(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110178
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/12 20060101AFI20240807BHJP
F16H 1/02 20060101ALI20240807BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20240807BHJP
B60K 17/356 20060101ALI20240807BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B60K17/12
F16H1/02
F16H48/08
B60K17/356 B
B60L15/20 K ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014598
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯 充
(72)【発明者】
【氏名】井樽 駿介
【テーマコード(参考)】
3D042
3D043
3J009
3J027
5H125
【Fターム(参考)】
3D042AA01
3D042AA06
3D042AB17
3D042BE01
3D042BE02
3D043AA01
3D043AA06
3D043AB02
3D043AB17
3D043EA02
3D043EA05
3D043EA42
3J009EA06
3J009EA12
3J009EA16
3J009EA44
3J009FA04
3J027FB02
3J027HB07
5H125AA01
5H125BE05
5H125FF01
5H125FF30
(57)【要約】
【課題】車体のレイアウトの自由度を高めながら、良好な車両の運動特性が得られる車両用動力伝達装置を提供する。
【解決手段】車両前後方向に指向しつつ、電動機Mの出力軸M2と同軸上で配置され、出力軸M2と一体に回転可能に軸支された第1回転軸SH1と、車幅方向に指向しつつ、回転可能に軸支された第2回転軸SH2と、車幅方向に指向しつつ、車両前後方向における電動機Mの重心MCと第2回転軸SH2との間に回転可能に軸支された第3回転軸SH3と、第3回転軸SH3と同軸上に駆動軸DSが配置された差動装置DFと、を備え、第2歯車GY2に対して第1回転軸SH1と車幅方向で対称となる位置に第3歯車GY3と、第3回転軸SH3の一端に、第2回転軸SH2の回転を第3回転軸SH3に伝える第4歯車GY4と、を配置し、差動装置DFを第3回転軸SH3と同軸上、且つ第4歯車GY4に対して第1回転軸SH1側に配置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に指向しつつ、電動機の出力軸と同軸上に配置され、該出力軸と一体に回転する第1回転軸と、
車幅方向に指向しつつ、回転する第2回転軸と、
車幅方向に指向しつつ、車両前後方向における該電動機の重心と該第2回転軸との間で回転する第3回転軸と、
該第3回転軸と同軸上に駆動軸が配置された差動装置と、
該第1回転軸の先端に設けられつつ、該第1回転軸と一体に回転する第1歯車と、
該第2回転軸の一端に設けられ、該第1歯車と噛合し、該第1回転軸の回転を該第2回転軸に伝える第2歯車と、
該第2回転軸の他端に設けられ、該第2歯車と一体に回転しつつ、該第2歯車に対して該第1回転軸と車幅方向で対称となる位置に配置される第3歯車と、
該第3回転軸の一端に設けられ、該第3歯車と噛合し、該第2回転軸の回転を該第3回転軸に伝える第4歯車と、
を備え、
該差動装置が、
該第3回転軸と同軸上に設けられ、前記第4歯車に対して前記第1回転軸側に配置される
車両用動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用動力伝達装置において、
前記第1歯車、および前記第2歯車は、
スパイラルベベルギヤで構成された
車両用動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用動力伝達装置において、
前記第1歯車、および前記第2歯車は、
ハイポイドギヤで構成された
