(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110224
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびパウチ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240807BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B65D65/40 D
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014684
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 史絵
(72)【発明者】
【氏名】本郷 勝弘
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA06
4F100AB10
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK07
4F100AK42
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21B
4F100EH66
4F100EJ38
4F100EJ38A
4F100EJ38B
4F100GB15
4F100JD02
4F100JL12
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】開封容易性を向上させる積層フィルムおよびパウチを提供すること。
【解決手段】ヒートシール層30と、二軸延伸樹脂フィルムから成る外側フィルム層40と、二軸延伸樹脂フィルムから成る内側フィルム層50とを備えた積層フィルム20であって、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角と、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角とを合計した値は、99°以下である積層フィルム20。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層と、二軸延伸樹脂フィルムから成る外側フィルム層と、前記ヒートシール層および外側フィルム層の間に配置された二軸延伸樹脂フィルムから成る内側フィルム層とを備えた積層フィルムであって、
前記外側フィルム層のTD方向に対する分子配向角と、前記内側フィルム層のTD方向に対する分子配向角とを合計した値は、99°以下であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記外側フィルム層のTD方向に対する分子配向角は、前記内側フィルム層のTD方向に対する分子配向角よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記内側フィルム層のTD方向に対する分子配向角は、42°よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記外側フィルム層および前記内側フィルム層は、前記外側フィルム層のTD方向および前記内側フィルム層のTD方向が揃うように積層されていることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の積層フィルムを備えることを特徴とするパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸樹脂フィルムから成る外側フィルム層および内側フィルム層を含む積層フィルム、および、積層フィルムを備えたパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二軸延伸樹脂フィルムは、高い機械的強度を有するため、食品や飲料等の内容物を充填するためのパウチの構成材料として幅広く利用されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、二軸延伸樹脂フィルムは、高い機械的強度を有する反面、容易に引き裂くことができず、その開封容易性を向上させる更なる改善が要求されている。
【0005】
そこで、本発明は、上述の問題点を解決するものであり、簡素な構成で、開封容易性を向上させる積層フィルムおよびパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層フィルムは、ヒートシール層と、二軸延伸樹脂フィルムから成る外側フィルム層と、前記ヒートシール層および外側フィルム層の間に配置された二軸延伸樹脂フィルムから成る内側フィルム層とを備えた積層フィルムであって、前記外側フィルム層のTD方向に対する分子配向角と、前記内側フィルム層のTD方向に対する分子配向角とを合計した値は、99°以下であることにより、上記課題を解決するものである。
上記積層フィルムの前記外側フィルム層のTD方向に対する分子配向角は、前記内側フィルム層のTD方向に対する分子配向角よりも大きくなっていてもよい。
上記いずれかの積層フィルムの前記内側フィルム層のTD方向に対する分子配向角は、42°よりも小さくなっていてもよい。
上記いずれかの積層フィルムの前記外側フィルム層および前記内側フィルム層は、前記外側フィルム層のTD方向および前記内側フィルム層のTD方向が揃うように積層されていてもよい。
