(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110145
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】箱錠及び錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 63/08 20060101AFI20240807BHJP
E05B 55/02 20060101ALI20240807BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20240807BHJP
E05B 9/02 20060101ALI20240807BHJP
E05B 15/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
E05B63/08 C
E05B55/02
E05B65/06 C
E05B9/02
E05B15/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014543
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】大野 学
(72)【発明者】
【氏名】不破 幸治
(72)【発明者】
【氏名】有馬 裕樹
(57)【要約】
【課題】ドアハンドルの操作角度を小さくしても、部品の破損が抑制されラッチの解錠が判りやすい箱錠を提供する。
【解決手段】ケースと、ラッチボルトと、ラッチハブと、梃子部と、を備える。ラッチボルトは、梃子部とともに移動可能な作動部を有する。ラッチハブは、軸部及び凹部の何れか一方を有する。梃子部は、軸部及び凹部の何れか他方と、先端側に係合部を有する第1部分と、先端側に回転軸からの最大距離が回転軸から係合部までの最大距離よりも長く、作動部を移動させる移動部を有する第2部分と、を有する。ケースは、係合壁を有する。梃子部は、ラッチハブが第1位置から第1周方向の一方側に回転して係合部が係合壁に係合したときに、第2周方向の一方側に回転して移動部が作動部とともに移動するとともに、移動部がラッチハブとともに第1周方向の一方側に回転する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
ラッチを有し前記ケースに対して進退移動するラッチボルトと、
前記ラッチが前記ケースから突出する第1位置から、前記ラッチボルトの進退移動方向と直交する中心軸を中心とする第1周方向の一方側に回転したときに、前記ラッチが前記ケース内に引き込まれるラッチハブと、
前記ラッチハブに取り付けられ、前記ラッチハブとともに前記第1周方向に移動可能な梃子部と、
を備え、
前記ラッチボルトは、前記進退移動方向に移動可能に設けられ前記梃子部とともに移動可能な作動部を有し、
前記ラッチハブは、前記中心軸と平行な回転軸に沿って延びる軸部及び前記軸部が前記回転軸を中心として回転可能に嵌まる凹部の何れか一方を有し、
前記梃子部は、
前記軸部及び前記凹部の何れか他方と、
前記中心軸から離れる方向に前記回転軸から延び、先端側に係合部を有する第1部分と、
前記中心軸に近づく方向に前記回転軸から延び、先端側に前記回転軸からの最大距離が前記回転軸から前記係合部までの最大距離よりも長く、前記回転軸を中心とする第2周方向の一方側に回転したときに、前記作動部を移動させる移動部を有する第2部分と、
を有し、
前記ケースは、前記ラッチハブが前記第1位置にあるときの前記係合部よりも前記第1周方向の一方側に位置する係合壁を有し、
前記梃子部は、前記ラッチハブが前記第1位置から前記第1周方向の一方側に回転して前記係合部が前記係合壁に係合したときに、前記第2周方向の一方側に回転して前記移動部が前記作動部とともに移動するとともに、前記移動部が前記ラッチハブとともに前記第1周方向の一方側に回転する、箱錠。
【請求項2】
前記係合部は、前記第1部分から前記中心軸に沿って突出する突起であり、
前記ケースは、前記突起が移動可能に嵌まる溝部を有し、
前記係合壁は、前記ケースにおいて前記溝部に臨む縁部を含む、
請求項1に記載の箱錠。
【請求項3】
前記溝部は、
前記中心軸を中心とする径方向に延びる第1溝部と、
