(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110157
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】コネクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 13/56 20060101AFI20240807BHJP
H01R 13/533 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R13/533 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014561
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西尾 修也
(72)【発明者】
【氏名】石田 直樹
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FB07
5E021FB20
5E021FB21
5E021FC02
5E021GA05
5E021GB08
5E087MM05
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR15
(57)【要約】
【課題】接点の摩耗を抑制できるコネクタおよびワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】コネクタ30は、電線20の端部に接続される端子31と、端子31を覆うコネクタハウジング40とを備える。コネクタ30は、電線20の外周に取り付けられるとともに電線20の動きを規制する規制部材90と、規制部材90を収容する収容筒部111を有し、コネクタハウジング40の内周面と規制部材90との間に圧入されるリテーナ110とを備える。リテーナ110は、コネクタハウジング40の内周面に対して押圧状態で接触されるとともに、規制部材90の外周面に対して押圧状態で接触されている。規制部材90は、電線20の外周面に対して押圧状態で接触される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に接続される端子と、
前記端子を覆うコネクタハウジングと、
前記電線の外周に取り付けられるとともに前記電線の動きを規制する規制部材と、
前記規制部材を内部に収容する第1収容筒部を有し、前記コネクタハウジングの内周面と前記規制部材の外周面との間に圧入されるリテーナと、を備え、
前記リテーナは、前記コネクタハウジングの内周面に対して押圧状態で接触されるとともに、前記規制部材の外周面に対して押圧状態で接触されており、
前記規制部材は、前記電線の外周面に対して押圧状態で接触される、コネクタ。
【請求項2】
前記規制部材は、第1分割体と第2分割体とを有し、
前記規制部材は、前記第1分割体と前記第2分割体とが組み合わされて前記電線の外周を包囲する筒状に形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1分割体は、第1係合部を有し、
前記第2分割体は、前記第1係合部に係合する第2係合部を有し、
前記規制部材は、前記第1係合部と前記第2係合部とが互いに係合された仮組状態において、前記電線の外周に取り付けられた状態のまま前記電線の軸方向に移動可能に構成されている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1分割体と前記第2分割体とは、互いに同じ構造を有する、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記規制部材は、前記電線が貫通する電線貫通孔を画定する内面と、前記内面から前記電線貫通孔の径方向内方に突出する第1突出部とを有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記規制部材は、前記第1収容筒部の軸方向と平行に延びる第1圧入方向に沿って前記第1収容筒部の内部に圧入され、
前記規制部材の外周面は、前記第1圧入方向の上流から前記第1圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第1収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第1傾斜面を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第1収容筒部の内周面は、前記第1圧入方向の上流から前記第1圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第1収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第2傾斜面を有する、請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記コネクタハウジングは、前記リテーナが内部に収容される第2収容筒部を有し、
前記リテーナは、前記第1圧入方向の反対方向である第2圧入方向に沿って前記第2収容筒部の内部に圧入され、
前記リテーナの外周面は、前記第2圧入方向の上流から前記第2圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第2収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第3傾斜面を有する、請求項6に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コネクタハウジングは、前記第2収容筒部の内周面から前記第2収容筒部の径方向内方に向かって突出する複数の第2突出部を有し、
前記複数の第2突出部は、前記第2収容筒部の周方向に沿って間隔を空けて設けられており、
前記リテーナは、前記複数の第2突出部のそれぞれの先端面に対して押圧状態で接触されている、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記複数の第2突出部の各々は、前記第2圧入方向に沿って延びており、
前記先端面は、前記第2圧入方向の上流から前記第2圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第2収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第4傾斜面を有する、請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記リテーナは、前記第1収容筒部の外周面から前記第1収容筒部の径方向外方に向かって突出するとともに、前記第2収容筒部の周方向において前記第2突出部と係合する第3突出部を有する、請求項9に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記第1収容筒部を形成する周壁は、前記周壁を前記第1収容筒部の径方向に貫通するスリットを有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のコネクタと、
前記端子が接続される前記電線と、を備える、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタおよびワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両の内部に配索されるワイヤハーネスとしては、電線と、その電線の端部に取り付けられたコネクタとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。コネクタは、電線の端部に接続された金属製の端子と、その端子を覆うコネクタハウジングとを有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線に流れる電流の大電流化に伴って電線が太くなると、車両走行等に起因して電線が振動した場合に、その電線の動き(例えば、揺れ)が大きくなる。すると、電線の端部に接続された端子が相手端子に対して相対移動し、端子と相手端子との接点が摩耗するという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、接点の摩耗を抑制できるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、電線の端部に接続される端子と、前記端子を覆うコネクタハウジングと、前記電線の外周に取り付けられるとともに前記電線の動きを規制する規制部材と、前記規制部材を内部に収容する第1収容筒部を有し、前記コネクタハウジングの内周面と前記規制部材の外周面との間に圧入されるリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記コネクタハウジングの内周面に対して押圧状態で接触されるとともに、前記規制部材の外周面に対して押圧状態で接触されており、前記規制部材は、前記電線の外周面に対して押圧状態で接触される。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタおよびワイヤハーネスによれば、接点の摩耗を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図(
図4における3-3線断面図)である。
【
図4】
図4は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図(
図3における4-4線断面図)である。
【
図5】