本発明のパウチは、上記いずれかの積層フィルムを備えることにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡素な構成で、開封容易性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパウチを示す平面図。
【
図2】
図1のII―II位置において矢印方向に見て示すパウチの断面図。
【
図7】試験例5の試験条件・試験結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態であるパウチ10について、図面に基づいて説明する。
【0010】
パウチ10は、
図1に示すように、重ねた積層フィルム20の外縁を熱接着した製袋用シール部(ヒートシール部)を形成することにより袋状に形成され、その内側の収容部に食品等の内容物を収容するものである。
【0011】
本実施形態では、パウチ10は、
図1や
図2に示すように、積層フィルム20から成る表側本体フィルムと、積層フィルム20から成る裏側本体フィルムと、パウチ底部において表側本体フィルムと裏側本体フィルムとの間に2つ折り状態で配置された底材フィルム60とを備え、これらフィルムを所定位置で熱溶着して成る所謂スタンディングパウチとして構成されている。
【0012】
各積層フィルム20は、
図2に示すように、ヒートシール層30と、二軸延伸樹脂フィルムから成る外側フィルム層40と、ヒートシール層30および外側フィルム層40の間に配置された二軸延伸樹脂フィルムから成る内側フィルム層50とを積層して形成されている。
【0013】
以下に、積層フィルム20を構成する各層について説明する。
<ヒートシール層30>
【0014】
ヒートシール層30は、所謂シーラントフィルムとして形成され、
図2に示すように、パウチ10に製袋された状態で、他方の積層フィルム20側に面するように最も内側に配置され、他方の積層フィルム20のヒートシール層30(および底材フィルム60のヒートシール層)に熱溶着されるものである。
【0015】
ヒートシール層30の材料としては、公知の種々の材料を用いることができ、例えば、ヒートシール性を有するポリオレフィンを使用することができる。
このようなポリオレフィンとしては、例えば低密度、中密度或いは高密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
これら材料を、単独でも或いは2種以上のブレンド物としても使用してもよい。
特に耐熱性の観点からプロピレン系重合体が適当であり、ホモポリプロピレンや、プロピレンを主体とするランダム共重合体やブロック共重合体を使用してもよい。
また、ヒートシール層30を、1つの層から構成してもよく、異なる材料から成る2つ以上の層を積層して構成してもよい。
【0016】
ヒートシール層30は、30~150μmであることが好ましく、50~100μmであることが更に好ましい。
<外側フィルム層40・内側フィルム層50>
【0017】
外側フィルム層40および内側フィルム層50は、それぞれ、二軸延伸樹脂フィルムから成る二軸延伸樹脂フィルム層として構成されている。
【0018】
外側フィルム層40および内側フィルム層50を構成する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体及びテレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル系樹脂、ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(密度0.925g/cm3未満)、直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.925g/cm3未満)、中密度ポリエチレン(密度0.925~0.945g/cm3未満)、高密度ポリエチレン(密度0.945g/cm3以上)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、等のビニル系樹脂、並びにセロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース系樹脂等が挙げられる。
外側フィルム層40および内側フィルム層50は、それぞれ、上記の樹脂材料のうちの1種で構成してもよく、2種以上で構成してもよい。
【0019】
外側フィルム層40および内側フィルム層50は、それぞれ、本発明の特性を損なわない範囲において、ワックス、充填材、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料及び染料等の着色剤並びに蛍光発色材料等の添加材を含んでいてもよい。
【0020】
外側フィルム層40の厚みは、5~50μmであることが好ましく、10~30μmであることが更に好ましい。
外側フィルム層40の厚みを上記の数値範囲に設定することにより、外側フィルム層40の機械的強度を維持しつつ、パウチ10(積層フィルム20)の開封容易性を向上させることができる。
【0021】
内側フィルム層50の厚みは、5~50μmであることが好ましく、10~30μmであることが更に好ましい。
