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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110152
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】動力伝達継手
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/64 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
F16D3/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014555
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 基規
(72)【発明者】
【氏名】水野 琴世
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆之
(72)【発明者】
【氏名】矢延 雪秀
(72)【発明者】
【氏名】谷本 光史
(57)【要約】
【課題】従動軸の変位を良好に吸収しつつ、モータのトルクを従動軸に良好に伝達することができる動力伝達継手を提供する。
【解決手段】動力伝達継手は、それぞれ軸線に直交する方向に面状に延びるとともに、軸線方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の継手盤と、互いに隣り合う一対の継手盤の対向面同士の間の軸線方向位置にそれぞれ設けられた弾性体と、各継手盤に設けられて、継手盤と弾性体とを接合する接合部と、を備え、弾性体は、一対の継手盤よりも軸線の径方向外側で、一対の継手盤の外周縁部に沿って延びる延在部と、延在部の延在方向の一方側に設けられて、一対の継手盤のうちの一方に接合部によって接合された第一端と、延在部の延在方向の他方側に設けられて、一対の継手盤のうちの他方に接合部によって接合された第二端と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを有するモータの駆動を受けて回転する駆動軸と、前記駆動軸から前記駆動軸の軸線方向に離間した位置に少なくとも一部が配置される従動軸とを接続する動力伝達継手であって、
それぞれ前記軸線に直交する方向に面状に延びるとともに、前記軸線方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の継手盤と、
互いに隣り合う一対の継手盤の対向面同士の間の軸線方向位置にそれぞれ設けられた弾性体と、
各前記継手盤に設けられて、前記継手盤と前記弾性体とを接合する接合部と、
を備え、
前記複数の継手盤のうち前記軸線方向で最も前記モータ側の前記継手盤は前記駆動軸に固定されるとともに、前記軸線方向で前記モータ側とは最も反対側の前記継手盤は前記従動軸に固定され、
前記弾性体は、
前記一対の継手盤よりも前記軸線の径方向外側で、前記一対の継手盤の外周縁部に沿って延びる延在部と、
前記延在部の延在方向の一方側に設けられて、前記一対の継手盤のうちの一方に前記接合部によって接合された第一端と、
前記延在部の延在方向の他方側に設けられて、前記一対の継手盤のうちの他方に前記接合部によって接合された第二端と、
を有する動力伝達継手。
【請求項2】
前記接合部は、前記継手盤の前記対向面に設けられている、請求項1に記載の動力伝達継手。
【請求項3】
前記一対の継手盤のうち一方の前記継手盤は、他方の前記継手盤に設けられた前記接合部に対向する位置に凹部を有し、
前記凹部は、対向する前記接合部から前記軸線方向に離間する方向に凹んでいる請求項2に記載の動力伝達継手。
【請求項4】
前記接合部は、前記軸線方向に延びるピンであり、
前記第一端及び前記第二端は、前記接合部が挿通される挿通孔を有する、請求項2又は3に記載の動力伝達継手。
【請求項5】
前記接合部は、
前記継手盤の前記対向面に設けられ、前記弾性体の前記第一端及び前記第二端のいずれか一方が前記軸線方向から嵌め込まれる嵌込溝を有した接合部本体と、
前記嵌込溝に嵌め込まれた前記弾性体の前記第一端及び前記第二端のいずれか一方を前記軸線方向から締結するねじ部と、