前記第1溝部における前記中心軸に近い側の端部から前記進退移動方向の後退側に延びる第2溝部と、
を有する、
請求項2に記載の箱錠。
【請求項4】
前記第2溝部の前記回転軸からの距離は、前記第1周方向の一方側に向かうにつれて漸次長くなる、
請求項3に記載の箱錠。
【請求項5】
前記ケースは、前記中心軸に沿って延びる係合突起を有し、
前記係合壁は、前記係合突起の外周面を含み、
前記係合部は、前記第1部分において前記係合突起に臨む側面を含む、
請求項1に記載の箱錠。
【請求項6】
前記作動部は、前記移動部が当接または係合したときに、前記梃子部とともに移動する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の箱錠。
【請求項7】
前記ラッチを有し、壁部の開口部に設けられた枠部に、前記開口部を開閉可能に支持されたドアに着脱可能に取り付けられた請求項1から5のいずれか一項に記載の箱錠と、
前記枠部に設けられ、前記ドアから突出する前記ラッチを収容して施錠するストライカーと、を備える錠装置。
【請求項8】
前記ストライカーは、第1マグネットを有し、
前記箱錠は、前記第1マグネットとの磁力引合によって前記ラッチを前記ドアから突出させる第2マグネットを有する、
請求項7に記載の錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、箱錠及び錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内ドアハンドル操作角において、高齢者や子供でも開けやすい小さい操作角度を実現したユニバーサルデザインの商品がある。ドアハンドルの操作角度を小さくする従来技術としては、ドア解錠の際にラッチを引込み作動させる箱錠内部のハブ部品に追加部品を連結し、梃子の原理を応用してラッチ引込み量を確保しつつ小さい操作角を実現している。
【0003】
ドアハンドルの操作角度を小さくした場合には、応力が集中することで箱錠の内部部品に負荷が加わることによって変形または破損に繋がる可能性がある。部品が破損した場合には、部品が内部に詰まることでハンドル操作が効かなくなり、室内閉じ込めに繋がる可能性がある。
【0004】
特許文献1には、部品破損時の詰まりによる室内閉じ込めのリスクを回避する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は、室内閉じ込めが発生した場合の対策であり、追加部品の破損を抑制するものではない。ドアハンドルの操作角度を小さくした場合には、ラッチが解錠されているかどうか判りづらくなる問題が生じる。
【0007】
本開示は、以上のような点を考慮してなされたもので、ドアハンドルの操作角度を小さくしても、部品の破損が抑制されラッチの解錠が判りやすい箱錠及び錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、ケースと、ラッチを有し前記ケースに対して進退移動するラッチボルトと、前記ラッチが前記ケースから突出する第1位置から、前記ラッチボルトの進退移動方向と直交する中心軸を中心とする第1周方向の一方側に回転したときに、前記ラッチが前記ケース内に引き込まれるラッチハブと、前記ラッチハブに取り付けられ、前記ラッチハブとともに前記第1周方向に移動可能な梃子部と、を備え、前記ラッチボルトは、前記進退移動方向に移動可能に設けられ前記梃子部とともに移動可能な作動部を有し、前記ラッチハブは、前記中心軸と平行な回転軸に沿って延びる軸部及び前記軸部が前記回転軸を中心として回転可能に嵌まる凹部の何れか一方を有し、前記梃子部は、前記軸部及び前記凹部の何れか他方と、前記中心軸から離れる方向に前記回転軸から延び、先端側に係合部を有する第1部分と、前記中心軸に近づく方向に前記回転軸から延び、先端側に前記回転軸からの最大距離が前記回転軸から前記係合部までの最大距離よりも長く、前記回転軸を中心とする第2周方向の一方側に回転したときに、前記作動部を移動させる移動部を有する第2部分と、を有し、前記ケースは、前記ラッチハブが前記第1位置にあるときの前記係合部よりも前記第1周方向の一方側に位置する係合壁を有し、前記梃子部は、前記ラッチハブが前記第1位置から前記第1周方向の一方側に回転して前記係合部が前記係合壁に係合したときに、前記第2周方向の一方側に回転して前記移動部が前記作動部とともに移動するとともに、前記移動部が前記ラッチハブとともに前記第1周方向の一方側に回転する、箱錠である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の錠装置の箱錠を取り付けたドアを示す斜視図である。