図5は、一実施形態のワイヤハーネスの一部を示す概略分解斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の規制部材を示す概略分解斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の規制部材の一部を示す概略平面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態の規制部材の仮組状態を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、一実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、一実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、変更例の規制部材の一部を示す概略平面図である。
【
図15】
図15は、変更例の規制部材の一部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のコネクタは、電線の端部に接続される端子と、前記端子を覆うコネクタハウジングと、前記電線の外周に取り付けられるとともに前記電線の動きを規制する規制部材と、前記規制部材を内部に収容する第1収容筒部を有し、前記コネクタハウジングの内周面と前記規制部材の外周面との間に圧入されるリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記コネクタハウジングの内周面に対して押圧状態で接触されるとともに、前記規制部材の外周面に対して押圧状態で接触されており、前記規制部材は、前記電線の外周面に対して押圧状態で接触される。
【0010】
この構成によれば、コネクタハウジングと規制部材との間にリテーナが圧入される。これにより、リテーナとコネクタハウジングとの接続部分を圧入構造にできるとともに、リテーナと規制部材との接続部分を圧入構造にできる。このため、コネクタハウジングに付与される押圧力を増大できるとともに、規制部材に付与される押圧力を増大できる。これによって、規制部材から電線に付与される押圧力を増大させることができる。この結果、規制部材およびリテーナによって電線を強固に保持することができる。このため、車両走行等に起因して電線が振動する場合であっても、規制部材およびリテーナの接続部分において電線の動き(例えば、揺れ)を好適に規制することができる。換言すると、振動等に起因した電線の外力を、規制部材およびリテーナの接続部分において好適に軽減できる。例えば、ゴム栓のみによって電線の外力を遮断する場合に比べて、規制部材およびリテーナによって電線の外力を好適に遮断することができる。これにより、電線の端部に接続された端子に振動が伝わることを抑制でき、端子が相手端子に対して相対移動することを抑制できる。この結果、端子と相手端子との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0011】
[2]上記[1]において、前記規制部材は、第1分割体と第2分割体とを有し、前記規制部材は、前記第1分割体と前記第2分割体とが組み合わされて前記電線の外周を包囲する筒状に形成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、規制部材が、第1分割体と第2分割体とによって電線を包囲する筒状に形成されている。これにより、規制部材を筒状としながらも、規制部材が第1分割体と第2分割体とに分かれていることで、規制部材を電線に対して後付け可能となる。すなわち、規制部材が第1分割体と第2分割体に分かれていることで、例えば電線に端子等を接続した後に、その電線に対して規制部材を取り付けることが可能である。この結果、コネクタの組立作業性を向上できる。
【0013】
[3]上記[2]において、前記第1分割体は、第1係合部を有し、前記第2分割体は、前記第1係合部に係合する第2係合部を有し、前記規制部材は、前記第1係合部と前記第2係合部とが互いに係合された仮組状態において、前記電線の外周に取り付けられた状態のまま前記電線の軸方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、規制部材を、電線の外周に取り付けられた状態のまま電線の軸方向に移動させることができる。このため、コネクタハウジングの内部への規制部材の挿入タイミングの自由度を向上できる。したがって、コネクタの組立作業性を向上できる。
【0015】
[4]上記[2]または[3]において、前記第1分割体と前記第2分割体とは、互いに同じ構造を有してもよい。
この構成によれば、規制部材を構成する第1分割体と第2分割体とが互いに同じ構造に形成されるため、部品点数、詳しくは部品の種類の増加を抑制できる。
【0016】
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記規制部材は、前記電線が貫通する電線貫通孔を画定する内面と、前記内面から前記電線貫通孔の径方向内方に突出する第1突出部とを有してもよい。
【0017】
この構成によれば、電線貫通孔を画定する内面に、その内面から電線貫通孔の径方向内方、つまり電線貫通孔に貫通する電線に向かって突出する第1突出部が設けられる。この第1突出部により、電線貫通孔に貫通する電線を好適に支持できるため、電線貫通孔の内部において電線が揺動することを好適に抑制できる。これにより、電線の端部に接続された端子に振動が伝わることを抑制でき、端子と相手端子との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0018】
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、前記規制部材は、前記第1収容筒部の軸方向と平行に延びる第1圧入方向に沿って前記第1収容筒部の内部に圧入され、前記規制部材の外周面は、前記第1圧入方向の上流から前記第1圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第1収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第1傾斜面を有してもよい。
【0019】
この構成によれば、規制部材の外周面に第1傾斜面が設けられるため、規制部材の外周寸法が、第1圧入方向の上流から第1圧入方向の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。このため、規制部材は、種々の外周寸法を有している。したがって、規制部材およびリテーナの寸法公差を第1傾斜面で好適に吸収できる。これにより、規制部材およびリテーナの寸法公差が大きい場合であっても、第1収容筒部の内部に規制部材を好適に圧入することができる。
【0020】
[7]上記[6]において、前記第1収容筒部の内周面は、前記第1圧入方向の上流から前記第1圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第1収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第2傾斜面を有してもよい。
【0021】
この構成によれば、第1収容筒部の内周面に第2傾斜面が設けられるため、第1収容筒部の内周寸法が、第1圧入方向の上流から第1圧入方向の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。これにより、規制部材およびリテーナの寸法公差を第2傾斜面で好適に吸収できる。したがって、規制部材およびリテーナの寸法公差が大きい場合であっても、第1収容筒部の内部に規制部材を好適に圧入することができる。
【0022】
[8]上記[6]または[7]において、前記コネクタハウジングは、前記リテーナが内部に収容される第2収容筒部を有し、前記リテーナは、前記第1圧入方向の反対方向である第2圧入方向に沿って前記第2収容筒部の内部に圧入され、前記リテーナの外周面は、前記第2圧入方向の上流から前記第2圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第2収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第3傾斜面を有してもよい。
【0023】
この構成によれば、リテーナの外周面に第3傾斜面が設けられるため、リテーナの外周寸法が、第2圧入方向の上流から第2圧入方向の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。このため、リテーナは、種々の外周寸法を有している。したがって、リテーナおよびコネクタハウジングの寸法公差を第3傾斜面で好適に吸収できる。これにより、リテーナおよびコネクタハウジングの寸法公差が大きい場合であっても、第2収容筒部の内部にリテーナを好適に圧入することができる。
【0024】
[9]上記[8]において、前記コネクタハウジングは、前記第2収容筒部の内周面から前記第2収容筒部の径方向内方に向かって突出する複数の第2突出部を有し、前記複数の第2突出部は、前記第2収容筒部の周方向に沿って間隔を空けて設けられており、前記リテーナは、前記複数の第2突出部のそれぞれの先端面に対して押圧状態で接触されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、リテーナと押圧状態で接触される複数の第2突出部が、第2収容筒部の周方向に沿って間隔を空けて設けられる。換言すると、第2収容筒部の内周面には、第2収容筒部の周方向の一部において、リテーナと押圧状態で接触される壁部、つまり第2突出部が設けられていない領域がある。このような領域を設けることにより、リテーナを第2収容筒部の内部に圧入する際にリテーナが変形する場合であっても、そのリテーナの変形を上記領域に好適に逃がすことができる。これにより、圧入する際のリテーナの変形を許容できるため、リテーナを第2収容筒部の内部に圧入する際のリテーナおよびコネクタハウジングの組み付け性を向上できる。
