(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110184
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】作業装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014609
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進一
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC03
5E353EE31
5E353GG01
5E353HH11
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353LL02
5E353QQ30
(57)【要約】
【課題】放熱性能に優れた作業装置を提供する。
【解決手段】作業装置11は、機台2、吸気用開口34と排気用開口36とを有するカバー3、固定子7に沿って移動する可動子8を有するリニアモータ56、作業実施部9を備える。可動子8は、放熱部65、ダクト66、送風機67を有する。放熱部65は、可動子8及び作業実施部9の構成部材が発生する熱をエアに放散する。ダクト66は、放熱部65を覆うとともに、吸気用開口34に対応して開口する吸気口74、排気用開口36に対応して開口する排気口76と、を有する。送風機67は、吸気口74から排気口76にエアを流す。吸気口74は、可動子8の移動方向に沿って延びる一対の開口縁E1、E2を有する。吸気口74は、一対の開口縁E1、E2の少なくとも一方に、吸気用開口34から供給されるエアをダクト66内に案内する案内片81、82が突設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台と、
前記機台との間に作業空間を形成し、前記作業空間にエアを供給する吸気用開口と、前記作業空間から前記エアを排出する排気用開口と、を有するカバーと、
前記作業空間に配置され、固定子と、前記固定子に沿って移動する可動子と、を有するリニアモータと、
前記可動子に設けられ、所定の作業を実施する作業実施部と、
を備え、
前記可動子は、
前記可動子及び前記作業実施部の少なくとも一方を構成する構成部材が発生する熱を前記エアに放散する放熱部と、
前記放熱部を覆うとともに、前記吸気用開口に対応して開口する吸気口と、前記排気用開口に対応して開口する排気口と、を有するダクトと、
前記吸気口から前記排気口に前記エアを流す送風機と、を有しており、
前記吸気口は、前記可動子の移動方向に沿って延びる一対の開口縁を有するとともに、前記一対の開口縁の少なくとも一方に、前記吸気用開口から供給される前記エアを前記ダクト内に案内する案内片が突設されている、
作業装置。
【請求項2】
前記一対の開口縁の両方にそれぞれ前記案内片が突設されている、請求項1に記載の作業装置。
【請求項3】
前記一対の開口縁は、前記吸気用開口からの水平方向の距離が相対的に近い第1開口縁と、前記吸気用開口からの水平方向の距離が相対的に遠い第2開口縁とであり、
前記第1開口縁には、略水平方向に延びる第1案内片が突設され、
前記第2開口縁には、略垂直方向に延びる第2案内片が突設され、
前記第1案内片及び前記第2案内片は、前記吸気口に前記エアを導入するエア導入部を構成する、請求項2に記載の作業装置。
【請求項4】
前記第1案内片及び前記第2案内片によって構成される前記エア導入部は、前記吸気口の内方から外方に向かって拡がる断面形状を有する、請求項3に記載の作業装置。
【請求項5】
前記エア導入部は、内面が湾曲したベルマウス状の断面形状を有する、請求項4に記載の作業装置。
【請求項6】
前記作業装置は、部品実装機であり、
前記作業実施部は、前記可動子に設けられ、基板に対して電子部品を実装する作業を実施する実装ヘッドであり、
前記リニアモータは、前記実装ヘッドを駆動するXYロボットの一部を構成する、請求項1~5のいずれかに記載の作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、リニアモータによって移動する作業実施部を備えた作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板を生産するときの諸作業を実施する装置として、部品実装機などの作業装置が知られている。一般的に部品実装機は、基板搬送部、部品供給部、部品移載部等を備える。部品移載部は、吸着ノズルを保持する装着ヘッド及び装着ヘッドを駆動するヘッド駆動機構などにより構成されている。ヘッド駆動機構は、固定子及び可動子を有するリニアモータを用いて構成されている。可動子には、所定の作業を実施する作業実施部としての装着ヘッドが設けられている。
