(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110204
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】包装用フィルムおよびこれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240807BHJP
F24C 7/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B65D81/34 U
F24C7/02 551H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014647
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】594146180
【氏名又は名称】中本パックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】小代 義貴
【テーマコード(参考)】
3E013
3L086
【Fターム(参考)】
3E013BB06
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF42
3L086AA20
3L086BA04
3L086DA01
(57)【要約】
【課題】電子レンジで加熱した際に、適切に蒸気を排出することができる包装用フィルムおよびこれを用いた包装容器を提供する。
【解決手段】内容物を気密に封止して収容するための包装用フィルム3は、包装用フィルム3は、二軸延伸フィルムにより構成された基材層31と、基材層31の裏面側に配置されたシーラント層32と、基材層31およびシーラント層32の間に介在する接合層33と、少なくとも基材層31の表面側の一部において基材層31のガラス転移点以上で加熱することで形成された非晶質脆弱部41と、マイクロ波発熱インキにより構成されたマイクロ波発熱部42とを有しており、非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とは、基材層31の厚み方向から見て互いに重なるように配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を気密に封止して収容するための包装用フィルムにおいて、
二軸延伸フィルムにより構成された基材層と、
前記基材層の裏面側に配置されたシーラント層と、
前記基材層および前記シーラント層の間に介在する接合層と、
少なくとも前記基材層の表面側の一部において当該基材層のガラス転移点以上で加熱することで形成された非晶質脆弱部と、
マイクロ波発熱インキにより構成されたマイクロ波発熱部とを有しており、
前記非晶質脆弱部と前記マイクロ波発熱部とは、前記基材層の厚み方向から見て互いに重なるように配置された
包装用フィルム。
【請求項2】
前記非晶質脆弱部および前記マイクロ波発熱部は前記基材層の厚み方向から見て長手方向を有する矩形状または線状に形成され、
前記非晶質脆弱部は、短手方向において、前記基材層の厚み方向から見て前記マイクロ波発熱部の領域の範囲内に収まるように形成された
請求項1記載の包装用フィルム。
【請求項3】
前記マイクロ波発熱部の短手方向の寸法が、前記非晶質脆弱部の短手方向の寸法の2倍以上である
請求項2記載の包装用フィルム。
【請求項4】
前記マイクロ波発熱部の短手方向の寸法が、前記非晶質脆弱部の短手方向の寸法の5倍以上である
請求項3記載の包装用フィルム。
【請求項5】
前記基材層に前記非晶質脆弱部を含む凹凸部が形成され、
前記凹凸部の厚みの最大値および最小値は、前記基材層における前記凹凸部以外の部分の厚みに対して設定される所定の範囲内に収まる
請求項4記載の包装用フィルム。
【請求項6】
前記非晶質脆弱部は、前記基材層の表面側の一部に形成された
請求項1ないし5のいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項7】
請求項1記載の包装用フィルムにより開口部が密封された
