(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110188
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】運搬作業車両
(51)【国際特許分類】
A01M 1/00 20060101AFI20240807BHJP
A01M 21/02 20060101ALI20240807BHJP
A01B 39/18 20060101ALI20240807BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A01M1/00 Z
A01M21/02
A01B39/18 Z
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014623
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
【テーマコード(参考)】
2B034
2B043
2B121
【Fターム(参考)】
2B034AA07
2B034BA06
2B034BB01
2B034BC03
2B034HA12
2B034HB21
2B034HB27
2B034HB42
2B034HB43
2B043AA04
2B043AB01
2B043AB15
2B043BA09
2B043BB08
2B043DA17
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B121AA06
2B121AA11
2B121AA19
2B121BB14
2B121BB22
2B121BB31
2B121BB35
2B121EA26
2B121FA04
(57)【要約】
【課題】水田において害虫や雑草が発生し、農作物に被害を与えるが、水田の中は作業が困難である。農薬による対応では環境対応に、アイガモを利用した農法では飼育における課題がある。
【解決手段】
自動走行する運搬車に水田の異物を回収する機能や、水田の泥をかき回す機能を有することで対応する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の上面にソーラパネルと衛星測位装置、慣性測位装置を備え、
車体の下部で四方向に車輪を備え、ソーラパネルから得た電力を利用して自動走行、自動操舵を行い、
四方向の車輪の間に、車輪幅よりも幅の小さいバケット(12)を装着したハンドアームA(11)を配備し、採取した異物である害虫、石、ごみ等を保管するタンク(14)を車体の後方に配備し、タンク(14)は、ハンドアームB(26)により車体の外側にタンク(14)を裏返すように作動し、
あらかじめ設定された作業経路を走行しながら、圃場の水中にある異物を採取、保管し、所定の位置で、タンク(14)から異物を排出する機能を有した水田用運搬作業車両。
【請求項2】
ハンドアーム(11)の先端のバケット(12)は、底部はメッシュ状で構成され、水田の地面に接触する位置、又は近傍の高さ位置で固定し、走行することで、水田の地面表面の泥部をかき揚げ、水田内の水を濁らせる機能を有した請求項1の作業車両。
【請求項3】
圃場マップに、あらかじめ作業経路と、作業経路上でバケット(12)を利用して異物を取得する位置と、取得した異物を排出する位置を登録しておき、その位置ごとに所定の作業を行い、衛星測位装置、慣性測位装置で自車位置を確認しながら自動走行する請求項1又は、請求項2の作業車両。
【請求項4】
撮像装置(30)を配備し、あらかじめ登録された画像データと類似する異物を検出した場合、ハンドアームによる圃場の異物をすくい上げる作業を、あらかじめ設定された位置に追加で作業を行う請求項3の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田にある異物(害虫、石、ごみ等)を回収、運搬する無人作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農業害虫を採取する部と、害虫を壊滅させる部を備えた自車位置を取得し自動走行する作業車両がある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、作業車両の前方に大掛かりな搬送コンベアを配備し、車両の上方まで搬送し回転体を利用して粉砕する技術がある。
【0005】
