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特開2024-110242異常通知装置、異常通知システム及び異常通知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110242
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】異常通知装置、異常通知システム及び異常通知方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20240807BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014718
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田尾 晋
(72)【発明者】
【氏名】北見 淳
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】簡便に介護上の異常を検知する技術の提供を目的とする。
【解決手段】 異常検知装置は、所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する認証管理部と、介護サービスの内容の入力を受け付けると介護サービスの提供者から利用者へ提供された介護サービスとして所定の記憶部に記録するサービス記録部と、利用者に係る直近期間の介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する異常検知部と、異常を関係者の端末に送信するアラート部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する認証管理部と、
前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして所定の記憶部に記録するサービス記録部と、
前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する異常検知部と、
前記異常を関係者の端末に送信するアラート部と、
を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置であって、
前記認証管理部は、前記介護サービスの前記提供者の前記生体情報をあらかじめ保持し、受け付けた前記生体情報との適合を判断して前記提供者を特定する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の異常検知装置であって、
前記認証管理部は、前記介護サービスの前記利用者の前記生体情報をあらかじめ保持し、受け付けた前記生体情報との適合を判断して前記利用者を特定する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記介護サービスの記録を用いて機械学習した学習済みモデルを用いて、一つまたは複数の前記異常の傾向に応じて、該異常の原因を推定する原因推定部を備え、
前記アラート部は、前記異常および前記原因を関係者の端末に送信する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を、複数の前記利用者に係る過去の所定期間の記録と対比して前記所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して、前記介護サービスの提供内容に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、前記介護サービスの提供内容の異常を検知する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を、複数の前記利用者に係る過去の所定期間の記録と対比して前記介護サービスの提供内容に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、前記介護サービスの提供内容の異常を検知する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して、健康に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、健康上の異常を検知する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を、複数の前記利用者に係る過去の所定期間の記録と対比して、健康に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、健康上の異常を検知する、
ことを特徴とする異常検知装置。
【請求項10】
所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する認証管理部と、
前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして記録するサービス記録部と、
前記介護サービスの記録を用いて機械学習した学習済みモデルを用いて、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録について異常を検知する異常検知部と、
前記異常を関係者の端末に送信するアラート部と、
を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項11】
所定の介護施設における介護サービスに係る異常を検知する異常検知装置と、前記異常検知装置と通信可能に接続される可搬端末と、を備える異常検知システムであって、
前記可搬端末は、
前記介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を読み取る生体情報読取部と、
前記生体情報読取部が読み取った前記生体情報を前記異常検知装置に送信して生体認証を要求する生体認証部と、
前記介護サービスの内容の入力を受け付ける入出力制御部と、
を備え、
前記異常検知装置は、
前記介護施設における前記介護サービスの前記提供者および前記利用者の前記生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの前記提供者および前記利用者のそれぞれを特定する認証管理部と、
前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの前記提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして所定の記憶部に記録するサービス記録部と、
前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する異常検知部と、
前記異常を関係者の端末に送信するアラート部と、
を備えることを特徴とする異常検知システム。
【請求項12】
異常検知装置を用いた異常検知方法であって、
