IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-可逆作動固体酸化物形セルシステム 図1
  • 特開-可逆作動固体酸化物形セルシステム 図2
  • 特開-可逆作動固体酸化物形セルシステム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110247
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】可逆作動固体酸化物形セルシステム
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/042 20210101AFI20240807BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240807BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240807BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20240807BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240807BHJP
【FI】
C25B1/042
H01M8/04701
H01M8/04746
C25B15/021
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014729
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA09
4K021DB40
4K021DB53
4K021DC03
4K021EA06
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA15
5H127BA22
5H127BA37
5H127BA44
5H127BA48
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB25
5H127BB28
5H127BB37
5H127BB39
5H127DC18
5H127DC38
5H127DC73
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により、電解動作に必要な熱を確保すると共に電解動作時に燃料極で生成される水素ガス中に含まれる水蒸気を分離する。
【解決手段】可逆作動固体酸化物形セルシステムは、発電動作と電解動作とが可能な可逆作動固体酸化物形セルと、導入される熱を脱水反応により蓄熱し蓄熱した熱を水和反応により放出する水和/脱水和系蓄熱材を含む蓄熱部と、発電動作に伴って生成される排熱を蓄熱部に供給する第1供給部と、電解動作において可逆作動固体酸化物形セルの燃料極から排出される燃料極オフガスを蓄熱部に供給する第2供給部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電動作と電解動作とが可能な可逆作動固体酸化物形セルを備える可逆作動固体酸化物形セルシステムであって、
導入される熱を脱水反応により蓄熱し、蓄熱した熱を水和反応により放出する水和/脱水和系蓄熱材を含む蓄熱部と、
前記発電動作に伴って生成される排熱を前記蓄熱部に供給する第1供給部と、
前記電解動作において前記可逆作動固体酸化物形セルの燃料極から排出される燃料極オフガスを前記蓄熱部に供給する第2供給部と、
を備える可逆作動固体酸化物形セルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の可逆作動固体酸化物形セルシステムであって、
前記第1供給部は、前記発電動作において前記可逆作動固体酸化物形セルの酸化剤ガス極から排出される酸化剤ガス極オフガスの少なくとも一部を前記蓄熱部に供給する、
可逆作動固体酸化物形セルシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の可逆作動固体酸化物形セルシステムであって、
前記蓄熱部と熱伝達可能な燃焼部を備え、
前記第1供給部は、前記発電動作において、前記可逆作動固体酸化物形セルの燃料極から排出される燃料極オフガスを前記燃焼部に供給し、前記可逆作動固体酸化物形セルの酸化剤ガス極から排出される酸化剤ガス極オフガスを前記蓄熱部と前記燃焼部とに供給する、
