(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110177
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】揚力型垂直軸風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240807BHJP
F03D 7/06 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F03D7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014597
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】樋上 博幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 博光
(72)【発明者】
【氏名】小池 洋光
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
(72)【発明者】
【氏名】小野 猛
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178BB08
3H178CC05
(57)【要約】
【課題】回転速度に応じて回動する可動翼の迎角の変動幅が過大となることを抑制する揚力型垂直軸風車を提供すること。
【解決手段】発電部と、発電部に一体化されかつ垂直軸周りに回転する回転軸と、回転軸にアーム14を介して連結され垂直軸周りに回転する複数の風車翼と、回転軸と風車翼とを結ぶ軸線周りに回動可能な可動翼15と、回転軸の回転速度に応じた遠心力の作用によって可動翼15を軸線周りに傾斜させる過回転抑制誘導体とを備える揚力型垂直軸風車であって、アーム14に一体化されかつ可動翼15に相対回転可能に設けられた支持軸30と、支持軸30と可動翼15とが相対回転するモーメントに対抗した反力トルクを発生させるダンパ機構41とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部と、前記発電部に一体化されかつ垂直軸周りに回転する回転軸と、前記回転軸にアームを介して連結され前記垂直軸周りに回転する複数の風車翼と、前記回転軸と前記風車翼とを結ぶ軸線周りに回動可能な過回転抑制用の可動翼と、前記回転軸の回転速度に応じた遠心力の作用によって前記可動翼を前記軸線周りに傾斜させる過回転抑制誘導体とを備える揚力型垂直軸風車であって、
前記アームと前記可動翼とのいずれか一方の部材に一体化されかつ前記アームと前記可動翼との他方の部材に相対回転可能に設けられた支持軸と、
前記支持軸と前記他方の部材とを相対回転させるモーメントに対抗した反力トルクを発生させるダンパ機構とを備えている
ことを特徴とする揚力型垂直軸風車。
【請求項2】
請求項1に記載の揚力型垂直軸風車であって、
前記ダンパ機構は、前記支持軸と前記他方の部材とが相対回転する相対回転速度に応じて前記反力トルクが大きくなるオイルダンパを含む
ことを特徴とする揚力型垂直軸風車。
【請求項3】
請求項1に記載の揚力型垂直軸風車であって、
前記可動翼は、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形の断面形状に形成され、かつ前記回転軸の停止時において前記前縁と前記後縁とを結ぶ弦と水平面とがなす角度である迎角が、予め定められた所定角度以上となるように配置されている
ことを特徴とする揚力型垂直軸風車。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の揚力型垂直軸風車であって、
前記風車翼により生じる空気力に応じて前記回転軸を回転させる空気力トルクと、前記可動翼が回動することによって前記回転軸の回転を低減させる方向に作用する抵抗トルクとの差に応じた駆動トルクによって前記回転軸が回転するように構成され、
前記ダンパ機構における前記反力トルクは、前記回転軸の回転速度が前記発電部の定格回転速度であり、かつ予め定められた風速の条件下において、前記駆動トルクが、前記発電部が発電することによって生じる発電トルクに釣り合う大きさとなる前記抵抗トルクに応じて定められている
ことを特徴とする揚力型垂直軸風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉛直方向に配置された風車翼で発生する揚力により回転することで発電する揚力型垂直軸風車に関するもので、更に詳細には、過回転抑制機構を備える揚力型垂直軸風車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電部を有する基部と、上記基部に対して垂直軸周りに回転する回転部と、上記回転部にアームを介して連結されて垂直軸周りに回転する複数の風車翼(主翼)と、を備える垂直軸風車は、その性能が風向に依存しないため、構造がシンプルになり、低コスト化に向いているとされている。
また、最近では、小形垂直軸風車を密集配置することにより、単位設置面積当りの出力が、大型の水平軸風車の風力発電所(ウインドファーム)以上になる可能性も示されており、再生可能エネルギーの導入促進において小形垂直軸風車のウインドファーム実現も期待されている。
【0003】
一方、垂直軸風車は、性能が風向に依存しない特性であるがために、制動コントロールが難しいという一面も有する。すなわち、水平軸風車では尾翼(側翼)などを使用して、風車のロータ面(翼の回転する面)を風向に正対する向きからそらすこと(ファーリング)で、過回転を比較的容易に防止できるが、垂直軸風車では風向に依存しないため、ファーリングは不可能である。
【0004】
そこで、垂直軸風車の回転速度に応じて垂直軸風車の回転方向に対抗する空力ブレーキトルクを発生させる過回転抑制機構が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された過回転抑制機構は、回転部と主翼とに連結されたアームの長手方向を回転軸中心として回動する可動翼と、その可動翼の前縁側、または後縁側から鉛直方向に垂下した過回転抑制誘導体とによって構成されている。
【0005】
したがって、垂直軸風車の回転速度に応じて過回転抑制誘導体に作用する遠心力は、可動翼の前縁を鉛直方向における上側または下側に回動させる方向のモーメントとして可動翼に作用する。また、可動翼には、可動翼に作用する空気力によるモーメント、可動翼の自重に応じたモーメント、過回転抑制誘導体に作用する空気力によるモーメント、過回転抑制誘導体の重量に応じたモーメント、及び可動翼に作用する遠心力に応じたモーメントが可動翼の迎角を変更するように作用する。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載された垂直軸風車は、可動翼に作用するモーメントの大小関係に応じて可動翼の迎角が変化して、垂直軸風車を回転させるトルクに対抗した抵抗トルクを発生させ垂直軸風車の過回転を抑制するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された揚力型垂直軸風車は、その近傍を流れる空気流によって回転するものであるから、揚力型垂直軸風車を回転させるためのトルクは、風向に対する揚力型垂直軸風車の回転角(アジマス角)に応じて変動する。同様に、可動翼や過回転抑制機構に作用する空気力もアジマス角に応じて変動する。