(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110205
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】距離測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240807BHJP
G01S 7/493 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G01S7/493
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014650
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 匡
(72)【発明者】
【氏名】東 志織
【テーマコード(参考)】
2F065
5J084
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA06
2F065AA24
2F065FF44
2F065GG07
2F065GG24
2F065JJ01
2F065JJ18
2F065LL04
2F065LL22
2F065NN08
2F065PP22
2F065QQ29
2F065SS13
2F065UU01
5J084AA05
5J084AA20
5J084AC08
5J084AD03
5J084BA02
5J084BA19
5J084BA36
5J084BB01
5J084BB20
5J084CA10
5J084CA33
5J084CA34
5J084CA49
5J084CA65
5J084CA69
5J084EA02
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】外部環境光の影響を抑制して距離測定を行うことを効果的に実現できる距離測定装置を提供する。
【解決手段】距離測定装置(101)は、所定の周波数(fpwm)で光を発光させて対象物(15)に向かって照射するように構成される光源(1)と、前記対象物での反射光を受光するように構成される光センサ(21)と、前記光センサから出力されるセンサデータに基づき周波数解析を行うように構成される周波数解析部(43)と、前記周波数解析部により得られたパワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値と、距離を算出するための算出式(4A)に基づいて前記対象物との距離を算出するように構成される距離算出部(44)と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で光を発光させて対象物に向かって照射するように構成される光源と、
前記対象物での反射光を受光するように構成される光センサと、
前記光センサから出力されるセンサデータに基づき周波数解析を行うように構成される周波数解析部と、
前記周波数解析部により得られたパワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値と、距離を算出するための算出式に基づいて前記対象物との距離を算出するように構成される距離算出部と、
を備える、距離測定装置。
【請求項2】
外部環境光の周波数を検出するように構成される環境光周波数検出部と、
検出された前記外部環境光の周波数と異なる周波数として前記所定の周波数を決定するように構成される光源周波数決定部と、
をさらに備える、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記環境光周波数検出部は、前記光源を消灯状態とした場合に前記周波数解析部により得られるパワースペクトルにおいてパワー値がピークとなる周波数を特定することで、前記外部環境光の周波数を検出する、請求項2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記光源を発光駆動状態とした場合に前記周波数解析部により得られる前記パワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値から、前記光源を消灯状態とした場合に前記周波数解析部により得られる前記パワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値を差し引くことで補正パワー値を取得するパワー補正部をさらに備え、
前記距離算出部は、前記補正パワー値と前記算出式に基づいて前記距離を算出する、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記距離算出部は、前記パワースペクトルにおける前記所定の周波数を含む前記所定の周波数周辺の複数点におけるパワー値の合計値と、前記算出式に基づいて前記距離を算出する、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記算出式は、下記式である、請求項1に記載の距離測定装置。
