IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-糸継台車 図1
  • 特開-糸継台車 図2
  • 特開-糸継台車 図3
  • 特開-糸継台車 図4
  • 特開-糸継台車 図5
  • 特開-糸継台車 図6
  • 特開-糸継台車 図7
  • 特開-糸継台車 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110244
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】糸継台車
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/08 20060101AFI20240807BHJP
   D01H 13/00 20060101ALI20240807BHJP
   D01H 15/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B65H67/08 B
D01H13/00 Z
D01H15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014722
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩平
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA07
3F112AA08
3F112JA08
4L056AA19
4L056BF13
4L056BF59
(57)【要約】
【課題】付属物全体のメンテナンス性に優れ、シンプルかつコンパクトな構成の糸継台車を提供する。
【解決手段】糸継台車3は、糸継部31と、捕捉案内部32,33と、第一ベース部41と、複数の付属物35,37と、駆動部33Dと、を備える。捕捉案内部32,33は、糸端を吸引口32A,33Aにより吸引することにより糸Yを捕捉した状態でアーム32B,33Bを回転させることにより糸端を糸継部31へ案内する。第一ベース部41は、第一方向に直交する第一面41Bが糸継部31に面するように配置される。複数の特定付属物は、エア機器35及び複数の制御機器37を含んで構成される。複数の特定付属物の少なくとも一つは、第二面41Cに配置されており、捕捉案内部32,33は、糸継台車3の走行方向において第一ベース部41に対して第一面41Bの側の領域のみに配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸処理ユニットが配列された第一方向に走行可能に設けられる糸継台車であって、
糸の糸継ぎを行う糸継部と、
前記糸の糸端を吸引する吸引口が形成されると共に前記第一方向に延びる回転軸回りに回転可能に設けられるアームを有し、前記糸端を前記吸引口により吸引した状態で回転することにより前記吸引口により吸引された前記糸を前記糸継部へ案内する捕捉案内部と、
前記第一方向に交差すると共に前記糸継部に面する第一面と、前記第一方向に交差すると共に前記第一方向において前記第一面に対して前記糸継部と反対側の面である第二面と、を有する第一ベース部と、
前記糸継部にエアを供給するエア機器及び前記糸継台車における少なくとも一つの可動部を制御する制御機器を含んで構成される複数の特定付属物と、
前記可動部を駆動させる駆動部と、を備え、
前記複数の特定付属物の少なくとも一つは、前記第二面に配置されており、
前記捕捉案内部は、前記第一方向における前記第一ベース部に対して前記第一面の側の領域のみに配置されている、糸継台車。
【請求項2】
前記第一方向において前記第一面に対向するように配置される第二ベース部を更に備え、
前記エア機器は、前記第二面に配置され、
前記制御機器は、前記第二ベース部に配置され、
前記捕捉案内部は、前記第一方向において前記第一ベース部と前記第二ベース部との間のみに配置されている、請求項1記載の糸継台車。
【請求項3】
前記第二ベース部は、前記第一方向に交差すると共に前記第一面に対向する第三面と、前記第一方向に交差すると共に前記第一方向において前記第三面に対して前記第一面と反対側の面である第四面と、を有し、
前記制御機器は、前記第三面と前記第四面との両方に配置されており、
前記第三面に配置される前記制御機器には、電源に関する部材及び/又は前記駆動部のドライバが少なくとも含まれ、
前記第四面に配置される前記制御機器には、前記駆動部を制御するための制御基板が少なくとも含まれている、請求項2記載の糸継台車。
【請求項4】
前記制御機器に接続されるケーブル、及び前記エア機器に接続されるエア配管を保護するケーブルガイドを接続可能な取付部が、前記第二ベース部のみに形成されている、請求項2又は3記載の糸継台車。
【請求項5】
前記エア機器には、少なくとも前記糸継部に供給するエアの流量を調整するレギュレータが含まれている、請求項1~4の何れか一項記載の糸継台車。
【請求項6】
前記複数の糸処理ユニットのそれぞれは、
前記糸を供給する給糸部と、
前記糸をパッケージとして巻き取る糸巻取部と、を有しており、
前記捕捉案内部は、前記糸巻取部から前記糸継部に前記糸を案内する第一捕捉案内部であり、
前記第一捕捉案内部は、前記第一ベース部に支持されている、請求項1~5の何れか一項記載の糸継台車。
【請求項7】
前記複数の糸処理ユニットのそれぞれは、
前記糸を供給する給糸部と、
前記糸をパッケージとして巻き取る糸巻取部と、を有しており、
前記捕捉案内部は、
前記糸巻取部から前記糸継部に前記糸を案内する第一捕捉案内部と、
前記給糸部から前記糸継部に前記糸を案内する第二捕捉案内部と、
吸引源に連通するダクトへ接続可能に設けられた接続部から前記第一捕捉案内部に連通する第一本体部及び前記第二捕捉案内部に連通する第二本体部の両方に分岐する分岐管と、
を有し、
前記分岐管における前記接続部の少なくとも一部が、前記第一捕捉案内部及び前記第二捕捉案内部の可動領域における前記第一方向における一方の端部と他方の端部との間に位置するように、前記分岐管が配置されている、請求項1~6の何れか一項記載の糸継台車。
【請求項8】
前記第一本体部及び前記第二本体部は、前記第一方向においてずれて配置されており、
