IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置 図1
  • 特開-半導体装置 図2
  • 特開-半導体装置 図3
  • 特開-半導体装置 図4
  • 特開-半導体装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110199
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20240807BHJP
   H03K 19/0185 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H03K19/0175 220
H03K19/0185
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014638
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】増田 章典
【テーマコード(参考)】
5J056
【Fターム(参考)】
5J056AA04
5J056BB21
5J056CC06
5J056CC09
5J056DD13
5J056DD29
(57)【要約】
【課題】複数のデジタル出力端子が短絡したときでも適切に対処できるようにした半導体装置を提供する。
【解決手段】複数のデジタル出力端子30oa、30ob、30ocにはそれぞれ優先度が設定されている。監視回路31がデジタル出力端子30oaを異常と判定しても、デジタル出力回路35bは、高い優先度のデジタル出力端子30obからデジタル信号を継続して出力し続ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される制御信号に基づいて複数のデジタル出力端子(30oa、30ob、30oc)からそれぞれデジタル信号を出力する複数のデジタル出力回路(35a、35b、35c)と、
前記デジタル出力端子の異常を検知する異常検知回路(33a、33b、33c)と、
前記異常検知回路から異常検知信号を入力し異常の有無を判定する監視回路(31)と、を備え、
前記複数のデジタル出力端子にはそれぞれ優先度が設定されており、
前記監視回路が異常と判定した前記デジタル出力端子の優先度よりも高い優先度の他のデジタル出力端子(30ob)から、前記デジタル出力回路(35b)は前記デジタル信号を継続して出力し続けるように構成される半導体装置。
【請求項2】
前記複数のデジタル出力端子は隣接して設置されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記監視回路により異常と判定されると、前記制御信号よりも前記優先度に基づいて前記デジタル出力回路の入力を制御する入力制御回路(32a、32b、32c)を備える請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
車両の走行制御に関係する前記デジタル出力端子の優先度は、前記車両の走行制御に関係しない前記デジタル出力端子の優先度より高く設定されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記優先度は、半導体装置本体の内部に備えるレジスタ(31a)に事前に格納される請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記優先度は、前記デジタル出力回路の内部の電流駆動能力に対応付けて設定される請求項1から5の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記デジタル出力回路はMOSトランジスタを組み合わせて構成され、
前記電流駆動能力は、前記MOSトランジスタのL/Wアスペクト比、又は、前記MOSトランジスタの接続数により変更される請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記異常検知回路(33a、33b、33c)は、前記デジタル出力回路の入力デジタル信号及び出力デジタル信号を比較するEXOR回路により構成される請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記異常検知回路が前記監視回路(31)へ異常通知すると、前記監視回路はマイコンや他の電子制御装置へ異常が発生したことを通知する請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両制御にはASICなどの半導体装置が用いられている。ASICは、Application Specific Integrated Circuit の略を示す。