包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジで加熱調理可能な食品を包装する食品用の包装用フィルムおよびこれを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の内容物を密封して収容する樹脂製の包装容器において、マイクロ波加熱装置(たとえば電子レンジ)で、未開封で密封された状態のまま加熱可能なものが知られている。このような包装容器においては、電子レンジで加熱した際に、食品から発生する蒸気や内部空気の熱膨張により包装容器の内部空間の圧力(内圧)が上昇する。従来、電子レンジで加熱可能な包装容器の分野においては、内圧上昇により包装容器が破裂することを防止するため、種々の蒸気抜き手段(蒸通機構)が提案されている。
【0003】
このような蒸通機構としては、容器の蓋材としての積層フィルムに、通常時(非加熱時)に貫通しない程度の深さの凹部を有し、他の部分よりも厚みが薄い脆弱加工部を形成し、包装容器内部の内圧が上昇した場合に脆弱加工部の一部を破断させて蒸通する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上述のような従来の積層フィルムでは、非加熱時に外力を受けた場合に脆弱加工部から破断することがあり、耐衝撃性について改善の余地がある。また、従来の積層フィルムでは、加熱時に脆弱加工部が破断されずに電子レンジ内で包装容器が破裂するおそれがあり、マイクロ波加熱時に適切に蒸気を排出することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、非加熱時の耐衝撃性を確保するとともに、マイクロ波加熱時に適切に蒸気を排出することができる包装用フィルムおよびこれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、内容物を気密に封止して収容するための包装用フィルムにおいて、二軸延伸フィルムにより構成された基材層と、前記基材層の裏面側に配置されたシーラント層と、前記基材層および前記シーラント層の間に介在する接合層と、前記基材層の表面側の一部において当該基材層のガラス転移点以上で加熱することで形成された非晶質脆弱部と、マイクロ波発熱インキにより構成されたマイクロ波発熱部とを有しており、前記非晶質脆弱部と前記マイクロ波発熱部とは、前記基材層の厚み方向から見て互いに重なるように配置された包装用フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、非加熱時の耐衝撃性を確保するとともに、マイクロ波加熱時に適切に蒸気を排出することができる包装用フィルムおよびこれを用いた包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0011】
図1は、包装容器1の概略断面図であり、
図2は、包装容器1の平面図である。
図1および
図2に示すように、包装容器1は、食品等の内容物を包装する容器であって、内容物を収容する収容体である容器2と、容器2と一体となって内容物を覆い、内容物を気密に封止して収容するための包装用フィルム3(蓋材フィルム)とで構成されている。
【0012】
容器2は、所定の深さを有して上部が開放された形状をなし、上端面にフランジ部23を有している。具体的には、容器2は、略板状の底部21と、底部21の端縁から上方に延びる壁部22と、壁部22の上端縁により形成された上端開口部25において水平方向に所定の幅寸法の広さを有するフランジ部23とを有する。底部21は、全体として平坦な水平板状とすることもでき、あるいは、湾曲した湾曲板状とすることもできる。また、底部21および壁部22には貫通孔が設けられておらず、かつ、底部21と壁部22とは隙間なく連続して形成されている。すなわち、容器2は、上端開口部25以外には隙間が設けられておらず、上端開口部25を覆うことによって気密に封止される。
【0013】
フランジ部23は、上端開口部25の全周に連続して設けられている。また、本実施形態では、フランジ部23の上面は、略同一平面上に形成されている。すなわち、本実施形態では、フランジ部23の上面は略平坦面である。なお、フランジ部23の上面は、後述する包装用フィルム3が追従可能な程度であれば湾曲していてもよい。
【0014】
容器2は、耐熱性の樹脂素材で形成されている。耐熱性の樹脂素材としては、140℃程度の熱に耐えうるものであれば特に限定される必要はなく、たとえば、耐熱性樹脂の一種であるポリプロピレンや耐熱性ポリスチレンを用いることができる。