前記第一本体部及び前記第二本体部の少なくとも一部は、前記第一方向において重ならないように配置されている、請求項7記載の糸継台車。
【請求項9】
請求項6~8の何れか一項記載の糸継台車と、
前記糸継台車の走行方向に沿って配列される前記複数の糸処理ユニットと、を備え、
前記複数の糸処理ユニットにおけるそれぞれの前記糸巻取部は、独立して駆動可能に設けられている、繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、糸継台車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるような紡績機には、分断された糸の糸継ぎを行う糸継台車が搭載されている。糸継台車は、糸端を吸引して捕捉しながら移送する捕捉案内部を備えている。捕捉案内部は、第一方向に延在する軸回りに回転するアームと、アームに設けられた吸引口と、アームを回転可能に支持する支持部と、を有している。上記特許文献1の捕捉案内部には、給糸装置側から糸を糸継部に案内するサクションノズル(第二捕捉案内部)とパッケージ側から糸を糸継部に案内するサクションマウス(第一捕捉案内部)とが含まれている。このようなサクションノズル及びサクションマウスは、糸継台車を構成する部材であって糸継台車の走行方向に直交する面を有するベース部に取り付けられている。
【0003】
ところが、特許文献1に記載の糸継台車では、サクションノズル及びサクションマウスは、上記ベース部の一方面側と他方面側に跨がって配置されている、具体的には、サクションマウスにおける吸引口がベース部の一方面側に配置され、吸引口に吸引力を供給する供給パイプがベース部の他方面側に配置されている。同様に、サクションノズルにおける吸引口がベース部の一方面側に配置され、サクションノズルにおける吸引口に吸引力を供給する供給パイプがベース部の他方面側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-67466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糸継台車には、上述したような捕捉案内部の他、空気流を利用して糸継処理を行う糸継部にエアを供給するエア機器及び糸継台車の各部を制御する制御機器等の付属物が備えられている。しかしながら、上記従来の糸継台車には、ベース部における一方面及び他方面に捕捉案内部を構成する部材が分散して配置されているので、捕捉案内部以外の付属物である特定付属物の配置スペースが制限される。このため、ベース部の他方面側や、ベース部に取り付けられた捕捉案内部の背後にベース部以外のフレーム等を追加して、追加したフレームに特定付属物を取り付けたりしていた。このため、糸継台車全体の構成が複雑かつ大型化すると共に、捕捉案内部の背後に特定付属物が配置される場合、メンテナンス効率の悪い構成となっていた。
【0006】
そこで、本発明の一側面の目的は、付属物全体のメンテナンス性に優れ、シンプルかつコンパクトな構成の糸継台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る糸継台車は、複数の糸処理ユニットが配列された第一方向に走行可能に設けられる糸継台車であって、糸の糸継ぎを行う糸継部と、糸の糸端を吸引する吸引口が形成されると共に第一方向に延びる回転軸回りに回転可能に設けられるアームを有し、糸端を吸引口により吸引した状態で回転することにより吸引口により吸引された糸を糸継部へ案内する捕捉案内部と、第一方向に交差すると共に糸継部に面する第一面と、第一方向に交差すると共に第一方向において第一面に対して糸継部と反対側の面である第二面と、を有する第一ベース部と、糸継部にエアを供給するエア機器及び糸継台車における少なくとも一つの可動部を制御する制御機器を含んで構成される複数の特定付属物と、可動部を駆動させる駆動部と、を備え、複数の特定付属物の少なくとも一つは、第二面に配置されており、捕捉案内部は、第一方向における第一ベース部に対して第一面の側の領域のみに配置されている。
【0008】
この構成の糸継台車では、捕捉案内部が第一ベース部の一方側にのみ配置される。言い替えれば、捕捉案内部の可動範囲は、第一ベース部の一方側にまとめられる。これにより、第一ベース部の他方側には、捕捉案内部以外の付属物である特定付属物が自由に配置可能となる。この結果、特定付属物を第一ベース部の第二面に配置することができるので、第一ベース部に別のフレームを介して特定付属物を配置することに比べて、シンプルかつコンパクトな構成とすることができる。更に、特定付属物が第一ベース部の第二面に配置される場合には、特定付属物が捕捉案内部の背後に配置される構成に比べて、作業者による各付属物へのアクセスが容易となるので、付属物全体のメンテナンス性に優れる。
【0009】
本発明の一側面に係る糸継台車は、第一方向において第一面に対向するように配置される第二ベース部を更に備え、エア機器は、第二面に配置され、制御機器は、第二ベース部に配置され、捕捉案内部は、第一方向において第一ベース部と第二ベース部との間のみに配置されてもよい。
【0010】
この構成では、捕捉案内部は、第一方向において第一ベース部と第二ベース部との間のみにまとめて配置されるので、第一ベース部と第二ベース部との間の外側には、特定付属物が自由に配置可能となる。この結果、特定付属物を第一ベース部の第二面及び第二ベース部に配置することができるので、第一ベース部に別のフレームを介して特定付属物を配置することに比べて、シンプルかつコンパクトな構成とすることができる。更に、特定付属物が第一ベース部の第二面及び第二ベース部に配置される場合、捕捉案内部の背後に配置される構成と比べて、作業者による各特定付属物へのアクセスが容易となるので、付属物全体のメンテナンス性に優れる。
【0011】
本発明の一側面に係る糸継台車では、第二ベース部は、第一方向に交差すると共に第一面に対向する第三面と、第一方向に交差すると共に第一方向において第三面に対して第一面と反対側の面である第四面と、を有し、制御機器は、第三面と第四面との両方に配置されており、第三面に配置される制御機器には、電源に関する部材及び/又は駆動部のドライバが少なくとも含まれ、第四面に配置される制御機器には、駆動部を制御するための制御基板が少なくとも含まれてもよい。この構成では、作業者によって操作可能な装置が外側に配置されるので、メンテナンス性に優れる。また、熱源と作業者によって操作可能な装置とを離して配置することができるので、作業者によって操作される装置に熱が作用して誤動作が発生することを低減できる。
