1個当たりのCO2の排出量をX[kg]、原料を加工するときに排出される蓄電装置1個当たりのCO2の排出量をY[kg]、高電圧バッテリー13Aの製造工程で排出される蓄電装置1個当たりのCO2をZ[kg]としたとき、1個の高電圧バッテリー13Aの製造時に排出されたCO2の排出量W[kg]は以下の式1によって示される。
排出量W=X+Y+Z ・・・式1
【0052】
高電圧バッテリー13Aの製造メーカは、BMS31の記憶部37Bに、式1によって求めた排出量Wを記憶させる。車載ECU16は、通信部43を介してBMS31から排出量Wを取得する。
図8に示すように、車両に搭載された高電圧バッテリーが、単位電力量あたりのCO
2排出量が分かっている電力会社A~Cからの電力で、充電される場合を考える。所定距離(例えば、100km)走行時に高電圧バッテリー13Aから放電される電力の使途(走行用負荷向け、走行関連補機向け、走行非関連負荷向け)とその電力量とは、予め求めることができる。そのため、所定距離走行後の、高電圧バッテリー13Aに残存する電力量や、全体の放電電力量に対応するCO
2排出量に加え、各電力使途に対応する消費電力量とCO
2排出量も求めることができる。
【0053】
(3-2)CO2の削減量Vの取得
車載ECU16は削減量Vを計算によって取得する。ここでは削減量Vの計算方法として以下の2つの方法を例示する。
・エンジン自動車の燃費に基づく計算方法
・電気自動車の電費に基づく計算方法
【0054】
(3-2-1)エンジン自動車の燃費に基づく計算方法
エンジン自動車の燃費に基づく計算方法では、車載ECU16は、電気自動車2が移動する距離を、エンジン(内燃機関の一例)を搭載した同種の自動車(以下、エンジン自動車という)が移動する場合に排出されるCO2の排出量を取得する。電気自動車2は移動時にCO2を排出しないので、電気自動車2の移動距離と同じ距離だけエンジン自動車が移動した場合に排出されるCO2の排出量が、電気自動車2の運用に伴う高電圧バッテリー13Aの放電による削減量Vとなる。
【0055】
エンジン自動車の燃費に基づく計算方法では、CO2の削減量Vは以下の手順で計算される。以下の手順のうち車載ECU16によって実行される手順は手順3である。手順1及び手順2は事前に行われて、その結果が車載ECU16の記憶部42に記憶されている。
【0056】
手順1:エンジン自動車の移動距離と燃料消費量とから燃費を計算する。
エンジン自動車の移動距離が500km、燃料消費量が20Lである場合、燃費は以下の式2によって計算される。
燃費=500/20=25km/L ・・・ 式2
【0057】
手順2:エンジン自動車の1km移動時のCO2排出量を計算する。
燃料1L当たりのCO2排出量は燃料種によって異なる。ガソリンの場合は2.32kg/Lであるとする。燃料1L当たりのCO2排出量が2.32kg/L、燃費が25km/Lである場合、エンジン自動車の1km移動時のCO2排出量は以下の式3によって計算される。
CO2排出量=2.32/25=0.0928kg/km ・・・ 式3
【0058】
手順3:電気自動車2の移動距離からCO2の削減量Vを計算する。
電気自動車2が100km移動したとする。その場合の電気自動車2のCO2の排出量は0kgである。これに対し、エンジン自動車が100km移動した場合、CO2の排出量は以下の式4によって計算される。
CO2排出量=100×0.0928=9.28kg ・・・ 式4
従って、電気自動車2が100km移動すると、エンジン自動車が同じ距離移動した場合に比べて9.28kg(削減量V)のCO2が削減される。
【0059】
(3-2-2)電気自動車の電費に基づく計算方法
電気自動車の電費に基づく計算方法では、車載ECU16は、電気自動車2が移動に要した費用と同じ費用でエンジン自動車が移動する場合に排出されるCO2の排出量を計算する。電気自動車2は移動時にCO2を排出しないので、電気自動車2が移動に要した費用と同じ費用でエンジン自動車が移動した場合に排出されるCO2の排出量が削減量Vとなる。
電気自動車の電費に基づく計算方法では、CO2の削減量Vは以下の手順で計算される。
【0060】
手順1:電気自動車2の移動距離と消費電力量とから電費を計算する。
例えば電気自動車2の移動距離が100km、消費電力量が20kWhである場合、電費は以下の式5によって計算される。
電費=100/20=5km/kWh ・・・ 式5
このとき、電気自動車2に搭載される走行非関連負荷(