したがって、可動翼に作用する空気力によるモーメント、及び過回転抑制誘導体に作用する空気力によるモーメントの大きさがアジマス角に応じて変動し、それに伴って、可動翼の迎角が変動する。すなわち、揚力型垂直軸風車が1回転する間に、可動翼の迎角が大小に変動する。特に、揚力型垂直軸風車の回転速度が速い場合には、可動翼が大きく回動するため、可動翼の迎角の変動幅が大きくなる。そのような可動翼の過剰な回動を抑制するために、初期の可動翼の迎角を定めるための位置決めとしてのストッパに加えて、可動翼の最大迎角を制限するストッパを設けるなど、複数のストッパを設けるとすると、可動翼とストッパとが繰り返し衝突することになり、衝突に伴う振動や異音が発生する可能性がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、回転速度に応じて回動する可動翼の迎角の変動幅が過大となることを抑制する揚力型垂直軸風車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明は、発電部と、前記発電部に一体化されかつ垂直軸周りに回転する回転軸と、前記回転軸にアームを介して連結され前記垂直軸周りに回転する複数の風車翼と、前記回転軸と前記風車翼とを結ぶ軸線周りに回動可能な過回転抑制用の可動翼と、前記回転軸の回転速度に応じた遠心力の作用によって前記可動翼を前記軸線周りに傾斜させる過回転抑制誘導体とを備える揚力型垂直軸風車であって、前記アームと前記可動翼とのいずれか一方の部材に一体化されかつ前記アームと前記可動翼との他方の部材に相対回転可能に設けられた支持軸と、前記支持軸と前記他方の部材とを相対回転させるモーメントに対抗した反力トルクを発生させるダンパ機構とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
このように構成することにより、回転軸(すなわち、揚力型垂直軸風車)の回転速度の増加に伴って可動翼が回動する場合に、可動翼が回動する方向に対抗した反力が作用する。そのため、可動翼の回動量が過大になることを抑制でき、可動翼の回動量を制限するストッパを複数設ける必要がなく、あるいはそのようなストッパと可動翼とが接触することによる異音や振動が発生することを抑制できる。同様に、回転軸の回転速度が低下して可動翼の回動量が減少する場合に、可動翼が初期の位置に向けて回動する方向に対抗した反力が作用する。そのため、可動翼の回動量が急激に減少するなどによって、可動翼を初期の位置に位置決めするストッパと可動翼との接触時における異音や振動を抑制することができる。また、ダンパ機構を設けることにより、定格風速以下の低い風速状態では、可動翼の回動量(平均)を低下させることができる。そのため、可動翼が回動することによる揚力型垂直軸風車を回転させるトルクに対抗した抵抗トルクを低減させることができ、発電部に作用する駆動トルクが過度に低下することを抑制できる。その結果、揚力型垂直軸風車の発電効率を向上させることができる。
【0012】
この発明において、前記ダンパ機構は、前記支持軸と前記他方の部材とが相対回転する相対回転速度に応じて前記反力トルクが大きくなるオイルダンパを含んでよい(請求項2)。
このように構成することにより、回転軸の回転速度が小さい場合など、可動翼の回動量を変更するモーメントが小さい場合であっても、可動翼を回動させることができ、回転軸の過回転を抑制する機能が低下することを抑制できる。
【0013】
また、この発明において、前記可動翼は、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形の断面形状に形成され、かつ前記回転軸の停止時において前記前縁と前記後縁とを結ぶ弦と水平面とがなす角度である迎角が、予め定められた所定角度以上となるように配置されていてよい(請求項3)。
このように構成することにより、揚力型垂直軸風車の回転軸の回転速度の増加時に可動翼の回動量を増加させる方向に作用するモーメントが過小となって、可動翼が適切に回動できなくなる事態を抑制できる。
【0014】
また、この発明において、前記風車翼により生じる揚力に応じて前記回転軸を回転させる揚力トルクと、前記可動翼が回動することによって前記回転軸の回転を低減させる方向に作用する抵抗トルクとの差に応じた駆動トルクによって前記回転軸が回転するように構成され、前記ダンパ機構における前記反力トルクは、前記回転軸の回転速度が前記発電部の定格回転速度であり、かつ予め定められた風速の条件下において、前記駆動トルクが、前記発電部が発電することによって生じる発電トルクに釣り合う大きさとなる前記抵抗トルクに応じて定められていてよい(請求項4)。
このように構成することにより、ダンパ機構によって生じる反力トルクが過不足するなどによって、揚力型垂直軸風車が所期の回転速度で回転している場合における発電効率が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、上記のように構成されているので、可動翼を設けることによる揚力型垂直軸風車の過回転を抑制する機能に加えて、可動翼の回動量の変動幅が過大になることを抑制できる。その結果、可動翼の回動量を制限するストッパを複数設ける必要がなく、あるいはそのようなストッパと可動翼との接触による異音や振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係る揚力型垂直軸風車の一例を示す概略側面図である。
【
図1A】上記揚力型垂直軸風車の翼固定部の一部を断面で示す側面図である。
【
図1B】上記揚力型垂直軸風車の翼固定部の平面図である。
【
図3】この発明における固定アームと可動翼との取付構造、及びダンパ機構の構成を説明するための一部破断した平面図である。
【
図4】固定アームに設けられた固定側ブラケットの構成を説明するための、
図3におけるIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】保持側ブラケットの構成を説明するための断面図である。
【
図6】この発明における主翼と可動翼との取付構造、及びダンパ機構の構成を説明するための一部破断した平面図である。
【
図7】主翼に設けられた固定側ブラケットの構成を説明するための断面図である。
【
図8A】補助翼を可動翼に取り付けるための可動翼に設けられたブラケットの構成を説明するための可動翼の平面図である。
【
図8B】
図8AにおけるVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】補助翼を可動翼に取り付けるための補助翼に設けられたブラケットの構成を説明するための図であり、(a)は補助翼の側面図であり、(b)は(a)におけるIX-IX線に沿う断面図である。
【
図10】可動翼に補助翼を取り付けた状態を示す側面図である。
【
図11】可動翼に作用するモーメントを説明するための模式図である。
【
図12】迎角と可動翼に作用するモーメントの大きさとの関係であるモーメント係数、揚力係数、抗力係数を示すグラフである。
【
図13】ダンパ機構の特性を説明するためのグラフである。
【
図14】ダンパ機構の有無に迎角の変化の違いを示すグラフであり、(a)はダンパ機構を設けていない場合の迎角の変化を示すグラフであり、(b)はダンパ機構を設けている場合の迎角の変化を示すグラフである。
【
図15】オイルダンパを2つ設けた場合における迎角の変化を示すグラフである。