【0012】
本発明の一側面に係る糸継台車では、制御機器に接続されるケーブル、及びエア機器に接続されるエア配管を保護するケーブルガイドを接続可能な取付部が、第二ベース部のみに形成されてもよい。この構成では、糸継台車に対して第一方向における一方側からのみケーブルガイドが接続されるので、全体構成をシンプルにすることができる。
【0013】
本発明の一側面に係る糸継台車では、エア機器には、少なくとも糸継部に供給するエアの流量を調整するレギュレータが含まれてもよい。この構成では、作業者によって設定値が調整されることが多いレギュレータが外側に配置されるため、作業性に優れる。
【0014】
本発明の一側面に係る糸継台車において、複数の糸処理ユニットのそれぞれは、糸を供給する給糸部と、糸をパッケージとして巻き取る糸巻取部と、を有しており、捕捉案内部は、糸巻取部から糸継部に糸を案内する第一捕捉案内部であり、第一捕捉案内部は、第一ベース部に支持されてもよい。この構成では、糸巻取部から糸継部に糸を案内する第一捕捉案内部を有する糸継台車であっても、付属物全体のメンテナンス性に優れ、シンプルかつコンパクトな構成とすることができる。
【0015】
本発明の一側面に係る糸継台車では、複数の糸処理ユニットのそれぞれは、糸を供給する給糸部と、糸をパッケージとして巻き取る糸巻取部と、を有しており、捕捉案内部は、糸巻取部から糸継部に糸を案内する第一捕捉案内部と、給糸部から糸継部に糸を案内する第二捕捉案内部と、吸引源に連通するダクトへ接続可能に設けられた接続部から第一捕捉案内部に連通する第一本体部及び第二捕捉案内部に連通する第二本体部の両方に分岐する分岐管と、を有し、分岐管における接続部の少なくとも一部が、第一捕捉案内部及び第二捕捉案内部の可動領域における第一方向における一方の端部と他方の端部との間に位置するように、分岐管が配置されてもよい。この構成では、糸巻取部から糸継部に糸を案内する第一捕捉案内部と、給糸部から糸継部に糸を案内する第二捕捉案内部と、の二つの可動部材を有している場合であっても、付属物全体のメンテナンス性に優れ、シンプルかつコンパクトな構成とすることができる。更に、この構成では、第一方向において接続部と分岐管を介して接続される第一捕捉案内部及び第二捕捉案内部との間のずれ量を小さくすることができるので、ダクトと第一捕捉案内部及び第二捕捉案内部とを比較的短い距離で接続することができ、配管を簡素化できる。
【0016】
本発明の一側面に係る糸継台車では、第一本体部及び第二本体部は、第一方向においてずれて配置されており、第一本体部及び第二本体部の少なくとも一部は、第一方向において重ならないように配置されてもよい。この構成では、第一本体部及び第二本体部において互いに重ならない部分を第一方向に直交する方向から視認することができる。この結果、第一本体部及び第二本体部の一部に対し、作業者は容易に触れることが可能となるので、作業者の作業性が向上する。
【0017】
本発明の一側面に係る繊維機械は、上記の糸継台車と、糸継台車の走行方向に沿って配列される複数の糸処理ユニットと、を備え、複数の糸処理ユニットにおけるそれぞれの糸巻取部は、独立して駆動可能に設けられてもよい。この構成では、複数の糸処理ユニットにおけるそれぞれの糸巻取部が独立して駆動する構成となっているので、糸継台車側に糸継時に糸巻取部を逆転等させる逆転ローラ等の構成を設ける必要がない。このため、糸継台車では、従来逆転ローラが設けられていたスペースに第一捕捉案内部及び第二捕捉案内部に吸引力を供給する配管を比較的に自由に配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、付属物全体のメンテナンス性に優れ、シンプルかつコンパクトな構成の糸継台車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係る紡績機を示す正面図である。
図2図2は、図1の紡績ユニット及び糸継台車を示す左側側面図である。
図3図3は、図1の糸継台車を示す正面図である。
図4図4は、図1の糸継台車に含まれるベース部を斜め正面から見た斜視図である。
図5図5は、図3の糸継台車の左側側面図である。
図6図6は、第一ベース部に取り付けられたサクションマウスを示す斜視図である。
図7図7は、第二ベース部の第三面に取り付けられた制御機器を示す斜視図である。
図8図8は、第二ベース部の第四面に取り付けられた制御機器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して一実施形態に係る糸継台車3を備える紡績機(繊維機械)1について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第一エンドフレーム4と、第二エンドフレーム5と、を備えている。以下、図1に示されるように紡績機1を正面から見たときの第二エンドフレーム5側を左側、第一エンドフレーム4側を右側とする方向を左右方向、図1において紙面に直交する方向の手前側を前側、奥側を後側とする方向を前後方向(図2参照)、鉛直方向を上下方向として説明を行うことがある。
【0022】
各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。複数の紡績ユニット2は、左右方向(第一方向)に沿って一列に配列されている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由により糸Yが切れたりした場合、紡績ユニット2において糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2においてパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを紡績ユニット2に供給する。
【0023】