【0003】
この種の部品実装機では、リニアモータのコイルの温度上昇を抑える必要がある。このため、例えば、国際公開公報WO2019/058546号には、コイルに放熱部を密着させ、放熱部を送風機の風で空冷する構成を備えた部品実装機が開示されている。この部品実装機では、カバー内の作業空間にダクトが配置され、そのダクトが放熱部を覆っている。カバーは、吸気用開口と排気用開口とを有している。ダクトは、吸気用開口を向くように開口する吸気口と、排気用開口を向くように開口する排気口と、を有している。そして、送風機が吸気口から排気口にエアを圧送することにより、放熱部が空冷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/058546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のこの種の作業装置では、冷却に用いられて温度が上昇したエア(即ち廃熱を含む温風)を再び取り込まないように、カバーには吸気用開口と排気用開口とが別々に設けられている。そして、ダクトは、自身が吐き出した温風の吸い込みを極力避けるような風の流れとなるように設計されている。
【0006】
一般的に、送風機の風量を上げると、コイル上昇温度を下げることができる。また、送風機の風量を上げるには、ダクトの吸気口やダクト内の放熱部での圧力損失を低減させることが有効であり、とりわけ吸気口を広くして開口面積を大きくすることが有効と考えられる。しかしながら、吸気口を広くするとカバー内の温風を吸い込むリスクが高くなり、コイル冷却能力を低下させることになる。
【0007】
そこで本明細書は、放熱性能に優れた作業装置を提供するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、機台と、カバーと、リニアモータと、作業実施部と、を備える作業装置を開示する。カバーは、機台との間に作業空間を形成し、作業空間にエアを供給する吸気用開口と、作業空間からエアを排出する排気用開口と、を有する。リニアモータは、作業空間に配置され、固定子と、固定子に沿って移動する可動子と、を有する。作業実施部は、可動子に設けられ、所定の作業を実施する。可動子は、放熱部と、ダクトと、送風機とを有する。放熱部は、可動子及び作業実施部の少なくとも一方を構成する構成部材が発生する熱をエアに放散する。ダクトは、放熱部を覆うとともに、吸気用開口に対応して開口する吸気口と、排気用開口に対応して開口する排気口と、を有する。送風機は、吸気口から排気口にエアを流す。吸気口は、可動子の移動方向に沿って延びる一対の開口縁を有する。吸気口は、一対の開口縁の少なくとも一方に、吸気用開口から供給されるエアをダクト内に案内する案内片が突設されている。従って、この構成によると、吸気口を広くしなくても、吸気口の開口縁に突設された案内片によって、吸気用開口から供給されるエアがダクト内にスムーズに案内される。このため、圧力損失を低減させ、かつ送風機の風量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の部品実装機(作業装置の一例)を2台並設した状態を示す斜視図である。
【
図3】案内片を有する実施例のダクトを示す斜視図である。
【
図4】案内片が突設された実施例の吸気口を示す拡大正面断面図である。
【
図5】案内片が突設されていない従来装置の吸気口を示す拡大正面断面図である。
【
図6】案内片が突設された別の実施例の吸気口を示す拡大正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示する作業装置では、一対の開口縁の両方にそれぞれ案内片が突設されていてもよい。
【0011】
本明細書が開示する作業装置では、一対の開口縁は、吸気用開口からの水平方向の距離が相対的に近い第1開口縁と、吸気用開口からの水平方向の距離が相対的に遠い第2開口縁とであってもよい。第1開口縁には、略水平方向に延びる第1案内片が突設され、第2開口縁には、略垂直方向に延びる第2案内片が突設されていてもよい。第1案内片及び第2案内片は、吸気口にエアを導入するエア導入部を構成してもよい。このような構成によると、第1案内片及び第2案内片によって、ダクト内にスムーズにエアを流入させることができる。
【0012】
本明細書が開示する作業装置では、第1案内片及び第2案内片によって構成されるエア導入部は、吸気口の内方から外方に向かって拡がる断面形状を有していてもよい。このような構成によると、ダクト内によりスムーズにエアを流入させることができる。
【0013】
本明細書が開示する作業装置では、エア導入部は、内面が湾曲したベルマウス状の断面形状を有していてもよい。このような構成によると、吸気口の流路抵抗を効果的に下げることができ、ダクト内にスムーズにエアを流入させることができる。