【
図16】オイルダンパを8つ設けた場合における迎角の変化を示すグラフである。
【
図17】予め定められた条件下での迎角の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
この発明に係る揚力型垂直軸風車1(以下に、単に風車1という)は、
図1に示すように、風を受ける方向に対して垂直な軸Z(以下に、垂直軸Zという)周りに回転する回転軸2と、回転軸2に連結される発電部6と、回転軸2に連結されて垂直軸Z周りに回転する複数(例えば、3枚)の風車翼10(以下に翼10という)とを備えている。
【0019】
図1Aに示すように、回転軸2の下端側は、ハウジング3の内部に、軸受3aを介して回転自在に保持されている。そのハウジングの下端に発電部6が連結されている。なお、発電部6は、回転軸2の回転速度を増速させる増速機6aと、発電機6bとによって構成されている。また、ハウジング3には、ハウジング受け材3bと支持脚受け材3cを介して、風車1の翼10を設置面4から所定の高さに位置させるための支持脚5が連結されている。
【0020】
図1A及び
図1Bに示すように、回転軸2の上端側には、第1取付用ブラケット21が取り付けられている。この第1取付用ブラケット21は、回転軸2の外周面の1/3を包囲する三つのブラケット部材22によって構成されている。このブラケット部材22における回転軸2に対向する円弧面には凸条22aが形成され、その凸条22aに係合する凹条2aが回転軸2の外周面に形成され、凸条22aを凹条2aに嵌合することにより、ブラケット部材22が回転軸2に取り付けられる。
【0021】
このブラケット部材22は、円弧面の両端から該円弧面の仮想中心から法線方向に延在した当接片22bと、当接片22bの先端から当接片22bに対して直角方向に延在する取付片22cとを備えている。そして、隣り合うブラケット部材22同士の当接片22bが接触して、回転軸2に組み付けられている。
【0022】
その第1取付用ブラケット21には、第2取付用ブラケット23が取り付けられている。この第2取付用ブラケット23は、第1取付用ブラケット21に当接する面から起立する一対の起立片23aと、両起立片23aの先端から互いに近接する方向に所定の角度をもって延在する翼取付片23bと、両翼取付片23bの先端同士を連結する固定アーム取付片23cとを備えている。そして、回転軸2に組み付けられた各ブラケット部材22における取付片22cに、第2取付用ブラケット23を当接してボルトナット固定される。
【0023】
翼10は、第1取付用ブラケット21及び第2取付用ブラケット23を介して回転軸2に固定されていて、
図1に示す例では、風車1の垂直軸Zから離れるにつれて互いの間隔が広くなるように回転軸2から延びる一対の延在部11と、垂直軸Zに略平行な方向に沿って延びる主翼12と、延在部11と主翼12とを連結部材(図示せず)によって湾曲状に連結する湾曲部13とによって構成されている。すなわち、翼10は、側面視において水平軸Xに対して略対称に形成された略三角形状に形成されている。ここで、略三角形状とは、翼10の全体形状が三角形に近い形状であることをいい、三角形の角部が湾曲したものに限らず、三辺のいずれかが湾曲したものも含む。なお、延在部11は、中空状に形成されていて、その内部に、後述する前縁側ブラケット71と同様に構成された翼ブラケット24が固定され、その翼ブラケット24と翼取付片23bとがボルト固定されている。
【0024】
また、翼10は、第1取付用ブラケット21及び第2取付用ブラケット22を介して一端が回転軸2に連結され、後述する可動翼15を介して他端が主翼12に連結される水平方向に延びる固定アーム14を備えている。この固定アーム14は、風車1の回転速度に応じた遠心力により主翼12が湾曲するなどを抑制するように構成されている。すなわち、予め定められた上限速度で風車1が回転した場合であっても、翼10が所期の形状を維持できるように固定アーム14の剛性が定められている。なお、固定アーム14は、中空状に形成されていて、その内部に、後述する前縁側ブラケット71と同様に構成された翼ブラケット24が固定され、その翼ブラケット24と固定アーム取付片23cとがボルト固定されている。
【0025】
固定アーム14の主翼12側の先端には、固定アーム14の長手方向を中心軸線として固定アーム14に対して回転可能に可動翼15が連結されている。この可動翼15の下面には、風車1の回転速度に応じた遠心力に基づくモーメント(トルク)を可動翼15に作用させて、可動翼15の迎角を増大させる補助翼16が取り付けられている。この可動翼15は、後述するように風車1(回転軸2)の回転速度に応じて迎角が変化することにより、風車1の過回転を抑制するように構成されている。この補助翼16が、この発明の実施形態における「過回転抑制誘導体」に相当する。
【0026】
翼10を形成する延在部11、主翼12、湾曲部13、固定アーム14、可動翼15、及び補助翼16の断面形状は、同様に形成されている。具体的には、前縁が湾曲し後縁が尖った流線形に形成され、その前縁と後縁とを結ぶ翼弦線を挟んで上下両側が対称形状に形成されている。
【0027】
また、延在部11、主翼12、湾曲部13、固定アーム14、可動翼15、及び補助翼16は、中空状に形成されたアルミニウム製の押出形材によって構成されている。
図2は、その断面形状を示してあり、
図2に示す例では、3つのリブ10eによって中空部が4つに区画されている。以下、前縁側から第1中空部10a、第2中空部10b、第3中空部10c、第4中空部10dと記す。第2中空部10bの上辺及び下辺が平坦に形成されていて、両リブ10eとで矩形状に形成されている。なお、
図2に示す翼10は、3つのリブ10eによって区画された4つの中空部10a,10b,10c,10dを有するが、中空部の形状や数は任意である。
【0028】
図3には、固定アーム14と可動翼15とを連結する構成を説明するための平面図を示し、
図3におけるIV-IV線に沿う断面図を
図4に示してある。
図3に示すように固定アーム14の端部と、可動翼15の端部とには、所定の間隔が設けられていて、固定アーム14に一体化された支持軸30が、可動翼15に相対回転可能に挿入されている。
【0029】
固定アーム14には、支持軸30が螺合する固定側ブラケット31が取り付けられている。固定側ブラケット31は、
図3、
図4に示すように第2中空部10bに挿入される第1挿入部31aと、第3中空部10cに挿入される第2挿入部31bと、第1挿入部31aのうちの固定アーム14から突出した端部と、第2挿入部31bのうちの固定アーム14から突出した端部とを連結する連結部31cとを備えている。すなわち、第1挿入部31a、第2挿入部31b、及び連結部31cが一体に形成されている。その固定側ブラケット31には、リブ10eが嵌合するスリット31dが形成され、そのスリット31dによって第1挿入部31aと第2挿入部31bとが区分けされている。
【0030】
第1挿入部31aは、第2中空部10bにおける後縁側の部分に嵌合するように断面矩形状に形成されている。また、第1挿入部31aには、固定アーム14の長手方向に向けて貫通した雌ねじ部31eが所定の位置に形成され、かつ可動翼15側に向けて突出したストッパ31fが形成されている。そのストッパ31fは、雌ねじ部31eよりも固定アーム14の前縁側に形成されていて、雌ねじ部31eから前縁側に向かうに連れて上面高さが高くなるように傾斜して形成されている。この傾斜角度は、可動翼15の予め定められた初期迎角に応じた角度に設定されている。さらに、第2挿入部31bは、第3中空部10cにおける前縁側の部分に嵌合する形状に形成されている。したがって、第1挿入部31aを第2中空部10bに挿入するとともに、第2挿入部31bを第3中空部10cに挿入することにより連結部31cがリブ10eに当接するため、固定アーム14に対する固定側ブラケット31の位置決めがされる。