【0026】
[10]上記[9]において、前記複数の第2突出部の各々は、前記第2圧入方向に沿って延びており、前記先端面は、前記第2圧入方向の上流から前記第2圧入方向の下流に向かうに連れて、前記第2収容筒部の径方向内方に向かって傾斜する第4傾斜面を有してもよい。
【0027】
この構成によれば、各第2突出部の先端面に第4傾斜面が設けられる。このため、第2収容筒部の内部空間のうち複数の第2突出部よりも内側の空間が、第2圧入方向の上流から第2圧入方向の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。これにより、リテーナおよびコネクタハウジングの寸法公差を第4傾斜面で好適に吸収できる。したがって、リテーナおよびコネクタハウジングの寸法公差が大きい場合であっても、第2収容筒部の内部にリテーナを好適に圧入することができる。
【0028】
[11]上記[9]または[10]において、前記リテーナは、前記第1収容筒部の外周面から前記第1収容筒部の径方向外方に向かって突出するとともに、前記第2収容筒部の周方向において前記第2突出部と係合する第3突出部を有してもよい。
【0029】
この構成によれば、第2収容筒部の内部にリテーナが圧入されると、リテーナの第3突出部とコネクタハウジングの第2突出部とが第2収容筒部の周方向において互いに係合される。これにより、リテーナが第2収容筒部に対して第2圧入方向に延びる軸回りに相対回転することを好適に抑制できる。これにより、電線が第2収容筒部に対して第2圧入方向に延びる軸回りに相対回転することを抑制できる。
【0030】
[12]上記[1]から[11]のいずれかにおいて、前記第1収容筒部を形成する周壁は、前記周壁を前記第1収容筒部の径方向に貫通するスリットを有してもよい。
この構成によれば、第1収容筒部を形成する周壁の一部にスリットが設けられるため、そのスリットが広がるようにリテーナを容易に変形させることができる。これにより、コネクタハウジングの内周面に対してリテーナを押圧状態で好適に接触させることができる。
【0031】
[13]本開示のワイヤハーネスは、上記[1]から[12]のいずれかに記載のコネクタと、前記端子が接続される前記電線と、を備える。
この構成によれば、上記[1]のコネクタと同様の効果を得ることができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタおよびワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」、「直交」や「水平」は、厳密に平行、直交や水平の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行、直交や水平の場合も含まれる。本明細書の説明で使用される「筒状」という用語は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。なお、「筒状」の形状には、円形、楕円形、および尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において、「半円」とは、真円を二等分した半円のみではなく、例えば、真円を二等分した半円よりも円弧が長いものや短いものも含む。本明細書における「対向」とは、面同士または部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。また、本明細書における「A部材の内周寸法」とは、A部材の内周面をA部材の周方向に沿って一回りした長さをいう。また、本明細書における「A部材の外周寸法」とは、A部材の外周面をA部材の周方向に沿って一回りした長さをいう。本明細書における「第1」「第2」「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、1本または複数本(本実施形態では、2本)の電線20と、電線20の端部に取り付けられたコネクタアセンブリC1とを有している。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に設けられる。ワイヤハーネス10は、例えば、車両用の電気機器同士を電気的に接続するものである。電気機器としては、例えば、高圧バッテリ、インバータ、モータ、リレーボックスを挙げることができる。コネクタアセンブリC1は、例えば、1つの電気機器に設けられている。
【0034】
(コネクタアセンブリC1の全体構成)
コネクタアセンブリC1は、コネクタ30と、コネクタ30と着脱可能である相手コネクタ200とを有している。相手コネクタ200は、例えば、電気機器のケース210等の取付対象に固定されている。相手コネクタ200は、金属製の複数(本実施形態では、2つ)の相手端子201と、複数の相手端子201を保持するコネクタハウジング202とを有している。コネクタ30と相手コネクタ200とは、第1方向X1に沿って互いに組付けられている。コネクタ30は、例えば、第1方向X1に沿って相手コネクタ200に嵌合される。コネクタ30が相手コネクタ200に対して正規に嵌合されると、コネクタ30の有する金属製の端子31(
図2参照)と相手コネクタ200の相手端子201とが互いに電気的に接続される。なお、各図面における上下方向および左右方向は、必ずしもコネクタ30および相手コネクタ200の使用時の姿勢を表すものではない。
【0035】
以下の説明では、コネクタ30の各構成要素の位置関係を説明する際には、第1方向X1の反対方向を第1反対方向X2と称する。また、第1方向X1と直交する方向のうち
図1において右方に向かう方向を第2方向Y1と称し、第2方向Y1の反対方向を第2反対方向Y2と称する。第1方向X1および第2方向Y1の双方と直交する方向のうち
図1において上方に向かう方向を第3方向Z1と称し、第3方向Z1の反対方向を第3反対方向Z2と称する。
【0036】
(コネクタ30の構成)
図2に示すように、コネクタ30は、複数の電線20の端部にそれぞれ接続された複数の端子31と、複数の端子31を覆う筒状のコネクタハウジング40とを有している。コネクタハウジング40は、端子31を収容するインナーハウジング41と、インナーハウジング41を覆うシールドシェル50とを有している。コネクタ30は、電線20と端子31との接続部分を被覆するカバー部材70と、コネクタハウジング40の内側に嵌合する1つまたは複数(本実施形態では、2つ)のシール部材80とを有している。コネクタ30は、電線20の動きを規制する規制部材90と、シール部材80の抜け止めを行うリテーナ110と、シールドブラケット160と、1つまたは複数(本実施形態では、4つ)のボルトB1とを有している。
【0037】
(電線20の構成)
図3および
図4に示すように、各電線20は、導電性を有する芯線21と、芯線21の外周を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆22とを有している。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよい。本実施形態の各電線20は、ノンシールド電線である。
【0038】
芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線や単一の導体からなる単芯線を用いることができる。単芯線としては、例えば、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や、内部が中空構造をなす筒状導体を用いることができる。また、芯線21としては、撚線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。
【0039】
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
電線20の長さ方向と直交する平面によって電線20を切断した断面形状、つまり電線20の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。電線20の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、扁平形状に形成することができる。
図4に示すように、本実施形態の電線20の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0040】
各電線20は、第1方向X1に沿って延びている。換言すると、各電線20の軸方向は、第1方向X1と平行に延びている。複数の電線20は、例えば、第2方向Y1に沿って並んでいる。
【0041】
図3に示すように、芯線21の軸方向(ここでは、第1方向X1)の端部は、絶縁被覆22から露出している。絶縁被覆22から露出した芯線21の端部には、端子31が接続されている。
【0042】
(端子31の構成)
2つの端子31は、2つの電線20のそれぞれに電気的に接続されている。各端子31は、例えば、電線20の端部と接続される電線接続部32と、端子接続部33とを有している。各端子31は、例えば、電線接続部32と端子接続部33とが連続して一体に形成された単一部品である。各端子31の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。
【0043】
電線接続部32は、絶縁被覆22から露出された芯線21の端部に接続されている。電線接続部32は、例えば、平板状に形成されている。電線接続部32は、例えば、圧着や超音波溶接などによって芯線21に接続されている。これにより、電線接続部32と芯線21とが電気的および機械的に接続されている。
【0044】
端子接続部33は、例えば、平板状に形成されている。端子接続部33は、相手コネクタ200の相手端子201と電気的および機械的に接続される。