前記異常検知装置は、所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する認証管理ステップと、
前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして記録するサービス記録ステップと、
前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する異常検知ステップと、
前記異常を関係者の端末に送信するアラートステップと、
を実施することを特徴とする異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常通知装置、異常通知システム及び異常通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
介護サービスの現場では、高齢化の加速、介護サービスの多様化、複雑化等により、介護施設や訪問介護サービス機関等の業務負荷が増加している。介護施設や訪問介護サービス機関では、介護サービスを実施、提供するにあたり、誰が、いつ、どこで、誰に対して、何を行ったかを客観的かつ正確に記録する必要性も高まっている。しかし、紙とペンによる記録、あるいはタブレット端末等を用いた記録作業は、煩雑かつ誤入力等の課題があり、介護者の業務負荷が高い。また、これらの介護サービスにおいて、介護者から介護内容について関係者、例えば被介護者の身元引受人等、所定の関係がある者等へ報告する業務も、介護施設側の業務負荷となっている。
【0003】
なお、特許文献1には、被介護者の居室に設置されたスマートスピーカーと、前記スマートスピーカーとクラウドサーバーとを接続するインターネット通信手段と、前記クラウドサーバー内には、前記スマートスピーカーに応答して音声認識、自然言語処理を行うソフトウェアおよび前記介護サービスの記録に必要な項目の介護テーブルが格納されており、前記介護者の介護サービス項目に関連する呼びかけに対し、前記AIアシスタントソフトウェアと前記介護テーブルとは協働して前記介護テーブルの項目内容を介護日誌として記録するサービスシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-120752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のシステムでは、介護施設の介護サービスの記録、参照が可能となるが、介護スタッフが気づきにくい傾向、特に介護サービスの水準や被介護者の健康水準の異常変化等について検知することはできない。
【0006】
本発明の目的は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡便に介護上の異常を検知する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る異常検知装置は、所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する認証管理部と、前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして所定の記憶部に記録するサービス記録部と、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する異常検知部と、前記異常を関係者の端末に送信するアラート部と、を備える。
【0009】
また、上記の異常検知装置において、前記認証管理部は、前記介護サービスの前記提供者の前記生体情報をあらかじめ保持し、受け付けた前記生体情報との適合を判断して前記提供者を特定するものであってもよい。
【0010】
また、上記の異常検知装置において、前記認証管理部は、前記介護サービスの前記利用者の前記生体情報をあらかじめ保持し、受け付けた前記生体情報との適合を判断して前記利用者を特定するものであってもよい。
【0011】
また、上記の異常検知装置において、前記介護サービスの記録を用いて機械学習した学習済みモデルを用いて、一つまたは複数の前記異常の検知傾向に応じて、該異常の原因を推定する原因推定部を備え、前記アラート部は、前記異常および前記原因を関係者の端末に送信するものであってもよい。
【0012】
また、上記の異常検知装置において、前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を、複数の前記利用者に係る過去の所定期間の記録と対比して前記所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知するものであってもよい。
【0013】
また、上記の異常検知装置において、前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して、前記介護サービスの提供内容に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、前記介護サービスの提供内容の異常を検知するものであってもよい。
【0014】
また、上記の異常検知装置において、前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を、複数の前記利用者に係る過去の所定期間の記録と対比して前記介護サービスの提供内容に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、前記介護サービスの提供内容の異常を検知するものであってもよい。
【0015】
また、上記の異常検知装置において、前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して、健康に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、健康上の異常を検知するものであってもよい。
【0016】
また、上記の異常検知装置において、前記異常検知部は、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を、複数の前記利用者に係る過去の所定期間の記録と対比して、健康に係る所定の指標値の変化傾向を特定し、健康上の異常を検知するものであってもよい。
【0017】
また、本発明の別の態様にかかる異常検知装置は、所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する認証管理部と、前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして記録するサービス記録部と、前記介護サービスの記録を用いて機械学習した学習済みモデルを用いて、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録について異常を検知する異常検知部と、前記異常を関係者の端末に送信するアラート部と、を備える。
【0018】
