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特開2024-110249クラスター担持触媒及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110249
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】クラスター担持触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20240807BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20240807BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20240807BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20240807BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240807BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240807BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240807BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240807BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20240807BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B01J29/74 A
B01J37/16 ZAB
B01J37/18
B01J37/34
B01J37/02 101C
B01J37/08
B01J37/02 101E
B01D53/86 222
H01M4/86 B
H01M4/86 M
H01M4/92
H01M4/90 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014731
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598014814
【氏名又は名称】株式会社トヨタコンポン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】外山 南美樹
(72)【発明者】
【氏名】江頭 和宏
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 順
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
5H018
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AB02
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4D148BA06Y
4D148BA08X
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4G169ZA14B
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5H018AA01
5H018AA10
5H018BB00
5H018BB01
5H018BB16
5H018BB17
5H018EE03
5H018EE11
5H018EE12
5H018EE13
5H018HH03
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH10
(57)【要約】
【課題】本開示は、高い耐久性、特に高温での水熱耐久性を有するクラスター担持触媒、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本開示のクラスター担持触媒は、シリカ担体粒子及びシリカ担体粒子に担持されている触媒金属クラスターを有している、クラスター担持触媒であって、シリカ担体粒子は、少なくとも表面部分がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有しており、触媒金属クラスターは、触媒金属を含有しており、かつシリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態で、シリカ担体粒子に担持されている。また、本開示の製造方法は、触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体を提供すること、触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体に対して転移処理を行うことによって、少なくともゼオライト担体の表面部分の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させること、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ担体粒子及び前記シリカ担体粒子に担持されている触媒金属クラスターを有している、クラスター担持触媒であって、
前記シリカ担体粒子は、少なくとも表面部分がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有しており、
前記触媒金属クラスターは、触媒金属を含有しており、かつ前記シリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態で、前記シリカ担体粒子に担持されている、
クラスター担持触媒。
【請求項2】
CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=21.0°±1.0°に第1のピークを、θ=26.5°±1.0°に第2のピークを有しており、かつ2θ=10.0°以上20.0°以下の範囲において、高さが2θ=21.0°±1.0°のピークの1/2よりも高いピークを有しない、請求項1に記載のクラスター担持触媒。
【請求項3】
X線電子分光法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している前記触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%をXとし、かつ
誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している前記触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%をYとしたときに、X/Y≧3.50である、請求項1又は2に記載のクラスター担持触媒。
【請求項4】
前記触媒金属が、Rh、Pd、Pt、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される貴金属である、請求項1~3のいずれか一項に記載のクラスター担持触媒。
【請求項5】
前記触媒金属クラスターが、更にAl、Ce、Zr、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属を含有している、金属酸化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のクラスター担持触媒。
【請求項6】