Y=a・Xb
ただし、Yは距離、Xはパワー値、aおよびbは係数
【請求項7】
前記光センサは、照度の前記センサデータを出力する、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項8】
前記光センサは、R(赤色)成分検出値、G(緑色)成分検出値、B(青色)成分検出値の少なくともいずれかの前記センサデータを出力する、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項9】
前記周波数解析部は、前記R成分検出値、前記G成分検出値、および前記B成分検出値の各センサデータの合計に基づいて前記周波数解析を行う、請求項8に記載の距離測定装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の距離測定装置を備えるウェアラブル機器。
【請求項11】
前記対象物は液体であり、液面高さ測定装置として構成される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の距離測定装置と、液体を収容可能な収容部と、を備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物との距離を測定する距離測定装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光センサと光源を用いた距離測定装置により、距離測定装置と対象物との間の距離を推定する場合、外部環境光の影響を抑制するために遮光対策が必要となる場合があったが、遮光が構造上難しいアプリケーションも存在するため、適用範囲が制限される課題があった。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、外部環境光の影響を抑制して距離測定を行うことを効果的に実現できる距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本開示の例示的な距離測定装置は、
所定の周波数で光を発光させて対象物に向かって照射するように構成される光源と、
前記対象物での反射光を受光するように構成される光センサと、
前記光センサから出力されるセンサデータに基づき周波数解析を行うように構成される周波数解析部と、
前記周波数解析部により得られたパワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値と、距離を算出するための算出式に基づいて前記対象物との距離を算出するように構成される距離算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の距離測定装置によれば、外部環境光の影響を抑制して距離測定を行うことを効果的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、比較例に係る距離測定装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、遮光対策を行った比較例に係る距離測定装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、距離と照度との関係の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係る距離測定装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、外部環境光の光源が蛍光灯である場合に取得されるパワースペクトルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6における実際の距離と推定した距離とをプロットした結果を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の第2実施形態に係る距離測定装置の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、カラーセンサの構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の第3実施形態に係る距離測定装置の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、外部環境光の光源が蛍光灯である場合に取得されるパワースペクトルの一例を示す図である(光源が消灯)。
【
図12】
図12は、本開示の第4実施形態に係る距離測定装置の構成を示す図である。
【
図13】