【
図2】本開示の第1実施形態の箱錠の分解斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
【
図5】軸部及び回転軸を含む面における断面図である。
【
図6】ガイド溝、ガイド軸、溝部、係合部の位置関係を示す図である。
【
図7】ガイド溝、ガイド軸、溝部、係合部の位置関係を示す図である。
【
図8】本開示の第1実施形態の箱錠における内部構成を部分的に示す図である。
【
図9】ガイド溝、ガイド軸、溝部、係合部の位置関係を示す図である。
【
図10】本開示の第1実施形態の箱錠における内部構成を部分的に示す図である。
【
図11】本開示の第2実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
【
図12】ラッチハブ及び梃子部の分解斜視図である。
【
図13】本開示の第2実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
【
図14】本開示の第2実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
【
図15】本開示の第2実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の箱錠及び錠装置の実施の形態を、
図1から
図15を参照して説明する。以下の実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺等を異ならせている。
【0011】
図1に示すように、錠装置101は、箱錠100と、ストライカー3と、を備える。箱錠100は、ドア1に着脱可能に取り付けられている。ドア1は、開き戸である。ドア1は、壁部4の開口部6に設けられた枠部5に、開口部6を開閉可能に支持されている。
【0012】
箱錠100は、ドア1の側面1aに設けられた凹部に挿入して取り付けられる。箱錠100は、ドア1に対して交換可能である。ドア1には、レバーハンドル2が取り付けられている。ドア1は、レバーハンドル2を操作したときに、ラッチ11がドア1の側面1aに対して出没する。ドア1を閉めた状態のときに、ラッチ11がドア1の側面1aから突出して、枠部5に設けられたストライカー3に挿入される。ストライカー3は、第1マグネット3Aを内蔵する。ラッチ11は、第2マグネット3Bを内蔵する。ドア1が閉じているときに、ラッチ11は、第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合によってドア1の側面1aから突出する。ラッチ11は、第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合によってドア1の側面1aから突出するマグネットラッチである。ラッチ11が枠部5のストライカー3に挿入されたときに、ドア1を閉めた状態が維持される。
【0013】
[箱錠100の第1実施形態]
図2及び
図3に示すように、第1実施形態の箱錠100は、ケース30、ラッチボルト10、ラッチハブ20、ロック部40、梃子部50及びフロント板31を備える。
図2においては、ロック部40の図示を省略している。
【0014】
ケース30は、ラッチボルト10、ラッチハブ20、ロック部40、梃子部50を内部に収容する。箱錠100は、ケース30が側面1aに設けられた凹部に挿入することによってドア1に取り付けられる。ケース30は、筐体30Aと蓋部30Bとを有する。筐体30Aは、ラッチボルト10、ラッチハブ20、ロック部40、梃子部50を内部に収容する。蓋部30Bは、筐体30Aにケース30の厚さ方向に重ねられて筐体30Aの開口部を閉塞する。
【0015】
ラッチボルト10は、ケース30に対して、
図3における左右方向に進退移動自在に設けられている。以下の説明では、ラッチボルト10の進退移動方向を左右方向と呼ぶ。進退移動方向のうち後退側を右側と呼び、前進側を左側と呼ぶ。
図2及び