【0031】
第1挿入部31aと第2挿入部31bとには、厚み方向に貫通した4つの貫通孔31gが形成され、固定アーム14の上面及び下面のうちのそれらの貫通孔31gに対応した位置には、同様に貫通孔14aが形成されている。そして、固定アーム14の下面側から固定側ブラケット31を固定するためのボルト31hが挿入され、固定アーム14の上面側に突出したボルト31hの先端にナット31iが締め付けられている。なお、固定アーム14の外周面は、固定アーム14の弦方向における第2中空部10bに対応する位置が水平面に形成されているため、ボルト31hの頭部と固定アーム14の上面との間、及びナット31iと固定アーム14の下面との間に平ワッシャ31jを挟んでボルト31h及びナット31iが取り付けられているのに対し、第3中空部10cに対応する位置は、固定アーム14の厚み方向に対して傾斜しているため、固定アーム14に当接する面が傾斜したワッシャ31kを挟んで、ボルト31h及びナット31iが取り付けられている。
【0032】
したがって、固定側ブラケット31を固定アーム14に取り付け、その後に、支持軸30を固定側ブラケット31に形成された雌ねじ部31eに螺合させるとともに、支持軸30にナット32を螺合させることによって、支持軸30と固定アーム14とが一体化される。
【0033】
可動翼15には、保持側ブラケット33が取り付けられている。保持側ブラケット33は、
図5に示すように断面形状が略台形状に形成されていて、第3中空部10cと第4中空部10dとに跨がって可動翼15に嵌合する。すなわち、可動翼15における第3中空部10cと第4中空部10dとを隔てるリブ10eは、保持側ブラケット33が設けられる位置では、上面から内側に向けて僅かに突出した上側リブ10fと、下面から内側に向けて僅かに突出した下側リブ10gとによって構成され、それらのリブ10f,10gが嵌合する溝33aが保持側ブラケット33に形成されている。
【0034】
また、保持側ブラケット33には、支持軸30が挿入される貫通孔33bが、可動翼15の長手方向に沿って形成されている。すなわち、固定アーム14には、第2中空部10bに支持軸30が挿入されるのに対して、可動翼15には、第3中空部10cに支持軸30が挿入されている。したがって、固定アーム14と可動翼15との弦方向の長さは同一であるから、可動翼15は、固定アーム14よりも風車1の回転方向で突出して配置されることになる。
【0035】
保持側ブラケット33には、更に、固定アーム14側に向けて突出したストッパ33cが形成されている。このストッパ33cは、貫通孔33bよりも可動翼15の前縁側に形成されていて、貫通孔33bから前縁側に向かうに連れて下面の高さが高くなるように傾斜して形成されている。したがって、可動翼15の迎角が初期の迎角である場合に、固定側ブラケット31に形成されたストッパ31fと接触する。なお、保持側ブラケット33を可動翼15に挿入することにより、保持側ブラケット33に形成された溝33aの端部と、第3中空部10cと第4中空部10dとを隔てるリブ10eの端部とが当接するため、可動翼15に対する保持側ブラケット33の位置決めがされる。
【0036】
保持側ブラケット33には、厚み方向に貫通した4つの貫通孔が形成され、可動翼15の上面及び下面のうちのそれらの貫通孔に対応した位置に、同様に貫通孔が形成されている。そして、可動翼15の下面側から保持側ブラケット33を固定するためのボルトが挿入され、可動翼15の上面側に突出したボルトの先端にナット33dが締め付けられている。なお、可動翼15の外周面のうちの第3中空部10c及び第4中空部10dに対応する位置は、可動翼15の厚み方向に対して傾斜しているため、可動翼15に当接する面が傾斜したワッシャ33eを挟んで、ボルト及びナット33dが取り付けられている。
【0037】
保持側ブラケット33に形成された貫通孔33bは、固定アーム14側の開口端が比較的大径に形成され後述する第1ラジアル軸受34aを収容する第1収容部33fと、支持軸30の外径よりも内径が大きく形成された挿入部33gと、第1収容部33fと同一の内径に形成されるとともに、後述する第2ラジアル軸受34bを収容する第2収容部33hと、第2収容部33hよりも内径が大きく形成され、後述する第2スラスト軸受35b、ワッシャ36、及びナット37を収容する大径部33iとによって構成されている。
【0038】
上記の第1収容部33fには、支持軸30のラジアル荷重を受ける第1ラジアル軸受34aが挿入されている。ここに示す第1ラジアル軸受34aは、ニードルベアリングによって構成されている。この第1ラジアル軸受34aを保持側ブラケット33に組み付け、保持側ブラケット33からの脱落を防止するためのナット38が支持軸30に螺合していて、ナット38を締め付けることによって第1ラジアル軸受34aが第1収容部に保持されるように構成されている。そのため、ナット38と第1ラジアル軸受34aとの相対回転を許容するためのワッシャ39及び第1スラスト軸受35aが、第1ラジアル軸受34aとナット38との間に挟み込まれている。ここに示す第1スラスト軸受35aは、ボールベアリングによって構成されている。
【0039】
同様に、第2収容部33hには、支持軸30のラジアル荷重を受ける第2ラジアル軸受34bが挿入されている。この第2ラジアル軸受34bも、第1ラジアル軸受34aと同様に、ニードルベアリングによって構成されている。この第2ラジアル軸受34bを保持側ブラケット33に組み付け、保持側ブラケット33からの脱落を防止するためのナット37が支持軸30に螺合していて、ナット37を締め付けることによって第2ラジアル軸受34bが第2収容部33hに保持されるように構成されている。そのため、ナット37と第2ラジアル軸受34bとの相対回転を許容するためのワッシャ36及び第2スラスト軸受35bが、第2ラジアル軸受34bとナット37との間に挟み込まれている。ここに示す第2スラスト軸受35bは、ボールベアリングによって構成されている。なお、ナット37、ワッシャ36、及び第2スラスト軸受35bは、大径部33iに収容されている。
【0040】
上記のように第1スラスト軸受35aや第2スラスト軸受35bを組み付けるために、支持軸30には、ナット37,38が螺合する雄ねじ部40が形成されている。また、支持軸30の先端は、それらの雄ねじ部40が形成された箇所よりも小径に形成され、その部分にダンパ機構41が連結されている。
【0041】
このダンパ機構41は、可動翼15を回動させるトルクに対抗したダンパトルク(反力トルク)を発生させるためのものであり、ここに示す例では、オイルダンパ42が採用されている。すなわち、所定の粘性を有するオイルを収容するためのハウジング42aと、ハウジング42aに収容されるとともにハウジング42aと相対回転可能に設けられた回転体42bとによってオイルダンパ42が構成され、回転体42bが回転することによるオイルの流動抵抗によって、回転体42bを回動させるトルクに対抗したダンパトルクを発生させるように構成されている。したがって、オイルダンパ42における回転体42bが、支持軸30と一体回転可能に連結され、ハウジング42aが保持側ブラケット33に連結されている。