また、本発明の別の態様にかかる異常検知システムは、所定の介護施設における介護サービスに係る異常を検知する異常検知装置と、前記異常検知装置と通信可能に接続される可搬端末と、を備える異常検知システムであって、前記可搬端末は、前記介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を読み取る生体情報読取部と、前記生体情報読取部が読み取った前記生体情報を前記介護通知装置に送信して生体認証を要求する生体認証部と、前記介護サービスの内容の入力を受け付ける入出力制御部と、を備え、前記異常検知装置は、前記介護施設における前記介護サービスの前記提供者および前記利用者の前記生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの前記提供者および前記利用者のそれぞれを特定する認証管理部と、前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの前記提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして所定の記憶部に記録するサービス記録部と、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する異常検知部と、前記異常を関係者の端末に送信するアラート部と、を備える。
【0019】
また、本発明の別の態様にかかる異常検知方法は、異常検知装置を用いた異常検知方法であって、前記異常検知装置は、所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて前記介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する認証管理ステップと、前記介護サービスの内容の入力を受け付けると前記介護サービスの提供者から前記利用者へ提供された前記介護サービスとして記録するサービス記録ステップと、前記利用者に係る直近期間の前記介護サービスの記録を過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知する異常検知ステップと、前記異常を関係者の端末に送信するアラートステップと、を実施する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便に介護上の異常を検知する技術を提供することができる。
【0021】
なお、上記以外の課題、構成および効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】異常検知システムの概要の一例を示す図である。
図2】異常検知システムの実施例の一例を示す図である。
図3】介護者データの一例を示す図である。
図4】被介護者データの一例を示す図である。
図5】関係者データの一例を示す図である。
図6】サービス履歴の一例を示す図である。
図7】アラートデータの一例を示す図である。
図8】可搬端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
図9】記録シーケンスの一例を示す図である。
図10】画面遷移(業務選択まで)の一例を示す図である。
図11】画面遷移(業務選択以降)の一例を示す図である。
図12】異常検知処理のフローの一例を示す図である。
図13】関係者画面の一例を示す図である。
図14】介護者通知画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の例である実施形態について図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、異常検知システムの概要の一例を示す図である。本例においては、異常検知システム1は、介護施設を対象として例示している。介護者、被介護者はそれぞれ介護サービス提供者、介護サービス利用者をそれぞれ指すものである。また、介護施設についても、必ずしも同一所在地にある必要はなく、ブランチを含むものであってもよいし、訪問介護等のように被介護者の自宅を含むものであってもよい。
【0025】
異常検知システム1では、介護者やスタッフが被介護者に介護サービスを行うと、介護者やスタッフが使用する可搬端末200においてその業務記録を入力する。可搬端末200は、インターネット等のネットワーク50を介して異常検知装置300に記録内容を送信する。異常検知装置300は、業務記録を蓄積し、被介護者の家族、身元引受人等の関係者が有する端末である通知者端末400に業務内容の異常あるいは健康上の異常を知らせる通知を行う。そのため、関係者は介護上の異常を具に把握することができる。これにより、介護施設を家族がより信頼しやすくなり、被介護者を皆で支える社会を実現できる。
【0026】
なお、介護サービス業務の記録の際には、介護者と被介護者が生体情報(静脈、指紋、虹彩等)を可搬端末200に読み取らせ、異常検知装置300が生体認証サービス350に生体情報を認証させることで、証跡としての真正性・信頼性を高めることができる。
【0027】
図2は、異常検知システムの概要の一例を示す図である。本実施形態における異常検知システム1は、利用者の介護サービス利用に関する情報を蓄積し異常を関係者に通知する。異常検知システム1には、可搬端末200と、可搬端末200とネットワーク50を介して通信可能に接続される異常検知装置300と、異常検知装置300とネットワーク50を介して通信可能に接続される生体認証サービス350と、通知者端末400と、が含まれる。
【0028】
可搬端末200は、基本的に介護サービス提供者が携行する情報処理装置である。可搬端末200は、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、又はタブレット端末等の情報処理装置である。生体認証サービス350は、例えばクラウドサービスとして提供され、所定のURL(Uniform Resource Locator)によりアクセスを要求されると所定のサービスを実施し、その結果を要求元へ返す。通知者端末400は、PC(Personal Computer)、スマートフォン、PDA、又はタブレット端末等の情報処理装置である。なお、可搬端末200を使用する者は、本実施形態においては、介護者(介護サービス提供者)、被介護者(介護サービス利用者)である。通知者端末400を使用する者は、本実施形態においては、被介護者の関係者(例えば、被介護者の親族や後見人等の身元引受人)である。
【0029】
ネットワーク50は、例えば、インターネットあるいはイントラネット等のネットワークである。ネットワーク50は、これに限られず、さらに、WAN(Wide Area Network)、携帯電話網等、あるいはこれらが複合した通信網であってもよい。または、ネットワーク50は、携帯電話通信網等の無線通信網上のVPN(Virtual Private Network)等であってもよい。
【0030】