前記触媒金属クラスターが、Rh-Al複合酸化物、Rh-Ce複合酸化物、Rh-Zr複合酸化物、Rh-Al-Ce複合酸化物、Rh-Al-Zr複合酸化物、Rh-Ce-Zr複合酸化物、Rh-Al-Ce-Zr複合酸化物、Pd-Al複合酸化物、Pd-Ce複合酸化物、Pd-Zr複合酸化物、Pd-Al-Ce複合酸化物、Pd-Al-Zr複合酸化物、Pd-Ce-Zr複合酸化物、Pd-Al-Ce-Zr複合酸化物、Pt-Al複合酸化物、Pt-Ce複合酸化物、Pt-Zr複合酸化物、Pt-Al-Ce複合酸化物、Pt-Al-Zr複合酸化物、Pt-Ce-Zr複合酸化物、及びPt-Al-Ce-Zr複合酸化物からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のクラスター担持触媒。
【請求項7】
前記触媒金属クラスターが、Rh、Cr、Zr、及びAlを含有している酸化物であり、
NOを0.15%、Cを0.1%、COを0.65%、Oを0.7%、及びHeを98.4%含有し、かつ大気圧である気体を、空間速度300000h-1で接触させたときの、NO浄化率が50%となる温度について、
Oガスを20%含有している雰囲気で、大気圧下、950℃で10時間の水熱耐久試験を行った後の前記温度が、前記水熱耐久試験を行う前の前記温度の±40℃以内である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のクラスター担持触媒。
【請求項8】
排ガス浄化用、液相合成反応用、気相合成反応用、空気電池用、又は燃料電池反応用の触媒として用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載のクラスター担持触媒。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のクラスター担持触媒、及び前記クラスター担持触媒を担持している基材を有する、触媒装置。
【請求項10】
クラスター担持触媒の製造方法であって、
触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子を提供すること、
前記触媒金属クラスターが担持された前記ゼオライト担体粒子に対して転移処理を行うことによって、少なくとも前記ゼオライト担体粒子の表面部分の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させること、
を有する、クラスター担持触媒の製造方法。
【請求項11】
前記ゼオライト担体粒子が、CHA型ゼオライト担体粒子である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子を提供することが、下記のいずれかの方法によって前記ゼオライト担体粒子に前記触媒金属クラスターを担持させることを含んでいる、請求項10又は11に記載の製造方法:
クラスター法
錯体法、及び
イオン交換法。
【請求項13】
前記クラスター法が、液中レーザーアブレーション法、液中マイクロ波アブレーション法、液中プラズマアブレーション法、プラスマイナス反転法、又は液中還元法である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記転移処理を、熱処理又はpH処理によって行うことを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理が、前記触媒金属クラスターが担持された前記ゼオライト担体粒子を、HOを10%以上50%以下の量で含有している雰囲気下において、900℃以上1200℃以下の温度で加熱することを含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記pH処理が、前記触媒金属クラスターが担持された前記ゼオライト担体粒子を、pH11.0以上のアルカリ性の溶液又はpH3.0未満の酸性の溶液に接触させることを含む、請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クラスター担持触媒及びその製造方法、特に排ガス浄化、液相化学合成反応、気相化学合成反応、燃料電池反応、空気電池反応等のためのクラスター担持触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
担体に触媒金属を担持した担持触媒は多くの分野で使用されており、排ガス浄化、液相化学合成反応、気相化学合成反応、燃料電池反応、空気電池反応等のための触媒として使用されている。
【0003】
従来、このような触媒の活性及び耐久性等の性能を向上させることが求められてきた。
【0004】
この点に関して、特許文献1は、Si/Alモル比が40以上で結晶粒径が1μm以下のゼオライトを担体とし、担体に貴金属が担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒を開示している。同文献によれば、このような構成を有する排ガス浄化触媒は、水熱耐久時の脱Alが抑制され担体自体の耐久性に優れているので、脱Alにより担体の結晶構造が破壊されるとともに貴金属が粒成長するような不具合を防止することができる。
【0005】
また、特許文献2及び3は、液中レーザーアブレーション法等によって多孔質担体粒子の細孔内に触媒金属クラスターを担持させることを含む、クラスター担持触媒の製造方法、及び当該方法によって製造されたクラスター担持触媒を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-61311号公報
【特許文献2】国際公開第2017/115767号公報
【特許文献3】国際公開第2019/004318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、同文献が開示する排ガス浄化触媒が800℃程度の水熱耐久性能を有することを開示している。
【0008】
しかしながら、より高い耐久性を有する触媒が求められている。
【0009】
本開示は、高い耐久性、特に高温での水熱耐久性を有するクラスター担持触媒、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
《態様1》
シリカ担体粒子及び前記シリカ担体粒子に担持されている触媒金属クラスターを有している、クラスター担持触媒であって、
前記シリカ担体粒子は、少なくとも表面部分がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有しており、
前記触媒金属クラスターは、触媒金属を含有しており、かつ前記シリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態で、前記シリカ担体粒子に担持されている、
クラスター担持触媒。
《態様2》
CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=21.0°±1.0°に第1のピークを、θ=26.5°±1.0°に第2のピークを有しており、かつ2θ=10.0°以上20.0°以下の範囲において、高さが2θ=21.0°±1.0°のピークの1/2よりも高いピークを有しない、態様1に記載のクラスター担持触媒。
《態様3》
X線電子分光法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している前記触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%をXとし、かつ
誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している前記触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%をYとしたときに、X/Y≧3.50である、態様1又は2に記載のクラスター担持触媒。
《態様4》
前記触媒金属が、Rh、Pd、Pt、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される貴金属である、態様1~3のいずれか一つに記載のクラスター担持触媒。
《態様5》
前記触媒金属クラスターが、更にAl、Ce、Zr、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属を含有している、金属酸化物である、態様1~4のいずれか一つに記載のクラスター担持触媒。