内側フィルム層50の厚みを上記の数値範囲に設定することにより、内側フィルム層50の機械的強度を維持しつつ、パウチ10(積層フィルム20)の開封容易性を向上させることができる。
【0022】
本実施形態では、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角と、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角とを合計した値が、99°以下になるように、外側フィルム層40および内側フィルム層50が形成されている。
【0023】
また、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角は、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角よりも大きくなるようにするのが好ましい。
【0024】
また、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角は、42°よりも小さくするのが好ましく、38°以下であるようにするのが更に好ましい。
【0025】
外側フィルム層40および内側フィルム層50は、外側フィルム層40のTD方向および内側フィルム層50のTD方向が揃うように積層されている。
【0026】
ここで、本明細書における「TD方向に対する分子配向角」とは、フィルム流れ方向(樹脂を流す方向)であるMD方向(machine direction)に直交するTD方向(traverse direction)からの分子配向軸のずれ(角度)のことを意味する。なお、一般的な汎用樹脂の場合、分子配向軸は屈折率が最も高くなる方向となり、この方向とのずれ角を意味する。
このような分子配向角は、例えば、(詳しくは後述する)2枚の偏光板を用いる簡易法、位相差測定装置(例えば、偏光顕微鏡や王子計測機器社製KOBRA-21ADH)を用いて測定することができる。
【0027】
また、本明細書における分子配向角は、絶対値で示している。すなわち、分子配向軸がTD方向に対して反時計回りに(例えば30°の角度)傾斜した場合、および、分子配向軸がTD方向に対して時計回りに(例えば30°の角度)傾斜した場合のいずれについても、本明細書では、TD方向に対する分子配向角を正の数値(30°)として表している。
【0028】
また、底材フィルム60については、積層フィルム20のヒートシール層30に熱溶着されるヒートシール層(図示しない)を備えるものであれば、その具体的態様は、如何なるものでもよい。
【0029】
また、本実施形態では、パウチ10が、
図1に示すように、自動蒸気抜き部70と、ノッチ80とを有している。
【0030】
自動蒸気抜き部70は、
図1に示すように、表裏の積層フィルム20を熱溶着した蒸気抜きシール部71と、蒸気抜きシール部71によって周囲を囲まれた蒸気開放部72と、蒸気開放部72に形成された蒸気抜き部73とを有し、電子レンジによる加熱時にパウチ10(の内容物収容部)の内圧の上昇に伴って蒸気抜きシール部71が剥離し、蒸気開放部72および蒸気抜き部73を通じて、パウチ10内の圧力を外部に逃がすように構成されている。蒸気開放部72は、表裏の積層フィルム20が熱溶着されていない未シール部や、蒸気抜きシール部71よりもシール強度が低くなるように熱接着を施した弱接着部、等として形成され、蒸気抜き部73は、表裏の積層フィルム20の少なくとも一方(本実施形態では両方)に設けられた孔またはスリット(本実施形態では孔)として形成されている。
【0031】
ノッチ80は、パウチ10(積層フィルム20)の開封を容易にするために、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとしての2枚の積層フィルム20が重なった箇所において、パウチ10の製袋用シール部の外縁に切り欠き状または切り込み状に形成されるものである。
【実施例0032】
次に、フィルム層40、50のTD方向に対する分子配向角とパウチ10(積層フィルム20)の開封性との関係を確認するために行った試験例について、
図3に基づいて以下に説明する。
<試験例1>
【0033】
まず、試験例1の試験条件については、以下の通りである。
【0034】
まず、試験例1では、TD方向に対する分子配向角が異なる様々なフィルム層40、50を組み合わせた積層フィルム20から成る複数の試験品(比較例1-1~3、実施例1-1~16)を用意し、人の手によってパウチ10の開封作業を行った場合の開封距離(積層フィルム20が切れた距離)を計測した。
【0035】
具体的な試験条件については、以下のとおりである。
【0036】
「積層フィルム20の層構成」
試験例1では、全ての試験品(比較例1-1~3、実施例1-1~16)に共通して、外側から順に、厚み12μmのPETから成る二軸延伸樹脂フィルム(外側フィルム層40、東洋紡(株)製、エステルフィルム)、厚み12μmのPETから成る二軸延伸樹脂フィルムの外側面にアルミナ蒸着層が形成されたバリア性PETフィルム(内側フィルム層50、凸版印刷(株)製、GLフィルム)、厚み12μmの易引裂性を有したPETフィルム(ユニチカ製、エンブレット)、厚み70μmの(無延伸ポリプロピレン或いはキャストPPとも呼ばれる)CPP(Cast Polypropylene)から成るCPPフィルム(ヒートシール層30、東レフィルム加工(株)、トレファンNO)を、積層して各層間を接着して成る積層フィルム20を用いた。