を有する請求項2又は3に記載の動力伝達継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力伝達継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カルダン方式の鉄道車両用台車が開示されている。特許文献1の台車では、主電動機(モータ)の主電動機軸と車軸(従動軸)とが、歯車継手装置及び減速用の歯車装置を介して接続されている。モータのトルクは、主電動機軸、歯車継手装置及び歯車装置を介して従動軸に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-27564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行中、従動軸には車体や地面から衝撃や振動が加わる。これにより、従動軸に上下方向や軸線方向の変位が生じる。また、乗車時には乗員数の増加より車両全体が沈み込み、降車時には乗員数の減少により車両全体が浮き上がる。このように、乗員の乗降によって車両全体が浮き沈みするため、従動軸が上下方向に大きく変位する。特許文献1に開示の技術では、従動軸に生じるこれらの変位を十分吸収することができず、モータのトルク伝達が上手く行われない場合があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、従動軸の変位を良好に吸収しつつ、モータのトルクを従動軸に良好に伝達することができる動力伝達継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る動力伝達継手は、ロータを有するモータの駆動を受けて回転する駆動軸と、前記駆動軸から前記駆動軸の軸線方向に離間した位置に少なくとも一部が配置される従動軸とを接続する動力伝達継手であって、それぞれ前記軸線に直交する方向に面状に延びるとともに、前記軸線方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の継手盤と、互いに隣り合う一対の継手盤の対向面同士の間の軸線方向位置にそれぞれ設けられた弾性体と、各前記継手盤に設けられて、前記継手盤と前記弾性体とを接合する接合部と、を備え、前記複数の継手盤のうち前記軸線方向で最も前記モータ側の前記継手盤は前記駆動軸に固定されるとともに、前記軸線方向で前記モータ側とは最も反対側の前記継手盤は前記従動軸に固定され、前記弾性体は、前記一対の継手盤よりも前記軸線の径方向外側で、前記一対の継手盤の外周縁部に沿って延びる延在部と、前記延在部の延在方向の一方側に設けられて、前記一対の継手盤のうちの一方に前記接合部によって接合された第一端と、前記延在部の延在方向の他方側に設けられて、前記一対の継手盤のうちの他方に前記接合部によって接合された第二端と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の動力伝達継手によれば、従動軸の変位を良好に吸収しつつ、モータのトルクを従動軸に良好に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る台車を走行方向から見た概略構成図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る動力伝達継手の斜視図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る動力伝達継手の分解斜視図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る動力伝達継手の軸線方向の断面図である。
図5】本開示の第一実施形態に係る継手盤及び接合部を径方向外側から見た図である。
図6】本開示の第一実施形態の変形例に係る複数の継手盤の斜視図である。
図7】本開示の第一実施形態の変形例に係る接合部の分解斜視図である。
図8】本開示の第一実施形態の変形例に係る接合部を軸線方向から見た平面図である。
図9図8のIX-IX線の断面図である。
図10図8のX-X線の断面図である。
図11】本開示の第二実施形態に係る継手盤及び接合部を径方向外側から見た図である。
図12】本開示の第二実施形態の第一変形例に係る複数の継手盤の斜視図である。
図13】本開示の第二実施形態の第二変形例に係る継手盤及び接合部を径方向外側から見た図である。
図14】本開示の第二実施形態の第二変形例に係る複数の継手盤の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る動力伝達継手10について、図1から図5を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の動力伝達継手10は、車両1に搭載されている。
【0010】
(車両)
本実施形態では、車両1が鉄道車両である場合を例に説明する。車両1は、車体1aと、台車2を備える。車体1aの内部には、乗員が乗降するためのスペースが設けられている。車体1aは、台車2上に載置されている。
【0011】
(台車)