《態様6》
前記触媒金属クラスターが、Rh-Al複合酸化物、Rh-Ce複合酸化物、Rh-Zr複合酸化物、Rh-Al-Ce複合酸化物、Rh-Al-Zr複合酸化物、Rh-Ce-Zr複合酸化物、Rh-Al-Ce-Zr複合酸化物、Pd-Al複合酸化物、Pd-Ce複合酸化物、Pd-Zr複合酸化物、Pd-Al-Ce複合酸化物、Pd-Al-Zr複合酸化物、Pd-Ce-Zr複合酸化物、Pd-Al-Ce-Zr複合酸化物、Pt-Al複合酸化物、Pt-Ce複合酸化物、Pt-Zr複合酸化物、Pt-Al-Ce複合酸化物、Pt-Al-Zr複合酸化物、Pt-Ce-Zr複合酸化物、及びPt-Al-Ce-Zr複合酸化物からなる群より選択される、態様1~5のいずれか一つに記載のクラスター担持触媒。
《態様7》
前記触媒金属クラスターが、Rh、Cr、Zr、及びAlを含有している酸化物であり、
NOを0.15%、Cを0.1%、COを0.65%、Oを0.7%、及びHeを98.4%含有し、かつ大気圧である気体を、空間速度300000h-1で接触させたときの、NO浄化率が50%となる温度について、
Oガスを20%含有している雰囲気で、大気圧下、950℃で10時間の水熱耐久試験を行った後の前記温度が、前記水熱耐久試験を行う前の前記温度の±40℃以内である、
態様1~6のいずれか一つに記載のクラスター担持触媒。
《態様8》
排ガス浄化用、液相合成反応用、気相合成反応用、空気電池用、又は燃料電池反応用の触媒として用いられる、態様1~7のいずれか一つに記載のクラスター担持触媒。
《態様9》
請求項1~8のいずれか一項に記載のクラスター担持触媒、及び前記クラスター担持触媒を担持している基材を有する、触媒装置。
《態様10》
クラスター担持触媒の製造方法であって、
触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子を提供すること、
前記触媒金属クラスターが担持された前記ゼオライト担体粒子に対して転移処理を行うことによって、少なくとも前記ゼオライト担体粒子の表面部分の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させること、
を有する、クラスター担持触媒の製造方法。
《態様11》
前記ゼオライト担体粒子が、CHA型ゼオライト担体粒子である、態様10に記載の製造方法。
《態様12》
触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子を提供することが、下記のいずれかの方法によって前記ゼオライト担体粒子に前記触媒金属クラスターを担持させることを含んでいる、態様10又は11に記載の製造方法:
クラスター法
錯体法、及び
イオン交換法。
《態様13》
前記クラスター法が、液中レーザーアブレーション法、液中マイクロ波アブレーション法、液中プラズマアブレーション法、プラスマイナス反転法、又は液中還元法である、態様12に記載の製造方法。
《態様14》
前記転移処理を、熱処理又はpH処理によって行うことを含む、態様10~13のいずれか一つに記載の製造方法。
《態様15》
前記熱処理が、前記触媒金属クラスターが担持された前記ゼオライト担体粒子を、HOを10%以上50%以下の量で含有している雰囲気下において、900℃以上1200℃以下の温度で加熱することを含む、態様14に記載の製造方法。
《態様16》
前記pH処理が、前記触媒金属クラスターが担持された前記ゼオライト担体粒子を、pH11.0以上のアルカリ性の溶液又はpH3.0未満の酸性の溶液に接触させることを含む、態様14に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、高い耐久性、特に高温での水熱耐久性を有するクラスター担持触媒、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に従うクラスター担持触媒1の模式図である。
図2図2は、本開示の第2の実施形態に従うクラスター担持触媒2の模式図である。
図3図3は、触媒金属クラスター20が細孔内に担持されているゼオライト担体13を示す模式図である。
図4図4は、触媒金属クラスター20が細孔内に担持されているゼオライト担体13に対して転移処理を行った状態を示す模式図である。
図5図5は、錯体法によってゼオライト担体13の細孔内に触媒金属クラスター20を担持させている状態を示す模式図である。
図6図6は、錯体法によって細孔内に触媒金属クラスター20を担持させたゼオライト担体13を示す模式図である。
図7図7は、錯体法によって細孔内に触媒金属クラスター20を担持させたゼオライト担体13に対して転移処理を行った状態を示す模式図である。
図8図8は、実施例1、実施例2、及び比較例1の試料、X線回折測定結果を示すグラフである。
図9図9は、リーン水熱耐久試験前後の実施例1及び2、並びに比較例2の試料の、NO浄化率と温度との関係を示すグラフである。
図10図10は、リーン水熱耐久試験後の実施例2及び比較例2の試料のRh担持量と、360℃において1秒間にRh1原子当たり浄化できるNOの分子数を比較したグラフである。
図11図11は、リーン水熱耐久試験後の実施例3~6及び比較例3の試料の、NO浄化率が50%となる温度を比較したグラフである。
図12図12は、リーン・リッチ水熱耐久試験後の実施例3~6及び比較例3の試料の、NO浄化率が50%となる温度を比較したグラフである。
図13図13は、実施例7、比較例4、及び比較例5の試料の、初期状態、リーン・リッチ雰囲気下での水熱耐久試験後、及びリーン雰囲気下での水熱耐久試験後において、NO浄化率が50%となる温度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
《クラスター担持触媒》
本開示のクラスター担持触媒は、シリカ担体粒子及びシリカ担体粒子に担持されている触媒金属クラスターを有している、クラスター担持触媒であって、シリカ担体粒子は、少なくとも表面部分がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有しており、触媒金属クラスターは、触媒金属を含有しており、かつシリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態で、シリカ担体粒子に担持されている。
【0015】
本開示のクラスター担持触媒は、例えば排ガス浄化用、液相合成反応用、気相合成反応用、空気電池用、又は燃料電池反応用の触媒として用いることができる。
【0016】
図1は、本開示の第1の実施形態に従うクラスター担持触媒の模式図である。
【0017】
図1に示すように、本開示の第1の実施形態に従うクラスター担持触媒1は、シリカ担体粒子10及びシリカ担体粒子10に担持されている触媒金属クラスター20を有している。ここで、シリカ担体粒子10は、少なくとも表面部分がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有している。シリカ担体粒子10の表面には、複数の触媒金属クラスター20が、一部分が埋収された状態で担持されている。言い換えると、複数の触媒金属クラスター20は、一部分がシリカ担体粒子10の表面に埋め込まれており、他の部分が露出している。
【0018】
原理によって限定されるものではないが、本開示のクラスター担持触媒が高い耐久性、特に高温での水熱耐久性を有する原理は、以下のとおりである。
【0019】
例えば特許文献1が開示するような、ゼオライト担体粒子に触媒金属としての貴金属が担持されている触媒では、触媒金属はゼオライト担体粒子の細孔内に担持されているのが一般的である。
【0020】
本発明者らは、このような従来の触媒に対して、従来の水熱耐久試験、すなわち800℃程度での水熱耐久試験よりも更に高い温度での水熱耐久試験、例えば950℃程度の高温での水熱耐久試験を行うと、触媒活性が大幅に低下するとの知見を得た。