【0015】
包装用フィルム3は、可撓性を有するシート状に形成されている。包装用フィルム3の大きさは、少なくとも容器2のフランジ部23を覆う程度の大きさ(フランジ部23に囲まれる領域と同じ大きさ)か、あるいは、フランジ部23に囲まれる領域よりも大きい。このため、包装用フィルム3は、容器2の上端開口部25を完全に覆うことができる。すなわち、包装用フィルム3は、上端開口部25を密封することができる。
【0016】
なお、包装用フィルム3の輪郭形状は、容器2の形状(平面視におけるフランジ部23の形状)に合わせて適宜の形状とすることができる。本実施例の包装用フィルム3は、平面視略正方形に形成される。
【0017】
包装用フィルム3は、包装用フィルム3の表面(容器2のフランジ部23と対向する対向面の反対側の面)を構成する基材層31と、基材層31の裏面側(容器2側)に配置されたシーラント層32と、基材層31およびシーラント層32の間に介在し、基材層31およびシーラント層32を接合する接合層33とを備える。基材層31およびシーラント層32は、薄膜状(フィルム状)に形成されており、接合層33の厚みは、基材層31およびシーラント層32の厚みを超えない程度に設定されている。
【0018】
基材層31は、耐熱性および可撓性を有する樹脂素材を機械的に引き延ばして生成された二軸延伸フィルム(結晶性二軸延伸フィルム)により形成されている。基材層31の素材としては、たとえば、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリプロピレン、またはこれらを複合した素材を使用することができる。
【0019】
基材層31の厚みは、素材にもよるが、耐衝撃性、透明性、可撓性等を考慮して、一般的に食品包装で使用されるフィルムにおいて基材となる層の厚みとすることができる。基材層31の厚みの下限は、5μm以上とすることができ、8μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましい。基材層31の厚みの上限は、30μm以下とすることができ、20μm以下とすることが好ましく、15μm以下とすることがより好ましい。
【0020】
シーラント層32は、可撓性を有する樹脂素材で形成されている。シーラント層32の素材は、容器2(フランジ部23)を形成する素材に対して、ヒートシールによって熱溶着可能な樹脂素材を用いることができる。シーラント層32の素材としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらを複合した樹脂素材を使用することができる。また、シーラント層32は、イージーピール性(易開封性)を有することが好ましい。これにより、シーラント層32を容器2から剥離して包装容器1を簡単に開封することができる。
【0021】
シーラント層32の厚みは、一般的に食品包装で使用されるフィルムにおいてシーラント材となる層の厚みとすることができる。シーラント層32の厚みの下限は、10μm以上とすることができ、20μm以上とすることが好ましく、30μm以上とすることがより好ましい。シーラント層32の厚みの上限は、100μm以下とすることができ、80μm以下とすることが好ましく、60μm以下とすることがより好ましい。
【0022】
また、シーラント層32の輪郭形状は、基材層31の輪郭形状と同じであることが好ましく、さらに、シーラント層32の輪郭と基材層31の輪郭とが一致するように重なって積層されていることが好ましい。
【0023】
接合層33は、接着剤により構成される層であり、基材層31とシーラント層32と互いの厚み方向において積層するように接合(接着)する。接合層33を構成する接着剤は、たとえば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、およびこれらの複数を混合した接着剤を用いることができる。
【0024】
なお、基材層31およびシーラント層32は、熱処理による押し出しラミネート等により接合(接着)することもできるし、あるいは、接合層33を加熱不要の接着剤で構成し、熱処理せずに基材層31およびシーラント層32を接合(ドライラミネートなど)することもできる。
【0025】