しかし、採取用のコンベアを土壌付近に配備した場合では、圃場の害虫の採取のみではなく泥等もすくい上げ、動力負荷が大きいばかりではなく、泥が保護材となり害虫を壊滅させることが困難となり、また排出経路では、つまりが発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、必要な位置でメッシュ状のバケットを利用して異物のみを採取し、所定の位置に運搬し排出する作業に限定することで、ソーラパネルによる太陽光の動力で十分な動力を得ることが可能である。またメッシュ状のバケットを固定して移動する作業で、雑草の生育を抑制する機能も有しており、環境対応した防虫と雑草防除を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、次の技術手段により解決される。
【0008】
車体の上面にソーラパネルと衛星測位装置、慣性測位装置を備え、車体の下部で四方向に車輪を備え、ソーラパネルから得た電力を利用して自動走行、自動操舵を行い、四方向の車輪の間に、車輪幅よりも幅の小さいバケット12を装着したハンドアームA11を配備し、採取した異物である害虫、石、ごみ等を保管するタンク14を車体の後方に配備し、タンク14は、ハンドアームB26により車体の外側にタンク14を裏返すように作動し、あらかじめ設定された作業経路を走行しながら、圃場の水中にある異物を採取、保管し、所定の位置で、タンク14から異物を排出する機能を有する。
【0009】
第二の発明は、次の技術手段により解決される。
【0010】
ハンドアーム11の先端のバケット12は、底部はメッシュ状で構成され、水田の地面に接触する位置、又は近傍の高さ位置で固定し、走行することで、水田の地面表面の泥部をかき揚げ、水田内の水を濁らせる機能を有する。
【0011】
第三の発明は、次の技術手段により解決される。
【0012】
圃場マップに、あらかじめ作業経路と、作業経路上でバケット12を利用して異物を取得する位置と、取得した異物を排出する位置を登録しておき、その位置ごとに所定の作業を行い、衛星測位装置、慣性測位装置で自車位置を確認しながら自動走行する。
【0013】
第四の発明は、次の技術手段により解決される。
【0014】
撮像装置30を配備し、あらかじめ登録された画像データと類似する異物を検出した場合、ハンドアームによる圃場の異物をすくい上げる作業を、あらかじめ設定された位置に追加で作業を行う。
【発明の効果】
【0015】
第一の発明より、省力化で作動する構成とし、太陽光の利用で、圃場内に発生する害虫や異物を自動で除去することができる。
【0016】
第二の発明より、バケット12を利用して、水田用の除草作業機として利用することができる。
【0017】
第三の発明より、自動走行、自動操舵、自動作業を可能とする。
【0018】
第四の発明より、撮像装置で異物を検出して適切に採取する行程を追加するため、より精度高く、異物除去を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態における、作業車両の左前方からの斜視図。
【
図2】本発明の実施形態における、作業車両がバケット12で異物をすくい上げる状態を示す斜視図。
【
図3】本発明の実施形態における、作業車両がバケット12で異物をタンク14に保管する状態を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態における、作業車両がタンク14から異物を排出する状態を示す斜視図。
【
図5】本発明の実施形態における、タンク14の可動範囲を示す左側面図。
【
図6】本発明の実施形態における、バケット12の可動範囲を示す左側面図。
【
図7】本発明の実施形態における、左旋回時の操舵の状態を示す左前方からの斜視図。
【
図8】本発明の害虫駆除作業設定時の動作関連のフロー図
【
図9】本発明の除草運転設定時の動作関連のフロー図
【
図11】本発明の別形態で、駆除箱回収方式の作業機の外観図
【
図12】本発明の別形態で、風力で走行する農薬散布用の作業機の外観図
【
図13】本発明の別形態で、圃場の泥水化を行うドローンの外観図
【
図14】本発明の別形態で、圃場の泥水化を行うドローンの圃場での利用方法を示した圃場全体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明を説明する。
【0021】
図1~
図10に示す作業車両は、本実施形態の一例を示すものである。
【0022】
本発明の背景を説明する。
【0023】