台車2は、車体1aを下方から支持するとともに、地面に沿うレールL上を走行する。レールLは、一方向に延びている。レールLは、レールLの長手方向に直交する方向に対向して一対設けられている。台車2は、台車フレーム2aと、モータ3と、駆動軸4と、車軸(従動軸)6と、車輪7と、軸ばね8と、動力伝達継手10と、を備える。
【0012】
(台車フレーム)
台車フレーム2aは、地面に沿うレールLから上方に離間している。台車フレーム2aの底部2bは、水平方向に延在している。台車フレーム2aの底部2bは、レールLの長手方向に延びている。
【0013】
(モータ)
モータ3は、ダイレクトドライブ方式のモータである。モータ3は、モータ懸架部5を介して台車フレーム2aの底部2bの下面に取り付けられている。モータ3は、ロータ3aを有する。
【0014】
(ロータ)
ロータ3aは、水平方向、且つ、レールLの長手方向に直交する方向に延びる円筒状に形成されている。
【0015】
(駆動軸)
駆動軸4は、ロータ3aに挿通されている。駆動軸4は、水平方向、且つ、レールLの長手方向に直交する方向に延びる円筒状に形成された中空軸である。駆動軸4の外周面4bは、ロータ3aの内周面に固定されている。駆動軸4は、モータ3の駆動を受けて駆動軸4の軸線O回りに回転する。駆動軸4は、金属材料により形成されている。
以下、駆動軸4の軸線Oを単に「軸線O」と称し、軸線Oの径方向を単に「径方向」と称し、軸線Oの周方向を単に「周方向」と称する。軸線O方向は、レールLの長手方向と直交している。
駆動軸4の軸線O方向の一端部は、ロータ3aよりも軸線O方向で外側に位置する。
【0016】
(車軸)
車軸6は、円柱状に形成されている。車軸6は、金属材料により形成されている。車軸6は、駆動軸4に挿通されている。モータ3は、車軸6の軸線O方向の中間部に位置する。すなわち、車軸6は、駆動軸4と同軸に配置されている。車軸6は、駆動軸4から駆動軸4の軸線O方向に離間した位置に少なくとも一部が配置されている。本実施形態では、車軸6の軸線O方向中間部が駆動軸4と径方向で重なる位置に配置され、車軸6の軸線O方向の両端部が駆動軸4から軸線O方向に離間した位置に配置されている。
【0017】
車軸6は、駆動軸4の内周面4aから離間するように配置されている。車軸6には、駆動軸4及び動力伝達継手10を介して、モータ3から軸線O回りのトルクが伝達される。車軸6は、モータ3のトルクによって軸線O回りに回転する。車軸6の軸線O方向両端部には、軸線O方向に対向する一対の車輪7が設けられている。車軸6と台車フレーム2aとの間には、軸ばね8が設けられている。
【0018】
(車輪)
車輪7は、モータ3から軸線O方向に離間した位置に配置されている。車輪7は、円板状に形成されている。車輪7の板厚方向は、軸線O方向と一致する。車輪7は、中央部で車軸6の端部と連結されている。車輪7は、車軸6に固定されている。各車輪7は、下端部でレールLと接触している。車輪7は、車軸6から伝達されるトルクにより、レールL上を回転移動する。
【0019】
(軸ばね)
軸ばね8は、上下方向の振動を吸収する。軸ばね8は、車輪7に接近した位置に設けられている。軸ばね8は、上下方向に延びるコイルばねである。軸ばね8の上端は、台車フレーム2aの底部2bに固定されている。軸ばね8の下端は、不図示の接続部材を介して、車軸6に接続されている。軸ばね8は、この接続部材によって、車軸6からモータ3のトルクが伝達されないように設けられている。軸ばね8は、モータ3に対して、軸線O方向両外側に一対設けられている。一対の軸ばね8のうち一方の軸ばね8とモータ3との間には、動力伝達継手10が設けられている。
【0020】
(動力伝達継手)
動力伝達継手10は、駆動軸4と車軸6とを接続し、モータ3のトルクを車軸6に伝達する。動力伝達継手10は、モータ3と車輪7との間に設けられている。図2から図5に示すように、動力伝達継手10は、継手盤15と、固定筒35と、弾性体50と、接合部60と、を備える。
なお、図2では、継手盤15のうち、後述するモータ側継手盤20が省略されている。図4では、継手盤15、接合部60、及び弾性体50の配置が模式的に図示されている。図5では、継手盤15の形状及び接合部60の配置が模式的に図示され、弾性体50の位置が仮想線で図示されている。
【0021】
(継手盤)
