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  • 特開-車両下部構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110215
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014666
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】鵜ノ口 孝雄
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB07
3D203CB25
3D203DA07
3D203DA08
3D203DA22
(57)【要約】
【課題】リアフロアパネルの下方で熱源の車両前方に配置された周辺機器の保護を図る。
【解決手段】リアフロアパネル12の下方で熱源であるマフラー16の車両後方に並んで設けられたリアフロアカバー18がマフラー16に対向する前面24を有し、この前面24に開口部26が設けられているので、マフラー16からの熱(熱気)が開口部26を介してリアフロアカバー18の内側の空間部Sに逃げやすくなる。マフラー16から発生する熱が車両前方に回り込むことを抑制できるため、マフラー16の前方に位置する燃料タンク14などの周辺機器に対して熱害を与えることを抑制し周辺機器の保護を図る上で有利となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアフロアパネルの下方に設けられた熱源と、
前記リアフロアパネルの下方で前記熱源の車両後方に並んで設けられ、前記リアフロアパネルを下方から覆うリアフロアカバーと、を備える車両下部構造であって、
前記リアフロアカバーは、上下方向および車幅方向に延在して前記熱源に対向する前面を有し、
前記前面に開口部が設けられている、
ことを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記開口部は、前記前面の上部に位置している、
ことを特徴とする請求項1記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記開口部は、前記前面の車幅方向のほぼ全長にわたって延在している、
ことを特徴とする請求項2記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記前面の下端から車両後方に延在する底面が形成され、
前記底面に牽引フックを露出させる牽引フック用孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記熱源はマフラーで構成され、
前記マフラーの車両前方に燃料タンクが隣接して配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両の空力性能を向上させるために車両のリアフロアパネルの下方にリアフロアカバー(アンダーカバーともいう)が組み付けられている。
リアフロアカバーは、リアバンパーの前方に配置され、車両前方を向いた前面と、前面の下端からリアバンパーに向かって車両後方に延在する底面とを備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-40610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、エンジンを駆動源とする車両においては、リアフロアパネルの下方において上記リアフロアカバーの車両前方にマフラーなどの熱源が隣接して配置される場合がある。
この場合、熱源から発せられた熱がリアフロアカバーの前面によって遮られることにより熱が熱源の周囲にこもり、リアフロアパネルの下方において熱源の車両前方に配置された周辺機器に熱害を与えることが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、リアフロアパネルの下方で熱源の車両前方に配置された周辺機器の保護を図る上で有利な車両下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、リアフロアパネルの下方に設けられた熱源と、前記リアフロアパネルの下方で前記熱源の車両後方に並んで設けられ、前記リアフロアパネルを下方から覆うリアフロアカバーと、を備える車両下部構造であって、前記リアフロアカバーは、上下方向および車幅方向に延在して前記熱源に対向する前面を有し、前記前面に開口部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、リアフロアパネルの下方で熱源の車両後方に設けられたリアフロアカバーが熱源に対向する前面を有し、この前面に開口部が設けられているので、熱源からの熱(熱気)が開口部を介してリアフロアカバーの内側の空間部に逃げやすくなる。
したがって、熱源から発生する熱が車両前方に回り込むことを抑制できるため、熱源の前方に位置する周辺機器に対して熱害を与えることを抑制し周辺機器の保護を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両の後部の底面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】車両の底面に組み付けられたリアフロアカバーを車両前方の下方から見た斜視図である。
図4】リアフロアカバーを車両前方の上方から見た斜視図である。