【0014】
本明細書が開示する作業装置は、部品実装機であってもよい。作業実施部は、可動子に設けられ、基板に対して電子部品を実装する作業を実施する実装ヘッドであってもよい。リニアモータは、実装ヘッドを駆動するXYロボットの一部を構成してもよい。
【0015】
(実施例1)
以下、本発明の一実施形態に係る部品実装機11について図面を参照して説明する。ここでは、部品実装機11の水平幅方向(
図1の左右方向)をX軸方向とし、部品実装機11の水平長手方向(
図1の上下方向)をY軸方向とし、X軸及びY軸に垂直な鉛直方向(
図1の前後方向)をZ軸方向とする。
【0016】
まず、部品実装機11の全体構成について説明する。
図1は、作業装置の一種である部品実装機11を2台並設した状態を示す斜視図である。
図1の紙面左上から右下に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面右上から紙面左下に向かう方向がY軸方向(前後方向)、紙面上下方向がZ軸方向(高さ方向)である。部品実装機11は、機台2、カバー3、基板搬送部4、部品供給部5、及び2組の部品移載部6などによって構成されている。
図1では、右手前側の部品実装機11におけるカバー3及び部品供給部5を省略して描いている。
【0017】
機台2は矩形箱状に形成され、上方に開口を有している。機台2は、平面視で略矩形状の下枠21、中枠22及び上枠23を備えている。下枠21、中枠22及び上枠23は、積み重ねられた状態で互いに結合されている。中枠22の両側面には、基板Kを搬入及び搬出するための基板搬送開口部24が設けられている。そして、複数の部品実装機11が並設されることで基板搬送開口部24同士が対向し、装置間での基板Kの搬送が可能となる。下枠21及び中枠22の前面には、部品供給部5を装備するための部品供給開口部25が設けられている。
【0018】
カバー3は、機台2の上部の開口を覆う状態で機台2に取り付けられている。カバー3と機台2との間には、作業空間31が形成される。カバー3の前側には、装着作業の進捗状況を表示したり、オペレータの入力設定を受け付けたりするためのモニタ装置32が配設されている。カバー3は、吸気用開口34、排気用開口36及びエア導入開口38を2個ずつ有している。吸気用開口34は、カバー3のY軸方向の大部分の領域にわたって形成されている。また、排気用開口36も、吸気用開口34と同程度にY軸方向に長く形成されており、カバー3のY軸方向の大部分の領域にわたって形成されている。吸気用開口34は機台中央線CLに比較的近い位置に配置され、排気用開口36は機台中央線CLから離間した位置に配置されている。なお、吸気用開口34、排気用開口36及びエア導入開口38には、いずれも図示しない防塵用のフィルタが取り付けられている。
【0019】
基板搬送部4は、作業空間31の内部に位置した状態で機台2に設けられている。基板搬送部4は、2枚の基板Kを同時に搬送可能なレーンを2組有している。基板搬送部4は、レーンごとに搬送ユニット及び2組の位置決めユニットを有している。搬送ユニットは、一対のガイドレール及び一対のコンベアベルトなどによって構成されている。コンベアベルトは、2枚の基板Kを戴置した状態でガイドレールに沿って転動し、2枚の基板Kを部品実装位置に搬入出する。
【0020】
部品供給部5は、機台2の部品供給開口部25に交換可能に配設される。部品供給部5は、X軸方向に並んで配置された複数のフィーダ51を有する。複数のフィーダ51には、多数の部品を収納した供給リール52が装着される。
【0021】
2組の部品移載部6は、作業空間31の内部に位置した状態で機台2に設けられている。
図2は、部品実装機11の一部を示す正面断面図であって、部品移載部6の詳細な構成を説明するための図である。
図2に描かれた線CLは正面視での機台2の中央部を示す線(以下「機台中央線CL」とする。)であり、2組の部品移載部6は機台中央線CLを基準として左右対称に配置されている。
【0022】
次に、部品移載部6の構成について詳細に説明する。
図2等に示すように、作業空間31の機台中央線CL上には、中央支持板26が配置されている。中央支持板26は、機台2の中枠22の上部の前面から後面にわたって橋架されている。また、作業空間31において機台2の側面に近い位置には、側部支持板27が配置されている。側部支持板27も、中枠22の上部の前面から後面にわたって橋架されている。中央支持板26の下側には、中央レール28が配設されている。側部支持板27の下側には、側部レール29が配設されている。中央レール28及び側部レール29は、ともにY軸方向に沿って延設されている。
【0023】