(カバー部材70の構成)
図2に示すように、2つのカバー部材70は、2つの電線20にそれぞれ対応して設けられている。各カバー部材70は、例えば、合成樹脂製である。
【0045】
(インナーハウジング41の構成)
インナーハウジング41は、例えば、全体として筒状に形成されている。インナーハウジング41は、例えば、合成樹脂製である。インナーハウジング41は、例えば、シールドシェル50とは別部品である。インナーハウジング41は、例えば、シールドシェル50の内部に収容されている。インナーハウジング41は、例えば、第1方向X1に沿ってシールドシェル50の内部に収容される。
【0046】
インナーハウジング41は、2つの収容筒42を有している。
図3に示すように、各収容筒42には、例えば、電線20の軸方向の端部が収容されている。各収容筒42には、例えば、電線20の芯線21と端子31の電線接続部32との接続部分が収容されている。各収容筒42には、例えば、カバー部材70が収容されている。各収容筒42には、例えば、端子31の端子接続部33が収容されている。各収容筒42には、例えば、相手コネクタ200の相手端子201が挿入される。各収容筒42の内部では、端子接続部33と相手端子201とが機械的および電気的に接続されている。
【0047】
図2に示すように、収容筒42の外周面は、1つまたは複数(本実施形態では、4つ)の係合部43を有している。各係合部43は、第1反対方向X2の端部における収容筒42の外周面に設けられている。各係合部43は、収容筒42の外周面から収容筒42の径方向外方に突出するように形成されている。
【0048】
図3に示すように、収容筒42の外周面には、例えば、シール部材44が装着されている。シール部材44は、例えば、収容筒42の周方向全周にわたって連続した環状に形成されている。シール部材44は、例えば、係合部43よりも第1方向X1に設けられている。シール部材44は、収容筒42の外周面とシールドシェル50の内周面との間をシールする。
【0049】
収容筒42の外周面には、例えば、シール部材45が装着されている。シール部材45は、例えば、収容筒42の周方向全周にわたって連続した環状に形成されている。シール部材45は、例えば、シール部材44よりも第1方向X1に設けられている。シール部材45は、収容筒42の外周面と相手コネクタ200のコネクタハウジング202(
図1参照)の内周面との間をシールする。シール部材44,45は、例えば、ゴム製である。
【0050】
(シールドシェル50の構成)
シールドシェル50は、インナーハウジング41の外周を包囲している。シールドシェル50は、例えば、全体として筒状に形成されている。シールドシェル50は、例えば、第1方向X1に開口するとともに、第1反対方向X2に開口している。シールドシェル50は、例えば、金属製である。シールドシェル50の材料としては、例えば、銅系、アルミニウム系や鉄系の金属材料を用いることができる。本実施形態のシールドシェル50は、アルミダイキャスト製である。
【0051】
シールドシェル50は、インナーハウジング41を内部に収容する収容筒部51と、規制部材90およびリテーナ110を内部に収容する収容筒部60とを有している。シールドシェル50は、例えば、収容筒部51と収容筒部60とが連続して一体に形成された単一部品である。
【0052】
収容筒部51は、収容筒部60よりも第1方向X1に設けられている。収容筒部51は、筒状に形成されている。収容筒部51の内部空間は、例えば、インナーハウジング41の全体を収容可能な大きさに形成されている。
【0053】
収容筒部60は、シールドシェル50の第1反対方向X2の端部に設けられている。収容筒部60は、筒状に形成されている。収容筒部60の内部空間は、収容筒部51の内部空間と連通している。収容筒部60の内部空間は、例えば、収容筒部51の内部空間よりも大きい。収容筒部60の内周寸法は、例えば、収容筒部51の第1反対方向X2の端部における内周寸法よりも大きい。収容筒部60の内周寸法は、リテーナ110を収容可能な大きさに形成されている。ここで、収容筒部60の内部には、収容筒部60の軸方向(ここでは、第1方向X1)と平行に延びる圧入方向D1に沿ってリテーナ110が圧入される。なお、収容筒部51の内周寸法は、例えば、リテーナ110が挿入不能な大きさに形成されている。ここで、本実施形態の圧入方向D1は、第1方向X1と一致している。本明細書では、圧入方向D1において、リテーナ110が挿入開始される第1反対方向X2側を「上流」とし、第1方向X1側を「下流」とする。すなわち、圧入方向D1の手前側を「上流」とし、圧入方向D1の奥側を「下流」とする。
【0054】
図4に示すように、収容筒部60は、収容筒部60の軸方向(ここでは、第1方向X1)から見た平面形状が楕円形状または長円形状に形成されている。なお、第1方向X1から見た収容筒部60の平面形状は、任意の形状にすることができる。例えば、第1方向X1から見た収容筒部60の平面形状は、楕円形状または長円形状以外の形状、例えば、円形状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成することができる。
【0055】
収容筒部60は、収容筒部60の内周面に設けられた1つまたは複数(本実施形態では、8つ)の突出部61を有している。各突出部61は、収容筒部60の内周面から収容筒部60の径方向内方に向かって突出している。各突出部61の先端面は、例えば、リテーナ110の外周面に接触可能に設けられている。
【0056】
図3に示すように、各突出部61は、例えば、圧入方向D1に沿って延びている。各突出部61は、例えば、収容筒部60の軸方向の全長にわたって延びている。
各突出部61の先端面は、例えば、圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて、収容筒部60の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面62を有している。傾斜面62は、突出部61の第1反対方向X2の端部から収容筒部51に向かうに連れて、シールドシェル50の径方向内方に向かって傾斜している。傾斜面62は、例えば、突出部61の長さ方向(ここでは、第1方向X1)の全長にわたって形成されている。収容筒部60の内部空間のうち複数の突出部61により囲まれた空間は、圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて小さくなるように形成されている。
【0057】
図4に示すように、8つの突出部61は、収容筒部60の周方向に沿って間隔を空けて設けられている。8つの突出部61は、例えば、第3方向Z1または第3反対方向Z2に向かって突出する4つの突出部61Aと、第2方向Y1および第3方向Z1の双方と交差する方向に向かって突出する突出する4つの突出部61Bとを有している。
【0058】
各突出部61Aは、第2方向Y1において、突出部61Bよりも収容筒部60の中心軸に近い位置に設けられている。圧入方向D1から見た各突出部61Aの平面形状は、例えば、全体として矩形状に形成されている。各突出部61Aの側面は、例えば、第3方向Z1または第3反対方向Z2に向かって延びている。各突出部61Aが有する2つの側面は、例えば、互いに平行に延びている。各突出部61Aの側面と先端面との角部は、例えば、R面取りされた形状、つまりR形状に形成されている。
【0059】
図2に示すように、各突出部61Aには、ボルトB1が挿入されるボルト孔63が設けられている。ボルト孔63は、突出部61Aの第1反対方向X2の端面から第1方向X1に向かって凹むように形成されている。
【0060】
図4に示すように、圧入方向D1から見た各突出部61Bの平面形状は、例えば、全体として台形状に形成されている。各突出部61Bが有する2つの側面は、互いに非平行に延びるように形成されている。2つの側面のうちの1つの側面は、リテーナ110と接触可能に設けられた接触面64である。接触面64は、例えば、突出部61Bの突出方向と交差する方向に延びている。接触面64は、例えば、突出部61Bの突出方向に対して傾斜するように形成されている。本実施形態の接触面64は、第2方向Y1または第2反対方向Y2に沿って延びている。
【0061】
(シール部材80の構成)
図2に示すように、2つのシール部材80は、2本の電線20のそれぞれに取り付けられている。各シール部材80は、各電線20の絶縁被覆22の外周面に取り付けられている。2つのシール部材80は、例えば、インナーハウジング41の2つの収容筒42の内側に個別に嵌合されている。各シール部材80は、電線20の周方向全周にわたって連続した環状に形成されている。各シール部材80は、電線20の外周面と収容筒42の内周面との間をシールする。なお、各シール部材80は、例えば、ゴム製である。
【0062】
(規制部材90の構成)
図5に示すように、規制部材90は、例えば、2本の電線20の外周に取り付けられている。規制部材90は、2本の電線20の絶縁被覆22の外周面に取り付けられている。
図3に示すように、規制部材90は、シール部材80よりも第1反対方向X2に設けられている。規制部材90は、シールドシェル50の内部に収容されている。規制部材90は、例えば、コネクタハウジング40およびリテーナ110とは別部品である。規制部材90は、例えば、合成樹脂製である。規制部材90の材料としては、例えば、耐熱性に優れた樹脂材料を用いることができる。規制部材90の材料としては、例えば、リテーナ110を構成する樹脂材料よりも耐熱性に優れた樹脂材料を用いることができる。規制部材90は、例えば、150℃以上の耐熱性を有している。
【0063】
図2に示すように、規制部材90は、例えば、2本の電線20が個別に貫通する2つの電線貫通孔91を有している。電線貫通孔91は、規制部材90を第1方向X1に貫通している。