車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源から出力される動力を駆動軸に伝達するための車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省資源化の流れを受け、自動車では軽量化や電動化が進められている。そして、車両の軽量化に加え、客室容積の拡大などを狙って、車両前部に駆動装置を乗せた前輪駆動車が主流となっている。また、これとは別に、降雪地帯での走行安定性の高さから、前輪と後輪の両方を駆動する四輪駆動車も設定されている。
ところで、従来の四輪駆動車の構成では、前輪駆動車の駆動装置の構成に加え、変速装置への副変速装置の追加、プロペラシャフトの配置等を伴う。このため、重量の増加に加え、客室足元空間の確保、燃料タンク容積の確保、バッテリー配置スペースの確保等の車体レイアウトへの制約が生じる。
【0003】
そこで、四輪駆動車においては、前輪を駆動するための駆動装置とは別に、後輪を駆動するための電動機を配置し、この電動機と一体に減速装置を配置する技術が開示されている。
たとえば特許文献1では、電動機と、電動機で発生した駆動力を減速する複数の歯車機構による減速装置とを一体に配置する電気自動車用駆動装置の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、駆動源である電動機と、減速装置などの動力伝達装置とを一体に配置する駆動装置の構成においては、前述した車体レイアウトへの制約を生じないことに加え、重量バランスを好適に設定することが求められる。
これは、駆動装置を含む車体は、懸架装置を介して車輪上に配置されるため、車体の前後、左右の重量バランスが、懸架装置の特性、すなわち車両の運動特性に影響を及ぼすためである。
このため、電動機と一体に車体に配置される動力伝達装置は、前後、左右の重量バランスについて好適に構成されたものが求められる。
本発明は上記課題を解決するために考案されたものであり、その目的は、車体のレイアウトの自由度を高めながら、良好な車両の運動特性が得られる車両用動力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明に係る車両用動力伝達装置は、車両前後方向に指向しつつ、電動機の出力軸と同軸上に配置され、該出力軸と一体に回転する第1回転軸と、車幅方向に指向しつつ、回転する第2回転軸と、車幅方向に指向しつつ、車両前後方向における該電動機の重心と該第2回転軸との間で回転する第3回転軸と、該第3回転軸と同軸上に駆動軸が配置された差動装置と、該第1回転軸の先端に設けられつつ、該第1回転軸と一体に回転する第1歯車と、該第2回転軸の一端に設けられ、該第1歯車と噛合し、該第1回転軸の回転を該第2回転軸に伝える第2歯車と、該第2回転軸の他端に設けられ、該第2歯車と一体に回転しつつ、該第2歯車に対して該第1回転軸と車幅方向で対称となる位置に配置される第3歯車と、該第3回転軸の一端に設けられ、該第3歯車と噛合し、該第2回転軸の回転を該第3回転軸に伝える第4歯車と、を備え、該差動装置が、該第3回転軸と同軸上に設けられ、前記第4歯車に対して前記第1回転軸側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体のレイアウトの自由度を高めながら、良好な車両の運動特性が得られる車両用動力伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用動力伝達装置の構成を模式的に示すスケルトン図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る車両用動力伝達装置の正面図である。
【
図3】
図2のカバーを取り外した状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用動力伝達装置を示し、カバーを取り外した状態を示す正面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る車両用動力伝達装置を示し、
図2のIV-IV線に対応する部位の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の車両用動力伝達装置Sについて、
図1~
図5を参照して詳細に説明する。
なお、説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の車両用動力伝達装置Sは、前輪駆動をベースとした四輪駆動車(図示せず)に搭載されている。
【0010】
この四輪駆動車においては、前輪を駆動するための駆動装置(図示せず)とは別に、後輪を駆動するための後輪駆動手段(図示せず)を備えている。