包装用フィルム3は、包装容器1の製造完了時には、外周付近の一部が全周にわたって容器2(接合対象)のフランジ部23に接合(接着)されている。すなわち、包装用フィルム3は、フランジ部23に対向する部分が容器2に接合される。この包装用フィルム3の下面の一部とフランジ部23の上面全面との接合部分が接合領域34となる。容器2と包装用フィルム3とが接合されることによって、底部21および壁部22により規定される容器2の内部空間11が包装用フィルム3によって閉じられて密閉された状態となる。
【0026】
また、包装容器1の製造完了時には、加熱されることによって水分および油分の少なくとも一方を放出する調理済みまたは半調理状態の食品(内容物)が内部空間11に収容されている。
【0027】
フランジ部23と包装用フィルム3の接合方法は、包装用フィルム3の下面(容器2のフランジ部23と対向する対向面)を構成するシーラント層32の一部を、熱で溶かして接合する溶着(ヒートシール)とすることが好ましい。包装用フィルム3を加熱するための加熱部材としては、インパルスシーラー等を用いることができる。なお、接合方法はこれに限らず、超音波振動を包装用フィルム3に与えて接着する超音波シールとするなど、公知の接合方法を適宜採用することができる。
【0028】
接合領域34の接合力(接着力、シール強度)は、人の手で包装用フィルム3を容器2から剥がそうとした際に、強く力を入れて(一方の手で容器2を引っ張りながら他方の手で包装用フィルム3を容器2と逆方向に引っ張って)剥がせる程度の強さである。
【0029】
たとえば、接合領域34の接合力の下限は、2N/cm以上とすることができ、3N/cm以上とすることが好ましく、4N/cm以上とすることがより好ましく、5N/cm以上とすることが好適である。接合領域34の接合力の上限は、20N/cm以下とすることができ、15N/cm以下のとすることが好ましく、10N/cm以下とすることがより好ましく、8N/cm以下のとすることが好適である。
【0030】
上記のような包装容器1は、電子レンジで包装容器1ごと(包装容器1を開封せずに)内容物を加熱調理することができる。これに伴い、
図2に示すように、包装用フィルム3には、食品から発生する蒸気や熱膨張した内部空気を内部空間11から排出(排気)するための蒸気抜き手段(蒸通部)40が設けられている。
【0031】
図3は包装用フィルム3のA-A矢視断面図である。
図4は包装用フィルム3の拡大平面図である。
図3および
図4に示すように、蒸通部40は、少なくとも、包装用フィルム3のうち、接合領域34の内側に全体が収まるように配置されている。すなわち、蒸通部40は、包装用フィルム3のうち、内部空間11と外部空間とを隔てている部分に設けられている。
【0032】
蒸通部40は、基材層31の表面側の一部に設けられ、基材層31の他の部分よりも脆弱な非晶質脆弱部41と、非晶質脆弱部41の裏面側に配置されたマイクロ波発熱部42とを有している。具体的には、マイクロ波発熱部42は、基材層31に隣接するように配置されている。
【0033】
非晶質脆弱部41は、二軸延伸フィルムにより形成された基材層31の表面側の一部をガラス転移点以上に加熱し、基材層31の延伸配向を消失させることで形成される。したがって、非晶質脆弱部41は、基材層31の表面側の一部に形成された無配向部ということもできる。また、非晶質脆弱部41は、半透明または略透明である。基材層31の他の部分は、延伸配向が残っている結晶部分ということもできる。非晶質脆弱部41を形成する際の加熱温度の下限は、100℃以上とすることができ、130℃以上とすることが好ましく、150℃以上とすることがより好ましい。また、非晶質脆弱部41を形成する際の加熱温度の上限は、300℃以下とすることができ、280℃以下とすることが好ましく、260℃以下とすることがより好ましい。非晶質脆弱部41を形成する際の加熱温度を上記の温度範囲にすることによって、接合層33および後述するマイクロ波発熱部42にその機能を失わせるような熱ダメージを与えることなく、非晶質脆弱部41を適切な範囲に形成することができる。なお、非晶質脆弱部41は、加熱処理するだけであるので、蒸通部40の全体(非晶質脆弱部41およびこれの裏面側の結晶部分)の厚みを意図的に薄くするものではない。この点において、非晶質脆弱部41は、切り欠き加工や傷加工を施したものとは全く異なる。したがって、蒸通部40の厚みは、蒸通部40以外の部分に対して薄くならない(厚みが変わらない)ことが好ましい。なお、非晶質脆弱部41は、二軸延伸フィルムにより形成された基材層31の表面側の全部をガラス転移点以上に加熱し、基材層31の延伸配向を消失させることで形成されていてもよい。
