(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110168
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/12 20060101AFI20240807BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02K3/12
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014579
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄己
(72)【発明者】
【氏名】土方 大樹
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA13
5H603AA14
5H603BB01
5H603BB09
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC03
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD05
5H603CE05
5H603CE09
(57)【要約】
【課題】多層巻きコイルにおいて、放熱効果を向上すること。
【解決手段】モータ1は、ステータコア4と、ステータコア4の周方向に配置された複数のスロット9と、スロット9に二層巻きで配置された、コイル5と、を備え、コイル5は、内周巻きの第1コイルセグメント5Tと、第1コイルセグメント5Tより外周側に配置された、外周巻きの第2コイルセグメント5Sとを備え、第1コイルセグメント5Tの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積と、第2コイルセグメント5Sの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積とは、同じ広さであり、第1コイルセグメント5Tの厚さは、第2コイルセグメント5Sの厚さより厚い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアの周方向に配置された複数のスロットと、
前記スロットに二層巻きで配置された、コイルと、
を備え、
前記コイルは、内周巻きの第1コイルセグメントと、前記第1コイルセグメントより外周側に配置された、外周巻きの第2コイルセグメントとを備え、
前記第1コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積と、前記第2コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積とは、同じ広さであり、
前記第1コイルセグメントの厚さは、前記第2コイルセグメントの厚さより厚い、
モータ。
【請求項2】
ステータコアと、
前記ステータコアの周方向に配置された複数のスロットと、
前記スロットに二層巻きで配置された、コイルと、
を備え、
前記コイルは、内周巻きの第1コイルセグメントと、前記第1コイルセグメントより外周側に配置された、外周巻きの第2コイルセグメントとを備え、
前記第1コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積は、前記第2コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積より広く、
前記第1コイルセグメントの厚さは、前記第2コイルセグメントの厚さより厚い、
モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのコイルにおいて、放熱効果を高める技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、一層巻きのコイルに適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/135094号公報
【特許文献2】国際公開第2018/154944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを小型化するために、コイルを多層巻きにすることがある。この場合、一層巻きに比べて、コイル中心部がより発熱しやすくなる。そこで、多層巻きコイルにおいて、放熱効果を向上することが望まれる。
【0005】
本開示は、多層巻きコイルにおいて、放熱効果を向上したモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、ステータコアと、前記ステータコアの周方向に配置された複数のスロットと、前記スロットに二層巻きで配置された、コイルと、を備え、前記コイルは、内周巻きの第1コイルセグメントと、前記第1コイルセグメントより外周側に配置された、外周巻きの第2コイルセグメントとを備え、前記第1コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積と、前記第2コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積とは、同じ広さであり、前記第1コイルセグメントの厚さは、前記第2コイルセグメントの厚さより厚いモータが提供される。
【0007】
本開示に従えば、ステータコアと、前記ステータコアの周方向に配置された複数のスロットと、前記スロットに二層巻きで配置された、コイルと、を備え、前記コイルは、内周巻きの第1コイルセグメントと、前記第1コイルセグメントより外周側に配置された、外周巻きの第2コイルセグメントとを備え、前記第1コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積は、前記第2コイルセグメントの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積より広く、前記第1コイルセグメントの厚さは、前記第2コイルセグメントの厚さより厚いモータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、多層巻きコイルにおいて、放熱効果を向上したモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るモータを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るステータコア及びコイルを模式的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るコイルの概略を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るコイルの概略を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るコイルの概略を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るコイルの概略を示す正面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