【0064】
図6に示すように、規制部材90は、複数(本実施形態では、2つ)の分割体、つまり第1分割体92Aおよび第2分割体92Bにより構成されている。規制部材90は、第1分割体92Aと第2分割体92Bとが組み合わされて電線20の外周を包囲する筒状に形成されている。第1分割体92Aと第2分割体92Bとは、例えば、互いに同じ構造を有している。以下では、第1分割体92Aおよび第2分割体92Bのうち第1分割体92Aの構造を詳細に説明し、第2分割体92Bの構造の詳細な説明は省略する。
【0065】
(第1分割体92Aの構成)
第1分割体92Aは、電線貫通孔91を構成する複数(本実施形態では、2つ)の分割貫通孔93と、第1係合部94と、第2係合部95とを有している。第1分割体92Aの第1係合部94は、第2分割体92Bの第2係合部95に係合される。第1分割体92Aの第2係合部95は、第2分割体92Bの第1係合部94に係合される。第1分割体92Aは、第2分割体92Bに対向する対向面96を有している。第1分割体92Aの対向面96は、第1分割体92Aにおける第3方向Z1の端面である。
【0066】
各分割貫通孔93は、対向面96から第3反対方向Z2、つまり第2分割体92Bから離れる方向に向かって凹むように形成されている。各分割貫通孔93を画定する内面は、円弧状に湾曲する曲面に形成されている。各分割貫通孔93を画定する内面は、例えば、第1方向X1から見た平面形状が半円状に形成されている。第1分割体92Aと第2分割体92Bとが合体されると、第1分割体92Aの分割貫通孔93と第2分割体92Bの分割貫通孔93とにより電線貫通孔91が構成される。2つの分割貫通孔93は、第2方向Y1において間隔を空けて設けられている。
【0067】
各分割貫通孔93を画定する内面には、その内面から電線貫通孔91の径方向内方に向かって突出する1つまたは複数(本実施形態では、2つ)の突出部97を有している。各突出部97は、例えば、電線貫通孔91の周方向に沿って延びている。各突出部97は、例えば、電線貫通孔91の周方向において、分割貫通孔93の中間部に設けられている。2つの突出部97は、例えば、電線貫通孔91の軸方向(ここでは、第1方向X1)に沿って間隔を空けて設けられている。各突出部97は、電線貫通孔91に貫通する電線20を電線貫通孔91の径方向内方に向かって押圧する。
【0068】
図4に示すように、第1係合部94および第2係合部95は、例えば、規制部材90の内部に設けられている。第1係合部94および第2係合部95は、第1分割体92Aと第2分割体92Bとが組み合わされて筒状に形成された際に、規制部材90の内部、つまり規制部材90の外部に露出しない位置に設けられている。第1係合部94および第2係合部95の各々は、例えば、2つの分割貫通孔93が並ぶ方向である第2方向Y1において、2つの分割貫通孔93の間に設けられている。
【0069】
第1分割体92Aは、対向面96に設けられた凹部101と、凹部101の底面から第2分割体92Bに向かって突出する弾性変形可能な弾性片102と、弾性片102の外周の一部を囲う保護筒部103とを有している。第1分割体92Aは、対向面96に設けられた凹部104を有している。
【0070】
凹部101は、第1分割体92Aの幅方向(ここでは、第2方向Y1)のうち2つの分割貫通孔93の間に設けられた対向面96から第3反対方向Z2に向かって凹むように形成されている。弾性片102は、例えば、凹部101の底面から第3方向Z1に向かって突出している。弾性片102は、例えば、対向面96よりも第3方向Z1に突出している。図示は省略するが、凹部101の底面は、第1分割体92Aの外周面と一体に形成されている。弾性片102は、凹部101の底面に接続された基端部を固定端とし、基端部とは第3方向Z1において反対の先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。弾性片102は、例えば、弾性変形による第2方向Y1への撓みが可能に構成されている。
【0071】
図7に示すように、弾性片102は、凹部101の内周面と離れて設けられている。弾性片102は、例えば、凹部101の周方向全周にわたって凹部101の内周面と離れて設けられている。換言すると、凹部101の内周面は、弾性片102と離れた状態で弾性片102の外周を周方向全周にわたって包囲している。なお、凹部101の一部は、例えば、第1分割体92Aを第3方向Z1に貫通するように形成されている。
【0072】
図4に示すように、第1係合部94は、弾性片102の先端部における第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出する突起状に形成されている。第1係合部94は、第1分割体92Aと第2分割体92Bとが合体する方向である第3方向Z1において第2分割体92Bの第2係合部95と係合可能に構成されている。
【0073】
図6に示すように、保護筒部103は、例えば、対向面96から第3方向Z1に向かって突出している。保護筒部103は、例えば、第3方向Z1に開口するとともに、第3反対方向Z2に開口する筒状に形成されている。保護筒部103は、例えば、第2反対方向Y2に開口している。保護筒部103は、例えば、弾性片102と離れた状態で弾性片102の外周を包囲している。保護筒部103は、例えば、第2分割体92Bの凹部104に挿入可能に形成されている。
【0074】
凹部104は、第1分割体92Aの幅方向のうち分割貫通孔93と凹部101との間に設けられた対向面96から第3反対方向Z2に向かって凹むように形成されている。
図7に示すように、凹部104は、例えば、第1分割体92Aを第3方向Z1に貫通するように形成されている。
【0075】
図4に示すように、第2係合部95は、凹部104の第2方向Y1の内側面から第2反対方向Y2に向かって突出する突起状に形成されている。第2係合部95は、凹部104の第3方向Z1の端部における内側面に設けられている。第2係合部95は、第3方向Z1において第2分割体92Bの第1係合部94と係合可能に構成されている。
【0076】
図8に示すように、第1分割体92Aと第2分割体92Bとが仮組されると、第1分割体92Aの第1係合部94および第2係合部95と第2分割体92Bの第2係合部95および第1係合部94とがそれぞれ互いに係合される。換言すると、第1分割体92Aの第1係合部94および第2係合部95と第2分割体92Bの第2係合部95および第1係合部94とがそれぞれ互いに係合されると、規制部材90が仮組状態になる。第1係合部94と第2係合部95とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。
【0077】
規制部材90は、第1係合部94と第2係合部95とが互いに係合した仮組状態において、電線20の外周に取り付けられた状態のまま電線20の軸方向に移動可能に構成されている。仮組状態では、第1分割体92Aの分割貫通孔93と第2分割体92Bの分割貫通孔93とが互いに対向した状態で組み合わされて電線貫通孔91が形成される。仮組状態における電線貫通孔91の内周寸法は、例えば、電線貫通孔91の内周面、具体的には突出部97の先端面と電線20の外周面との間に隙間が設けられる大きさに設定されている。仮組状態では、第1分割体92Aの対向面96と第2分割体92Bの対向面96との間に隙間が設けられている。
【0078】
図5に示すように、規制部材90は、圧入方向D2に沿って、リテーナ110が有する収容筒部111の内部に圧入される。規制部材90は、規制部材90の外周面が収容筒部111の内周面に接触した状態で収容筒部111の内部に挿入されている。ここで、圧入方向D2は、収容筒部111の軸方向と平行に延びている。本実施形態の圧入方向D2は、圧入方向D1(
図3参照)の反対方向であり、第1反対方向X2と一致している。本明細書では、圧入方向D2において、収容筒部111に対して規制部材90が圧入開始される第1方向X1側を「上流」とし、第1反対方向X2側を「下流」とする。すなわち、圧入方向D2の手前側を「上流」とし、圧入方向D2の奥側を「下流」とする。
【0079】
図3に示すように、第1分割体92Aの外周面は、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて、収容筒部111の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面98を有している。傾斜面98は、例えば、第1分割体92Aの第1方向X1の端部から第1反対方向X2に向かうに連れて、シールドシェル50の径方向内方に向かって傾斜している。傾斜面98は、例えば、第1分割体92Aの軸方向(ここでは、第1方向X1)の全長にわたって形成されている。
図5に示すように、傾斜面98は、例えば、第1分割体92Aの外周面のうち対向面96と第3方向Z1において反対側に設けられた外周面のみに形成されている。換言すると、第1分割体92Aの側面、つまり第2方向Y1の端面および第2反対方向Y2の端面には、傾斜面98が形成されていない。
【0080】
規制部材90の外周寸法は、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて小さくなるように形成されている。第3方向Z1に沿う規制部材90の長さ寸法は、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて小さくなるように形成されている。第2方向Y1に沿う規制部材90の長さ寸法は、規制部材90の軸方向の全長にわたって一定に形成されている。
図3に示すように、規制部材90の外周寸法は、例えば、インナーハウジング41の収容筒42に挿入不能な大きさに形成されている。規制部材90は、インナーハウジング41の第1反対方向X2の端面に接触している。これにより、規制部材90は、第1方向X1への移動が規制されている。