この種の半導体装置は、例えばデジタル出力端子がショートしても車両制御に影響しないように出力を保護している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の技術によれば、複数のデジタル出力端子の間が短絡したときに、デジタル出力端子へ印加する電位を、不定範囲を除く二値論理レベルの何れか一方のレベルに対応した電位に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-186881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、車両の走行制御に関係する比較的重要視すべきデジタル出力回路と、当該走行制御に関係しない重要度の低いデジタル出力回路とが構成されており、これらのデジタル出力回路のデジタル出力端子が半導体装置の中で近くに設置されることがある。
【0005】
これらのデジタル出力端子が短絡したとき、車両制御上で重要視すべきデジタル出力回路が出力不能となってしまい重要な制御ができなくなる虞がある。すなわち、近い端子間の短絡という軽微な異常に対し、重要な制御不能という事象を招く虞がある。隣接する端子間が短絡する可能性が比較的高いものの、隣接する端子間に限らず、離間していても短絡する可能性があり、この場合も同様の課題を生じる。
【0006】
本開示は、複数のデジタル出力端子が短絡したときでも適切に対処できるようにした半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、複数のデジタル出力回路、異常検知回路、及び監視回路を備える。複数のデジタル出力回路は、入力される制御信号に基づいて複数のデジタル出力端子からそれぞれデジタル信号を出力する。異常検知回路は、デジタル出力端子の異常を検知する。監視回路は、異常検知回路から異常検知信号を入力し異常の有無を判定する。複数のデジタル出力端子にはそれぞれ優先度が設定されている。監視回路が異常と判定したデジタル出力端子の優先度よりも高い優先度の他のデジタル出力端子から、デジタル出力回路はデジタル信号を継続して出力し続けるように構成される。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、複数のデジタル出力端子が短絡した場合であっても、優先度よりも高い他のデジタル出力端子からデジタル信号を継続して出力し続けることができる。このため、複数のデジタル出力端子が短絡した場合であっても適切に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における半導体装置の電気的構成図
図2】第1実施形態における優先度の設定内容を示すテーブル例
図3】第1実施形態における動作の流れを概略的に示すフローチャート
図4】第1実施形態における異常時の処理内容の流れを概略的に示すフローチャート
図5】第2実施形態における半導体装置の電気的構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の半導体装置の幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態では、各実施形態で同一又は類似に構成には同一又は類似の符号を付して説明を省略することがある。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図4を参照しながら説明する。図1に制御システム101を模式的に示している。この制御システム101は、半導体装置、半導体装置本体としてのASIC30を用いた電子制御装置10を含んで構成され、移動体(例えば車両)の制御に用いられる。電子制御装置10はECUと称される。ECUはElectronic Control Unit の略称である。
【0012】
電子制御装置10は、マイコン20及びASIC30を備え、マイコン20がASIC30を通じて電子制御装置10の外部に設置された各種の負荷、例えばモータ、LEDなどのインジケータを制御する。マイコン20は、図示しないがプロセッサ、記憶部20a、I/Oを備えたマイクロコンピュータ又はマイクロコントローラであり、記憶部20aに記憶されたプログラムにしたがって車両制御を主体的に実行する。
【0013】
ASIC30は、監視回路31、入力制御回路32、EXOR回路33a、33b、33c、フィルタ34a、34b、34c、及び、デジタル出力回路35a、35b、35cを備える半導体装置を示す。以下、デジタル出力回路35a、35b、35cを出力回路35a、35b、35cと略す。
【0014】
またASIC30には、複数のデジタル入力端子30ia、30ib、30ic、及び、複数のデジタル出力端子30oa、30ob、30ocが設けられる。デジタル入力端子30ia、30ib、30ic、デジタル出力端子30oa、30ob、30ocを、それぞれ入力端子30ia、30ib、30ic、出力端子30oa、30ob、30ocと略す。ASIC30は所定の半導体パッケージに構成されており、出力端子30oa、30ob、30ocは、互いに隣接して複数設置されるピンを示している。