図6参照)のうち、比較対象のエンジン自動車には搭載されていない負荷による消費電力量(例えば、
図8における1kWhのうちの0.2kWh)を、全体の消費電力量(20kWh)から差し引いたうえで、式5により電費を計算してもよい。
【0061】
手順2:電気自動車2の移動距離からCO2の削減量Vを計算する。
電気自動車2の移動距離が100km、電費が5km/kWh、1kWh当たりの充電費用が25円である場合、移動に要した費用は以下の式6によって計算される。
費用=(100/5)×25=500円 ・・・ 式6
燃料1L当たりの価格が120円である場合、移動に要した費用を燃料消費量に換算すると以下の式7となる。
燃料消費量=500/120=4.2L ・・・ 式7
【0062】
燃料1L当たりのCO2排出量が2.32kg/Lであり、燃料消費量が4.2Lである場合、電気自動車2が移動に要した費用(すなわち500円)と同じ費用でエンジン自動車が移動した場合のCO2排出量は以下の式8によって計算される。
CO2排出量=2.32×4.2=9.74kg ・・・ 式8
従って、電気自動車2が100km移動すると、エンジン自動車が同じ費用で移動した場合に比べて9.74kg(削減量V)のCO2が削減される。
【0063】
(4)電気自動車の移動距離と合計CO
2排出量との関係
図9を参照して、電気自動車2の移動距離と合計CO
2排出量(=排出量W-削減量V)との関係について説明する。削減量Vは電気自動車2の移動距離に比例し、移動距離が長くなるほど削減量Vが大きくなる。合計CO
2排出量は排出量Wから削減量Vを減じた量であるので、電気自動車2の移動距離が長くなるほど合計CO
2排出量が小さくなる。言い換えると、電気自動車2の移動距離が長くなるほどCO
2削減効果が大きくなる。
図9において領域1は合計CO
2排出量が0より多い領域(すなわち排出量Wの方が削減量Vより多い領域)であり、領域2は合計CO
2排出量が0以下の領域(すなわち削減量Vの方が排出量Wより多い領域)である。
【0064】
(5)合計CO2排出量に基づく電気自動車のレンタル料金や充電料金の設定
合計CO2排出量が0より多い電気自動車2は、排出量Wの方が削減量Vより多いので、CO2削減効果が小さい。合計CO2排出量は電気自動車2の移動距離が長くなるほど小さくなるので、合計CO2排出量が0より多い電気自動車2と合計CO2排出量が0以下の電気自動車2とがある場合は、なるべく多くの電気自動車2の合計CO2排出量が0以下になるようにするために、合計CO2排出量が0より多い電気自動車2がレンタルされることが好ましい。
【0065】
このため、以下の表1に示すように、レンタカーシステム1では、合計CO
2排出量が0より多い電気自動車2の方が、合計CO
2排出量が0以下の電気自動車2よりもレンタル料金が安く設定されている。合計CO
2排出量が0より多い電気自動車2の方が、レンタル料金が安いので、合計CO
2排出量が0より多い電気自動車2のレンタルが促進される。
【表1】
【0066】
ただし、合計CO2排出量が0以下の電気自動車2がレンタルされなくなる可能性がある。このため、表1に示すように、合計CO2排出量が0以下の電気自動車2は充電料金が安く設定されている。合計CO2排出量が0以下の電気自動車2はレンタル料金が高いが、充電料金が安いので、長期間レンタルした場合には、合計CO2排出量が0より多い電気自動車2を長期間レンタルする場合に比べてトータルの料金が安くなる。このため、合計CO2排出量が0以下の電気自動車2がレンタルされなくなる可能性を低減できる。
【0067】
(6)合計CO
2排出量を送信する処理
図10を参照して、充放電システム(車載ECU16及び充放電装置3)が管理コンピュータ4に合計CO
2排出量を送信(提供)する処理について説明する。本処理は電気自動車2が充放電装置3に接続されると開始される。
S101では、車載ECU16はBMS31からCO
2の排出量Wを取得する。
S102では、車載ECU16は計算によってCO
2の削減量Vを取得する。
【0068】
S103では、車載ECU16は合計CO2排出量(=排出量W-削減量V)を求める。
S104では、車載ECU16は、S103で求めた合計CO2排出量と、電気自動車2を一意に識別するための車両識別情報とを充放電装置3に送信する。
S105では、充放電装置3は、車載ECU16から受信した合計CO2排出量と車両識別情報とを管理コンピュータ4に送信する。
【0069】