そして、本実施形態の車両用動力伝達装置Sは、駆動源となる電動機Mとともに、後輪駆動手段RWDを構成している(
図2参照)。
つまり、本実施形態の車両用動力伝達装置Sは、電動機Mが発生する駆動力を後輪に伝えるために構成されている。
また、車両用動力伝達装置Sは、電動機Mとともに、筐体C内に収容され、1つのユニットとして構成されている(
図2~
図5参照)。
【0011】
筐体Cは、モータハウジングCM、ギヤハウジングCG、カバーCCで構成されている。
モータハウジングCMは、電動機Mを収容するための空間を形成している。
ギヤハウジングCGは、車両用動力伝達装置Sを収容するための空間を形成している。
カバーCCは、ギヤハウジングCGに開口する作業窓CWを閉止するための部材である。
作業窓CWは、車両用動力伝達装置Sを組み立てる場面で、歯車類をギヤハウジングCG内に組み込む際に使用される。
【0012】
後輪駆動手段RWDは、電動機Mを構成するロータM1の回転軸が車両前後方向に指向しつつ、電動機Mが車両用動力伝達装置Sよりも車両前方に位置するように、車両に設置されている。
なお、これ以降、電動機Mを構成するロータM1の回転軸を、ロータ回転軸M2(出力軸)と称する。
【0013】
次に、車両用動力伝達装置Sについて説明する(
図1~
図5参照)。
車両用動力伝達装置Sは、減速機RD、差動装置DFを備えている。
減速機RDは、電動機Mの回転数を設定された減速比で減速しつつ、トルクを増加して差動装置DFに伝えるための構成である。
減速機RDは、2段の歯車機構で構成されている。
そこで、1段目の歯車機構を第1歯車機構G1と称し、2段目の歯車機構を第2歯車機構G2と称し、各歯車機構について説明する。
【0014】
第1歯車機構G1は、第1回転軸SH1、第2回転軸SH2、第1歯車GY1、第2歯車GY2で構成されている(
図1~
図5参照)。
第1回転軸SH1は、軸状の部材で構成されており、車両前後方向に指向しつつ、ロータ回転軸M2(出力軸)と同軸上に配置され、その前端部がロータM1に固定されたフランジM3にスプライン嵌合している。
第1回転軸SH1は、その後端(第1回転軸SH1の先端)に、第1歯車GY1が一体に形成されており、第1歯車GY1とともに回転する。
【0015】
第2回転軸SH2は、軸状の部材で構成されており、第1回転軸SH1よりも後方に位置し、車幅方向に指向しつつ、回転可能に、ギヤハウジングCG内に軸支されている。
第2回転軸SH2は、その軸線が、第1回転軸SH1の軸線に直交しつつ、第1回転軸SH1の軸線の延長線上に配置されている。
つまり、第2回転軸SH2と第1回転軸SH1とは、同一平面上に設定されている。
第2回転軸SH2は、その左端(第2回転軸SH2の一端)に、第2歯車GY2が設けられている。
第2歯車GY2は、第2回転軸SH2とは別部材で構成されているが、第2回転軸SH2とスプライン嵌合しており、第2回転軸SH2とともに回転する。
【0016】
第1歯車GY1と第2歯車GY2とは、スパイラルベベルギヤで構成されている。
第2歯車GY2は、第1歯車GY1よりも大径で、歯数が多くなるように設定されている。
第2歯車GY2は、第2回転軸SH2よりも第1回転軸SH1側に位置する部位で第1歯車GY1と噛合する。
つまり、第2歯車GY2は、第1歯車GY1に対して、第1回転軸SH1から離間する位置に配置されつつ、第1歯車GY1と噛合している。
【0017】
次に、第2歯車機構G2について説明する(
図1~
図5参照)。
第2歯車機構G2は、第2回転軸SH2、第3回転軸SH3、第3歯車GY3、第4歯車GY4で構成されている。
第2回転軸SH2は、前述の構成に加え、その右端(第2回転軸SH2の他端)に、第3歯車GY3が一体に形成されており、第3歯車GY3とともに回転する。
つまり、第3歯車GY3は、第2歯車GY2と一体に回転する。
【0018】
また、第2回転軸SH2は、第1回転軸SH1に対する第2歯車GY2の位置と、第1回転軸SH1に対する第3歯車GY3の位置とが、車幅方向に対称となる軸長に設定されている。
つまり、第2回転軸SH2は、その軸部分の軸長が、車幅方向において、第2歯車GY2と第1回転軸SH1との車幅方向の間隔L12と、第3歯車GY3と第1回転軸SH1との車幅方向の間隔L13とが、同様の寸法となるように設定されている(
図5参照)。
【0019】
第3回転軸SH3は、軸状の部材を備えておらず、差動装置DFを構成するデフケースDC、および第4歯車GY4の回転軸として設定されている。
第3回転軸SH3は、車幅方向に指向しつつ、車両前後方向において、第2回転軸SH2と電動機Mの重心MCとの中間に配置されている。