外側フィルム層40および内側フィルム層50は、外側フィルム層40のTD方向および内側フィルム層50のTD方向が揃うように積層した。
「分子配向角の測定方法」
試験例1では、後述する開封作業を行った後の試験品であるパウチ10において、パウチ10のTD方向(
図3の上下方向)の中央付近で、TD方向5.0cm×MD方向4.0cmのサイズで積層フィルム20を切り出した後、当該切り出した積層フィルム20を各層(外側フィルム層40、内側フィルム層50)毎に分離させ、以下に記載する簡易法によって、各層(外側フィルム層40、内側フィルム層50)の、TD方向に対する分子配向角をそれぞれ計測した。
ここで、上記の簡易法は、
図8に示すように、下記の(1)~(3)の手順で実施される計測方法である。
(1)2枚の偏光板を直交ニコルとなるように重ね合わせ、2枚の偏光板の間に評価フィルム(外側フィルム層40、内側フィルム層50)を挟む。
(2)次に、評価フィルムを偏光板に挟んだ状態で、白色光(蛍光灯)にかざしながら評価フィルムのみを回転させて、最も暗くなる位置(消光位)とする(
図8a)。この時、それぞれの偏光板の偏光方向と評価フィルムの光学的主軸(屈折率が最も高くなる軸とこの軸と直交する軸)とが一致する。
(3)次に、白色光にかざしながら、それぞれの偏光板の偏光方向を中心軸にして、偏光板と評価サンプルを傾けた際(
図8b-1、
図8b-2)、評価フィルムが明るくなる、乃至は干渉色を示す際の傾斜軸に直交する偏光方向が、評価フィルムの屈折率が最も高くなる方向として評価できる。例えば、
図8b-2の場合はY軸に傾斜した状態に相当し、分子配向角θは
図8cのように求められる。
なお、本試験例1(および試験例2~5)では、上述した簡易法を用いて各フィルムの分子配向角を計測したが、当該簡易法以外の方法、例えば、公知の位相差測定装置(例えば、偏光顕微鏡や王子計測機器社製KOBRA-21ADH)を用いて分子配向角を計測してもよい。上記の位相差測定装置については、公知の測定方法、例えば、装置メーカーのマニュアルに従って実施すればよい。
「試験品(パウチ)の構成」
試験例1では、重ねた2枚の積層フィルム20の外縁(4辺)に熱溶着を施して製袋用シール部を形成した所謂平パウチ(四方シール型パウチ)を試験品として用いた。
また、試験例1で用いたパウチ10には、
図3に示すように、自動蒸気抜き部70およびノッチ80が形成されている。これら自動蒸気抜き部70およびノッチ80は、上記で
図1を用いて説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
なお、全ての試験品(比較例1-1~3、実施例1-1~16)に共通して、パウチ10を構成する表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとして、同じ積層フィルム20を使用しており、すなわち、例えば実施例1-1の場合、TD方向に対する分子配向角42°の外側フィルム層40とTD方向に対する分子配向角50°の内側フィルム層50とを積層して成る積層フィルム20を、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとして使用している。
また、全ての試験品に共通して、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムの(各フィルム層40、50の)TD方向が揃うように、表側・裏側本体フィルムを重ねて製袋している。
「試験方法」
試験例1では、まず、水170gを充填したパウチ10に121℃で30分の条件でレトルト殺菌を施した後、500W電子レンジで自動蒸気抜き部70が開口する(蒸気が抜ける)まで加熱を行った。
そして、上記の通りに加熱した後、ノッチ80を起点としてパウチ10の開封作業を行い、MD方向(
図3の紙面左右方向)におけるノッチ80からの開封距離(積層フィルム20が引き裂かれた距離)を計測した。
なお、パウチ10のMD方向における全幅寸法は、130mmである。
また、上記のパウチ10の開封作業では、人の手によって、MD方向に沿って
図3の矢印で示す開封方向Dに向けて、パウチ10の開封作業(手前引き、奥引き、各n=15個)、具体的には、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとしての2枚の積層フィルム20が重ねて配置された箇所を引き裂く作業を行った。
「評価方法」
試験例1では、「開封距離~45mm」が(全数30個のうち)0個となった場合を「◎」、「開封距離~45mm」が1個となった場合を「○(○)」、「開封距離~45mm」が2~3個となった場合を「○(△)」、「開封距離~45mm」が7~9個となった場合を「△」、「開封距離~45mm」が18~23個となった場合を「×」として評価した。
なお、開封距離45mmは、パウチ10内の大きめの具材(固形物)を取り出すために必要となる開封距離であるものとして設定した。
なお、
図3に示す表における、「~45mm」は、開封距離が45mm以下であったことを意味し、「~65mm」は、開封距離が45mmよりも長く65mm以下であったことを意味し、「~87mm」は、開封距離が65mmよりも長く87mm以下であったことを意味し、「~130mm」は、開封距離が87mmよりも長く130mm以下であったことを意味している。この点については、