可搬端末200は、処理部210と、記憶部220と、通信部230と、生体情報読取部240と、表示部250と、位置取得部260と、を備える。処理部210は、アプリケーション機能を実現する。例えば、処理部210は、介護サービスの提供者あるいは利用者に対するポータル画面等の各種の操作画面を提供する。処理部210には、生体認証部211と、入出力制御部212と、が含まれる。生体認証部211は、生体情報読取部240が読み取った生体情報を異常検知装置300に送信して生体認証を要求する。生体認証部211は、認証に用いる生体情報として、1)介護サービスの提供者および利用者の静脈を撮影した生体画像、2)介護サービスの提供者および利用者の顔を撮影した生体画像を用いてもよいし、あるいは上記の1)2)のそれぞれの生体画像を所定のパラメータで暗号化した情報を用いることができる。入出力制御部212は、利用者が利用した介護サービスの内容についての入力を受け付けて異常検知装置300に送信する。
【0031】
通信部230は、ネットワーク50を介する他の装置との通信の制御を行う。
【0032】
生体情報読取部240は、介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を読み取る。具体的には、生体情報読取部240は、読み取る生体情報に応じて、静脈センサ241と、カメラ242と、を用いる。読み取る生体情報が静脈を撮影した生体画像の場合には、生体情報読取部240は、静脈センサ241を用いる。読み取る生体情報が顔を撮影した生体画像の場合には、生体情報読取部240は、カメラ242を用いる。
【0033】
表示部250は、一つ以上のI/Oインターフェースデバイスあるいは一つ以上の通信インターフェースデバイスである。すなわち、提供者あるいは利用者は、可搬端末200をI/Oインターフェースデバイス経由で使用する。あるいは、提供者あるいは利用者は、可搬端末200を一つ以上の通信インターフェースデバイスを介して他の情報処理装置(例えば、スマートフォン)等経由で使用する。
【0034】
位置取得部260は、現在地を測位する。例えば、位置取得部260は、GPS(Global Positioning System)、Glonass(Global Navigation Satellite System)、みちびき、Galileo、北斗等の衛星測位システムである。あるいは、位置取得部260は、近傍の無線アクセスポイントからの距離電波強度から算出して位置を特定するものであってもよい。
【0035】
異常検知装置300は、処理部310と、記憶部320と、通信部340と、を備える。処理部310には、認証管理部311と、サービス記録部312と、異常検知部313と、原因推定部314と、アラート部315と、が含まれる。認証管理部311は、認証要求を受け付けると、所定の介護施設における介護サービスの提供者および利用者の生体情報を要求し、それぞれの認証を行う。具体的には、認証管理部311は、介護サービスの提供者および利用者の生体情報を受け付けると、該生体情報を用いて介護サービスの提供者および利用者のそれぞれを特定する。
【0036】
より具体的には、認証管理部311は、介護サービスの提供者の生体情報をあらかじめ保持し、受け付けた生体情報との適合を判断して提供者を特定する。また、認証管理部311は、介護サービスの利用者に登録された生体情報をあらかじめ保持し、受け付けた生体情報との適合を判断して利用者を特定する。また、認証管理部311は、認証に用いる生体情報として、1)介護サービスの提供者および利用者の静脈を撮影した生体画像、2)介護サービスの提供者および利用者の顔を撮影した生体画像を用いてもよいし、あるいは上記の1)2)のそれぞれの生体画像を所定のパラメータで暗号化した情報を用いるようにしてもよい(既存技術)。後者の暗号化した情報を用いることで、生体情報そのものの漏洩や不正取得がなされることを防ぐことができる。また、パスワードのように定期的に暗号化パラメータを変更することで過去の生体情報の再利用を防ぐことが可能となるため、生体情報管理上のセキュリティレベルを高めることができる。
【0037】
また、認証管理部311は、介護サービスの提供者および利用者の生体情報を生体認証サービス350へ送信して、介護サービスの提供者および利用者の特定結果を得るものであってもよい。
【0038】
サービス記録部312は、利用された介護サービスの内容の入力を受け付けるとサービスの提供者から利用者へ提供されたサービスの内容と関連付けてサービス履歴324に記憶させる。その際、サービス記録部312は、介護サービスが利用された日付、時刻、位置を併せてサービス履歴324に記憶させる。
【0039】
異常検知部313は、利用者の直近期間(例えば、最新の1週間)の介護サービスの記録を過去の所定期間(例えば、過去3月間)の記録と対比して所定の指標値(例えば、サービスの種類ごとの実施回数、実施頻度、実施時間、消耗品使用量等)の変化傾向(例えば、分散の変化、平均の変化等)を特定し、異常を検知する。なお、異常検知部313は、利用者に係る直近期間の介護サービスの記録を、複数の利用者(同じ介護施設を利用する利用者、あるいは他の介護施設を利用する利用者)に係る過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定し、異常を検知するものであってもよい。
【0040】
また、異常検知部313は、検出する対象の異常を、介護サービスの提供内容の異常とすることができる。具体的には、異常検知部313は、介護サービスの質・量について所定以上の向上・低下がある場合に異常を検出するようにしてもよい。例えば、交換するおむつの量、食事量等が異常に増加・減少する場合には、利用者の健康状態のほかに、介護者によるサービスレベルの向上・低下に原因があるとも考えられるためである。あるいは、異常検知部313は、介護サービスの質・量について、他の介護施設の記録と対比して所定以上の乖離がある場合に異常を検出するようにしてもよい。例えば、交換するおむつの量、食事量等が異常に乖離する場合には、介護者が提供するサービスレベルに原因があるとも考えられるためである。
【0041】
また、異常検知部313は、検出する対象の異常を、被介護者の健康状態の異常とすることができる。具体的には、異常検知部313は、被介護者本人の健康状態について所定以上の向上・低下がある場合に異常を検出するようにしてもよい。例えば、体温や脈拍等の生体情報が異常に増加・減少する場合には、利用者の疾患等に原因があるとも考えられるためである。あるいは、異常検知部313は、被介護者と同程度の要介護状態の複数の被介護者に比べて健康状態について所定以上の乖離がある場合に異常を検出するようにしてもよい。例えば、同程度の介護状態であるにも関わらず体温や脈拍等の生体情報が異常に乖離する場合には、利用者の運動量等に原因があるとも考えられるためである。
【0042】
原因推定部314は、介護サービスの記録および健康状態の記録を用いて機械学習した学習済みモデルを用いて、一つまたは複数の異常の傾向に応じて、介護内容あるいは健康の異常の原因を推定する。