継手盤15は、モータ3と車輪7との間に、軸線O方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、複数の継手盤15は、軸線O方向に等間隔に並べられている。複数の継手盤15は、それぞれ軸線Oに直交する方向に面状に延びている。より詳細には、各継手盤15は、軸線Oに直交し、径方向及び周方向で板厚が一定の平板状に形成されている。継手盤15は、軸線O方向から見て円環状に形成されている。継手盤15の中心軸線は、軸線Oに沿っている。すなわち、各継手盤15には、車軸6が軸線O方向に挿通されている。継手盤15の内周縁部15aは、車軸6の外周面6bよりも径方向外側に位置し、継手盤15の外周縁部15bは、駆動軸4の外周面4bよりも径方向外側に位置している。本実施形態では、複数の継手盤15の外周縁部15bは、全て同程度の長さに形成されている。また、継手盤15は、金属材料により形成されている。これら複数の継手盤15は、モータ側継手盤20と、車軸側継手盤(従動軸側継手盤)30と、中間体40と、を含む。
【0022】
(モータ側継手盤)
モータ側継手盤20は、複数の継手盤15のうち軸線O方向で最もモータ3側の継手盤15である。モータ側継手盤20は、モータ3と車輪7との間に設けられている。モータ側継手盤20は、モータ3の駆動力が伝達される駆動軸4に固定されている。より具体的には、モータ側継手盤20は、駆動軸4の軸線O方向の端部に固定され、駆動軸4と一体化している。
【0023】
モータ側継手盤20の内周縁部20aは、車軸6の外周面6bよりも径方向外側に位置している。このため、モータ側継手盤20は、車軸6に対して軸線O方向及び径方向に相対移動可能となっている。モータ側継手盤20と車輪7との間には、車軸側継手盤30が設けられている。
【0024】
(車軸側継手盤)
車軸側継手盤30は、複数の継手盤15のうち軸線O方向でモータ3側とは最も反対側の継手盤15である。車軸側継手盤30は、モータ側継手盤20を挟んでモータ3とは反対側に設けられている。すなわち、車軸側継手盤30は、モータ側継手盤20と軸線O方向で対向している。
また、車軸側継手盤30の径方向内側には、固定筒35が設けられ、車軸側継手盤30とモータ側継手盤20との間には、中間体40が設けられている。
【0025】
(固定筒)
固定筒35は、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。すなわち、固定筒35には、車軸6が軸線O方向に挿通されている。固定筒35の外周面35bは、車軸側継手盤30の内周縁部30a(内周縁部15a)に固定され、固定筒35の内周面35aは、車軸6の外周面6bに圧入固定されている。車軸側継手盤30の径方向内側部分に設けられている。固定筒35は、軸線O方向中間部で、車軸側継手盤30と径方向で重なっている。車軸側継手盤30は、固定筒35によって安定した状態で車軸6の外周面6bに圧入固定されている。
【0026】
(中間体)
中間体40の内周縁部40aは、車軸6の外周面6bよりも径方向外側に位置している。このため、中間体40は、モータ側継手盤20と同様に、車軸6に対して軸線O方向及び径方向に相対移動可能となっている。
【0027】
(弾性体)
弾性体50は、軸線O方向でモータ側継手盤20と車軸側継手盤30との間に複数設けられている。複数の弾性体50は、互いに隣り合う一対の継手盤15の対向面15c同士の間の軸線O方向位置にそれぞれ設けられている。本実施形態では、互いに隣り合う一対の継手盤15同士の間の軸線O方向位置には、2つの弾性体50が設けられている。すなわち、同一の軸線O方向位置には、2つの弾性体50が設けられている。同一の軸線O方向位置に配置された2つの弾性体50は、軸線Oを基準として径方向に対称な位置に配置されている。
【0028】
弾性体50は、延在部51と、端部52とを有する。延在部51は、軸線O方向両外側に位置する一対の継手盤15の外周縁部15bよりも径方向外側で、これら一対の継手盤15の外周縁部15bに沿って延びている。延在部51は、周方向に延びる円弧状に形成されている。すなわち、延在部51の延在方向は、周方向と一致している。
【0029】
本実施形態の延在部51は、径方向の板厚を有した板バネである。延在部51は、軸線Oを中心として周方向に円弧状に延びている。なお、図示の延在部51は、あくまでも一例である。延在部51の長さは、適宜変更可能である。
【0030】
端部52は、延在部51の延在方向の両端に設けられている。端部52は、接続部53と、取付部54とを有する。接続部53は、延在部51の一端から他端に向けて一直線状に延びている。取付部54は、延在部51よりも径方向内側に位置している。取付部54は、接続部53によって延在部51に接続されている。
【0031】
本実施形態では、軸線O方向から見て、取付部54の外形は、円形状に形成されている。取付部54には、軸線O方向に貫通する円形の挿通孔55が形成されている。挿通孔55には、後述する接合部60が挿通される。
【0032】
上述した弾性体50は、本実施形態では、軸線O方向一方側から他方側に向かうにしたがって軸線Oを中心として約90度ずつ回転させたように配置されている。