可逆作動固体酸化物形セルシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の可逆作動固体酸化物形セルシステムであって、
前記蓄熱部から放出された熱を前記電解動作に必要な熱として供給する熱供給部を備える、
可逆作動固体酸化物形セルシステム。
【請求項5】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の可逆作動固体酸化物形セルシステムであって、
前記水和/脱水和系蓄熱材は、水酸化物により構成される、
可逆作動固体酸化物形セルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、可逆作動固体酸化物形セルシステムについて開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する発電動作と、水蒸気を電気分解する電解動作とが可能な可逆作動固体酸化物形セルシステムが知られている。例えば、特許文献1には、燃料電池と水蒸気電解セルとを兼ねる発電部と電解部とを有する電力/水素変換装置と、電気分解により生成された水素を貯蔵し発電時において当該水素を発電部に供給する水素貯蔵部と、発電に伴って発生する高温の熱を貯蔵し電気分解時において当該熱を電解部に供給する高温蓄熱部と、高温蓄熱部で熱交換された後の低温の熱を貯蔵し当該熱により電解部に供給する水蒸気を発生させる低温蓄熱部と、を備えるものが開示されている。高温蓄熱部の蓄熱材には、塩化ナトリウムや塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の溶融塩が用いられる。低温蓄熱部の蓄熱材には、キシリトール、エリスリトールなどの有機物や、塩化アルミニウム、塩化鉄、水酸化リチウムなどの溶融塩が用いられる。
【0003】
特許文献2には、水を加熱して水蒸気を生成する蒸発器と、水蒸気を電気分解する電解セルと、を備える水素製造システムにおいて、蓄熱材として水酸化マグネシウム系蓄熱材を用いた熱貯蔵タンクを備え、外部熱源から提供される熱を脱水反応により蓄熱し、蓄えた熱を水和反応により蒸発部へと放熱するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-26457号公報
【特許文献2】特開2022-144623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、蓄熱材として溶融塩を用いるものは、長期の熱の保存が難しいといった問題がある。また、特許文献2に記載の技術では、蓄熱材として化学蓄熱材を用いるため、長期の熱の保存は可能であるものの、化学蓄熱材への蓄熱には外部熱源が必要であり、効率の低下を招く。ところで、水蒸気の電気分解反応では、燃料極側に供給される水蒸気が反応式(HO+e→H+1/2O2-)によって水素に変換される。このとき、水蒸気は、100%の効率では水素に変換されないため、過剰な量の水蒸気を供給する必要があり、燃料極から排出される燃料極オフガス中には、当該燃料極で生成された水素ガスの他に未反応の水蒸気が含まれる。このため、電気分解により生成される水素の回収にあたっては、水素と水蒸気との混合ガスを凝縮器に通し、凝縮器にて水蒸気を凝縮させて水素と分離する方法が一般的に用いられる。しかしながら、高純度の水素が必要とされる場合、水蒸気の凝縮を促進させるための冷凍機を別途設置したり、膜式除湿器やTSA(Temperature Swing Adsorption)式除湿器等の除湿器を別途設置したりする必要があり、システムが複雑化すると共にコスト増を招く。
【0006】
本開示の可逆作動固体酸化物形セルシステムは、簡易な構成により、電解動作に必要な熱を確保すると共に電解動作時に燃料極で生成される水素ガス中に含まれる水蒸気を分離することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の可逆作動固体酸化物形セルシステムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本開示の可逆作動固体酸化物形セルシステムは、
発電動作と電解動作とが可能な可逆作動固体酸化物形セルを備える可逆作動固体酸化物形セルシステムであって、
導入される熱を脱水反応により蓄熱し、蓄熱した熱を水和反応により放出する水和/脱水和系蓄熱材を含む蓄熱部と、
前記発電動作に伴って生成される排熱を前記蓄熱部に供給する第1供給部と、
前記電解動作において前記可逆作動固体酸化物形セルの燃料極から排出される燃料極オフガスを前記蓄熱部に供給する第2供給部と、