【0015】
入力端子30ia、30ib、30icは、マイコン20から制御信号を入力する。制御信号は、ASIC30の入力制御回路32a、32cに入力される。入力制御回路32a、32cは、監視回路31の監視結果に基づいて制御信号を出力回路35a、35cに出力する。入力制御回路32a、32cは、監視回路31により異常と判定されると、マイコン20から入力される制御信号よりも優先度に基づいてデジタル出力回路35a、35cの入力を制御する。また、制御信号はASIC30の出力回路35bにそのまま入力されている。
【0016】
出力回路35aは、Pチャネル型のMOSトランジスタMpa及びNチャネル型のMOSトランジスタMnaを組み合わせたCMOSインバータにより構成される。出力回路35aの出力はデジタル出力端子30oaに接続されている。
【0017】
出力回路35cは、Pチャネル型のMOSトランジスタMpc及びNチャネル型のMOSトランジスタMncを組み合わせたCMOSインバータにより構成される。出力回路35bの出力はデジタル出力端子30obに接続されている。
【0018】
出力回路35bは、Pチャネル型のMOSトランジスタMpb、及び、Nチャネル型のMOSトランジスタMnb、Mn2bを組み合わせたCMOSインバータにより構成される。出力回路35cの出力はデジタル出力端子30ocに接続されている。出力回路35a、35b、35cはCMOSインバータにより構成されているため、原理的に入力デジタル信号を反転して出力デジタル信号とする。
【0019】
Nチャネル型の各MOSトランジスタMna、Mnb、Mnc、Mn2bのチャネル長L及びチャネル幅Wは互いにほぼ同一値に設計されている。Pチャネル型の各MOSトランジスタMpa、Mpb、Mpcのチャネル長L及びチャネル幅Wは互いに同一値に設計されている。このため、出力回路35a、35cの内部の電流駆動能力は同一値に設定されている。ここでの同一とは設計誤差等による誤差を含めて同一と称するものであり、必ずしも完全に一致している必要はない。
【0020】
他方、出力回路35bが下側のLレベル(グランドレベル)に電流を引く電流駆動能力が、隣接する出力回路35a、35cがLレベルに電流を引く電流駆動能力よりも高く設定されている。ここでは、出力回路35bの下側のMOSトランジスタMnb、Mn2bの接続数を、出力回路35aの下側のMOSトランジスタMnaの接続数、出力回路35cの下側のMOSトランジスタMncの接続数よりも多く設定している。電流駆動能力は、MOSトランジスタMna、Mnbの接続数を調整することで変更することに限られず、MOSトランジスタMna、Mnbのチャネル長L/チャネル幅Wのアスペクト比を調整することで変更してもよい。特にチャネル幅Wを調整することで電流駆動能力を変更設定するとよい。
【0021】
EXOR回路33a、33b、33cは、デジタル出力回路35a、35b、35cの入力デジタル信号及び出力デジタル信号を比較する異常検知回路として機能する。EXOR回路33a、33b、33cは、それぞれ出力回路35a、35b、35cの入力デジタル信号及び出力デジタル信号を入力して排他的論理和演算し、その演算結果をそれぞれフィルタ34a、34b、34cに出力する。フィルタ34a、34b、34cは、出力回路35a、35b、35cの入出力論理切替え時のノイズ除去用に設けられている。フィルタ34a、34b、34cの出力は監視回路31に入力されている。
【0022】
EXOR回路33a、33b、33cは、出力回路35a、35b、35cの入力デジタル信号及び出力デジタル信号の互いの論理レベルが一致しているときにLレベルを出力し、論理が互いに反転しているときにHレベルを出力する。出力回路35a、35b、35cはCMOSインバータにより構成されているため、正常動作していれば入力デジタル信号を反転して出力デジタル信号とする。
【0023】
このため、監視回路31は、EXOR回路33a、33b、33cの出力論理レベルがHレベルであれば正常と判定する。逆に、監視回路31は、EXOR回路33a、33b、33cの出力論理レベルがLレベルであれば異常と判定する。
【0024】
監視回路31はレジスタ31aをASIC30の内部に備えている。レジスタ31aは優先度のデータを格納する優先度格納レジスタである。優先度のデータは、ASIC30の内部のレジスタ31aに事前に格納されている。優先度のデータは、図2に示すように、ASIC30の出力端子30oa、30ob、30ocの各端子番号PIN1、PIN2、PIN3…に対応してそれぞれ設定される。
【0025】
ここでいう優先度は、車両制御に関する重要度を示すもので、車両制御の機能安全上で重要な端子であるか否かの指標に基づいて付与される。図2の例では、出力端子30obの重要度が一番高く「1」に設定されており、その次に出力端子30oa、30ocの重要度が「2」に設定されている。