【0081】
図4に示すように、収容筒部111の内部に圧入された圧入状態の規制部材90は、例えば、仮組状態(
図8参照)よりも第3方向Z1に縮径されている。すなわち、圧入状態の規制部材90は、第1分割体92Aの対向面96と第2分割体92Bの対向面96との間の隙間が仮組状態の場合よりも小さくなるように縮径されている。圧入状態の規制部材90では、例えば、規制部材90の縮径に伴って、第1分割体92Aの第1係合部94および第2係合部95と第2分割体92Bの第2係合部95および第1係合部94との係合が解除されている。
【0082】
圧入方向D2から見た規制部材90の平面形状は、任意の形状にすることができる。例えば、圧入方向D2から見た規制部材90の平面形状は、例えば、円形状、多角形状や扁平形状に形成することができる。本実施形態の圧入方向D2から見た規制部材90の平面形状は、四角形状に形成されている。
【0083】
(リテーナ110の構成)
図3に示すように、リテーナ110は、例えば、インナーハウジング41の第1反対方向X2の端部に取り付けられている。リテーナ110は、コネクタハウジング40の内周面と規制部材90との間に圧入されている。リテーナ110は、規制部材90の外周を包囲するように形成されている。リテーナ110は、シールドシェル50の収容筒部60の内部に収容されている。リテーナ110は、シールドシェル50の内部において、規制部材90を電線20に向かって押圧した状態で、規制部材90を保持している。リテーナ110は、コネクタハウジング40および規制部材90とは別部品である。
【0084】
図5に示すように、リテーナ110は、例えば、本体部120と、1つまたは複数(本実施形態では、4つ)の係合部130と、1つまたは複数(本実施形態では、2つ)の突出部140と、1つまたは複数(本実施形態では、4つ)の突出部150とを有している。リテーナ110は、例えば、本体部120と係合部130と突出部140と突出部150とが一体に形成された単一部品である。リテーナ110は、例えば、合成樹脂製である。リテーナ110の材料としては、例えば、耐熱性に優れた樹脂材料を用いることができる。リテーナ110は、例えば、150℃以上の耐熱性を有している。
【0085】
本体部120は、規制部材90が収容される収容筒部111を有する箱状に形成されている。本体部120は、例えば、枠状に形成された周壁121と、第1反対方向X2の開口を塞ぐ底壁122とを有している。本体部120は、例えば、2本の電線20が個別に貫通する2つの貫通孔123を有している。各貫通孔123は、例えば、底壁122を第1方向X1に貫通している。
【0086】
周壁121の外周面、つまりリテーナ110の外周面は、例えば、収容筒部60(
図3参照)の内周面に沿った形状に形成されている。リテーナ110の外周面は、例えば、圧入方向D2から見た平面形状が全体として楕円形状または長円形状に形成されている。
図4に示すように、リテーナ110は、コネクタハウジング40の内周面に対して押圧状態で接触している。リテーナ110の外周面は、シールドシェル50の複数の突出部61の先端面に接触している。リテーナ110の外周面は、例えば、8つ全ての突出部61の先端面に接触している。リテーナ110の外周面は、例えば、シールドシェル50の径方向外方に向かって押圧する状態で突出部61の先端面に接触している。
【0087】
図3に示すように、リテーナ110の外周面は、例えば、圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて、収容筒部60の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面124を有している。傾斜面124は、例えば、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて、シールドシェル50の径方向外方に向かって傾斜している。傾斜面124は、例えば、本体部120の軸方向(ここでは、第1方向X1)の全長にわたって形成されている。傾斜面124は、例えば、本体部120の周方向全周にわたって形成されている。本体部120の外周寸法は、圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて小さくなるように形成されている。
【0088】
図5に示すように、収容筒部111の内部空間は、周壁121と底壁122とによって囲まれた空間により形成されている。収容筒部111の内部には、規制部材90が圧入方向D2に沿って圧入される。収容筒部111の内部空間は、規制部材90を圧入状態で収容可能な大きさに形成されている。リテーナ110は、規制部材90の外周面に対して押圧状態で接触している。収容筒部111の内周面は、例えば、収容筒部111の径方向内方に向かって押圧する状態で規制部材90の外周面に接触している。
【0089】
圧入方向D2から見た収容筒部111の平面形状は、任意の形状にすることができる。圧入方向D2から見た収容筒部111の平面形状は、例えば、円形状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成することができる。圧入方向D2から見た平面形状は、例えば、規制部材90の外周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の圧入方向D2から見た収容筒部111の平面形状は、四角形状に形成されている。
【0090】
図3に示すように、収容筒部111の内周面は、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて、収容筒部111の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面112を有している。傾斜面112は、例えば、圧入方向D2に沿って延びている。
図5に示すように、傾斜面112は、収容筒部111の内周面のうち第3方向Z1の内周面および第3反対方向Z2の内周面のみに形成されている。換言すると、収容筒部111の内周面のうち第2方向Y1の内周面および第2反対方向Y2の内周面には、傾斜面112が形成されていない。
【0091】
収容筒部111を形成する周壁121は、例えば、1つまたは複数(本実施形態では、2つ)のスリット113を有している。2つのスリット113は、例えば、収容筒部111の周方向において間隔を空けて設けられている。2つのスリット113は、例えば、周壁121の第2方向Y1の端部と、周壁121の第2反対方向Y2の端部とにそれぞれ設けられている。2つのスリット113は、例えば、周壁121を第3方向Z1において2つに分割するように設けられている。各スリット113は、例えば、周壁121を収容筒部111の径方向に貫通するように形成されている。各スリット113は、例えば、周壁121を周壁121の厚み方向(ここでは、第2方向Y2)に貫通するように形成されている。
図5に示すように、各スリット113は、例えば、周壁121の第1方向X1の端面から第1反対方向X2に沿って底壁122まで延びている。
【0092】
図2に示すように、4つの係合部130は、インナーハウジング41の4つの係合部43にそれぞれ対応して設けられている。各係合部130は、例えば、本体部120の第1方向X1の端部から第1方向X1に向かって突出している。各係合部130は、本体部120に接続された基端部を固定端とし、基端部とは第1方向X1において反対側の先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。各係合部130は、弾性変形による第3方向Z1または第3反対方向Z2への撓みが可能に構成されている。各係合部130は、係合部43に係合される係合孔131を有している。係合孔131は、例えば、第1方向X1に沿って延びている。係合部130と係合部43とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。係合部130と係合部43とが互いに係合されることにより、リテーナ110がインナーハウジング41に固定される。
【0093】
図5に示すように、突出部140,150の各々は、周壁121の外周面、つまり収容筒部111の外周面から収容筒部111の径方向外方に向かって突出している。突出部140,150の各々は、例えば、第1方向X1に沿って延びている。
【0094】
各突出部140は、例えば、第3方向Z1から見た平面形状がU字状に形成されている。
図4に示すように、各突出部140は、シールドシェル50の2つの突出部61Aの間の隙間に挿入されている。各突出部140は、収容筒部60の周方向において2つの突出部61Aと係合するように設けられている。各突出部140は、例えば、シールドシェル50に対してリテーナ110を圧入する際のガイド部材として機能する。
【0095】
各突出部150は、例えば、第2方向Y1および第3方向Z1の双方と交差する方向に突出している。各突出部150は、シールドシェル50の突出部61Bと係合するように設けられている。各突出部150は、例えば、第3方向Z1において、スリット113と突出部61Bとの間に設けられている。各突出部150は、例えば、スリット113が第3方向Z1に広がるようにリテーナ110が変形した際に、突出部61Bと係合するように設けられている。
【0096】
各突出部150は、突出部61Bの接触面64と接触可能に設けられた接触面151を有している。接触面151は、例えば、突出部150の突出方向と交差する方向に延びている。接触面151は、例えば、突出部150の突出方向に対して傾斜するように形成されている。本実施形態の接触面151は、第2方向Y1または第2反対方向Y2に沿って延びている。ここで、突出部150の突出方向に対して傾斜して延びる接触面151と突出部61Bの突出方向に対して傾斜して延びる接触面64とが互いに接触される。このため、接触面64,151がそれぞれ突出部61B,150の突出方向と平行に延びる場合に比べて、接触面64,151同士の接触面積を増大させることができる。