合計CO2排出量と車両識別情報とを受信した管理コンピュータ4(あるいは管理コンピュータ4のオペレータ)は、車両識別情報によって示される電気自動車2のレンタル料金や充電料金を合計CO2排出量に応じて設定する。
【0070】
(7)実施形態の効果
実施形態1に係る情報提供方法によると、電気自動車2の運用に伴う高電圧バッテリー13Aの放電によるCO2の削減量Vを考慮することにより、高電圧バッテリー13Aの製造時(上流)から使用時(下流)に亘る、すなわち製品ライフサイクルの複数段階に亘る、CO2の削減効果に関する情報(合計CO2排出量)を提供できる。これにより、当該情報を受信した管理コンピュータ4(あるいは管理コンピュータ4のオペレータ)は、高電圧バッテリー13Aのライフサイクルの複数段階に亘る、CO2の削減効果を把握できる。そのため、電気自動車2(高電圧バッテリー13A)のユーザーが、CO2の削減効果を高める電気自動車2の使用方法を選択(実施形態1ではレンタルする電気自動車2を選択)したり、そのような選択をすることによるインセンティブ(実施形態1では安いレンタル料金の適用)を得たり、といったことが可能となる。
【0071】
実施形態1に係る情報提供方法によると、電気自動車2の運用に伴う高電圧バッテリー13Aの放電によるCO2の削減量Vを、電気自動車2が移動する距離を、エンジン自動車が移動する場合に排出されるCO2の排出量から取得するので、ユーザーが理解し易く、納得性の高い数値を、CO2の削減量Vとして取得できる。高電圧バッテリー13Aからの、走行関連負荷(走行用負荷および走行関連補機)への放電電気量と、走行非関連負荷への放電電気量とを分けて、それぞれの負荷の消費電力量を把握することで、CO2削減効果に関する、より適正な情報を提供できる。
【0072】
実施形態1に係る情報提供方法によると、電気自動車2の運用に伴う高電圧バッテリー13Aの放電によるCO2の削減量Vを、電気自動車2が移動に要した費用と同じ費用でエンジン自動車が移動する場合に排出されるCO2の排出量から取得するので、ユーザーが理解し易く、納得性の高い数値を、CO2の削減量として取得できる。
【0073】
実施形態1に係る情報提供方法によると、電費に基づくことにより、電気自動車2が移動に要した費用を取得できる。
【0074】
実施形態1に係る充放電システム(充放電装置3及び車載ECU16)によると、高電圧バッテリー13Aのライフサイクルの複数段階に亘る、CO
2の削減効果を継続的に把握できる(
図9参照)。
【0075】
<実施形態2>
図11を参照して、実施形態2に係る充放電システム100について説明する。充放電システム100は、電気自動車2に搭載されている蓄電装置13Aを、交換用の蓄電装置13A(13A-1、13A-2、13A-3)と交換するシステムである。
充放電システム100は、交換用の蓄電装置13A、交換用の蓄電装置13Aを充放電する充放電装置3(
図11では図示せず)、及び、図示しない管理コンピュータを備えている。交換用の蓄電装置13Aは、電気自動車2から取り外されて交換用として充電された蓄電装置13Aである。
【0076】
実施形態2では、交換用の蓄電装置13Aの記憶部37Bに、蓄電装置13Aの製造時に排出されたCO2の排出量W、及び、当該蓄電装置13Aが搭載されていた電気自動車2の運用に伴う蓄電装置13Aの放電によるCO2の削減量Vが記憶されている。排出量Wは予め蓄電装置13Aの製造メーカによって記憶されたものである。削減量Vは車載ECU16から受信したものである。交換用の蓄電装置13Aが搭載されていた電気自動車2の車載ECU16は、蓄電装置13Aが取り外される前に削減量Vを計算によって取得し、取得した削減量VをBMS31に送信する。BMS31は車載ECU16から受信した削減量Vを記憶部37Bに記憶する。
【0077】
交換用の蓄電装置13AのBMS31は、蓄電装置13Aが充放電装置3に接続されると、記憶部37Bに記憶されている排出量Wから削減量Vを減じることによって合計CO2排出量を計算し、計算した合計CO2排出量と蓄電装置13Aの識別情報とを充放電装置3に送信する。充放電装置3は受信した合計CO2排出量と蓄電装置13Aの識別情報とを管理コンピュータに送信(提供)する。
【0078】
それらの情報を受信した管理コンピュータは、受信した合計CO2排出量と識別情報とを対応付けて記憶する。これにより、管理コンピュータに、交換用の蓄電装置13A毎に合計CO2排出量が記憶される。