【0026】
例えば、端子番号PIN2の出力端子30obは、緊急時のシャットダウン出力用に設けられる端子であり、モータ制御時に当該モータを駆動制御することを許可/禁止するためのデジタル信号(L/H)を出力するために設けられている。通常の車両制御中の標準値はLレベルに設定されている。
【0027】
端子番号PIN2の出力端子30obは、車両走行制御に必要な重要度の高い信号を出力する。マイコン20が、主体となりモータの制御を実行することになるが、マイコン20が暴走したときには、端子番号PIN2の出力端子30ocを通じて即時にモータの駆動制御を停止させる必要がある。このため、重要度が一番高く「1」に設定されている。
【0028】
また例えば、端子番号PIN1、PIN3の出力端子30oa、30ocは、シフトインジケータへの駆動出力のために設けられる。マイコン20は、シフトポジションセンサなどからシフト位置(パーキングP、バックR、ニュートラルN、ドライブD等)を入力すると、そのシフト位置に合わせてシフトインジケータのオン/オフ制御を実行する。
【0029】
マイコン20は、ASIC30の出力端子30oa、30ocを通じて対応したシフト位置のLEDを点灯/消灯させる。出力端子30oa、30ocは、シフト位置のLEDを点灯制御するために設けられる端子であり、車両走行制御に直接影響する端子ではない。このため、端子番号PIN1、PIN3の出力端子30oa、30ocは、重要度が比較的低く設定されている。
【0030】
優先度のデータは、出力回路35a、35b、35cの内部の電流駆動能力と対応付けて設定されることが望ましい。端子番号PIN2の出力回路35bの優先度は、端子番号PIN1,PIN3の出力回路35a、35cの優先度よりも高い。このため、出力回路35bが出力をロウサイド(Lレベル)に引く電流駆動能力は、出力回路35a、35cのハイサイド(Hレベル)に引く電流駆動能力よりも高く設定されている。
【0031】
ここでは説明の簡単化のため、「1」「2」の2つの優先度により説明したが、3つ以上の優先度を段階的に設定してもよい。例えば、出力回路35b→35a→35c(端子番号PIN2→PIN1→PIN3)の順に優先度が「1」→「2」→「3」と設定されている場合には、出力回路35b→35a→35cの順にLレベルに引く電流駆動能力を高く設定することが望ましい。
【0032】
入力制御回路32a、32cは、監視回路31の制御に基づいて制御信号を出力する。入力制御回路32a、32cは、監視回路31により出力端子30oa、30ob、30ocが全て短絡していないと判定されていれば制御信号をそのまま出力回路35a、35b、35cに出力する。
【0033】
例えば、入力制御回路32a、32cは、EXOR回路33a、33b又は33cにより異常が検知された場合、マイコン20から入力される制御信号よりも監視回路31から与えられる制御を優先して実行する。
【0034】
入力制御回路32a、32cは、監視回路31により出力端子30oa、30ob、30ocの何れか複数出力が短絡していると判定されていれば異常時の制御信号を出力する。入力制御回路32a、32cは、必要に応じてマイコン20の制御信号を遮断し、優先度に基づいて例えば二値レベルのうち何れかの固定レベル出力としたり、又は、ハイインピーダンス出力とする。
【0035】
ASIC30はマイコン20に接続されている。マイコン20は電子制御装置10の外部の車内ネットワーク40に接続されている。車内ネットワーク40には多数のECU50、60が接続されている。このうちECU60は表示装置70に接続されており、各種情報を表示装置70から報知できる。
【0036】
以下、出力端子30oa-30ob間が短絡したときの動作について、図3及び図4のフローチャートを参照しながら説明する。なお以下の説明では、端子番号PIN1の出力端子30oaと端子番号PIN2の出力端子30obが短絡した場合の動作を例示する。
【0037】
車両の通常走行中、マイコン20は、シフトインジケータをドライブポジションとして点灯させるため、端子番号PIN1に対応する入力制御回路32aに制御信号をLレベルとして出力する。このとき、入力制御回路32aは、入力される制御信号を出力回路35aにそのまま出力する。出力回路35aのMOSトランジスタMnaがオフすると共にMOSトランジスタMpaがオンする。このため、出力回路35aはLレベルを反転し出力端子30oaからHレベルを定常的に出力し続ける。
【0038】
他方、マイコン20は、モータ制御を実行する前にモータを駆動制御することを許可するため、端子番号PIN2に対応する制御信号をHレベルとして出力する。このとき、出力回路35bのMOSトランジスタMnb、Mn2bがオンしMOSトランジスタMpbがオフする。出力回路35bは、入力したHレベルを反転し、出力端子30obからLレベルを定常的に出力し続ける。