図4、5、6に示す表においても同様である。
【0037】
図3に示す試験例1の試験結果からは、以下のことを読み取ることができる。
【0038】
まず、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角と、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角とを合計した値が、99°以下である(100°よりも小さい)場合に、パウチ10(積層フィルム20)の良好な開封性が得られることが分かった。このことは、比較例1-1~3と実施例1-1~16との比較から読み取ることができる。
【0039】
また、上記に加えて、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角が、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角よりも大きい場合に、パウチ10(積層フィルム20)の更に良好な開封性が得られることが分かった。このことは、実施例1-1~3と実施例1-4~16との比較から読み取ることができる。
また、上記からは、積層フィルム20全体の引き裂き性は、上述した外側フィルム層40および内側フィルム層50の分子配向角の関係性に加えて、内側フィルム層50自体の引き裂き性の影響も受けることが分かる。
【0040】
また、上記に加えて、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角が42°よりも小さい場合(更に好ましくは38°以下である場合)に、パウチ10(積層フィルム20)の更に良好な開封性が得られることが分かった。このことは、実施例1-4~6と実施例1-7~16との比較から読み取ることができる。
【0041】
また、試験例1では電子レンジ加熱後のパウチ10を用いて試験を行っていることから分かるように、パウチ10の開封性が悪くなる加熱後においても、上述した分子配向角に関する条件を満たした場合、パウチ10の良好な開封性が得られることが分かる。言い替えると、上述した分子配向角に関する条件を満たしたパウチ10は、湯煎、レトルト処理、電子レンジ加熱等の加熱処理が施されるパウチにおいて、その効果が特に顕著になる。
【0042】
ここで、試験例1(~5)では、分子配向角を絶対値で示しており、すなわち、分子配向軸がTD方向に対して反時計回りに(例えば30°の角度)傾斜した場合、および、分子配向軸がTD方向に対して時計回りに(例えば30°の角度)傾斜した場合のいずれについても、TD方向に対する分子配向角を正の数値(30°)として表している。
なお、フィルム層40、50を積層する時の、各フィルム層の分子配向軸の傾斜の向き(反時計回りまたは時計回り)は、積層フィルム20の引き裂き性に影響を与えることはなく、すなわち、例えば、分子配向軸がTD方向に対して反時計回りに40°の角度で傾斜した外側フィルム層40に対して、分子配向軸がTD方向に対して反時計回りに30°の角度で傾斜した内側フィルム層50を積層した場合と、上記と同じ(分子配向軸がTD方向に対して反時計回りに40°の角度で傾斜した)外側フィルム層40に対して、分子配向軸がTD方向に対して時計回りに30°の角度で傾斜した内側フィルム層50を積層した場合とで、積層フィルム20の引き裂き性に変わりはない。
<試験例2、3>
【0043】
次に、積層フィルム20の層構成のみを試験例1とは変えて実施した試験例2、3について、
図4、5に基づいて以下に説明する。
【0044】
まず、試験例2においては、外側から順に、厚み15μmのPBTから成る二軸延伸樹脂フィルム(外側フィルム層40、東洋紡製、タフスターフィルム)、厚み12μmのPETから成る二軸延伸樹脂フィルムの外側面にアルミナ蒸着層が形成されたバリア性PETフィルム(内側フィルム層50、凸版印刷(株)製、GLフィルム)、厚み60μmのCPPフィルム(ヒートシール層30、東レフィルム加工(株)、トレファンNO)を、積層して各層間を接着して成る積層フィルム20を用いた。
【0045】
また、試験例3においては、外側から順に、厚み12μmのPETから成る二軸延伸樹脂フィルム(外側フィルム層40、東洋紡(株)製、エステルフィルム)、厚み12μmのPETから成る二軸延伸樹脂フィルムの外側面にアルミナ蒸着層が形成されたバリア性PETフィルム(内側フィルム層50、凸版印刷(株)製、GLフィルム)、厚み60μmのCPPフィルム(ヒートシール層30、東レフィルム加工(株)、トレファンNO)を、積層して各層間を接着して成る積層フィルム20を用いた。
【0046】
また、積層フィルム20以外の、試験例2、3の試験方法・条件は、上述した試験例1の試験方法・条件と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
図4、5に示す試験例2、3の試験結果(および
図3に示す試験例1の試験結果)から、積層フィルム20の層構成を試験例1とは異ならせた場合であっても、上述した試験例1と同様の試験結果が得られることが分かった。
【0048】