図3における上下方向を上下方向と呼ぶ。
図2における左右方向と上下方向に直交する方向を厚さ方向と呼ぶ。
【0016】
ラッチボルト10は、左右方向に延びる軸状である。ラッチボルト10は、ラッチ11と係止部12と、作動部13と、スプリング14と、孔部15と、を有する。ラッチ11は、ラッチボルト10における左側の先端に設けられている。ラッチ11は、ラッチボルト10が左側に移動したときに、フロント板31の開口部31aを介してフロント板31から突出する。ラッチ11は、内部に第2マグネット3Bを有している。第2マグネット3Bは、左右方向に延びる円柱状である。第2マグネット3Bはラッチ11における左寄りに配置されている。
【0017】
係止部12は、ラッチ11の右側に配置されている。係止部12の寸法は、フロント板31における開口部31aの寸法よりも大きい。係止部12は、第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合によって、ラッチボルト10が左側に移動したときに、右側からフロント板31に係止する。係止部12が右側からフロント板31に係止することによって、フロント板31から突出するラッチ11の位置が規定される。
【0018】
作動部13は、ラッチボルト10における右側の端部に位置する。作動部13は、後述する第1位置にあるラッチハブ20の第1アーム部21及び梃子部50の右側に離れて配置される。作動部13は、梃子部50と当接可能である。
【0019】
孔部15は、係止部12から右側に延びる矩形状に形成されている。孔部15は、ラッチボルト10を厚さ方向に貫通する。孔部15には、ケース30から室内側に突出する壁部16が挿入されている。壁部16は、係止部12がフロント板31に係止した施錠位置と、係止部12が係止壁17に係止した解錠位置との間をラッチボルト10が移動した際にラッチボルト10と接触しない位置に配置されている。
【0020】
スプリング14は、孔部15に配置されている。スプリング14は、左側の端部が壁部16に右側から接している。スプリング14は、右側の端部がラッチボルト10に左側から接している。スプリング14は、圧縮ばねである。スプリング14は、壁部16とラッチボルト10が左右方向に互いに離れる方向に付勢している。スプリング14は、ケース30に対してラッチボルト10を右側に付勢している。スプリング14は、ラッチボルト10を介してラッチ11をケース30に引き込む方向に付勢している。
【0021】
スプリング14の付勢力は、第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合による力よりも小さい。ドア1が閉じたときに、ラッチ11は、第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合によって、スプリング14の付勢力に抗してドア1の側面1aから突出する。ドア1が開いたときに、第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合が解除されるため、ラッチ11は、スプリング14の付勢力によってケース30に引き込まれる。
【0022】
ラッチハブ20は、厚さ方向に延びる中心軸J1を中心として回転する。ラッチハブ20は、第1アーム部21と第2アーム部22と軸嵌合部23とを有する。軸嵌合部23は、中心軸J1方向に延び室内側に開口する円筒状である。軸嵌合部23には、
図1に示したレバーハンドル2の軸2aが嵌合する。軸嵌合部23において軸2aが嵌合したレバーハンドル2を操作することによって、ラッチハブ20は、中心軸J1を中心とする第1周方向に回転可能である。
【0023】
図4に示すように、第1アーム部21は、軸嵌合部23から上側に延びている。第1アーム部21は、厚さ方向においてラッチボルト10と重なる位置に隙間S1を有する。第1アーム部21が有する隙間S1には、ラッチボルト10が挿通されている。第1アーム部21における隙間S1に挿通されたラッチボルト10は、第1アーム部21と干渉することなく左右方向に移動可能である。
【0024】
第1アーム部21は、先端側にガイド軸21Aと、凹部21Bと、を有する。ガイド軸21Aは、厚さ方向の両側に設けられている。ガイド軸21Aは、第1アーム部21から厚さ方向に延びる回転軸J2に沿って突出する。回転軸J2は、中心軸J1と平行である。ガイド軸21Aは、