第一エンドフレーム4には、紡績ユニット2において発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。第二エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部(吸引源)、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。空気供給部によって流量が調整された空気は、例えばレールRの下方に左右方向に沿って延在するダクト29を介して糸継台車3に供給される。第二エンドフレーム5には、機台制御装置4Aと、表示画面4Bと、入力キー4Cと、が設けられている。機台制御装置4Aは、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面4Bは、紡績ユニット2の設定内容及び状態に関する情報等を表示することができる。オペレータが入力キー4Cを用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0024】
図1及び図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、吸引装置26と、ワキシング装置12と、巻取装置(糸巻取部)13と、を備えている。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。ドラフト装置6、空気紡績装置7、糸監視装置8、テンションセンサ9及び糸貯留装置11は、巻取装置13に糸を供給する給糸部を構成する。
【0025】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、スライバSの走行方向において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。各ローラ対14,15,16及び17は、ボトムローラと、トップローラと、を有している。ボトムローラは、第二エンドフレーム5に設けられた駆動モータ又は各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対16のボトムローラに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルローラ対16のトップローラに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。
【0026】
空気紡績装置7は、ドラフト装置6によりドラフトされた繊維束(繊維)Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び糸Yに含有されている異物等を検出する。
【0027】
テンションセンサ9は、空気紡績装置7と巻取装置13との間のうち、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及びテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0028】
吸引装置26は、糸Yが分断された場合に、巻取装置13側の糸Yを吸引することができる。吸引装置26は、糸貯留装置11と巻取装置13との間に設けられている。吸引装置26は、吸引口26Aと吸引口26Aにおける吸引の有無を切り替えるシャッタ26Bとを有する。本実施形態では、吸引装置26は固定的に設けられているが、多少移動可能に設けられていてもよい。糸継台車3が紡績ユニット2に対して作業を行うとき、吸引装置26は、糸継台車3が備える糸継装置31よりも上流側に位置する。吸引装置26は、空気紡績装置7と巻取装置13との間で糸Yの分断が発生した場合に、巻取装置13側、言い換えればパッケージP側の糸Yを捕捉することができる。糸Yの分断が発生した場合、吸引装置26又はサクションマウス33が択一的に選択されて、巻取装置13側の糸Yが捕捉される。
【0029】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置11は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側における糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
【0030】
巻取装置13は、生成した糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。巻取ドラム22は、図略の電動モータによって回転駆動される。トラバースガイド23は、図略の電動モータによって往復運動される。これにより、巻取装置13は、糸Yを綾振りしつつ、糸YをパッケージPに巻き取る。なお、巻取ドラム22及びトラバースガイド23の電動モータは、紡績ユニット2ごとに設けられている。すなわち、巻取ドラム22は、紡績ユニット2ごとに正転又は逆転が可能(独立して駆動可能)である。トラバースガイド23も、紡績ユニット2ごとに可動の有無が切り替え可能である。
【0031】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置(糸継部)31、サクションノズル(捕捉案内部・第二捕捉案内部)32、サクションマウス(捕捉案内部・第一捕捉案内部)33、分岐管34、エア機器35及び制御機器37等の付属物と、ベース部40と、走行部39と、を有している。本実施形態では、糸継装置31、サクションノズル32及びサクションマウス33以外の付属物を特定付属物と称する。
【0032】
図1図3に示される糸継装置31は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置31は、圧縮空気を用いるスプライサ、種糸を用いるピーサー、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。糸継装置31において用いられる旋回流は、エア機器35を介して供給される。
【0033】
サクションノズル32は、空気紡績装置7側の糸Yを捕捉して糸継装置31に案内する。より詳細には、サクションノズル32は、糸Yの糸端を吸引する吸引口32Aが形成されると共に第一方向に延びる回転軸A1回りに回転可能に設けられるアーム32Bと、アーム32Bが第一方向に延びる回転軸A1回りに回転するときの基端となる基端部32Cと、を有する。基端部32Cは、分岐管34に隣り合う(接続される)部分であり、可動しない(固定された)分岐管34に対して可動する部分である。サクションノズル32は、上側ベース部44に設けられる支持部材に回転可能に支持されている。サクションノズル32は、糸端を吸引口32Aにより吸引した状態で回転することにより、吸引口32Aにより吸引された糸Yを糸継装置31へ案内する。サクションノズル32は、アーム32Bを回転軸A1回りに回転させる駆動部(図示せず)を有する。