を備えることを要旨とする。
【0009】
この本開示の可逆作動固体酸化物形セルシステムでは、発電動作に伴って生成される排熱を用いて水和/脱水和系蓄熱材に脱水蓄熱しておき、電解動作において燃料極から排出される水蒸気と水素との混合ガス(燃料極オフガス)を水和/脱水和系蓄熱材に通すことで、水蒸気と水和/脱水和系蓄熱材とを反応(水和反応)させる。これにより、水和反応により水和/脱水和系蓄熱材から放出される熱を電解動作に利用することが可能である。また、水和反応により混合ガス中の水蒸気が除去されるため、純度の高い水素を回収することが可能である。ここで、「水和/脱水和系蓄熱材」には、水酸化物により構成されるものが含まれる。
【0010】
こうした本開示の可逆作動固体酸化物形セルシステムにおいて、前記第1供給部は、前記発電動作において前記可逆作動固体酸化物形セルの酸化剤ガス極から排出される酸化剤ガス極オフガスの少なくとも一部を前記蓄熱部に供給してもよい。こうすれば、発電動作に伴って酸化剤ガス極から排出される酸化剤ガス極オフガスの高温排熱を用いて蓄熱部(水和/脱水和系蓄熱材)を脱水蓄熱することができる。この場合、前記蓄熱部と熱交換可能に配置される燃焼部を備え、前記第1供給部は、前記発電動作時に前記可逆作動固体酸化物形セルの酸化剤ガス極から排出される酸化剤ガス極オフガスの一部を前記燃焼部へ供給すると共に前記酸化剤ガス極オフガスの残余を前記蓄熱部に供給してもよい。こうすれば、酸化剤ガス極オフガスの高温排熱に加えて、燃料極オフガスと酸化剤ガス極オフガスとの燃焼による燃焼熱を用いて蓄熱部(水和/脱水和系蓄熱材)を効率よく脱水蓄熱することができる。
【0011】
また、本開示の可逆作動固体酸化物形セルシステムにおいて、前記蓄熱部から放出された熱を前記電解動作に必要な熱として供給する熱供給部を備えてもよい。熱供給部は、水を蒸発させることで、電解動作において燃料極に供給する水蒸気を生成する蒸発部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の可逆作動固体酸化物形セルシステムの概略構成図である。
図2】FCモード時のガスの流れを説明する説明図である。
図3】ECモード時のガスの流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の可逆作動固体酸化物形セルシステム10の概略構成図である。本実施形態の可逆作動固体酸化物形セルシステム10は、図1に示すように、燃料電池として機能すると共に電解セルとしても機能する可逆作動固体酸化物形セルスタック(r-SOCスタック)21を含む可逆作動固体酸化物形セルモジュール(r-SOCモジュール)20と、r-SOCモジュール20の運転に必要な各種補機(燃料供給系やエア供給系、水供給系、排熱回収系など)と、燃料ガスとしての水素を貯留する水素タンク80と、を備える。
【0015】
r-SOCモジュール20は、r-SOCスタック21の他に、燃焼器31や蓄熱/脱水器32、蒸発器33、ヒータ式蒸発器34、ヒータ45,47、熱交換器46,48等を含む。これらは、断熱性を有するモジュールケース22に収容されている。
【0016】
r-SOCスタック21は、電解質21aと、電解質21aの一方の面側に配置される燃料極21bと、電解質21aの他方の面側に配置される酸化剤ガス極21cとをそれぞれ含む複数の固体酸化物形の単セルを備える。r-SOCスタック21は、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(酸素)との反応により発電する発電動作モード(FCモード)と、外部電源から電力が供給された状態で水蒸気を電気分解して水素を生成する電解動作モード(ECモード)とを有する。なお、外部電源としては、系統電源や、再生可能エネルギ(例えば太陽光発電装置)、蓄電池などを用いることができる。
【0017】
r-SOCスタック21の燃料極入口には、燃料ガス供給管41の一端が接続され、燃料極出口には燃料極オフガス配管43の一端が接続されている。また、燃料ガス供給管41の他端には、切替弁51を介して水素供給管52の一端と水蒸気供給管53の一端とが接続されている。水素供給管52の他端には、水素タンク80が接続されており、水素タンク80に蓄えられた水素ガスは、水素供給管52から燃料ガス供給管41を介して燃料極21bに供給される。また、水蒸気供給管53の他端は、水タンクや水ポンプ等を含む水供給系または水蒸気供給系が開閉弁55を介して接続されている。水蒸気供給管53には、水供給系または水蒸気供給系に対して蒸発器33とヒータ式蒸発器34とが並列に接続されており、水供給系または水蒸気供給系からの水または水蒸気は、切替弁54により蒸発器33またはヒータ式蒸発器34を選択的に通過してから燃料ガス供給管41を介して燃料極21bに供給される。更に、燃料ガス供給管41には、ヒータ45と熱交換器46とが直列に設けられている。熱交換器46は、燃料ガス供給管41を流通する燃料ガスと燃料極オフガス配管43を流通する燃料極オフガスとの熱交換を行なうものである。