【0039】
このような状況下において、図3に示すように、ASIC30のEXOR回路33a、33b、33cは、デジタル出力回路35a、35b、35cのそれぞれの入力デジタル信号及び出力デジタル信号(入出力)をモニタする(S1)。
【0040】
EXOR回路33a、33b、33cは、それぞれ出力回路35a、35b、35cの入出力の論理が同じか否かを判定し(S2)、入出力が異なっていれば正常と判定しS1に戻り入出力のモニタを繰り返す。また入出力が同じであれば異常と判定する。
【0041】
ここで例えば、隣接する出力端子30oa-30obが短絡したと仮定する(図1の破線参照)。短絡直前には、出力回路35bのMOSトランジスタMn2、Mn2bがオンしていると共に、出力回路35aのMOSトランジスタMpaがオンしている。このため出力端子30oa、30obが短絡すると、MOSトランジスタMpa-Mn2、Mn2bを通じて貫通電流が流れる。
【0042】
電流駆動能力は、出力回路35bの方が出力回路35aよりも高い。このため、出力端子30oa、30obは共にLレベルの側の電位に変化する。するとEXOR回路33aが、出力回路35aの入出力を共にLレベルと判定することになり、EXOR回路33aが異常通知回路として機能し異常検出する(S3)。
【0043】
EXOR回路33aが異常通知回路として異常を生じた旨を示す異常通知信号を監視回路31に出力する(S4)。監視回路31は異常通知を受信し(S5)、レジスタ31aに端子番号PIN1からの異常通知を保存する。監視回路31がレジスタ31aから優先度のデータを取得する(S6)。監視回路31は、優先度のデータを参照した結果、優先度が「2」よりも高い端子番号PIN2のデジタル出力端子(ここでは30ob)を特定する。これは特定部31bとしての機能を示す。デジタル出力端子30obに接続されたデジタル出力回路35bは、マイコン20から入力される制御信号に基づくデジタル信号を継続してデジタル出力端子30obに出力し続ける。
そして監視回路31は、逆に優先度が「2」と同レベル又は優先度の低い端子番号PIN1、PIN3のデジタル出力端子(ここでは30oa、30oc)を特定する。
【0044】
監視回路31は、特定した端子番号PIN1、PIN3に対応した入力制御回路32a、32cやマイコン20に対し、優先度「2」の出力端子30oaに短絡異常が発生したことを通知する(S7)。すると、異常通知を受けた入力制御回路32a、32cは、監視回路31の異常通知信号を優先し、それぞれ出力回路35a、35cへ異常時の制御信号を出力する(S8)。
【0045】
入力制御回路32aは、制御信号の入力内容に拘わらず固定のHレベルを出力回路35aに入力させる。このときMOSトランジスタMpaはオフしMOSトランジスタMnaはオンする。出力回路35aはHレベルを反転して出力端子35oaにLレベルを出力する。これにより、出力回路35aの入出力論理を正しく調整でき、EXOR回路33aは監視回路31への異常通知を停止する。
【0046】
例えば、出力端子30oa-30obの間の短絡異常が継続し、前述の貫通電流が流れ続けると、熱によりASIC30の温度が上昇し、ASIC30が動作不能に陥いる虞がある。しかし、入力制御回路32aが固定のHレベルを出力回路35aに入力させるため、MOSトランジスタMpaをオフすることで貫通電流を即座に遮断できる。これによりASIC30の動作を保護できる。
【0047】
出力端子30oaはLレベルに維持され本来出力されるべき正常時のHレベルとは異なる。しかし、出力端子30oaから正常時のHレベルを出力できなくなったとしても、シフト位置が走行中に表示されないという軽微な影響に留まる。実際のシフト位置が変更されるわけではないため、車両の走行制御に影響するものではない。
【0048】
短絡異常時には、端子番号PIN2に対応した出力端子30obはLレベルを出力し続けることになる。したがって、たとえ出力端子30oa-30obが短絡したとしても、モータの駆動制御を意図せず禁止することがなくなり、重要度の高い車両制御を継続できる。
入力制御回路32cも同様に、制御信号の入力内容に拘わらず固定レベル(例えばHレベル)に変更出力するが、ここでは説明を省略する。
【0049】
他方、図3のS7において、ASIC30がマイコン20へ異常通知を出力すると、図4に示すように、マイコン20がASIC30から異常通知を受信する(S11)。マイコン20は、ネットワーク40に接続された他の電子制御装置50、60へ異常通知を出力する(S12)。
【0050】