【0034】
サクションマウス33は、巻取装置13側の糸Yを捕捉して糸継装置31に案内する。より詳細には、サクションマウス33は、糸Yの糸端を吸引する吸引口33Aが形成されると共に第一方向に延びる回転軸A2回りに回転可能に設けられるアーム33Bと、アーム33Bが第一方向に延びる回転軸A2回りに回転するときの基端となる基端部33Cと、を有する。基端部33Cは、分岐管34に隣り合う(接続される)部分であり、可動しない(固定された)分岐管34に対して可動する部分である。サクションマウス33は、左側ベース部41に設けられる支持部材に回転可能に支持されている。サクションマウス33は、糸端を吸引口33Aにより吸引した状態で回転することにより、吸引口33Aにより吸引された糸Yを糸継装置31へ案内する。サクションマウス33は、アーム33Bを回転軸A2回りに回転させる駆動部33D(図6参照)を有する。
【0035】
分岐管34は、サクションノズル32とダクト29との間を接続(連通)し、サクションノズル32の吸引口32Aに吸引力を供給する。また、分岐管34は、サクションマウス33とダクト29との間を接続し、サクションマウス33の吸引口32Aに吸引力を供給する。より詳細には、分岐管34は、接続部34Aと、分岐部34Cと、第一本体部34Dと、第二本体部34Eと、を有する。接続部34Aは、ダクト29へ接続される開口部34Bが形成され、空気が流通可能な管状部材である。
【0036】
分岐部34Cは、開口部34Bから続く流路を、サクションノズル32に続く流路である第一本体部34Dと、サクションマウス33に続く流路である第二本体部34Eと、に分岐する。第一本体部34D及び第二本体部34Eは、空気が流通可能な管状部材である。第一本体部34D及び第二本体部34Eは、第一方向においてずれて配置されており、第一本体部34D及び第二本体部34Eの少なくとも一部は、第一方向において重ならないように配置されている。つまり、図3において糸継台車3を正面(前方)から見たときに、第一本体部34D及び第二本体部34Eの少なくとも一部が左右に分かれて配置される。また、第一本体部34D及び第二本体部34Eの残り部分は、重なっていてもよい。本実施形態では、第一本体部34D及び第二本体部34Eは、第一方向に互いに重なる部分を有していない。
【0037】
ダクト29には、紡績ユニット2のそれぞれに対応して接続口29Aが形成されている。言い替えれば、ダクト29の接続口29Aは、糸継台車3が糸継対象となる紡績ユニット2の前で停止したとき、分岐管34の接続部34Aが接続口29Aに接続されるような位置に形成されている。
【0038】
エア機器35は、糸継装置31にエアを供給する機器群である。エア機器35には、例えば、レギュレータ、ソレノイドバルブ等の機器が含まれている。レギュレータは、後段にて詳述するエア配管と、糸継装置31、サクションノズル32及びクリーニングノズル(図示せず)との間に設けられている。レギュレータは、糸を継ぐ際の解撚と撚りかけを行う糸継装置31に供給するためのエアの流量(圧力)を調整したり、上記給糸部から供給される糸Yを吸引補助するためのエアの流量を調整したり、風綿が溜まりそうなところに設けられるクリーニングノズルが掃除するときに吹き付けるためのエアの流量を調整したりする。ソレノイドバルブは、糸継装置31で発生させる空気流の流れの有無を切り替える。
【0039】
制御機器37は、糸継台車3における各部のそれぞれ(可動部)を制御する。より詳細には、制御機器37は、サクションノズル32の駆動部及びサクションマウス33の駆動部33Dを制御したり、機台制御装置4A等と通信をしたり、作業者からの指示を受け付けたり、糸継台車3における各部に電力を供給したりする装置群である。制御機器37には、例えば、ソレノイドバルブの信号を送受信する制御基板、非常電源のリレー装置を構成する制御基板、機台制御装置4A等との通信インタフェイス、スプライスモニタ、各種制御ボタン、各種電源、ブレーカ、走行部39の駆動部を制御するドライバ、サクションノズル32の駆動部を制御するドライバ、サクションマウス33の駆動部33Dを制御するドライバ等が含まれる。
【0040】
走行部39は、糸継台車3を左右方向に延在するレールRに沿って走行させる部分である。走行部39は、レールRの上面を転動する車輪39A,39A、レールRの側面を転動する車輪39B,39B及び図示しない電動モータ等の駆動部を含んで構成される。走行部39は、下側ベース部43に取り付けられている。
【0041】
図4に示されるように、ベース部40は、左側ベース部(第一ベース部)41と、右側ベース部(第二ベース部)42と、下側ベース部43と、上側ベース部44と、第一補強部45と、第二補強部46と、第三補強部47と、を備える。ベース部40を構成する各部材は、鉄等の材料によって形成されている。ベース部40は、糸継台車3を構成する各部を支持する。
【0042】
左側ベース部41は、左右方向(糸継台車3の走行方向)に直交する第一主面41Aを有する板状部材である。第一主面41Aは、第一方向における右側の面(一方の面)である第一面41Bと、左側の面(他方の面)である第二面41Cと、を有する。第一面41B及び第二面41Cは、第一方向に直交(交差)する。左側ベース部41は、下側ベース部43から立設している。第一主面41Aにおける右側の面である第一面41Bは、糸継装置31に面するように配置されている。右側ベース部42は、第一方向(糸継台車3の走行方向)に直交する第二主面42Aを有する板状部材である。第二主面42Aは、第一方向における左側の面(一方の面)である第三面42Bと、右側の面(他方の面)である第四面42Cと、を有する。第三面42B及び第四面42Cは、第一方向に直交(交差)する。右側ベース部42は、下側ベース部43から立設している。右側ベース部42は、第二主面42Aにおける左側の面である第三面42Bが、第一主面41Aの第一面41Bに対向するように配置される。
【0043】