田植え後の水田では、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)のような害虫が発生し、稲を食する被害があったり、圃場へ有害な異物が入り込み被害をもたらす場合がある。しかし、稚苗の時点で圃場内に作業機を入れることは、苗の育成を阻害する可能性が高い。こうした理由で、小型軽量で異物を除去できる作業機の要望が高い。
【0024】
一方、除草作業も多大な工数が必要である。スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)は雑草を食するため除草対応とする場合もあるが、前述のように稲への害もある。またアイガモ等の動物を利用した害虫駆除や除草対応もあるが、動物を利用することの難しさを声にするユーザも多い。
【0025】
こうした背景より、自動運転する害虫駆除、除草作業が可能な小型で軽量な作業車両のニーズがある。
【0026】
本発明の作業車両について説明する。
【0027】
作業車両の本体は、
図1の1に示すようにアルミ合金を主体とした軽量金属で構成されている。軽量のため省力の動力で走行することが可能である。またアルミ合金であるため、湿気の多い水田においても錆の発生の心配もなく、腐食による本体の劣化もない。
【0028】
本体の上面部にはソーラパネル2が配備されており、太陽光を受けることで電力を発生する。
図1に示すようにソーラパネル2は、平面ではなく湾曲している。これによって、太陽が傾斜しても、より多くの太陽光を受けるようになっている。また水滴や大気中の塵埃がソーラパネルに付着した場合、平面であれば体積してしまうが、本提案のように湾曲していることで水滴は流れ落ち、塵埃は剥がれ落ち、太陽光を安定して受け取るための構成としている。
【0029】
太陽光で発生した電力は、小型のコンデンサ等の蓄電装置で保管し、電動モータの電源として利用される方法が最も安価に構成できる。本発明では、自動走行と自動操作、自動作業を行うため、各モータの制御が必要であるため、小型のバッテリ(15)を備え、蓄電装置としている。
【0030】
作業車両は4輪車である。本体全体の上面をソーラパネルとしているため、ソーラパネルの端部を利用して4輪を固定することで、ソーラパネルに振動や応力が発生しないように走行用の車輪を配備している。
【0031】
走行用の車輪は、右側前車輪3と左側前車輪4、右側後ろ車輪5と左側後ろ車輪6がある。それぞれの車輪はインホイールモータが装着され、右側前車輪モータ7と左側前車輪モータ8、右側後ろ車輪モータ9と左側後ろ車輪モータ10である。
【0032】
また、
図2に示すように、フロントアクスル27に、右側前ダンパ22と左側前ダンパ23があり、また後方は、右側後ろダンパ24と左側後ろダンパ25があり、車体の振動や傾きに対応している。
【0033】
各ダンパと各インホイールモータは、各連結ケースを通じて接合されている。前輪においては、右側前ダンパ22は、右側前連結ケース22Aに挿入されているが、挿入部位で回転可能である。左側前ダンパ23は、左側前連結ケース23Aに挿入されているが、挿入部位で回転可能である。
【0034】
この構成により、
図7で示すように前輪の操舵を行うことができる。なお操舵においては、車輪の回転数を左右で変えることで操舵を可能とするものであり、各ダンパの挿入部位は回転制御は無く、回転フリーで対応している。
【0035】
右側前車輪3の回転数は、左側前車輪4の回転数よりも高くすることで、
図7の右側前車輪3Aと左側前車輪4Aの位置となり、左旋回を可能とする。なお後方車輪も回転数変更を行うことで4輪操舵を可能とする。本実施例では、後輪の回転数制御は行わず成り行き回転やフリー状態に制御することもできる。ただし圃場でのスリップを考慮するため、右側後ろダンパ24は、右側前連結ケース24Aに挿入されているが、挿入部位で回転可能である。左側前ダンパ25は、左側後ろ連結ケース25Aに挿入されているが、挿入部位で回転可能であり、微小な操舵を行うことでスリップ対応し直線走行を重視する。
【0036】
本体1の中央部の下部には、くの字に曲がるハンドアームA11を備えており、ハンドアーム用モータ13からワイヤを引くことで、各回転部のクラッチを作動させ、バケット12の回動とハンドアームAの動きを制御する。
図2は、作業車両がバケット12で異物をすくい上げる状態を示す図である。バケットAは車輪の最下点よりも下がり、圃場の地面にある異物を掬いとるように動く。
図3は、バケット12で異物をタンク14に保管する状態を示す図である。
【0037】