他の電子制御装置50、60は、異常通知を受信する(S13)。これによりマイコン20や他の電子制御装置50、60へ異常が発生したことを通知できる。表示系のECU60は、車両走行に影響のない程度に異常発生した旨を表示装置70に表示させる。これにより、運転者に警告を報知できる(S14)。表示系の電子制御装置60が、スピーカを通じて車室内に警告音を報知するようにしてもよい。
【0051】
<重大な異常を生じた場合の動作>
その後、例えば何らかの重大な異常を生じ、マイコン20が端子番号PIN2の出力端子30obをHレベルに変更することで、ASIC30の外部に対し、モータの駆動制御を禁止指令する場合について説明する。
【0052】
マイコン20は、モータの駆動制御を禁止するため、端子番号PIN2に対応する制御信号をLレベルに変更出力する。この場合、マイコン20は、監視回路31へ端子番号PIN2に対応する制御信号としてLレベルを出力する。監視回路31は、レジスタ31aに対し異常検知した出力端子30oaの短絡異常の状態を記憶している。
【0053】
監視回路31は、端子番号PIN2に対応する制御信号を入力すると、出力回路35bへ制御信号としてLレベルを出力すると共に、入力制御回路32aに対しても端子番号PIN2に対応する制御信号を同期出力する。
【0054】
この場合、入力制御回路32aは端子番号PIN1に対応する制御信号の入力に拘わらずLレベルを出力回路35aに出力する。出力回路35aは出力端子30oaからHレベルを出力する。これによりASIC30は、出力回路35a及び35bにより出力端子30oa及び30obが同一のHレベルとなるように同期出力できる。
【0055】
これにより重大な異常を生じた場合においても、優先度が高い出力端子30obと同一のレベルの出力を出力端子30oaから同期出力できる。これにより、ASIC30に異常を生じさせることなく、モータの駆動制御の禁止指令を外部へ正確に出力できる。
【0056】
本実施形態によれば、複数の出力端子30oa、30ob、30ocにはそれぞれ優先度が設定されており、監視回路31が出力端子30oaを異常と判定したとしても、出力回路35bは優先度の高いデジタル出力端子30obからデジタル信号を継続して出力し続けるように構成されている。
【0057】
このため、距離の近い出力端子30oa-30obに短絡異常を生じたとしても、出力回路35bは、マイコン20から入力される制御信号に基づくデジタル信号を出力端子30obから出力し続けることができる。
【0058】
EXOR回路33aが監視回路31へ異常通知信号を出力すると、監視回路31はマイコン20や他の電子制御装置50、60へ異常が発生したことを通知している。このため、電子制御装置60が運転者に警告を報知できる。
【0059】
また、短絡異常を生じた際、例えば外部の電子制御装置50が容易に要因解析できる。機能安全上、重要な箇所でこの構成を採用することで、フェールセーフに至った要因解析を容易にできる。また故障診断に係るダイアグ情報として使用できる。また、異常原因を特定できるため、異常を検出できず、又は、異常原因が不明な場合と比較して車両設計を容易にできる。
【0060】
マイコン20は、個々の出力、すなわちASIC30の入力端子30ia、30ib、30icの電圧をモニタしなくてよくなり、この結果、マイコン20の処理負荷を軽減できる。
【0061】
優先度が最も高い出力端子30obに接続される出力回路35bは、制御信号を直接入力している。このため、第2実施形態で説明する入力制御回路32bを設ける必要がなくなり回路規模を縮小化できる。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態について図5を参照しながら説明する。図5に制御システム201を模式的に示している。この制御システム201は、半導体装置としてのASIC30を用いた電子制御装置10を含んで構成される。前述実施形態と同様に、出力端子30obの優先度が、他の出力端子30oa、30ocの優先度よりも最も高くレジスタ31aに設定される。
【0063】
また図5に示すように、本実施形態のASIC30は、出力回路35a、35b、35cについてロウサイド側への電流駆動能力をハイサイド側への電流駆動能力より高く設定している。また出力回路35bが出力端子30obをLレベルに引く電流駆動能力が他の出力回路35a、35cに比較して最も高く構成されている。また、ASIC30は、優先度の最も高い出力端子30obに対応した出力回路35bの前段に入力制御回路32bを設けている。
【0064】
入力制御回路32bは、入力制御回路32a、32cと同様の構成となっており、優先度に応じて制御信号を出力したり遮断したりする。また、短絡異常を生じた場合には、入力制御回路32bは、マイコン20から入力される制御信号よりも監視回路31の優先度による制御に基づいて出力回路35bの入力を制御する。このように構成されていても、前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0065】