【0034】
なお、非晶質脆弱部41を形成する際の加熱方法は、特に限定されず、種々の公知の加熱方法を用いることができる。たとえば、非晶質脆弱部41を形成する際の加熱方法としては、熱板加熱、インパルス加熱、レーザー光加熱、近赤外線加熱等の加熱方法を用いることができる。特に、効率よく局所的に加熱することができるインパルス加熱またはレーザー光加熱を採用することが好ましい。
【0035】
レーザー光加熱におけるレーザー光の種類としては、炭酸ガスレーザーを用いることが好ましい。炭酸ガスレーザーは、基材層31に使用される樹脂素材に対して比較的吸収性が高いからである。なお、基材層31にレーザー光の吸収性を向上させるレーザー光吸収材を混ぜるか、あるいは基材層31にレーザー光吸収材をコーティングしておいてもよい。レーザー光吸収材はレーザー光の種類に合わせて適宜適切な材料を選択することができる。
【0036】
非晶質脆弱部41の厚み(基材層31の表面からの深さ)t2の寸法は、基材層31の厚みt1の寸法よりも小さく、非晶質脆弱部41は、基材層31を貫通することはない。すなわち、基材層31において非晶質脆弱部41が設けられた部分では、裏面側に配向を維持している結晶部分が残っている。したがって、基材層31において非晶質脆弱部41が設けられた部分(蒸通部40)は、蒸通部40以外の部分よりは脆弱ではあるものの、或る程度の強度を有している。
【0037】
基材層31において非晶質脆弱部41が設けられた部分の強度は、非加熱時において他の物品が積載されるか、あるいは、人間の手で把持されるなど、食品の包装容器として通常想定される外力が加わったとしても破断しない程度の強度であって、かつ、マイクロ波加熱時に接合領域34よりも先に破断する(接合領域34よりも弱い)程度の強度である。たとえば、耐衝撃性の観点で言えば、基材層31において非晶質脆弱部41が設けられた部分の強度は、包装容器1を気密に封止し、内部空間11に600mlの内容物(内水200ml)を収容した状態で1mの高さから落下させた耐衝撃試験において破断等が無い程度の強度である。
【0038】
非晶質脆弱部41の厚みt2の下限は、基材層31の厚みt1の50%以上とすることができ、基材層31の厚みt1の60%以上とすることが好ましく、基材層31の厚みt1の80%以上とすることがより好ましい。非晶質脆弱部41の厚みt2の上限は、基材層31の厚みt1の100%以下とすることができ、基材層31の厚みt1の90%以下とすることが好ましく、基材層31の厚みt1の80%以下とすることがより好ましい。
【0039】
また、非晶質脆弱部41の裏面側の結晶部分の厚みt3は、少なくとも1μm以上とすることができ、2μm以上とすることが好ましく、3μm以上とすることがより好ましい。このようにすれば、非加熱時の耐衝撃性を確保することができる。また、非晶質脆弱部41の厚みt2と非晶質脆弱部41の裏面側の結晶部分の厚みt3とを合計した厚み(t2+t3)、すなわち蒸通部40における基材層31の厚みは、蒸通部40以外の部分の基材層31の厚み(基材層31の基本厚さ)t1の50%以上とすることができ、基材層31の基本厚さt1の60%以上とすることが好ましく、基材層31の基本厚さt1の80%以上とすることがより好ましい。また、非晶質脆弱部41の形成過程において非晶質脆弱部41の厚みが減少し、非晶質脆弱部41の外側の厚みが増大する(非晶質脆弱部41の両脇が盛り上がるようになる)ことがある。すなわち、基材層31に蒸通部40(非晶質脆弱部41)を含む凹凸部が形成されることがある。この場合であっても、蒸通部40を含む凹凸部の厚みの最大値(最大厚さ)および最小値(最小厚さ)は、基材層31の基本厚さt1に対して設定される所定の範囲内に収まるようにすることができる。たとえば、凹凸部の厚みの最大値および最小値は、基材層31の基本厚さt1に対して±50%の範囲内とすることができ、基材層31の基本厚さt1に対して±40%の範囲内とすることが好ましく、基材層31の基本厚さt1に対して±30%の範囲内とすることがより好ましい。このようにすれば、非加熱時の耐衝撃性を確保することができる。