図2に示すように、筐体30A及び蓋部30Bにそれぞれ形成されたガイド溝30Cに、
図5に示すように、厚さ方向の内側から挿入される。ガイド溝30Cは、中心軸J1を中心とする第1周方向に延びる円弧状に形成されている。ガイド溝30Cは、ラッチハブ20が回転したときのガイド軸21Aの移動範囲を含む円弧長を有している。ラッチハブ20は、ガイド軸21Aがガイド溝30Cにガイドされた状態で回転する。
【0025】
凹部21Bは、第1アーム部21における隙間S1に臨む両側にそれぞれ設けられている。凹部21Bは、第1アーム部21における隙間S1に臨む面から厚さ方向の外側に窪んでいる。凹部21Bは、回転軸J2を中心とする円形断面を有している。凹部21Bは、ガイド軸21Aと同軸に配置されている。凹部21Bには、後述する軸部51が回転軸J2を中心として回転可能に嵌まる。
【0026】
第2アーム部22は、軸嵌合部23から下側に延びている。第2アーム部22の左側は、スライダー34の端面と接している。スライダー34は、ケース30内において左右方向に移動自在に設けられている。スライダー34の左側は、スプリング24と接している。スプリング24は、圧縮されたコイルばねである。スプリング24は、右側がスライダー34に接し、左側がケース30の側壁33に接している。スライダー34は、スプリング24の付勢力によって右側に付勢されている。スプリング24がスライダー34を右側に付勢することによって、第2アーム部22は、反時計回り方向に移動可能となる。第2アーム部22が反時計回り方向に移動したときに、ラッチハブ20は、反時計回り方向に回転する。反時計回り方向に回転したラッチハブ20は、ケース30における側壁35に接したときに反時計回り方向の回転移動が規制される。ラッチハブ20が側壁35に接して回転移動が規制された
図3に示される位置を、ラッチ11がケース30から突出した状態の初期位置となる第1位置とする。
【0027】
ロック部40は、中心軸J1と平行な軸線J3を中心として回転移動可能である。ロック部40は、第3アーム部41と軸嵌合部43とを有する。軸嵌合部43は、中心軸J1と平行な軸線J3方向に延び室内側に開口する窪み43aを有する円筒状である。第3アーム部41の厚さ方向の位置は、第1アーム部21の厚さ方向の位置と同一である。第3アーム部41は、ラッチハブ20の回転によって第1周方向の一方側である右側に移動する第1アーム部21と干渉しない
図3に示す非ロック位置と、第1位置にある第1アーム部21の第1周方向の右側であって第1アーム部21の移動経路上に位置するロック位置との間を移動可能である。第3アーム部41がロック位置にあり、ラッチハブ20の回転が規制され、ドア1が閉じたときにラッチ11がフロント板31から突出した状態が保持される。
【0028】
梃子部50は、軸部51と、第1部分52と、第2部分53と、を有する。梃子部50は、軸部51から第2部分53に亘って、厚さ方向においてラッチボルト10と重なる位置に隙間S2を有する。
【0029】
軸部51は、厚さ方向の両側に設けられている。軸部51は、半球状であり梃子部50から回転軸J2に沿って突出する。軸部51は、第1アーム部21の凹部21Bに回転軸J2を中心として回転可能に嵌まる。軸部51が凹部21Bに嵌まることによって、梃子部50は、ラッチハブ20とともに第1周方向に移動可能にラッチハブ20に取り付けられる。軸部51が凹部21Bに嵌まることによって、梃子部50は、ラッチハブ20に対して回転軸J2を中心とする第2周方向に回転可能である。
【0030】
箱錠100は、梃子部50が軸部51を有し、第1アーム部21が凹部21Bを有するが、梃子部50が凹部を有し、第1アーム部21が軸部を有してもよい。
【0031】
第1部分52は、中心軸J1から離れる方向に回転軸J2から延びる。第1部分52は、先端側に係合部52Aを有する。係合部52Aは、厚さ方向の両側にそれぞれ突出する円柱状の突起である。係合部52Aは、
図2に示すように、筐体30A及び蓋部30Bにそれぞれ形成された溝部30Dに、
図5に示すように、厚さ方向の内側から挿入されて嵌まる。ラッチハブ20が第1位置にあるときに、係合部52Aは、軸部51よりも上側、且つ左側に位置する。