【0097】
(シールドブラケット160の構成)
図1に示すように、シールドブラケット160は、シールドシェル50の第1反対方向X2の端部に取り付けられている。シールドブラケット160は、例えば、複数(ここでは、4つ)のボルトB1によってシールドシェル50に固定されている。シールドブラケット160は、シールドシェル50の第1反対方向X2の開口を塞ぐように形成されている。シールドブラケット160は、例えば、2本の電線20が個別に貫通する2つの貫通孔161を有している。
【0098】
図3に示すように、各電線20は、シール部材80と規制部材90とリテーナ110とシールドブラケット160とを第1反対方向X2に貫通してコネクタハウジング40の外部に引き出されている。
【0099】
(ワイヤハーネス10の製造方法)
次に、ワイヤハーネス10の製造方法の一例について説明する。
まず、
図9に示すように、インナーハウジング41とシールドシェル50とを準備し、シールドシェル50の収容筒部51の内部にインナーハウジング41を収容する。これにより、コネクタハウジング40が形成される。また、複数の電線20に個別に端子31を接続するとともに、複数の電線20に個別にカバー部材70とシール部材80とを装着する。続いて、端子31が接続された電線20を、第1方向X1に沿ってコネクタハウジング40の内部に挿入する。
【0100】
次に、
図10に示すように、コネクタハウジング40への電線20および端子31の挿入が完了すると、電線20の外周に規制部材90を取り付ける。具体的には、第3方向Z1および第3反対方向Z2から2本の電線20を挟み込むように第1分割体92Aおよび第2分割体92Bを仮組させる。
【0101】
続いて、
図11に示すように、第1分割体92Aと第2分割体92Bとを仮組させた後に、規制部材90を第1方向X1に沿ってコネクタハウジング40の内部に挿入する。このときの規制部材90は、
図8に示すように、第1分割体92Aの第1係合部94および第2係合部95と第2分割体92Bの第2係合部95および第1係合部94とがそれぞれ互いに係合されている。この仮組状態の規制部材90は、電線20の外周に取り付けられた状態のまま電線20の軸方向に移動可能である。
【0102】
次いで、
図12に示すように、コネクタハウジング40の内部に規制部材90が挿入されると、インナーハウジング41の第1反対方向X2の端面に規制部材90が接触されて位置決めされる。次に、リテーナ110を、圧入方向D1に沿ってコネクタハウジング40の内部に圧入する。具体的には、シールドシェル50の収容筒部60の内周面と規制部材90の外周面との間に楔としてリテーナ110を圧入する。
【0103】
続いて、
図13に示すように、収容筒部60の内部へのリテーナ110の圧入が進行すると、リテーナ110の収容筒部111の内部に対して規制部材90が圧入方向D2に沿って圧入される。このとき、規制部材90は、収容筒部111の傾斜面112によって径方向内方、つまり電線20に向かって押圧される。これにより、規制部材90は、縮径等の変形をしながら収容筒部111の内部に圧入される。具体的には、規制部材90は、第1分割体92Aの対向面96と第2分割体92Bの対向面96との間の隙間が小さくなるように縮径しながら収容筒部111の内部に圧入される。このような縮径により、規制部材90の突出部97は、電線20の外周面に対して押圧状態で接触される。ここで、
図4に示すように、縮径された規制部材90では、縮径する量に応じて、第1係合部94と第2係合部95との係合が解除される。また、収容筒部111の内部への規制部材90の圧入に伴って、リテーナ110が拡径するように変形する。具体的には、リテーナ110は、
図5に示したスリット113が第3方向Z1および第3反対方向Z2に広がるように拡径しながら収容筒部60の内部に圧入される。このような拡径により、リテーナ110の外周面は、収容筒部60の内周面、具体的には突出部61の先端面に対して押圧状態で接触される。そして、リテーナ110は、インナーハウジング41の第1反対方向X2の端部に取り付けられることにより、コネクタハウジング40への圧入が完了する。このときのリテーナ110は、収容筒部111によって規制部材90を電線20に向かって押圧するとともに、シールドシェル50の収容筒部60に対して押圧状態で接触する。
【0104】
その後、
図13に示すように、ボルトB1により、シールドブラケット160をシールドシェル50に取り付けることにより、ワイヤハーネス10を製造することができる。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0105】
(1)コネクタ30は、電線20の端部に接続される端子31と、端子31を覆うコネクタハウジング40とを備える。コネクタ30は、電線20の外周に取り付けられるとともに電線20の動きを規制する規制部材90と、規制部材90を収容する収容筒部111を有し、コネクタハウジング40の内周面と規制部材90との間に圧入されるリテーナ110とを備える。リテーナ110は、コネクタハウジング40の内周面に対して押圧状態で接触されるとともに、規制部材90の外周面に対して押圧状態で接触されている。規制部材90は、電線20の外周面に対して押圧状態で接触される。
【0106】
この構成によれば、コネクタハウジング40と規制部材90との間にリテーナ110が圧入される。これにより、リテーナ110とコネクタハウジング40との接続部分を圧入構造にできるとともに、リテーナ110と規制部材90との接続部分を圧入構造にできる。このため、コネクタハウジング40に付与される押圧力を増大できるとともに、規制部材90に付与される押圧力を増大できる。これによって、規制部材90から電線20に付与される押圧力を増大させることができる。この結果、規制部材90およびリテーナ110によって電線20を強固に保持することができる。このため、車両走行等に起因して電線20が振動する場合であっても、規制部材90およびリテーナ110の接続部分において電線20の動き(例えば、揺れ)を好適に規制することができる。換言すると、振動等に起因した電線20の外力を、規制部材90およびリテーナ110の接続部分において好適に軽減できる。例えば、ゴム栓のみによって電線20の外力を遮断する場合に比べて、規制部材90およびリテーナ110によって電線20の外力を好適に遮断することができる。これにより、電線20の端部に接続された端子31に振動が伝わることを抑制でき、端子31が相手端子201に対して相対移動することを抑制できる。この結果、端子31と相手端子201との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0107】
(2)さらに、リテーナ110がコネクタハウジング40の内周面に対して押圧状態で接触されるため、振動等に起因した電線20の外力をコネクタハウジング40に好適に分散させることができる。これにより、電線20の端部に接続された端子31に振動が伝わることを抑制できる。この結果、電線20の振動に起因して、端子31と相手端子201との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0108】
(3)規制部材90が、第1分割体92Aと第2分割体92Bとによって電線20を包囲する筒状に形成されている。これにより、規制部材90を筒状としながらも、規制部材90が第1分割体92Aと第2分割体92Bとに分かれていることで、規制部材90を電線20に対して後付け可能となる。すなわち、規制部材90が第1分割体92Aと第2分割体92Bとに分かれていることで、例えば電線20に端子31等を接続した後に、その電線20に対して規制部材90を取り付けることが可能である。この結果、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上できる。
【0109】
(4)規制部材90は、仮組状態において、電線20の外周に取り付けられた状態のまま電線20の軸方向に移動可能に構成されている。このため、コネクタハウジング40の内部への規制部材90の挿入タイミングの自由度を向上できる。したがって、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上できる。
【0110】
(5)規制部材90を構成する第1分割体92Aと第2分割体92Bとが互いに同じ構造に形成されるため、部品点数、詳しくは部品の種類の増加を抑制できる。
(6)電線貫通孔91を画定する内面に、その内面から電線貫通孔91の径方向内方、つまり電線貫通孔91に貫通する電線20に向かって突出する突出部97が設けられる。この突出部97より、電線貫通孔91に貫通する電線20を好適に支持できるため、電線貫通孔91の内部において電線20が揺動することを好適に抑制できる。これにより、電線20の端部に接続された端子31に振動が伝わることを抑制でき、端子31と相手端子201との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0111】
(7)規制部材90の外周面に、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて、収容筒部111の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面98が設けられる。このため、規制部材90の外周寸法が圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。したがって、規制部材90は、種々の外周寸法を有している。これにより、規制部材90およびリテーナ110の寸法公差を傾斜面98で好適に吸収できる。この結果、規制部材90およびリテーナ110の寸法公差が大きい場合であっても、収容筒部111の内部に規制部材90を好適に圧入することができる。