【0040】
マイクロ波発熱部42は、基材層31と接合層33の間に設けられており、マイクロ波発熱インキを層状に形成したマイクロ波発熱インキ層(発熱層)により構成されている。マイクロ波発熱インキ層を構成する材料としては、特に限定される必要は無く、汎用の発熱インキ、カーボンブラック、銀、および、アルミニウム、および、酸化インジウム錫等を用いることができる。また、マイクロ波発熱部42は、半透明または略透明である。
【0041】
マイクロ波発熱部42の厚みの下限は、40nm以上とすることができ、60nm以上とすることが好ましく、80nm以上とすることがより好ましい。マイクロ波発熱部42の厚みの上限は、160nm以下とすることができ、120nm以下とすることが好ましく、100nm以下とすることがより好ましい。
【0042】
また、マイクロ波発熱部42におけるマイクロ波発熱インキの塗布量の下限は、2g/m2以上とすることができ、3g/m2以上とすることが好ましく、4g/m2以上とすることがより好ましい。マイクロ波発熱部42におけるマイクロ波発熱インキの塗布量の上限は、8g/m2以下とすることができ、6g/m2以下とすることが好ましく、5g/m2以下とすることがより好ましい。また、マイクロ波発熱インキの固形分濃度は、1.5~3.5%の範囲内とすることができる。なお、マイクロ波発熱部42の厚みおよびマイクロ波発熱インキの塗布量は、マイクロ波発熱インキの固形分濃度に応じて適宜調整することができる。
【0043】
また、非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とは、基材層31の厚み方向から見て(平面視で)互いに重なるように配置されている。本実施形態では、非晶質脆弱部41およびマイクロ波発熱部42のそれぞれは基材層31の厚み方向から見て長手方向を有する矩形状または線状に形成されている。また、非晶質脆弱部41およびマイクロ波発熱部42のそれぞれの長手方向は一致しなくてもよいが、本実施形態では非晶質脆弱部41およびマイクロ波発熱部42のそれぞれの長手方向は同じ方向である。
【0044】
また、
図3および
図4に示すように、非晶質脆弱部41は、短手方向(幅方向)において、基材層31の厚み方向から見てマイクロ波発熱部42の領域の範囲内に収まるように配置されている。特に、本実施形態では、非晶質脆弱部41は、短手方向においてマイクロ波発熱部42の領域の範囲の中央に位置するように配置されている。
【0045】
マイクロ波発熱部42の短手方向(幅方向)の寸法(幅寸法)bは、非晶質脆弱部41の短手方向の寸法aの2倍以上とすることができ、非晶質脆弱部41の短手方向の寸法aの5倍以上とすることが好ましく、非晶質脆弱部41の短手方向の寸法aの10倍以上とすることがより好ましい。このようにすれば、平面視において非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とが互いに重なるように配置しやすくなる。また、マイクロ波発熱部42の短手方向の寸法bは、非晶質脆弱部41の短手方向の寸法aの0.5倍以下とすることもできる。この場合であっても、平面視において非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とが互いに重なるように配置しやすくなる。
【0046】
また、非晶質脆弱部41の短手方向の寸法aは、0.1mm以上とすることができ、0.2mm以上とすることが好ましく、0.3mm以上とすることがより好ましい。さらに、非晶質脆弱部41は短手方向の寸法aが一定で直線状に形成されていることが望ましい。このようにずれば、非晶質脆弱部41の盛り上がり(局所的な厚みの増大)を防止し、フィルム同士の付着(ブロッキング)を抑制ないし防止することができる。
【0047】
マイクロ波発熱部42の長手方向(長さ方向)の寸法(長さ寸法)dは、非晶質脆弱部41の長手方向の寸法cよりも短い。たとえば、マイクロ波発熱部42の長手方向の寸法dは、非晶質脆弱部41の長手方向の寸法cの50%以下とすることができ、非晶質脆弱部41の長手方向の寸法cの10%以下とすることが好ましく、非晶質脆弱部41の長手方向の寸法cの5%以下とすることがより好ましい。このようにすれば、非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とが重なる領域を大きくすることができる。