下側ベース部43は、左側ベース部41及び右側ベース部42を下方から支持をする板状部材である。上側ベース部44は、左側ベース部41の上端と右側ベース部42の上端とを接続する板状部材である。なお、左側ベース部41と、右側ベース部42と、下側ベース部43と、上側ベース部44とは、枠体を形成している。第一補強部45は、左側ベース部41と右側ベース部42とを接続し、上記枠体を補強する。第二補強部46は、左側ベース部41と右側ベース部42とを接続すると共に、第二補強部46の上方に配置され、上記枠体を補強する。第三補強部47は、左側ベース部41と右側ベース部42とを接続すると共に、第一補強部45と第二補強部46との間に配置され、上記枠体を補強する。
【0044】
図3及び図4に示されるように、サクションノズル32及びサクションマウス33は、左側ベース部41に対して走行方向における第一面41B側の領域のみに配置されている。より詳細には、サクションノズル32及びサクションマウス33は、左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域に配置されて、左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域以外には配置されていない。本実施形態では、サクションノズル32におけるアーム32Bと基端部32Cとが、左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域に配置される。また、サクションマウス33におけるアーム33Bと基端部33Cとが、左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域に配置される。本実施形態では、更に、アーム32Bを可動させる駆動部(図示せず)等の機構とアーム33Bを可動させる駆動部33D等の機構とが、左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域に配置される。本実施形態では、更に、サクションノズル32及びサクションマウス33に接続される分岐管34が、左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域に配置される。
【0045】
また、糸継装置31、サクションノズル32及びサクションマウス33は、左側ベース部41と、右側ベース部42と、下側ベース部43と、上側ベース部44とによって形成される枠体内部の領域に配置される。
【0046】
図3に示されるように、本実施形態のサクションノズル32は、上側ベース部44に取り付けられている。なお、サクションノズル32は、上側ベース部44以外に、下側ベース部43、左側ベース部41又は右側ベース部42に取り付けられてもよい。図6に示されるように、サクションマウス33は、左側ベース部41の第一面41Bに取り付けられている。すなわち、左側ベース部41は、サクションマウス33を支持する。なお、サクションマウス33は、左側ベース部41以外に、右側ベース部42,下側ベース部43又は上側ベース部44に取り付けられてもよい。
【0047】
分岐部34Cにおける接続部34Aの少なくとも一部は、左右方向において、サクションノズル32及びサクションマウス33の可動領域における第一方向における一方の端部Waと他方の端部Wbとの間の領域Wに位置するように、分岐管34が配置されている。ここでいう一方の端部Waは、サクションマウス33の基端部33Cにおける左側端部(第一方向における一方側の端部)であり、他方の端部Wbは、サクションノズル32の基端部32Cにおける右側端部(第一方向における他方側の端部)である。なお、左右方向(第一方向)において上記接続部34Aの半分以上(特に好ましくは全て)が、上記領域Wに配置されるように、分岐管34が配置されることが好ましい。
【0048】
図3図5に示されるように、糸継台車3に配備される特定付属物の一部であるエア機器35は、左側ベース部41の第二面41Cに配置される。すなわち、左側ベース部41の第二面41Cには、レギュレータとソレノイドバルブ等の機器とが取り付けられている。
【0049】
図7及び図8に示されるように、制御機器37は、右側ベース部42の第二主面42Aに配置されている。より詳細には、制御機器37は、第二主面42Aにおける第三面42Bと、第二主面42Aにおける第四面42Cとの両方に配置されている。第三面42Bに取り付けられる制御機器37は、第一枠体48によって周囲が囲まれている。第一枠体48は、鉄等の材料からなる平板を折り曲げることによって形成されている。第三面42Bに配置される制御機器37は、電源に関する部材及び/又は駆動部のドライバであり、具体的には、各種電源、ブレーカ、走行部39を制御するドライバ、サクションノズル32の駆動部を制御するドライバ、サクションマウス33の駆動部33Dを制御するドライバ等である。第三面42Bに配置される制御機器37は、熱を発生する装置であることが好ましい。
【0050】
第四面42Cに取り付けられる制御機器37は、第二枠体49によって周囲が囲まれている。第二枠体49も、第一枠体48と同様に、鉄等の材料からなる平板を折り曲げることによって形成されている。第四面42Cに配置される制御機器37は、作業者によって操作可能な装置が少なくとも含まれている。具体的には、ソレノイドバルブの信号を送受信する制御基板、非常電源のリレー装置を構成する制御基板、機台制御装置4A等との通信インタフェイス、スプライスモニタ、各種制御ボタン等である。
【0051】
上述したように、第二枠体49には、糸継ぎに関する部位を制御する制御基板、走行に関する部位を制御する制御基板、機台制御装置4Aとの通信の制御基板等が配置されている。これらの制御基板は、各部位を動作させるため、通信ケーブルによって接続されている。また、第二枠体49には、各種センサーから情報を取得するための通信ケーブルも配置されている。また、各ボタンと制御基板とは、直接的又は間接的に外側の制御機器37に繋がっている。このような構成となっているため、各ボタンを押すと、各動作(動作確認又は位置調整)を実行させることができる。このような通信ケーブルの近くに熱源があると、通信ケーブルに流れる電流値が小さくなることがある。このような不具合を防止するためには、通常、通信ケーブルを太くする必要があるところ、このような対策にはコストがかかる。このため、通信ケーブルの長さ、太さ等を考慮して、上記のように第一方向に二つに分割する構成となっている。また、外側の第二枠体49の内部には、メンテナンスをする機会の多い制御機器37を配置している。