【0033】
また、以下では、延在部51の延在方向両側の2つの端部52のうち、延在部51の延在方向の一方側に設けられたもの第一端52aと称し、延在部51の延在方向の他方側に設けられたものを第二端52bと称する。第一端52a及び第二端52bは、同様の構成を有する。第一端52aの取付部54は、一対の継手盤15のうち一方に後述する接合部60によって接合されている。第二端52bの取付部54は、一対の継手盤15のうち他方に後述する接合部60によって接合されている。
【0034】
(接合部)
接合部60は、各継手盤15に設けられて、継手盤15と弾性体50とを接続している。接合部60は、弾性体50の延在方向の端部52ごとに1つずつ設けられている。
【0035】
本実施形態では、接合部60は、継手盤15の対向面15cから軸線O方向に突出したピン60aである。ピン60aが弾性体50の各挿通孔55に挿通されている。これにより、弾性体50の各端部52は、継手盤15に固定されている。なお、弾性体50は、ピン60aによって継手盤15にピン接合され、弾性体50がピン60aを中心としてわずかに回動可能となっていてもよい。
【0036】
上述した接合部60は、本実施形態では弾性体50と同様に、軸線O方向一方側から他方側に向かうにしたがって軸線Oを中心として約90度ずつ回転させたように配置されている。また、図5に示すように、隣り合う一対の継手盤15同士の間の軸線O方向位置にあって、互いに反対側の対向面15c同士に配置された接合部60同士は、周方向に互いに隣り合うように配置されている。
【0037】
(作用効果)
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
まず、動力伝達継手10によるトルク伝達について説明する。
モータ3を駆動させると、まず動力伝達継手10にモータ3のトルクが伝達される。動力伝達継手10は、駆動軸4と一体に軸線O回りに回転する。動力伝達継手10は、車軸6に固定されている。このため、車軸6は、動力伝達継手10と一体に軸線O回りに回転する。このようにして、モータ3の駆動力が、動力伝達継手10を介して車軸6に伝達される。
【0038】
続いて、動力伝達継手10による変位吸収について説明する。
例えば、車両1の走行中、車軸6には車体1aやレールLから衝撃荷重が加わる。車軸6は、受けた衝撃により、上下方向、車両1の走行方向、及び軸線方向に変位する。また、乗車時には乗員数の増加より車両1の全体が沈み込み、降車時には乗員数の減少により車両1の全体が浮き上がる。このように、乗員の乗降によって車両1の全体が浮き沈みするため、車軸6が上下方向に大きく変位する。
動力伝達継手10は、車両1の走行中に生じる動的な車軸6の変位や、乗員の乗降によって生じる静的な車軸6の変位を吸収することができる。
【0039】
例えば車軸6が上下方向や走行方向に変位すると、弾性体50の延在部51が径方向に弾性変形することにより、上下方向の変位や走行方向の変位が吸収される。
また、例えば車軸6が軸線O方向に変位すると、弾性体50の延在部51が軸線O方向に弾性変形する。さらに、弾性体50によって接続された複数の継手盤15が軸線O方向に伸縮する。これにより、軸線O方向の変位が吸収される。
【0040】
さらに、本実施形態では、延在部51は、継手盤15よりも径方向外側に位置している。このため、変形時に軸線O方向両側に位置する一対の継手盤に接触することを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、車軸6の変位を良好に吸収しつつ、モータのトルクを車軸6に良好に伝達することができる。
【0041】
本実施形態では、接合部60は、継手盤15の対向面15cに設けられている。
【0042】
これにより、接合部60が継手盤15の外周側に設けられる場合と比較して、径方向に小型化することができる。
【0043】
本実施形態では、接合部60は、軸線方向に延びるピン60aであり、第一端52a及び第二端52bは、接合部60が挿通される挿通孔55を有する。
【0044】
これにより、接合部60及び弾性体50を簡素な構造とすることができる。よって、製造効率を向上させ、製造コストを削減することができる。
【0045】
<第一実施形態の変形例>
続いて、第一実施形態の変形例について、図6から図10を参照して説明する。
図6では、変形例の弾性体150が省略されている。図7では、弾性体150の端部152(第一端152a、第二端152b)が図示されている。端部152の取付部154は、直方体状に形成され、軸線O方向で対応する対向面15cに向かうしたがって漸次先細るように形成されている。取付部154には、軸線O方向に貫通する挿通孔155が形成されている。