図5】リアフロアカバーを車両後方の上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、図面において、矢印UPは車両上方、矢印FRは車両前方、矢印INは車幅方向内方、矢印OUTは車幅方向外方を示す。
図1図2に示すように、車両10の後部には、車両前後方向および車幅方向に延在するリアフロアパネル12が設けられている。
リアフロアパネル12の下方には、車両前方から後方に向かって燃料タンク14、マフラー16、リアフロアカバー18がそれらの順番で配置されている。
また、リアフロアカバー18の後方には、リアバンパー20が設けられている。
リアバンパー20は、リアフロアカバー18の後方およびリアフロアパネル12の後方を車幅方向の全長にわたって覆うバンパー後面2002と、バンパー後面2002の下端から車両前方に延在するバンパー下面2004とを備えている。
リアバンパー20の内側には不図示のバンパービームが車幅方向にわたって延在している。
【0009】
燃料タンク14は、マフラー16の車両前方に隣接して配置され、車幅方向のほぼ中央に設けられ、本実施の形態では、燃料タンク14はマフラー16の車両前方に配置された周辺機器である。
燃料タンク14は、車幅方向に沿った幅と、車両前後方向に沿った長さと、上下方向の高さとを有している。
燃料タンク14は、不図示のステーを介してクロスメンバやサイドメンバなどの車両骨格部材に取り付けられている。
マフラー16は、車幅方向に沿った長さと、車両前後方向に沿った幅と、上下方向の高さとを有している。本実施の形態では、マフラー16は車幅方向から見たときにほぼ車両前後方向に長軸を向けた楕円形状を呈している。
マフラー16は、走行中、不図示のエンジンから排出される高温、高圧の排気ガスの温度と圧力を下げて排気音を抑制するものである。マフラー16の温度は、場所にもよるが例えば数百度程度の高温となることから、マフラー16は高温になる熱源となっている。
図中符号22は、マフラー16の上方においてリアフロアパネル12の下面を覆うように設けられたヒートプロテクタである。ヒートプロテクタ22によってリアフロアパネル12の上面に配置された不図示の周辺機器をマフラー16の熱害から保護するように図られている。
【0010】
リアフロアカバー18は、走行中の車両10の空力性能を向上させるための部材であり、リアフロアパネル12の下方でマフラー16の車両後方に並んで設けられ、リアフロアカバー18はリアフロアパネル12を下方から覆っている。
本実施の形態では、リアフロアカバー18は合成樹脂製である。
図1図5に示すように、リアフロアカバー18は、前面24と、底面28と、一対の側面30とを含んで構成されている。
前面24は、マフラー16に対向して上下方向および車幅方向に延在している。
前面24の車幅方向の幅は、マフラー16および燃料タンク14の幅よりも大きな寸法で形成されている。
前面24の上部には開口部26が設けられている。
開口部26は、前面24の上縁を含む部分を取り除くことで設けられ、したがって、開口部26は上方に開放状に設けられている。
開口部26は、均一の深さで前面24の車幅方向のほぼ全長にわたって延在し、開口部26の延在方向の両側には前面24の部分が残されている。
【0011】
底面28は、前面24の下端から車両後方に延在し、底面28は前面24とほぼ同じ寸法の車幅方向の幅を有している。
本実施の形態では、リアフロアカバー18が車両10に組み付けられた状態で底面28は、ほぼ水平面上を延在している。
図3に示すように、底面28のうち、車幅方向のほぼ中央で車両後端の箇所に車両後方に開放された牽引フック用孔32が設けられ、牽引フック用孔32から牽引フック34が下方に露出している。
一対の側面30は、前面24の車幅方向の両端と底面28の車幅方向の両端とを接続している。
一対の側面30は、車両前後方向および上下方向に延在し、車幅方向で対向している。
【0012】
本実施の形態では、リアフロアカバー18の車両10に対する組み付けは、図2に示すように、リアフロアカバー18の底面28の車両後端寄りの箇所が、バンパー下面2004に上方から重ね合わされた状態で、リアフロアカバー18がリアフロアパネル12およびバンパービームに取り付けられることでなされている。
詳細に説明すると、図3に示すように、前面24の車幅方向の一端寄りの上端から突設された第1取り付け片36がリアフロアパネル12の下面にボルトによって締結されている。
また、図5に示すように、車幅方向において牽引フック用孔32を挟む底面28の車両後端寄りの箇所にそれぞれ設けられた第1、第2取り付け孔38A、38Bに、図3に示すバンパー下面2004の取り付け孔2010、2012を挿通したボルトが挿通され、バンパービームに設けられた不図示のブラケットに対して共締めされている。
また、図4に示すように、底面28の車両後端で車幅方向の他端寄りの箇所から上方に第2取り付け片40が突設され、この第2取り付け片40がリアバンパー20の内部においてバンパービームに設けられた不図示のブラケットにボルトで締結されている。
なお、リアフロアカバー18の組み付け構造として従来公知の様々な構造が採用可能である。
【0013】
そして、図2に示すように、リアフロアカバー18がリアフロアパネル12の下方で車両10に組み付けられた状態で、リアフロアカバー18と、リアフロアパネル12およびリアバンパー20との間に、すなわち、リアフロアカバー18の内側に車両前後方向、車幅方向、上下方向に延在する空間部Sが形成されている。
また、リアフロアカバー18がリアフロアパネル12の下方で車両10に組み付けられた状態で、リアフロアカバー18の上縁部とリアフロアパネル12との間にはある程度の隙間が形成されている。