【0052】
糸継台車3には、制御機器37に接続されるケーブル及びエア機器35に接続されるエア配管が接続されている。ケーブルの例には、機台制御装置4Aに接続される通信ケーブル、電源に接続される電力ケーブルが含まれる。エア配管の例には、第二エンドフレーム5の空気供給部から供給される高圧のエア配管及び低圧のエア配管が含まれる。これらケーブル及びエア配管は、ケーブルガイドCGによって保護されている。右側ベース部42には、ケーブルガイドCGを取り付け可能な取付部42Dが形成されている。本実施形態では、取付部42Dは、右側ベース部42のみに形成されており、左側ベース部41には形成されていない。すなわち、糸継台車3に接続されるケーブルガイドCGは、糸継台車3から左右方向における一方側にのみ延びている。
【0053】
なお、右側ベース部42にケーブルガイドCGを接続させると、右側ベース部42から左側ベース部41に配置されたエア機器35にまでエア配管を延ばして接続させる必要がある。一方、左側ベース部41にケーブルガイドCGを接続させると、左側ベース部41から右側ベース部42に配置された制御機器37にまで通信ケーブル及び電力ケーブルを延ばして接続させる必要がある。ここで、エア配管の長さを調整する場合には、チューブを適宜な長さに併せて切断するだけでよいので、通信ケーブル及び電力ケーブルの長さを調整する場合に比べて安価に調整することができる。本実施形態では、右側ベース部42にケーブルガイドCGを接続させて、エア配管の長さを調整しているので、左側ベース部41にケーブルガイドCGを接続させて、通信ケーブル及び電力ケーブルの長さを調整する場合と比べて、安価に糸継台車3を構成することができる。なお、従来のように紡績機1の都合上、左側ベース部41及び右側ベース部42の両方にケーブルガイドCGが接続する構成に比べると、製造コストをより一層抑えることができるようになる。
【0054】
上記実施形態の糸継台車3における作用効果について説明する。上記実施形態の糸継台車3では、サクションマウス33が左側ベース部41の第一主面41Aにおける一方側(右側)にのみ配置される。言い替えれば、サクションマウス33の可動範囲は、左側ベース部41の第一主面41Aにおける一方側(右側)にまとめられる。これにより、左側ベース部41の第一主面41Aにおける他方側(左側)には、サクションマウス33以外の特定付属物が自由に配置可能となる。この結果、特定付属物を左側ベース部41の第一主面41Aにおける他方側(左側)である第二面41Cに配置することができる。このため、左側ベース部41に別のフレームを介して特定付属物を配置することに比べて、上記糸継台車3をシンプルかつコンパクトな構成とすることができる。更に、特定付属物が左側ベース部41の第二面41Cに配置される場合、特定付属物がサクションマウス33の背後に配置される場合と比べて、作業者によるサクションマウス33以外の各付属物へのアクセスが容易となるので、付属物全体のメンテナンス性に優れる。
【0055】
上記実施形態の糸継台車3では、巻取装置13から糸継装置31に糸Yを案内するサクションマウス33は、左側ベース部41に支持されている。これにより、巻取装置13から糸継装置31に糸Yを案内するサクションマウス33を有する糸継台車3であっても、付属物全体のメンテナンス性に優れ、シンプルかつコンパクトな構成とすることができる。
【0056】
上記実施形態の糸継台車3では、サクションノズル32及びサクションマウス33の両方に分岐する分岐管34の開口部34Bの少なくとも一部が、サクションノズル32及びサクションマウス33の可動領域における第一方向における一方の端部Waと他方の端部Wbとの間の領域Wに位置するように、分岐管34が配置されている。この構成では、サクションノズル32とサクションマウス33とを有する糸継台車3であっても、付属物全体のメンテナンス性に優れ、シンプルかつコンパクトな構成とすることができる。更に、左右方向において、開口部34Bとアーム32Bとの間のずれ量及び開口部34Bとアーム33Bとの間のずれ量が小さい上記構成では、ダクト29とサクションノズル32及びサクションマウス33とを比較的短い距離で接続することができ、配管を簡素化できる。
【0057】
なお、本実施形態の紡績ユニット2では、巻取装置13における巻取ドラム22が紡績ユニット2ごとに正転及び逆転可能に構成されているので、糸継台車3では、巻取装置13にパッケージPを逆回転させるための逆転ローラを設ける必要がない。このため、ベース部40の下部に取り付けられていた逆転ローラの取り付けスペースの利用が可能となり、上述したような分岐管34の配置が容易に可能となる。
【0058】
上記実施形態の糸継台車3では、一又は複数のエア機器35は、左側ベース部41の第二面41Cに配置され、一又は複数の制御機器37は、右側ベース部42の第二主面42Aに配置され、サクションノズル32及びサクションマウス33は、左右方向において左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域のみに配置されている。この構成ではサクションノズル32及びサクションマウス33は、左右方向において左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域のみにまとめて配置されるので、左側ベース部41と右側ベース部42との間の領域の外側には、特定付属物が自由に配置可能となる。
【0059】
この結果、特定付属物を左側ベース部41の第一主面41Aにおける第二面41C及び右側ベース部42の第四面42Cに自由に配置することができるので、左側ベース部41又は右側ベース部42に別のフレームを介して特定付属物を配置することに比べて、上記糸継台車3をシンプルかつコンパクトな構成とすることができる。更に、特定付属物が左側ベース部41の第二面41C及び右側ベース部42の第四面42Cに配置される場合、特定付属物がサクションノズル32及びサクションマウス33の背後に配置される場合と比べて、作業者による付属物全体へのアクセスが容易となるので、付属物全体のメンテナンス性に優れる。