つまり、第3回転軸SH3は、第2回転軸SH2と平行に、且つ車両前後方向について、第2回転軸SH2よりも電動機Mに近接しつつ、第2回転軸SH2よりも下方の位置に配置されている。
【0020】
第3歯車GY3と第4歯車GY4とは、ヘリカルギヤで構成されている。
また、第3歯車GY3は、第2回転軸SH2の右端(第2回転軸SH2の他端)に設けられ、第2歯車GY2と一体に回転しつつ、第2歯車GY2に対して第1回転軸SH1と車幅方向で対称となる位置に配置されている。
【0021】
第4歯車GY4は、第3歯車GY3よりも大径、且つ第3歯車GY3よりも歯数が多くなるように設定されている。
第4歯車GY4は、差動装置DFを構成するデフケースDCと電子ビーム溶接を用いて一体に構成され、デフケースDCとともに回転する。
そして、デフケースDCをギヤハウジングCG内に軸支することで、第4歯車GY4は、回転可能に軸支されている。
【0022】
次に、差動装置DFについて説明する(
図1~
図5参照)。
差動装置DFは、車両が直進する際に、左右の駆動軸DSに対して、同一の回転数で、均等に駆動力を伝達する。
また、差動装置DFは、車両が転回する際に、左右の駆動軸DSに生じる内輪差に応じた回転差をつけて左右の駆動軸DSに駆動力を伝達する。
【0023】
駆動軸DSは、差動装置DFの出力部として、車両の後輪に連結され、後輪に駆動力を伝達する。
そして、駆動軸DSは、右駆動軸DSR、左駆動軸DSLで構成され、右駆動軸DSRは、右後輪(図示せず)を駆動し、左駆動軸DSLは、左後輪(図示せず)を駆動する。
右駆動軸DSRと左駆動軸DSLは共に、一つの軸の両端に継手となる等速ジョイント(図示せず)が設けられている。
【0024】
差動装置DFは、デフケースDC、ピニオンギヤD1、右サイドギヤD2R、左サイドギヤD2Lを備えている。
デフケースDCは、車幅方向に面する第4歯車GY4における第1回転軸SH1側に接合されている。
デフケースDCは、第3回転軸SH3を中心に回転可能にギヤハウジングCG内に支持されている。
【0025】
デフケースDCは、第3回転軸SH3を中心軸とする略筒形状を有し、その筒内部に、ピニオンギヤD1、右サイドギヤD2R、左サイドギヤD2Lが収容されている。
ピニオンギヤD1は、第3回転軸SH3に直交しつつ、デフケースDCの筒壁を貫通するピニオン軸D3に回転可能に軸支されている。
【0026】
右サイドギヤD2Rは、ピニオンギヤD1に噛合しつつ、デフケースDCの右端部に回転可能に支持されている。
右サイドギヤD2Rは、右駆動軸DSRの車幅方向内側端部に形成され、ベベルギヤで構成されている。
また、右サイドギヤD2Rは、その軸中心に、右駆動軸DSRの端部に配置される等速ジョイント(図示せず)が挿嵌されており、右駆動軸DSRと一体に回転する。
【0027】
左サイドギヤD2Lは、ピニオンギヤD1に噛合しつつ、デフケースDCの左端部に回転可能に支持されている。
左サイドギヤD2Lは、左駆動軸DSLの車幅方向内側端部に形成され、右サイドギヤD2Rと同一のベベルギヤで構成されている。
また、左サイドギヤD2Lは、その軸中心に、左駆動軸DSLの端部に配置される等速ジョイント(図示せず)が挿嵌されており、左駆動軸DSLと一体に回転する。
【0028】
差動装置DFは、第4歯車GY4が回転することで、デフケースDC、およびピニオンギヤD1が、第3回転軸SH3を中心に回転(公転)する。
ピニオンギヤD1が、第3回転軸SH3を中心に回転することで、デフケースDC(第4歯車GY4)の回転を噛合する右サイドギヤD2R、および左サイドギヤD2Lに伝達する。
そして、右サイドギヤD2Rが回転することで、右駆動軸DSRが回転し、左サイドギヤD2Lが回転することで、右駆動軸DSRが回転する。
また、デフケースDCが回転する際に、ピニオンギヤD1がピニオン軸D3を中心に回転(自転)することで、左右の駆動軸DSに回転差を与えつつ、回転を伝達する。
【0029】
次に、本実施形態の車両用動力伝達装置Sの作用効果について説明する。
本実施形態の車両用動力伝達装置Sでは、第1回転軸SH1が車両前後方向に指向し、第2回転軸SH2、第3回転軸SH3が車幅方向に指向して配置されている。
加えて、第3回転軸SH3は、車両前後方向において、第2回転軸SH2と電動機Mの重心MCとの中間に位置した状態で、ギヤハウジングCG内に軸支されている。
このような構成によって、車両用動力伝達装置Sの車両前後方向におけるコンパクト化を図ることができる。