【0046】
さらに、図7から図10に示すように、変形例では、接合部160は、接合部本体161と、ねじ部162と、を有する。
接合部本体161は、継手盤15の対向面15cに設けられている。接合部本体161は、直方体状に成形され、隣り合う弾性体150に向けて軸線O方向に突出している。接合部本体161は、嵌込溝163と、開口部164と、締結孔165とを有する。
【0047】
嵌込溝163は、軸線O方向で対応する弾性体150に向けて開口している。嵌込溝163は、軸線O方向から見て、矩形状に形成されている。また、嵌込溝163の断面形状は、継手盤15側に向かうに従って先細るように形成されている。嵌込溝163には、弾性体150の取付部154が軸線O方向から嵌め込まれている。
【0048】
開口部164は、接合部本体161の径方向外側の側面に形成されている。開口部164は、径方向外側に向けて開口し、嵌込溝163と連通している。開口部164には、端部152の接続部153が配置されている。
【0049】
締結孔165は、嵌込溝163の底部に形成されている。締結孔165は、弾性体150の挿通孔155と軸線O方向で重なる位置に設けられ、軸線O方向に向けて開口している。
【0050】
ねじ部162は、弾性体150の挿通孔155と接合部本体161の締結孔165に挿通されている。ねじ部162の先端が締結孔165に締結されている。このようにして、ねじ部162は、嵌込溝163に嵌め込まれた端部152を軸線O方向から締結している。
【0051】
(作用効果)
以下、本変形例の作用効果について説明する。
本変形例では、接合部160は、接合部本体161と、ねじ部162と、を有する。接合部本体161は、継手盤15の表面(対向面15c)に設けられている。さらに、接合部本体161は、弾性体150の第一端152a及び第二端152bのいずれか一方が軸線O方向から嵌め込まれる嵌込溝163を有する。ねじ部162は、嵌込溝163に嵌め込まれた弾性体150の第一端152a及び第二端152bのいずれか一方を軸線O方向から締結している。
【0052】
これにより、弾性体150が径方向にずれることを抑制することができる。このため、弾性体150の延在部151が、径方向内側に移動して、軸線O方向両側の継手盤15に接触することを確実に抑制することができる。よって、本実施形態によれば、軸線O方向の変位をより一層良好に吸収することができる。
【0053】
なお、本変形例では、嵌込溝163は、軸線O方向から見て、矩形状に形成され、嵌込溝163の断面形状は、継手盤15側に向かうに従って先細るように形成されているとしたが、これに限られない。嵌込溝163は、弾性体150の端部152が嵌め込まれる形状に形成されていればよく、例えば軸線O方向から見て、円形状に形成され、嵌込溝163の断面形状は、幅が一定となるように形成されていてもよい。
【0054】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態に係る動力伝達継手210について、図11を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
図11は、第一実施形態の図5に相当する図面であり、図11では、継手盤15の形状及び接合部60の配置が模式的に図示され、弾性体50の位置が仮想線で図示されている。
【0055】
図11に示すように、本実施形態では、一対の継手盤15のうち一方の継手盤15は、他方の継手盤15に設けられた接合部60に対向する位置に凹部70を有する。凹部70は、対向する接合部60から軸線O方向に離間する方向に凹んでいる。
【0056】
継手盤15毎に、軸線O方向一方側に開口する凹部70が2つ、軸線O方向に他方側に開口する凹部70が2つずつ形成されている。各継手盤15について、軸線Oを中心として、0度から90度の範囲と、約180度~270度の範囲に軸線O方向一方側に開口する凹部70が形成され、約90度から180度の範囲と、約270度から360度の範囲に軸線O方向他方側に開口する凹部70が形成されている。さらに、隣り合う継手盤15同士は、互いに反対方向に開口する凹部70同士が軸線O方向に重なるように、軸線Oを中心として約90度ずつ回転させたように配置されている。互いに反対側の対向面15c同士に配置されて周方向に隣り合う接合部60同士は、この互いに反対方向に開口しつつ軸線O方向に重なった2つの凹部70によって形成された空間内に配置されている。
【0057】
(作用効果)
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、一対の継手盤15のうち一方の継手盤15は、他方の継手盤15に設けられた接合部60に対向する位置に凹部70を有する。凹部70は、対向する接合部60から軸線O方向に離間する方向に凹んでいる。