図13は、パワースペクトルの差分処理の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、スマートグラスの一例を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、トイレタンクの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
<1.比較例>
ここでは、比較例に関する技術について説明する。
図1は、比較例に係る距離測定装置10の構成を概略的に示す図である。
図1に示す距離測定装置10は、光源1と、光センサ2と、基板3と、を備える。光源1および光センサ2は、基板3に実装される。光源1から出射される光が対象物15に照射され、対象物15で反射された光が光センサ2により受光される。距離測定装置10と対象物15との間の距離が長いほど、光センサ2により受光される光の照度が小さくなるので、光センサ2で検出される照度により距離を推定できる。
【0011】
しかしながら、
図1に示すように、距離測定装置10を使用する環境には、外部環境光CLが存在するため、外部環境光CLにより距離測定に影響が出る可能性がある。外部環境光CLは、例えば蛍光灯などの外部光源により発生する。そこで、外部環境光CLの影響を抑制するために、
図2に示すように、距離測定装置10と対象物15を暗箱150により覆うなどして遮光対策を行うことが考えられる。ここで、
図3は、遮光対策を行っていない場合(A)と、遮光対策を行った場合(B)とでの、距離と照度との関係の一例を示す。このように、遮光対策を行った場合と比べ、遮光対策を行っていない場合は外部環境光の影響を受けて特性が変化していることがわかる。
【0012】
しかしながら、例えば、遮光対策が構造上難しいアプリケーションも存在し、適用範囲が制限される課題がある。このような課題を解決すべく、以下説明する本開示の実施形態が実施される。
【0013】
<2.第1実施形態>
図4は、本開示の第1実施形態に係る距離測定装置101の構成を示す図である。
図4に示す距離測定装置101は、模式的に示せば
図1に示す距離測定装置10と同様となる。
【0014】
距離測定装置101は、基板3と、照度センサ21と、光源1と、制御部4と、スイッチSWと、抵抗Rと、を有している。照度センサ21、光源1、スイッチSW、および抵抗Rは、基板3に実装される。制御部4は、例えばマイコンである。
【0015】
ここでは、光源1は、一例として白色LED(発光ダイオード)により構成している。白色LEDは、白色光を発光するチップLEDである。スイッチSWおよび抵抗Rは、電源電圧VCCによって光源1に電流が流れる経路に配置される。スイッチSWは、制御部4によりオンオフを制御される。スイッチSWのオンオフにより、光源1の点灯・消灯を切り替えることができる。抵抗Rは、光源1に流れる電流を制限し、白色光の光量を調整する。
【0016】
図1に示すように、光源1から出射された光は対象物15に照射され、対象物15で反射される。対象物15での反射光は、照度センサ21により受光される。照度センサ21は、受光した光の照度を検出する。照度センサ21は、例えば光を受光する受光素子(フォトダイオードなど)および受光素子からの出力をAD(アナログ/デジタル)変換するADコンバータなどを有する。
【0017】
制御部4は、PWM(パルス幅変調)制御部41と、ビット変換部42と、周波数解析部43と、距離算出部44と、を有する。
【0018】
PWM制御部41は、所定の1周期をオン期間とオフ期間に分け、オン期間でスイッチSWをオン状態とし、オフ期間でスイッチSWをオフ状態とする。オン期間の1周期に対する割合がオンデューティとなる。
【0019】
ビット変換部42は、照度センサ21から出力されるデジタルデータとしてのセンサデータを例えば8ビットのデジタルデータに変換する。
【0020】
周波数解析部43は、ビット変換部42による変換後で一定量蓄積されたセンサデータに対してFFT(高速フーリエ変換)などの演算を行うことにより、パワースペクトルを取得する。
【0021】
距離算出部44は、周波数解析部43により得られるパワースペクトルにおけるPWM制御部41によるPWM周波数fpwmでのパワー値と、距離を算出するための算出式4Aに基づき、対象物15・照度センサ21間の距離を算出する。算出式4Aは、制御部4(距離算出部44)にあらかじめ格納されている。算出式4Aの詳細については、後述する。
【0022】
ここで、
図5には、外部環境光CL(
図1)の光源が蛍光灯である場合、周波数解析部43により取得されるパワースペクトルの一例を示す。蛍光灯のフリッカ(周期的な光量の変動)により100Hzまたは120Hzのフリッカ周波数でパワー値のピークが存在する。なお、100Hzは、西日本の場合、120Hzは東日本の場合である。これに対し、一例としてPWM周波数fpwm=500Hzとしているので、500Hzの周波数で光源1が点灯・消灯し、500Hzでパワー値のピークが存在する。このように、PWM周波数fpwmを蛍光灯のフリッカ周波数から離して設定しているので、蛍光灯による外部環境光の影響を抑制できる。