【0021】
従来の触媒に対して950℃程度の高い温度での水熱耐久試験を行うと、ゼオライト担体がアモルファス化してその構造を維持することができなくなると考えられる。これにより、ゼオライト担体粒子の細孔構造が変化して、ゼオライト担体粒子の内部に閉じ込められ、触媒反応に寄与することができる触媒金属の量が減少すると考えられる。
【0022】
また、このような高い温度での水熱耐久試験を行うと、ゼオライト担体粒子の表面及び細孔内のうち表面近傍に担持されていた触媒金属がシンタリングすると考えられる。これにより、触媒金属の粒子径が増加して、触媒金属の比表面積が低下するため、触媒金属の触媒活性が低下すると考えられる。
【0023】
これに対して、本開示のクラスター担持触媒では、シリカ担体粒子の少なくとも表面部分がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造といった高温に対して安定な構造を有しているため、950℃程度の高い温度での水熱耐久試験によってもシリカ担体粒子の表面の構造は変化しにくい。そして、そのような表面に、触媒金属クラスターが、一部分が埋収された状態で担持されている。これにより、本開示のクラスター担持触媒では、950℃程度の高い温度での水熱耐久試験によっても触媒金属クラスターがシンタリングしにくく、触媒金属クラスターの触媒活性の低下が抑制される。
【0024】
これにより、本開示のクラスター担持触媒は、高い耐久性、特に高温での水熱耐久性を有し、それによって触媒の使用寿命の間の触媒活性の変化を抑制することができる。また、本開示のクラスター担持触媒は、触媒金属クラスターがシリカ担体粒子の表面に担持されていることにより、反応分子の拡散抵抗が低くなり、反応の活性化エネルギーが低くなる効果も期待される。
【0025】
〈シリカ担体粒子〉
本開示のクラスター担持触媒が有するシリカ担体粒子は、少なくとも表面部分がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有している。
【0026】
ここで、シリカ担体粒子は、例えばSiOの粒子であってよいが、更にアルミニウムを含有していてもよい。
【0027】
シリカ担体粒子がアルミニウムを含有している場合には、Si/Al比は、例えば0.1超5.0以下であってよい。シリカ担体粒子のSi/Al比は、0.1超、1.0以上、1.5以上、3.0以上、又は3.5以上であってよく、5.0以下、4.0以下、3.8以下、又は3.5以下であってよい。
【0028】
アルミニウムを含有しているシリカ担体粒子としては、例えばゼオライトを高温処理したもの等を挙げることができる。
【0029】
本開示のクラスター担持触媒が有するシリカ担体粒子が有しているアモルファス構造及び/又はクォーツ構造は、シリカ担体粒子の少なくとも表面部分にあればよく、シリカ担体粒子の内部全体がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有していてもよい。
【0030】
また、シリカ担体粒子は、内部がアモルファス構造を有し、かつ表面の一部又は全体がクォーツ構造を有している構造であってもよい。
【0031】
なお、クォーツ構造は、例えばαクォーツ又はβクォーツの結晶構造を有していてよい。なお、クォーツ構造は、その結晶構造が実質的に維持される範囲において、一部のSi原子が他の原子、例えばAl原子に置換されていてもよい。
【0032】
本開示のクラスター担持触媒は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=21.0°±1.0°に第1のピークを、θ=26.5°±1.0°に第2のピークを有しており、かつ2θ=10.0°以上20.0°以下の範囲において、高さが2θ=21.0°±1.0°のピークの1/2よりも高いピークを有しないことが好ましい。
【0033】
CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=21.0°±1.0°に位置する第1のピーク及びθ=26.5°±1.0°位置する第2のピークは、いずれもαクォーツ構造に由来するピークであり、クラスター担持触媒がこれらのピークを有することは、クラスター担持触媒が有するシリカ担体粒子がクォーツ構造を有していることを意味する。
【0034】
また、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=10.0°以上20.0°以下の範囲に位置するピークは、いずれもゼオライトの細孔構造に由来するピークであり、クラスター担持触媒が範囲において高さが2θ=21.0°±1.0°のピークの1/2よりも高いピークを有しないことは、クラスター担持触媒が有するシリカ担体粒子が実質的に細孔を有しない、又は細孔が非常に少ないことを意味している。
【0035】
したがって、本開示のクラスター担持触媒が、CuKα線を用いたX線回折測定において上記の関係を満たすことは、クラスター担持触媒が有するシリカ担体粒子がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造を有しており、かつ細孔を実質的に有しないことを意味する。
【0036】
〈触媒金属クラスター〉
本開示のクラスター担持触媒が有する触媒金属クラスターは、触媒金属を含有しており、かつシリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態で、シリカ担体粒子に担持されている。
【0037】
触媒金属クラスターは、触媒金属原子が数個~数千個結合していることができる。触媒金属クラスターが有する触媒金属原子の個数は、2個以上1000個以下であってよい。
【0038】
触媒金属クラスターが含有する触媒金属原子の個数が多すぎる場合、例えば、1000個超である場合には、担体の影響が及ぶことのできる触媒金属原子の割合が減るため、クラスターがバルクとしての性質を帯びること等の理由から、触媒としての高性能化が起こらないと考えられる。更に、触媒金属原子の個数が多くなるほど、触媒金属クラスターの比表面積が小さくなるため、触媒金属クラスターの表面に露出して触媒に寄与する触媒金属原子の割合が減り、逆に、触媒金属クラスター内部の触媒に寄与しない触媒金属原子の割合が増えるために、触媒に使用する触媒金属量の低減効果が得られにくくなると考えられる。
【0039】
触媒金属クラスターが含有する触媒金属原子の個数は、2個以上、10個以上、20個以上、30個以上、又は40個以上であってよく、1000個以下、500個以下、300個以下、100個以下、50個以下、40個以下、又は30個以下であってよい。特に、触媒金属クラスターが含有する触媒金属原子の個数は、2個~500個であってよい。
【0040】
触媒金属クラスターの形状は、シリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態で、シリカ担体粒子に担持されていることができる限り、任意の形状であってよい。触媒金属クラスターの形状は、例えば触媒金属原子が3次元的に集まっている構造であってよい。
【0041】
触媒金属クラスターについて、シリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態とは、触媒金属クラスターが、シリカ担体粒子の表面に、一部分が埋め込まれており、かつ他の部分がシリカ担体粒子の表面から露出している状態を意味する。
【0042】
触媒金属クラスターは、シリカ担体粒子の表面のうちクォーツ構造を有している部分に埋収されているのが好ましい。これは、シリカ担体粒子の表面のうちクォーツ構造を有している部分はアモルファス構造を有している部分よりも結晶構造が安定しており、触媒金属クラスターがより移動しにくいため、特に高い耐久性が得られる。
【0043】