【0014】
次に作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、リアフロアパネル12の下方で熱源であるマフラー16の車両後方に並んで設けられたリアフロアカバー18がマフラー16に対向する前面24を有し、この前面24に開口部26が設けられているので、マフラー16からの熱(熱気)が開口部26を介してリアフロアカバー18の内側の空間部Sに逃げやすくなる。
したがって、マフラー16から発生する熱が車両前方に回り込むことを抑制できるため、マフラー16の前方に位置する燃料タンク14などの周辺機器に対して熱害を与えることを抑制し周辺機器の保護を図る上で有利となり、周辺機器の劣化や故障の発生を抑制する上で有利となる。
特に、エンジンのアイドリング時には、車両10の下方の空気の流れが止まることから、マフラー16から発生する熱が車両前方に回り込みやすいため、マフラー16の前方に位置する周辺機器に対する熱害が懸念される。
このような場合であっても、本実施の形態によれば、マフラー16からの熱(熱気)を開口部26を介してリアフロアカバー18の内側の空間部Sに逃がすことができるため、マフラー16の前方に位置する周辺機器に対する熱害を抑制し周辺機器の保護を図る上で有利となる。
【0015】
また、本実施の形態では、開口部26は前面24の上部に位置していることから、開口部26は走行時に車両10の下方を流れる空気から離れた箇所に位置している。
したがって、走行時に車両10の下方を流れる空気に開口部26が与える影響を低減する上で有利となり、車両10の空力性能を確保する上で有利となる。
【0016】
また、本実施の形態では、開口部26は、前面24の車幅方向のほぼ全長にわたって延在しているので、開口部26の面積を大きく確保することができ、マフラー16からの熱を開口部26を介してリアフロアカバー18の空間部Sに効率的に逃がすことができることから、マフラー16の前方に位置する周辺機器に対して熱害を与えることを抑制し周辺機器の保護を図る上でより有利となる。
また、リアフロアカバー18を車両10に組み付ける作業として、リアフロアカバー18の底面28の車両後端をリアバンパー20のバンパー下面2004の上に載せて底面28の車両後端を支点として、リアフロアカバー18の車両前方部分を下方から上方に揺動させる操作を行なうことになる。
本実施の形態では、開口部26が前面24の上部で前面24の車幅方向のほぼ全長にわたって延在していることから、開口部26の部分によってリアフロアカバー18の前面24とマフラー16との干渉を防止することができるので、リアフロアカバー18の組み付け作業の効率化を図る上で有利となる。
なお、組み付け作業時におけるリアフロアカバー18の前面24とマフラー16との干渉を防止するために、リアフロアカバー18の車両前後方向の長さを短縮することも考えられる。
しかしながら、その場合には、底面28の車両前後方向の長さが短縮されることになることから車両10の空力性能を確保する上で不利となる。
これに対して本実施の形態では、開口部26を設けることにより、リアフロアカバー18の組み付け作業の効率化を図りつつ、底面28の車両前後方向の長さを短縮することなく車両10の空力性能を確保する上で有利となる。
【0017】
また、本実施の形態では、リアフロアカバー18が車両に組み付けられた状態で、リアフロアカバー18の上縁部とリアフロアパネル12との間に形成された隙間を介して空間部Sに逃げた熱がリアフロアカバー18の外部に僅かではあるものの逃げることになる。
しかしながら、本実施の形態のように、前面24の下端から車両後方に延在する底面28が形成され、底面28に牽引フック34を露出させる牽引フック用孔32が設けられていると、マフラー16からリアフロアカバー18の空間部Sに逃げた熱を牽引フック用孔32からリアフロアカバー18の外部に効率よく逃がす上で有利となる。
そのため、リアフロアカバー18の空間部Sに熱がこもりにくくなり、マフラー16からの熱を開口部26を介してリアフロアカバー18の空間部Sに効率的に逃がす上でより有利となり、周辺機器に対して熱害を与えることを抑制し周辺機器の保護を図る上でより一層有利となる。
【0018】
また、本実施の形態では、熱源はマフラー16で構成され、マフラー16の車両前方に燃料タンク14が隣接して配置されているので、マフラー16による燃料タンク14への熱害を抑制し燃料タンク14の保護を図る上で有利となる。
【0019】
なお、本実施の形態では、熱源がマフラー16である場合について説明したが、熱源は、例えば排気管などのように車両の動作に伴って高温となる従来公知の様々な部材や装置が含まれる。
また、本実施の形態では、熱源の車両前方に隣接して配置された周辺機器が燃料タンク14である場合について説明したが、周辺機器は、例えばバッテリーパックや電装部品などのように熱害の影響を受ける従来公知の様々な機器や部品が含まれる。
【符号の説明】
【0020】
10 車両
12 リアフロアパネル
14 燃料タンク(周辺機器)
16 マフラー(熱源)
18 リアフロアカバー
20 リアバンパー
2002 バンパー後面
2004 バンパー下面
2010、2012 取り付け孔
22 ヒートプロテクタ
24 前面
26 開口部
28 底面
30 一対の側面
32 牽引フック用孔
34 牽引フック
36 第1取り付け片
38A 第1取り付け孔
38B 第2取り付け孔
40 第2取り付け片
S 空間部
図1
図2
図3
図4
図5