すなわち、試験例2、3においても、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角と、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角とを合計した値が、99°以下である場合に、パウチ10(積層フィルム20)の良好な開封性が得られることが分かる。
【0049】
また、試験例2、3においても、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角が、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角よりも大きい場合に、パウチ10(積層フィルム20)の更に良好な開封性が得られることが分かる。
【0050】
また、試験例2、3においても、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角が42°よりも小さい場合に、パウチ10(積層フィルム20)の更に良好な開封性が得られることが分かる。
【0051】
また、上述した試験例1~3で用いた積層フィルム20以外にも、PET/PET/CPP、PET/PBT/CPP、PET/バリアPBT/CPP、PBT/PET/CPP、バリアPET/PET/CPP、バリアPET/PBT/CPP、バリアPET/バリアPBT/CPP、バリアPBT/PET/CPP、バリアPBT/バリアPET/CPP、の層構成の積層フィルム20でも、上述した試験例1の試験方法・条件と同様の試験方法・条件で試験を行ったが、いずれの試験においても、上述した試験例1~3と同様の効果が得られた。
なお、上記の層構成の表記は、外側フィルム層40/内側フィルム層50/ヒートシール層30を意味しており、例えば、PET/PET/CPPの場合、PET=外側フィルム層40/PET=内側フィルム層50/CPP=ヒートシール層30を意味している。
また、上記の層構成の表記における、「PET」は、PETから成る二軸延伸樹脂フィルムのことを意味し、「PBT」は、PBTから成る二軸延伸樹脂フィルムのことを意味し、「バリアPET」は、PETから成る二軸延伸樹脂フィルムの外側面にアルミナ蒸着層が形成されたバリア性PETフィルムのことを意味し、「バリアPBT」は、PBTから成る二軸延伸樹脂フィルムの外側面にSiO2蒸着層が形成されたバリア性PBTフィルムのことを意味し、「CPP」は、CPPを含むフィルムのことを意味している。
<試験例4>
【0052】
次に、ヒートシール層30の厚みとパウチ10(積層フィルム20)の開封性との関係を確認するために行った試験例4について、
図6に基づいて以下に説明する。
【0053】
試験例4では、TD方向に対する分子配向角53°の外側フィルム層40とTD方向に対する分子配向角52°の内側フィルム層50とを積層した積層フィルム20において、ヒートシール層30の厚みのみを変えて、開封作業を行った。
ヒートシール層30の厚み以外の試験例4の試験条件・方法については、上述した試験例1の試験条件・方法と全く同じであるため、その説明を省略する。
【0054】
図6に示す試験例4の試験結果からは、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角と、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角とを合計した値が、99°より大きい場合には、ヒートシール層30の厚みを薄くした場合であっても、良好な開封性が得られないことが分かった。
<試験例5>
【0055】
次に、試験例5の試験条件については、以下の通りである。
【0056】
まず、試験例5では、TD方向に対する分子配向角が異なる様々なフィルム層40、50を組み合わせた積層フィルム20から成る複数種の試験品(比較例5-1~2、実施例5-1~6)を用意し、人の手によってパウチ10の開封作業を行った場合の開封の程度を確認した。
【0057】
具体的な試験条件については、以下のとおりである。
【0058】
「積層フィルム20の層構成」
試験例5では、全ての試験品(比較例5-1~2、実施例5-1~6)に共通して、外側から順に、厚み12μmのPETから成る二軸延伸樹脂フィルム(外側フィルム層40、東洋紡(株)製、エステルフィルム)、厚み15μmのNY(ナイロン)から成る二軸延伸樹脂フィルム(内側フィルム層50、ユニチカ(株)、エンブレムON)、厚み7μmのAL(アルミニウム、東洋アルミニウム(株)製)からなるアルミフィルム、厚み50μmのCPPフィルム(ヒートシール層30、東レフィルム加工(株)製、トレファンNO)を、積層して各層間を接着して成る積層フィルム20を用いた。
外側フィルム層40および内側フィルム層50は、外側フィルム層40のTD方向および内側フィルム層50のTD方向が揃うように積層した。
「分子配向角の測定方法」
試験例5では、後述する開封作業を行った後の試験品であるパウチ10において、パウチ10のTD方向(
図7の上下方向)の中央付近で、TD方向5.0cm×MD方向4.0cmのサイズで積層フィルム20を切り出した後、当該切り出した積層フィルム20を各層(外側フィルム層40、内側フィルム層50)毎に分離させ、上述した簡易法によって、各層(外側フィルム層40、内側フィルム層50)の、TD方向に対する分子配向角をそれぞれ計測した。
「試験品(パウチ)の構成」
試験例5では、ノッチ80が形成された
図7に示す態様のパウチ10を試験品として用いた。