【0048】
また、マイクロ波発熱部42の長手方向の寸法dは、10mm以上とすることができ、20mm以上とすることが好ましく、30mm以上とすることがより好ましい。
【0049】
以上のような構成を有する本実施形態の包装容器1は、電子レンジ等のマイクロ波加熱装置によって包装容器1ごと内容物を加熱(マイクロ波加熱)することができる。このとき、マイクロ波の作用により水分等を含む内容物の温度および周囲の空気の温度が上昇し、内部空間11の空気が熱膨張する。さらに、内容物から水分等を含む蒸気が発生する。したがって、包装容器1の内部空間11の気体の体積が増加し、内部空間11の内圧が上昇し、内部空間11から容器2および包装用フィルム3を外側に押す力(押圧力)が発生する。内部空間11内部の温度は、マイクロ波加熱を継続している場合には加熱時間の経過とともに上昇するため、押圧力は、マイクロ波加熱を継続している場合には加熱時間の経過とともに増加する。
【0050】
また、マイクロ波が照射されると、内容物だけでなくマイクロ波発熱部42がマイクロ波を吸収し100~300℃程度まで発熱する。ここで、非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とが互いに重なるように配置されているため、マイクロ波発熱部42の熱が非晶質脆弱部41に伝わる。したがって、非晶質脆弱部41を含む基材層31のうち、マイクロ波発熱部42に近い部分は、熱ダメージにより脆弱化する。すなわち、基材層31のうち、非晶質脆弱部41が設けられて元々脆弱であった部分がさらに脆弱化する。この状態で、内部空間11の内圧(押圧力)が上昇すると、包装用フィルム3が外側に膨出するようにドーム状に膨らみ、包装用フィルム3(特に非晶質脆弱部41が設けられている部分)には張力が作用する。そして、内部空間11の内圧(押圧力)が所定の大きさ(蒸通部40のパンク圧)となったとき、非晶質脆弱部41を中心に包装用フィルム3が裂けるように破断し、包装用フィルム3(蒸通部40)に貫通孔が形成され、内部空間11と包装容器1の外部空間とが連通し、内部空間11に存在していた気体が圧力差により外部に漏れだす(蒸通する)。
【0051】
ここで、蒸通部40のパンク圧は、接合領域34の接合力(接合領域34のパンク圧)よりも低い。したがって、接合領域34が接合されたまま、蒸通部40に貫通孔が形成される。また、本発明では基材層31の裏面側に結晶部分が残っており或る程度の強度を有しているため、加熱開始から蒸通までには或る程度の時間が必要となる。したがって、内容物をマイクロ波により適度に昇温させることができる。また、発生した蒸気をある程度の期間(所定時間)、内部空間11に閉じ込めて内容物を蒸らすことができ、かつ、過度な水分蒸発を避け、適切に加熱調理することができる。
【0052】
以上の構成により、本発明の包装用フィルム3によれば、非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とが互いに重なるように配置されているため、電子レンジで加熱した際に、適切に蒸気を排出することができる。また、本発明の包装用フィルム3を用いた包装容器1においても、電子レンジで加熱した際に、適切に蒸気を排出することができる。
【0053】
また、本発明によれば、非晶質脆弱部41は、短手方向(幅方向)において、基材層31の厚み方向から見てマイクロ波発熱部42の領域の範囲内に収まるように配置されているため、非晶質脆弱部41とマイクロ波発熱部42とが重なる領域を大きくすることができる。したがって、マイクロ波による加熱時に、蒸通部40に適切な大きさの貫通孔を形成することができ、適切に蒸気を排出することができる。
【0054】
さらに、本発明によれば、マイクロ波発熱部42の短手方向の寸法bが非晶質脆弱部41の短手方向の寸法aの2倍以上であれば、マイクロ波発熱部42の発熱量を増大させ、マイクロ波発熱部42の熱を非晶質脆弱部41に効率よく伝達することができる。また、マイクロ波発熱部42の短手方向の寸法bが非晶質脆弱部41の短手方向の寸法aの5倍以上であれば、マイクロ波発熱部42の熱を非晶質脆弱部41にさらに効率よく伝達することができる。