【0023】
ここで、本願発明者は、照度センサ21と対象物との間の距離を変化させつつ、PWM周波数fpwm=500Hzでのパワー値を取得する実験を実施した。
図6に、その実験の結果例を示す。
【0024】
図6において、縦軸が照度センサ21と対象物との間の距離を示し、横軸がパワー値を示す。
図6の破線で示すように、距離を所定のLminから所定のL1まで所定距離刻みで変化させつつ、パワー値を取得した。すなわち、
図6の破線は、実際の距離(距離の実績値)とパワー値との組み合わせの点を線でつないで示したものである。距離が長くなるほど、パワー値は小さくなる。
【0025】
実験の結果を受け、本願発明者による鋭意検討の結果、パワー値から対象物・センサ間の距離を導出する数式として、下記(1)式を見出した。
Y=a・Xb (1)
ただし、Yは距離、Xはパワー値、aおよびbは係数
【0026】
パワー値と実際の距離との組み合わせの点(X,Y)が2点あれば、(1)式における係数aおよびbを厳密に決定することができる。具体的には、2点(X1,Y1)(X2,Y2)それぞれを(1)式に代入した式の両辺の対数をとって連立方程式を解くことで、係数a,bを決定できる。
【0027】
図6の例では、(距離,パワー値)が(L1,R1)、(L2,R2)の2点P1,P2を選択し、(1)式の係数a,bを導いている。このように決定された(1)式を使用してパワー値から距離を推定した結果を
図6の実線で示す。
図6では、距離がL3(<L2)以下では距離の推定値が実績値よりも若干高くなって乖離しているが、距離がL3より長い区間では、距離の推定値が実績値と合致していることが分かる。距離がL3より長い区間に実際に使用する測定距離範囲が含まれるのであれば、精度良く距離を推定することが可能である。従って、使用する距離測定範囲が決まっているのであれば、当該距離測定範囲に含まれる2点を選択して(1)式を決定することが望ましい。
【0028】
図7は、
図6における実際の距離と推定した距離とをプロットした結果を示す。
図7において、実際の距離と推定した距離が同じ値となる点を結ぶ直線からプロットがずれていない場合に推定精度が最もよい。
図7に示すように、距離がL3以下では距離の推定値が実績値を上回っているが、距離がL3より長い区間では精度良く距離を推定できる。
【0029】
本実施形態の距離測定装置101(
図4)では、制御部4の距離算出部44が算出式4Aとして、上記(1)式を有している。距離算出部44は、周波数解析部43により得られるパワースペクトルにおけるPWM周波数fpwm(=500Hz)でのパワー値に基づいて(1)式を使用して距離を算出することができる。
【0030】
このように、本実施形態では、遮光対策を行わないでも、外部環境光の影響を抑制しつつ対象物との距離を精度良く測定することが可能となる。
【0031】
<3.第2実施形態>
図8は、本開示の第2実施形態に係る距離測定装置102の構成を示す図である。本実施形態の第1実施形態(
図4)との構成の相違点は、光センサとしてカラーセンサ22を用いることである。カラーセンサ22は、光の色成分を検出可能なセンサICである。上記色成分は、具体的には、R成分(赤色成分)、G成分(緑色成分)、B成分(青色成分)である。
【0032】
カラーセンサ22は、対象物15で反射された光を受光して色成分を検出する。カラーセンサ22は、検出した色成分をデジタルデータ(センサデータ)として制御部4へ出力する。カラーセンサ22が出力するデジタルデータは、例えば16ビットデータである。
【0033】
図9は、カラーセンサ22の構成例を示す図である。
図9に示すカラーセンサ22は、受光素子221A,221B,221C,221Dと、ADコンバータ222A,222B,222Cと、ロジック回路223と、赤外線遮断フィルタ224と、赤色光透過フィルタ225Aと、緑色光透過フィルタ225Bと、青色光透過フィルタ225Cと、赤外線透過フィルタ225Dと、スイッチ226と、を有している。
【0034】
受光素子221Aは、赤外線遮断フィルタ224および赤色光透過フィルタ225Aを介して入射される赤色光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。すなわち、受光素子221Aは、入力光のR成分(赤色成分)を検出する。
【0035】
受光素子221Bは、赤外線遮断フィルタ224および緑色光透過フィルタ225Bを介して入射される緑色光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。すなわち、受光素子221Bは、入力光のG成分(緑色成分)を検出する。
【0036】
受光素子221Cは、赤外線遮断フィルタ224および青色光透過フィルタ225Cを介して入射される青色光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。すなわち、受光素子221Cは、入力光のB成分(青色成分)を検出する。