【0043】
アラート部315は、検知された異常を可搬端末200および通知者端末400の端末に送信する。また、アラート部315は、原因推定部314により推定された原因を、検知された異常と関連付けて関係者の通知者端末400に送信する。
【0044】
記憶部320には、介護者データ321と、被介護者データ322と、関係者データ323と、サービス履歴324と、アラートデータ325と、介護内容異常モデル326と、健康異常モデル327と、が含まれる。
【0045】
図3は、介護者データの一例を示す図である。介護者データ321は、介護サービスを提供する介護者の情報を記憶する。介護者データ321には、介護者ID321aと、氏名321bと、性別321cと、資格321dと、施設ID321eと、施設名称321fと、生体認証ID321gと、が含まれる。介護者ID321aは、介護者を他の介護者から識別する情報である。氏名321bと、性別321cとは、介護者の氏名および性別の情報である。資格321dは、介護者が有する介護資格を特定する情報である。施設ID321eと、施設名称321fとは、介護者が所属する介護施設を特定する情報および当該施設の名称の情報である。生体認証ID321gは、予め登録された介護者の生体情報である。
【0046】
図4は、被介護者データの一例を示す図である。被介護者データ322は、介護サービスを利用する被介護者の情報を記憶する。被介護者データ322には、被介護者ID322aと、氏名322bと、性別322cと、生年月日322dと、施設ID322eと、施設名称322fと、生体認証ID322gと、介護等級322hと、が含まれる。被介護者ID322aは、被介護者を他の被介護者から識別する情報である。氏名322bと、性別322cとは、被介護者の氏名および性別の情報である。生年月日322dは、被介護者の生年月日を特定する情報である。施設ID322eと、施設名称322fとは、被介護者が利用する介護施設を特定する情報および当該施設の名称の情報である。生体認証ID322gは、予め登録された被介護者の生体情報である。介護等級322hは、被介護者の介護等級を特定する情報である。
【0047】
図5は、関係者データの一例を示す図である。関係者データ323は、介護サービスの利用者である被介護者の身元引受人等、所定の関係がある者の情報を記憶する。関係者データ323には、関係者ID323aと、氏名323bと、被介護者323cと、関係者区分323dと、が含まれる。関係者ID323aは、関係者を他の関係者から識別する情報である。氏名323bは、関係者の氏名の情報である。被介護者323cは、対象の被介護者を特定する情報である。関係者区分323dは、被介護者との関係(例えば、配偶者、子供、兄弟、金融機関、外部委託先等)を判別する所定の区分である。
【0048】
図6は、サービス履歴の一例を示す図である。サービス履歴324は、サービス提供者(介護者)が提供し利用者(被介護者)が利用した介護サービスの内容を記憶する。サービス履歴324には、作業連番324aと、日付324bと、時刻324cと、座標324dと、被介護者324eと、介護者324fと、作業区分324gと、作業記録324hと、が含まれる。このうち、作業記録324hは、作業区分324gごとに一又は複数関連付けられる。
【0049】
作業連番324aは、実施された介護サービスを他の介護サービスから識別する情報である。日付324bと、時刻324cと、座標324dとは、それぞれサービスを実施した日付と、時刻と、位置とを特定する情報である。被介護者324eと、介護者324fとは、それぞれ、実施された介護サービスの利用者および提供者を特定する情報である。作業区分324gは、実施された介護サービスの区分を特定する情報である。作業記録324hは、実施された介護サービスの具体的な内容である。すなわち、サービス履歴324には、介護サービス利用の履歴が記憶される。
【0050】
図7は、アラートデータの一例を示す図である。アラートデータ325は、被介護者ごとに実施した介護サービスの記録を分析した結果、異常が発見される場合になされるアラート情報を記憶する。アラートデータ325には、被介護者ID325aと、氏名325bと、連番325cと、発生日時325dと、内容325eと、異常区分325fと、が含まれる。このうち、連番325cと、発生日時325dと、内容325eと、異常区分325fとは、被介護者ID325aごとに一又は複数関連付けられる。
【0051】
被介護者ID325aは、被介護者を他の被介護者から識別する情報である。氏名325bは、被介護者の氏名の情報である。連番325cは、実施された介護サービスのアラートを他のアラートから識別する情報である。発生日時325dは、介護サービスが実施された日付および時刻を特定する情報である。内容325eは、実施された介護サービスのアラートの内容である。異常区分325fは、異常の種類を区別する情報である。異常区分325fには、例えば、健康に関する異常や、介護サービスレベルに関する異常が含まれる。
【0052】
図2の説明に戻る。介護内容異常モデル326は、介護のサービス履歴を学習した学習済みモデルである。介護内容異常モデル326は、介護内容の情報を入力として、当該介護内容が正常/異常のいずれかを出力する。また、介護内容異常モデル326は、介護内容の情報を入力として、介護内容の異常の原因とその確率とを出力する。
【0053】
健康異常モデル327は、介護のサービス履歴に含まれる健康状態の情報を学習した学習済みモデルである。健康異常モデル327は、介護内容の情報を入力として、当該介護内容に含まれる健康状態が正常/異常のいずれかを出力する。また、健康異常モデル327は、介護内容の情報を入力として、健康の異常の原因とその確率とを出力する。
【0054】
通信部340は、ネットワーク50を介する他の装置との通信の制御を行う。
【0055】
生体認証サービス350は、ネットワーク経由で生体認証を実現する。具体的には、生体認証サービス350は、ネットワーク50経由で異常検知装置300へのログインを実現する。例えば、生体認証サービス350は、一般的なLDAP(Lightweight Directory Access Protocol)サーバー、あるいはAD(Active Directory)サーバーにより異常検知装置300へのログインを実現する。生体認証サービス350は、可搬端末200で読み取った利用者の生体情報をペアで受け付けて、ペアの生体情報の一致度合いが所定以上であれば認証し、異常検知装置300へのアクセスを許可する。
【0056】
図8は、可搬端末のハードウェア構成の一例を示す図である。可搬端末200は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、タッチパネルディスプレイ15と、通信装置16と、カメラ17と、静脈センサ18と、を有し、各構成要素はバスにより接続されている。また、電源は、一次電池でも、充電可能な二次電池でも良く、消耗・劣化した際に交換可能とすることができる。