試験例5で用いたパウチ10は、重ねた2枚の積層フィルム20の外縁(4辺)に熱溶着を施して製袋用シール部を形成した所謂平パウチ(四方シール型パウチ)として構成されている。
また、試験例5で用いたパウチ10には、
図7に示すように、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとしての積層フィルム20が重なった箇所にノッチ80が形成されている。
また、試験例5では、全ての試験品(比較例5-1~2、実施例5-1~6)に共通して、パウチ10を構成する表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとして、同じ積層フィルム20を使用しており、すなわち、例えば実施例5-1の場合、TD方向に対する分子配向角43°の外側フィルム層40とTD方向に対する分子配向角50°の内側フィルム層50とを積層して成る積層フィルム20が、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとして使用されている。
また、全ての試験品に共通して、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムの(各フィルム層40、50の)TD方向が揃うように、表側・裏側本体フィルムを重ねて製袋している。
「試験方法」
試験例5では、パウチ10内に内容物を充填していない空袋の状態、パウチ10内に水を充填した状態(具体的には、180gの水を充填し120℃・30分の条件でレトルト処理を施したパウチ10を、湯煎によって温めた状態)、および、パウチ10内にカレーを充填した状態(具体的には、180gのカレーを充填し120℃・30分の条件でレトルト処理を施したパウチ10を、湯煎によって温めた状態)で、ノッチ80を起点としてパウチ10の開封作業を行い、パウチ10の開封の程度を確認した。
また、上記のパウチ10の開封作業では、人の手によって、MD方向に沿って
図7の矢印で示す開封方向Dに向けて、パウチ10の開封作業(手前引き、奥引き、各n=15個)、具体的には、表側本体フィルムおよび裏側本体フィルムとしての2枚の積層フィルム20が重ねて配置された箇所を引き裂く作業を行った。
「評価方法」
試験例5では、ノッチ80が形成された側とは反対側の製袋用シール部Sまでパウチ10の開封(積層フィルム20の引き裂き)が達しなかった場合を「×」、ノッチ80が形成された側とは反対側の製袋用シール部Sまでパウチ10の開封が達したものの、製袋用シール部Sを切りきれなかった場合を「△」、製袋用シール部Sまで切りきれたものの、内側フィルム層50からの外側フィルム層40の剥離(デラミ)が生じた場合を「○」、製袋用シール部Sまで切りきることができ、かつ、内側フィルム層50からの外側フィルム層40の剥離(デラミ)が生じなかった場合を「◎」として評価した。
【0059】
図7に示す試験例5の試験結果からは、以下のことを読み取ることができる。
【0060】
まず、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角と、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角とを合計した値が、99°以下である(100°よりも小さい)場合に、パウチ10(積層フィルム20)の良好な開封性が得られることが分かった。このことは、比較例5-1~2と実施例5-1~6との比較から読み取ることができる。
【0061】
また、上記に加えて、外側フィルム層40のTD方向に対する分子配向角が、内側フィルム層50のTD方向に対する分子配向角よりも大きい場合に、パウチ10(積層フィルム20)の更に良好な開封性が得られることが分かった。このことは、実施例5-1~2と実施例5-3~6との比較から読み取ることができる。
【0062】
また、試験例5および上述した試験例1から、上述した分子配向角に関する条件を満たした場合、外側フィルム層40および内側フィルム層50以外の層の態様、特に、内側フィルム層50の内側に形成される層(試験例1の場合は厚み12μmのPETフィルム、試験例5の場合は厚み7μmのアルミフィルム)の態様に依らずに、パウチ10(積層フィルム20)の良好な開封性が得られることが分かった。
なお、外側フィルム層40および内側フィルム層50以外の層、特に、内側フィルム層50の内側に形成される層として、配向性を阻害しないフィルム(無配向のフィルムや易引裂性を有したフィルム等)を使用するのが好ましい。
【0063】
また、試験例5の試験結果からは、パウチ10内に内容物を充填していない空袋の状態、パウチ10内に水を充填した状態、および、パウチ10内にカレーを充填した状態に共通して、同様の結果が得られることが分かった。
【0064】
また、試験例5の試験結果から、上述した分子配向角に関する条件を満たした場合、表裏の積層フィルム20が熱溶着されたシール部(
図7に示す例では、製袋用シール部)の良好な切り取りを達成できることが分かる、言い換えると、上述した分子配向角に関する条件を満たさない場合、シール部の良好な切り取りを達成できないことが分かった。
なお、ここで言う、シール部の切り取りとは、シール部の内縁において表側本体フィルムの破断(引き裂き)と裏側本体フィルムの破断とが合流した状態(表裏の破断位置が一致した状態)で、シール部を切り取る(引き裂く)ことである。