バケット12は、底部がメッシュ状となっており、圃場で掬い上げた場合、水や泥は流れ落ち、目標とした異物のみ採取できるようになっている。このバケットの水抜き穴は、メッシュ形状にかかわらず、丸穴でも角穴でも良いし、水分が透過できるような素材を部分的に用いる等の技術であり、バケットから水分や泥を取り出し、所定の大きさ以上の異物をバケット内に残すことができれば良い。
【0038】
バケット12では、この水や泥抜きのため、掬い上げてから一定時間は水切り時間の間、バケットをタンク14にすぐに投入しないで、保持する時間を持つ必要がある。または異物が飛び出さない程度に、バケット12を揺らす、振動させることで水切りを促進する制御も効果的である。
【0039】
ハンドアーム11の動きは、ハンドアーム用モータ13からワイヤの巻き上げ量による制御であるが、アームの支点に角度センサを設けることで、所定の位置である検出を行い、フィードバック制御する方法もある。
【0040】
続いてタンク14について説明する。バケット12で採取した異物を所定の登録された場所まで運ぶ間、このタンク14内で一時保管するものである。タンクには、さらに小さい水のみ抜ける穴があれば、走行中に徐々に水を排出し、軽量化することもできる。
【0041】
タンク14の可動について説明する。
図3においてタンク14Aで示す位置は、バケット12からの異物を取得する場合である。バケット12Aをタンク14の上方に持ち上げ、バケット12Aのバケットの縁を下方に向けることでバケット内にある異物を排出できる。バケット12Aの横幅は、タンク14Aの開口部よりも狭く、タンク14Aの開口部にバケット12Aを挿入する状態で確実にタンク内に保管する。
【0042】
図4では、作業車両がタンク14から異物を排出する状態を示している。タンク14はタンク14Bの位置に移動する。移動においてはハンドアームB26にある小型モータを回動させる。排出作業や排出位置においては、あらかじめ設定された位置があり、その位置に移動してから排出作業を行う。一般的には畦に排出位置を設定する場合が多く、排出位置へ車両の後方から侵入し、後ろ車輪を畦際まで着け、
図5のようにタンク14Aからタンク14Bに移動させる作業、タンクBを裏返すように作動させることで異物を排出する。
【0043】
採取する異物の対象は害虫が主体である。水田においては、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)がある。田植え後の稚苗を食するため害虫とされている。成虫の大きさは50~80mmになり、小石よりやや大きい程度になる。圃場では田植え直後に小石があることは少ないため、この大きさの物体は害虫と判断しても問題はない。巻貝としては歩行速度が非常に速いため、撮像装置で発見した場合は、すみやかに採取作業を行う必要がある。作業車両の移動方向に対しては、離れる方向に移動することが想定されるため、バケット12の動きとしては、進行方向の前方から掬い上げる方が確実に採取することができる。
【0044】
またタンク14に一時捕獲された場合でも、タンク内からはい上がる可能性も多いため、タンク14の開口部には折り返し部がある。
【0045】
異物としては、小石や相当する大きさのごみの採取も必要である。田植え直後には小石やごみも少ないが、以後の管理においては、道路沿いでは自動車による跳ね上げや、風に吹かれて圃場に異物が入り込む問題がある。ごみの中には有害物質もあり、早期に圃場から除去する必要があり、本発明の作業機は異物除去する機能にて、この対応も可能とする。
【0046】
図1、
図10に記載のように作業車両には、衛星測位装置16(
図10ではGNSSと表記)と、慣性測位装置17(
図10ではIMUと表記)が備えられている。これによって自車位置を緯度、経度を利用して確認する。また外部データとして圃場マップ35、いわゆる作業する圃場のマップデータをクラウド36を通じて携帯操作装置37へデータ入手する。この携帯操作装置はタブレットPCでも、携帯電話でも可能とするが、目的は作業車両のCPUに相当する、車両ECU32の演算の負荷を低減するためである。
【0047】
携帯操作装置37では、経路設定38を行うため、圃場マップ35を利用して、どのような経路を走行し、どの位置で停止し、どの位置で採取した異物を排出するかを登録するのである。この作業車両の操作を携帯操作装置37で行うため、遠隔操作を可能とするだけではなく、作業車両自体の演算負荷を小さくできる。
【0048】
【0049】