より具体的には、図2に示すように、本開示の第2の実施形態に従うクラスター担持触媒2では、シリカ担体粒子10は内部がアモルファス構造11を有しており、表面部分がクォーツ構造12を有している。そして、触媒金属クラスター20は、シリカ担体粒子10の表面にあるクォーツ構造12の部分に埋収されている。本開示の第2の実施形態に従うクラスター担持触媒2では、この様な構造によって、触媒金属クラスター20が例えば水熱耐久試験のような条件においても、よりシンタリングしにくく、特に高い耐久性を有している。
【0044】
また、本開示のクラスター担持触媒は、その製造方法によっては、シリカ担体粒子の表面に埋収されている触媒金属クラスターのみでなく、シリカ担体粒子の内部に閉じ込められている、すなわちシリカ担体粒子の表面から露出している部分を有しない触媒金属クラスターも存在し得る。クラスター担持触媒が含有する触媒金属クラスター全体に対するシリカ担体粒子の表面に埋収されている触媒金属クラスターの割合が多い程、クラスター担持触媒の触媒活性は高いといえる。
【0045】
ここで、クラスター担持触媒が含有する触媒金属クラスター全体に対するシリカ担体粒子の表面に埋収されている触媒金属クラスターの割合は、X線電子分光法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%をXとし、かつ誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%をYとしたときに、X/Yで表すことができる。
【0046】
X線光電子分光分析法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%Xは、実質的にはシリカ担体粒子の表面近傍、例えば表面から深さ数nm以内に存在する触媒金属クラスターの濃度を示している。他方、誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定される、クラスター担持触媒が含有している触媒金属クラスターの、クラスター担持触媒全体に対する質量%Yは、クラスター担持触媒が含有する触媒金属クラスター全体の濃度を示している。従って、X/Yは、クラスター担持触媒全体における触媒金属クラスターの濃度に対するシリカ担体粒子の表面近傍における触媒金属クラスターの濃度の比率を意味している。
【0047】
この場合において、本開示のクラスター担持触媒は、X/Y≧3.50を満たすことが好ましい。
【0048】
X/Yが、3.50以上である場合には、クラスター担持触媒が含有する触媒金属クラスター全体に対するシリカ担体粒子の表面に埋収されている触媒金属クラスターの割合が特に多く、クラスター担持触媒は、より高い触媒活性を有しているといえる。
【0049】
X/Yは、3.50以上、5.00以上、6.00以上、又は10.00以上であってよく、15.00以下、12.00以下、10.00以下、又は8.00以下であってよい。
【0050】
触媒金属クラスターが含有する触媒金属は、例えば貴金属であってよい。貴金属としては、例えばRh、Pd、Pt、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される貴金属を挙げることができる。
【0051】
また、触媒金属クラスターは、更にAl、Ce、Zr、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属を含有している、金属酸化物のクラスターであってよい。
【0052】
Al、Ce、及びZr、特にAlは、貴金属、特にRhとの相互作用が強く、これらの金属と貴金属との複合酸化物は、例えば950℃程度の水熱耐久試験の条件下においてRh一部が還元されることにより、特に高い触媒活性を有する。
【0053】
触媒金属クラスターが金属酸化物のクラスターである場合、触媒金属クラスターは、Rh-Al複合酸化物、Rh-Ce複合酸化物、Rh-Zr複合酸化物、Rh-Al-Ce複合酸化物、Rh-Al-Zr複合酸化物、Rh-Ce-Zr複合酸化物、Rh-Al-Ce-Zr複合酸化物、Pd-Al複合酸化物、Pd-Ce複合酸化物、Pd-Zr複合酸化物、Pd-Al-Ce複合酸化物、Pd-Al-Zr複合酸化物、Pd-Ce-Zr複合酸化物、Pd-Al-Ce-Zr複合酸化物、Pt-Al複合酸化物、Pt-Ce複合酸化物、Pt-Zr複合酸化物、Pt-Al-Ce複合酸化物、Pt-Al-Zr複合酸化物、Pt-Ce-Zr複合酸化物、及びPt-Al-Ce-Zr複合酸化物からなる群より選択されてよい。
【0054】
〈クラスター担持触媒の性能〉
本開示のクラスター担持触媒が含有する触媒金属クラスターが、Rh、Cr、Zr、及びAlを含有している酸化物である場合には、本開示のクラスター担持触媒は、以下のような性能を有していてよい:
【0055】
NOを0.15%、Cを0.1%、COを0.65%、Oを0.7%、及びHeを98.4%含有し、かつ大気圧である気体を、空間速度300000h-1で接触させたときの、NO浄化率が50%となる温度について、HOガスを20%含有している雰囲気で、大気圧下、950℃で10時間の水熱耐久試験を行った後の温度が、水熱耐久試験を行う前の温度の±40℃以内である。
【0056】
上記水熱耐久試験を行った後の温度は、水熱耐久試験を行う前の温度の±40℃以内、±30℃以内、又は±20℃以内であってよい。
【0057】
《触媒装置》
本発明の触媒装置は、本発明のクラスター担持触媒、及びこのクラスター担持触媒を担持している基材、並びに随意に、この基材を収容している容器を有する。
【0058】
本発明の触媒装置では、基材として、ハニカム基材、特にコージェライト製ハニカム基材を用いることができる。また、本発明の触媒装置では、随意の容器として、ステンレス性等の金属製容器を用いることができる。
【0059】
《クラスター担持触媒の製造方法》
本開示の製造方法によれば、上記で説明した本開示のクラスター担持触媒を製造することができる。
【0060】
本開示の製造方法は、クラスター担持触媒の製造方法であって、触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子を提供すること、上記触媒金属クラスターが担持された上記ゼオライト担体粒子に対して転移処理を行うことによって、少なくとも上記ゼオライト担体粒子の表面部分の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させること、を有する。
【0061】
原理によって限定されないが、本開示の製造方法によって、上記で説明した本開示のクラスター担持触媒を製造することができる原理は、以下のとおりである。
【0062】
一般的には、ゼオライト担体粒子に触媒金属クラスターを担持させた場合、触媒金属クラスターは、ゼオライト担体粒子の細孔内に担持される。
【0063】
本発明者らは、細孔内に触媒金属クラスターが担持されているゼオライト担体粒子に対して、少なくとも表面部分の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させる転移処理を行うと、ゼオライト担体粒子の結晶構造の変化に伴って、ゼオライト担体粒子内の細孔構造が破壊されること、及び細孔内に担持されていた触媒金属クラスターがゼオライト担体粒子の表面側に押出されるとの知見を得た。また、本発明者らは、ゼオライト担体粒子の表面側に押出された触媒金属クラスターが、細孔構造が破壊されたゼオライト担体粒子、すなわちアルミニウムを含有しているシリカ担体粒子の表面に、一部分が埋収された状態で固定されるとの知見を得た。
【0064】
図3及び図4を用いて、より具体的に説明する。
【0065】
図3は、触媒金属クラスター20が細孔内に担持されているゼオライト担体13を示す模式図である。なお、簡略化のため、ゼオライト担体13の細孔は省略している。
【0066】
図3に示すように、触媒金属クラスター20は、ゼオライト担体13内全体に分布して担持されている。この状態から、例えば高温での熱処理若しくは水熱処理、又はpH処理を行うと、ゼオライト担体13の結晶構造が変化して、部分的に、又は全体的に、アモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移する。