[実施形態]
<モータ>
図1は、実施形態に係るモータ1を模式的に示す図である。実施形態において、モータ1は、3相のスイッチトリラクタンスモータである。モータ1は、円筒形状のステータ2と、ステータ2の内側に配置されたロータ3とを備える。ステータ2は、円筒形状のステータコア4と、ステータコア4に支持されるコイル5とを有する。ステータ2の内周面とロータ3の外周面とは間隔を空けて対向する。ロータ3は、ステータコア4に対向する。ロータ3は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ3の回転軸AXとステータ2の中心軸とは同一である。ロータ3は、シャフト8を介して対象物Eに接続される。対象物Eは、例えば、建設機械の一種であるハイブリッドショベルに搭載されるエンジンである。モータ1は、エンジンによって駆動される発電機として機能する。
【0012】
以下の説明において、回転軸AXと平行な方向を軸方向という。軸方向における一方側を軸方向一方側といい、軸方向一方側の反対側を軸方向他方側という。また、回転軸AXの周囲を周回する方向を周方向という。周方向おける回転方向の一方側を周方向一方側といい、周方向一方側の反対側を周方向他方側という。さらに、回転軸AXの放射方向を径方向という。径方向において中心軸AXから離れる方向側を径方向外側といい、径方向外側の反対側を径方向内側という。
【0013】
ロータ3は、ステータコア4と対向可能に配置される。ロータ3は、ロータホルダ6と、ロータホルダ6に保持されるロータコア7とを有する。ロータホルダ6は、非磁性体で形成される。ロータコア7は、磁性体で形成される。
【0014】
ステータコア4は、コイル5を収容するスロット9を有する。スロット9は、ステータコア4の内周面から径方向外側に凹んだ凹部である。スロット9は、ステータコア4の内周面において周方向に複数配置される。スロット9は、軸方向に延在する。スロット9は、ステータコア4の内周面に配置されている。スロット9は、軸方向一方側及び軸方向他方側と、径方向内側とに向かって開口している。
【0015】
ステータコア4は、周方向において隣接するスロット9の間に配置された、複数のティース10を有する。ティース10は、ステータコア4におけるコイル5が巻回される部分である。ティース10は、コイル5を支持する。ティース10は、コイル5の開口に挿入される。
【0016】
<コイル>
図2は、実施形態に係るステータコア及びコイルを模式的に示す正面図である。
図3は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
図4は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
図5は、実施形態に係るコイルの概略を示す斜視図である。
図6は、実施形態に係るコイルの概略を示す斜視図である。
図7は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
図7(a)は、
図6のA-A線断面図である。
図7(b)は、
図6のB-B線断面図である。
図8は、実施形態に係るコイルの概略を示す斜視図である。
図9は、実施形態に係るコイルの概略を示す正面図である。
図10は、実施形態に係るコイルの概略を示す断面図である。
図10(a)は、
図9のA-A線断面図である。
図10(b)は、
図9のB-B線断面図である。各図では、説明のためにコイルの巻き数を簡素化して図示している。
図2ないし
図7、
図9では、周方向を円弧状ではなく模式的に直線状にして図示している。
【0017】
コイル5は、ティース10の周囲に配置される。コイル5は、ティース10に支持される。コイル5は、開口を有する。コイル5の開口に、ティース10が挿入される。
【0018】
コイル5は、例えば、平角線、丸線、又は、板状のセグメント導体等の線状又は帯状の導体により構成される。コイル5は、螺旋状に配置された導体により構成される。コイル5は、1本の導体を螺旋状に巻き付けて構成されてもよいし、複数の導体を螺旋状に接続して構成されてもよい。コイル5の巻付け方法及び接続方法は限定されない。
【0019】
コイル5は、U相コイル(第1相コイル)5Uと、V相コイル(第2相コイル)5Vと、W相コイル(第3相コイル)5Wとを含む。
【0020】
コイル5は、スロット9に二層巻きで配置される。コイル5は、一部がスロット9に収容されて、ティース10によって支持される。
【0021】
コイル5は、二層巻きでティース10に巻き付けられている。コイル5は、ティース10に直接巻き付けられている第1コイルセグメント5Tと、第1コイルセグメント5Tの外側に巻き付けられている第2コイルセグメント5Sとである。第1コイルセグメント5Tと、第2コイルセグメント5Sとは、ロータ側で接続されている。
【0022】
実施形態では、第1コイルセグメント5Tのバックヨーク側の端部と、第2コイルセグメント5Sのバックヨーク側の端部は、渡り線55T、渡り線55Sである。第1コイルセグメント5Tの径方向外側の端部は、渡り線55Tに接合されている。第2コイルセグメント5Sの径方向外側の端部は、渡り線55Sに接合されている。
【0023】
第1コイルセグメント5Tは、二層巻きにおける内周巻きのコイルである。第1コイルセグメント5Tは、ロータ側に向けて時計回りの螺旋状に巻き付けられている。第1コイルセグメント5Tの1本の導体の軸方向と直交する断面におけるコイル幅をw1、厚さをt1とする。コイル幅w1は、第1コイルセグメント5Tの1本の導体の周方向の寸法である。厚さt1は、第1コイルセグメント5Tの1本の導体の径方向の寸法である。