【0042】
具体的には、環状の底部42cと、中心に貫通孔が形成された有底円筒状のカバー部42dとによってハウジング42aが形成され、その底部42cには、外周側に突出した2つの取り付け部42eが一体化されている。この取り付け部42eには、貫通孔が形成されていて、ボルト43によって保持側ブラケット33に固定される。また、回転体42bは、例えば、中心に円筒部が一体化された長丸または楕円状などの板部材によって構成されている。すなわち、回転体42bをハウジング42aに組み付けることにより、底部42cと、カバー部42dと、回転体42bに形成された円筒部とによって、ハウジング42a内のオイルが液密状に封止される。この円筒部と支持軸30とが一体化されている。
【0043】
上記のオイルダンパ42は、オイルの粘性、オイル量、回転体42bの角速度などに応じたダンパトルクを発生させるものであるから、発生するダンパトルクの大きさは、オイルダンパ42の大きさや形状などの諸元に応じた大きさとなる。したがって、実験やシミュレーションなどにより支持軸30に要求されるダンパトルクの大きさを求め、そのダンパトルクを発生し得る数のオイルダンパ42を設けている。
図3に示す例では、支持軸30の軸線方向に並んで3つのオイルダンパ42を設けている。このようにオイルダンパ42を並んで配置するため、ハウジング42aの高さに応じた環状のスペーサ44をオイルダンパ42の間、より具体的には、底部42c同士の間に配置している。
【0044】
なお、
図3に示す例では、保持側ブラケット33には、可動翼15の後縁側の側面から第1収容部33f及び第2収容部33hに向けて貫通孔45が形成されていて、その開口部にグリースニップル46が取り付けられている。これは、第1ラジアル軸受34aや第2ラジアル軸受34bに潤滑油を供給するためである。
【0045】
上述したように構成された支持軸30、ダンパ機構41、各軸受34a,34b,35a,35bなどを保持側ブラケット33とともに可動翼15に取り付け、その後に、支持軸30を固定側ブラケット31に螺合させてナット32により固定することにより、固定アーム14と可動翼15とが連結される。その際に、可動翼15の回動角度が初期位置となる状態でストッパ31f、33c同士が可動翼15の回転方向で接触するように固定アーム14と可動翼15との位相を合わせる。
【0046】
図6には、主翼12と可動翼15とを連結する構成を説明するための平面図を示してある。
図6に示すように主翼12の端部と、可動翼15の端部とには、所定の間隔が設けられていて、主翼12と一体化された支持軸30が、可動翼15における第3中空部10cに挿入されている。なお、
図6に示すように可動翼15は、主翼12よりも風車1の回転方向に突出して配置されている。
【0047】
主翼12には、支持軸30が螺合する固定側ブラケット50が取り付けられている。固定側ブラケット50は、
図7に示すように第2中空部10bにおける左側辺と前後のリブ10eの左端部に接触する左側接触部50aと、第2中空部10bにおける右側辺と前後のリブ10eの右端部に接触する右側接触部50bと、左側接触部50a及び右側接触部50bのそれぞれに3つ形成された主翼12の内側に隆起したねじ受け部50cと、前縁側のねじ受け部50c同士を連結する前縁側連結部50dと、後縁側のねじ受け部50c同士を連結する後縁側連結部50eとによって構成されている。
【0048】
このねじ受け部50cは、先端が円弧状に形成されるとともに、固定側ブラケット50の長手方向に沿って断面円形の貫通孔50fが形成されている。また、ねじ受け部50cには、左右両側から貫通孔50fに向かって雌ねじ部50gが形成されている。さらに、固定側ブラケット50の長手方向の所定の位置には、支持軸30が螺合する雌ねじ部50hが形成されている。またさらに、固定側ブラケット50の一方の側面には、ストッパ51を固定するためのボルト52が螺合する雌ねじ部50iが2つ形成されている。ここで、支持軸30とストッパ51との干渉を回避するために、ストッパ51は主翼12の前縁側が後縁側よりも鉛直方向における下側に向くように傾斜して取り付けられていて、それに伴って、雌ねじ部50iも同様に前縁側が後縁側よりも鉛直方向における下側に形成されている。なお、主翼12の側面が流線形状に形成されているため、ストッパ51における主翼12側の面には、主翼12の側面形状に合わせて形成されたスペーサ53が連結されている。
【0049】
上記のように構成された固定側ブラケット50を主翼12の所定位置に配置した場合における主翼12の側面には、固定側ブラケット50の雌ねじ部50gに対応した位置に貫通孔12aが形成されていて、主翼12の外面側から固定用のボルト54がその貫通孔12aに挿入されて雌ねじ部50gに螺合している。
【0050】
また、ストッパ51は、直方形状に形成されていて、その一部に、保持側ブラケット33に形成されたストッパ33cの先端が差し込まれる切り欠き部51aが形成されている。この切り欠き部51aは、鉛直方向における下側の面が初期の可動翼15の位置決めを行う載置面とされていて、可動翼15の迎角が、初期の迎角である場合に、ストッパ33cと接触するように傾斜して形成されている。また、その載置面から可動翼15の回動方向に所定の隙間を空けて可動翼15が上限角度回動した場合に接触する制限面とされていて載置面に対して略垂直に形成されている。
【0051】
したがって、固定側ブラケット50を主翼12に取り付け、その後に、支持軸30を固定側ブラケット50に形成された雌ねじ部50hに螺合させるとともに、支持軸30にナット55を螺合させることによって、支持軸30と主翼12とが一体化される。
【0052】
なお、可動翼15に設けられた保持側ブラケット33及び種々の部材は、上述した固定アーム14側に設けられた保持側ブラケット33や支持軸30を保持する各部材と同様に構成されているため、同一の符号を付してその説明を省略する。すなわち、上述したように構成された支持軸30、ダンパ機構41、各軸受34a,34b,35a,35bなどを保持側ブラケット33とともに可動翼15に取り付け、その後に、支持軸30を固定側ブラケット50に螺合させてナット55により固定することにより、主翼12と可動翼15とが連結される。その際に、可動翼15の回転角度が初期位置となる状態でストッパ33c,51同士が可動翼15の回転方向で接触するように主翼12と可動翼15との位相を合わせる。
【0053】
つぎに、可動翼15と補助翼16とを連結する構成について説明する。
図8A及び
図8Bには、可動翼15に補助翼16を取り付けるためのブラケット60の構成を示してある。
図8Aに示すように可動翼15の長手方向における中央部分にブラケット60が取り付けられている。このブラケット60は、主翼12に設けられた固定側ブラケット50と同様に構成することができる。すなわち、可動翼15の第2中空部10bにおける上辺と前後のリブ10eの上端部に接触する上側接触部60aと、第2中空部10bにおける下側辺と前後のリブ10eの下端部に接触する下側接触部60bと、上側接触部60a及び下側接触部60bのそれぞれに3つ形成された可動翼15の内側に隆起した隆起部60cと、前縁側の隆起部60c同士を連結する前縁側連結部60dと、後縁側の隆起部60c同士を連結する後縁側連結部60eとによって構成されている。