合計CO2排出量の計算は充放電装置3が行ってもよい。充放電装置3が管理コンピュータに排出量Wと削減量Vとを送信し、管理コンピュータが合計CO2排出量を計算してもよい。
【0079】
図11に示す例では、交換用の蓄電装置13Aとして、合計CO
2排出量が100kgの蓄電装置13A-1、200kgの蓄電装置13A-2、及び、-100kgの蓄電装置13A-3がある。この場合、管理コンピュータは、なるべく多くの蓄電装置13Aの合計CO
2排出量が0以下になるようにするために、合計CO
2排出量が最も多い蓄電装置13A-2の使用をユーザーに推奨する。
【0080】
実施形態2に係る情報提供方法によると、交換用の蓄電装置13Aのうち合計CO2排出量が最も多い蓄電装置13Aの使用をユーザーに推奨するので、なるべく多くの蓄電装置13Aの合計CO2排出量が0以下になるようにすることができる。
【0081】
<実施形態3>
前述した実施形態1では車載ECU16と充放電装置3とで構成される充放電システムが情報提供方法を実施する場合を例示した。これに対し、実施形態3では蓄電装置13AのBMS31(管理システムの一例)が情報提供方法を実施する。
実施形態1と同様に、実施形態3に係るBMS31の記憶部37Bには排出量Wが記憶されている。BMS31は、削減量Vについては車載ECU16から取得する。BMS31は、削減量Vの計算に必要な情報を車載ECU16から取得して削減量Vを計算してもよい。
【0082】
実施形態3に係るBMS31によると、蓄電装置13Aのライフサイクルの複数段階に亘る、温室効果ガスの削減効果を把握できる。
【0083】
<実施形態4>
図12を参照して、実施形態4に係るレンタカーシステム401について説明する。実施形態4に係る充放電装置3は電力ネットワーク65を介して複数の発電設備と接続されている。複数の発電設備は交流電力を供給する発電設備であり、具体的には系統電力61、風力発電62、太陽光発電63、化石燃料を用いた発電64(例えば火力発電)などである。系統電力61は太陽光、風力、化石燃料などの様々な電力源によって発電される。
【0084】
近年、電力・エネルギー分野ではブロックチェーン技術を電力のトラッキング(追跡・分析)に応用する試みがなされている。ブロックチェーン技術は、情報ネットワーク上にある端末同士を接続して、暗号技術を用いて取引記録を分散的に処理・記録するデータベースの一種である。電力のトラッキングシステムが構築されると、例えば蓄電装置13Aを充電するとき、その電力が何れの電力源によって発電された電力であるかを特定することが可能になる。
【0085】
電気自動車2をレンタルするユーザーあるいはレンタカーシステム1のオペレータは、電気自動車2(蓄電装置13A)を充電するとき、系統電力61、風力発電62、太陽光発電63、及び、化石燃料を用いた発電64のうちいずれの発電設備によって発電された電力によって充電するかを、充放電装置3の操作部27を操作して選択できる。充放電装置3は発電設備を切り替え可能であり、選択された発電設備によって供給される電力によって蓄電装置13Aを充電する。
【0086】
充放電装置3は、系統電力61以外の発電設備(風力発電62、太陽光発電63又は化石燃料を用いた発電64)が選択された場合は、選択された発電設備の電力源を示す電力源情報(いずれの電力源で充電されているかの情報)と、充電された電気量とを車載ECU16に送信する。
一方、系統電力61は様々な電力源によって発電されるので、系統電力61が選択されただけでは電力源までは判らない。このため、充放電装置3は、系統電力61が選択された場合は、系統電力61から供給される電力の電力源をトラッキングシステムによって特定し、特定した電力源を示す電力源情報と、充電された電気量とを車載ECU16に送信する。
電力源情報は、発電設備のIDに基づくものであってもよいし、ブロックチェーンなどの取引履歴に基づくものであってもよい。
【0087】
車載ECU16は、電力源情報と充電された電気量とを受信することにより、蓄電装置13Aが、太陽光などのクリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量や、火力発電などの非クリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量を、取得できる。
【0088】
車載ECU16は、蓄電装置13Aを充電した電力を発電したときに排出されたCO2の排出量(以下、排出量Sという)を、電力源情報と充電された電気量とに基づいて計算し、計算した排出量Sを合計CO2排出量に加算する。この場合、合計CO2排出量は以下の式9によって計算される。