【0032】
第2部分53が有する隙間S2には、ラッチボルト10が挿通されている。第2部分53における隙間S2に挿通されたラッチボルト10は、第2部分53と干渉することなく左右方向に移動可能である。第2部分53は、中心軸J1に近づく方向に回転軸J2から延びる。第2部分53は、先端側に移動部53Aを有する。ラッチハブ20が第1位置にあるときに、移動部53Aは、軸部51よりも下側、且つ右側に位置する。移動部53Aは、回転軸J2からの最大距離が回転軸J2から係合部52Aまでの最大距離よりも長い。
【0033】
回転軸J2から移動部53Aまでの最大距離が、回転軸J2から係合部52Aまでの最大距離よりも長いことによって、梃子部50が回転軸J2を中心として
図3及び
図4における反時計回り方向である第2周方向の一方側に回転したときに、移動部53Aの右側への変位量は、係合部52Aの左側への変位量よりも大きくなる。
【0034】
図6に示すように、ケース30は、係合部52Aが移動可能に嵌まる溝部30Dを有する。溝部30Dは、第1溝部30Eと、第2溝部30Fと、を有する。第1溝部30Eは、中心軸J1を中心とする径方向に延びる。第1溝部30Eには、ラッチハブ20が第1位置にあるときに、梃子部50の係合部52Aが嵌まる。ケース30において第1溝部30Eに臨む縁部のうち、第1周方向の右側に位置する縁部は、係合壁32である。係合壁32は、第1周方向の右側から係合部52Aに係合可能である。
【0035】
第2溝部30Fは、第1溝部30Eにおける中心軸J1に近い側の端部から右側に延びる。第2溝部30Fは、ラッチハブ20の回転に伴う回転軸J2の移動経路からの距離が第1周方向の右側に向かうにつれて漸次長くなる。第2溝部30Fの回転軸J2からの距離は、第1周方向の右側に向かうにつれて漸次長くなる。
【0036】
箱錠100においては、レバーハンドル2の操作によってラッチハブ20を第1位置から第1周方向の右側に回転させると、第1アーム部21とともに梃子部50が第1周方向の右側に移動する。梃子部50が第1周方向の右側に移動すると、係合部52Aが係合壁32に第1周方向の左側から係合する。係合部52Aが係合壁32に係合したときに係合部52Aの右側への移動は規制されるが、第1アーム部21及び第1アーム部21に軸部51が嵌まる梃子部50は、継続して右側に移動する。
【0037】
梃子部50の右側への移動が継続されることによって、第1溝部30Eにおいて係合壁32に係合していた係合部52Aは、
図7に示すように、回転軸J2を中心として第2周方向の一方側に回転し、第2溝部30Fと交差する位置まで第1溝部30Eに沿って中心軸J1に近い側に移動する。
【0038】
移動部53Aは、回転軸J2からの最大距離が回転軸J2から係合部52Aまでの最大距離よりも長いため、係合部52Aが第2溝部30Fと交差する位置まで第2周方向の一方側に回転したときに、
図8に示すように、回転軸J2に対する移動部53Aの右側への変位量は、回転軸J2に対する係合部52Aの左側への変位量よりも大きい。移動部53Aは、第1アーム部21よりも右側に突出してラッチボルト10の作動部13に当接して右側に押圧する。移動部53Aによって作動部13が右側に押圧されるとともに、スプリング14の付勢力によって付勢されたラッチボルト10は、ラッチ11が第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合に抗して右側に移動してケース30内に引き込まれる。ラッチ11が第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合に抗して右側に移動することによって解錠されドア1を開くことができる。
【0039】
ラッチ11は、レバーハンドル2の操作によってラッチハブ20が第1周方向の右側に回転し始めてから、係合部52Aが第1周方向の右側に移動して係合壁32に係合した後に、第2周方向の一方側に回転し、第2溝部30Fと交差する位置まで移動するまでの範囲で解錠される。ラッチ11は、レバーハンドル2の操作によってラッチハブ20を、例えば、約5°の操作角度で回転させたときに解錠される。
【0040】
ラッチ11が解錠された後に、レバーハンドル2の操作によるラッチハブ20の回転は、
図9及び