車体の上面にソーラパネルと衛星測位装置、慣性測位装置を備え、車体の下部で四方向に車輪を備え、ソーラパネルから得た電力を利用して自動走行、自動操舵を行い、四方向の車輪の間に、車輪幅よりも幅の小さいバケット12を装着したハンドアームA11を配備し、採取した異物である害虫、石、ごみ等を保管するタンク14を車体の後方に配備し、タンク14は、ハンドアームB26により車体の外側にタンク14を裏返すように作動し、あらかじめ設定された作業経路を走行しながら、圃場の水中にある異物を採取、保管し、所定の位置で、タンク14から異物を排出する機能を有している作業車両である。
【0050】
この作業車両は、異物、害虫の除去作業だけではなく、除草作業にも利用することができる。その構造について
図2、
図6で説明する。バケット12はメッシュ状に穴が開いている構造であるが、これは掬い上げたものから水切りを行うだけでなく、圃場の地面に接触するか、又は地面よりやや上方位置で水中に固定し、その状態で車両を移動させることで、圃場の泥をかき揚げ、泥水を発生させることが可能である。
図6のバケット12の位置は異物を採取する位置であり、バケット12Cの位置で固定し走行することである。
【0051】
バケット12Cの位置で走行することで、圃場の澄み切った水を泥水にでき圃場内の地面には太陽光が入り込む量が激減する。この作用によって圃場内の雑草の発生を抑止することができ、除草作業を改善することができる。
【0052】
バケット12のメッシュ状の効果であるが、水中で移動した場合は、水や泥が通り抜け、移動時の負荷が小さくなる。またメッシュ間を通過する水は渦状となり、泥を発生しやすい状態となり利点があり、第二の発明を容易とさせる。
【0053】
本提案のオプション設定部品と機能について説明する。この機能は第四の発明に関する内容であり、撮像装置30を配備し、あらかじめ登録された画像データと類似する異物を検出した場合、ハンドアームによる圃場の異物をすくい上げる作業を、あらかじめ設定された位置に追加で作業を行う内容である。
【0054】
図7に記載の全方向撮像装置(LIDAR)30により、周辺の画像や物体の距離間、色合いや物体の移動速度から登録されたデータ比較より、物体がどのようなものかを推定判断できる機能を有している。この装置の利用では、作業装置近傍の人や動物、畦、電柱、水路、その他の作業機、苗等の作物、圃場の位置も分析可能となる。画像においては、携帯操作装置37に配信することが可能であり、遠隔地で作業機の周辺画像をユーザは観察することができる。
【0055】
全方向撮像装置(LIDAR)30の位置は、車体の中央で高所である方がより撮像機能が向上する。撮像においては前方撮像では機体前方の一部を撮像しながら周辺を撮像する。同様に後方撮像では機体後方の一部を撮像しながら周辺を撮像する。この手法で作業車両との間隔が明確になる。またソーラパネル2の中央から上方にあることで、太陽光を遮ることによる発電の阻害にならない事や、ソーラパネル2の乱反射による全方向撮像装置(LIDAR)30の誤認識も防止できる。
【0056】
また障害物センサを各方面に配備することで、衛星測位装置16の通信が途絶えた場合でも、作業速度を調整して自動走行作業が可能な対応もできる。前方障害物センサ18、後方障害物センサ19、右側障害物センサ20、左側障害物センサ21を配備することで、障害物が検出されれば停止することで、安全運転を可能とする。
【0057】
図10では電装部品関連のブロック図を示している。前述の衛星測位装置(GNSS)16、慣性計測装置(IMU)17、全方向撮像装置(LIDAR)30、前方障害物センサ18、後方障害物センサ19、右側障害物センサ20、左側障害物センサ21は、センサECU31で管理している。一方、前述の携帯操作装置37では、圃場マップ35のデータをクラウド36から得ることや、クラウド36からすでに入手したデータをデータ記憶部39に登録してあり、作業車両とは通信ECU34を通じてデータを照合し合うようになっている。
【0058】
例えば、全方向撮像装置(LIDAR)30で撮像した画像や画像にある物体の動きを確認する場合、第二データ演算部35では、各センサの必要データのみを取り出す役目を行うのみであり、そのデータ分析は、携帯操作装置37のデータ演算部40で行う対応をしている。データ演算部40ではデータ記憶部39のデータとを人工知能により、近似データとくりかえし照合することで、作業車両の画像に映る物体の分析を行う。この演算は負荷が高いこともあり、外部の携帯操作装置37で行う。
【0059】
データはクラウド36から取得するが、クラウド36を介してユーザ方管理端末41にも接続され、データの相互やりとりだけではなく、作業機の異常信号の受け取りも行うことで、操作端末の作業車のみならず、情報共有することでデータの精度向上や緊急時対応も迅速にできる。