【0065】
このように、シール部における良好な切り取り性を得られることから、
図7に示すパウチ10のように、表側本体フィルムの破断と裏側本体フィルムの破断とを(製袋用シール部の内縁または内縁の近傍において)合流させるように各フィルムの破断を誘導する誘導部90を備えたパウチ10において、上述した分子配向角に関する条件を採用するのが有利である。
【0066】
ここで、
図7に示すパウチ10では、開封方向Dを延長させた仮想線(
図7の紙面左右方向に延びる仮想線)に対して斜めに傾斜した製袋用シール部の内縁部を、上記の誘導部90として利用している。すなわち、
図7に示すパウチ10では、パウチ10の開封時に、表側本体フィルムの破断位置と裏側本体フィルムの破断位置とが互いに上下にずれた、所謂表裏ずれ(泣き別れ)を生じた場合であっても、誘導部90(製袋用シール部の内縁部)において各積層フィルム20の破断を誘導して合流させることで、シール部(製袋用シール部)の円滑な引き裂きの実現を図っている。
【0067】
なお、上記の誘導部90の具体的態様については、表側本体フィルムの破断(引き裂き)と裏側本体フィルムの破断とを合流させるように、各積層フィルム20の破断を誘導するものであれば、如何なるものでもよい。
例えば、表側・裏側本体フィルム単体よりも破断しにくい強化部の縁部(製袋用シール部の内縁部)を、誘導部90として機能させてもよい。この強化部は、例えば、表側・裏側本体フィルム間を部分的に熱溶着、接着することで設けられたものであってもよく、表側・裏側本体フィルム間または各表側・裏側本体フィルムにテープ等の別部材を着けることで設けられたものであってもよい。
また、表側・裏側本体フィルム単体よりも破断し易い弱化部を、誘導部90として機能させてもよい。この弱化部は、例えば、各表側・裏側本体フィルムに、フィルム厚み方向に貫通しないハーフカット部をフィルム平面方向に連続する線状やミシン目状に形成することで設けられたものであってもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせてパウチ10や積層フィルム20を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、パウチ10が、所謂スタンディングパウチとして構成されているものとして説明したが、パウチ10の具体的態様については、少なくとも1枚の積層フィルム20を備えるものであれば、所謂平パウチ、三方シール型パウチ、ピロー型パウチ、ガセット型パウチ等、如何なるものでもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、パウチ10に自動蒸気抜き部70やノッチ80が設けられているものとして説明したが、このような自動蒸気抜き部70やノッチ80の少なくとも一方を設けなくてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、積層フィルム20が、ヒートシール層30と外側フィルム層40と内側フィルム層50の3層から形成されているものとして説明したが、各層間や外側フィルム40の外側面側に(または、各層30、40、50の一部として)、印刷インキから成る印刷層や、ポリエステル系ポリウレタン樹脂やポリエーテル系ポリウレタン樹脂等から成るアンカーコート層や、ウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂等から成るオーバーコート層(トップコート層)や、ガスバリア性や水分バリア性等の各種バリア性を積層フィルム20に付与するためのバリア層、等を設けてもよい。
なお、バリア層としては、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の無機物または無機酸化物をいずれかの層の内側面や外側面に蒸着または接着して成る層や、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体等の樹脂フィルムをいずれかの層の内側面(パウチ内側に向く面)や外側面(パウチ外側に向く面)に接着して成る層、等が考えられる。
【0072】
また、いずれかの層の内側面や外側面に、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、またはフレーム処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0073】
また、積層フィルムを構成する各層間の固着方法については、ウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤等を用いた接着や蒸着等、各層間を固着し得るものであれば、如何なるものでもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、外側フィルム層40および内側フィルム層50が、外側フィルム層40のTD方向および内側フィルム層50のTD方向が揃うように積層されているものとして説明したが、外側フィルム層40のTD方向および内側フィルム層50のTD方向が揃わない、例えば、外側フィルム層40のTD方向および内側フィルム層50のTD方向が互いに直交するように、外側フィルム層40および内側フィルム層50を積層してもよい。