【0018】
燃料極オフガス配管43は、熱交換器46を通るように配置され、燃料極オフガス配管43の他端には、切替弁61を介して燃焼器31と蓄熱/脱水器32とに接続されている。
【0019】
r-SOCスタック21の酸化剤ガス極入口には、酸化剤ガス供給管42の一端が接続され、酸化剤ガス極出口には酸化剤ガス極オフガス配管44の一端が接続されている。酸化剤ガス供給管42の他端にはエアブロア等を含むエア供給系が接続されている。また、酸化剤ガス供給管42には、ヒータ47と熱交換器48とが直列に設けられている。熱交換器48は、酸化剤ガス供給管42を流通する酸化剤ガス(エア)と酸化剤ガス極オフガス配管44を流通する酸化剤ガス極オフガスとの熱交換を行なうものである。
【0020】
酸化剤ガス極オフガス配管44は、熱交換器48を通るように配置され、酸化剤ガス極オフガス配管44の他端は、切替弁62を介して酸化剤ガス極オフガス排出管63の一端と酸化剤ガス極オフガス供給管64の一端とが接続されている。更に、酸化剤ガス極オフガス供給管64の他端には、分岐弁65を介して燃焼器31と蓄熱/脱水器32とが接続されている。
【0021】
燃焼器31は、点火装置を備え、燃料極オフガスと酸化剤ガス極オフガスとを導入してこれらの混合ガスを燃焼させるものである。燃料極オフガスと酸化剤ガス極オフガスとの混合ガスの燃焼により生成される水蒸気と残留エアとを含む燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出管71を介してシステム外部へ排出される。なお、燃焼排ガスの熱は、排熱回収系によって回収されてもよい。
【0022】
蓄熱/脱水器32は、熱が与えられることで吸熱反応である脱水和反応により蓄熱し、蓄熱状態で反応媒体である水(水蒸気)が接触すると、発熱反応である水和反応により放熱する水和/脱水和系蓄熱材を有する。水和/脱水和系蓄熱材としては、水酸化マグネシウム(Mg(OH);平衡温度258℃)や、水酸化カルシウム(Ca(OH);平衡温度479℃)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH);平衡温度579℃)、水酸化リチウム(Li(OH);平衡温度731℃)などを挙げることができる。本実施形態では、発電動作で生成される排熱の温度や電解動作に必要な温度に適合する平衡温度をもつ水酸化カルシウム(Ca(OH))を用いるものとした。蓄熱/脱水器32は、燃焼器31と熱伝達可能に近接して設置されている。燃焼器31の燃焼熱は水和/脱水和系蓄熱材の脱水蓄熱に用いられる。更に、蓄熱/脱水器32は、蒸発器33と熱伝達可能に近接して設置されている。水和/脱水和系蓄熱材の水和反応により放出される熱は、蒸発器33において水蒸気の生成や水蒸気の昇温に用いられる。蓄熱/脱水器32を通過したオフガス(燃料極オフガスや酸化剤ガス極オフガス)は、オフガス配管72に排出される。オフガス配管72は、切替弁73を介して回収配管74と排出配管75とに接続されている。
【0023】
次に、こうして構成された可逆作動固体酸化物形セルシステム10の動作について説明する。特に、FCモードとECモードについて説明する。動作モードの選択は、電力の需要に応じて決定することができる。例えば、負荷が電力を要求している場合にはFCモードを選択し、負荷が電力を要求していない場合にはECモードを選択することができる。また、デマンドレスポンス契約を締結した可逆作動固体酸化物形セルシステム10においては、電力の需要量を減らす下げDRが要求された場合にはFCモードを選択し、電力の需要量を増やす上げDRが要求された場合にはECモードを選択することができる。
【0024】