そして、前後方向のコンパクト化を図れることで、車両用動力伝達装置Sと電動機Mからなる後輪駆動手段RWDを、車両の前後方向の重量バランスについて好適に構成することができる。
【0030】
また、本実施形態の車両用動力伝達装置Sでは、第1回転軸SH1に対する第2歯車GY2の位置と、第1回転軸SH1に対する第3歯車GY3の位置とが、車幅方向に対称となるように第2回転軸SH2の軸部分の長さが設定されている。
さらに、第4歯車GY4の車幅方向で第1回転軸SH1側に差動装置DFが配置されているため、車両用動力伝達装置Sの車幅方向におけるコンパクト化を図ることができる。
そして、車幅方向のコンパクト化を図れることで、車両用動力伝達装置Sを車両に設置する際の懸架装置(図示せず)等への制約を緩和することができる。
また、車幅方向のコンパクト化を図れることで、後輪駆動手段RWDを車幅方向の重量バランスについて好適に構成することができる。
【0031】
さらに、車幅方向のコンパクト化を図れることで、差動装置DFが車幅方向の中心に位置するように、車両用動力伝達装置Sを車両に配置することが可能になるため、左右の駆動軸DSを等長にすることができる。
そして、左右の駆動軸DSが等長になることで、左右の駆動軸DSを共通化できるため、原価を低減することが可能となる。
さらに、左右の駆動軸DSを等長にできることで、継手(図示せず)の取付け角度を小さく抑えることができる。
これによって、継手で生じる誘起スラストが低減し、音振動性能を向上することができる。
【0032】
また、前後方向、および車幅方向について、車両用動力伝達装置Sのコンパクト化を図れることで、客室容積の確保、荷室容積の確保、燃料タンクの配置、バッテリーの配置等における制約を緩和し、車体のレイアウトの自由度を高めることができる。
さらに、前後方向、および車幅方向について、車両用動力伝達装置Sのコンパクト化を図れ、車両前後方向、および車幅方向の重量バランスについて好適に構成されることで、良好な車両の運動特性を得ることができる。
【0033】
また、本実施形態の車両用動力伝達装置Sでは、第1歯車機構G1を構成する第1歯車GY1と第2歯車GY2とが、スパイラルベベルギヤで構成されている。
これによって、第1歯車GY1と第2歯車GY2とが噛合する際の滑りが解消されるため、電動機Mが高速回転した際の耐焼き付き性を向上することができる。
また、耐焼き付き性が向上することで、耐焼き付き性を高めるために施される比較的高価な加工、処理を施す必要がなくなるため、コストの上昇を抑えることができる。
【0034】
第1歯車機構G1を構成する第1歯車GY1と第2歯車GY2とが、スパイラルベベルギヤで構成されることで、第1回転軸SH1と第2回転軸SH2とが、上下方向にオフセットせずに同一平面上に配置されている。
これによって、上下方向のコンパクト化を図ることができるため、車両用動力伝達装置Sを車両に設置した際の車両の最低地上高を高めることができる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の車両用動力伝達装置S1について、
図6、
図7を参照して説明する。
なお、説明において、前述の第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の車両用動力伝達装置S1では、第1歯車機構G1を構成する第1歯車GY1と第2歯車GY2の構成が、スパイラルベベルギヤではなく、ハイポイドギヤに変更されている。
【0036】
第1実施形態では、第1歯車GY1と第2歯車GY2とが、スパイラルベベルギヤで構成されていることから、第1回転軸SH1と第2回転軸SH2とが、同一平面上に位置している。
これに対して、本実施形態では、第1回転軸SH1が、上下方向において、第2回転軸SH2と第3回転軸SH3との間に位置している。
つまり、第1回転軸SH1と第2回転軸SH2とが、ねじれの位置に位置している。
このような構成とすることで、第1実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、上下方向における、より一層のコンパクト化を図ることができる。
これによって、車両の最低地上高をより高くすることができる。
【符号の説明】
【0037】
S、S1 車両用動力伝達装置
M 電動機
M2 出力軸(ロータ回転軸)
MC 重心
SH1 第1回転軸
SH2 第2回転軸
SH3 第3回転軸
DS 駆動軸
DF 差動装置
GY1 第1歯車
GY2 第2歯車
GY3 第3歯車
GY4 第4歯車