合計CO2排出量=排出量W+排出量S-削減量V ・・・ 式9
【0089】
クリーンエネルギー由来の電力は発電時のCO2の排出量が少ないことから、クリーンエネルギー由来の電力によって充電した場合は、非クリーンエネルギー由来の電力によって充電した場合に比べて排出量Sが小さくなる。排出量Sが小さくなると合計CO2排出量が少なくなるので、CO2削減効果が大きくなる。
【0090】
実施形態4に係る情報提供方法によると、蓄電装置13Aが、太陽光などのクリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量や、火力発電などの非クリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量を、取得できる。クリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量や、非クリーンエネルギー由来の電力で充電された電気量を、CO2の排出量の計算に用いることができる。
【0091】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0092】
(1)上記実施形態1では、充放電システムは温室効果ガス削減効果に関する情報として合計CO2排出量を提供するが、温室効果ガス削減効果に関する情報は、CO2の削減効果を特定できる情報であればこれに限られない。例えば、充放電システムは、温室効果ガス削減効果に関する情報として、排出量Wと削減量Vとを提供してもよい。そして、管理コンピュータ4が、提供された排出量Wと削減量Vとから合計CO2排出量を計算してもよい。
【0093】
(2)上記実施形態1では、一つの高電圧系(例えば、400V)システムと、一つの低電圧系(例えば、12V)システムとを含む車両電源システムを例示した(
図5参照)。代替的に、
図13に示すように、複数の高電圧系(例えば、800V、400V)システムと、複数の低電圧系(例えば、48V、12V)システムとを含む車両電源システムに本技術が適用されてもよい。
【0094】
(3)上記実施形態ではレンタカーシステム1に情報提供方法が適用される場合を例示したが、上記の情報提供方法は、登録を行った会員間で電気自動車2を共同で使用するカーシェアリングシステムに適用されてもよい。
【0095】
(4)上記実施形態では充放電システムによって情報提供方法が実施される場合を例示した。これに対し、情報提供方法は充電システムによって実施されてもよい。充電システムとは、充放電装置3に替えて充電装置を備えたシステムである。充電装置は、蓄電装置13Aを充電する一方、蓄電装置13Aの放電は行わない装置である。
【0096】
(5)上記実施形態では充放電システムが充放電装置3と車載ECU16とで構成される場合を例示したが、充放電システムの構成は適宜に決定できる。例えば、充放電システムは充放電装置3だけで構成されてもよいし、蓄電装置13Aとは離れて配置される遠隔コンピュータ(充放電装置3とは別のコンピュータ)によって構成されてもよい。充放電システムはV2Xシステムによって構成されてもよい。すなわち、V2Xシステムが情報提供方法を実施してもよい。
【0097】
(6)上記実施形態では、管理システムとして蓄電装置13AのBMS31を例示したが、管理システムはこれに限られない。例えば、管理システムは充放電装置3であってもよいし、蓄電装置13Aとは離れて配置される遠隔コンピュータ(管理コンピュータ4とは別のコンピュータ)であってもよいし、車載ECU16であってもよいし、管理コンピュータ4であってもよい。
【0098】
(7)上記実施形態4では、発電設備の電力源を示す電力源情報(すなわち蓄電装置13Aがいずれの電力源で充電されているかの情報)を充放電装置3が取得する場合を例示したが、電力源情報は、V2Xシステムにおける、パワーコンディショナが取得してもよい。
【0099】
(8)上記実施形態では蓄電セルとしてリチウムイオン二次電池を例示したが、蓄電セルは電気化学反応を伴うキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0100】
2: 電気自動車(移動体の一例)
3: 充放電装置(充放電システムの一例)
13A: 蓄電装置(蓄電素子の一例)
16: 車載ECU(管理システムの一例)
31: BMS(管理システムの一例)
100: 充放電システム