【0067】
ゼオライト担体13の結晶構造の変化が起こると、図4に示すように、結晶の構造の変化に伴う排除効果によって、触媒金属クラスター20が転移処理中のゼオライト担体粒子14の表層側に移動する。これにより、触媒金属クラスター20がシリカ担体粒子の表面に、一部分が埋収された状態で固定される。
【0068】
本開示の製造方法は、上記の現象を利用して、上記で説明した本開示のクラスター担持触媒を製造するものである。
【0069】
〈触媒金属クラスターが担持されているゼオライト担体粒子の提供〉
本開示の製造方法は、触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子を提供することを有する。触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子を提供する方法は特に限定されないが、例えばゼオライト担体の細孔内に触媒金属クラスターを担持させることによって行ってもよく、又は事前に調製した触媒金属クラスターが細孔内に担持されているゼオライト担体粒子をもたらすことによって行ってもよい。
【0070】
(触媒金属クラスター)
触媒金属クラスターは、本開示のクラスター担持触媒に関する記載を参照することができる。
【0071】
(ゼオライト担体粒子)
ゼオライト担体粒子は、転移処理によって、少なくとも表面部分の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させることができる任意のゼオライト担体粒子であってよい。
【0072】
ゼオライト担体粒子のSi/Al比は、例えば0.1超5.0以下であってよい。シリカ担体粒子のSi/Al比は、0.1超、1.0以上、1.5以上、3.0以上、又は3.5以上であってよく、5.0以下、4.0以下、3.8以下、又は3.5以下であってよい。
【0073】
ゼオライト担体粒子は、CHA型ゼオライト担体粒子であってよい。なお、CHA型ゼオライト担体粒子のSi/Al比は、1.4以上2.8以下であってよい。
【0074】
(担持方法)
本開示の製造方法において、ゼオライト担体粒子の細孔内に触媒金属クラスターを担持させる方法は、ゼオライト担体粒子の細孔内に触媒金属クラスターを担持させることができる任意の方法であってよい。このような方法は、例えば下記のいずれかの方法であってよい:
(A)クラスター法
(B)錯体法、及び
(C)イオン交換法
【0075】
これらの方法を採用した場合、触媒金属クラスターをゼオライト担体の細孔内のうち表面近傍に担持させることができる。
【0076】
触媒金属クラスターをゼオライト担体の細孔内のうち表面近傍に担持させた場合、後の転移処理の際に、より多くの触媒金属クラスターがゼオライト担体の表面に移動しやすい。
【0077】
これにより、本開示の製造方法によって得られるクラスター担持触媒において、より多くの触媒金属クラスターがシリカ担体粒子の表面に一部分が埋収された状態で、シリカ担体粒子に担持させることができる。そのため、より触媒活性の高いクラスター担持触媒が得られる。
【0078】
(A)クラスター法
クラスター法は、触媒金属クラスターを事前に形成し、これを触媒担体に担持させる方法である。
【0079】
クラスター法としては、例えば液中レーザーアブレーション法、液中マイクロ波アブレーション法、液中プラズマアブレーション法、プラスマイナス反転法、又は液中還元法等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0080】
クラスター法を用いて触媒金属クラスターをゼオライト担体の細孔内に担持させる場合、触媒金属クラスターの大きさを、細孔の大きさに合わせて調節することにより、触媒金属クラスターがゼオライト担体の細孔内のうち表面近傍に担持される割合を向上させることができる。
【0081】
(B)錯体法
錯体法は、触媒金属の錯体を触媒担体に担持させた後に、錯体の配位子を除去することによって、触媒金属クラスターを触媒担体に担持させる方法である。
【0082】
錯体法を用いて触媒金属クラスターをゼオライト担体の細孔内に担持させる場合、ゼオライト担体の細孔の大きさに合わせて嵩高い錯体を採用することにより、触媒金属クラスターがゼオライト担体の細孔内のうち表面近傍に担持される割合を向上させることができる。
【0083】
なお、触媒金属の錯体の配位子は、ゼオライト担体の細孔の大きさと、得られる錯体の嵩高さとの観点から適宜選択することができる。このような錯体に用いることができる配位子としては、例えばピリミジン、ジイミン、トリイミン、及びポルフォリン等のイミン系配位子、並びにジホスフィン、トリホスフィン、及びテトラホスフィン等のホスフィン系配位子等を用いることができる。
【0084】
図5~7を用いて、より具体的に説明する。
【0085】
図5に示すように、錯体法では、まず嵩高い配位子を有する触媒金属の錯体30がゼオライト担体13の表面に担持される。
【0086】
次いで、図5の状態から熱処理、例えば約800℃の加熱処理を行うことで配位子を除去すると、図6に示すように、ゼオライト担体13の細孔内のうちゼオライト担体13の表面近傍に触媒金属のクラスター20が担持される。
【0087】
この状態から、例えば高温での熱処理若しくは水熱処理、又はpH処理を行うと、ゼオライト担体13の結晶構造が変化して、部分的に、又は全体的に、アモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移する。
【0088】
ゼオライト担体13の結晶構造の変化が起こると、図7に示すように、結晶の構造の変化に伴う排除効果によって、触媒金属クラスター20が転移処理中のゼオライト担体粒子14の表層側に移動する。これにより、触媒金属クラスター20がシリカ担体粒子の表面に、一部分が埋収された状態で固定される。
【0089】
錯体法を用いた場合には、転移処理前の状態において触媒金属クラスター20がゼオライト担体13の表面近傍に担持されていることから、シリカ担体粒子の表面に埋収された状態で固定される触媒金属クラスター20の量を多くすることができる。
【0090】
(C)イオン交換法
イオン交換法は、触媒金属の金属塩を含有する溶液に触媒担体を接触させて、イオン交換によって触媒担体に触媒金属を固定する方法である。
【0091】
イオン交換法、特にパルスイオン交換法を用いて触媒金属クラスターをゼオライト担体の細孔内に担持させる場合、効率よく触媒金属クラスターをゼオライト担体の細孔内のうち表面近傍に担持させることができる。
【0092】
〈転移処理〉
本開示の製造方法は、触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子に対して転移処理を行うことによって、少なくともゼオライト担体の表面部分の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させることを含む。
【0093】
ここで、アモルファス構造及びクォーツ構造については、本開示のクラスター担持触媒に関する記載を参照することができる。
【0094】
転移処理の具体的な方法としては、例えば、熱処理又はpH処理を挙げることができる。
【0095】
(熱処理)
熱処理は、触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子を、ゼオライト担体粒子の少なくとも表面部分の構造がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移する程度に加熱する処理である。この熱処理は、乾燥雰囲気下で行ってもよいが、HOを含有する雰囲気下で行うことによって、より低い温度で行うことができる。
【0096】
熱処理は、例えばHOを10%以上50%以下の量で含有している雰囲気下において、900℃以上1200℃以下の温度で加熱することによって行ってもよい。雰囲気中のHOが多い程、加熱温度は低くてもよい。