【0058】
これにより、接合部60が軸線O方向に対向する継手盤15に接触することを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、軸線O方向の変位をより一層良好に吸収することができる。さらに、動力伝達継手210が大型化することを抑制することができる。
【0059】
<第二実施形態の第一変形例>
続いて、第二実施形態の第一変形例について、図12を参照して説明する。
動力伝達継手210は、第一実施形態の変形例と同様に、弾性体150および接合部160を備えていてもよい。なお、図12では、図6と同様に、変形例の弾性体150が省略されている。
【0060】
本変形例では、凹部70は、継手盤15の外周縁部15bに沿って周方向に並んで2つ形成されている。各凹部70内のスペースには、該凹部70が形成された継手盤15に設けられる接合部160の他、隣り合う継手盤15に設けられた接合部160も配置されている。これにより、動力伝達継手210が軸線O方向に大型化することを抑制しつつ、接合部160が軸線O方向に対向する継手盤15に接触することを抑制することができる。
【0061】
<第二実施形態の第二変形例>
続いて、第二実施形態の第二変形例について、図13図14を参照して説明する。
図13は、第一実施形態の図5及び第二実施形態の図11に相当する図面であり、図13では、継手盤15の形状及び接合部160の配置が模式的に図示され、弾性体150の位置が仮想線で図示されている。また、図14では、図6図12と同様に、弾性体150が省略されている。
本変形例のように、図13図14に示すように、複数の継手盤15のうち、軸線O方向両端のモータ側継手盤20と車軸側継手盤30には、凹部70が設けられていなくてもよい。すなわち、モータ側継手盤20と車軸側継手盤30とは、第一実施形態と同様に、凹凸の無い平板状に形成されていてもよい。
この場合、モータ側継手盤20と車軸側継手盤30の製造が容易となり、製造効率が向上される。また、モータ側継手盤20と車軸側継手盤30とが軸線O方向に小型化されるので、動力伝達継手210全体として軸線O方向に小型化することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0063】
なお、上記実施形態では、動力伝達継手10、210が、鉄道車両に用いられる場合について説明したが、これに限られない。動力伝達継手10、210は、例えば、フォークリフトや人が重量物を運搬する際に手押しで用いる電動アシスト台車に用いられてもよく、車両以外の装置に用いられてもよい。
【0064】
上記実施形態では、継手盤15は、軸線O方向から見て円環状に形成されているとしたがこれに限れられない。継手盤15の外周縁部15bは、例えば多角形状に形成されていてもよく、楕円状に形成されていてもよい。また、複数の継手盤15の外周縁部15bは、全て同程度の長さに形成されているとしたが、各継手盤15の外周縁部15bの長さは、異なっていてもよい。
【0065】
上記実施形態では、互いに隣り合う一対の継手盤15同士の間の軸線O方向位置には、2つの弾性体50、150が設けられている場合について説明したが、これに限られない。互いに隣り合う一対の継手盤15同士の間の軸線O方向位置に設けられる弾性体50、150の個数は、1個でもよく、3個以上の複数個であってもよい。
【0066】
上記実施形態では、弾性体50の延在部51は、径方向の板厚を有した板バネであるとしたがこれに限られない。延在部51は、弾性変形可能であればよく、例えば紐状に形成されていてもよい。
【0067】
上記実施形態では、接合部60、160は、一対の継手盤15同士の対向面15cに設けられているとしたが、これに限られない。例えば接合部60、160は、継手盤15の外周縁部15bに設けられていてもよい。
【0068】
<付記>
各実施形態に記載の動力伝達継手10、210は、例えば以下のように把握される。
【0069】