【0057】
プロセッサ11はCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置であり、メモリ12又はストレージ13に記録されたプログラムに従って処理を実行する。可搬端末200では、メモリ12又はストレージ13上に読み出されたプログラムに従って動作するプロセッサ11により処理が行われる。処理部210、生体認証部211、入出力制御部212は、プロセッサ11がプログラムを実行することにより各々の機能を実現する。
【0058】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)又はフラッシュメモリ等の記憶装置であり、プログラムやデータが一時的に読み出される記憶エリアとして機能する。ストレージ13は、書き込み及び読み出し可能な記憶装置である。記憶部220は、メモリ12又はストレージ13によりその機能が実現される。なお、記憶部220は、通信装置16を介して接続される記憶装置によってその機能が実現されてもよい。
【0059】
タッチパネルディスプレイ15は、入出力を行うためのインターフェースを提供する装置であり、ディスプレイに出力を行い、タッチパネルにて入力を受け付ける。
【0060】
通信装置16は、可搬端末200を外部の装置と通信接続するためのインターフェースである。例えば、通信装置16は、無線LAN(Local Area Network)等に参加する所定の周波数帯域(例えば、2.4GHz(ギガヘルツ)あるいは5.2~5.6GHz帯)の電波を利用できるアンテナを用いて無線通信を行う。また、通信装置16は、5Gネットワークあるいは4Gネットワーク等の携帯電話通信網に参加する所定の電波を利用できるアンテナを用いて無線通信を行うものであってもよい。
【0061】
カメラ17は、所定の画角で周囲を撮像する。望ましくは、カメラ17には、インカメラと呼ばれるカメラと、インカメラで写せない範囲を撮像するアウトカメラと呼ばれるカメラが含まれる。その場合、インカメラは、タッチパネルディスプレイ15の表示面にレンズが設けられて、タッチパネルディスプレイ15を見ている人の顔(主に、介護者の顔)を撮像する。アウトカメラは、タッチパネルディスプレイ15の表示面の裏側にレンズが設けられて、タッチパネルディスプレイ15を見ている人に対面している人の顔(主に、被介護者の顔)を撮像する。なお、インカメラとアウトカメラの区別がなく一つしかカメラレンズがない場合には、当該カメラレンズにて介護者、被介護者のいずれも撮像する。
【0062】
静脈センサ18は、所定のセンサ部に接触している利用者(介護者あるいは被介護者)の指の透過波あるいは反射波を検出して、指静脈の形状を撮像して生体画像を得る。
【0063】
なお、可搬端末200の各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。また、可搬端末200の各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
【0064】
異常検知装置300および通知者端末400は、可搬端末200のハードウェア構成と概ね同じであるが、タッチパネルディスプレイ15と、カメラ17と、静脈センサ18とは、備える必要はない。
【0065】
次に、異常検知システム1の処理の流れについて説明する。図9は、異常検知システム1の記録シーケンス図である。本シーケンス図の処理は、可搬端末200を異常検知装置300に接続して作業記録を取る場合のシーケンスである。
【0066】
まず、可搬端末200の生体認証部211は、異常検知装置300に認証開始を要求する(ステップS01)。その際、生体認証部211は、異常検知装置300に介護者情報(介護者ID)を送信する。
【0067】
異常検知装置300の認証管理部311は、認証開始を要求した介護者の介護者データを引き当て、生体情報を取得するよう可搬端末200に要求する(ステップS02)。認証開始を要求した介護者の介護者データを引き当てられない場合には、認証管理部311は、介護者の新規登録処理を開始する(図示せず)。
【0068】
そして、可搬端末200の生体認証部211は、介護者の生体情報を取得し異常検知装置300に送信する(ステップS03)。具体的には、生体認証部211は、生体情報読取部240の静脈センサ241あるいはカメラ242により介護者の生体情報を取得する。望ましくは、生体認証部211は、カメラ242にて介護者の顔の生体画像を得る場合には、インカメラを用いて取得する。これにより、可搬端末200の向きを変えることなく、タッチパネルディスプレイ15を見ながらスムーズな操作を可能とする。
【0069】
そして、認証管理部311は、受信した生体情報と、介護者データ321に予め登録された生体認証ID321gと、を生体認証サービス350に送信する(ステップS04)。なお、認証管理部311は、認証に用いる生体情報として、上述のとおり、1)介護者の静脈を撮影した生体画像、2)介護者の顔を撮影した生体画像を用いてもよいし、あるいは上記の1)2)のそれぞれの生体画像を所定のパラメータで暗号化した情報を用いるようにしてもよい(既存技術)。
【0070】
生体認証サービス350は、介護者の生体情報を判別して、生体認証ID321gとの適合を判別して認証し、応答を返す(ステップS05)。ここで、所定以上の適合を確認できない場合には、認証失敗を返す。
【0071】
そして、認証管理部311は、介護者の認証が成功した旨の通知を可搬端末200に送信する(ステップS06)。なお、介護者の認証が失敗している場合には、認証管理部311は、記録シーケンスを終了させるか、複数回の連続失敗が発生している場合には当該介護者の利用を一時停止する等の措置を取る。
【0072】
そして、可搬端末200の生体認証部211は、介護者の認証が成功した旨の通知を受信すると、被介護者の生体情報を取得し異常検知装置300に送信する(ステップS07)。具体的には、生体認証部211は、生体情報読取部240の静脈センサ241あるいはカメラ242により被介護者の生体情報を取得する。望ましくは、生体認証部211は、カメラ242にて被介護者の顔の生体画像を得る場合には、アウトカメラを用いて取得する。これにより、可搬端末200の向きを変えることなく、介護者がタッチパネルディスプレイ15を見ながらスムーズな操作を可能とする。
【0073】
そして、認証管理部311は、受信した生体情報と、被介護者データ322に予め登録された生体認証ID322gと、を生体認証サービス350に送信する(ステップS08)。なお、認証管理部311は、認証に用いる生体情報として、上述のとおり、3)被介護者の静脈を撮影した生体画像、4)被介護者の顔を撮影した生体画像を用いてもよいし、あるいは上記の3)4)のそれぞれの生体画像を所定のパラメータで暗号化した情報を用いるようにしてもよい(既存技術)。
【0074】