(他の実施形態)
本開示は、前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
前述の例えば第1実施形態では、出力回路35bが、ロウサイド側のMOSトランジスタMnb、Mn2bの電流駆動能力をハイサイド側より高く構成した形態を説明したが、これに限定されるものではない。前述の第1実施形態では、通常時に重要度の高い出力端子30obをLレベルに保持するため、ロウサイド側の電流駆動能力を高く構成している。
【0066】
このため、逆に、重要度の高い出力端子30obを短絡異常時にもHレベルに保持する場合には、ロウサイド側よりもハイサイド側の電流駆動能力を高く構成するとよい。すなわち、例えば出力回路35bはMOSトランジスタMnbよりもMOSトランジスタMpbの接続数を多く並列接続するように構成するとよい。すると重要度の高い出力端子30obを短絡異常時にもHレベルに保持できる。
【0067】
監視回路31は、端子番号PIN1に対応したEXOR回路33aから異常通知を入力すると、優先度「2」と同レベル又は優先度の低い端子番号PIN1、PIN3に対応した入力制御回路32a、32cへ異常通知するようにしたが、これに限られるものではない。
【0068】
例えば、監視回路31は、異常検知を受けた端子番号PIN1に対応した入力制御回路32aのみに異常通知してもよく、その他の優先度「2」が同一の他の端子番号PIN3に対応する入力制御回路32cへ異常通知しなくてもよい。この場合、入力制御回路32cは、マイコン20から入力した制御信号をそのまま出力回路35cに出力し続けることになる。
【0069】
監視回路31はAND回路により構成されており、異常状態を端子出力してもよいし、SPI等のシリアル通信ラインから異常をマイコン20、等へ通知してもよい。
【0070】
マイコン20又は監視回路31が、出力端子30oa、30ob、30ocの全ての2つの組合せの間(例えば30oa-30ob間、30ob-30oc間、30oc-30oa間)の短絡時の対応動作、挙動を全てテーブルデータとしてメモリ(記憶部20a又はレジスタ31a)に記憶し、優先度に応じた対応を事前登録しておいてもよい。
【0071】
例えば、第2実施形態では出力回路35a、35b、35cが、ロウサイド側への電流駆動能力をハイサイド側への電流駆動能力より高く設定した形態を示したが、これに限られるものではない。前述のように、マイコン20又は監視回路31が、優先度に応じた対応を事前登録していれば、ロウサイドに引く電流駆動能力とハイサイドの電流駆動能力とを同等に設定してもよい。
【0072】
「ロウサイドへの電流駆動能力がハイサイドの電流駆動能力よりも強いデジタル出力」の前提が無く、ロウサイドへの電流駆動能力がハイサイドへの電流駆動能力と同等である場合、短絡時には出力端子30oa、30ob、30ocは中間の不定電位となることがある。その場合であっても、事前に上記のように短絡異常時の挙動をテーブルデータとして格納しておけば、監視回路31は、優先度及びEXOR回路33a、33b、33cの入力情報に基づいて出力回路35a、35b、35cの入力を制御することができ、車両の走行制御への影響を与えなくすることができる。
【0073】
本開示に記載の電子制御装置10、50、60及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の電子制御装置10、50、60及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0074】
もしくは、本開示に記載の電子制御装置10、50、60及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。つまりプロセッサ等が提供する手段及び/又は機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。たとえばプロセッサが備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、ひとつ以上のICなどを用いて実現する態様が含まれる。
【0075】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0076】
図面中、30はASIC(半導体装置、半導体装置本体)、30oa、30ob、30ocはデジタル出力端子、31は監視回路、31aは優先度格納レジスタ(レジスタ)、32a、32b、32cは入力制御回路、33a、33b、33cはEXOR回路(異常検知回路)、35a、35b、35cはデジタル出力回路、Mpa、Mna、Mn2a、Mpb、Mnb、Mn2b、Mpc、Mnc、Mn2cはMOSトランジスタ、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5