部品移載部6は、リニアモータ56及び作業実施部9などによって構成されている。リニアモータ56は、作業空間31に配置されるとともに、固定子7及び可動子8からなる。固定子7は、Y軸方向に沿って延びる軸状の部材である。固定子7は、中央支持板26と側部支持板27との中間の位置であって、中央支持板26及び側部支持板27よりも若干高い位置に配置されている。固定子7は、前端が中枠22の前面上部に固定され、後端が中枠22の後面上部に固定されている。軸状の固定子7の外周面には、複数個のリング状の永久磁石57がY軸方向に列設されている。なお、永久磁石57のN磁極及びS磁極は、Y軸方向に交互に配置されている。
【0024】
可動子8は、可動本体部61、中央ガイド62、側部ガイド63、リニア駆動コイル64、放熱部65、ダクト66及び送風機67などを備えるとともに、固定子7に沿ってY軸方向に移動するように構成されている。可動本体部61は、中央支持板26及び側部支持板27よりも若干低い位置に配置されている。可動本体部61のY軸方向の長さは、固定子7の長さよりも小さくされている。
【0025】
中央ガイド62は、可動本体部61の機台中央線CLに近い側の上面に固定されている。中央ガイド62は、Y軸方向に移動可能な状態で中央レール28に係合されている。側部ガイド63は、可動本体部61の機台2の側面に近い側の上面に固定されている。側部ガイド63は、Y軸方向に移動可能な状態で側部レール29に係合されている。
【0026】
リニア駆動コイル64は、可動本体部61のX軸方向の中央位置の上部に配置されており、固定子7を周回するようリング状または筒状に形成されている。リニア駆動コイル64は、永久磁石57との位置関係に応じて電流の流れる向きが制御され、Y軸方向の推進力を発生する。この推進力により、可動子8がY軸方向に移動する。
【0027】
次に、可動子8の空冷式の放熱構造について説明する。放熱部65は、リニア駆動コイル64の上側に配置されている。放熱部65は、複数枚の放熱フィン71及び複数のヒートパイプ72によって構成されている。複数枚の放熱フィン71は、XY平面(水平面)に平行に配置されるとともに、Z軸方向(高さ方向)に積層して配置されている。複数のヒートパイプ72は、リニア駆動コイル64から立設され、複数の放熱フィン71を貫通するように配置されている。ヒートパイプ72の内部には水等の冷媒が循環される。その結果、リニア駆動コイル64で発生した熱が効率的に放熱フィン71に移送された後、エアに放散される。即ち、放熱部65は、可動子8及び作業実施部9の少なくとも一方を構成する構成部材が発生する熱をエアに放散する。
【0028】
ダクト66は、吸気ダクト73及び排気ダクト75などによって構成されている。
図2に示すように、吸気ダクト73は、正面視で箱形状に形成され、放熱部65を全体的に覆っている。吸気ダクト73の上部において機台中央線CLに近い側には、吸気口74が設けられている。吸気口74は、斜め上方に位置する吸気用開口34を向くように開口している。吸気口74の近傍には、作業空間31から吸気ダクト73に向かうエアの装置内部流を抑制する吸気側受け皿(図示省略)が設けられている。なお、本実施例では、吸気口74が吸気用開口34を向くように開口しているが、このような例に限られず、吸気口74が吸気用開口34に対応するように構成(即ち、吸気用開口34からのエアが吸気口74に流れるように構成)されていればよい。
【0029】
吸気ダクト73の機台中央線CLから離れた側の側面には、複数台の送風機67がY軸方向に並んで配置されている。送風機67は、吸気ダクト73の吸気口74から取り込んだエアを排気ダクト75の排気口76に向けて流すための機器である。本実施形態ではこのような送風機67を3台配置するが、台数は3台に限定されない。
【0030】
図2に示されるように、送風機67の機台中央線CLから離れた側には、排気ダクト75が配置されている。排気ダクト75は、正面視で略V字状に形成されている。詳述すると、排気ダクト75の送風機67に接する側の面は直立している。一方、排気ダクト75の送風機67とは逆側の面は、上に行くほど送風機67から離れる斜面となっている。排気口76は、この斜面の上部に設けられ、斜め上方に位置する排気用開口36を向くように開口している。排気ダクト75の上方の送風機67に近い側には、内部流抑制部材77が配置されている。内部流抑制部材77は、排気ダクト75内から作業空間31に向かうエアの装置内部流を抑制する。なお、本実施例では、排気口76が排気用開口36を向くように開口しているが、このような例に限られず、排気口76が排気用開口36に対応するように構成(即ち、排気口76からのエアが排気用開口36に流れるように構成)されていればよい。
【0031】