【0097】
雰囲気中のHOは、10%以上、15%以上、20%以上、又は25%以上であってよく、50%以下、45%以下、40%以下、又は35%以下であってよい。
【0098】
熱処理の温度は900℃以上、950℃以上、1000℃以上、又は1050℃以上であってよく、1200℃以下、1150℃以下、1100℃以下、又は1050℃以下であってよい。
【0099】
熱処理は、触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子に対して、雰囲気ガスを流通させつつ行ってもよい。雰囲気ガスは、例えばHOを10%以上50%以下で含有しているハロゲンガス、Nガス、若しくは空気であってよく、又はNO、CO、C、HO、O、N及びそれらの組み合わせを含有している雰囲気であってよい。熱処理の際の雰囲気が、NO、CO、C、HO、O、及びNを含有している場合には、この雰囲気の組成は、例えばNOが0.15%、COが0.65%、Cが0.1%、HOが10%以上50%以下、Oが0.7%、及びNが残部であってよい。
【0100】
熱処理の際には、触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子に対して、上記の雰囲気ガスを空間速度10000h-1以上500000h-1以下で流通させてよい。この空間速度は、10000h-1以上、50000h-1以上、100000h-1以上、又は200000h-1以上であってよく、500000h-1以下、400000h-1以下、300000h-1以下、又は200000h-1以下であってよい。
【0101】
なお、熱処理の時間は特に限定されないが、例えば1時間以上15時間以下であってよい。熱処理の時間は、1時間以上、2時間以上、5時間以上、又は10時間以上であってよく、15時間以下、12時間以下、10時間以下、又は8時間以下であってよい。
【0102】
(pH処理)
pH処理は、触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子を、ゼオライト担体粒子の少なくとも表面部分の構造がアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移する程度のpH環境に置く処理である。このpH処理は、所定のpHを有する溶液にゼオライト担体粒子を接触させることによって行うことができる。また、pH処理の際に、処理時間を短縮するために、ゼオライト担体粒子を加熱しつつ行ってもよい。
【0103】
pH処理は、例えば触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子を、pH11.0以上のアルカリ性の溶液又はpH3.0以下の酸性の溶液に接触させることによって行うことができる。触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子をアルカリ性又は酸性の溶液に接触させる具体的な方法としては、例えば触媒金属クラスターが担持されたゼオライト担体粒子をこれらの溶液に浸すことを挙げることができる。
【0104】
pH処理をアルカリ性の溶液で行う場合には、アルカリ性の溶液は、pH11.0以上、pH12.0以上、pH13.0以上、又はpH14.0以上であってよい。
【0105】
アルカリ性の溶液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化カリウム等の水溶液を挙げることができる。
【0106】
pH処理を酸性の溶液で行う場合には、酸の溶液は、pH3.0以下、pH2.0以下、又はpH1.0以下であってよい。
【0107】
酸性の溶液としては、例えば塩酸、硝酸、及び硫酸等の水溶液を挙げることができる。
【実施例0108】
《実施例1及び2、並びに比較例1及び2》
〈実施例1〉
アセトン中にRh粒子、Al-Ce-Zr複合酸化物粒子(ACZ酸化物粒子)、及びチャバサイト型(CHA13)ゼオライト担体粒子を分散させ、そしてこのRh粒子及びACZ酸化物粒子のレーザーアブレーションを行うことにより、Rh-Al-Ce-Zr複合酸化物が担持されているチャバサイト型(CHA13)ゼオライト担体粒子を得た。
【0109】
具体的には、Rh粒子、ACZ酸化物粒子、及びゼオライト担体粒子を分散させた分散媒としての水を容器に入れ、レンズを通して、レーザーを、水中のRh粒子及びACZ酸化物粒子に照射して、レーザーアブレーションによってRhクラスター及びACZ酸化物クラスターを水中で形成した。このようにして形成されたRhクラスター及びACZ酸化物クラスターの少なくとも一部は、正の電荷を帯びており、それによって、ゼオライト担体粒子の負の電荷を有する箇所、特に酸点に電気的に引き寄せられて担持された。
【0110】
ここで、レーザー光は、Nd:YAGレーザーの基本波(1064nm、10Hz)であり、その強度は2Wであった。
【0111】
クラスターを担持している担体粒子をアセトンから取り出し、約25℃で約1時間にわたって乾燥し、そして300℃で2時間にわたって焼成して、Rhクラスター及びACZ酸化物クラスターがゼオライトに担持されている触媒を得た。
【0112】
次いで、得られた触媒に対して、熱処理を行うことによって、ゼオライト担体粒子の構造をアモルファス構造及び/又はクォーツ構造に転移させた。
【0113】
具体的には、得られた触媒を、10時間、950℃に加熱しつつ、NOが0.15%、COが0.65%、Cが0.1%、HOが20%、Oが0.7%、及びNが残部である雰囲気を、空間速度300000h-1で流通させて行った。
【0114】
熱処理後に得られた触媒を、実施例1の試料とした。
【0115】
実施例1の触媒におけるRhの担持量を誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定したところ、触媒全体に対して0.83質量%であった。
【0116】
なお、他の実施例及び比較例におけるRhの担持量も、誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定した。
【0117】
〈実施例2〉
Rhの担持量が、触媒全体に対して0.27質量%となるようにしたことを除いて、実施例1と同様にして、実施例2の試料を得た。
【0118】
〈比較例1〉
チャバサイト型(CHA13)ゼオライト担体粒子に対して実施例1における熱処理と同様の条件の熱処理を行ったものを比較例1の試料とした。
【0119】
〈比較例2〉
含侵法によってRhクラスターを担持したAl-Ce-Zr複合酸化物粒子の触媒を、比較例2の試料とした。
【0120】
なお、比較例2の触媒におけるRhの担持量は、触媒全体に対して0.21質量%であった。
【0121】
〈担体の結晶構造〉
実施例1及び2の試料、並びに比較例1の試料に対して、それぞれCuKα線を用いたX線回折測定を行った。
【0122】
図8は、実施例1、実施例2、及び比較例1の試料、並びに参照としての熱処理していないCHA型ゼオライト担体及びαクォーツのX線回折測定結果を示すグラフである。
【0123】
図8に示すように、実施例1及び2の試料では、2θ=21.0°付近及びθ=26.5°付近にそれぞれピークを有していた。また、実施例1及び2の試料では、2θ=10.0°以上20.0°以下の範囲にはピークを有していなかった。これは、実施例1及び2の試料では、担体がクォーツ構造を有していることを示す。
【0124】
これに対して、CHA型ゼオライト担体に熱処理を行った比較例1の試料では、全体的にピークを有していなかった。このことは、比較例1の試料では、担体がアモルファス構造を有していることを示す。
【0125】
〈水熱耐久試験前後でのNO浄化性能の変化の評価〉