【0037】
受光素子221Dは、赤外線透過フィルタ225Dを介して入射される赤外線の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。すなわち、受光素子221Dは、入力光のIR成分(赤外線成分)を検出する。
【0038】
上記の受光素子221A,221B,221C,221Dとしては、それぞれ、フォトダイオードあるいはフォトトランジスタなどを好適に用いることができる。
【0039】
ADコンバータ222A,222Bは、受光素子221A,221Bからのアナログ電流信号を例えば16ビットのデジタルデータに変換して出力する。また、ADコンバータ222Cは、受光素子221C,221Dいずれかからのアナログ電流信号をスイッチ226の切り替えに応じてデジタルデータに変換して出力する。
【0040】
赤外線遮断フィルタ224は、赤色光透過フィルタ225A、緑色光透過フィルタ225B、および、青色光透過フィルタ225Cそれぞれの上流側で、入力光に含まれるIR成分を遮断する。このような赤外線遮断フィルタ224を設けることにより、RGB成分を精度良く検出することができる。
【0041】
ロジック回路223は、ADCロジック機能(=ADCの時分割制御機能)、および、I2Cインターフェイス機能(=データ信号SDAとクロック信号SCLの通信機能)を備えている。ロジック回路223は、ADコンバータ222A,222B,222Cから出力されるRGB成分検出信号およびIR成分検出信号としてのデジタルデータをI2C通信によって制御部4に送出する。
【0042】
制御部4においては、ビット変換部42は、カラーセンサ22から出力されるRGB成分検出信号のデジタルデータ(センサデータ)を例えば8ビットにビット変換する。周波数解析部43は、ビット変換部42による変換後のRGB各成分の各センサデータの合計に対してFFTなどの演算を行うことで、パワースペクトルを取得する。距離算出部44における距離推定については、第1実施形態と同様である。
【0043】
なお、例えば光源1を赤色LEDとして構成し、周波数解析部43では、ビット変換部42による変換後のR(赤色)成分のセンサデータに対してFFTなどの演算を行うことで、パワースペクトルを取得してもよい。
【0044】
<4.第3実施形態>
図10は、本開示の第3実施形態に係る距離測定装置103の構成を示す図である。先述した第1実施形態では、外部環境光の周波数が例えば100Hzまたは120Hzとして固定である場合としたが、環境によって外部環境光の周波数は変化する可能性がある。そこで、本実施形態では、環境において支配的な外部環境光の周波数を検出するようにしている。これにより、本実施形態に係る距離測定装置103では、第1実施形態との相違点として、制御部4において、環境光周波数検出部45と、光源周波数決定部46と、を設けている。
【0045】
外部環境光の周波数を検出するために、本実施形態では、光源1はスイッチSWをオフ状態として消灯させた状態とする。このとき、照度センサ21から出力されたセンサデータがビット変換部42により変換され、一定量蓄積される。周波数解析部43は、上記蓄積されたセンサデータに対してFFTなどの演算を行うことで、パワースペクトルを取得する。環境光周波数検出部45は、得られたパワースペクトルにおいてパワー値のピークが生じる周波数を外部環境光の周波数として特定する。例えば、外部環境光の光源が蛍光灯である場合、
図11にパワースペクトルの一例と示すように、100Hzまたは120Hzでパワー値のピークが生じ、100Hzまたは120Hzを外部環境光の周波数として検出できる。
【0046】
その後、光源周波数決定部46は、検出された外部環境光の周波数と異なる(なるべく離れた)周波数をPWM制御部41によるPWM周波数fpwmとして設定する。
図11の例であれば、外部環境光の周波数である100Hzまたは120Hzに対して、例えばPWM周波数fpwm=500Hzを設定する。
【0047】
このような本実施形態によれば、外部環境光に依存しない距離測定が可能となる。
【0048】
なお、本実施形態においても、第2実施形態のように光センサとして、カラーセンサ22を使用してもよい。
【0049】
<5.第4実施形態>
図12は、本開示の第4実施形態に係る距離測定装置104の構成を示す図である。本実施形態では第1実施形態との相違点として、制御部4においてパワー補正部47を設けている。
【0050】
本実施形態では、スイッチSWをオフ状態とすることで光源1を消灯した状態と、スイッチSWを発光駆動状態(PWM駆動状態)とすることで光源1を駆動した状態の両方において、照度センサ21から出力されるセンサデータに基づき、周波数解析部43がパワースペクトルを取得する。パワー補正部47は、光源1の発光駆動状態において取得されたパワースペクトルにおけるPWM周波数fpwmでのパワー値から、光源1の消灯状態において取得されたパワースペクトルにおけるPWM周波数fpwmでのパワー値を差し引くことで補正パワー値を取得する。