作業実施部9は、所定の作業を実施するために、可動子8を構成する可動本体部61の下側に設けられている。作業実施部9は、例えば、Y軸スライダ41、X軸スライダ42及び実装ヘッド43によって構成されている。Y軸スライダ41及びX軸スライダ42は、リニアモータ56とともにXYロボットを構成している。Y軸スライダ41は、可動子8と一体的にY軸方向に移動する。また、Y軸スライダ41は、図略のX軸レール及びX軸駆動機構を有する。X軸スライダ42は、X軸レールに装荷され、X軸駆動機構に駆動されてX軸方向に移動する。実装ヘッド43は、X軸スライダ42に交換可能に装備されており、電子部品の吸着動作を行う吸着ノズルを有している。実装ヘッド43は、上記XYロボットによりXY方向に移動することで、基板に対して電子部品を実装する作業を実施する。
【0032】
図3、
図4に示すように、吸気口74は、可動子8の移動方向(Y軸方向)に長い長方形状となるように形成されている。矩形状の吸気口74において、矩形の長辺に対応した部分である一対の開口縁E1、E2は、可動子8の移動方向(即ちY軸方向)に沿って延びている。吸気口74において、矩形の短辺に対応した部分である一対の開口縁E3、E4は、可動子8の移動方向に直交する方向(即ちX軸方向)に沿って延びている。一対の開口縁E1、E2の両方には、吸気用開口34から供給されるエアを、吸気口74を介して吸気ダクト73内に案内する案内片81、82がそれぞれ突設されている。具体的には、吸気用開口34からの水平方向の距離が相対的に近い(即ち機台中央線CLに近い)第1開口縁E1には、水平方向に延びる平板状の第1案内片81が突設されている。一方、吸気用開口34からの水平方向の距離が相対的に遠い(即ち機台中央線CLから遠い)第2開口縁E2には、垂直方向に延びる平板状の第2案内片82が突設されている。第1案内片81及び第2案内片82は、吸気ダクト73の吸気口74に一体形成された構造であってもよいが、別体形成されたものを取り付けた構造であってもよい。なお、第1案内片81及び第2案内片82は、吸気口74にエアを導入するエア導入部83を構成している。本実施形態のエア導入部83は、吸気口74の内方から外方に向かって拡がる逆ハ字状の断面形状を有している。
【0033】
このように構成された部品実装機11では、実装動作を開始すると、送風機67が駆動されるとともに、可動子8がY軸方向に移動する。吸気用開口34はY軸方向に沿って長く形成されているため、可動子8の移動位置に関わらず、吸気用開口34と吸気口74との斜め上下方向の位置関係は維持される。同様に、排気用開口36はY軸方向に沿って長く形成されているため、可動子8の移動位置に関わらず、排気用開口36と排気口76との斜め上下方向の位置関係は維持される。
【0034】
装置外部の低温のエアは、送風機67の吸気作用により、吸気用開口34を介して装置内に吸入される(
図4の矢印A1を参照)。吸入された低温のエアは、吸気用開口34の斜め下方に位置して開口する吸気口74を介して、吸気ダクト73の内部に取り込まれる(
図4の矢印A2を参照)。吸気ダクト73の内部に取り込まれたエアは、複数の放熱フィン71の相互間の隙間を流れるとともに、その際に放熱フィン71の熱がエアに受け渡される。放熱フィン71で熱を受け取って高温になったエアは、送風機67を通り抜けて排気ダクト75側に流入する。さらに、高温のエアは、排気ダクト75の内部を斜め上方に流れるとともに、排気用開口36を介して装置外部に排出される。以上のように放熱部8が空冷されることで、可動子8等が発生する熱がエアに放散される。
【0035】
図5は、従来装置における吸気ダクト73の吸気口74の構造を示している。
図5に示す従来装置は、吸気口74の開口縁E1、E2に案内片を備えていない。吸気口74の部分は、最も開口面積が狭くて窄まっている。従って、吸気口74での圧力損失が大きい構造となっている。この構造において送風機67の風量を上げるためには、吸気口74を広くして開口面積を大きくすることが考えられる。しかし、そのようにするとカバー3内の温風を吸い込むリスクが高くなり、コイル冷却能力が低下する可能性が生じる。それゆえ、放熱性能に優れた部品実装機11を提供することができないという問題がある。
【0036】
これに対して、本実施例の部品実装機11は、以下の優れた構成を備える。即ち、吸気口74は、一対の開口縁E1、E2の両方に、吸気用開口34から供給されるエアをダクト66内に案内する案内片81、82が突設されている。従って、本実施例によれば、吸気口74を広くしなくても、吸気口74の開口縁E1、E2に突設された案内片81、82によって、吸気用開口34から供給されるエアがダクト66内にスムーズに案内される(
図4の矢印A2を参照)。このため、圧力損失を低減させ、かつ送風機67の風量を増加させることができる。また、案内片81、82を突設した本実施例の構成であれば、コスト高になることも抑えられ、大きな設置スペースを必要とするといったこともない。ちなみに、本実施例の構成によれば、