【0024】
第2コイルセグメント5Sは、二層巻きにおける外周巻きのコイルである。第2コイルセグメント5Sは、バックヨーク側に向けて時計回りの螺旋状に巻き付けられている。第2コイルセグメント5Sの1本の導体の軸方向と直交する断面におけるコイル幅をw2、厚さをt2とする。コイル幅w2は、第2コイルセグメント5Sの1本の導体の周方向の寸法である。厚さt2は、第2コイルセグメント5Sの1本の導体の径方向の寸法である。
【0025】
モータ1においては、シャフト8から、径方向外側に向かって、冷媒である油が放出される。この油は、コイル5を冷却する。コイル5が多層巻きである場合、内周側は油と接触しにくく冷却されにくくなるおそれがある。
【0026】
図3を用いて、第1コイルセグメント5Tと第2コイルセグメント5Sとのコイル幅及び厚さの一例を説明する。
図3に示す例では、第2コイルセグメント5Sのコイル幅w2は、第1コイルセグメント5Tのコイル幅w1より広い。第2コイルセグメント5Sの厚さt2は、第1コイルセグメント5Tの厚さt1より薄い。第2コイルセグメント5Sは、第1コイルセグメント5Tよりもターン数が多い。
【0027】
図3に示す例では、第1コイルセグメント5Tの1本の導体の軸方向と直交する断面の面積は、第2コイルセグメント5Sの1本の導体の軸方向と直交する断面の面積と同じである。断面積の関係を示す、以下の式(1)が成立する。
w1×t1=w2×t2 (1)
【0028】
図3に示す例では、冷却されにくい中心側に配置された第1コイルセグメント5Tは、厚さt1が、第2コイルセグメント5Sの厚さt2に比べて厚く、ターン数が少ない。
【0029】
<効果>
以上説明したように、実施形態では、第1コイルセグメント5Tの軸方向に直行する断面の面積と、第2コイルセグメント5Sとの軸方向に直行する断面の面積とは、同じ広さである。第1コイルセグメント5Tの厚さt1は、第2コイルセグメント5Sの厚さt2より厚い。実施形態によれば、冷却されにくい中心側に配置された第1コイルセグメント5Tは、厚さt1が第2コイルセグメント5Sの厚さt2に比べて薄いので、適切に放熱することができる。実施形態によれば、第2コイルセグメント5Sは、冷媒と接触しやすい外周側に配置されているので、適切に放熱することができる。
【0030】
実施形態では、第1コイルセグメント5Tは、第2コイルセグメント5Sよりターン数が少なく、1ターン当たりのティース10との接触面積が第2コイルセグメント5Sより広い。実施形態によれば、第1コイルセグメント5Tを適切に放熱することができる。
【0031】
[変形例]
図4を用いて、第1コイルセグメント5Tと第2コイルセグメント5Sとのコイル幅及び厚さの他の例を説明する。
図4に示す例では、第2コイルセグメント5Sのコイル幅w2は、第1コイルセグメント5Tのコイル幅w1より狭い。第2コイルセグメント5Sの厚さt2は、第1コイルセグメント5Tの厚さt1より薄い。第2コイルセグメント5Sは、第1コイルセグメント5Tよりもターン数が多い。
【0032】
図4に示す例では、第1コイルセグメント5Tの1本の導体の軸方向と直交する断面の面積は、第2コイルセグメント5Sの1本の導体の軸方向と直交する断面の面積より広い。断面積の関係を示す、以下の式(2)が成立する。
w2×t2<w1×t1 (2)
【0033】
図4に示す例では、冷却されにくい中心側に配置された第1コイルセグメント5Tは、断面積が、第2コイルセグメント5Sの断面積より広い。これにより、第1コイルセグメント5Tは、発熱が抑えられる。また、第1コイルセグメント5Tは、第2コイルセグメント5Sよりターン数が少なく、1ターン当たりのティース10との接触面積が第2コイルセグメント5Sを内周側として巻き付けた場合の接触面積より広い。これにより、第1コイルセグメント5Tは、適切に放熱される。
【0034】
<効果>
以上説明したように、変形例では、第1コイルセグメント5Tの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積は、第2コイルセグメント5Sの1本の導体の軸方向に直行する断面の面積と比べ、広い。よって第1コイルセグメント5Tの発熱量は第2コイルセグメント5Sよりも少なくなり、発熱が問題になりにくくなる。第1コイルセグメント5Tの厚さt1は、第2コイルセグメント5Sの厚さt2より厚い。変形例によれば、冷却されにくい中心側に配置された第1コイルセグメント5Tは、厚さt1が第2コイルセグメント5Sの厚さt2に比べて薄いので、適切に放熱することができる。変形例によれば、第2コイルセグメント5Sは、冷媒と接触しやすい外周側に配置されているので、適切に放熱することができる。
【0035】
上述の実施形態において、ロータ3がステータコア4の内側(内周側)に配置され、モータ1がインナロータ側モータであることとした。ロータ3はステータコア4に対向する位置に配置されていればよい。モータ1は、ロータ3がステータコア4の外周側に配置されるアウタロータ型モータでもよいし、ロータ3がステータコア4の内周側及び外周側の両方に配置されるデュアルロータ型モータでもよいし、ロータ3がステータコア4の軸方向側に配置されるアキシャルギャップ型モータでもよい。
【0036】
なお、上述の実施形態においては、モータ1がスイッチトリラクタンスモータであることとした。モータ1はシンクロナスリラクタンスモータ(Synchronous Reluctance Motor)でもよいし、フラックススイッチングモータ(Flux Switching Motor)でもよいし、永久磁石モータ(Permanent Magnet Motor)でもよいし、誘導モータ(Induction Motor)でもよいし、アキシャルギャップモータでもよいし、リニアアクチュエータでもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…モータ、2…ステータ、3…ロータ、4…ステータコア、5…コイル、5A…A相コイル、5B…B相コイル、5C…C相コイル、5S…第2コイルセグメント、5T…第1コイルセグメント、5U…U相コイル(第1相コイル)、5V…V相コイル(第2相コイル)、5W…W相コイル(第3相コイル)、6…ロータホルダ、7…ロータコアピース、8…シャフト、9…スロット、10…ティース、AX…回転軸、E…対象物。