【0051】
図13には、光源1が発光駆動状態(LEDオン)で得られるパワースペクトルの一例と、光源1が消灯状態(LEDオフ)で得られるパワースペクトルの一例と、これらのパワースペクトルの差分(補正後のパワースペクトル)を示す。外部環境光が幅広い周波数成分を持ち、光源1が発光駆動状態においてPWM周波数fpwm=500Hzでのパワー値にオフセットが生じる場合、光源1が消灯状態におけるPWM周波数fpwm=500Hzでのパワー値を差し引くことで、オフセットを除去できる。これにより、疑似的に外部環境光を無くした(=暗箱などによる遮光を行った)状態でのパワー値を得ることができる。
【0052】
本実施形態では、距離を推定するときに用いる算出式4A(
図12)としては、補正後のパワー値から距離を推定する式を用いればよい。
【0053】
なお、本実施形態に対して、第2実施形態または第3実施形態を適用してもよい。
【0054】
<6.第5実施形態>
図5では、PWM周波数fpwm=500Hzでパワー値が急峻にピークまで立ち上がっているが、周波数によってはピークの立ち上がりが急峻でなく、裾が広がる場合もありうる。そこで、本実施形態では、第1実施形態(
図4)の構成において、距離算出部44は、パワースペクトルにおけるPWM周波数fpwmを含めたPWM周波数fpwm周辺の複数点でのパワー値を取得し、各パワー値の合計を算出する。そして、算出された合計値と算出式4Aに基づいて距離を推定する。PWM周波数fpwm=500Hzであれば、例えば499Hz、500Hz、および501Hzの3点でのパワー値を取得する。
【0055】
なお、本実施形態に対して、第2、第3、第4実施形態のいずれかを適用してもよい。
【0056】
<7.ウェアラブル機器への適用>
以上説明した実施形態に係る距離測定装置は、各種アプリケーションに適用可能であり、ここでは、一例としてウェアラブル機器への適用について説明する。
図14は、ウェアラブル機器の一例としてのスマートグラス5の構成を示す図である。
【0057】
スマートグラス5は、光センサ51と、光源52と、制御部53と、通信部54と、表示制御部55と、表示部56と、レンズ57と、を備える。光センサ51、光源52、および制御部53から距離測定装置5Aが構成される。制御部53は、距離測定装置5Aとしての機能の他に、スマートグラス5の機能を実現するための制御を行う。
【0058】
通信部54は、例えば外部との無線通信を行う。表示制御部55は、通信部54により得られた画像データなどに基づき表示部56に画像を表示させる制御を行う。表示部56に形成された画面情報は光学像とされ、レンズ57における反射部に照射される。そして、上記光学像は、上記反射部を介して目の網膜に到達することでユーザに認識される。
【0059】
このように距離測定装置5Aは、スマートグラス5に搭載されるが、距離測定装置は、スマートグラス以外の各種ウェアラブル機器(スマートフォンなど)に搭載されてもよい。
【0060】
<8.液面高さ測定装置への適用>
本実施形態に係る距離測定装置は、様々な対象物15との間の距離の測定に利用可能である。
図15は、距離測定装置62をトイレタンク6に搭載する場合の構成例を模式的に示す。この場合、距離測定装置62は、基板62Aと、光源62Bと、光センサ62Cと、を有する。距離測定装置62は、光センサ62Cと対象物としての水70の液面との間の距離L、すなわち、液面高さHを測定する水位測定装置として機能する。距離Lが長いほど、液面高さHは短くなる。
【0061】
図15に示すように、トイレタンク6は、収容部61を有する。距離測定装置62は、収容部61内部の上方に配置される。収容部61は、水70を収容可能である。収容部61自体の色は、白色である。なお、
図15の構成に限らず例えば、白色のシート材を、収容部61の内部の底面上に配置してもよいし、収容部61の透明な底部の下方に配置してもよい。また、収容部61は、トイレタンク以外の用途での容器であってもよい。
【0062】
<9.その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0063】
<10.付記>
以上のように、本開示の一態様に係る距離測定装置(101)は、
所定の周波数(fpwm)で光を発光させて対象物(15)に向かって照射するように構成される光源(1)と、
前記対象物での反射光を受光するように構成される光センサ(21)と、
前記光センサから出力されるセンサデータに基づき周波数解析を行うように構成される周波数解析部(43)と、
前記周波数解析部により得られたパワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値と、距離を算出するための算出式(4A)に基づいて前記対象物との距離を算出するように構成される距離算出部(44)と、を備える構成としている(第1の構成、