【0112】
(8)収容筒部111の内周面に、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて、収容筒部111の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面112が設けられる。このため、収容筒部111の内周寸法が、圧入方向D2の上流から圧入方向D2の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。これにより、規制部材90およびリテーナ110の寸法公差を傾斜面112で好適に吸収できる。したがって、規制部材90およびリテーナ110の寸法公差が大きい場合であっても、収容筒部111の内部に規制部材90を好適に圧入することができる。
【0113】
(9)リテーナ110の外周面に、圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて、収容筒部60の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面124が設けられる。このため、リテーナ110の外周寸法が圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。したがって、リテーナ110は、種々の外周寸法を有している。これにより、リテーナ110およびシールドシェル50の寸法公差を傾斜面124で好適に吸収できる。これにより、リテーナ110およびシールドシェル50の寸法公差が大きい場合であっても、収容筒部60の内部にリテーナ110を好適に圧入することができる。
【0114】
(10)リテーナ110と押圧状態で接触される複数の突出部61が、収容筒部60の周方向に沿って間隔を空けて設けられる。換言すると、収容筒部60の内周面には、収容筒部60の周方向の一部において、リテーナ110と押圧状態で接触される壁部、つまり突出部61が設けられていない領域がある。このような領域を設けることにより、リテーナ110を収容筒部60の内部に圧入する際にリテーナ110が変形する場合であっても、そのリテーナ110の変形を上記領域に好適に逃がすことができる。これにより、圧入する際のリテーナ110の変形を許容できるため、リテーナ110を収容筒部60の内部に圧入する際のリテーナ110およびコネクタハウジング40の組み付け性を向上できる。
【0115】
(11)各突出部61の先端面に、圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて、収容筒部60の径方向内方に向かって傾斜する傾斜面62が設けられる。このため、収容筒部60のうち複数の突出部61よりも内側の空間が、圧入方向D1の上流から圧入方向D1の下流に向かうに連れて小さくなるように形成される。これにより、リテーナ110およびシールドシェル50の寸法公差を傾斜面62で好適に吸収できる。したがって、リテーナ110およびシールドシェル50の寸法公差が大きい場合であっても、収容筒部60の内部にリテーナ110を好適に圧入することができる。
【0116】
(12)収容筒部60の内部にリテーナ110が圧入されると、リテーナ110の突出部140,150とコネクタハウジング40の突出部61とが収容筒部60の周方向において互いに係合される。これにより、リテーナ110が収容筒部60に対して圧入方向D1に延びる軸回りに相対回転することを好適に抑制できる。これにより、電線20が収容筒部60に対して圧入方向D1に延びる軸回りに相対回転することを抑制できる。
【0117】
(13)収容筒部111を形成する周壁121の一部にスリット113が設けられるため、そのスリット113が広がるようにリテーナ110を容易に変形させることができる。これにより、コネクタハウジング40の内周面に対してリテーナ110を押圧状態で好適に接触させることができる。
【0118】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0119】
・上記実施形態における規制部材90の構造は適宜変更することができる。
・上記実施形態における突出部97の構造は適宜変更することができる。
例えば
図14に示すように、各電線貫通孔91を画定する内面に、電線貫通孔91の軸方向(ここでは、第1方向X1)に沿って延びる突出部97Aを設けるようにしてもよい。本変更例の各電線貫通孔91を画定する内面には、電線貫通孔91の周方向に沿って間隔を空けて設けられた2つの突出部97Aと、電線貫通孔91の周方向に沿って延びる2つの突出部97とが設けられている。
【0120】
例えば
図15に示すように、各電線貫通孔91を画定する内面に、半球状に突出する複数の突出部97Bを設けるようにしてもよい。複数の突出部97Bは、例えば、電線貫通孔91の軸方向に沿って間隔を空けて設けられるとともに、電線貫通孔91の周方向に沿って間隔を空けて設けられている。
【0121】
・上記実施形態の規制部材90における保護筒部103を省略してもよい。
・上記実施形態の第1係合部94および第2係合部95は、それら第1係合部94と第2係合部95とが互いに係合可能な構造を有していれば、その他の構造は特に限定されない。
【0122】
・上記実施形態における第1分割体92Aと第2分割体92Bとを、互いに異なる構造に形成してもよい。
・上記実施形態では、規制部材90を2つの分割体により構成したが、これに限定されない。例えば、規制部材90を3つ以上の分割体により構成してもよい。例えば、規制部材90を単一部品により構成してもよい。
【0123】
・上記実施形態の規制部材90における傾斜面98を省略してもよい。
・上記実施形態におけるリテーナ110の構造は適宜変更することができる。
・上記実施形態のリテーナ110におけるスリット113を省略してもよい。
【0124】
・上記実施形態のリテーナ110における係合部130を省略してもよい。
・上記実施形態のリテーナ110における突出部140,150を省略してもよい。
・上記実施形態の収容筒部111における傾斜面112を、収容筒部111の周方向全周にわたって形成するようにしてもよい。
【0125】
・上記実施形態のリテーナ110における傾斜面112を省略してもよい。
・上記実施形態のリテーナ110における傾斜面124を省略してもよい。
・上記実施形態におけるシールドシェル50の構造は適宜変更することができる。例えば、端子31を覆う構造を有し、リテーナ110が圧入される収容筒部60を有していれば、その他の構造は特に限定されない。例えば、突出部61の個数は特に限定されない。
【0126】
・上記実施形態では、複数の突出部61を、収容筒部60の周方向に沿って間隔を空けて設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、1つの突出部61を、収容筒部60の周方向全周にわたって連続して形成するようにしてもよい。
【0127】
・上記実施形態におけるシールドシェル50は、アルミダイキャスト製に限らない。例えば、シールドシェル50は、切削などの加工方法により形成されてもよい。
・上記実施形態のインナーハウジング41は、端子31を保持可能な構造を有していれば、その他の構造は特に限定されない。例えば、インナーハウジング41を、銅系、アルミニウム系や鉄系等の金属材料で構成するようにしてもよい。
【0128】
・上記実施形態のカバー部材70を省略してもよい。
・上記実施形態のシール部材80を省略してもよい。
・上記実施形態の端子31の構造は適宜変更することができる。
【0129】
・上記実施形態の電線20の構造は適宜変更することができる。
・上記実施形態のコネクタ30が備える端子31の個数は、2つに限定されない。例えば、コネクタ30が有する端子31の個数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、電線20の数は、端子31の数に応じて適宜変更することができる。
【0130】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
B1…ボルト、C1…コネクタアセンブリ、D1…圧入方向(第2圧入方向)、D2…圧入方向(第1圧入方向)、10…ワイヤハーネス、20…電線、21…芯線、22…絶縁被覆、30…コネクタ、31…端子、32…電線接続部、33…端子接続部、40…コネクタハウジング、41…インナーハウジング、42…収容筒、43…係合部、44,45…シール部材、50…シールドシェル、51…収容筒部、60…収容筒部(第2収容筒部)、61,61A,61B…突出部(第2突出部)、62…傾斜面(第4傾斜面)、63…ボルト孔、64…接触面、70…カバー部材、80…シール部材、90…規制部材、91…電線貫通孔、92A…第1分割体、92B…第2分割体、93…分割貫通孔、94…第1係合部、95…第2係合部、96…対向面、97,97A,97B…突出部(第1突出部)、98…傾斜面(第1傾斜面)、101,104…凹部、102…弾性片、103…保護筒部、110…リテーナ、111…収容筒部(第1収容筒部)、112…傾斜面(第2傾斜面)、113…スリット、120…本体部、121…周壁、122…底壁、123…貫通孔、124…傾斜面(第3傾斜面)、130…係合部、131…係合孔、140,150…突出部(第3突出部)、151…接触面、160…シールドブラケット、161…貫通孔、200…相手コネクタ、201…相手端子、202…コネクタハウジング、210…ケース。