実施例1及び2、並びに比較例2の試料について、10時間、950℃に加熱しつつ、HOが20%残部が空気である雰囲気を、空間速度300000h-1で流通させる水熱耐久試験(以下において、この熱処理を「リーン水熱耐久試験」という)を行う前と行った後でのNO浄化性能を測定し、比較した。
【0126】
NO浄化性能の測定は、具体的には、これらの試料について、反応ガス中において、25℃から800℃の昇温、及び800℃から25℃への降温を10℃/分の速度で行って、温度と一酸化窒素(NO)の浄化率を測定した。得られた結果を図9に示す。
【0127】
なお、反応ガス組成は、NOが0.15%、COが0.65%、Cが0.1%、Oが0.7%及びヘリウム:残部であり、空間速度は、30000h-1であった。
【0128】
図9に示すように、Rhクラスターを担持したAl-Ce-Zr複合酸化物粒子の触媒試料(比較例2)は、リーン水熱耐久試験を行った後ではNO浄化性能が大幅に低下していた。
【0129】
これに対して、CHA型ゼオライト担体にRhクラスター及びACZ酸化物クラスターを担持したものを熱処理して得た試料(実施例1及び2)は、リーン水熱耐久試験を行った後においてもNO浄化性能が維持されていた。これは、CHA型ゼオライト担体にRhクラスター及びACZ酸化物クラスターを担持したものを熱処理して得た実施例1及び2の試料は、高い水熱耐久性を有することを示している。
【0130】
また、実施例2の試料のリーン水熱耐久試験前後でのNO浄化性能を比較すると、リーン水熱耐久試験後の方がNO浄化性能は高くなっていた。これは、リーン水熱耐久試験の際にCHA型ゼオライト担体粒子の結晶構造が更にクォーツ構造に転移し、その際の排除効果によってRhクラスター及びACZ酸化物クラスターが担体の表面に更に濃縮されたためと考えられる。
【0131】
〈360℃において1秒間にRh1原子当たり浄化できるNOの分子数(TOF)の評価〉
【0132】
リーン水熱耐久試験後における実施例2の試料及び比較例2の試料について、Rh担持量と360℃において1秒間にRh1原子当たり浄化できるNOの分子数(TOF)との関係を比較した。図10に示すように、Rh担持量が0.027質量%であった実施例2の試料では、TOFは0.27であったのに対して、Rh担持量が0.21質量%であった比較例2の試料では、TOFは0.27で0.02であった。
【0133】
すなわち、CHA型ゼオライト担体にRhクラスター及びACZ酸化物クラスターを担持したものを熱処理して得た触媒は、Rhクラスターを担持したAl-Ce-Zr複合酸化物粒子の触媒よりも約1/10の量のRhによって、10倍以上のNOを浄化することができることを示している。
【0134】
《実施例3~6及び比較例3》
〈実施例3~6〉
Rh粒子及びAl-Ce-Zr複合酸化物粒子(ACZ酸化物粒子)に代えて、それぞれRh粒子、RhーZr複合酸化物粒子、RhーCe複合酸化物粒子、及びRhーAl複合酸化物粒子を用い、かつRhの担持量が、触媒全体に対して0.3質量%となるようにしたことを除いて、実施例1と同様にして、実施例3~6の試料を得た。
【0135】
〈比較例3〉
Rhの担持量が、触媒全体に対して0.3質量%となるようにしたことを除いて、比較例2と同様にして触媒を作製した。
【0136】
〈NO浄化温度の評価〉
実施例3~6及び比較利絵3の試料について、リーン水熱耐久試験後、及びリーン・リッチ水熱耐久試験後におけるNO浄化性能を測定した。
【0137】
なお、リーン水熱耐久試験は上記のとおりであり、リーン・リッチ水熱耐久試験は、10時間、950℃に加熱しつつ、COとOとを交互に空間速度300000h-1で流通させる熱処理を行う試験であった。なお、リーン・リッチ水熱耐久試験におけるCOとOとの切り替えは、60秒ごとに行った。
【0138】
NO浄化性能の測定については、これらの試料について、反応ガス中において、25℃から800℃の昇温、及び800℃から25℃への降温を10℃/分の速度で行って、温度と一酸化窒素(NO)の浄化率を測定した。得られた結果を図11及び12に示す。
【0139】
なお、反応ガス組成は、NOが0.15%、COが0.65%、Cが0.1%、Oが0.7%及びヘリウム:残部であり、空間速度は、30000h-1であった。
【0140】
図11は、リッチ・リーン水熱耐久試験後における実施例3~6及び比較例3の試料の、NO浄化率が50%となる温度を比較したグラフである。
【0141】
図11に示すように、実施例3~6の試料は、NO浄化率が50%となる温度がそれぞれ約325℃、約305℃、約275℃、及び約270℃であり、NO浄化率が50%となる温度が約380℃であった比較例3よりも、高いNO浄化性能を有していた。
【0142】
リーン水熱耐久試験後における実施例3~6の試料の間では、実施例6が最も高いNO浄化性能を有していた。
【0143】
図12は、リーン水熱耐久試験後における実施例3~6及び比較例3の試料の、NO浄化率が50%となる温度を比較したグラフである。
【0144】
図12に示すように、リーン・リッチ水熱耐久試験後における実施例3~6の試料は、NO浄化率が50%となる温度がそれぞれ約310℃、約315℃、及び約280℃であり、NO浄化率が50%となる温度が約275℃であった比較例3よりも、NO浄化性能が低かった。
【0145】
これに対して、実施例6では、NO浄化率が50%となる温度が約260℃であり、比較例3よりも、NO浄化性能が高かった。
【0146】
《実施例7並びに比較例4及び5》
〈実施例7〉
トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリドを用いた錯体法によって、チャバサイト型(CHA13)ゼオライト担体粒子の細孔内のうち担体粒子の表面近傍にRhクラスターを担持させた。
【0147】
その後、更に実施例1における熱処理と同様の条件の熱処理を行うことにより、実施例7の試料を得た。
【0148】
なお、実施例7の触媒におけるRhの担持量は、触媒全体に対して0.13質量%であった。また、X線電子分光法によって実施例7の触媒の表面近傍に担持されているRhの担持量を測定したところ、0.5質量%であった。したがって、実施例7の触媒における触媒全体でのRhの担持量に対する表面近傍に担持されているRhの担持量の比は、約3.84であった。
【0149】
〈比較例4〉
Rhの担持量が、触媒全体に対して0.3質量%となるようにしたことを除いて、比較例2と同様にして、Rhクラスターが担持されたZrO粒子の比較例4の試料を得た。
【0150】
〈比較例5〉
Rhの担持量が、触媒全体に対して0.13質量%となるようにしたことを除いて、比較例2と同様にして、Rhクラスターが担持されたZrO粒子の比較例5の試料を得た。
【0151】
〈NO浄化温度の評価〉
実施例7並びに比較例4及び5の試料について、水熱耐久試験前、リーン水熱耐久試験後、及びリーン・リッチ水熱耐久試験後におけるNO浄化性能を測定した。
【0152】
具体的には、水熱耐久試験前、リーン水熱耐久試験後、及びリーン・リッチ水熱耐久試験後のこれらの試料について、反応ガス中において、25℃から800℃の昇温、及び800℃から25℃への降温を10℃/分の速度で行って、温度と一酸化窒素(NO)の浄化率を評価した。得られた結果を図13に示す。
【0153】
なお、反応ガス組成は、一酸化炭素:0.65体積%、酸素:0.25体積%、及び一酸化窒素:0.15体積%、及びヘリウム:残部であり、空間速度は、30000h-1であった。
【0154】
図13に示すように、実施例7の試料は、水熱耐久試験前及びリーン・リッチ水熱耐久試験後では比較例4及び5と比較してNO浄化性能は若干劣っていたが、リーン水熱耐久試験後ではNO浄化性能は高かった。
【符号の説明】
【0155】
1 クラスター担持触媒
10 シリカ担体粒子
11 アモルファス構造
12 クォーツ構造
13 ゼオライト担体粒子
14 転移処理中のゼオライト担体粒子
20 触媒金属クラスター
30 触媒金属の錯体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13