【0054】
この隆起部60cは、先端が円弧状に形成されるとともに、ブラケット60の長手方向に沿って断面円形の貫通孔60fを備えている。また、ブラケット60の四隅に貫通孔60gが形成され、かつ上側接触部60aおよび下側接触部60bの中央部分に4つの貫通孔60hが形成されている。そして、可動翼15の上面及び下面におけるブラケット60の四隅の貫通孔60gに対応した位置には、貫通孔15aが形成されていて、それらの貫通孔15a,60gには、可動翼15の下面側からボルト61が挿入され、そのボルト61における可動翼15の上面側に突出した部分に、ナット62が締め付けられて、可動翼15にブラケット60が固定されている。なお、可動翼15の上面及び下面におけるブラケット60の中央部分に形成された貫通孔60hに対応した位置には、同様に貫通孔15bが形成されている。
【0055】
補助翼16にも同様に、ブラケット70が設けられている。
図9は、そのブラケット70の構成を説明するための図であって、ここに示す例では、補助翼16における第2中空部10bに挿入された前縁側ブラケット71と、第3中空部10cに挿入された後縁側ブラケット72とによって構成されている。
【0056】
前縁側ブラケット71は、可動翼15に設けられたブラケット60と同様に構成されている。すなわち、補助翼16の第2中空部10bにおける左辺と前後のリブ10eの左端部に接触する左側接触部71aと、第2中空部10bにおける右辺と前後のリブ10eの右端部に接触する右側接触部71bと、左側接触部71aおよび右側接触部71bのそれぞれに3つ形成された補助翼16の内側に隆起した隆起部71cと、前縁側の隆起部71c同士を連結する前縁側連結部71dと、後縁側の隆起部71c同士を連結する後縁側連結部71eとによって構成されている。
【0057】
この隆起部71cは、先端が円弧状に形成されている。また、隆起部71cのうちの前縁側および中央の2対の隆起部71cには、補助翼16の長手方向に沿って断面円形の貫通孔71fが形成され、後縁側の1対の隆起部71cには、補助翼16の長手方向に沿って雌ねじ部71gが形成されている。さらに、前縁側ブラケット71の四隅に貫通孔71hが形成されている。
【0058】
そして、補助翼16の左右の側面における前縁側ブラケット71の四隅の貫通孔71hに対応した位置には、貫通孔16aが形成されていて、それらの貫通孔71h,16aには、補助翼16の右側からボルト73が挿入され、そのボルト73における補助翼16の左側に突出した先端部分に、ナット74が締め付けられて、補助翼16に前縁側ブラケット71が固定されている。
【0059】
後縁側ブラケット72は、補助翼16の第3中空部10cにおける左辺と前側のリブ10eの左端部に接触する左側接触部72aと、第3中空部10cにおける右辺と前側のリブ10eの右端部に接触する右側接触部72bと、左側接触部72a及び右側接触部72bのそれぞれに形成された補助翼16の内側に隆起した隆起部72cと、その隆起部72c同士を連結する連結部72dとによって構成されている。
【0060】
この隆起部72は、先端が円弧状に形成されている。また、隆起部72cには、補助翼16の長手方向に沿って雌ねじ部72eが形成されている。さらに、後縁側ブラケット72には、補助翼16の幅方向に並んで貫通孔72fが形成されている。
【0061】
そして、補助翼16の左右の側面における後縁側ブラケット72の貫通孔72fに対応した位置には、貫通孔16aが形成されていて、その貫通孔72f,16aには、補助翼16の右側からボルト75が挿入され、そのボルト75における補助翼16に突出した先端部分に、ナット76が締め付けられ、補助翼16に後縁側ブラケット72が固定されている。
【0062】
上述したように可動翼15にブラケット60を固定し、補助翼16に前縁側ブラケット71及び後縁側ブラケット72を固定する。その後、
図10に示すように、可動翼15の下面に補助翼16を当接させた状態で、可動翼15の上部から貫通孔60hに固定用ボルト77を挿入して、前縁側ブラケット71及び後縁側ブラケット72に形成された雌ねじ部71g,72eに固定用ボルト77を螺合することにより、可動翼15に補助翼16が固定される。
【0063】
上述したように構成された揚力型垂直軸風車1は、主翼12と補助翼16で生じる揚力により風車1が回転する。その揚力は、主翼12及び補助翼16が空気流を受ける方向に応じて変動するが、上述したように複数の翼10を備えることにより、少なくともいずれか一つの翼10で生じる揚力によって風車1が回転する。言い換えると、風向によらずに風車1を回転させるためのトルクが発生する。
【0064】
また、風車1が回転すると、その回転速度に応じて可動翼15の迎角を変動させるモーメントが発生する。可動翼15に作用するモーメントを説明するための模式図を
図11に示してある。
図11に示すように固定アーム14は、翼弦線が水平となるように配置されている。また、可動翼15は、固定アーム14に対して風車1の回転方向の前方側に突出するように設けられ、可動翼15の回転中心、すなわち支持軸30の中心軸線に対して、可動翼15の重心位置G1が可動翼15の前縁側となるように構成されている。したがって、可動翼15の重心位置G1と支持軸30の中心軸線との水平方向での距離L1と、可動翼15の自重とを乗算した大きさのモーメントが、可動翼15の前縁側が鉛直方向における下側を向く方向に作用する。
【0065】
また、風車1が回転することにより可動翼15には遠心力が作用する。可動翼15の重心位置G1は、回転軸2と主翼12とを通る平面に対して風車1の回転方向における前方側に配置され、かつ可動翼15の前縁が上側に向いて傾斜している。したがって、可動翼15に作用する遠心力のうち、風車1の回転方向の接線成分が、可動翼15の前縁側が鉛直方向における下側を向く方向のモーメントとして作用する。より正確には、可動翼15を長手方向に分割して各分割要素に働く自重に起因するモーメントを積分して求められる。
【0066】
可動翼15には、可動翼15に作用する空気力によるモーメントが作用する。このモーメントは、水平面に対する翼弦線の傾斜角度である迎角αの大きさに基づいて変動する。
図12は、迎角αと可動翼15に作用する可動翼15の空力中心(翼前縁から翼弦長の1/4の位置)周りのモーメントの大きさとの関係であるモーメント係数(実線)CMを示すグラフであって、前縁側が鉛直方向における上側を向いている場合(ただし、迎角αが所定角度よりも小さい場合は除く)には、可動翼15の前縁側が鉛直方向における下側を向く方向にモーメントが作用する。なお、
図12には、迎角αと可動翼15に作用する揚力の大きさとの関係である揚力係数CLを破線で示し、迎角αと可動翼15に作用する抗力の大きさとの関係である抗力係数CDを一点鎖線で示してある。ここで、空力中心よりも翼後縁方向に位置する可動翼15の回転軸(支持軸30)周りのモーメントは、空力中心周りのモーメントと、空力中心に作用する揚力及び抗力によって可動翼15の回転軸周りに発生するモーメントとの和となる。
【0067】
また、補助翼16には、その補助翼16に作用する空気力(揚力と抗力との合力)のうちの風車1の回転方向に射影した接線成分力(風車1の回転方向を正とする)が、主翼12と同様に風車の回転方向に発生する。上記のように補助翼16は、可動翼15の下方側に取り付けられているため、風車1の回転方向に向けて補助翼16に作用する空気力は、可動翼15の前縁側が鉛直方向における上側を向く方向の支持軸30周りのモーメントとして作用する。