【0060】
上記実施形態の糸継台車3では、一又は複数の制御機器37は、右側ベース部42の第三面42Bと第四面42Cとの両方に配置されており、第三面42Bに配置される制御機器37は、電源に関する部材及び駆動部のドライバであり、第四面42Cに配置される制御機器37は、作業者によって操作可能な装置である。この構成では、作業者によって操作可能な装置が外側に配置されるので、メンテナンス性に優れる。また、熱源と作業者によって操作可能な装置とを離して配置することができるので、熱が装置に作用することによって誤動作が発生することを低減できる。
【0061】
上記実施形態の糸継台車3では、第一本体部34D及び第二本体部34Eは、第一方向においてずれて配置されており、少なくとも一部に互いに重ならない部分を有している。このため、糸継台車3を正面(前方)から見たときに、第一本体部34D及び第二本体部34Eを視認することができる。この結果、第一本体部34D及び第二本体部34Eの一部に対し、作業者は容易に触れることが可能となるので、作業者の作業性が向上する。
【0062】
上記実施形態の糸継台車3では、一又は複数のケーブルと、一又は複数のエア配管と、を保護するケーブルガイドCGを接続可能な一又は複数の取付部42Dが、右側ベース部42のみに形成されている。この構成では、糸継台車3に対して左右方向における一方側からのみケーブルガイドCGが接続されるので、全体構成をシンプルにすることができる。
【0063】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
上記実施形態の糸継台車3では、左側ベース部41にエア機器35が配置され、右側ベース部42に制御機器37が配置された例を挙げて説明したが、左側ベース部41に制御機器37が配置され、右側ベース部42にエア機器35が配置されてもよい。この場合であっても、サクションノズル32及びサクションマウス33以外の付属物である特定付属物を左側ベース部41の第二面41Cに配置することができるので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
上記実施形態では、右側ベース部42の第三面42Bに、電源に関する部材及び駆動部のドライバ等の制御機器37を配置し、右側ベース部42の第四面42Cに、作業者によって操作可能な装置等の制御機器37を配置する例を挙げて説明した。しかし、作業者によって操作可能な装置等の制御機器37以外にも耐熱性に乏しい装置を、板状部材となる右側ベース部42を隔てて配置するようにしてもよい。また、例えば、第一枠体48又は第二枠体49のような枠体部材を設けて制御機器37間における熱の伝導を抑制することで、電源に関する部材及び駆動部のドライバ等の制御機器37と、作業者によって操作可能な装置等の制御機器37とを右側ベース部42の同じ面に配置してもよい。
【0066】
上記実施形態では、左側ベース部41の第一面41Bにサクションマウス33、上側ベース部44にサクションノズル32、左側ベース部41の第二面41Cにエア機器35、右側ベース部42の第三面42Bに熱源となる制御機器37、右側ベース部42の第四面42Cに残りの制御機器37(作業者によって操作可能な装置等)が配置される例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、糸継台車3では、左側ベース部41の第一面41Bに熱源となる制御機器37、左側ベース部41の第二面41Cにエア機器35、右側ベース部42の第三面42Bにサクションノズル32及びサクションマウス33、右側ベース部42の第四面42Cに残りの制御機器37(作業者によって操作可能な装置等)が配置される構成としてもよい。
【0067】
このような変形例では、振動が生じ易いサクションマウス33の横に制御機器37の残りが配置されたり、エア機器35に対して電力を消費する制御機器37が左右に分かれて配置されたりする等の不都合が生じる可能性がある。しかし、上記実施形態のような配置の仕方や、他の適宜の追加工夫を実施することによって不都合が解消される。
【0068】
上記実施形態及び変形例の糸継台車3では、サクションマウス33が設けられる例を挙げて説明したが、糸継台車3にはサクションマウス33が設けられなくてもよい。
【0069】
上記実施形態及び変形例の糸継台車3では、ダクト29は、糸継台車3が走行するレールRが設けられている部材の下方に設けられている例を挙げて説明したが、ダクト29は、糸継台車3が走行領域の後側の側面に配置されていてもよい。この場合、分岐管34の開口部34Bは後方に向かって開口するように配置されればよい。このような構成であっても、上記実施形態の糸継台車3と同様に、ダクト29から圧縮空気の供給を受けることができる。
【0070】
上記実施形態の糸継台車3では、一又は複数のケーブルと、一又は複数のエア配管と、を保護するケーブルガイドCGを接続可能な一又は複数の取付部42Dが、右側ベース部42のみに形成されている例を挙げて説明したが、左側ベース部41のみに形成されていてもよい。また、取付部42Dは、右側ベース部42又は左側ベース部41にのみ取り付けられる構成に代えて、右側ベース部42又は左側ベース部41に取り付けられた制御機器37に直接取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…紡績機(繊維機械)、2…紡績ユニット(糸処理ユニット)、3…糸継台車、6…ドラフト装置、7…空気紡績装置、8…糸監視装置、11…糸貯留装置、13…巻取装置、26…吸引装置、29…ダクト、31…糸継装置(糸継部)、32…サクションノズル(捕捉案内部・第二捕捉案内部)、32A…吸引口、32B…アーム、32C…基端部、33…サクションマウス(捕捉案内部・第一捕捉案内部)、33A…吸引口、33B…アーム、33C…基端部、34…分岐管、35…エア機器(特定付属物)、37…制御機器(特定付属物)、41…左側ベース部(第一ベース部)、41A…第一主面、41B…第一面、41C…第二面、42…右側ベース部(第二ベース部)、42A…第二主面、42B…第三面、42C…第四面、42D…取付部、CG…ケーブルガイド、Y…糸。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8