図10に示すように、移動部53Aが作動部13に当接した状態のまま、ガイド軸21Aがガイド溝30Cにおける右側の端部に達する約15°の操作角度で回転するまで継続される。約5°の操作角度で回転させたときにラッチ11が解錠した後に、移動部53Aが作動部13に当接した状態のまま、約15°の操作角度で回転するまでレバーハンドル2の操作が継続されることによって、ラッチの解錠が判りやすくなる。
【0041】
第2溝部30Fの回転軸J2からの距離は、第1周方向の右側に向かうにつれて漸次長くなるため、ラッチ11が解錠された後に、レバーハンドル2の操作によるラッチハブ20の回転が継続されている状態において、係合部52Aは、回転軸J2に対して第2周方向の他方側に回転する。ラッチ11が解錠された後に、係合部52Aが回転軸J2に対して第2周方向の他方側に回転することによって、回転軸J2に対する移動部53Aの右側への変位量は漸次小さくなる。移動部53Aの右側への変位量が漸次小さくなることによって、移動部53Aが作動部13に当接して右側に押圧することに伴う負荷が小さくなる。移動部53Aが作動部13を押圧する際の負荷が小さくなることによって、解錠までの操作角度が小さくなっても梃子部50の破損が抑制される。
【0042】
箱錠100及び錠装置101によれば、回転軸J2から移動部53Aまでの最大距離が、回転軸J2から係合部52Aまでの最大距離よりも長く、ラッチハブ20とともに第1周方向に移動可能な梃子部50の係合部52Aがケース30の係合壁32に係合したときに、第2周方向の一方側に回転し、移動部53Aが作動部13に当接して右側に押圧することによって、解錠までの操作角度が小さくできる。箱錠100及び錠装置101によれば、ラッチ11が解錠された後に、移動部53Aが作動部13に当接した状態で梃子部50が20ラッチハブとともに第1周方向の一方側に回転するため、ラッチの解錠が判りやすくなる。
【0043】
箱錠100及び錠装置101によれば、第2溝部30Fの回転軸J2からの距離は、第1周方向の右側に向かうにつれて漸次長くなるため、ラッチ11が解錠された後に移動部53Aの右側への変位量が漸次小さくなり、梃子部50に加わる負荷が大きくなって梃子部50が破損することを抑制できる。
【0044】
[箱錠100の第2実施形態]
図11から
図15に示すように、第2実施形態の箱錠100においては、ケース30の係合壁32として係合突起42が設けられ、梃子部50の係合部52Aとして第1部分52における側面52bが設けられている。
図11から
図15において、
図1から
図10で示した第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図11に示すように、ケース30は、係合突起42を有する。係合突起42は、ケース30から突出し、回転軸J2に沿って延びる円柱状である。係合突起42の外周面42aは、係合壁32に含まれる。係合突起42の外周面42aを係合壁32と呼んで説明する。
【0046】
図12に示すように、梃子部50における第1部分52は、側面52bを有する。側面52bは、第1部分52における側面のうち、回転軸J2よりも上側に位置し係合突起42に臨む側面である。側面52bは、係合部52Aに含まれる。第1部分52の側面52bを係合部52Aと呼んで説明する。
【0047】
係合壁32は、ラッチハブ20が第1位置にあるときに、係合部52Aよりも第1周方向の右側、且つ、上側に離れて配置されている。係合壁32は、ガイド溝30Cよりも中心軸J1を中心とする径方向の外側に配置されている。
【0048】
係合部52Aは、回転軸J2方向に見て、下側に凹となる円弧状に湾曲している。係合部52Aは、レバーハンドル2の操作によってラッチハブ20を第1位置から第1周方向の右側に回転させると、第1アーム部21とともに梃子部50が第1周方向の右側に移動することによって右側の端部が係合壁32に第1周方向の左側から係合する。係合部52Aが係合壁32に係合したときに係合部52Aの右側への移動は規制されるが、第1アーム部21及び第1アーム部21に軸部51が嵌まる梃子部50は、継続して右側に移動する。
【0049】
梃子部50の右側への移動が継続されることによって、第1溝部30Eにおいて係合壁32に係合していた係合部52Aは、