図4)。
【0064】
また、上記第1の構成において、外部環境光(CL)の周波数を検出するように構成される環境光周波数検出部(45)と、
検出された前記外部環境光の周波数と異なる周波数として前記所定の周波数を決定するように構成される光源周波数決定部(46)と、
をさらに備える構成としてもよい(第2の構成、
図10)。
【0065】
また、上記第2の構成において、前記環境光周波数検出部(45)は、前記光源(1)を消灯状態とした場合に前記周波数解析部(43)により得られるパワースペクトルにおいてパワー値がピークとなる周波数を特定することで、前記外部環境光の周波数を検出する構成としてもよい(第3の構成)。
【0066】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記光源(1)を発光駆動状態とした場合に前記周波数解析部(43)により得られる前記パワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値から、前記光源を消灯状態とした場合に前記周波数解析部により得られる前記パワースペクトルにおける前記所定の周波数でのパワー値を差し引くことで補正パワー値を取得するパワー補正部(47)をさらに備え、
前記距離算出部(44)は、前記補正パワー値と前記算出式に基づいて前記距離を算出する構成としてもよい(第4の構成、
図12)。
【0067】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記距離算出部(44)は、前記パワースペクトルにおける前記所定の周波数を含む前記所定の周波数周辺の複数点におけるパワー値の合計値と、前記算出式に基づいて前記距離を算出する構成としてもよい(第5の構成)。
【0068】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記算出式(4A)は、下記式である構成としてもよい(第6の構成)。
Y=a・Xb
ただし、Yは距離、Xはパワー値、aおよびbは係数
【0069】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記光センサ(21)は、照度の前記センサデータを出力する構成としてもよい(第7の構成、
図4)。
【0070】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記光センサ(22)は、R(赤色)成分検出値、G(緑色)成分検出値、B(青色)成分検出値の少なくともいずれかの前記センサデータを出力する構成としてもよい(第8の構成、
図8)。
【0071】
また、上記第8の構成において、前記周波数解析部(43)は、前記R成分検出値、前記G成分検出値、および前記B成分検出値の各センサデータの合計に基づいて前記周波数解析を行う構成としてもよい(第9の構成)。
【0072】
また、本開示の一態様に係るウェアラブル機器(5)は、上記第1から第9のいずれかの構成とした距離測定装置(5A)を備える(第10の構成、
図14)。
【0073】
また、上記第1から第9のいずれかの構成において、前記対象物は液体(70)であり、液面高さ測定装置(62)として構成されることとしてもよい(第11の構成、
図15)。
【0074】
また、本開示の一態様に係る機器(6)は、上記第11の構成の距離測定装置(62)と、液体(70)を収容可能な収容部(61)と、を備える(第12の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、例えば、各種用途の距離測定に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 光源
2 光センサ
3 基板
4 制御部
4A 算出式
5 スマートグラス
5A 距離測定装置
6 トイレタンク
10 距離測定装置
15 対象物
21 照度センサ
22 カラーセンサ
41 PWM制御部
42 ビット変換部
43 周波数解析部
44 距離算出部
45 環境光周波数検出部
46 光源周波数決定部
47 パワー補正部
51 照度センサ
52 LED
53 制御部
54 通信部
55 表示制御部
56 表示部
57 レンズ
61 収容部
62 距離測定装置
62A 基板
62B 光源
62C 光センサ
70 水
101~104 距離測定装置
150 暗箱
221A,221B,221C,221D 受光素子
222A,222B,222C ADコンバータ
222C ADコンバータ
223 ロジック回路
224 赤外線遮断フィルタ
225A 赤色光透過フィルタ
225B 緑色光透過フィルタ
225C 青色光透過フィルタ
225D 赤外線透過フィルタ
226 スイッチ
CL 外部環境光
H 液面高さ
L 距離
R 抵抗
SW スイッチ