図4の従来装置に比較してコイル上昇温度を2℃ほど下げることが可能となった。
【0037】
本実施例の部品実装機11では、吸気用開口34からの水平方向の距離が相対的に近い第1開口縁E1には、水平方向に延びる第1案内片81が突設され、吸気用開口34からの水平方向の距離が相対的に遠い第2開口縁E2には、垂直方向に延びる第2案内片82が突設されている。第1案内片81及び第2案内片82は、吸気口74にエアを導入するエア導入部83を構成しており、エア導入部83は吸気口74の内方から外方に向かって拡がる断面形状を有している(
図4参照)。このため、吸気用開口34から供給されるエアがダクト66内にいっそうスムーズに案内される構造とすることができる。よって、圧力損失を確実に低減させ、かつ送風機67の風量を確実に増加させることができる。
【0038】
以上、実施例1について説明したが具体的な態様は上記実施例1に限定されるものではない。上記の実施例1では、吸気口74が有する第1開口縁E1に第1案内片81を突設し、第2開口縁E2に第2案内片82を突設したが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、一対の開口縁E1、E2のうちのいずれか一方のみに案内片81、82を突設してもよい。即ち、第2案内片82を省略する一方で第1開口縁E1に第1案内片81を突設した構成としてもよく、あるいは第1案内片81を省略する一方で第2開口縁E2に第2案内片82を突設した構成としてもよい。
【0039】
上記の実施例1では、作業装置は部品実装機11であり、作業実施部9は基板に対して部品実装作業を実施する実装ヘッド43であり、リニアモータ56は実装ヘッド43を駆動するXYロボットの一部を構成するものであったが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、作業実施部9は、部品実装機11において部品実装作業以外の作業を実施してもよい。また、これとは別の実施例では、作業装置は、部品実装機11以外の対基板作業機(例えば、半田印刷装置、リフロー装置、基板検査装置など)であってもよい。
【0040】
上記の実施例1では、案内片81、82を吸気口74の開口縁E1、E2の全長にわたって形成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、案内片81、82を吸気口74の開口縁E1、E2の一部に形成してもよい。
【0041】
上記の実施例1では、吸気口74において可動子8の移動方向に沿って延びる開口縁E1、E2に案内片81、82を突設し、移動方向に直交する方向に沿って延びる開口縁E3、E4には案内片を特に突設していなかったが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、移動方向に直交する方向に沿って延びる開口縁E3、E4にも案内片を突設してもよい。
【0042】
上記の実施例1では、案内片81、82の角度や突出量を変更することができない構成であったが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、案内片81、82の角度や突出量が変更可能な構成としてもよい。
【0043】
上記の実施例1では、第1案内片81及び第2案内片82によって構成されるエア導入部83は、吸気口74の内方から外方に向かって拡がる逆ハ字状の断面形状を有していたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、エア導入部84は、内面が湾曲したベルマウス状の断面形状を有するものであってもよい(
図6参照)。即ち、第1案内片81及び第2案内片82は、平板状でなくてもよい。
【0044】
上記の実施例1では、部品実装機11が2組のリニアモータ56を備えていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、部品実装機11が1組のリニアモータ56のみを備えるものであってもよい。なお、リニアモータ56の構造や作業実施部9の構成は適宜変形することができる。例えば、放熱部65は作業実施部9で発生する熱を放熱するものであってもよい。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2: 機台
3: カバー
7: 固定子
8: 可動子
9: 作業実施部
11: 作業装置としての部品実装機
31: 作業空間
34: 吸気用開口
36: 排気用開口
43: 実装ヘッド
56: リニアモータ
65: 放熱部
66: ダクト
67: 送風機
74: 吸気口
76: 排気口
81: 案内片としての第1案内片
82: 案内片としての第2案内片
83、84: エア導入部
E1: 開口縁としての第1開口縁
E2: 開口縁としての第2開口縁