図13に示すように、係合壁32の周面に沿って回転軸J2を中心として第2周方向の一方側に回転する。係合部52Aが第2周方向の一方側に回転したときに、回転軸J2からの最大距離が回転軸J2から係合部52Aまでの最大距離よりも長い移動部53Aは、第1アーム部21よりも右側に突出して、施錠状態のラッチボルト10における作動部13に左側から当接する。
【0050】
レバーハンドル2の操作によってラッチハブ20の第1周方向の回転及び梃子部50の右側への移動が継続されると、係合壁32に係合していた係合部52Aは、係合壁32の周面に沿った第2周方向の一方側への回転を継続する。係合部52Aが係合壁32の周面に沿った第2周方向の一方側への回転を継続することによって、
図14に示すように、移動部53Aは、第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合に抗して作動部13を右側に押圧する。移動部53Aによって作動部13が右側に押圧されるとともに、スプリング14の付勢力によって付勢されたラッチボルト10は、ラッチ11が第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合に抗して右側に移動する。ラッチ11が第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合に抗して右側に移動することによって解錠される。レバーハンドル2の操作によってラッチハブ20が第1周方向の右側に回転し始めてから、ラッチ11が解錠されるまでの操作角度は例えば、約5°である。
【0051】
ラッチ11が解錠された後に、レバーハンドル2の操作によるラッチハブ20の回転は、
図15に示すように、移動部53Aが作動部13に当接した状態のまま、ガイド軸21Aがガイド溝30Cにおける右側の端部に達する約15°の操作角度で回転するまで継続される。約5°の操作角度で回転させたときにラッチ11が解錠した後に、移動部53Aが作動部13に当接した状態のまま、約15°の操作角度で回転するまでレバーハンドル2の操作が継続されることによって、ラッチの解錠が判りやすくなる。
【0052】
ガイド軸21Aがガイド溝30Cにおける右側の端部に達したときの梃子部50は、
図14に示す右側の端部に達する前と比較して第2周方向の他方側に回転した位置である。係合部52Aは、ラッチ11が解錠された後に、梃子部50が第2周方向の他方側に回転する輪郭を有している。ラッチ11が解錠された後に、梃子部50が第2周方向の他方側に回転することによって、移動部53Aの右側への変位量が漸次小さくなり、梃子部50に加わる負荷が大きくなって梃子部50が破損することを抑制できる。
【0053】
箱錠100及び錠装置101によれば、第1実施形態の箱錠100及び錠装置101と同様の作用・効果が得られる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
例えば、実施形態の錠装置101は、ストライカー3が第1マグネット3Aを内蔵し、ラッチ11が第2マグネット3Bを内蔵し、ラッチ11が第1マグネット3Aと第2マグネット3Bの磁力引合によってドア1の側面1aから突出したときに、ドア1が施錠される構成を例示したが、この構成に限定されない。錠装置101は、ラッチボルト10がスプリング等の付勢部材によって付勢されることによって、ラッチ11がストライカー3に挿入されて施錠される構成であってもよい。
【0056】
例えば、実施形態の箱錠100は、梃子部50が作動部13に当接してラッチボルト10を移動させる構成を例示したが、この構成に限定されない。箱錠100は、梃子部50が作動部13に係合してラッチボルト10を移動させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ドア、3…ストライカー、3A…第1マグネット、3B…第2マグネット、4…壁部、5…枠部、6…開口部、10…ラッチボルト、11…ラッチ、13…作動部、20…ラッチハブ、21B…凹部、30…ケース、30D…溝部、30E…第1溝部、30F…第2溝部、32…係合壁、42…係合突起、42a…外周面、50…梃子部、51…軸部、52…第1部分、52A…係合部、52b…側面、53…第2部分、53A…移動部、100…箱錠、101…錠装置、J1…中心軸、J2…回転軸