図2は、FCモード時のガスの流れを説明する説明図である。FCモードでは、r-SOCスタック21の燃料極21bには、燃料ガスとして水素タンク80からの水素ガスが熱交換器46とヒータ45とを通って予熱されて導入される。r-SOCスタック21の酸化剤ガス極21cには、酸化剤ガスとしてエア供給系からのエアが熱交換器48とヒータ47とを通って予熱されて導入される。そして、酸化剤ガス極21cでは、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質21aを透過して燃料極21bで水素と反応することにより電力と熱とを発生する。
【0025】
各単セルの燃料極21bにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかった残留水素を含む燃料極オフガスは、熱交換器46を通り、燃料極21bに導入される前の水素ガスを予熱した後、切替弁61により燃焼器31に導入される。なお、FCモードにおいては、切替弁61は燃料極オフガス配管43と蓄熱/脱水器32との連通を遮断しており、燃料極オフガスは、蓄熱/脱水器32には導入されない。また、各単セルの酸化剤ガス極21cにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかった酸素を含む酸化剤ガス極オフガスは、熱交換器48を通り、酸化剤ガス極21cに導入される前のエアとの熱交換により当該エアを予熱した後、切替弁62,分岐弁65により燃焼器31と蓄熱/脱水器32とに導入される。なお、FCモードにおいては、切替弁62は酸化剤ガス極オフガス配管44と酸化剤ガス極オフガス排出管63との連通を遮断しており、酸化剤ガス極オフガスは、酸化剤ガス極オフガス排出管63には排出されない。
【0026】
燃焼器31に導入された燃料極オフガスは、水素を含む可燃性ガスであり、燃焼器31に導入された酸素を含む酸化剤ガス極オフガスと混合され、混合ガスが着火して燃焼することで、燃焼熱が発生する。そして、蓄熱/脱水器32では、当該蓄熱/脱水器32に導入された酸化剤ガス極オフガスが有する高温排熱と燃焼器31からの燃焼熱とにより、水和/脱水和系蓄熱材である水酸化カルシウム(Ca(OH))の反応式(Ca(OH)→CaO+HO)による脱水反応が進行する。脱水反応は吸熱反応であるため、蓄熱/脱水器32に蓄熱することができる。脱水反応により生成される水(水蒸気)は、蓄熱/脱水器32に導入される酸化剤ガス極オフガスによってパージされ、切替弁73により排出配管75を介してシステム外部へ排出される。なお、FCモードにおいては、切替弁73はオフガス配管72と回収配管74との連通を遮断しており、水蒸気を含む酸化剤ガス極オフガスは、回収配管74には排出されない。
【0027】
図3は、ECモード時のガスの流れを説明する説明図である。ECモードでは、起動時においては、r-SOCスタック21の燃料極21bには、水供給系または水蒸気供給系からの水または水蒸気が切替弁54によりヒータ式蒸発器34を通過して水蒸気に変換あるいは予熱された後、水素タンク80からの少量の水素ガスと混合され、熱交換器46とヒータ45とを通って予熱されて導入される。r-SOCスタック21の酸化剤ガス極21cには、スイープガスとしてエア供給系により供給されるエアが熱交換器48とヒータ47とを通って予熱されて導入される。そして、外部電源によりr-SOCスタック21の端子間に所定電圧の電力が供給されると、燃料極21bに導入された水蒸気は、燃料極21bにおいて電解作用により水素と酸素イオン(O2-)とに分解され、当該酸素イオンが電解質21aを透過することで酸化剤ガス極21cにおいて酸素が生成される。なお、本実施形態では、燃料極21bには、水蒸気と共に少量の水素ガスも供給されるため、燃料極21bが還元雰囲気に保たれ、当該燃料極21bが酸化劣化するのを抑制することができる。
【0028】
酸化剤ガス極21cから排出された酸化剤ガス極オフガスは、熱交換器48を通り、酸化剤ガス極21cに導入される前のエアを予熱した後、切替弁62により酸化剤ガス極オフガス排出管63からシステム外部へ排出される。酸化剤ガス極オフガスの排熱は、排熱回収系によって回収されてもよい。なお、ECモードにおいては、切替弁62は、酸化剤ガス極オフガス配管44と酸化剤ガス極オフガス供給管64との連通を遮断しており、酸化剤ガス極オフガスは、燃焼器31や蓄熱/脱水器32には導入されない。一方、燃料極21bで生成された水素ガスは、電解未反応の水蒸気と共に燃料極オフガスとして排出され、当該燃料極オフガスは、切替弁61により蓄熱/脱水器32に導入される。なお、ECモードにおいては、切替弁61は燃料極オフガス配管43と燃焼器31との連通を遮断しており、燃料極オフガスは、燃焼器31には導入されない。
【0029】