【0068】
さらに、補助翼16の自重に基づくモーメントが可動翼15に作用する。すなわち、支持軸30と補助翼16の重心位置G2との水平方向の距離L2と、補助翼16の自重とを乗算した大きさのモーメントが可動翼15に作用する。より正確には、補助翼16を長手方向に分割して各分割要素に働く自重に起因するモーメントを積分して求められる。
【0069】
またさらに、風車1が回転することにより補助翼16には遠心力が作用する。補助翼16の重心位置G2は、回転軸2と主翼12とを通る平面に対して風車1の回転方向における前方側に配置されている。したがって、補助翼16に作用する遠心力のうち、風車1の回転方向の接線成分が、可動翼15の前縁側が鉛直方向における上側を向く方向のモーメントとして作用する。より正確には、補助翼16を長手方向に分割して各分割要素に働く遠心力に起因するモーメントを積分して求められる。
【0070】
上述した可動翼15に作用する空気力によるモーメント、可動翼15の遠心力に応じたモーメント、補助翼16の空気力に応じたモーメント、及び補助翼16の遠心力に応じたモーメントは、風車1の回転速度に応じて変動し、また可動翼15に作用する空気力によるモーメント、及び補助翼16の空気力に応じたモーメントは、風向に対する風車1の回転方位角であるアジマス角に応じて変動する。すなわち、風速及び風車1の回転速度が一定であったとしても、風車1が一回転する間に可動翼15に作用するモーメントの大きさは変動する。したがって、モーメントの大きさの変動に伴って可動翼15の迎角αが大小に大きく変動することを抑制するために、ダンパ機構41が設けられている。すなわち、可動翼15を回動させるモーメント(またはトルク)に対抗したモーメント(またはトルク)を発生させるようにダンパ機構41が設けられている。
【0071】
図13は、可動翼15を回動させるトルクに対抗したダンパ機構41により生じるトルク(以下、ダンパトルクと記す)の大きさと、可動翼15が支持軸30周りに回転する際の回転角速度(相対回転速度)との理論上の関係を示す図であり、可動翼15の左右両側に1つずつオイルダンパ42を設けた例を破線で示し、可動翼15の左右両側に4つずつオイルダンパ42を設けた例を実線で示してある。
図13に示すように可動翼15の回転角速度が速くなるほど、ダンパトルクが大きくなり、また配置するオイルダンパ42の数量に比例してダンパトルクが大きくなることが分かる。
【0072】
可動翼15に使用するオイルダンパ42は、その回転軸(回転体42b)の右回りと左回りとで、
図13に示す例と同じトルク特性を有するものとする。したがって、可動翼15の迎角αが増加するようにモーメントが作用した場合には、その迎角αの変化量を低減するようにダンパトルクが生じ、それとは反対に、迎角αが減少する場合には、その迎角αの変化量を低減するようにダンパトルクが生じる。すなわち、可動翼15が回動することを抑制できる。
【0073】
図14には、ダンパ機構41を設けることによる可動翼15の揺動抑制の効果を説明するためのシミュレーション結果を示している。
図14における横軸には、風車1の回転回数を採り、縦軸には、可動翼15の迎角αを採ってあり、
図14(a)には、ダンパ機構41を設けていない場合における可動翼15の迎角αの変化を示し、
図14(b)には、ダンパ機構41を設けている場合における可動翼15の迎角αの変化を示してある。なお、ここでは、ダンパ機構41は、可動翼15の左右にそれぞれ4つずつ(計8つ)オイルダンパ42を設けた場合を例に挙げて示してある。
【0074】
図14におけるシミュレーションは、風速V=7m/s、可動翼15の先端周速比λ=4の条件下での可動翼15の迎角αの変化を求めた。ここで、先端周速比λは、主流風速に対する翼の周速度の比であり、回転軸2から可動翼15までの距離であるロータ半径をR、風車1の回転軸2の角速度をωとした場合に、λ=(Rω)/Vで求めることができる。ここでは、風車1の回転速度N(毎分回転数)は、77.3rpmとなっている。
【0075】
図14(a)に示すようにダンパ機構41を設けていない場合には、風車1が1回転する間に、可動翼15の迎角αが初期迎角から約90°まで増加した後に、再度、初期迎角まで低下している。したがって、可動翼15の迎角αが初期迎角に低下した時点で、ストッパ31fとストッパ33cとが接触し、またストッパ33cとストッパ51とが接触する。さらに、最大迎角αを90°に設定している場合には、可動翼15の迎角αが増加した時点でストッパ33cとストッパ51とが接触する。そのため、ダンパ機構41を設けていない場合には、可動翼15の迎角αが大小に大きく変動し、それに伴って、風車1が振動する可能性がある。さらに、ストッパ33cとストッパ51との接触や、ストッパ33cとストッパ51との接触に伴って、固定アーム14や主翼12が振動することにより、風車1全体が振動し、また異音が発生する可能性がある。
【0076】
それに対して、
図14(b)に示すようにダンパ機構41を設けた場合には、風車1が回転し始めることにより、可動翼15の迎角αが約60°まで増加した後は、可動翼15の迎角αが約50°から60°の間で変動する。すなわち、ダンパ機構41を設けていない場合と比較して、可動翼15の迎角αの変動幅(振幅)を低減することができる。これは、可動翼15の迎角αが増加するように可動翼15にモーメントが発生した場合に、そのモーメントに抗する方向のダンパトルクがダンパ機構41によって発生し、また可動翼15の迎角αが減少するように可動翼15にモーメントが発生した場合、言い換えると、アジマス角の変化によって迎角αを増加させる方向に可動翼15に作用する空気力に基づくモーメントや、補助翼16に作用する空気力に基づくモーメントが低下した場合に、可動翼15の迎角αを減少させるモーメントに抗する方向のダンパトルクがダンパ機構41によって発生するためである。
【0077】
したがって、可動翼15の迎角αが初期迎角まで低下し、あるいは最大迎角まで増加することを抑制することができる。その結果、可動翼15の迎角αの変動に伴って、風車1が振動することを抑制でき、さらに、ストッパ33cとストッパ51との接触や、ストッパ33cとストッパ51との接触に伴って固定アーム14や主翼12が振動すること、ひいては風車1全体が振動することを抑制でき、また異音が発生することを抑制することができる。
【0078】
また、可動翼15に作用する空気力によるモーメント、および補助翼16に作用する遠心力に起因するモーメントは、可動翼15の迎角αが90°に近い程大きくなる。一方、ダンパ機構41によるダンパトルクは、可動翼15の迎角αには依存しない。したがって、可動翼15の初期迎角αが小さい場合には、ダンパ機構41のダンパトルクが大きいと、可動翼15が回動せずに過回転を抑制する機能を発揮することができず、またはその効果が小さくなる可能性がある。
図15及び
図16には、初期迎角毎の可動翼15の迎角αの変化を検証したシミュレーション結果を示してある。
【0079】
なお、
図15及び
図16におけるシミュレーションは、風速V=8m/s、可動翼15の先端周速比λ=4の条件下、すなわち、風車1の回転速度Nが43.7rpmでの可動翼15の迎角αの変化を求めた。
【0080】
図15は、ダンパ機構41として可動翼15の左右にそれぞれ1つずつ(計2つ)オイルダンパ42を設けた場合のシミュレーション結果を示し、初期迎角が0°(二点鎖線)、4°(一点鎖線)、8°(破線)、及び12°(実線)に設定した例を示してあり、