【0060】
車両ECU32は、車両の総合CPUであり、作業車両の各機能を制御している。代表的な制御機能では、ハンドアームA11の駆動装置、ハンドアームB26の駆動装置、走行駆動装置である各インホイールモータ7、8、9,10、そのモータから検出する走行速度検出装置、本提案では前輪が操舵する機構になっており、操舵センサ28、29が配備され、操舵角度の確認を行う。また操舵表示灯20、21の点灯制御も行う。
【0061】
この制御は、自動走行によるものが主体であるが、携帯端末装置37からの操作もあり、即時に対応する必要があり、通信回線では5Gを利用し、センサECU31と車両ECU32と通信ECU34、第二データ演算部35、バッテリマネージメントシステム(BMS)33はCAN通信にて行い、双方通信性の速度向上、応答性を高めている。
【0062】
前述の操舵センサ28は、
図7の右側前連結ケース22Aの内部に、操舵センサ29は、左側前連結ケース23Aの内部にあり、操舵角度を検出している。この操舵角度の検出によって、操舵表示灯31、32を点滅制御する。操舵表示灯は左右で色が異なっており、例えば右側の操舵表示灯31は赤、左側の操舵表示灯32は緑としておけば、遠方にいても、進行方向が確認できる。また操舵する場合は操舵側を点滅させることで、操舵のポイントが明確になり、排出作業との違いも遠方から確認しやすい。
【0063】
バッテリマネージメントシステム(BMS)33は、ソーラパネル2の太陽光からの電力をバッテリに蓄電する管理と、走行装置であるインホイールモータの制御を行っている。回転の速度、回転方向、ONとOFFを個別で制御することで、走行速度の調整、旋回制御、前進と後進、停止を行うことで走行経路どおりに走行できるように、モータの駆動を制御する。
【0064】
図8の害虫駆除作業設定時の動作、制御関連のフロー図にて、第三の発明を説明する。
【0065】
圃場マップに、あらかじめ作業経路と、作業経路上でバケット12を利用して異物を取得する位置と、取得した異物を排出する位置を登録しておき、その位置ごとに所定の作業を行い、衛星測位装置、慣性測位装置で自車位置を確認しながら自動走行する手法である。
【0066】
本発明の作業車両は、害虫駆除作業と除草作業を可能とする。害虫駆除作業設定S8-1では、その後の設定として4項目の設定を行う。
【0067】
作業条件の設定S8-2では、バケット12で異物を掬い上げる間隔を決定する。掬い上げは、連続的に行えば作業の終わった位置は害虫駆除を徹底することができるが作業に時間を有してしまう。また害虫が移動してしまい、採取する効率が低下する可能性がある。そのため一定間隔で作業を行う作業を何度か行うことで作業効率を高めるものである。作業車両は作業速度の設定S8-7ができる。車速を速めることの他に、その位置における掬い上げ回数の設定である。
【0068】
撮像装置の設定S8-3では、全方向撮像装置(LIDAR)30の設定を行う。検出物設定S8-8では目的とする物体の選定である。データ記憶部39には、代表的な目的物の画像が登録されている。例えばスクミリンゴガイを対象とするならば、幼虫から成虫までの画像や品種違い、色違いの画像を複数登録していることで、これらの画像と照合しあうことで、自動判別することができる。この画像整合と検出レベル設定S8-9によって感度調整を行うことで目的とする異物の検出を行うことができるため、定期距離、又は定期時間ごとに異物採取作業を行っている自動運転行程の算出S8-11を異物検出で作業を追加するかS8-12の設定を追加することで、定期作業に追加で検出作業を追加することで害虫除去作業の精度を高めることができる。
【0069】
なお検出レベルS8-9の設定には圃場マップの設定S8-4が必要となる。どの地区を重点的にするか等を細かく設定することで、作業効率を上げることができる。一律で高い検出精度にすると作業時間が長くなってしまうため、この設定は作業ノウハウの取り込みとしても重要となる。
【0070】
ドローンデータの利用設定S8-5もできる。作業前にドローンにて圃場の状態の撮像を行い、障害物や異物の検出を行うものであり、作業経路設定S8-10にて、より多くの手段で分析し自動運転行程の算出S8-13の精度を高めることができ、本発明の作業車両で同様な機能を有しているが、オプション機能の追加で効果を高めることもできる。
【0071】
このように標準作業では、定期的な位置による作業であるが、撮像装置やドローン等のオプション装置を利用することで、自動運転の補足ができる工程をS8-13~S8-18に取り込んでいる。