蓄熱/脱水器32では、導入された燃料極オフガスに含まれる水蒸気により、水和/脱水和系蓄熱材である水酸化カルシウム(Ca(OH))の反応式(CaO+HO→Ca(OH))による水和反応が進行する。水和反応は発熱反応であるため、反応熱が発生する。蓄熱/脱水器32には蒸発器33が近接して配置されているため、発生した反応熱は蒸発器33に伝達される。反応熱により蒸発器33が加熱されると、水供給系または水蒸気供給系からの水または水蒸気が切替弁54により蒸発器33を通過することで、反応熱を用いて水蒸気を生成したり水蒸気を予熱したりすることができる。また、反応熱の発生と同時に、燃料極オフガスに含まれる水蒸気は、水和反応により除去される。そして、蓄熱/脱水器32を通過し、水蒸気が除去された燃料極オフガスは、水素タンク80に導入されて、貯蔵される。なお、FCモードにおいては、切替弁73はオフガス配管72と排出配管75との連通を遮断しており、燃料極オフガス(水素ガス)は、排出配管75には排出されない。
【0030】
以上説明した本実施形態の可逆作動固体酸化物形セルシステム10では、発電動作時の排熱(酸化剤ガス極オフガスが有する高温排熱や燃料極オフガスの燃焼により発生する燃焼熱)を用いて水和/脱水和系蓄熱材に脱水蓄熱しておき、電解動作時に燃料極21bから排出される水蒸気と水素とを含む燃焼極オフガスを水和/脱水和系蓄熱材に通すことで、水蒸気と水和/脱水和系蓄熱材とを反応(水和反応)させる。これにより、水和反応により水和/脱水和系蓄熱材から放出される熱を電解動作に必要な熱として利用することができる。また、水和反応により燃料極オフガス中の水蒸気が除去されるため、純度の高い水素を回収することができる。
【0031】
上述した実施形態では、電解動作時に水和/脱水和系蓄熱材の水和反応により放出される反応熱を蒸発器33に供給することにより、反応熱を水蒸気の生成に用いるものとした。しかし、r-SOCスタック21の昇温や、水蒸気の予熱、エア(スイープガス)の予熱などに用いるものとしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、FCモードにおいて、燃料ガスとして水素ガスをr-SOCスタック21の燃料極21bに供給するものとしたが、天然ガスやLPガス等の原燃料ガスを、水素ガスを含む燃料ガスに改質してr-SOCスタック21の燃料極21bに供給するようにしてもよい。この場合、可逆作動固体酸化物形セルシステム10は、モジュールケース22外に原燃料ガスを圧送するガスポンプと原燃料ガス中の硫黄成分を除去する脱硫器とを備え、モジュールケース22内に水タンクに貯留されている水(改質水)の供給を受けて水蒸気を生成する蒸発器と、蒸発器からの水蒸気を用いて原燃料ガスを燃料ガスに改質する改質器とを備えていればよい。
【0033】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、r-SOCスタック21が「可逆作動固体酸化物形セル」に相当し、蓄熱/脱水器32が「蓄熱部」に相当し、酸化剤ガス極オフガス配管44と酸化剤ガス極オフガス供給管64と分岐弁65と燃焼器31とが「第1供給部」に相当し、燃料極オフガス配管43と切替弁61とが「第2供給部」に相当する。
【0034】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0035】
以上、本開示を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本開示は、可逆作動固体酸化物形セルシステムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 可逆作動固体酸化物形セルシステム、20 可逆作動固体酸化物形セルモジュール(r-SOCモジュール)、21 可逆作動固体酸化物形セルスタック(r-SOCスタック)、21a 電解質、21b 燃料極、21c 酸化剤ガス極、22 モジュールケース、31 燃焼器、32 蓄熱/脱水器、33 蒸発器、34 ヒータ式蒸発器、41 燃料ガス供給管、42 酸化剤ガス供給管、43 燃料極オフガス配管、44 酸化剤ガス極オフガス配管、45,47 ヒータ、46,48 熱交換器、51 切替弁、52 水素供給管、53 水蒸気供給管、54 切替弁、55 開閉弁、61,62 切替弁、63 酸化剤ガス極オフガス排出管、64 酸化剤ガス極オフガス供給管、65 分岐弁、71 燃焼排ガス排出管、72 オフガス配管、73 切替弁、74 回収配管、75 排出配管、80 水素タンク。
図1
図2
図3