生体認証サービス350は、被介護者の生体情報を判別して、生体認証ID322gとの適合を判別して認証し、応答を返す(ステップS09)。ここで、所定以上の適合を確認できない場合には、認証失敗を返す。
【0075】
そして、認証管理部311は、被介護者の認証が成功した旨の通知を可搬端末200に送信する(ステップS10)。なお、被介護者の認証が失敗している場合には、認証管理部311は、記録シーケンスを終了させるか、複数回の連続失敗が発生している場合には当該被介護者の利用を一時停止する等の措置を取る。
【0076】
そして、可搬端末200の生体認証部211が被介護者の認証が成功した旨の通知を受信すると、可搬端末200の入出力制御部212は、介護者からのサービス内容の入力を受け付けて異常検知装置300に送信する(ステップS11)。より具体的には、入出力制御部212は、介護者からのサービス内容の入力に加えて、位置取得部260が取得した現在地の座標を異常検知装置300に送信する。なお、入力されるサービス内容には、サービスの提供者および利用者、サービスの作業区分、サービスの実際の内容を示すフリーテキスト、緊急メッセージの指定の有無が含まれる。
【0077】
そして、異常検知装置300のサービス記録部312は、介護者と被介護者と、サービス内容と、を紐づけて介護履歴に記録する(ステップS12)。具体的には、サービス記録部312は、介護者から入力されたサービス内容と、認証結果と、送信された現在地と、現在時刻とを用いて、サービス履歴324に情報を格納する。
【0078】
以上が、記録シーケンスである。記録シーケンスによれば、介護サービスの主体、客体、内容、時期、位置を記録することができるため、作業証跡を残すことができるようになる。また、その際には、面倒な入力を極力行わず、特に認証および主客体の特定を生体認証により行うことが可能となるため、簡便かつ正確に介護サービスの記録が可能となる。また、介護サービスの内容についても、何(介護サービス、消耗品交換、嗜好品の購入や特別メニューの食事の注文等、不定期に生じる有料サービス)に対して、いくらの費用が発生したかを正確に記録できる。また、介護サービスの内容に、健康に関する情報(例えば、被介護者の体温、体重、食事摂取量、痛みや不快感の訴え、視野、聴力、意識レベル等)を含めて記録することもできる。つまり、簡便かつ正確に介護サービスの実施結果を記録することができる。
【0079】
図10は、画面遷移(業務選択まで)の一例を示す図である。介護者ログイン画面500は、記録シーケンスのステップS01において表示される。介護者ログイン画面500には、静脈認証501と、顔認証502と、の選択入力領域が表示される。選択に応じて、静脈センサ241あるいはカメラ242が起動し、介護者の生体情報の読み取りが行われる。
【0080】
被介護者ログイン画面510は、記録シーケンスのステップS07において表示される。被介護者ログイン画面510には、静脈認証511と、顔認証512と、の選択入力領域が表示される。選択に応じて、静脈センサ241あるいはカメラ242が起動し、被介護者の生体情報の読み取りが行われる。
【0081】
操作選択画面520と、介護登録画面530とは、記録シーケンスのステップS11において表示される。操作選択画面520では、操作メニュー521の選択入力領域が表示される。介護登録画面530には、操作メニュー521の選択内容に応じた情報が表示される。具体的には、介護登録画面530では、実施する介護サービスの具体的な作業項目選択領域531と、戻るボタン532と、登録ボタン533と、が表示される。戻るボタン532への入力がなされると、操作選択画面520へと画面が遷移する。登録ボタン533への入力がなされると、作業項目選択領域531にて選択入力された作業項目を確定して後述の介護記録入力画面540へ遷移する。
【0082】
図11は、画面遷移(業務選択以降)の一例を示す図である。介護記録入力画面540は、介護登録画面530に続いて表示される。介護記録入力画面540には、介護記録入力欄541と、戻るボタン542と、登録ボタン543と、が表示される。介護記録入力欄541は、サービス内容に関するテキストの入力を受け付ける。戻るボタン542への入力がなされると、介護登録画面530へと画面が遷移する。登録ボタン543への入力がなされると、介護記録入力欄541にて入力されたサービス内容を確定して後述の送信確認画面550へと画面が遷移する。
【0083】
送信確認画面550には、介護登録画面530にて選択された介護サービスの具体的な作業項目551と、介護記録入力画面540にて入力されたサービス内容に関するテキスト552と、戻るボタン553と、送信ボタン554と、が表示される。戻るボタン553への入力がなされると、介護記録入力画面540へと画面が遷移する。送信ボタン554への入力がなされると、作業項目551とテキスト552との内容が異常検知装置300へ送信され、記録シーケンスのステップS12が開始される。
【0084】
図12は、異常検知処理のフローの一例を示す図である。異常検知処理は、記録シーケンスにて記録された作業記録について、主に健康上の異常と、介護サービスの異常を検知し、アラートを送信する処理である。
【0085】
まず、異常検知部313は、過去の所定期間のサービス履歴と直近のサービス履歴とを取得する(ステップS101)。具体的には、異常検知部313は、サービス履歴324を読み出して、被介護者ごとに過去の所定期間(例えば、過去3月間)の記録と、直近期間(例えば、最新の1週間)の介護サービスの記録と、を読み出す。
【0086】
そして、異常検知部313は、サービス(介護業務)ごとに介護サービスの記録を分類し、介護サービスの実施回数、実施頻度、実施時間、消耗品使用量等の指標値(分散、平均等)について、過去の介護サービスの統計値および他施設の統計値と対比して変化傾向を特定する(ステップS102)。なお、異常検知部313は、利用者に係る直近期間の介護サービスの記録を、複数の利用者(同じ介護施設を利用する利用者、あるいは他の介護施設を利用する利用者)に係る過去の所定期間の記録と対比して所定の指標値の変化傾向を特定するものであってもよい。
【0087】
そして、異常検知部313は、指標値の変化傾向に応じてサービス提供レベルの異常を検知する(ステップS103)。具体的には、異常検知部313は、介護サービスの質・量について所定以上の向上・低下がある場合に異常を検出する。例えば、異常検知部313は、交換するおむつの量の著しい増加や、食事量の著しい低下、消耗品の過剰利用等の異常を検出する。あるいは、異常検知部313は、介護サービスの質・量について、他の介護施設の記録と対比して所定以上の乖離がある場合に異常を検出するようにしてもよい。
【0088】
そして、異常検知部313は、指標値の変化傾向に応じて健康状態の異常を検知する(ステップS104)。具体的には、異常検知部313は、健康状態について所定以上の向上・低下がある場合に異常を検出する。例えば、異常検知部313は、体温、体重、心拍数、食事摂取量、痛みや不快感の訴え、視野、聴力、意識レベル等の生体情報の異常を検出する。あるいは、異常検知部313は、被介護者と同程度の要介護状態の複数の被介護者に比べて健康状態について所定以上の乖離がある場合に異常を検出するようにしてもよい。