【0072】
作業経路の修正のパターンでは、タンク14の中が満杯になり、これ以上作業が継続できない場合も発生する。この場合は、作業経路の変更をユーザに連絡することもあり、S8-13の行程を行う。例えば、作業車両はタンク14が満量になった検出があると、ユーザタブレットに信号を送り、作業経路の変更連絡を送る。ユーザが変更を許可すると、登録された最短の排出先まで移動し、異物の排出を行い、その作業が終了次第、作業中断した位置まで戻り、作業を再開する。この場合は、作業中断した位置を登録しておく必要がある。作業は何度も行うことを標準とした設定であれば、作業中断した位置に戻らず、排出先から先の作業経路で作業開始することも可能である。
【0073】
別の作業経路の修正パターンは、ユーザからの強制的な変更対応であり、外部通信からの信号はないかS8-18にて監視対応している。
【0074】
【0075】
圃場マップの設定S9-3、ドローンデータの利用設定S9-4は、
図8の害虫駆除作業設定と同じ内容であるが、作業条件の設定S9-2の内容が異なる。作業高さの設定S9-5にて、バケット12の高さを設定し、泥起こしの基準を決めることができる。作業速度の設定S9-6では、車速の設定のみであるが、圃場マップS9-3を利用して、ここの領域は速度を速く、この領域は速度を遅く等の速度設定をおこなう。つまり速度それ自体が作業速度となる制御である。
【0076】
作業経路の変更は、圃場マップS9-3によるものか、ユーザの指示によるものであるが、S9-10~S9-16の行程で対応できる。
【0077】
本発明の別形態について説明する。
【0078】
図11は、圃場内に駆除箱101を、作業車両100を利用して、所定間隔で設置し、その後、作業車両100を利用して駆除箱101を回収することで害虫対応するものである。この発明での作業車両の構成では、中央の下方が開放されており、作業アーム103を利用して駆除箱101を回収し、駆除箱102の位置に積み重ね回収する動きを行う。図には記載は無いが、作業車両の上方にソーラパネルを装備し、各車輪のインホイールモータを駆動させる方法は、本実施形態の作業車両1と同様である。
【0079】
図12は、圃場内の除草として農薬を散布する作業車両110の外観図である。走行はフロート116で水田の水面に浮かぶ車両を、右ファン111と左ファン112の風の力を利用し、走行させるものである。右ファン111と左ファン112のファン回転数を変更し風の力を左右バランスで変更させることで、操舵する走行法である。したがって作業経路にそって確実に走行することは困難であり、除草剤の散布という作業で大まかに自動走行を行う。薬剤タンク113に薬剤を投入するとノズル114から薬剤散布する。フロントには障害物センサ115を備え、畦や他の作業機等を検出し衝突の回避を行う。
【0080】
図13はドローンを利用した除草作業車両である。ドローンでは風車を回転させ、風力を利用して浮き上がる。この風力は車体を浮かすほど強力であるため、この風力を利用して圃場の水面に当てることで、水面を波立たせ、圃場の泥を巻き上げ、泥水をつくるものである。
【0081】
構成は、二重のドローンの組み合わせである。泥発生用ドローン120は、下方の羽根121を回転させることで、泥を発生させる役目を行う。一方上方の飛行ドローン130は、上空を飛ぶためのドローンであり、泥発生用ドローン120を下方に連結させて飛ぶことが可能である。
【0082】
図14は、本発明の別形態で、圃場の泥水化を行うドローンの圃場での利用方法を示した圃場全体の斜視図である。左上にある図のように、飛行ドローン130の下方に泥発生用ドローン120を連結して飛行する。
【0083】
圃場で泥発生用ドローン120を切り離し、泥発生用ドローン120の羽根を回転させることで泥を発生させる。低回転であれば、泥発生用ドローン120は浮き上がることもなく使用できるが、作業を急ぐ場合は、泥発生用ドローン120も高回転で利用しなくてはならない。この場合、浮き上がりもあるため、飛行ドローン130は上に乗せたままで作業するか、場合によっては、飛行ドローン130の風向きを反転させ、圃場に押さえつける方向に運転することで、泥発生用ドローン120の浮き上がりを防止する。
【符号の説明】
【0084】
1 作業車両
2 ソーラパネル
11 ハンドアームA
12 バケット
14 タンク
15 バッテリ
16 衛星測位装置(GNSS)
17 慣性測位装置(IMU)
30 全方向撮像装置(LIDAR)
35 圃場マップ
37 携帯操作装置
39 データ記憶部