(1)第1の態様に係る動力伝達継手10、210は、ロータ3aを有するモータ3の駆動を受けて回転する駆動軸4と、前記駆動軸4から前記駆動軸4の軸線O方向に離間した位置に少なくとも一部が配置される従動軸とを接続する動力伝達継手10、210であって、それぞれ前記軸線Oに直交する方向に面状に延びるとともに、前記軸線O方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の継手盤15と、互いに隣り合う一対の継手盤15の対向面15c同士の間の軸線O方向位置にそれぞれ設けられた弾性体50、150と、各前記継手盤15に設けられて、前記継手盤15と前記弾性体50、150とを接合する接合部60、160と、を備え、前記複数の継手盤15のうち前記軸線O方向で最も前記モータ3側の前記継手盤15は前記駆動軸4に固定されるとともに、前記軸線O方向で前記モータ3側とは最も反対側の前記継手盤15は前記従動軸に固定され、前記弾性体50、150は、前記一対の継手盤15よりも前記軸線Oの径方向外側で、前記一対の継手盤15の外周縁部15bに沿って延びる延在部51と、前記延在部51の延在方向の一方側に設けられて、前記一対の継手盤15のうちの一方に前記接合部60、160によって接合された第一端52a、152aと、前記延在部51の延在方向の他方側に設けられて、前記一対の継手盤15のうちの他方に前記接合部60、160によって接合された第二端52b、152bと、を有する。
従動軸の例として、例えば上述した車軸6が挙げられる。
【0070】
これにより、弾性体50、150の延在部51が軸線O方向に変形することにより、軸線O方向の変位を吸収することができる。さらに、延在部51は、継手盤15よりも径方向外側に位置する。このため、変形時に軸線O方向両側に位置する一対の継手盤15に接触することを抑制することができる。
【0071】
(2)第2の態様の動力伝達継手10、210は、(1)の動力伝達継手10、210であって、前記接合部60、160は、前記継手盤15の前記対向面15cに設けられていてもよい。
【0072】
これにより、接合部60、160が継手盤15の外周側に設けられる場合と比較して、径方向に小型化することができる。
【0073】
(3)第3の態様の動力伝達継手210は、(2)の動力伝達継手210であって、前記一対の継手盤15のうち一方の前記継手盤15は、他方の前記継手盤15に設けられた前記接合部60、160に対向する位置に凹部70を有し、前記凹部70は、対向する前記接合部60、160から前記軸線O方向に離間する方向に凹んでいてもよい。
【0074】
これにより、接合部60、160が軸線O方向に対向する継手盤15に接触することを抑制することができる。さらに、継手盤15同士を軸線O方向に離間させる必要がないため、軸線O方向に小型化することができる。
【0075】
(4)第4の態様の動力伝達継手10,210は、(2)又は(3)の動力伝達継手10,210であって、前記接合部60は、前記軸線方向に延びるピン60aであり、前記第一端52a及び前記第二端52bは、前記接合部60が挿通される挿通孔55を有してもよい。
【0076】
これにより、接合部60、160及び弾性体50を簡素な構造とすることができる。よって、製造効率を向上させ、製造コストを削減することができる。
【0077】
(5)第5の態様の動力伝達継手10、210は、(2)又は(3)の動力伝達継手10、210であって、前記接合部60、160は、前記継手盤15の前記対向面15cに設けられ、前記弾性体50、150の前記第一端52a、152a及び前記第二端52b、152bのいずれか一方が前記軸線O方向から嵌め込まれる嵌込溝163を有した接合部本体161と、前記嵌込溝163に嵌め込まれた前記弾性体50、150の前記第一端52a、152a及び前記第二端52b、152bのいずれか一方を前記軸線O方向から締結するねじ部162と、を有してもよい。
【0078】
これにより、弾性体50、150が径方向にずれることを抑制することができる。このため、弾性体50、150の延在部51が、径方向内側に移動して、軸線O方向両側の継手盤15に接触することを確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…車両、1a…車体、2…台車、2a…台車フレーム、2b…底部、3…モータ、3a…ロータ、4…駆動軸、4a…内周面、4b…外周面、6…車軸(従動軸)、6b…外周面、7…車輪、8…軸ばね、10…動力伝達継手、15…継手盤、15a…内周縁部、15b…外周縁部、15c…対向面、20…モータ側継手盤、20a…内周縁部、30…車軸側継手盤(従動軸側継手盤)、30a…内周縁部、35…固定筒、35a…内周面、35b…外周面、40…中間体、40a…内周縁部、50…弾性体、51…延在部、52…端部、52a…第一端、52b…第二端、53…接続部、54…取付部、55…挿通孔、60…接合部、60a…ピン、150…弾性体、152…端部、152a…第一端、152b…第二端、153…接続部、154…取付部、155…挿通孔、160…接合部、161…接合部本体、162…ねじ部、163…嵌込溝、164…開口部、165…締結孔、210…動力伝達継手、L…レール、O…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14