【0055】
さらにまた、本発明によれば、マイクロ波発熱部42の短手方向の寸法bまたはこれに比例するマイクロ波発熱部42の面積を調整することによって、マイクロ波発熱部42の発熱量に起因する基材層31の熱ダメージを調整することができ、蒸通部40に形成される貫通孔の大きさを調整することができる。また、本発明によれば、基材層31の厚みt1に対する非晶質脆弱部41の厚みt2を調整することによって、蒸通部40の脆弱性を調整することができ、蒸通部40に形成される貫通孔の大きさを調整することができる。したがって、本発明によれば、蒸通部40に適切な大きさの貫通孔を形成することができ、適切に蒸気を排出することができる。たとえば、内容物に含まれる水分量が多い場合、マイクロ波発熱部42の面積を小さくするおよび/または基材層31の厚みt1に対する非晶質脆弱部41の厚みt2を小さくすることができる。一方、内容物に含まれる水分量が少ない場合、マイクロ波発熱部42の面積を大きくするおよび/または基材層31の厚みt1に対する非晶質脆弱部41の厚みt2を大きくすることができる。
【0056】
さらにまた、本発明によれば、蒸通部40の透明性を維持することができ、包装容器1を気密に封止した状態であっても内容物の視認性の向上を図ることができる。
【0057】
また、従来、基材層31に切り込みを入れたり傷をつけたりするなどして厚みが薄いまたは基材層31に貫通孔を形成した脆弱加工部(薄肉部)を形成した蒸通機構が提案されているが、このような薄肉部を形成してしまうと、非加熱時に外力を受けた場合に脆弱加工部から破断する可能性が高くなってしまう。これに対し、本発明は蒸通部40の厚みを薄くするものではなく、或る程度の強度を有しているため、耐衝撃性の観点で従来技術に対し優位である。
【0058】
この発明における包装用フィルムは、包装用フィルム3に対応し、以下同様に、基材層は基材層31に対応し、シーラント層はシーラント層32に対応し、接合層は接合層33に対応し、非晶質脆弱部は、非晶質脆弱部41に対応し、マイクロ波発熱部は、マイクロ波発熱部42に対応し、開口部は、上端開口部25に対応し、包装容器は、包装容器1に対応するが、この発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。また、上述の実施形態で挙げた画面および具体的な構成等は一例であり、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。
【0059】
たとえば、上述の実施形態では、容器2および包装用フィルム3を備えた包装容器1を例に挙げて説明したが、容器2を省略し、1枚または複数枚の包装用フィルム3で包装容器1を構成するようにしても良い。この場合、蒸通部40は任意の位置に設けられればよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、マイクロ波発熱部42が非晶質脆弱部41の裏面側に配置された場合を例に挙げて説明したが、マイクロ波発熱部42が非晶質脆弱部41の表面側に配置されていてもよい。
【0061】
さらに、上述の実施形態では、非晶質脆弱部41は、幅方向において、基材層31の厚み方向から見て非晶質脆弱部41がマイクロ波発熱部42の領域の範囲内に収まるように配置された場合を例に挙げて説明したが、非晶質脆弱部41の一部がマイクロ波発熱部42の領域の範囲内に収まるように配置されていてもよい。すなわち、非晶質脆弱部41の一部がマイクロ波発熱部42の領域の範囲外にはみ出すように配置されていてもよい。この場合であっても、重なった部分において上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は、電子レンジによる加熱調理が可能な食品用の包装容器およびこれに用いる包装用フィルムの製造および販売に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…包装容器
11…内部空間
2…容器
21…底部
22…傾斜部
23…フランジ
25…開口部
26…収容部
3…包装用フィルム
31…基材層
32…シーラント層
33…接合層
40…蒸通部
41…非晶質脆弱部
42…マイクロ波発熱部