【0089】
そして、原因推定部314は、一つまたは複数の異常の傾向に応じて、介護内容あるいは健康の異常の原因を推定する(ステップS105)。具体的には、原因推定部314は、介護サービスの記録および健康状態の記録を用いて機械学習した学習済みモデル(介護内容異常モデル326および健康異常モデル327)を用いて、被介護者の健康状態とサービス提供レベルの複数種類の異常の検知傾向をモデルへ入力して、原因として可能性のある疾患およびその進行段階を推定する。例えば、原因推定部314は、被介護者の体温が高い異常の傾向と、おむつの使用量の著しい増加がある異常の傾向とを介護内容異常モデル326に入力して、介護内容の原因として可能性の高い事象(入浴時の湯冷め等)を得る。また例えば、原因推定部314は、被介護者の体温が高い異常の傾向と、おむつの使用量の著しい増加がある異常の傾向とを健康異常モデル327に入力して、健康異常の原因として可能性の高い事象(流行性感冒等)を得る。
【0090】
そして、アラート部315は、ステップS103あるいはステップS104において何らかの異常を検知したか否か判定する(ステップS106)。何も異常を検知していない場合(ステップS106にて「No」の場合)には、アラート部315は、異常検知処理を終了させる。
【0091】
何らかの異常を検知した場合(ステップS106にて「Yes」の場合)には、アラート部315は、介護者の健康の異常、原因とその確率を可搬端末200に表示させる(ステップS107)。その際、サービス提供レベルの異常が検知されている場合には、関係者すなわち通知者端末400に当該異常、その原因と確率を表示させる(ステップS108)。
【0092】
以上が、異常検知処理の流れである。異常検知処理によれば、介護施設の介護サービスの記録、参照が可能となるだけでなく、介護スタッフが気づきにくい傾向、特に介護サービスの水準や被介護者の健康水準の異常変化等について簡便に検知し報知することができる。
【0093】
図13は、関係者画面の一例を示す図である。関係者画面600は、通知者端末400においてアラートメッセージを表示する画面である。関係者画面600には、異常検知装置300から通知されたアラートメッセージ610等が表示される。アラートメッセージ610には、本例では「最近、おむつの使用量が増加しています」等のサービス提供レベルに関する異常(通常範囲からの逸脱)を知らせるものが表示されている。しかし、これに限られるものではなく、アラートメッセージ610には、例えば「体重が減少傾向にあります」等の健康状態に関する異常を知らせるメッセージあるいはサービス提供レベルと健康状態の両方に関するメッセージが表示されてもよい。
【0094】
図14は、介護者通知画面の一例を示す図である。介護者通知画面700は、可搬端末200においてアラートメッセージを表示する画面である。介護者通知画面700には、異常検知装置300から通知されたアラートメッセージ710と、原因表示メッセージ720とが表示される。アラートメッセージ710には、本例では「最近、おむつの使用量が増加し、食事量や体重が減少しています」等のサービス提供レベルおよび健康状態に関する異常(通常範囲からの逸脱)を知らせるものが表示されている。また、原因表示メッセージ720には、アラートメッセージに表示された異常の原因の可能性が高い事象、例えば疾患およびその可能性、進行度等を「**疾患の可能性があります:70% 進行度:中期」のように表示する。
【0095】
以上、本発明に係る実施形態の説明を行ってきたが、本発明は、上記した実施形態の一例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態では、異常検知部313は、指標値の変化傾向に応じてサービス提供レベルおよび健康状態の異常を検知するものとなっているが、これに限られるものではない。
【0096】
例えば、異常検知部313は、介護サービスの記録を用いて機械学習した学習済みモデルを用いて、利用者の直近期間の介護サービスの記録について異常を検知するようにしてもよい。その場合にも、異常検知部313は、検出する対象の異常を、介護サービスの提供内容の異常、あるいは健康状態の異常とすることができる。具体的には、異常検知部313は、介護内容異常モデル326を用いて、介護サービスの質・量について所定以上の向上・低下がある場合に異常を検出するようにしてもよい。例えば、異常検知部313は、交換するおむつの量、食事量等が介護内容異常モデル326により異常とされる場合に、異常を検出するようにしてもよい。また例えば、異常検知部313は、体温や脈拍等の生体情報が健康異常モデル327により異常とされる場合に異常を検出するようにしてもよい。
【0097】
上記した実施形態の例は、本発明を分かり易くするために詳細に説明したものであり、本発明は、ここで説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の一例の構成の一部を他の一例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の一例の構成に他の一例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の一例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることもできる。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、図中の制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、全てを示しているとは限らない。ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1・・・異常検知システム、50・・・ネットワーク、200・・・可搬端末、210・・・処理部、211・・・生体認証部、212・・・入出力制御部、220・・・記憶部、230・・・通信部、240・・・生体情報読取部、241・・・静脈センサ、242・・・カメラ、250・・・表示部、260・・・位置取得部、300・・・異常検知装置、310・・・処理部、311・・・認証管理部、312・・・サービス記録部、313・・・異常検知部、314・・・原因推定部、315・・・アラート部、320・・・記憶部、321・・・介護者データ、322・・・被介護者データ、323・・・関係者データ、324・・・サービス履歴、325・・・アラートデータ、326・・・介護内容異常モデル、327・・・健康異常モデル、340・・・通信部、350・・・生体認証サービス、400・・・通知者端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14