図16は、ダンパ機構41として可動翼15の左右にそれぞれ4つずつ(計8つ)オイルダンパ42を設けた場合のシミュレーション結果を示し、初期迎角が0°(二点鎖線)、4°(一点鎖線)、8°(破線)、及び12°(実線)に設定した例を示してある。
【0081】
図15に示すように、ダンパ個数が少ない場合は、風車1が1~2回転した後は、いずれの初期角度(初期迎角)においても同様の迎角変化を示し、比較的大きな平均迎角(約55°)のまわりで変動する挙動を示している。一方、
図16に示すように、ダンパ個数が多く、初期迎角が小さい場合(
図16では初期迎角が0°の場合)には、可動翼15の迎角αが初期迎角からほぼ変化しないことが分かる。それに対して、初期迎角を所定角度以上大きく設定した場合には、初期迎角の大きさに依存することなく、可動翼15が同様の挙動を示すことが分かる。これらの結果から、可動翼15を回動させるモーメントに対抗したダンパトルクを発生させるダンパ機構41を設けた場合には、そのダンパ機構41によるダンパトルクの大きさに応じて初期迎角の下限値を設定する必要があることが分かる。したがって、風車1の最大回転速度、及び想定される最大風速の条件下において可動翼15が回動可能な初期迎角をシミュレーションなどによって求め、ストッパ31f、ストッパ33c、及びストッパ51の傾斜角が、上記のように求められた初期迎角に基づいて形成されている。
【0082】
このようにストッパ31f、ストッパ33c、及びストッパ51の傾斜角を形成することにより、可動翼15を適切に回動させることができるため、過回転を抑制する機能が発揮できなくなることを抑制できる。
【0083】
また、風車1の発電電力(損失を無視した場合)は、回転軸2の回転速度と、回転軸2を停止させる方向に作用する発電部6の発電トルクとを乗算した大きさとなる。この発電部6の発電トルクは、例えば、永久磁石式の直流発電機を採用した場合には、ほぼ一定であり、印加する電圧などによって発電トルクを制御することができる発電機を採用した場合には、発電機の定格トルクが定められている。
【0084】
この発電部6の発電トルクと回転軸2を回転させる駆動トルクとが釣り合うことにより、回転軸2がほぼ一定で回転して安定した電力を発電する。また、発電トルクが駆動トルクよりも大きい場合には、回転軸2の回転速度が次第に低下して、発電部6の発電電力が低下し、それとは反対に、発電トルクが駆動トルクよりも小さい場合には、回転軸2の回転速度が次第に増加する。
【0085】
また、駆動トルクは、主に主翼12によって発生する空気力に応じて回転軸2を回転させる空気力トルクと、そのトルクに対抗する可動翼15の迎角に応じた抵抗トルクとの差から求められる大きさとなる。すなわち、可動翼15の迎角αの増加に伴って抵抗トルクが大きくなるほど駆動トルクが低下して発電電力が低下することになる。
【0086】
したがって、この発明に係る風車1は、予め定められた風速の環境下において、発電部6(風車1)の回転速度が定格回転速度で回転した場合における駆動トルクが、発電部6の定格トルクと釣り合う大きさとなるように可動翼15で生じる抵抗トルクを定めている。具体的には、上記の条件下での駆動トルクや抵抗トルクを、ダンパ機構41のダンパトルクの大きさ、すなわちオイルダンパ42の数量毎にシミュレーションによって求め、適切な駆動トルクとなるダンパ機構41のダンパトルクを求め、その求められたダンパトルクを発生させるようにダンパ機構41を構成している。
【0087】
図17には、風速V=8m/s、可動翼15の先端周速比λ=3(風車回転速度32.7rpm)の条件下での可動翼15の迎角αの変化をシミュレーションした結果を示してある。ここに示す例では、可動翼15の初期の迎角αを8°に設定している。またさらに、
図17に示す例では、可動翼15の左右にそれぞれ4つずつ(計8つ)オイルダンパ42を設けた場合における結果を実線で示し、可動翼15の左右にそれぞれ1つずつ(計2つ)オイルダンパ42を設けた場合における結果を破線で示し、ダンパ機構41を設けていない場合における結果を一点鎖線で示してある。
【0088】
図17に示すようにオイルダンパ42を2つ設けた場合には、可動翼15を回動させるモーメントに対するダンパトルクが小さいことにより、オイルダンパ42を8つ設けた場合と比較して可動翼15の迎角αが大きく変動している。
【0089】
表1には、上記のシミュレーション結果における迎角α、駆動トルク、及び抵抗トルクの平均値を示してある。
【表1】
【0090】
表1に示すように駆動トルクと抵抗トルクとを求めることにより、ダンパ機構41を設け、さらにそのダンパ機構41を設ける数量を増加させることにより、平均迎角αが小さくなり、抵抗トルクが小さくなる。すなわち、駆動トルクが大きくなる。
【0091】
したがって、
図17に示すようにシミュレーションを行い、表1に示すように駆動トルクや抵抗トルクを求めることにより、適切な駆動トルクの大きさとなるオイルダンパ42の数量を求めることができる。
【0092】
上記のようにオイルダンパ42の数量、すなわち、ダンパ機構41によって発生させるダンパトルクの大きさを定めることにより、予め定められた風車1の定格風速以下の状態(風速が小さい場合)において、駆動トルクが不足するなどによって風車1の発電電力が低下することを抑制できる。ここで、定格風速は、風車1の最大発電電力に到達する最小の風速値であり、したがって、その定格風速の環境下での駆動トルクが発電トルクと同等となるようにダンパトルクの大きさを定めている。
【0093】
また、ダンパ機構41を設けることにより、傾斜角(迎角)の平均値を、表1に示すように低下させることができ、ダンパ機構41を設けていない場合と比較して抵抗トルクを低下させることができる。その結果、駆動トルクが過度に低下することを抑制でき、風車1の発電効率を向上させることができる。
【0094】
なお、上述したようにダンパ機構41をオイルダンパ42によって構成することにより可動翼15の回転角速度に応じてダンパトルクが変動するため、可動翼15の急激な回動を抑制できるが、この発明におけるダンパ機構41は、可動翼15の回動を抑制するようにダンパトルクを発生させるように構成されていればよい。したがって、オイルダンパ42に代えて、複数の摩擦板を接触させた摩擦ブレーキなどの他の構成のダンパ機構41を採用してもよい。また、ダンパ機構41は、可動翼15に設けたものに限らず、支持軸30を可動翼15と一体化させ、その支持軸30の回転を抑制するように固定アーム14や主翼12にダンパ機構41を設けてもよい。
【0095】
また、この発明における過回転抑制誘導体は、遠心力によって可動翼15の迎角を増大させるモーメントを発生させるものであればよく、補助翼16に代えて可動翼15から垂下した錘によって構成してもよく、可動翼15の後縁側から垂下して設けてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 揚力型垂直軸風車
2 回転軸
5 支持脚
6 発電部
10 風車翼(翼)
11 延在部
12 主翼
14 固定アーム
15 可動翼
16 補助翼
30 支持軸
31,50 固定側ブラケット
33 保持側ブラケット
34a,34b ラジアル軸受
35a.35b スラスト軸受
41 ダンパ機構
42 オイルダンパ
G1,G2 重心位置
X 水平軸
Z 垂直軸